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Ansoff

経営
2025年6月5日

アンゾフの成長ベクトル

アンゾフ成長ベクトル_001
アンゾフの成長ベクトルとはロシア生まれの経営学者、アンゾフ(Ansoff)が提唱した経営戦略上の意思決定の実用的枠組みです。今後の成長の方向性を分析・評価するために用います。

この成長ベクトルとは、製品と市場の二軸を取った表を作成し、成長戦略をそれぞれ①「市場浸透」②「市場開拓」③「製品開発」④「多角化」と分類して考えます。以下その4つの類型について簡単に説明していきます。

アンゾフ成長ベクトル

1.市場浸透戦略
現在の製品、現在の市場に対して他社との競争に勝利し売上増大や市場シェアの向上を目指す戦略です。一般顧客をロイヤルカスタマー化する事を目指す場合もあります。
用いる手段としては
 ・広告宣伝の強化
 ・価格の改定
 ・カスタマーリレーションシップ・マネジメント(CRM)の導入
等があります。

2.市場開拓戦略
現在の製品で新市場を開拓していく戦略です。新市場への投入の場合、しばしば新ブランドを立ち上げます。用いる手段としては
 ・国内市場から海外進出
 ・業務用から一般用への進出
等があります。
このまんがの例では、今まで販売していなかった付属中の職員へ同じ製品を売るということを言っています。

3.製品開発戦略
現在の市場に対して新製品を開発・販売する戦略です。用いる手段としては
 ・短いサイクルで新製品の投入
 ・製品のバージョンアップ
等があります。
このまんがの例では、同じターゲットに向けて海鮮サンドという新製品を開発すると言っています。

4.多角化戦略
新しい市場に新しい製品を提供していくという戦略です。例えば、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースです。用いる手段は様々なものが考えられます。

多角化戦略について詳しくは後日ご説明しますが、アンゾフは、多角化戦略の類型として以下のようなものがあると指摘しています。

すなわち、横に事業を広げるイメージの「水平型多角化戦略」、流通経路の川上や川下へ事業を広げる「垂直型多角化戦略」、技術、マーケティング分野について少なくとも既存の事業と片方が関係する方向へ進む、「集中型多角化戦略」、全く関係ない分野へ進む「集成型多角化戦略」です。

漠然と、成長を目指すと考えるよりも、このアンゾフの成長ベクトルといった考え方を用いると、考えが整理されますよね。

こちらもご参考に
経営戦略の実務的な構築方法

■実務面からの加筆:


中小企業の支援を行う際、この成長ベクトルはもちろん念頭に置きますが、実際に事業計画で効果的だと認められる(≒融資や補助金獲得に結びつく)ものは、

①の市場浸透戦略(現製品✕現市場)
②の市場開拓戦略(現製品✕新市場)
③の製品開発戦略(新製品✕現市場)

となります。いずれも既存の経営資源を土台としており、実現可能性が高いと判断しやすいものです。

■④の多角化について

一方④の多角化(新製品✕新市場)は原則おすすめしません。唐突な印象を与える事業計画は実現性や成功可能性が低いと判断されがちですし、実際に補助金等の採択は難しくなります。

仮に多角化を志向する場合は、その企業なりの必然性が必要です。

例えば、上の例から持ってくると、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースを上げていますが、

実は社長が大学の体育会の出身でコーチなどとのツテがある、トレーニング理論に精通しているとか、トレーニング支援アプリを開発している等

といった経営資源を活用できることが重要です。

■事業再構築補助金という補助金

少し前に事業再構築補助金といった補助金がありましたが、あの補助金は新規事業進出という多角化を求めて作られている補助金でした。

建設業がカフェをやりたいなど、唐突な印象を受ける事業で「補助金が取れないか?」といった相談を受けたものでしたが、その企業なりの必然性があるかどうかがとても重要でした。

必然性があれば、事業計画の作成支援はとてもスムーズに行きましたし、逆に必然性がない場合は相談の段階で「この計画で事業を行うことはオススメしません」とはっきりとお伝えしていました。


初出:2011/07/27
更新:2025/06/05

経営
2011年7月28日

多角化戦略 | 多角化と言っても既存の経営資源を活かして対応するのが王道です

多角化戦略_001
多角化戦略とはアンゾフの成長ベクトルのうち自社の経営資源を新しい製品、新しい市場の組み合わせによる新しい分野へ投入することで、事業の拡張を目指す戦略の一つです。

ここで一口に新しい分野といっても、既存事業との技術やマーケティングの関係により次の4つに分類することができます。すなわち「水平型」「垂直型」「集中型」「集成型」の4つです。それでは以下その4つについてみていきたいと思います。

1.水平型多角化戦略
現在の顧客と大体同じタイプの顧客を対象として、新しい製品部門に進出する多角化です。既存の生産技術や流通経路を利用できるためリスクを比較的低く抑えることが可能です。このまんがでは、職員相手に健康食品を販売すると言っています。
しかし、ほぼ同一の顧客層を対象とするため、市場が停滞している場合には収益の改善が得にくくなるといった点を指摘する事ができます。


2.垂直型多角化戦略
現在の製品の川上や川下に向けて事業を展開する多角化です。このまんがの例では農業へ進出(川上へ進出)することで、原材料を安価かつ安定的に確保できるようにしようとしています。
しかし、生産・流通の過程で生じた問題がそのまま他の段階にも波及してしまうというリスクもあります。このまんがの例では、農業生産が不作だった場合材料の確保に問題が生じてしまいます。

3.集中型多角化戦略
既存製品と新製品との間で、技術とマーケティングのどちらかもしくは双方へ関連性を持たせるように行う多角化です。

4.集成型多角化戦略
コングロマリット型多角化ともいい、生産技術面、マーケティング面双方に関連性のない全く新しい事業に進出する多角化です。この多角化は成長力が高いとみなされる分野で収益性を高めることや、本業とは逆の動向となる分野に進出することで安定性を高めることを目的として行います。
このまんがの例では唐突に秩父山先生がPC販売と言い出しています。何の関連性もない異業種への進出のため、この場合のリスクは高くなることが想定されます。

多角化の狙いとしては次のものがあげられます。

1.範囲の経済の獲得を目指す
先日解説した、単一企業が複数事業を営むほうが総コストが低くなるという効果の獲得を目指します。

2.リスクの分散
全く別事業が同時にトラブルに陥る危険性は少なくなります。

3.余剰資源の活用
余剰人員や余剰生産能力を遊ばせておくのではなく、新規事業に活用することができます。

  • 多角化と言っても関連性を持たせる
さて上の方に多角化戦略の代表的な考え方をまとめています。

こちらを見てお気づきになったかもしれませんが、確かに標的とする市場や製品群はどちらも新規となります。

しかし水平型多角化戦略のように顧客のタイプが似た市場を狙ったり、垂直型多角化戦略のように、サプライチェーンで考えた時の川上川下に進出するなど、基本的には全く新しい分野に唐突に進出するということではありません。

ただコングロマリット型多角化という全く無関係の授業に進出することも方法論としては考えられますが、事業経営のノウハウであるとか投資のノウハウなど何らかの既存の経営資源を活用することには違いありません。

このように、経営資源に限界があるというのが現実ですので、ある程度事業分野は関連性を持たせた方が望ましいと考えられます。
  • 多角化が進展すると何の会社かが分かりにくくなります
このような多角化戦略ですが、仮にうまくいったとしてもデメリットはあります。

それは事業ドメインがあやふやになり何の会社なのかが分かりにくくなるということです。

誰に何をどのように価値を提供していくかという事業ドメインは、会社の中核的な価値観を養うために重要なものとなります。

また、事業の運営にあたって求められる経営資源や資質が変わってくるため、複数の事業を同時に走らせると言うことにつながります。

その結果経営者や経営管理者の負担が著しく増大しますので、ある程度の規模になると分社化するなり事業部化する形で権限委譲を適切に行っていくことは通常よりもより強く求められます。

同時に飲食店と不動産賃貸業と金属加工業を営むとなると、相当大変ですし、経営者の関与という経営資源の投入が難しくなってしまうと言うイメージです。
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