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生産管理
2019年1月16日

全数検査 | 全部検査すれば不良品が外に出る危険性は下がりますがコストがかかります

全数検査_001
全数検査(total inspection)とは製品や部品全てを検査することを言います。文字通り全数を検査するといったイメージです。

この全数検査は抜き取り検査と異なり、検査を行ったモノについては合格・不合格を確実に言う事ができ、生産者危険や消費者危険といった事を考えなくてよい検査方法であるという事ができます。

■全数検査が適する場合

1.人命にかかわる場合
全数検査は不合格品が混入すると人命にかかわるような重大事故が起こるようなモノに採用されます。

これは当たり前の話しで、人命にかかわるような不良を見逃すわけにはいかないためです。

2.高額な製品
非常に高額な製品や、修理対応に極めて大きなコストがかかるものついてもこの全数検査が採用されます。

不良品を発見するためのコストと、不良品を販売してしまうことによるコストを比較した際に、不良品を販売することのコストの方が非常に大きい場合は全数検査を行ってでも不良品の工場外への流出を防ぐ必要があります。

3.前工程の品質が低い場合
検査直前の工程の品質が低い場合、結果として次工程の加工が無駄になる危険性が高くなります。

このような場合も全数検査を行い、次工程へ不良品を流出させることを防ぐことで総コストを抑えることができます。

もっとも、このようなケースでは、前工程の品質向上を目指していく事が根本的な改善となります。

■全数検査できないモノもあります

ただし壊さないと検査できないようなモノは全数検査できません。

例えば、卵の成分を検査しようと思った時に、検査するためには卵を割らないといけないですよね?

こう言った壊さないとできない検査を破壊検査といいますが、卵は全数検査したら売るものが無くなってしまいます。

そのため、是数検査ではなく抜き取り検査で対応するという事です。

また、検査をすると著しく製品が劣化するようなモノ(これも広い意味で壊さないと検査ができないモノといえます)についても全数検査は不可能です。

この例は、例えば防火素材などに当てはまります。防火素材なので炎にさらしても燃えはしませんが、製品としては使い物にならなくなります。

■全数検査をあえてしないモノもあります。

他方、一定数不合格品が混入していても人命に影響が発生せず、全部検査したらコストがかかりすぎてしまうといったようなものについては、抜き取り検査で対応します。

例えば、お米を生産している農家が米粒に割れや見た目の異常がないかどうかの検査をするとします。

この時に、一粒一粒全部見るといった事を行ってしまえば、確かに品質は良くなるかも知れませんが、コストに跳ね返ってきてしまいます。

その結果、現在売っているような価格でお米を購入することができなくなってしまいます。

そのため、こういった場合は抜き取り検査を行うのです。

■全数検査と抜き取り検査は使い分けが重要


もちろん、全数検査の方が抜き取り検査よりも確実ではあるのですが、上にあげたような事情で抜き取り検査を採用するようなケースも多いのです。このように、全数検査と抜き取り検査は使い分けが大切なのですね。

使い分けといった意味では、普段は抜き取り検査をしていますが、場合によっては全数検査を組み合わせるといった方法もおこわなれます。

例えば、ロット単位で抜き取り検査をし、特に不良の多いロットだけ全数検査するといった考え方です。

onnanoko_bustup
全数検査を導入すべきよ!最近、ひよこのぬいぐるみに不良が多く混ざっているから!

hiyoko
不良だなんて、大人はわかってくれないのね。それに、検査項目は多岐にわたるから、今の10倍のコストがかかるのよ。品質と価格のバランスの取れている現状を受け入れてもらわないと困るわ。

neko_akire
ひよこ姐さんが正論を言ってる。それに、僕たちって多少不良があっても、勝った人の命を危険にさらすわけじゃないんだし、いいと思うけどね。


■全数検査は万能ではない

このまんがでは、納品されたみかんの中にカビの生えたものが混入していたとして怒っています。納品されたミカンはもちろん検査済みで納品されているのですが、抜き取り検査を行ったせいか一部不具合がある品物が混入してしまったようです。

その対策として全数検査を要求しようとしています。確かに全数検査を行えば不具合があるものの混入は防げますね。

でも、先生は過剰な品質を要求する事には反対みたいです。一部不具合があるミカンが混入したとしても全体として満足のいく品質であるらしく、これ以上の検査体制を要求することはコスト面から得策ではないと考えているようです。

また、仮に全数検査を要求するとしても、ミカンを潰して果汁の糖度を測るなどの検査項目があれば全数検査は不可能となります。(そうしてしまうとミカンジュースしか流通できなくなりますし、薬品を混ぜるような検査項目があるならば、そもそも全数検査をしてしまうと誰もミカンを食べることができなくなってしまいます。)

解説で出てきた用語・関連用語
生産管理
2012年6月25日

抜き取り検査

抜き取り検査_001
抜き取り検査(sampling inspection)とは製品や部品の集まりの中から一定数を抜き取って検査を行い、不良個数が合格範囲内であれば合格とする検査方法です。

どれだけの数量を検査して合格・不合格を算定するかについては、統計的な手法を用いて決定します。

ここで、注意しなければならないのは、抜き取り検査に合格したからと言って、そのロットすべてのモノが合格品であると保証できないという事です。

合格とすべきロットを不合格としてしまう危険を生産者危険、不合格とすべきロットを合格としてしまう危険を消費者危険と言います。

すべてのモノが合格品であると言いたいのであれば(不合格品が一つでも混入した場合、命に係わる事故が起こる可能性があるような場合)全数検査を行うしかありません。

この抜き取り検査は全数検査に対して一部分しか検査しないので、検査の費用が少なくて済むという利点があります。また、壊さないと検査ができないようなモノ(破壊検査が必要なモノ)については、全数検査を実施することは不可能であるため、抜き取り検査を実施するしかありません。

例えば、電球の寿命を検査したいとします。合格するまで点灯するといった検査を全部に対して行ったら、売るものが無くなってしまいますよね?また、ヒューズのように切れる事によって、効果を発揮するような製品も全数検査を行ってしまうと売るものが無くなってしまいます。

これ以外では、ネジとかビスなどの安くて多量にあるものを全数検査したらコスト的に割が合わなくなります。

しかし、上でもあげているように、命にかかわるような重要な部品は全数検査を行う必要があると考えられます。例えば、飛行機のエンジンについては、検査しても壊れないですし非常に重要な部品なので全数検査が行われると考えることができます。

このまんがでは、全体をチェックする余裕がないので、一部分だけチェックして判断しようとしています。一部分だけ抜き取って判断するといったイメージですね。
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