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時事ニュース解説

時事ニュース解説
2015年11月20日

117時間までなら残業で対応した方が人件費が安くなる?その考えだとトータルでは高くつきますよ?

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割とビックリなニュースがありました。それはクレジットカード会社大手のJCB取締役とJCB会社自体が違法な時間外労働をさせたとして書類送検されたという事です。

報道では

 クレジットカード大手「ジェーシービー」(東京都港区)が昨年、本社勤務の社員7人に違法な時間外労働をさせたとして、東京労働局三田労働基準監督署は19日、労働基準法違反の疑いで、同社と取締役ら4人を東京地検に書類送検した。2015年11月19日産経新聞

とされており、労働基準法違反での書類送検であったという事です。あまり、労働基準法の違反で書類送検などといった事は聞いたことが無いので、事実であればかなり踏み込んだ対応であったと思われます。

残業をさせる場合、労使協定で残業を認める協定を結ぶ必要があり、とする場合45時間までが適法で運用できる範囲となります。但し、年6回まで(6か月まで)は特別条項としてその45時間を超えて残業することも認めるといった協定を結ぶことができます。

つまり、法に則って実施される残業時間は、年のうち6か月は45時間を上限としないといけないのです。

そのため、毎月毎月45時間を超える残業時間となっている場合、違法なのですね。(もちろんサービス残業が違法なのは言うまでもありませんが。)

■別の人を雇った方が安いラインは?

さて、法律論で違法云々についてはおいて、今回は単純に残業時間が何時間以上になると別の人を雇った方が安くなるのかについて考えてみます。

こういった長時間労働のお話が出ると、直感的に「もう一人雇った方が安いのでは?」と感じられるためです。

なお、議論を単純にするため、月160時間の所定労働時間で20万円のお給料の人(手当等は存在しない)が残業をする場合の、『もう一人雇った方が安いライン』を求めていきます。

■まず労基法のルールをおさらいします。

まずはルールのおさらいです。

ルール1:労基法上は残業が発生したら25%の割増賃金を支払う必要があります。

ルール2:1カ月の残業時間が60時間を超えた場合割増率は50%となる。

議論の単純化のため、休日出勤、深夜残業については考えないこととします。(残業時間が100時間を超えてくるとこれらの休日出勤や深夜残業にどうしてもなってくるのですが今回は無視します。)

■では60時間の残業を考えます。

さて、この人が60時間の残業をした場合はどうなるでしょうか?

先ほどの人を前提とするので時間給は20万円÷160時間で1,250円となります。

で60時間の残業をするわけですから

1,250×60×1.25=93,750円

となります。

■60時間超の場合

さて、60時間超の残業をした場合ですが

93,750円+(60時間超分の残業代)=総残業代

で計算ができます。

そのため、例えば100時間の残業をした場合(過労死ラインを超えていますね…)

93,750円+(1,250×40×1.5)=168,750

となります。

では120時間の残業ではどうでしょうか?

93,750円+(1,250×60×1.5)=206,250

で基本給を超えてくるのでここまで働かせるのならばもう一人雇った方が安いといった形になります。

なお、おおむね200,000円となるラインは117時間です。

但し、深夜残業や休日出勤などが絡めば割増率が上がるため、このラインはもっと前に来ますし、ボーナスや各種手当も考えればこのラインはもっと後ろに来ます。そのため、一概には言えませんが、単純化した事例では117時間程度となっています。

■117時間までなら残業で対応した方が安い?

と、このような議論には生産性の視点やコンプライアンスの視点が全く欠けています。117時間までなら残業で対応した方が安く上がるなどと言うような企業で働きたいと感じる人は少ないでしょう。

また、このような長時間労働を認めるような企業風土があると、今回の事例のように会社が書類送検されたり、ブラック企業の評判を立てられるといったレピュテーションリスクが存在します。

さらに、従業員さん自身の健康面も心配になりますし、なにより恒常的な長時間労働が前提となっている人たちの生産性も低下すると考えられます。(疲れて働くよりリフレッシュして働いた方が生産的ですよね)

目先のコスト面だけを見るとこのような従業員に残業してもらった方が安いといった議論になってしまいますが、全体的に見て何が最適なのかを考えていく必要がありますね。

 
時事ニュース解説
2015年11月17日

企業組織論について、カステラの文明堂から考える

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みなさまはカステラってお好きですか?経営マンガの中の人にはカステラが洋菓子なのか和菓子なのかよく分かりませんが、お茶を飲むときとかに食べるとおいしいですよね。

何というか、ホッとする味です。

と、なんとなくお取り寄せをと思ってカタログを見ていたのですが、カステラで有名な文明堂って一つの会社ではないってことをご存知でしたか?

ある程度の年代以上の人には、「カステラ一番、電話は二番、三時のおやつに文明堂」という言葉を聞くとCMソングが脳内で再生されるほどの有名企業ですが、実は文明堂は各地に暖簾分けされた文明堂があるのです。
これ以降文明堂は、根は同じ長崎の文明堂であるが、別々の会社となる。長崎には文明堂合資会社から改称した株式会社文明堂総本店、神戸には株式会社文明堂神戸店、浜松には株式会社浜松文明堂、横浜には株式会社文明堂、新宿には株式会社文明堂東京、銀座には株式会社文明堂銀座店、六本木には株式会社麻布文明堂と、現在7社の文明堂が存在している。ウィキメディアより引用
業界関係者にとっては常識かもしれませんが、経営マンガの中の人はこの事を知って結構驚いています。

そこで今回は、文明堂の企業組織を題材にグループ会社とか業務提携、暖簾分けの違いについて考えていきたいと思います。

■同一会社の支店なら

さて、一番きずなが深いのは同一会社での○○支店といった組織体制です。例えば、東京文明堂の本社と○○支店といった関係では、同一企業ですので本社の指揮命令系統の中に含まれています。

一般的なお店と本社の関係性はこういったモノであり、店長の上に販売部長なり担当役員がいて、その上を社長が統括しているような感じとなります。

このような場合は、完全に同一企業ですので、一つの運営会社が全国各地に○○支店を出しているといったイメージです。

読者の中にも、文明堂はそういった事業を運営する会社が一つあって、その傘下に各地の文明堂○○店があると思っていた方もいるのではないでしょうか?(お恥ずかしい話ですが筆者はそのように思っていました)

■持株会社やグループ会社

さて、東京文明堂は持ち株会社制を採っているとの事です。こちらは、文明堂日本橋店と文明堂新宿店が文明堂東京ホールディングスといった持株会社を設立して一緒になっています。

この場合、持株会社が子会社の株式を持って支配する形となるので、一応、文明堂日本橋店社と文明堂新宿店社は別会社になります。

こういったケースは元の企業がある程度独立しているケースから(三越と伊勢丹のような関係性)、殆ど一体になっているケースまで考えられます。

また、どちらかの企業が片方の株式を保有して子会社化するといったケースもあります。

■様々な提携

このほかの形式として、資本提携としてお互いに株式を持ち合うケースも考えらえれます。この場合、同格の企業同士(親子関係が無いという意味です)が株式を持ち合うので、持株会社を設立したり、グループ会社になったりするのに比較すると緩い提携関係となります。

また、さらに緩い関係では業務提携技術提携を結んで、資本関係は持たずに、業務や技術に関して協力しましょうとしているケースがあります。

このように、契約によっても様々な提携関係を考えることができます。

■文明堂は

さて、肝心の文明堂各社がどのような関係性なのかは外部からは知る由もありません。(帝国データバンク等で調べればわかるのでしょうけれども、あまり興味本位で調べるのもどうかと思いますので…)

但しいずれにしてもカステラが美味しい事には変わりはないので、進物としてもしくは、ご自身のお取り寄せとして召し上がってはいかがでしょうか


幾つかある文明堂のカステラを食べ比べてみるのも贅沢でいいですね。(スペイン国王に献上したことがある銀座文明堂のカステラはリンクが見つからなかったので欲しい人は検索してみてくださいね。)

 
時事ニュース解説
2015年11月12日

帳簿を付けていない?会社員の方には想像が難しいかもしれませんがそんな社長さんは多いのです

帳簿

経理部とかがちゃんとあるような企業にお勤めの方や、学生さんにとっては、帳簿をちゃんとつけていなくて、自社が儲かっているかどうかがちゃんと把握ができていないといった事業者が存在することはにわかには信じがたいと思います。しかし、現実ではそんな感じの事業所はとても多いです。

但し、そうはいっても税務署に確定申告をしなければなりませんし、銀行でお金を借りようと思った場合には財務資料を用意しなければならないので、税理士さん等に帳簿をつけてもらっています。

しかし、そういった企業はせっかく税理士さんが帳簿をつけてくれて、財務諸表を作ってくれているにもかかわらず一度も目を通さずに、ファイルに入れているだけといったとてももったいないパターンも多くなっています。

■健康診断とか成績表とか言う前に

さて、「財務諸表は財務的な健康診断とか成績表である」みたいな言葉を昔読んだ『金持ち父さん』の本で見た覚えがありますが(うろ覚えですみません)、財務諸表なんて、見方もなんだか難しげですし、数字ばっかりですし、見ただけでアレルギーを発症する方も多いと思います。

でも、社長さんには難しい事は言いませんので、(専門的な分析はセンセイにお願いすればいいのです)一つだけ目を通していただきたい指標があります。

それは損益計算書という書類の中段あたりに書いてある『営業利益』という指標です。

■『営業利益』だけは必ず見る事

さて、中見出しにして目立たせてみましたが、『営業利益』という指標だけは必ず目を通してください。『営業利益』という指標だけは必ず目を通してください。(大事なことなので二回言いました。)

というのは、この指標は本業の儲けを示している指標だからです。そのため、この営業利益の額であなたの営んでいる事業がどれだけの利益を生み出しているかがわかるのです。

ところで、「営業利益の欄に▲○○円って書いてあるよ」「営業利益なんて言葉は無いけど、営業損失って書いてあるよ」といった感想を持たれた社長さんはいますか?

そういった社長さんは、数年前の財務諸表を引っ張り出してきて、同じ営業利益の欄を見てください。直近の年度だけ、たまたま営業利益がマイナスだったと判断できるのであれば、今年は営業利益をプラスにする事に注力していただければと思いますが、数年にわたってマイナスの場合、かなり注意が必要です。

それは、あなたの事業が利益を生み出していない事を示しているため(つまり続ければ続けるほど損をするという事です)、何らかの手を打たないとマズイ状況に追い込まれる可能性を示唆しているからです。

■営業利益はプラスだけどお金が足りない…

さて、営業利益がプラスであっても借入金の返済などが多くてお金が常に足りていないといったケースも想定することができます。

この場合、本業は利益を生み出しているけれども、過去の何らかの問題が尾を引いており(例えば過去、自社の景気が良かった時期に豪華すぎる建物を建てて、その借入金を未だに返しているとかそんな感じです)それが足を引っ張っていると考えることができます。

このようなケースでは外部からセンセイを呼んで来れば、ある程度の対応も可能です。(場合によっては借入金の返済条件の変更などを金融機関相手に交渉をするといった事まで行ってくれるセンセイもいます。いわゆる企業再生といった案件ですね)

このように、営業利益がプラスなのかマイナスなのかで大きな違いが出てくるのです。

■帳簿を付けよう

さて、このような結果の分析も大切ですが、やはり日々帳簿をつけて儲かっているかどうかを押さえて欲しいと思います。

スピードメーターなどを見ないで運転する人はほとんどいないと思いますが、経営に関すると「なんだか難しいな」といった先入観で計器を見ないで(つまり財務諸表などを見ないで)経営する人が多くいるのが現実です。

例えば、弥生会計などを導入すれば(簿記の素養があれば)簡単に帳簿を付けることができます。

ただ、こうやって事業主さんが自分で帳簿を付けるという事は、実はかなりハードルの高い要求であることも分かっていっています。(でも自社でできるのが一番いい事ですからね。)

■技術は進歩しています

とこんな風に書くと「簿記?そんなの勉強してらんないよ。こっちは忙しいんだよ!」といった反応があるのも想定できます。(というか会計にアレルギーを持っている人はとっても多いと思います。)

そのようなニーズが多いのか、銀行口座の情報から自動で入出金を取り込んで、記帳してくれるといったfreeeという会計ソフトも出ています。(クレジットカードからも同様に経費の情報を記帳してくれます。)

このようなサービスを最初に聞いた時はビックリしたのですが、「確かにお金の出入りは分かっているわけですし、明細である程度どこに払ったのか、どこから入金があったのかは判断できるので自動化できるよね。」と納得感はありました。

いちおう、個人事業主だと税込980円/月、法人だと税込1,980円/月で使えますので、個人的にはありかなと思います。(無料での試用もありなので試してみるといいですよ)

■というか何でもいいから帳簿をつけて欲しい

と、色々書いていますが、経営を支援する側からの願いは一つです。「なんでもいいから帳簿をつけて欲しい」という事です。

それが税理士さんに丸投げであっても良いので帳簿だけはちゃんとつけたほうがいいです。

というのは不確かな情報を元に適切な支援は誰にもできないからです。お医者さんは熱や血圧を測り、聴診器を使って音を聴きます。そして患者さんからお話を聞いて、総合的に判断を行ってから治療をします。

同じように、あなたの会社の状況が分からなければ適切な支援などできないのです。(ごくまれに社長さんのお話だけで状況を的確に判断し、適切な支援方法を提案できる人もいるのですが、そのような人にあたるのを期待するよりも帳簿を付ける方が確実ですし速いです。)

商売で儲けるために、帳簿を付ける事から初めて行きましょう。
 
時事ニュース解説
2015年11月2日

もう、内部留保って言うの止めませんか?内部留保を活用してとの謎理論が出ると議論が進まなくなります

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定期的に出てくるお話なのですが、内部留保を活用して自分たちの目的を達成しようという報道がなされています。

報道では、
安倍晋三政権が昨年までの賃上げ要請に続き、経済界への圧力を強めている。政府は2015年10月16日、企業に積極的な投資を促すための「官民対話」の初会合を開き、過去最高水準に積み上がった内部留保を設備投資などへ回すよう要請した。2015年10月28日JCASTニュース
とされており、今回は内部留保を設備投資に回してほしいとの事です。

■「内部留保を活用して」という謎理論

さて、内部留保を活用して賃金に回すであったり、内部留保を活用して○○といった議論は、どうも会計にあまり触れる機会ない人たちにとっては人気の論点のようですが、企業側にとっては、あえて厳しい言い方をするならば「言っている意味が分からない」といったレベルの議論であると考えられます。

内部留保を活用してと言っている人にとっては、極めて真っ当なことを言っているつもりであると考えられます。(そうでなければ繰り返し定期的に議論される人気の論点にならないですからね)

しかし、企業を運営する側にとっては、「そんな意味不明なことを言われても…」といった反応にならざる負えないため、この種の内部留保を活用してといった要請はいつも空振りに終わるのです。

このように、一見すると真っ当なことを言っているような「内部理論を活用して」というのが、どうして謎理論であるのかを本稿では見ていきたいと思います。

■内部留保って現金があると思っていない?

さて、内部留保活用論者と企業側のボタンの掛け違いはたぶんこの小見出し「内部留保って現金がある」といった事に尽きると思われます。

内部留保活用論者はおそらく、利益をため込んで内部留保を厚くしているのだから、現金があるに違いないと思い込んでいるはずです。

しかし、ここに大きなが誤解があるのです。仮に利益を配当金などで社外に流出させずに自己資本比率が100%に限りなく近くなっているような企業があったとしても、その企業が現金を持っているかどうかは別の話なのです。

例えば、ある企業が新社屋が欲しいと考えていたとします。そして、その企業は新社屋を建てるために税金を支払った後の税引き後利益をほとんど配当などに回さずに内部留保としてため込んでいたとします。
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この図のように、内部留保分を頑張って現金でため込んでいて、たまたま現金で持っていたようなケースを想定します。

そしてあるとき、溜めていた内部留保を活用して1億円で新社屋を建てたとします。このような場合、内部留保活用論者が言うように、「内部留保を活用して設備投資を…」といった結果となります。

それでは、このような1億円の投資をした企業の内部留保はどうなったでしょうか?意外な結果が出てきます。
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確かに、内部留保分の1億円は現金から建物へと変わりました。しかし、内部留保の額はこのような設備投資を行ったにもかかわらず、変わらないのです。

依然として内部留保額は1億円もあるわけです。さすがに、このような経緯で説明されれば「内部留保があるのだから、さらなる設備投資を」という無茶を言う人はいないと思います。

しかし、内部留保を活用して云々は、大きな視点で見ればこのような無茶を言っているようなようなモノなのです。

■要するに言葉の問題

このような説明をすると「どうも内部留保というのは、現金とは関係のない概念らしいな」と感じる人も多いと思います。そのような感覚は正しく、内部留保というのは、言葉として単に資金の調達源泉を示している言葉に過ぎないのです。

上の例では最初に現金1億円を持っていましたが、それはなんだかんだで企業が1億2千万円分の経済的資源を調達してきており、それがたまたま、1億円分の現金として運用されているといった事を示しているにすぎません。
bs
このように、内部留保がいくらあると言っても、それは現金がそれだけあるといった事を意味していません。そのため、内部留保を活用してと言う言葉を額面通りに受け取るのならば、場合によっては借金をしてきて対応する必要があります。

そして、どうしても内部留保を活用しようとした場合には、(現金が金庫にある事を意味しないため)場合によっては借金をしてきて対応する事となる可能性があるという事が共通認識となっていません。

そのため、話がかみ合わないのですね。

■言っている方は分かって言っている

さて、このような内部留保についての議論ですが、おそらく言っている方は分かっていっていると思います。少なくとも、政治に関わっている人が言っているわけですから言っている本人の会計に対する理解があやふやであっても周りには専門知識を持っている人がいるはずです。

とすると、おそらく「ため込んだ利益を社会正義のために吐き出すべきだ!」といったメッセージの方が「内部留保がたまっているため、財務的に余裕が出てきているハズ。だから設備投資などをしてください」といった方が単純明快ですから、メッセージ性が強く出るとの判断して、正しくない言葉遣いであることは分かったうえで言っている可能性があります。

また、この種の議論はどれだけ設備投資をしても内部留保の額は変わらないため、いくらでも言い続ける事ができるといった、「いったモノ勝ち」的な構造も持っています。

例えば、自動車会社の人が、立派なおうちに住んでいる人に、「キミは財産を持っているんだから高級車を買いなさい」と言って車を買わせ、またその翌年にも「相変わらずキミは財産を持っているのだから高級車を買いなさい」と迫るようなものです。

そして、この人が言う財産という言葉は現金のみではなく、家屋敷や車も含んでいるのでいくら車を買っても、現金といった他の財産が車という財産に変わっただけなので、財産自体は減らないといった種類のモノになっています。

これなら、いつまででも言えますし、言ったモノ勝ちですね。

■そもそも誰のお金?

と、ここまでの議論で出てこなかった内容ですがそもそも内部留保は企業の株主の財産となっています。そのため、経営を委託されているに過ぎない経営陣が勝手な判断で内部留保を減らしかねない勝算のない投資を行ったとすれば、責任を問われます。(株主代表訴訟)

投資しても減らせない、かといって確実に内部留保を減らせるような勝算のない投資をすれば責任を問われるといった要請をされても困りますよね。

もちろん、内部留保でため込んだ利益を配当として株主に一気に還元してしまえば内部留保も減るし、株主に責任を追及されないので経営者的には最適解かもしれませんが、それをやったらすごい批判が殺到するんだろうなと思います。

■内部留保を持ち出すからおかしくなる

と、このように内部留保といった概念を無理に持ち出すからこのような議論はおかしくなってしまうのです。そのため、素直に生産性を高めるために投資を奨励するような制度を考えたほうが話はよっぽど早いと考えられます。

少なくとも、マスコミ報道では内部留保云々の発言があったときには、取り上げないか、取り上げたとしても議論自体に意味がほとんどない事を注記しておくなどすると、生産的な結論が得にくい内部留保が云々といった議論は、この辺で終わりにできると思うのですが。

本記事に出てきた用語解説
内部留保とは
自己資本比率
株主代表訴訟

時事ニュース解説
2015年10月17日

PCの基本的なスキル?教わった記憶はありませんがPCが使えない若者がいるのなら社会全体で教える必要があります

pc
パソコン。PC。仕事を行っていくには必須の道具となっています。「手書きで書類を作ってください」とか言われてしまうと、その書類作り以外ほとんど何もできずに一日が終わってしまうかもしれません。

と、このような重要な道具であるパソコン、PCですが、若い方にとってはスマホの方がなじみ深く、パソコンの操作にあまり習熟していない方が増えてきたようです。報道では

若い世代でパソコンを使えない人が増え、話題になっている。IT企業ですら新入社員が使えず困っているケースも。スマートフォン(スマホ)の普及や、親・学校のパソコンへの理解不足、経済的に苦しい家庭が増えていることなどが原因と考えられ、就労のためにも技術習得の必要性が高まっている。
中略
内閣府が今年2月に発表した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、スマホを利用している高校生は89%に上る一方、ノートパソコンは30%、デスクトップパソコンは16%に過ぎない。2015年10月17日毎日新聞

とされています。報道の通りであるのならば、若い世代ではパソコンを使っている人達の方が少数派になってしまっているような状況が浮き彫りになっています。

という事は、パソコンについては覚えるような努力をしないといけない

■どうやってパソコンを覚えたのか

仕事でパソコンを普通に使っている世代はどうやってパソコンを覚えたのでしょうか?

パソコンという新技術を利用して生産性を上げるとの組織の意思の下、おそらく現在50代よりも上の世代の方は、パソコンを覚えるために様々な研修や教育訓練の場が提供されていたはずです。

また、20代後半から40代については、パソコンの利用率が上がってきた世代で、使っていく中で自分で覚えていった世代であると考えられます。

ある程度パソコンが普及してきた世代なので、企業でパソコンの基本的な使い方から教えていたとは考えにくいですし、逆に学校教育でもパソコンの使い方といった教育訓練は提供されていませんでした。(高校での情報教育は2003年から開始)

とはいえ、それで何とかなってきたのは、パソコンの普及期に該当しており、その普及を推進していた世代であると考えられるからです。(つまりパソコンを使えるようになりたいというニーズがあった時代なのです。)

パソコンの普及率
平成7年16.3%
平成10年32.6%
平成13年58.0%
平成16年77.5%
平成19年85.0%
『通信利用動向調査(世帯編)』総務省より筆者抜粋

このように、平成19年では85%もの普及率を達成しています。もちろん、買っただけで使わない人もいるかもしれませんが、その時代に若い世代だった人は率先してパソコンに取り組んだはずです。

このように20代後半から40代の人達は、教育訓練の谷間の世代であったにもかかわらず、パソコンを使える人が多いのは、普及していく時代の流れに乗っていたからであると考えられます。

■パソコンの操作を今後の世代が自然に覚える事はないと考えられる

と、今の若い人たちは逆にスマホは使いこなしています。普及していく時代の流れに乗ると、特別な教育訓練が施されなくとも、ある程度は自然に利用可能となると考えられます。しかし、すでに普及してしまっている技術についてはやはり教育訓練の場を設ける必要があると考えられます。

パソコンが普及していく時代の流れでは、友人とメールをしたり、HPを作ったり、インターネット上の掲示板で交流したりといった行為にある程度の必要性がありました。そのため、パソコンに親しみ、自然と習熟していったと考えられます。

一方、今の若い人たちはスマホで自分たちの必要とする事が完結していると考えられます。そのため、パソコンを利用する必然性は無いのです。

そして、必然性のないモノを決して安くはないお金を支払って購入し、利用していく中で習熟する事はあまり期待できないのです。

■スマホもこういった運命をたどる

例えば将来、スマホと異なる情報デバイスが普及していたとすると、その時代の若い人たちはスマホについてはあまりうまく扱えないはずです。そのため仕事でスマホが必要ならばやはり教育訓練を実施する必要が出てくるのです。

このように、利用する必然性のない道具について習熟していないことを嘆いていても何も始まりません。すでに普及した技術を覚えて欲しいのなら、やはり教育訓練を実施しないとならないのです。

■誰が教えるのか

さて、教育訓練をするとしても誰がその教育訓練を実施するべきでしょうか?企業で働く前に中学や高校といった教育機関で教えるべきでしょうか?

それとも、あくまで『仕事』のためのスキルだから企業が人材育成すべきでしょうか?

これについては、やはり基本的な内容は学校といった教育機関で教えるべきだと考えられます。というのは、読み書きや基本的な計算ができる人材を社会に輩出することは社会全体の生産性を高める事に役立っているように、基本的なパソコンの操作方法についても同様に学ばせることが社会全体の生産性を高めると考えられるからです。(つまり社会全体で考えた場合には、費用対効果が良い投資なのです。)

また、学校教育で教えるという事で

経済的な事情でパソコンに触れることができない→パソコンを用いる仕事に就くことができない→経済的な事情で…

といった負の連鎖を、社会として許容しないといった覚悟が必要なのです。

とはいえ、業務で必要な内容。WordやExcelの細かい操作の仕方とかについては企業が人材育成すべき領域であるように考えられます。

企業によって、どのソフトウエアを使うかどうかは分かりませんし、企業文化によっては使う機能も異なるので、学校で全部教えるのは非効率だからです。

■技術革新に期待しつつ

さて、おそらく、このまま技術革新が進んでいけば、スマホのような使用感で今のPCを用いた仕事以上の事ができるようになる日が来るとは思います。

もしくは、特定のデバイスを意識しなくても仕事ができる未来が来るかもしれません。しかし、そのような事を期待して何もしないのは、社会全体として誤りであると考えられます。

社会全体としては、パソコンが使えないといった事で機会を失う事が無いようにしつつ、個別企業では、新人さんがパソコンをある程度つかえていたという、世代は特別であり、今後はそのようなことは期待できない。

新人さんに、企業の仕事の仕方を教える研修期間には、Excelとかその他特定のソフトウエアの使い方も教えるのが当たり前であるとの認識を広げていく必要があると考えられます。

と、パソコンを自然に覚えた世代の経営マンガの中の人が記事を書いてみました、
 
時事ニュース解説
2015年9月29日

宅配型クリーニングでめんどくさい作業を委託することでトータルコストを削減するという発想

外注生活
いきなり質問ですが、個人にとって一番貴重な資源とはなんでしょうか?最終的には価値観の問題となりますが、やはり『時間』が該当すると感じています。

一般的には、自分でできることを人にお願いするといった事は無駄遣いと捉えられていますが、自分よりもうまくできる人が、自分でやるよりも安くやってくれるのならば、サービスのみを購入するのではなく、時間についても購入していると考えられないでしょうか?

例えば、自分でも洗濯をしてアイロンをかけることはできなくはないですよね?でも、プロにお願いするとその時間が節約でき、かつ、仕上がりも良いといった判断から、Yシャツなどをクリーニング屋さんに出したりするわけです。

ただし、このクリーニング屋さんに洗濯物を出しに行くといった行為自体もちょっと時間がかかってしまうので、取りに来てくれると便利だなとも思うわけです。

■宅配型クリーニングがある

さて、そんなこんなで探していたら、ネット宅配型クリーニングといったサービスが世の中にあるようです。「これは良い」と思ったのですが、同時に気になるニュースもありました。少し古い報道ですが

インターネットで申し込み、宅配業者を利用して、衣類の受け渡しを行う「ネット宅配型クリーニング」の相談が急増している。クリーニング店の店舗数は減少傾向で、国民生活センターなどに寄せられるクリーニングに関する相談も年々減ってきている中、ネット宅配型の相談件数は、平成21年度は17件だったのに対し、26年度は1月31日時点で156件と9倍超に増加している。国民生活センターは、「店舗型との違いに留意し、事前に契約内容をよく確認してほしい」と注意を呼びかけている。2015年5月10日産経新聞

といった風に、ネット宅配型のクリーニングでは相談が従来のクリーニングサービスと比較して多いとされています。

これに関しては、「店舗型と宅配型の違いについて留意してほしい」と国民生活センターが指摘している通り、別のサービスであると認識したうえで利用する事で自衛していく必要があると考えられます。

■情報の非対称性が生じる

なんだか難しげな小見出しを付けましたが、情報の非対称性とは簡単に言うと、直接会わないわけなので取引の当事者同士が持っている情報量に差が生じるといった事です。

つまり、クリーニングを出す人にとっては状態等をしっかりと把握できているのですが、クリーニング業者側にとっては、受注して、モノが届いてからでないと正確な把握ができないといった点です。

通常は、事業者側が持っている情報量の方が多くなるのですが、宅配クリーニングといった業態では、直接相対で、クリーニングの対象物を確認できないといった弱点があるため、顧客側の方が情報を多く持つのです。

この辺は、実績がある、経験が豊富なクリーニング業者とお付き合いすることで埋めていくしかなさそうです。

■とはいえ便利です

クリーニングというものは、季節の変わり目に多量に発生するといった特徴があります。季節の変わり目は衣替えの時期なので、洋服や厚手のコートなども収納の対象となります。というのは、冬用のコートは夏には使わないものですからね。

そして収納する前には、やっぱりクリーニングに出してから、しまうようにする方も多いと思われます。

このような場合に、近所ににクリーニング屋があれば良いのですが、そうでなければわざわざ持ち込む手間が発生してしまいます。時間だけでなく、多量の衣類を抱えてクリーニング屋さんに持ち込むのは結構なストレスになるはずです。

また、時間を取れればいいのですが、仕事や家事・育児に忙しい人も多いため、いくら近くにクリーニング屋があっても中々持ち込むことができないといった悩みもあると思います。

その様な時に活用したいのが、宅配クリーニングサービスになると思います。何といっても、家から一歩も出ずにクリーニングに出す事ができる訳ですから、日々の生活にかかる見えないコストを大幅に引き下げることができます。

(クリーニングを出すために、2時間余計に掛けるのなら、その2時間でできた事をあきらめたというコストが発生しています。こういう考え方を機会原価と言います。)

■従来のサービスでは

従来のクリーニングサービスは、(店舗型クリーニングは)、クリーニングをしたい衣類の持ち込みが基本となります。そのため、クリーニング店毎に決まっている営業時間内に持ち込まなければならないといった制限が発生します。

どうしても、自分の都合だけでは動けないのですね。そして、自分の都合で動けないため、クリーニングの為に時間を割く事は難しくなってしまいます。(コンビニのように24時間営業していれば、都合を気にせず対応できるのですがそういったクリーニング屋さんはほぼありません。)

通常は18時か19時くらいにはお店が閉まってしまうようなケースが多いと思います。という事は、平日にお仕事をしているような人は、結局のところ休みの日に行くしかなくなってしまうといった現実があります。

さらに、クリーニングに出す場合、やっぱりある程度まとめて出すと思います。ワザワザ休みの日にクリーニング屋さんに行くわけですから一気に対応したいと考えるのは自然なことだと思います。

しかし重い衣類を運ぶのは案外大変です。(Yシャツでも枚数が増えるとかなりの重さになりますし、かさばります。)また、特に衣替えのシーズンなどは、重さやかさ張るコートなどを沢山出すケースもあるので、非常に苦労することととなります。

さらに、その苦労をもう一度、クリーニングが完了した時にも、しないといけないという問題があります。つまり、持ち帰るために再度お店まで行く必要があるのですね。(近所にクリーニング店がない方は、わざわざ時間をつくって持っていき、再び取りに行くので非常に大変です。)

■宅配サービスで機会原価を削減

このような煩わしさから逃れられるサービスとして、宅配クリーニングといった選択肢もありだと思います。

このような宅配クリーニングの良さといえば、自宅で渡しから受け取りができるという事です。家事や育児、仕事などで忙しく店頭に行く時間がない方や近所にクリーニング店がない、そんな方にとっては、上記の問題点を解消したとても便利なサービスであるという事ができます。

また、お店自体の営業時間を気にする必要がないというのも大きな利点です。申し込みはインターネットから出来ますので、時間の空いた時に利用できます。後は宅配会社の引き取りと受け取り時間を決めればクリーニングサービスを利用することができるので、従来の店舗型クリーニングに比べて時間を有効に使う事ができます。

さらに、クリーニングに出す衣類がたくさんあっても、自宅に集荷しに来て頂けますので持ち運ぶ必要がありません。何より、クリーニング店の営業時間とあわなくても、遠方でクリーニング店に行くのが大変という人でも、簡単に利用できるのが最大のメリットとなります。

このような利点から、機会原価を大幅に削減できる良いサービスであるという事ができます。(逆に言うと、従来の店舗型クリーニングサービス業を営んでいる人にとっては、『集荷』といった切り口が競合他社との差別化要因となるともいえます。)

■具体的な利用方法

まずはインターネットで気にいったクリーニング店を選びます。本サイトでは特にご紹介をしませんが、たくさんありますので後検索ください。

そのうえで、都合の良い日を集荷日と届け日として申し込みます。

指定した日に集荷が来ますので、それまでに梱包したうえで準備をしておけば、余計な時間や手間を避けることができます。もちろん、集荷を依頼していますので、出荷を行う宅配便の業者が自宅まで集荷に来てくれます。

また、2回目以降の利用については、送付キットが手元に届くケースが多いので、ネットで注文後にすぐに発送する事ができるので便利です。

気になる、納期に関しては、クリーニングを注文して集荷に出してから大体5日から一週間程度で仕上がってくる感じです。納期のイメージとしては、従来の店舗型に比べてそこまで変わらない感じとなります。また、価格は最安のクリーニング屋さんとはいえないものの、それなりに安い金額で対応してくれるようで(会員登録すれば割と安くなります)、送料も地域によって3,000円以上や4,000円以上の注文で送料が無料となります。

コートなどはメンバー価格で1,350円なのですが、まあ、相場通りかなといったイメージです。まとめてお願いすると、自分でお店に持ち込んでも同じくらい取られるので、手間が関わらなくそのための時間をワザワザ作らなくても済むといった効果があるので、結果としてお得となるようなイメージです。

■従来の店舗型の方が強い点

とはいえ、宅配型クリーニングの場合、配送する時間がどうしてもかかってしまいます。そのため、礼服など急に必要となるといった場合には店舗型クリーニングサービスの方が小回りが利きます。また、Yシャツなどをこまめに出すような場合も、店舗型クリーニングの方が(沢山まとめなくて良い分)便利となります。

また、「とにかく安い方が正義。安ければ安いほどよい」といった人にとっては、街で最安のクリーニング屋さんを探した方が安くなりますし、チラシなどが入っている時に、特売価格のモノを狙ってクリーニングに出せば表面上のコストは抑えられます。(こういった消費者行動をチェリーピッカーと呼びます。お店側はこの手のお客さんばかりを集めるようだと、経営に良くない影響が与えられますので注意が必要です。)

サービスについても、対人接客が受けられた方が、クリーニングなどについての相談をその場でできるために手厚いと考えられます。また、クリーニング店の人と人間関係が出来上がっているのなら、それを大切にした方が良い場合もあります。

(従来の店舗型クリーニングサービスが宅配クリーニングと差別化するためには、上記のような自分たちの強みをどのように生かすかを考える必要があります。)

■まとめ

と、双方のメリットデメリットを考えてきましたが、宅配クリーニングの一番のメリットは、やはりクリーニング店に行かなくても良いという事につきます。

家事や育児、仕事の都合でクリーニング店の営業時間と合わない人でも、気軽に利用できる。また、遠方でクリーニング店に行くのが大変であってもクリーニング屋さんに行かなくても良い。重たい物を運ぶ手間がかからない(Yシャツでも枚数が増えるとかなり重いですからね)など、時間以外のメリットも充分にあります。さらに、コンビニを利用して依頼できるといったサービスも存在します。

気になる料金についても、宅配型は宅配・集荷といった手間がかかるにしても、そこまで割増にはなりません。(一定以上の注文なら送料無料になります。おそらく全国からクリーニング需要を集めるため規模の経済が強く働くのだと思います。)また、全国対応してくれるお店も多いので、クリーニング単価が高い衣料などを中心に上手く活用する事でトータルコストを削減できると考えられます。

いずれにしても、忙しい日常の中で、こういったサービスを利用することでトータルコストを削減するといった発想はとても大切になります。時給1,000円の人が2時間何かで動き回ると2,000円、2,000円の人が2時間だと4,000円といった事も視野に入れながら、お得な生活を送っていくとよいと思います。(この辺のコスト意識は経営用語的にも大切だと思います。)


時事ニュース解説
2015年9月16日

伊藤ハムと「ごてあらぽー」の米久が経営統合して美味しいハム・ソーセージを作るそうです

経営統合
ハムとかソーセージといった加工肉、美味しいですよね。、日持ちもするので冷蔵庫に常備しておけますし、普通のお肉とは違った魅力がある食材です。

そのハムとかソーセージを作っている大手企業、伊藤ハムと米久が経営統合をするといった発表がありました。報道では
食肉加工2位の伊藤ハム(兵庫県西宮市)と同7位の米久よねきゅう(静岡県沼津市)が、2016年4月をめどに経営統合する方針を固めたことがわかった。

 両社を傘下に置く持ち株会社を設立する。14年度の両社の連結売上高の合計は6361億円で、首位の日本ハム(1兆2128億円)を追う。統合による事業規模の拡大で、食肉の調達力の強化を図る狙いがある。2015年9月15日YOMIURI ONLINE
とされています。伊藤ハムは社名だけで、分かって頂けると思いますが、米久も、最近CMでよく流れている「御殿場高原あらびきポーク」といったブランドを持っている企業です。
  • 経営統合とは
この2社が経営統合をするとの事ですが、持株会社を設立して経営統合を行うとの事です。もともと、包括業務提携をしていたとの経緯があるので、経営統合に向けて関係性は構築されていたのでしょう。

さて、ここで素朴に「どうしてワザワザ経営統合を図るの?」といった疑問が生じては来ないでしょうか?どちらの企業も大きな企業ですし、包括業務提携のままではだめだったのでしょうか?

また、経営統合すると一口で言っても、持株会社方式以外にも、合併したり、親子会社の関係にしたりといった他の方法もあります。どうして持株会社方式を選択したのでしょうか?

本記事では経営統合をどうして行いたいと考えるのか、また持株会社方式を選んだ理由について考えていきたいと思います。
  • 市場シェアの拡大
さて、まず大きなメリットとして挙げられる事は市場シェアの拡大が図れるという事です。いわゆる市場占有率が上がれば、規模の経済が効いてきて、より低コストで製品の製造が可能となります。(製品価格を安くするかどうかは別の話ですが)

また、コスト面では経験曲線効果と言って累計生産量が増えると、総コストが下がるという経験則があり、市場シェアが拡大すれば、累計生産量の増大にも寄与します。

また、別々の会社が一緒になるわけですから、相乗効果(シナジー)燃えることができると考えられます。

これらの効果によって業界1位の日本ハムを追撃したいと考えているのでしょう。
  • 持株会社方式
さて、持株会社方式を選択するとの事ですが、この方式では経営統合と言いつつも、現行の会社自体はそのまま残ります。そのため、統合に伴う様々な混乱を比較的軽くすることができます。

経営統合というと合併といった風に現行の企業が一緒になるようなイメージが強いと思いますが、このような方法を採用するとかなり大変になります。

というのは、合併するのですから、消滅する側の企業の抵抗が大きくなりますし、人事の仕組みやその他さまざまな企業内の仕組みも、新たに構築するか、どちらかの企業に合わせる必要が出てきます。

もちろん、合併がうまくいけば協力に統合できるので、強力なシナジー効果を得ることができるのですが、上記のようなデメリットも見逃せないのです。

その点、持ち株会社方式では、現行の企業自体は存続し続けますので一体になる事に対しての、苦しみは比較的軽く済みます。

しかし、現行の企業はそのまま残りますので、合併と比較すると統一感に欠け、得られるシナジーも比較的少なくなりがちです。これは、一応別会社なので徹底的な合理化はできない(例えば、両方の企業に経理部も総務部もおく必要があるでしょう)ためです。

(もちろんシェアードサービスといったふうに、グループ内の間接業務を一手に引き受ける会社を作るという発想もあり得ますが。)
  • まとめ
経営統合を目指す場合、一般的には、売上や市場シェアの拡大、合併による合理化(重複している経営資源を合理化する)といった効果を狙います。

また、経営統合と一口で言っても、企業同士が完全に一緒になる『合併』や今回のような『持株会社方式』、本記事ではふれませんでしたが『子会社化』といった方式があります。

いずれにしても、高品質で美味しいハムやソーセージを低コストで作ってくれるような会社になってくれると良いですね。

時事ニュース解説
2015年9月12日

痴漢冤罪保険から考える少額保険が機会費用を減らすという話し(とはいえ悪いコトをする人も、えん罪に苦しむ人もいないのが一番ですね)

保険
痴漢冤罪保険といった保険がジャパン少額短期保険社より売り出されるそうです。その名もキャッチーな「痴漢冤罪ヘルプコール」。報道では、次のように弁護士にすぐに助けを求められる保険であるされています。
 ジャパン少額短期保険(東京都千代田区、杉本尚士社長、03・3516・8550)は9日、電車などで痴漢に間違われた時に弁護士にすぐに助けを求めることができる弁護士保険を10日に発売すると発表した。事前に携帯電話やスマートフォンに利用画面を登録しておくと、緊急時にボタンを押すだけで対応可能な弁護士と連絡がとれる。2015年9月10日 日刊工業新聞
実際に冤罪がどの程度発生しているかは定かではないですが、何かあっても、弁護士さんにつながるという心強さはあると思います。
  • 弁護士に相談するというハードルを下げる事に価値があるのかもしれません
とはいえ、この保険のキモはイザとなったら弁護士さんに相談できるといった所であると考えられます。弁護士費用の保証は、この保険としてそこまで大きな魅力の源泉ではないと思われます。

とすると、保険機能を切り離して、イザとなったら弁護士さんに相談できる会員制のサービスとか、アプリといったサービスも考えうるかもしれません。

もちろんスポット対応なので、弁護士費用は割高になるかもしれませんが、保険機能を抜いて同様のサービスを提供したら流行ると思いますよ。あとは、どこかのクレジットカード会社が付帯サービスで提供すると良いかもしれませんね。(JCBとかアメックス、ダイナースのプロパ―カードあたりなら持っている人の属性的にもウケると思います。)
  • 怖いのは機会費用
と、どうして費用をかけてでもこのようなサービスが受け入れられる素地があるかというと、痴漢冤罪事件に巻き込まれると、莫大な損害が発生するからです。

この場合、機会費用(別の事をやっていたら得られていた最大の収益)が莫大なものとなるため、被害を防ぐための方策をみんなが必要としていると考えられるのです。(例えば、商談に行けずに取れるであろう売上を逃した、無断欠勤になってしまい会社を解雇された等、経済的にも社会的にも致命的なダメージが発生します)

また、冤罪といった物事の性質上、本人からすると、防ぎようがないといった面があります。

つまり、落ちたらかなり致命的なダメージを受ける可能性がある橋を命綱なしで歩いているような不安があるのですね。(普段は意識しないにしても、不安ですよね。)

その不安を和らげる方策が今回話題になっている保険になると考えられます。
  • とはいえ
とはいえ痴漢も痴漢冤罪もなくなればいいのですが現実的にはなかなか無くならない残念な世の中です。

また、保険会社としても儲けなければならないという事情があるので
 「痴漢冤罪ヘルプコール付き弁護士保険」の保険料は月払いで590円、年払いで6400円。事件発生後48時間に発生した弁護士の相談料、接見費用も補償する。2015年9月10日 日刊工業新聞
こういった年間6,400円といった価格設定になっているようです。しかし、逆に言うと年間1,000円とかでは保険会社が必要とする適正な利潤を得ることが難しいのでしょう。

とすると、割と多く利用されることを見積もっているのかもしれませんね。

ちなみに個人賠償責任保険という、マンションの水漏れや子供が自転車で人にけがをさせてしまったような場合に保証される保険があるのですが、こちらは保証上限を1億円としても、火災保険の特約などでつける場合には月数百円程度(300円くらいが多いです)で掛けることができます。

同社のプレスリリースでは

 お客様が痴漢と間違われ逮捕されてしまうと、一瞬で社会的地位を失ってしまいます。初期段階での弁護活動がその後の人生を大きく左右するため、事件が起きた直後にお客様が弁護士と電話できるサービスが「痴漢冤罪ヘルプコール」です。

中略

自動車を持たない人でも加入できるように、個人賠償責任保険の特約として開発しました。
 個人賠償責任保険は、自分が加害者になった際のリスクに備える保険ですが、弁護士費用保険は、自分が被害者になった際のリスクに備える保険です。
 
中略
 
  補償内容・保険金額(詳細は別紙2参照):
   弁護士費用等保険金:最高300万円
   法律相談費用保険金:最高10万円
   個人賠償責任保険金:最高1000万円
2015年9月9日 日経電子版プレスリリース 

と謳っており、個人賠償責任保険を押さえて、その分弁護士保険に回しているように発表しています。とすると、加入者がまだまだ少ないといった所を割り引いても、結構な痴漢冤罪発生のリスクを保険会社は見積もっているのでしょう。

お守り代わりにとても良い保険だとは思いますが、根本としては痴漢も痴漢冤罪もなくなるような社会になると良いですね。
時事ニュース解説
2015年9月3日

ドコモのMNPの割引き上限回数設定から考える、既存顧客を大切にするという商売のセオリー

MNP
携帯電話で電話番号はそのままに、別のキャリアに移れるといったMNP制度ができてから、かなりの時間が経ちました。

筆者は、特に携帯電話にはこだわりを持っているわけではない+複雑怪奇な料金制度を調べる気が全くしないので、ずっと某D社の携帯・スマホを使っています。しかし、MNP制度での他社への乗り換えが、長く使うメリットを全てかき消してしまうほどお得になっている現状にはちょっとした憤りを感じる時があります。

まあ、きちんと調べない怠惰な性格が悪いのですが、現状に応じたスマホ乗換の最適解を提案してくれるサービスがあれば、トータルコストの引き下げ分の半分ぐらいなら支払っても良いなと思っています。

さて、余談はさておき気になる報道がありました。
NTTドコモは1日、携帯電話端末の割引制度に回数制限を初めて設けた。「家族まとめて割」や「のりかえボーナス」などの割引を繰り返し利用し、安く購入した携帯端末を転売するケースが増えているためだ。携帯電話大手3社で「最も手厚い」(通信大手)とされるドコモの割引制度があだとなった。

中略

番号持ち運び制度(MNP)利用者を対象に、携帯電話大手3社は、最大10万円を超えるキャッシュバック(現金還元)などで他社からの乗り換えを促す販促キャンペーンを展開した。これに乗じて契約変更を繰り返し、現金や商品券などを得る悪質な“MNP長者”が増加した経緯がある。2015年9月2日産経新聞
との報道です。

「安く購入した端末を転売」。「悪質なMNP長者」などと、かなりお客さんを悪しざまに言っているなとの印象を受けますね。

と、転売の是非はおいておきますが、新規ユーザを明らかに優遇し、既存ユーザを冷遇する施策が企業経営の理論的にどのように位置づけられるのかについて考えていきたいと思います。
  • セオリーでは
さて、一般的には新規顧客の獲得重視ではなく、既存顧客との関係性を重視すべしといった事が企業経営上のセオリーとして言われます。

この事を裏付けるように、新規顧客を獲得するためには既存顧客を維持するよりもコストがかかる。おおむね、5対1ぐらいで(つまり新規顧客獲得には既存の顧客維持の5倍コストがかかる)と言ったような事が言われています。

どうでしょうか、MNP制度ができ、キャリアの持っているメールアドレスも意味をなさなくなってきている昨今、確かに既存顧客の数倍のコストをかけて新規顧客の獲得競争をやっているように見えますよね?(だからMNP長者が生まれているのでしょう。)

しかし、既存顧客との関係性をないがしろにして、新規顧客を追い求めるような方法は、少なくとも「不利ですよ」
といった考え方があるのです。
  • 顧客生涯価値という考え方
お客様が、長い間に一体いくら自社に使ってくれるのかといった考え方があります。こういった考え方を顧客生涯価値(LTV)と呼びます。

このような考え方に立つとき、企業は新規顧客を追い求める事よりも、既存顧客との関係性を大切にする事が大切であるとされます。

これは別に『お客様は神様だ』的な精神論ではなく、単純にその方が儲かるといった実利に基づいた考え方です。

上で指摘した通り、新規顧客の獲得には既存顧客の維持と比較して莫大なコストがかかるため、新規顧客だけを追い求めていても、率直に言えば儲からないのです。
  • かつては
かつては、携帯電話業界で、新規顧客はそのまま常連になっていたと考えられます。これは、昔の顧客の方が義理堅かったとか沿いう言った話ではなく、キャリア間の移動障壁が高かったためです。

例えば、一昔前はキャリアを変えれば電話番号は変わりますし、キャリアから支給されたメールアドレスも変わってしまいました。

すると、獲得した新規顧客は、「新しい携帯番号とかメールアドレスを知り合いに知らせるのが面倒だし、大変だな…」といった風に考え、そうそうキャリア間の移動ができないような仕組みになっていたのです。(こういったのをベンダロックインと呼びます。)

しかし、現在ではキャリア間の移動は非常に容易です。(電話番号もそのままですし、普段の連絡で使うのはフリーメールでありLINEやFacebook等ですからね)

そのため、二年縛り+違約金などといった形でスイッチングコストを高めています。(これは総務省からの行政指導でやめるようにと言われていますが、現状ではそのまま運用されています。)

このように、キャリアを移動するスイッチングコストが低くなっているため、携帯電話各社は新規顧客の獲得が常連獲得につながりにくくなっているという事を認識する必要があります。
  • やはりセオリー通りに…
そのため、業界外の人間からすると、やはりセオリー通りに長く使ってくれているお客様の満足度を高めるような施策に舵を切った方が費用対効果が大きいように考えられます。

もっとも、(既存顧客に不公平感を植え付けたとしても)新規顧客獲得至上主義の方が収益性が高いと判断されている可能性もあります。(筆者の専門とは別の業界の事ですからハッキリとはわかりません)

但し、本記事では、セオリーとしては「既存顧客重視策を採る事の方が収益性向上に寄与するとされている」と言われていることを指摘しておきます。

基本としては、新規顧客獲得至上主義はあまり筋の良い手ではないという事は覚えておくとよいと思います。
時事ニュース解説
2015年8月31日

ミスドのドーナツがセール時に小さくなる訳がない理由をこっそり教えます

ミスド
ミスタードーナツ。とても美味しいドーナツが食べられるので、我が家でも大人気です。そんな『ミスド』はうれしい事に、定期的にセールを実施してくれるのですが、セールの度に小さいドーナツを売っているといった『噂』が出てしまっているとの事です。

報道では
買い物客で行列ができる大好評企画だが、決まって話題になることがある。それは「小っちゃくなってないか?」というものだ。中にはセールをする度に小さくなっている気がする、などとツイッターで呟く人もいる。ミスドはドーナツの大きさは変えていないとし、あらぬ噂だと頭を抱えている。2015年8月25日J-CASTニュース
などと言われていますが、少しこのことについて考えてみたいと思います。
  • ドーナツを小さくして大儲け?
おそらくですが、ドーナツが小さくなればその分原価も低くなるので、 「ミスド大儲け」みたいなお話を想定しているんだと思います。「セールで人を呼んでいるのに商品のサイズを誤魔化して儲けを大きくするなんてけしからん」といったストーリーですね。

しかし、このストーリにはちょっとした穴があるので、あまり現実的ではないと考えられます。

(製造工程でのばらつきもあるため、たまたま本当小さいドーナツを手にした可能性も否定はできませんが、会社ぐるみで、セール時にドーナツのサイズを小さくするという対応が考えにくいといった趣旨のお話です。)
  • 小さくしてもそれほど原価は変わらない
例えば、ミスドのドーナツの原価率を仮に20%だとします。(仮にですよ。)そして、その原価はドーナツの原材料費(小麦粉とか砂糖とかですね)のみであるとします。

この時、普段の価格が130円のドーナツを想定します。(ポンデリングとかですね。)その場合、このドーナツの原価は130×20%なので26円です。

ココで、仮にドーナツの大きさを5%小さくしたとします。その場合、原価は1.3円引き下がり、24.7円になります。(多分5%小さいと気が付く人が沢山出るはずです。)

但し、上の例で出したような、原材料費のみが原価を構成しているといった前提は非現実的です。例えば、サイズが小さくなっても工場で働いている人の労務費(人件費)の総額は変わらないでしょうし、工場自体の減価償却費等も変わりません。(製造原価は材料費と労務費、その他の経費で構成されます)

仮に、上の例で製造原価が占める割合のうち材料費が3分の1だったとすると、引き下がる原価額は0.43円になります。

このように、多少サイズを小さくしたからと言って引き下げられる原価は微々たるものであると考えられます。
  • 原価が安くなっているのなら、それはサイズの問題ではなく、稼働率の問題です
例えば、仮に内部資料が出てきて、セールの時だけ製造原価が安くなっているとします。この場合「やっぱり、製造原価が引き下がっている。つまり材料をケチってドーナツを小さくしているんだろう」と考える人が出てくると思います。

しかし、このような場合、稼働率が上がった事で製造原価が引き下がっていると考えた方が自然です。

では、どうして稼働率が上がると製造原価が引き下がるのでしょうか。それは次の例を見ながら考えていきたいと思います。

※ミスタードーナツはお店でドーナツを揚げていますが、分かりやすい例として『工場』を想定します。

例えば100万円の減価償却費等の経費が発生する工場で、100万円の労務費(人件費)をかけていたとします。材料費が一個当たり100円の製品があるとして、

◆1万個製造した場合

総製造原価は100万円(経費)+100万円(労務費)+100円(材料費)×1万個=300万円
製品一個当たりの製造原価は300万円÷1万個=300円

◆2万個製造した場合
総製造原価は100万円(経費)+100万円(労務費)+100円(材料費)×2万個=400万円
製品一個当たりの製造原価は400万円÷2万個=200円

と、工場の稼働率が上がれば製品一個当たりの製造原価が引き下がるのです。
  • お店も稼働率が上がります
そして、ドーナツの100円セールを実施するわけですから売上は伸びることが想定されます。つまりお店は沢山ドーナツを作ることになるのですね。

このような稼働率の改善が見込めるため、ワザワザ、ドーナツを小さくするとはちょっと考えにくいです。
  • 評判を損なうリスク
さて、昨今では企業がよろしくない対応をしたりするとあっという間に悪い評判が広がってしまいます。こういったリスクをレピュテーションリスクというのですが、上で見た通り、わずかな原価引き下げのためにミスタードーナツ社がそのようなリスクを取るとは思えません。

仮にドーナツを小さくする必要があるのならば、それを正式に公表して行えばよい事なので、セールの時だけこっそりとドーナツのサイズを小さくするとはちょっと考えにくいです。

いずれにしても、美味しいドーナツのセールは大歓迎ですね。
 
時事ニュース解説
2015年8月27日

日本生命が三井生命を買収するこの機会に、TOBについて説明できる大人になろう

tob

日本生命が三井生命を買収する方向であるとのニュースが入ってきました。この事が実現すると第一生命を抜き業界首位に立つとの事です。

報道によると
国内生命保険2位の日本生命保険は、同8位の三井生命保険を買収する方向で最終調整に入った。2015年8月26日 読売新聞
とされています。

このような大型の買収劇の場合、市場シェア拡大といった切り口で語られるケースが多くありますが、買収手法である株式公開買い付け(TOB)について見ていきたいと思います。

この株式公開買い付け(TOB)という言葉ですが、買収劇が発生するたびに報道されるため、おなじみの言葉かもしれません。 しかし、おなじみの言葉と言ってもイマイチ良く分からない言葉があるように、このTOBといった言葉もわかりにくい言葉であると考えられます。

そこで、この記事を読んで、今日、会社で後輩や部下から聞かれたときに「TOBって簡単に言うとこうだよ…」と説明できるようになっちゃいましょう。
  • 敵か味方かTOB
さて、TOBという言葉には、敵対的とか友好的といった枕詞が付く場合があります。「敵か味方か」なんて言うと、刺激的ですが、敵対的か友好的などといった風に、『的』という言葉を付けるとニュアンスが柔らかくなりますね。

さて、このような『敵対的TOB』や『友好的TOB』といった言葉ですが、ニュースで大きく取り上げられる傾向があるのは何といっても『敵対的TOB』です。いわゆる買収劇とか、企業の乗っ取りといったセンセーショナルなニュースとなるので大きく取り上げられることが多いのですね。

逆に『友好的TOB』はある意味『出来レース』のようなもので、買収されることがほぼ決定しているので面白みがないのかもしれません。
  • で、何が違うの?
と、そんな事を書いていると、「分かったけど、結局敵対的TOBと友好的TOBで何が違うの?」といった声が聞こえてきそうです。

そこで、弊サイトで解説したところを引用してみたいと思います。
敵対的TOBとは、買収対象の会社側(経営陣や関係する様々な会社)が、買収に同意していないにもかかわらずTOBを仕掛けることを言います。
http://keieimanga.net/archives/7771388.html まんがで気軽に経営用語
友好的TOBとは、買収対象の会社側(経営陣や関係する様々な会社)が、買収に同意している際に行われるTOBの事です。
http://keieimanga.net/archives/7774387.html まんがで気軽に経営用語
どうでしょうか?ほとんど同じに見えますか?(それはそうですよね、同じ人が書いているんですから。)

これらの敵対的と友好的の違いは、買収対象となっている会社側が買収に同意しているかいないかによります。そのため、敵対的TOBと友好的TOBについては、やることについてはほぼ一緒であると考えていただければと思います。
  • で、TOBって何なの?
と、遠回りをしてきましたが、いよいよTOBが何なのかについて一緒に見ていきたいと思います。このTOBは日本語で言うと、株式公開買い付けと呼ばれ、英語でtake over bidと記述されることからTOBと略されます。

内容としては、不特定多数の人に「買取価格・買取期間・買取株数」を公告し、証券市場外で株式を買い付ける事を指します。キーワードは、不特定多数、証券市場外、「買取価格・買取期間・買取株数」の公告といった感じになるのですね。

報道でも
三井生命の大株主である三井住友銀行、三井住友信託銀行などはTOBに応じ、保有株式の大半を売却する。三井生命は日本生命の子会社となるが、三井ブランドは残す方向で調整している。三井生命の契約者は、契約内容などに影響はない。2015年8月26日 読売新聞
と言っている通り、三井生命株を三井住友銀行や三井住友信託銀行が売却すると言われています。これは市場外で行われる内容となっております。

例えば仮に、このような買収劇を証券市場を通じて実施すると、株価は日々動きますので当初予測していた金額での買収は難しくなりますし、ある程度株式を集めたけれども、経営権を握るに至らなかったような場合は集めた株式の処分を行わなければならなくなります。

しかしTOBの場合、市場外で行いますので、株価の変動とは無関係に金額を決められますし(とはいえ市場価格と大幅にかい離すると意図したとおり株式が集めらませんが)、期限内に株式を集める見込みがなければTOBの取り消しも可能です。

このような運用ができるため、有価証券報告書の届け出義務がある会社に対する買収については原則としてTOBを実施することとなっているのです。
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