DSCRとは、ある企業がお金を借りた際に、負債の元金と利子を獲得したキャッシュフローでどれだけ返すことができるかという指標の事言います。英語ではDebt Service Coverage Ratioと表記されます。
元利金返済カバー率ともいい、獲得したキャッシュフローは元利(元金と利息)支払いの何倍かを示す指標です。なお、数字が大きい方がより安定していると考えられる指標です。
単純に言い換えれば、100万円のキャッシュフローを獲得している企業が10万円の元利金返済を行った場合と、100万円のキャッシュフローを獲得している企業が100万円の元利金返済を行っている場合のどちらが苦しいかを比較する指標であるといえます。
- 借りたら返さなければなりません
さて、企業がお金借りてくれば当然返済をしなければなりません。そして、お金を返済するわけですから、どこかからお金を持ってこないといけないですよね?
もちろん、他人から借りてきても、資産を売却してもお金は生み出すことができます。
しかし、そのようなお金で返済できたとしても早晩行き詰まってしまうため、本業で稼いできたお金と返済すべきお金の比率を示して検討しようと言った発想で生まれたのが、このDSCRなのです。
- DSCRの例
例えば、『田中正造商店』が元金と利息で合わせて100万円返済しなければならないとします。そして、この企業は活動の結果120万円の現金を生み出しているとします。(キャッシュフローは利益概念とは別の考え方になります。参考:キャッシュフロー経営)
この場合、DSCRを計算してみると
DSCR=返済前のフリーキャッシュフロー÷元金と利息の返済額
DSCR=120万円÷100万円=1.2
となります。
他方、『相田商事』が元金と利息を合わせて60万円返済しなければならないとします。相田商事は80万円の現金を事業活動で生み出してたとします。
このままだと、『田中正造商店』と『相田商事』どちらの企業の方が安定しているかわかりません。
ここで『相田商事』のDSCRを計算してみると両者を比較することができます。
DSCR=80万円÷60万円1.33
このことから、後者の『相田商事』の方が企業としては安定していると言うことができるのです。
・貸すのはいいけど…
ざっくりというとこのDSCRは、「貸すのはいいけど、おたくの会社は本当にお金を返せるの?」という事を見る指標なのですね。
金利が低い今のうちに借りられるだけ借りるのよ。レバレッジをかけてROEを高めるのが素敵な経営者なのよ。
確かに金利は低いから利益はあんまり圧迫しませんが、返済大丈夫ですか?
大丈夫よ。DSCRって指標でみると10ぐらいあるから。元利の返済の10倍のフリーキャッシュフローを稼ぐうちに死角はないわ。
意外と堅実なんですね。
- DSCRは不動産投資でも使われます
さて、上の説明は企業全体についての説明でした。しかし、この考え方は不動産投資などでも簡単に応用することができます。
すなわち、取得した物件から得られる利益で返済額がどれだけカバーできるかを見るという指標です。
この場合、
DSCR=利益÷元金と利息の返済額
となります。※利益ではなく、キャッシュフローとする場合もあります。
この指標が1.0以上になれば、取得した物件からの収益で返済ができているという事になりますし、1.0に満たないと、取得した物件の収益だけでは返済ができないのでどこからか返済の原資を持ってこないといけないというわけです。
もちろん、1.0ではカツカツなので話になりませんし、うまみがありません。節税などと言ったセールストークでこういった案件の話しが来るかも知れませんが、企業は税金を払ってでも成長すべきというのが本サイトの立場です。
また、現金を吸い取られるような投資をしていると、いざというときに本業の足を引っ張ることになりますのでおすすめはしません。(現金預金がいざというときにはものを言います。)
なお、このDSCRが1.0を下回るケースでは金融機関は融資を行わないと言われています。(一説には1.2未満が基準とも言われます。)
解説で出てきた用語・関連用語