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転籍

組織論
2025年7月3日

転籍

転籍_001
転籍とは、転籍元と雇用関係をいったん解消して転籍先に雇用される配置転換のことを言います。

■転籍についての概要


例えばA社に勤めていた人が、関連会社のB社に移る場合を考えてみたいと思います。

この時、A社をいったん辞めて(A社との雇用契約を打ち切って)B社に改めて雇用されるケースを転籍と言います。

このような場合、A社を退職していますので、転籍元のA社に戻るのは稀なケースになります。この転籍はグループ会社内で人材を有効活用するという事を目的として行われると言われています。
 
但し、単に人員削減のためといった後ろ向きの目的に、この転籍を使う場合もあります。

関連用語
出向

■転籍と似た出向との違いは?

転籍と出向は本質的に違います。出向について詳しくは関連用語をご覧になっていただくとして、簡単に整理すると以下のような整理となります。
項目 転籍 出向
雇用関係 元の会社との契約は終了 元の会社との契約は継続
元の会社に戻れるか 通常は戻らない 期間満了後に戻ることが多い
雇用先はどこになるか? 『転籍先企業』と新たに結ぶ 『元の会社のまま』だが働く場所は『出向先』
※給料は元会社から

この表を単純化して一言で説明すると、転籍はいわゆる片道切符に近い感じです。

■転籍の背景と目的

このように出向とは根本的に異なる転籍ですが、以下のような背景と目的の下、行われます。

・ポジティブな目的
グループ内心事業立ち上げのための人材配置や、従業員本人のキャリア希望を叶えるための配置転換

・ネガディブな目的
事業縮小に伴う人員削減の手段としての「転籍提案」や、コスト削減や雇用責任回避手段

我々コンサルタントは、ポジティブな目的を掲げたりするようにアドバイスしますが、実務の現場ではネガティブな目的でしばしば実施されてしまいます。

■転籍を打診された時にどうするとよいの?

企業側の意図は上のとおりですが、転籍は本人の同意が原則として必要となります。(一旦退職するわけですから。)

そのため、実務的には以下のような要素を検討して慎重に考える必要があります。

1 雇用条件(給与、勤務地、役職など)はどうか?
2 退職金や福利厚生の取り扱いはどうか?
3 転籍先の企業としての評価(安定しているか?成長しているかなど)
4 拒否した場合の処遇

特に、現在の企業での勤続年数が長い場合、退職金や企業年金などについてもよく確認する必要があります。

また、元の企業云々ではなく、事実上の転職と感じられるケースもあります。そのため、転籍先の企業を冷静に見る必要もあります。

■転籍を拒否はできるの?

原則論は本人の同意が必要となっています。しかし、会社からの転籍の要請は本人にとっては極めて重い意味を持ちます。

その意味からも、拒否はできるけど一旦持ち帰って即答はしないほうが望ましいと考えます。

「持ち帰ったらどうするか?」ですが、まずは第三者的なアドバイスを求めて社会保険労務士に相談することをオススメします。(多少お金がかかるかもしれませんが、あなたの人生の必要経費です)

中立的な立場から、制度について助言してくれると考えられます。

そのうえで、圧力を感じたり、不利益な条件変更や納得感が無いなど、法的な権利行使を視野にいれるならば弁護士や労働組合に介入を求める事も可能です。

(逆に言えば、弁護士や労働組合の介入は会社側としても避けたいわけですから、不利益な変更などを巧妙にわかりにくくして伝えてくる可能性があります。その意味でまずは社会保険労務士先生に相談することがおすすめです。)

■企業側は成長機会として提示することが重要

逆の視点で、転籍を打診する企業側の立場で考えてみます。

人員整理のニュアンスがある転籍などの勧奨を、不適切な方法で行うと、上記のような法律家などの介入を招く危険性があります。また何より、働いてくれている人の不信感を招き、離職を誘発しかねません。

その意味で、あくまでキャリアパスの一つとしてしっかりと位置づけ、提示できるような制度設計が重要です。

例えば、成長分野や新市場を開拓する子会社への出向。それも、裁量を増やしやりがいも一緒に提供するといった制度設計です。

また、社内公募制を実施するなど、可能ならば「挑戦者求む」といったアプローチを取り、あくまで会社都合の配置転換・人員整理などではなく、会社も転籍対象者も成長できる機会として位置づけることが重要です。


このように、転籍制度は使い方や制度設計次第でポジティブにもネガティブにもなりうる制度です。そのため、可能な限り自社の企業文化(新しい挑戦を尊ぶなど)と連動させながら、前向きな制度として活用していきたいものです。

転籍は、会社と従業員双方にとって重要な転機となります。前向きに制度を活かすためにも、制度の趣旨や実情を正しく理解し、納得のいく形での転籍制度を運用することを目指すことが大切です。

初出:2012/11/30
更新:2025/07/03


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