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「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

マーケティング
2025年9月18日

ペイドパブリシティ

ペイドパブリシティ_001
ペイドパブリシティとは、マス媒体にお金を支払ってパブリシティを行ってもらう事を言います。一般的には記事広告と呼ばれる形態です。

通常、パブリシティでは企業側はお金を払わずに記事にしてもらいます。

しかし、ペイドパブリシティではお金を支払うので、情報のコントロールが可能です。その意味では、パブリシティというよりも通常の広告の一種であるという事ができると思います。

また、記事風の広告なので通常の広告よりも信頼感が高まると言われています。

例えば、雑誌などで特定の企業を猛烈にプッシュしている記事を見たことはないでしょうか?業界全体の特集を組んでいる雑誌記事のなかに、特定の企業の情報が沢山盛り込まれているページがあるような場合です。

そのような記事は、記事広告である場合があります。

そして、記事広告であるならば、その記事のどこかに「広告」である旨を表示する文字が入っているはずです。

もっとも、広告である旨を明示しないで水面下でお金が動いていたりすると「ステルスマーケティング」(いわゆるステマですね)の一種になってしまいます。

お金を払って広告を出したにもかかわらずステルスマーケティングを行ったなどと非難を浴びてしまっては意味がないばかりか、企業の評判に害を与えますので注意が必要です。

■ペイドパブリシティの注意点

ペイドパブリシティはこのように実態は広告ですが、記事風になっているという体裁を取ります。BtoCで雑誌やWeb記事に記事的に露出を図ることで、記事を掲載した媒体や記事を書いた人のお墨付きを得たかのようにメッセージを伝えることができます。

また、記事風の広告ですから、ニュースっぽい雰囲気を出せますので権威性をもたせることも可能です。

よく取材してくれて、まとめてもらえればプロが書いた記事ですからとても良いものができあがります。ひょっとしたら会社自身も気がついていなかったような商品や会社の魅力を言語化してくれるかも知れません。

そのため、季節限定の新商品を発表したときとか、新しくオープンしたお店を知ってほしい場合、場合によっては新業態を開発してこれから〇〇というお店を展開するよといったときにペイドパブリシティが活用されます。

ただ、やはりどこまで言っても広告ですから本来のパブリシティが持つ信頼性には一歩劣ります。その上、広告の中でも結構お高めの値段つけになりがちです(記者が取材して記事にまとめてくれるわけですからね)

また、営業が来た場合は媒体の性格を確認することも重要です。一般向けの商品を扱っているなら一般の人が読む媒体が望ましいですし、業界向けの商材なら当該業界の業界人が読む媒体が望ましいです。

このように広報戦略の一つとして各種広告やオウンドメディア、純広告などと組み合わせて活用すると良いでしょう。

■各種広報手法の整理

広報手法には様々なものがあります。簡単に整理してみますね。

手法 費用感 内容コントロール 露出速度 主な目的 代表媒体/例
ペイドパブリシティ(記事広告) 中〜高 高い 出稿時期を選べる 短期認知・比較検討 ニュースサイト、雑誌のタイアップ
パブリシティ 基本不可不確実 社会的信頼の獲得 TV/新聞/専門誌
プレスリリース配信 低〜中 情報告知・取材呼び込み 配信サービス、記者クラブ
純広告(ディスプレイ/検索/紙) 入札/枠次第 非常に高い 非常に速い 到達/トラフィック獲得 Google広告、交通広告
オウンドメディア/ブログ 低〜中 非常に高い 遅い 検索流入・教育 自社サイト、ナレッジ記事
SNS運用/インフルエンサー 低〜中〜高 中(投稿は制御可/反応は不可) 速い 話題化・共感形成・UGC創出 X/Instagram/YouTube 等
イベント/記者発表会 中〜高 高い(体験設計可) 体験提供・一次情報発信 発表会、試食、展示会

※信頼度はコンテンツ品質と媒体選定で上下します。


いろいろな手法がある中で、ペイドパブリシティを選択するのであれば、その選択の根拠と狙いを明らかにしておくことが重要だったりします。

初出:2012/10/13
更新:2025/09/18

経営
2025年8月18日

ベンチマーキング

ベンチマーキング_001
ベンチマーキングとは、他社の優れた事例を分析し業務や製品を改善する手法です。
この記事では、競合や異業種の成功事例を活かして自社の効率化や競争力向上を図る方法がわかります。

<簡単な説明>
ベンチマーキングとは、自社の製品・サービス、業務プロセスといった要素を測定し、自社の非効率な個所を、競合他社の優良な事例(ベストプラクティス)を分析して、取り入れ、改善するという手法です。

このベンチマーキングは業務プロセスなどを改善するためのアプローチなので、同業種の中から選んでしまいそうですが、そのような必要はなく、異業種をベンチマーキングしても良いとされています。

■建築業の例からみるベンチマーキング

例えば、建築業をやっている企業が、自社の工程管理の方法を改善したいと考えたとします。特に意識しなければ、おそらく「同業他社の優れたプロセスを参考にしよう」といった発想になると思いますが、あえて異業種の優れた工程管理のプロセスをベンチマークするという考え方です。

ここで、建築業の中でベストプラクティスを探すよりも、IT業界などの異業種まで視野を広げて、参考となるプロジェクト管理の手法を探すのです。

そして、その結果、業界内では全く新しく、非常に効率的な管理手法を確立することができるかもしれません。 また、何の目標もないときに比べ、迅速に競争優位を確立することができるかもしれません。

もっとも、このような手法は経営陣が強力に推進するという事が欠かせません。というのは、ベストプラクティスを達成することは困難な目標となる事が考えられるからです。

そして、この困難な目標を達成するためには既存のやり方を色々な面で変えていく必要がでてきますが、このような業務の見直しには、業務を変えたくないという抵抗がつきものです。

そのため、経営陣が「社内の抵抗を押し切ってでも推進する」といった強いリーダーシップを発揮する必要があるのです。

■ベンチマーキングの導入ステップ

ベンチマーキングはうまくいっている人のやり方を真似して、自分たちを良くする方法です。とはいえ、がむしゃらに進めようとしても何からやったらいいか全くわかりませんよね。

そのため、ベンチマーキングの導入には、いくつかのステップを踏んで実施していくことが大切です。以下そのステップ毎に注意するべき点などを考えていきます。
  • 自社の現状分析(まずは自分を知りましょう)
自社の業務プロセスや経営資源等を整理し、どこに課題があるのかを明確化します。ちょっと分けた言い方をするならば、まずは問題を特定し、どうなりたいかを分析し、そのなりたい姿になるために解決すべき課題を決めます。

言い換えるならば、今の状況はどうかなのかをはっきりさせることが大切です。たとえば、テスト勉強で自分がどの教科が得意で、どの教科が苦手かを整理するイメージです。
  • ベンチマーク対象の選定(誰を参考にするかを決める)
競合他社や異業種企業から参考にしたい「ベストプラクティス」(優れた事例)を見つけ出して抽出します。

これも簡単に言い換えるならお手本にする人を誰にするかを決めるというイメージです。例えば、同じ学校の先輩でもいいし、別の学校の優秀な生徒でもいいですね。
  • データ収集と比較分析
とはいえ、誰をお手本にするか決めても情報を集めないと始まりません。そのため、公開情報やインタビュー、事例紹介などを通じて定量・定性的な情報を収集します。そして、自社との差を洗い出すのです。
  • 改善策の設計と導入
自社との差がわかれば、その差・ギャップを埋めるための改善策を決めていく必要があります。そして、策定した改善策を自社プロセスに適合する形で導入していきます。

自社のプロセスに適合する形を言い換えれば、「自分のできるやり方で取り入れる」ことが大切です。ベンチマークといえども、全部コピーするのではなく、自分に合うやり方として組み合わせるのがコツです。
  • 効果測定と継続改善(やりっぱなしはダメ)
ここまでで導入した方法を元に、改善施策を設定・測定して定期的に見直しを行う事が重要です。

一番良くないのは改善をしようといろいろやるのはいいのですが、そのままやりっぱなしにしてしまうことなのです。そのため、よく言われるPDCAサイクルなどがとても重要なのですね。

これらの流れを踏むと、部活や勉強でも「ただ頑張る」より力がつきます。ベンチマーキングは勉強やスポーツなど日常生活にも応用できる考え方なのですね。

関連用語
経営計画

初出:2013/05/11
更新:2025/08/18


情報
2025年7月29日

ベンダロックイン | 事実上、特定の業者にしか頼めなくなります

ベンダロックイン_001
ベンダロックイン(vendor lock in)とは、ある特定のメーカや販売会社がユーザを囲い込むことを言います。ひとたびこのベンダロックインが起こると、ほかの同種の製品への乗り換えが困難になります。ベンダーロックインとも表記されるときがあります。

■顧客側と販売側の立場でベンダロックインの

ベンダロックインが発生すると、ユーザ側としては価格が多少高くても購入しなければならなくなってしまうといったデメリットが生じます。

ひとたびこのような状況になってしまうと、買い手側(顧客側)は不利な状況に陥ります。具体的には,多少高くとも現在の依頼している業者に依頼し続けなければならなくなります。

逆に、販売側からすると顧客の囲い込みをすることができるので非常に好都合な現象です。

そのため、ベンダロックインを巡るアドバイスとしては、利用者側に対しては「ベンダロックインが発生しないように気をつけて対応してください。」となります。

逆に、提供者側(販売側)の立場では「ベンダロックインになるように対応していきましょう」といった感じになります。

■ベンダロックインが発生すると

このベンダロックインは発生すれば、提供者側が経済学でいうところの独占企業に近い振る舞いができるようになります。

どうしてかというと、同等品が存在はしていますがスイッチングコスト等の問題で実質的に、その製品やサービスを使い続けなければならなくなります。

そのため、多少高くされたとしても、購入側が価格交渉力を持てなくなるのです。

■ベンダロックインがどうして発生するのか

では、このようなベンダロックインはどうして発生するのでしょうか。それは一言で言うと、代わりが効かなくなるからです。

例えば、あなたの会社が特定の企業の販売管理システムを導入したとします。その販売管理システムのデータベースソフトは少し特別なものであり、そのデータベースに適合するように、周辺機器も含め導入を行いました。

その後、販売管理システムが少し古くなり更新しようと考えたとします。

この時、販売管理システム内には非常に貴重なデータが多数存在していたとします。そのため、仮に他社の販売管理システムへ乗り換える場合は、非常に困難な移行作業を行う必要が生じてしまいます。

また、自社で働いている人たちも、現行のシステムを前提に業務を行っているので、新システムの使い勝手になれるまで非常な混乱が予想されます。

どうでしょうか?この状態で他社のシステムを導入することは非常に困難だと思えませんか?

非常にスイッチングコストが高そうですよね。こんな感じの事が発生する結果、ベンダロックインといった現象が生じるのです。

■その要求がベンダロックインを生みます

例えば、システムの開発を行う際に、自社の要求をたくさん飲んでもらえれば得をしたと考えると思います。

例えば、通常の開発費では1から5の機能しか提供されないところ、発注者といった交渉上の有利な地位を利用して5改や6や7までカスタマイズして提供してもらっているといったイメージです。

担当者ベースでは上手くやったと考えるかも知れませんが、開発側は次回の契約更新などの時に、当然そのお金の回収にかかります。

この例では、他社のシステム会社に相見積もりを取ろうとしても、カスタマイズした部分も開発してもらわなければなりませんので、他社の見積もりは当然高くなりがちです。

また、スイッチングコストも考えると、通常の意思決定レベルではシステム開発会社を乗り換えられない状況となってしまいます。

そのような状況となってしまうと、既存の業者が色々理由をつけて値上げ要求をしてきた場合飲まざるを得なくなります。

そのため、開発者側としては短期的には開発費で赤字となっても顧客の要求をのむ余地があるのです。

そのようにすれば、ある程度関係性が構築できたら競合他社の参入は難しくなるので、保守費用などの名目でお金の回収にかかることも可能です。

tanuki
お店の運営に使うシステムを一式変えませんかという営業が来ています

onnanoko_bustup
今更お店の仕組みは変えられないんです。私も高いとは思っているのですが、全てウチのお店用の仕様になっていまして。で、当時の担当の人がとってもいい人で、私の考えた仕組みを盛り込んでくださったんですよ。ほら、発注システムの画面、かわいいキャラクターが動いて、計算してくれるでしょ?

tanuki_2
このキャラクターの動きも必須だとすると…結構高くなっちゃいますよ?

onnanoko_bustup
営業に来てくれる人ってみんなそう言うのよね。でも、ここは譲れないわ。楽しくお仕事するってとっても大切だと思うのよ。

tanuki
結局、値段の折り合いが合わず、少し高いと思いながらも今までの仕組みを使っています。



■関係性を構築できるのは悪いことではない

このように、発注側にとっては良くないイメージあるベンダロックインですが、取引先と長期的な関係性を築くことができると言ったメリットもあります。

自社で人材を育成する余力がない場合は、多少高くとも、どこか一社にお願いし続けるという発想はアリなのです。

このまんがでは、製品の売り込みに来ています。機能強化が図られていることを理由に価格アップを迫っていますが、実質的に別の選択肢がないので、結局は買わざる得なくなりそうです。

ベンダロックインが生じるとこういった現象が起こる場合があります。

■ベンダロックインを回避するには(IT等の業者側は逆に考えてください)

このような、ベンダロックインを回避するためには、以下のような対策が有効となります。
  • 標準的な仕様や技術を利用する
特定ベンダーのみが扱う特殊仕様やプロトコルは避け、できるだけオープンスタンダードに基づいた製品や技術を採用することが大切です。

独自仕様を声高に主張する社内の偉い人がいたら「それは長期的にはとても高くつきますよ?」とやんわりと説得してみてください。
  •  ドキュメントや仕様書を整備しておく
システム導入時には、「どのようなカスタマイズを行ったか」「どんな設計思想か」を文書化しておくことで、他社ベンダーへの引継ぎが可能になります。

あたり前と捉えているかもしれませんが、システムベンダー側が作る仕様書だけでなく、自社が機能に込めた意図などをちゃんと残しておくのが大切なのです。

「(なんだかわからないけど、)現状の仕様通りで作り直してください」と、「(あれとこの機能は今の時代では使わないから)この仕様で作ってください」だったらどちらが安くなるか直感的に判断できると思います。
  • 初期契約で出口戦略を設ける
契約段階で「乗り換えが必要になった場合のデータ移行」や「カスタマイズ引継ぎ」の条件を明文化しておくと、将来的な移行がスムーズです。

特に、データは皆様が考えている以上にバラバラにされて保存されていますので(データベースの正規化)あらかじめ吐き出し要件を明確にしておくことが大切だったりします。
  • 社内に一定のITリテラシーを保持する
完全外注ではなく、最低限のIT人材を育成しておくことで、ベンダー任せになりすぎない体制を作ることができます。

システムベンダーに依頼したから、「情報システム担当の人は全員明日から営業に回ってください」なんてやったらダメですよ。


そして勘の良いベンダ側の皆様は、誠実に対応しつつ、上記のベンダロックインを回避する条件を上手く回避する提案をしていくのがポイントになります。「自社しか提供できない独自技術でお客様の問題を解決する」ってすごく良いですよね?

解説で出てきた用語・関連用語
アフターマーケット
アクティベーション
参入障壁
スイッチングコスト

初出:2012/06/29
更新:2025/07/29

財務・会計
2025年6月14日

変動費型ビジネス | 売上の減少が大きな損失につながりにくいビジネスです

変動費型ビジネス_001
変動費型ビジネスとは、比較的大きな変動費が発生しますが、固定費は小さいビジネスのことを言います。

工場を持たずに製造業を行うファブレスといった形態のビジネスがこの変動費型ビジネスの代表例となります。(工場を持たないので、発生する費用のほとんどが変動費になります。)

このような変動費型ビジネスは変動費が大きいため粗利率は低くなります。つまり、売り上げが沢山上がっても儲かりにくいビジネスという事ができるのですね。

と、こんな風に説明すると「売り上げが上がっても、儲かりにくいなんて意味ないじゃん。変動費型ビジネス=儲からないビジネスなのかな?」と考える人もいるかもしれません。

しかし。この変動費型ビジネスには、儲かりにくいという弱点を補う大きな利点があるのです。
  • 損をしにくい
この変動費型ビジネスは固定費型ビジネスと比較して、損をしにくいという特性があります。

一般的に言って、変動費型ビジネスは固定費をそれほどかけていないビジネスとなります。という事は、損益分岐点の売上高は低めになります。(つまり売り上げが下がっても赤字になりにくいという事です。)
変動費型
また、売上が減少してもそれほど急激に損失は拡大しません。(固定費型ビジネスに示した図表と比べてみてください。)

■変動費型ビジネスの例を幾つか

この他にも、外注費を中心に使うビジネスがあります。例えば、クラウドソーシングを使ったWeb制作業が考えられます。

この場合は受注してから外注を行うので固定費はかなり押さえられます。

また、ECサイトの中でもドロップシッピング型(在庫を持たないで注文だけ取って直送してもらう)ならばこの変動費型のビジネスモデルであると言えます。

■利幅が薄い以外の弱点

一見すると手堅いビジネスであるように見えますが、変動費型のビジネスモデルには弱点があります。

一つは、利幅が薄いというよく言われる弱点ですが、実務的にはもっと大きな弱点が存在します。

それは、漫然と行うと参入障壁を築くことがとても難しいため、売上基盤が脆弱になりがちであるということです。

極端な話をすれば、外注先があなたの会社と付き合うメリットを感じなければ、競合とパートナーシップを構築する可能性もありますし、外注先が直接受注することすらありえます。

そのため、外注先と長期的な信頼関係を築くような取り組みをする必要があるといった点も注意が必要です。

また、注文だけ取って実際の製造やサービスは外注するため、製造やサービスや商品の品質など一般的に差別化しやすい部分で自社のノウハウを蓄積できる余地が少ないです。

そのため、受注した内容をそのまま外注するのではなく、

引合→商談→提案→受注

といったふうに自社独自の提案を行えるようにノウハウを蓄積していき、自社独自の価値を乗せていく工夫ががとても重要となってきます。

また、外注先とビジネスパートナーとなるような関係性を深めることによってネットワーク資産を構築することも重要です。

いずれにしても、「自社だから提供できる価値」というビジネスの本質を作りにくいため、その点wくぉ意識することが重要となっているのです。

初出:2013/07/03
更新:2025/06/14


財務・会計
2025年6月3日

変動費

変動費_001置換
変動費とは操業度の変化に伴って比例的に変化する費用の事を言います。

例えば、たこ焼きを作っているお店があるとします。このお店では、タコや小麦粉などの材料費は売上の増減に伴って変化しますよね?(たくさん売れれば、たくさん材料が必要になって材料費も増えるという関係です。)

また、売り上げが増えれば電気代やガス代、水道代といった水道光熱費も増加します。

このように売上高の変化に伴って比例的に変化する費用を変動費と言います。

この反対に操業度が変化しても変わらない費用というものもあります。例えば、お店を借りていれば家賃が発生しますし、お金を借りていれば支払利息が発生します。これらの費用はたとえ売り上げがゼロでも変わらず発生しますよね?こちらは固定費と言います。

このように、発生する費用は大きく分けると変動費と固定費に分けることができます。そして、このように分けておくと管理会計目的で会計データを用いる際に役に立つのです。(貢献利益率を使って損益分岐点を求めること等ができるようになります。)

このまんがでは、1コマ目の女の子が女子力アップの費用は操業度の増減によって増えないから固定費だと言っています。変動費は、操業度の増減によって増減する費用、固定費は増減しない費用なので、この理解で間違ってないと思うのですが、なんとなく釈然としませんよね。

この、女子力アップ費用は自らの意思で増減させることができる管理可能費であるので、固定費という事に違和感があるかもしれません。しかし、操業度の増減によって増減しないので固定費という事ができるのです。

逆に、デートの回数によって増減するデート代は操業度の増減によって増減する費用なので変動費です。もっとも、この女の子の場合、デート代は男子持ちみたいなので、変動費は限りなく低いようです。 

実務面からの加筆:
変動費とはざっくり言えば売上が上がると増える費用です。これが事業計画に盛り込めると一気に真実味が出てきます。

例えば、以下の事業計画だったらどっちのほうが真実味があるでしょうか?

A 売上が100万円増えます

B 売上が100万円増えますが、変動費が30万円かかるので70万円利益が増えます。

これはもちろんBですよね。

この変動費の考え方は難しそうなことを言うコンサルタントが使う『管理会計』の基礎概念になりますので、「100円の売上を増やすためにどのくらい費用が増える?」といったといを持つと良いですよ。


初出:2025/06/03
更新:2012/05/30


法務・支援施策
2014年12月9日

変態設立事項 | 通常の会社設立ではない方法です

変態設立事項
変態設立事項とは、株式会社の財産に大きく影響を与えるような設立事項のことを言います。

例えば、現物出資として、土地や棚卸資産が出資されるような場合。また、会社が設立される事を条件として財産を譲り受ける契約をする。発起人が報酬を受けたり設立費用について特別の定めがあるような場合がこの変態設立事項に当たります。定款に書いておく必要がありますが、このようなことも可能なのですね。

通常、株式会社が設立される場合、現金で出資されるため、出資金が500万円と言われれば500万円であると考えることができるのですが、変態設立事項の場合本当に出資されたお金があるかどうかが不明となるのです。

というのは、棚卸資産500万円分ですよと言われても、それが本当に500万円の価値があるかどうかわかりませんし、会社が設立されても本当に財産を譲り受けることが出来るかどうか分からないからです。

このような、変態設立事項を何の制限なく認めてしまうと、金銭で出資した株主と不公平になってしまいます。

極端な例を出すと、あなたが500万円出資した会社に対して、別の出資者が売り物にもならないような腐ったアンパンを「500万円分出資します」などと言って現物出資し、あなたと同じ権利を主張したらどうでしょうか?

明らかに不公平ですよね?

このような不公平が生じないように、変態設立事項については検査役の選任を裁判所に申し立てる必要が出てくるのです。

必ず検査役が必要なの?

とはいえ、専門家の証明を受けていたり、少額の場合はこのような手続きをする必要がないとされています。

具体的には、財産の価額が500万円を超えない時や、市場性のある有価証券で出資されていて、その時価を超えない金額であるとされた場合です。

また、弁護士さんや公認会計士、税理士さんのいずれか(不動産の場合不動産鑑定士さん)の証明を受けた場合にも検査役の証明は不要となります。
経営
2013年8月25日

ペンディング | その先送り体質がいつか命取りになるかもしれません

ペンディング_001
ペンディングとは、物事を保留にして、決定しないことを言います。英語ではpendingと表記します。

例えば、「この件についてはペンディングとしましょう」とか「詳細のスケジュールについてはペンディングとしましょう」などという風に使われます。

ニュアンスとしては、「(今は判断できないから)とりあえずおいておいて、後で考えましょう」という感じです。

言い換えると、『先送りしましょう』という意味合いです。

打ち合わせの際に、担当者が苦しくなると、「この件はペンディングで」といった言葉を連発するのを聴いたことがあるかもしれません。(もしかしたら、自分自身がペンディングで…と連発しているかもしれませんね。)

例えば、求められている内容に対して権限が不足していて自分の一存で決められないような場合や、情報が不足しており決められない。不確定要素が多いのである程度流れが見えないと決められないといった状況には、保留しておくといった判断はあってしかるべきだと思います。

但し、このまんがのように、何でもかんでもペンディングにしていたら「せっかく会議を開いたのに何も決まらなかったよ」といった事も起こるかもしれませんね。

なお、似た言葉でTBDといった言葉があります。 こちらは「決めなければならないことは決まっているが、今は未定なので将来的に決める」といった意味合いです。

こちらの場合、決める必要があるという所までは決まっているので、単なる先送りであるペンディングよりも具体的なのかもしれません。 
組織論
2012年12月25日

ベースアップ

ベースアップ_001
ベースアップとは、賃金の基本部分(ベース)が昇給(アップ)する事を言います。新聞とかでは「今年のベアは…」みたいな風に言われます。

ベースアップはあらかじめ定められている賃金表(賃金テーブルと呼ばれるときもあります)自体を上へシフトさせるものです。そのため、ベースアップと定期昇給の双方があれば、一年先輩のもらっている賃金よりも多い額が一年後に支払われます。

この賃金表自体がアップするという事が、良く似た言葉である定期昇給と異なる点です。
baseup
この図のように、賃金カーブ自体が上にシフトする(同じ年齢や勤続年数ならもらえる額が増える)というイメージです。

このようなベースアップを行うと、働く人にとってはうれしいですが、会社側にとっては人件費が増えてしまいそうですよね?では、なぜベースアップが行われてきたのでしょうか?

まずは、インフレ対応や他社との給与水準の調整という面があげられあります。

一般的に物価は長期的には上がっていきます(インフレですね)。そのような事情があるにもかかわらず賃金表を昔決めたままで、ほおっておいたらどうでしょうか?

(例えば物価が現在の10倍になったとして、今のお給料の水準のままだとしたら、生活が厳しいですよね?)

また、労働者は競合他社の給与水準の情報も手にすることができるので、競合他社に比べて低い水準の給与しか払わなければ、いずれ「こんな安い給料じゃやってられるか!」となりますよね?

他には、労働者に生産性の向上分を報いるといった面があります。

労働者の生産性は時間の経過とともに少しずつ向上していくと言われています。(モノを作る際には経験曲線効果といった例もありますし、優れたノウハウの共有や生産技術の進歩、情報化の進展など生産性が向上する要因は沢山あります。)

そして、生産性が向上した結果、企業の収益が増えたとしたら、その収益の増加分を労働者に還元するという意思決定はあり得る考えだと思います。(従業員も大切なステークホルダーですからね)

関連用語
モデル賃金
マーケティング
2011年10月18日

ペネトレイティングプライス

ペネトレイティングプライス_001
ペネトレイティングプライス(市場浸透価格)とは新製品を市場に投入する際の価格設定の方法の一つで、製品の導入初期に意図的に低めの価格を設定しすることをいいます。新製品を市場に投入する際の価格設定の方法はこのペネトレイティングプライス(市場浸透価格)スキミングプライス上澄み吸収価格)があります。

このような価格政策は以下のような条件の場合に採られるといわれています。

1.製品の差別化しにくい
競合が参入しやすいため、導入当初に高い市場シェアを確保する、早めに市場に浸透して高いシェアを目指すといった効果を狙います。

2.価格弾力性が大きい
価格が変化した場合、需要は大きく変わります。すなわち、価格を安くした場合に、需要が大きく増加するため、安くしても販売量の増加の影響の方が大きく、売上高が増加する可能性があります。また費用面では
規模の経済の効果を期待して利益の増大を狙います。

3.
製品ライフサイクルが長いと見込まれる
製品の導入当初に高いシェアを確保し、経験曲線効果を期待し長期的に利益を得るという効果を狙います。

このまんがでは、新製品のカメラがとても安いと言っています。このカメラについて販売企業は、「製品の差別化は難しく、安くするとたくさん売れる。また、この製品は息の長い製品である。」といったような事を考え、このような安い価格設定を行っていると考えることができます。


実務面からの加筆:
実務的に安くして市場に浸透するという戦略(ペネトレイティングプライス)を中小企業、更に規模の大きくない小規模事業者が採用するのが合理的かという問題があります。

特に小規模事業者が新製品や新サービスにつける値段は安すぎる場合があります。その価格で売っても適正な利潤が得られないかもしれない価格をつけるのはあまり合理的ではないです。

■市場に浸透させるという言い訳

このペネトレイティングプライスは「安くして市場に浸透する」→「大きな市場シェアを獲得する」→「規模の経済や経験曲線効果でコスト削減が見込めるので結果として儲かる」といった論理構成になります。

しかし、多くの中小企業は経営資源の制約からこのような戦略をとることは難しいですし、もっと規模の小さな小規模事業者にとっては更に厳しい道となります。

そもそも、浸透させようと考えている市場規模がどの程度あるかの見積もりすら、行われていないケースもあるのです。

■小規模事業者はペネトレイティングプライス戦略を採用すべきか?

現実的には、新製品や新サービスはこのペネトレイティングプライスといったアプローチではなく、最初から適正な利潤を得られる価格をつけることをおすすめすることが多いです。

そうすると、「そんな高くしたら売れないよ」といった声も聞こえてきますが、それを売れるような付加価値を考えていくほうが楽しいですしうまくいくケースが多いです。

とにかく、中小企業、特に小規模事業者は大企業と競争したら絶対的に不利だという現実から始めたほうが良いと考えます。

ヤマザキパンや第一パンと同じ軸で勝負したら絶対に勝てないので、ちゃんと適正な利潤が取れる街の素敵なパン屋さんを目指すべきなのです。

(相手の戦略を知っておくことは有益ですので、ペネトレイティングプライスの考え方を知ることは重要です。しかし、勝算なく安売り競争に打って出ないこともまた重要です。)

関連用語
参入阻止価格

初出:2011/10/18
更新:2025/06/10

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