まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

スポンサードリンク

スマホ

マーケティング
2015年9月7日

レ点ビジネス | 漢文のレ点は日本人の知恵の結晶ですが、レ点ビジネスは不誠実さが漂っています

レ点ビジネス
レ点ビジネスとは、本来不要なはずのオプションを当初無料とのうたい文句で契約させるビジネスモデルのことを言います。

このように説明すると「当初無料だったら問題ないじゃない」と考える方もいるかもしれませんが、割と不誠実なビジネスモデルだったりします。

よく、携帯電話を契約に行くと「ココにチェックを付けてもらえればもっと割り引けますよ?ひと月は無料なので、契約後二三日たったら解約してくださいね。」などといった営業を受けた人も多いと思います。このような本来不要なオプションを(一定期間無料だからと言って)契約させるイメージです。
  • 退蔵益
話は変わりますが、退蔵益といった言葉をご存知でしょうか?金券などを購入した人は経験則として、全部使わない(つまり発行した金券はすべて戻ってこない)といった事から言われている言葉です。

どういう事かというと、例えば、当初100万円分の金券を発行したとして、期限までに実際に回収した金券が99万円だった場合、差額の1万円については、そのまま企業の利益となるという事です。(とても美味しい話ですよね?こういった利益を退蔵益と呼ぶのです。)

このような退蔵益を見越したビジネスモデルを退蔵益ビジネスなどと呼びます。

そして、このように、自ら購入した金券であっても、机の奥にしまいこんでしまったり、忘れてしまったりして使わない人がいるという事はレ点ビジネスを考える上でも重要なのです。 
  • 同じ考え方です
上述のように、人は自ら購入した金券であっても、利用することを忘れる場合があります。また、本来不要なはずのオプションであっても、同様に解約忘れが一定の頻度で発生します。(膨大な数の人を扱えば、かなり正確にどの程度が解約忘れになるかを想定できるはずです。)

一つ一つは月々数百円のオプションですから、働いている人などにとっては「いちいち解約するのも面倒だな」と思わせておいて、そのオプションの存在自体も忘れてしまうような場合があるので、解約忘れが出がちなのです。

但し、そうはいっても月300円の利用料の不要なオプションであっても、年間にすると3,600円になるので解約忘れをすると結構な痛手になります。

逆に、このようなビジネスモデルを構築している側にとっては相手のミスを待てば良いだけなので非常に美味しいビジネスモデルであると考えられます。

個人的には相手のミスに付け込んでお金儲けをするようなビジネスはちょっとやりたくないですが、儲かる仕組みであることは間違いないと思います。

もっとも、新規顧客ばかりを厚遇し、既存顧客をないがしろにしたり(参考:ドコモのMNPの割引き上限回数設定から考える、既存顧客を大切にするという商売のセオリー)このようなレ点ビジネスを繰り広げたりしていると、既存の大手キャリアはどこかで手痛いしっぺ返しを食らいそうですが…

時事ニュース解説
2015年9月3日

ドコモのMNPの割引き上限回数設定から考える、既存顧客を大切にするという商売のセオリー

MNP
携帯電話で電話番号はそのままに、別のキャリアに移れるといったMNP制度ができてから、かなりの時間が経ちました。

筆者は、特に携帯電話にはこだわりを持っているわけではない+複雑怪奇な料金制度を調べる気が全くしないので、ずっと某D社の携帯・スマホを使っています。しかし、MNP制度での他社への乗り換えが、長く使うメリットを全てかき消してしまうほどお得になっている現状にはちょっとした憤りを感じる時があります。

まあ、きちんと調べない怠惰な性格が悪いのですが、現状に応じたスマホ乗換の最適解を提案してくれるサービスがあれば、トータルコストの引き下げ分の半分ぐらいなら支払っても良いなと思っています。

さて、余談はさておき気になる報道がありました。
NTTドコモは1日、携帯電話端末の割引制度に回数制限を初めて設けた。「家族まとめて割」や「のりかえボーナス」などの割引を繰り返し利用し、安く購入した携帯端末を転売するケースが増えているためだ。携帯電話大手3社で「最も手厚い」(通信大手)とされるドコモの割引制度があだとなった。

中略

番号持ち運び制度(MNP)利用者を対象に、携帯電話大手3社は、最大10万円を超えるキャッシュバック(現金還元)などで他社からの乗り換えを促す販促キャンペーンを展開した。これに乗じて契約変更を繰り返し、現金や商品券などを得る悪質な“MNP長者”が増加した経緯がある。2015年9月2日産経新聞
との報道です。

「安く購入した端末を転売」。「悪質なMNP長者」などと、かなりお客さんを悪しざまに言っているなとの印象を受けますね。

と、転売の是非はおいておきますが、新規ユーザを明らかに優遇し、既存ユーザを冷遇する施策が企業経営の理論的にどのように位置づけられるのかについて考えていきたいと思います。
  • セオリーでは
さて、一般的には新規顧客の獲得重視ではなく、既存顧客との関係性を重視すべしといった事が企業経営上のセオリーとして言われます。

この事を裏付けるように、新規顧客を獲得するためには既存顧客を維持するよりもコストがかかる。おおむね、5対1ぐらいで(つまり新規顧客獲得には既存の顧客維持の5倍コストがかかる)と言ったような事が言われています。

どうでしょうか、MNP制度ができ、キャリアの持っているメールアドレスも意味をなさなくなってきている昨今、確かに既存顧客の数倍のコストをかけて新規顧客の獲得競争をやっているように見えますよね?(だからMNP長者が生まれているのでしょう。)

しかし、既存顧客との関係性をないがしろにして、新規顧客を追い求めるような方法は、少なくとも「不利ですよ」
といった考え方があるのです。
  • 顧客生涯価値という考え方
お客様が、長い間に一体いくら自社に使ってくれるのかといった考え方があります。こういった考え方を顧客生涯価値(LTV)と呼びます。

このような考え方に立つとき、企業は新規顧客を追い求める事よりも、既存顧客との関係性を大切にする事が大切であるとされます。

これは別に『お客様は神様だ』的な精神論ではなく、単純にその方が儲かるといった実利に基づいた考え方です。

上で指摘した通り、新規顧客の獲得には既存顧客の維持と比較して莫大なコストがかかるため、新規顧客だけを追い求めていても、率直に言えば儲からないのです。
  • かつては
かつては、携帯電話業界で、新規顧客はそのまま常連になっていたと考えられます。これは、昔の顧客の方が義理堅かったとか沿いう言った話ではなく、キャリア間の移動障壁が高かったためです。

例えば、一昔前はキャリアを変えれば電話番号は変わりますし、キャリアから支給されたメールアドレスも変わってしまいました。

すると、獲得した新規顧客は、「新しい携帯番号とかメールアドレスを知り合いに知らせるのが面倒だし、大変だな…」といった風に考え、そうそうキャリア間の移動ができないような仕組みになっていたのです。(こういったのをベンダロックインと呼びます。)

しかし、現在ではキャリア間の移動は非常に容易です。(電話番号もそのままですし、普段の連絡で使うのはフリーメールでありLINEやFacebook等ですからね)

そのため、二年縛り+違約金などといった形でスイッチングコストを高めています。(これは総務省からの行政指導でやめるようにと言われていますが、現状ではそのまま運用されています。)

このように、キャリアを移動するスイッチングコストが低くなっているため、携帯電話各社は新規顧客の獲得が常連獲得につながりにくくなっているという事を認識する必要があります。
  • やはりセオリー通りに…
そのため、業界外の人間からすると、やはりセオリー通りに長く使ってくれているお客様の満足度を高めるような施策に舵を切った方が費用対効果が大きいように考えられます。

もっとも、(既存顧客に不公平感を植え付けたとしても)新規顧客獲得至上主義の方が収益性が高いと判断されている可能性もあります。(筆者の専門とは別の業界の事ですからハッキリとはわかりません)

但し、本記事では、セオリーとしては「既存顧客重視策を採る事の方が収益性向上に寄与するとされている」と言われていることを指摘しておきます。

基本としては、新規顧客獲得至上主義はあまり筋の良い手ではないという事は覚えておくとよいと思います。
スポンサードリンク
サイト紹介
まんがで気軽に経営用語を学んじゃおう。難しい・なじみのない経営用語でも、まんがなら簡単に親しめます。
まんがで気軽に経営用語について
TOP絵一覧

📘 noteでも発信中

経営支援の現場から、
言葉のリアルをお届けしています。

▶ noteを見る
索引
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行
わ行
英字 A B C D E
F G H I J
K L M N O
P Q R S T
U V W X Y
Z
数字 1 2 3 4 5
6 7 8 9 0
ライブドアさんから
badge
リンクについて
本サイトはリンクフリーです。リンクいただきましても特にご連絡は不要です。
もしバナーが必要でしたらこちらをご利用いただければ幸いでございます。

header
  • ライブドアブログ