まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

経営
2025年9月24日

業務的意思決定

業務的意思決定_001
業務的意思決定とは、与えられた資源を用いて短期間で最大限の効率化を図るための意思決定の事です。この業務的意思決定を行うのは主にロワーマネジメント層です。

イメージとしては主任さんや係長さんが日々の業務を最大限効率化できるようにする意思決定のイメージとなります。

例えば穴を掘るという業務があったとします。使える道具はスコップで、いる人員は5人とします。この条件のもと、最も効率の良い穴の掘り方を決定するようなことが業務的意思決定にあたります。

ここで、スコップではなく、ショベルカーを持ってくるといった決定であったり、5人ではなく10人の人員を使うであったりするような、決定は一般的にはロワーマネジメントが行う業務的意思決定の範囲外となります。

このまんがでは効率の良い生産方法を決定していますが、人員の増強については権限がないとのことで、上長に増員要請を行っています。

業務的意思決定とはこのように与えられた資源を活用する意思決定の事を言います。

■業務的意思決定と他の意思決定の違い

業務的意思決定と他の意思決定(管理的意思決定戦略的意意思決定)には階層構造(意思決定の階層構造)があり、誰が意思決定するか、どの範囲で意思決定するかが決まっています。

これは無駄にヒエラルキーを作って喜んでいるというよりも、意思決定に階層構造をもたせたほうが効果的に管理できるためです。

■業務的意思決定の例

仕事で穴を掘るとき、スコップしか現場にないならば、そのスコップをどう使って効率的に仕事をするのかを決めるのが業務的意思決定です。

現場の経営資源をどう使い、同効果を上げるか。日常の業務をより良く執行するための意思決定ですね。

■上の階層で考えること

これに対して、「スコップじゃなくてショベルカーを投入すべきだ。購入することにしよう。」とか「現場の人員を増員させ、そのための管理者も然るべき訓練をされた人間にしよう」と言ったふうに考えるのが管理的意思決定のイメージです。

更に、「弊社は、土木関係の仕事をやるのはやめ、これからは内装工事に集中しよう」と会社の進むべき方向、あり方を決めるのが戦略的意思決定となります。こういったのがトップマネジメントの仕事なのですね。

■業務的意思決定をより良くするための権限

上記のように、業務的意思決定は与えられた経営資源で工夫する事です。そのため逆に言えば与えられた経営資源を活用するための権限を移譲しておくことが重要です。

例えば、スコップで現場対応する際に、道具が人数と比較して足りないということが発生するかもしれません。その場合「少額でも現場判断で経費を使える権限」を付与しておけば、足りない道具を買い足すことができます。

また、「臨時にシフトを追加する権限」なども与えておけば、多少の業務遅れを上位層の判断を仰がずにリカバリーできるかも知れません。(報告はする必要がありますが)。

これら、必要な権限を移譲しておくことで、仕事を止めないで効率的な運営ができたりするのです。

初出:2012/03/09
更新:2025/09/24
経営
2025年7月24日

競争地位別戦略 | 競争地位によって取るべき戦略は異なりますがそれぞれにセオリーがあります

競争地位別戦略_001
競争地位別戦略とは、企業の市場における地位によって最適な戦い方が存在すると指摘した、古典的な戦略理論です。この企業の市場における地位は(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー)の4類型に分類されております。(競争地位の4類型)本記事ではそれぞれの戦略定石をご説明します。

なお、この競争地位別戦略は古典的理論であることから、「ランチェスター戦略」や「ポーターの競争戦略」などでも重視されています。
この考え方では、総体的に自分の市場での地位がどうであるかによって、推奨される定石が変わるのがポイントです。

■競争地位別戦略:リーダーの戦略定石

ココで言うリーダーとは、業界内でトップのシェアを誇り、豊富な経営資源(資金力、人材、ブランド力)を相対的にに持っています。

そのため、敢えて差別化をしなくても、スタンダードな戦略で勝ち切れるという前提から導き出される戦略です。

そして、リーダーは、一言でいうと、基本的なオーソドックスな戦略を採ることが推奨されます。(詳しくはリーダーの戦略定石

■王道で勝てる理由

一例を紹介すると、リーダーは経営資源が豊富というのが何よりも大きな強みです。この強みは非常に強力であり、奇をてらったことをしなくても良いのですし、変なことをやって評判を落とすリスクを負うことは推奨されません。

ただし、競争相手が奇をてらった大胆な差別化戦略を採用してきたらどうでしょうか?

この場合、そのまま同じような戦略を実施してしまえば、経営資源大きさで押しつぶして勝つことができます。

よく、似たような雰囲気の居酒屋がありますが、あれは経営資源が多い、相対的に大きな企業側が後からあえて雰囲気を似せている面があります。

同じようなことをやれば、大きな企業の方が規模の経済や範囲の経済、経験曲線効果が効いてくるので低コストで質のいいもの。言い換えれば、同等以上のものを安く提供できるのです。

その結果、競合が苦心して編み出した差別化要因を敢えて似せるという戦略で無効にできるという強力な強みがあるのです。

この他には、某飲料大手の自販機を考えてみます。その自販機には素敵な商品が沢山あり、スポーツドリンクも、緑茶飲料、コーヒー飲料も、大抵の他社の看板商品と似たような商品が存在しています。

このようにリーダーは相手の出方を見て戦うということができるのが強みなのですね。

■競争地位別戦略:チャレンジャーの戦略

チャレンジャーは二番手以下の勢力なので、リーダーを駆逐する必要があります。そのため、なんとしてでもリーダーの市場シェアを奪う必要が出てきます。

しかし、上で見てきた通り、正面から勝負してもリーダーには叶わないのです。

そのため、チャレンジャーはリーダーにはできない非オーソドックスな戦略で差別化を目指します。

対リーダーの戦い方は、創造的、革新的がキーワードとなります。

リーダーと同じ事をやっていてもかなわないため、リーダーとは違う方法をあえて取ります。この方法は苦し紛れに見えますが、とにかくやってみて突破口を開くために色々やっていくしかないのです。

■アサヒスーパードライは画期的だった

有名な例で、アサヒビールがキリンにシェアで負けていたときに味の軸を変えました。従来は『苦み』がキーワードだったのですが、『コク』と『キレ』に集中してアサヒスーパードライを販売しシェアを逆転したのです。

この際に、キリンがリーダーとして真似してきたらどうなったかはわかりませんが、いずれにしても、アサヒビールは独自の切り口を打ち出すことでシェアの逆転を果たしたのです。

このように軸をずらす戦略こそがチャレンジャーの突破口に成るのです。

(そして可能ならば、リーダーが模倣しにくい仕掛けも用意しておくとよいです。例えばリーダーはアクセスできない自社だけの経営資源を活用するなどです。)

■競争地位別戦略:フォロワーの戦略

フォロワーはリーダーやチャレンジャーの戦略を模倣します。模倣戦略、低コスト、臨機応変がキーワードとなります。

細々と生き残りを図るのも決してわるい選択肢ではありません。もしかしたら、市場が縮小して、上位陣が市場から退出するかもしれませんから。

その結果、残存者利益を獲得する可能性すら存在しています。

また、市場が十分に大きければ自社が生き残るだけのパイがあるかもしれません。例えば大企業にとっては、微妙な規模であっても、中小企業であれば代々事業を営めるほどの大きさがあるかもしれません。

成長市場でなければシェアの逆転は難しいかもしれませんが、新規投資もそこまで要求されませんので適正な利潤を積み上げることも可能かもしれません。

いずれにしても、市場のトレンドに乗り遅れないように長く続ける事が重要になってきます。

■競争地位別戦略:ニッチャーの戦略

ニッチャーは自らの市場を競争者と違うところに定義し、その市場にニッチを築くことを目指します。市場細分化、特定市場でのミニリーダー戦略、特定ニーズがキーワードとなります。

ニッチャーは、その選んだ市場のリーダーとなります。そのためニッチャーが自分の市場を築いた後の戦略は基本的にはリーダーの戦略定石と同じになります。

■フォロワーになりがちな中小企業の戦い方

経営資源に限りがあるため、リーダーやチャレンジャーと同じように考えると徐々に圧迫されていってしまいます。

そのため、基本は「模倣」を試みて手堅く収益を確保するのが重要です。そして、なにも奇をてらうだけが差別化ではなく、長く商品やサービスを提供してきたことによる「使いやすい」とか「安心」「信頼性」といった軸も目立たないですが強みになってきます。

ただし、ココぞというときには一点突破を試みることが大切になります。この一点突破は結果としてニッチャーを目指す方向に行くことになるかもしれませんが、中小企業にも長く営業を続けてきたという強みが蓄積されています。

その強みが最大限活かせる場所で、強みを活用した展開を行えば、十分に戦うことができたりするのです。

(どうしても用語集では一般論になってしまいますね。実際に一点突破した具体論も守秘義務があるから書きにくいですし。

ただ、実際に特定の市場のフォロアーだった会社が一点突破を図って新しい市場のリーダーになり高収益企業に変貌したというケースは割とあります。

そのため、ぜひ自分の会社のお客さんの顔を思いうかべて、「どうして自分の会社の商品を買ってくれるか?」を寝る前に書斎でノートを開いて書き出してみると突破口が浮かぶかもしれませんよ。)


説明で出てきた用語
残存者利益
範囲の経済
ランチェスター戦略

初出:2011/08/03
更新:2025/07/24

経済学
2025年7月7日

逆資産効果

逆資産効果_001
逆資産効果とは、持っている資産が値下がりすることによって、消費や投資が抑制される効果の事を言います。

資産効果の逆なんですね。

「これってどういうこと?」って思った方は次の例を考えてみてください。

あなたは、100万円を株に投資しています。しかし、様々な要因が重なって株が値下がりし、50万円になってしまったとします。

さて、あなたはどのように感じるでしょうか?「資産が減ったから少し節約しようか…」となりませんか?

なるとしたらこのような効果を逆資産効果と言います。

■逆資産効果が生じやすい資産について

これは身も蓋もない言い方になれば、価格変動が激しい資産が該当します。

例えば、株式やビットコインやイーサリアムみたいな暗号資産(仮想通貨)、不動産といった資産になります。

特に、株式などは流動性が非常に高く、価格変動が日々起こりますし、景気動向や企業業績、金利水準などによっても影響が生じます。

そして何より、資産効果や逆資産効果によって価格変動自体が、景気を左右しそれによって更に価格変動が生じると言った動きに繋がります。

また、暗号通貨などはボラティリティ(変動性)が極めて高く、よくわからないアルトコインに至っては、技術的要因や投資家心理などで急騰・暴落が繰り返されます。(株式などで一日に数%も価格が動いたらニュースですが、暗号通貨ではそのような値動きは頻繁に発生します。)

以下、主な資産クラスごとにまとめました。
資産クラス 価格変動リスク 逆資産効果との関連 備考
株式 高い 高い 景気・企業業績・金利動向に強く影響される
暗号資産(仮想通貨) 非常に高い 非常に高い 投機的色彩が強く、急騰・暴落が日常的に発生
不動産 中〜高 中程度 地域・政策・金利に左右されるが、価格変動は比較的緩やか
債券 低〜中 低い 価格変動は小さめだが、金利上昇局面では価格下落リスクあり
現預金 ほぼなし なし 価格が固定されており、逆資産効果の影響は受けにくい

■個人の消費とマクロ経済の動向について

個人は、この逆資産効果が生じれば、前述の例の通りに節約志向が高まり、消費を減少させる形になります。

そして、その個人の動きが企業の売上低下を招き、景気後退のリスクが生じ、更に資産価格が下がり、個人消費にブレーキをかける負のスパイラルが生じるのです。

リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)の頃には、この逆資産効果が生じて、一気に景気が減速したことを覚えている方もいらっしゃると思います。

我が国のバルブ崩壊に遡れば、株価・不動産価格が暴落し、消費が冷え込み、強烈な景気後退が生じたのです。

■政府や中央銀行の役割は大きい

このような逆資産効果が生じて景気悪化リスクが顕在化した際には、中央銀行が金利を引き下げたり、国債などを買い入れて市場に資金を供給したりします。また、財政出動として公共投資などを行って、消費の底割れを防いだりすることも求められます。

と、教科書的な説明ですが、何度も逆資産効果による景気悪化を経験した世代からすると、あんまりこういった政府や中央銀行が役割を発揮したといった実感は感じないです。

しかし、少なくともリーマンショックやコロナショックの際は大恐慌のようなことは発生しなかったため、マクロ的な経済施策には効果があるのでしょう。

ただし、読者の皆様も含め本サイトの読者の方は経済人だと存じますので、政府や中央銀行がなんとかしてくれるではなく、悪くなったら悪くなったなりの環境に適応して生き残っていく必要があるのだと考えます。

※資産価格が上昇することによる影響については、別記事「資産効果とは?」もご覧ください。

初出:2013/02/02
更新:2025/07/07



店舗管理
2025年6月9日

客単価

客単価_001
客単価とは、お店に来たお客様が使った一人あたりの金額の事を言います。文字通りお客様一人あたりの単価という事ができます。

これは売上高を客数で割れば求めることができます。言い換えると、お客様一人あたりの平均売上高の事ですね。

ところで、売り上げを上げる方法ってどんな方法があると思いますか?こんなことを漠然と質問すると、「それがわかれば苦労しないよ」といった声が聞こえてきそうですね。

それでは、このような漠然とした聞き方ではなく、売り上げをもう少し分解して考えてみたいと思います。

売上は、【お店に来るお客様の数】×【一人一人の使うお金】であるとしてみたらどうでしょうか?計算式に直すと下の通りになると思います。

売上=客数×客単価

このように少し分解してみれば、売上を増やす為のアプローチの方法として、お客さまの数を増やすか、客単価を上げるかといった風に考えることができると思います。

ここで、客単価はさらに【お買い上げ点数】×【商品の単価】と分解することもできます。こちらも式に直すと下の通りとなります。

客単価=販売点数×商品単価

客単価を向上させると決めたら今度は、もう一品余計に買ってもらうのか、商品の単価を上げるのかといった風に考えていくことができます。

良く行われている方法が、もう一品余計に買ってもらうという方法です。これはレジの横に、ガムやあめ、電池等をおいてついで買いを誘発したり、ネットショップなどでは、○○円以上で送料無料と謳ったり、レコメンドエンジンといって、これを買った人は一緒に○○を買っていますという風に自動的に勧めたりしています。

このまんがでは、客単価の高い人が来店した際に、更にいろいろ買ってもらうために商品を勧めています。このまんがではさらにもう一品買ってもらえるようにお勧めの商品について情報を提供しているようですね。


実務面からの加筆:
平均値を過信すると危険ということは覚えておくとよいです。9名のお客様が100円しか買っていなくても、一人が1,000円買ったとすれば、平均値は190円となり、判断を誤る危険があります。

もちろんここまで極端なことはあまり発生しませんが、基本的には客単価✕客数で戦略を考えていくため、「その客単価は本当に実態を示しているか?」とちょっと立ち止まって考えるとよいでしょう。

■高くすると回転率は・・・

さて、この他の考える指針としては、客単価と回転率は多くの場合トレードオフ(両立しにくい)です。

みなさんがお店に行くとして、安いお店なら食べ終わったらすぐに席を立つ(≒回転が早い)と思います。

しかし、高めのお店ならゆっくりしたいと考えるお客さんが多くなり、回転率は下がりがちになります。その結果客数はやすいお店ほどには獲得することが難しくなります。(客席が埋まっていたら新しいお客様は入ってこれませんから。)

これは良し悪しではなく、構造の問題となりますので、どのような価格帯を狙って、どれくらいのお客様をお迎えするかといった戦略が重要となるのです。

例えば、高級なお寿司屋さんと牛丼チェーンでは、客単価という指標を見るとお寿司屋さんのほうが高くなりますが、牛丼チェーンは回転率という武器があります。

そして

売上=客単価✕客数

となりますので、それぞれの戦略が全く異なるということができます。

■分けて考えることに意味がある

と、戦略ごとに全く異なるなら考える意味がないと思われるかもしれませんが、このように分解して考えることに意味があります。

売上を上げると漠然と考えると難しいですが、この記事のように分解して考えていくと色々と指針が得られるのです。

関連用語
バスケット分析

初出:2012/08/06
更新:2025/06/09

財務・会計
2019年1月21日

企業間信用 | 商売をやっている中で企業の間で貸し借りをする事です

企業間信用_001
企業間信用とは、商品売買に伴い支払期日をずらす事によって生じる企業間の債権・債務の関係の事を言います。この企業間信用は外部金融の一つの形となります。

はい、何のことかわかりませんね。ちょっと定義が堅すぎると思います。

それなので思いっきり柔らかくしてみます。

これは簡単に言うと、企業が支払いをお互いに待つことで、直接お金の貸し借りをしていないけど資金調達できてますよねーって事を言っているのです。

■お金を払うのを待ってもらうのは

例えば、払わなきゃならない支払いを少し待ってもらうとします。それも広い意味ではお金を借りている事にあたりますよね。

逆にもらうことが出来るお金の回収を少し待つ。こちらはお金を貸している事にあたりますよね。

あなたがお店を経営しているとします。そして、よく知っている常連さんにつけで飲ませてあげました。この取引では、常連さんにお金を貸しているのと同じですよね?

逆に、常連さんはあなたのお店にお金を借りているのと同じですよね?

これを堅く言うと、あなたのお店は常連さんに対してお金を請求する権利を持ち(債権:資産)常連さんはあなたにお金を払う義務が発生します(債務:負債)。

そして、簿記を勉強された方にとってはおなじみの「買掛金」「売掛金」「支払手形」等が、この企業間信用に該当します。

onnanoko_bustup
あのお店には2ヶ月分の貸しがあって、あっちには、3ヶ月分ね。ファンシーグッズのレンタルなんて需要がないと思ったけど、結構頼まれるモノね。

onnanoko_bustup
で、あっちの会社には1ヶ月分の貸しと。回収サイトをバラバラにしたのはミスだったかしらねぇ。でも、与信管理をしっかりしないといけないし。

neko
なんだか管理が大変ですね。でも、それだけ貸しがあったら全部回収できたらすごく儲かりそうですね。

onnanoko_bustup
そうでもないのよ。あちこちから借りているから。なんか企業間信用ってすごいわよね。現金がほとんど動かなくっても商売できちゃうんだから。


■企業間信用は流動○○

この企業間信用は一般的に、金融機関からの借り入れと比較して短期間となります。また、正常営業循環基準という基準にも当てはまるので流動資産、流動負債に該当します。

短期間で回収したり、短期間で支払ったりしないとならない貸し借りなので貸借対照表上には流動○○と表示されます。

そして、比較的短期間に払ったり回収したりするお金が足りているかを見るのが安全性分析にというのです。

■確実にお金が返ってくるかの管理が必要です

このように、企業間信用でもお金の貸し借りが発生します。そのため、しっかりとお金が返ってくるかどうかを管理する必要があります。(こういうのを決済リスクと言います)

もちろん貸し手側(売掛金を計上する側)は、その企業がお金を払ってくれないような事態になれば貸し倒れが発生してしまうので、与信管理をしっかりとやっていく必要があります。

このまんがでは、メガネの先輩はお財布を忘れたようですごく焦っています。それは、どうやら後輩へご飯をご馳走すると言ってしまったからのようです。

それを察した学食の先生は、お代はもらっている事にすると言ってくれています。この場合、学食は男子生徒に対して食事代を貸していることになります。


解説で出てきた用語・関連用語
流動負債
流動資産
決済リスク
法務・支援施策
2019年1月19日

行政指導 | 強制力はありませんが、みんなが従う事で効果が生じています

行政指導_001
行政指導とは、行政機関が誰か特定の人に対して、何かをする事(作為)や、しない事(不作為)を処分に該当しない形式で求める事です。

この行政指導は指導や勧告、助言といった形で行われます。但し、処分に該当しないため強制力はありません。

あくまで市民や団体などが自発的に行政機関に協力するからこそ、この行政指導が効果を発揮するのです。

行政指導って言葉は聞く機会が多いと思いますが、建前上は強制力がないって知っていましたか?

■強制力がないってどういうこと?

行政指導には、強制力がないといわれてもいまいちピンときませんよね?指導する以上、何らかの強制力が伴うと感じるのが通常の感覚だと思います。

しかし、行政指導には本当に強制力がないため、従わなくとも良いですし、(自発的に)したがってもよいのです。

■穴を掘る場合


『庭に穴を掘ろう!』と思った人が、役所に相談に行った場合に、行政の担当者に「庭に穴を掘るなんて止めた方が良いですよ。」と行政指導された場合を考えてみます。(この説明においては、庭に穴を掘るという行為が法律的には何にも問題がないと仮定します。)

この場合、役所の人の発言に強制力はありません。(つまり『庭に穴を掘る』という行為を、やめなければいけないという義務はありません。)

但し、そうはいっても庭に穴など掘ると落ちる危険がありますし、穴を掘っている間に事故があるかも知れません。

だから、行政側は止めて欲しいので指導とか勧告とか助言という形で「庭に穴を掘らないで」という風に言っているのです。

そのため、行政指導を受けた人が任意に協力をする(この場合は言われた人が、『庭に穴を掘らない』事に決める)事が期待されているのです。

そして、この行政指導は処分ではないため(強制力がないため)強制してはならないし、逆に処分ではないため(強制力がないため)法律の根拠がなくても行えるといった形になるのです。

・任意に協力する人が多い

どうでしょうか?強制でなく、任意の協力を求めているだけという言い方、ピンときましたか? そして、行政の担当者に言われたら、強制ではないと知っていたとしても「でも強制じゃないと言ってもお上に逆らうと色んな不利益が…」とか、「この程度の内容なら角を立てても仕方ないし…」と感じる人が多いのです。

また、少なくとも行政でその仕事をしている人なら、庭に穴を掘ることに対する知見も持っているでしょうから、行政指導に信憑性もあるのです。

そのため、強制力を持たないという建前の行政指導ですが、多くの人や団体は行政指導の通り、することやしないことを決めるため効果を発揮するのです。

また、この行政指導は、企業に対しても行われます。そして、企業側も上で挙げたように考えるため、従う場合が多く、行政の考えたとおりにある程度は誘導されていくのです。

■法令の隙間を埋める


我が国は法令上の根拠があって初めて行政機関が動くことができると言った仕組みになっています。 しかし、通常は法令の制定よりも世の中の動きの方が早いため、隙間が生まれます。

そして、その隙間で無秩序が発生しないように行政指導が行われているのです。
tanuki_2
…ということでお願いしますね。

kitsune
なんか役場の人が来ていましたけど、なんかやっちゃいました?ちゃんと消防法などにも準拠してお店をやっているはずなんですけど。

onnanoko_bustup
街作りのことでお店の営業方法で協力して欲しいって行ってきたのよ、さすが、役場の人は街全体を見ているから的確な行政指導だったわ。もちろん強制力がないのは知っているけど、別に従わない理由もないし、従うわよ。

■任意とは言っても 

そして、行政指導は任意とは言いつつもある程度は強制させる仕組みも備えています。例えば、行政指導に従わなかったことを公表するなど、企業のレピュテーションリスクに対する危機管理を刺激することが行われます。

と、なんとなく、不透明ですよね?

その通りで、この不透明さは一昔前、外国から市場参入を妨げていると非難されていました。

もっとも、「行政指導に従わない」と言われたらしつこく指導を続けてはいけないとされていますし、行政指導にもかかわらずあたかも強制力を持っているような表現をしてはなりません。

さらに、行政指導の内容や趣旨、責任者は誰なのかを明確に示すことも要求されています。これは求めれば特段に支障がない場合は書面で交付することがルールとなっています。

このように、なるべく不透明にならないように運用されているのです。

解説で出てきた用語・関連用語
インターネットサーフデイ
レピュテーションリスク

法令
行政手続法
経営
2018年12月25日

金融持株会社 | 金融関係の持株会社には特別な名前がついています

金融持株会社
金融持株会社とは純粋持株会社の中で、子会社が金融事業を行っている企業のことを指す言葉です。この種の持株会社は純粋持株会社が我が国で解禁された後もしばらくは禁止されていました。

このような持株会社の形態は現在は解禁されていますが、2015年現在、金融持株会社は一定の業種しか企業を支配することは認められていません。

そのため、金融持株会社である○○銀行ホールディングスといった企業が、一般の○△製麺や○×自動車を傘下に置くことは認められていないのです。

■証券会社や保険会社等を傘下に収める金融グループ

そのため、現在の金融持株会社は、証券会社や保険会社(損害保険会社や生命保険会社)等を傘下に収めている金融グループの親会社となっています。

このように色々な制度の中運用されている会社形態なのですね。

なお、持株会社についてはマンガに埋め込んだ通り、下図のように整理することができます。

 持株会社体系図

持株会社は、事業持株会社と純粋持株会社に分類され(持株会社自体が事業を営んでいるか否かの分類なので必ず二分されます、純粋持株会社の中で特に子会社が金融事業を営んでいる場合、金融持株会社となります。)
  • 目的は
持ち株会社が設立される目的は、グループ内の他社を支配することを目的としています。そして、子会社が金融事業を行っている企業を金融持ち株会社といい、銀行業と証券業の相互参入を目的として考えられていました。

銀行業等の金融業は、ほかの業態への進出が禁じられており、例えば銀行が証券業を営むなどはできません。

とはいえ、銀行と証券、保険業などはとても親和性が高く国際的な競争を考えた際には金融グループを構築するほうが効率が良く経営を行うことができます。そのため、金融持ち株会社の設立が認められるまでは、特定の企業(例えば銀行など)が母体となって、子会社として証券会社や保険会社を設立していました。

しかし、親子会社の関係があると、利益相反の恐れもありますし、効率的な経営が難しくなると言った問題も生じていました。親子会社の関係というのは働く人にとってはやはり難しく、例えば子会社の方が業績が良くとも、子会社の待遇の方を良くするなどを行うのは難しかったりします。

それだけでなく、親子会社形式の場合は、親会社の経営悪化が子会社側に波及するなどの問題や、親子会社が上場すると少数株主の利益が侵害される恐れや、親子会社間での利益相反の恐れも生じます。

このような難しい問題を避けるため、金融持ち株会社を便宜的に親会社として、そこに銀行業や証券業、保険業をぶら下げるといった方法をとって効率的な経営をすることを狙いとしています。
 
経営
2018年12月24日

規模の経済

kibo_001
規模の経済とは同じ製品や事業では、生産量や営業量の大きい方が、単位当たりのコストが低くなる事を言います。但し、一概に規模が大きければよいという物ではなく、規模が大きくなりすぎると規模の不経済が生じるとされています。

これに似た概念としてこちらの経験曲線という考え方があります。こちらは累積生産量と単位当たりのコストに着目しているのに対し、規模の経済は一定時点での生産規模と単位当たりのコストに着目しています。また、規模の不経済は経験曲線の考え方では生じないとされています。

さて、なぜ規模の経済という現象が生じるかといいますと、

1.製品単位当たりの固定費が薄まるため。
 機械等の減価償却は一つ作ってもたくさん作っても同じであるため、たくさん作った方が製品単位当たりで負担すべき固定費が少なくなります。

2.効率的な生産規模が存在するため。
 鉄鋼業の高炉など、ある設備を導入すれば単位当たりのコストを下げられるような設備が存在しますが、小さな規模の企業では導入が難しい設備があるケースがあります。
 身近な所では学校などに置いてある輪転機でプリントを印刷するととても効率的に印刷できるのですが、コピー機だと同じプリントでも時間がかかる(人件費というコストの発生)ようなケースです。

3.労働力の専門化
 規模拡大によって、投入される労働が専門化され能率が向上する。専門的な仕事をする方が効率は上がるというケースです。

というような要因が考えられます。

さて、まんがでも指摘しているように、カスタネットのように小学校に入学する新一年生がみんな買うような楽器と、クラベス(拍子木みたいな楽器です)では一般的にはカスタネットの方が安い(もちろん高級品も存在ますが)というような現象が生じます。 

関連用語
範囲の経済

経営どうが「規模の経済
  • 中小企業においての規模の経済とは
さて、中小企業において規模の経済をガンガン活かした戦略の策定は基本的には難しいとされています。

これは、経営資源が相対的に乏しい中小企業が大企業を相手にして規模の経済性を発揮できるかといったことを考えて見れば納得できると思います。

しかし、規模の経済とは、たくさん作ればその分固定費が薄まって効率が良くなるといったのが基本的なコンセプトですので中小企業でも、小規模事業者でもその考え方を活用することができます。

例えば、工場の稼働に余裕があるならば、多少安くとも受注してしまうという意思決定の背景にも規模の経済の考え方があります。

具体的には、貢献利益がマイナスにならない限り安くしても受注すべきと言うのが規模の経済を活用した考え方となります。そして、工場長や、会計担当者は数字としては多少安屈してでも受注した方がいいといった考えを述べることとなります。

一方、経営全体を見た際には、価格を引き下げてでも受注すべきかどうかは既存の顧客とからの値引き要請の危険性、工場の稼働率向上による将来のよりよい条件での取引受注可能性の放棄(100個しか作れない工場で90個作ってしまっている場合、追加の受注をすることができません)など、決断が必要な問題でもあります。

この規模の経済の追求を図で示したのがスケールカーブとなります。どのように規模の経済が効いてくるかを明示することが出来たりしますので、考える際に参考になります。
店舗管理
2018年12月23日

競合店

競合店_001
競合店とは、営業を行う際に競争関係になる別のお店の事を言います。同じ商圏で営業し同じような客層を狙いにしているようなお店が競合店に当たります。

例えば、大衆的な定食屋さんのすぐ近くに、同じような定食屋さんがある場合、その二つの定食屋さんはそれぞれに競合店という事ができます。

この時、この二つの定食屋さんがそれぞれ東京と大阪にあるような場合、(非常に遠くにある場合)には競合店にはなりません。これは狙いとしている商圏が異なるからです。

また、大衆的な定食屋さんの近くにあるのが、高級な洋食屋さんである場合通常は競合店とはなりません。これは狙いとしている客層が異なるからです。

このように、同じ業種でも商圏が異なっていれば競合店ではありませんし、狙いとしている客層が異なっていれば競合店ではないのです。
  • 競合店が生まれることは避けられない
とはいえ、消費者のお財布は一つになりますので間接的には影響が出ます。また、本当に魅力的な商圏であれば競合店の進出は避けられません。

その意味で、現状としてとして競合店がない場合でも、潜在的な脅威としての競合店対策を講じておく必要があります。

そして、この競合店対策の本筋はお客様の支持を得るように日々の業務をよりよくしていくことです。
  • お客様の満足を高めよう
その意味で日々の頑張りこそが最大の競合店対策になります。しっかりとしたコンセプトを打ち出して、そのコンセプトをよりよくすることで商圏内お客様に満足していただく。

もっと進んで、商圏内のお客様になくてはならないお店であると愛してもらえるようになれば、競合店が進出してきても対抗することが可能となるのです。

また、お店の周りの環境は少しずつ変化していきます。地域に住んでいる人の年齢層も変わりますし、家族構成も変わります。また、地域に住む人の意識も変わってきます。

そのため、自社のコンセプトを明確にした上で『現在の』お客様に満足していただけるように微調整を行っていく必要があります。

例えば、お惣菜を売っているお店でも、お子様が独立していって世帯人数が減少するといった地域の環境変化があるのなら、一品の量を減らしてたくさんの種類を購入していただけるような商品構成に変えていくといった変化が必要になります。
  • とはいえ、直接的な対策も考える必要がある
店舗のコンセプトを明確にして価値を高めることが大切ですと言いましたが、敵を知ることも重要です。

その意味で、競合店調査を行い、その『結果を活かす』ことが大切となります。競合店調査は結果を活かさないと意味がありませんので、調査をコストをかけて行う以上、何が何でも活かすといった気持ちが重要です。(外部に頼まなくても時間を割いて調査を行う以上、人件費コストが発生しています。)

自社を取り巻く環境と競合店の状況を知りつつ、その情報を自社の経営に活かしていくと行ったアプローチを取っていくといった事が求められるのです。

財務・会計
2015年11月11日

季節資金 | 特定の時期に発生する資金需要を指す言葉です。季節という言葉を使うなんて詩的ですよね

季節資金
季節資金とは季節的な要因で発生する資金需要のことを指す言葉です。いつも必要となるような運転資金ではなく、特定の時期に発生する資金を切り離して言う言葉です。

■季節によって必要な資金です

これは、納税に必要な資金や賞与の支払資金、特定の時期のみに需要が発生するような商品の仕入資金等が挙げられます。

例えば、賞与(ボーナスですね)を出している企業では、6月や12月には賞与を支払わなければならないため、その月については通常の月よりも支払いの原資となる資金が余分に必要となります。

また、食品小売業などでは年末にはお正月用の食材を買い求めるお客さんが殺到します。小売業は現金商売なのでそれほどではないかもしれませんが、小売業に商品を卸す卸売業や、商品を作る製造業は正月用の商品を確保するために、事前にお金を支払って製造を行ったり、製造業からの仕入を行うはずです。

その結果、お正月用の売上を確保するために、大きな資金需要が発生するというわけです。

そして、このような季節的な変動に基づく資金需要を季節資金と呼ぶのです。


これに対して定常的に発生する資金を上でも挙げている通り運転資金といいます。それぞれをまとめると以下のようになります。
項目 運転資金 季節資金
資金の性質 継続的に必要となる資金 特定の時期に一時的に発生する資金
主な使途 仕入代金、給与、家賃などの日常経費 賞与、納税、繁忙期の仕入、イベント準備など
発生時期 毎月継続的に発生 年に数回など、特定のタイミングで発生
予測のしやすさ 比較的安定的に予測可能 時期が固定されているため予測しやすい
資金調達の方法 短期借入、手形割引など 短期借入や一時的な資金手当が中心
資金繰り表での扱い 常に考慮される基本的な要素 一時的な資金ギャップとして考慮

■季節資金は突発的に発生しません(季節資金は予想できる)

さて、このような季節資金ですが、かなりの確度を持って事前に予測できるといった特徴を持っています。

お正月用の商品を製造するのなら、年末前後に大きな資金需要が発生するのは毎年の事ですし、賞与の支払いや税金の支払いも前もって予測できるものとなります。

また、多くの業種には繁忙期というものがあり、大きな売り上げが作れる季節というのは逆に言うと多くの運転資金が必要とされる季節であるという事ができます。

このように、事前にある程度予測できる資金需要ですので、先を見越して事前に手当てしていくのが望ましい資金であると考えることができます。

具体的には、賞与資金が必要な6月と12月に一時的な借り入れを起こして手元資金を厚くしておき、売上が回収できたら返済するなどです。

■資金繰り表をつけてみませんか?

このような季節資金や運転資金など現金の動きは、未来についてある程度は予測できます。それをまとめた表が資金繰り表と呼ばれるもので、入金と支出の予定を一覧にして現金の不足に陥らないようにするためのものです。

本当に月次レベルの簡単なものでいいのでぜひこの資金繰り表をつけてみてください。それも大学ノートでいいので、
  • 現在の現金残高
  • 入金(売上の入金、借り入れの実施など)
  • 出金(仕入れ代金、給料、家賃、税金、返済、今回のテーマの季節資金など)
をまとめて書いてみてください。何処かの月で現金が足りなくなることが把握できれば、そこで足りなくならないように手当をすればよいのです。(数カ月先に資金ショートすると見えていれば対処方法も考えられます)

法務・支援施策
2014年12月18日

共益権 | 自分が権利を行使することは皆のためになるのです(ゼロサムゲームではないのです)

共益権
共益権とは、株式会社の株主の権利として権利を行使した結果、株主全体の利益となるような権利のことを言います。

『共』通の利『益』となる『権』利、だから共益権といったイメージです。

さて、自らの権利を行使することが、共通の利益となる権利とはなんでしょうか?そういった者があると思いますか?それとも、「そんなことあるわけないよ。誰かの利益は誰かの損失だよ」といったゼロサムゲームの方が正しく思えますか?

と、答えの出にくいお話は止めにして、共益権の話に戻ります。
  • 具体例
共益権とは、権利を行使することが株主全体の利益につながるという事です。このことから、議決権を行使する事や、株主提案を行う権利が該当するとされています。

企業が上手く経営されれば株主は結果として株式の値上がり益からキャピタルゲインを得たり、配当金でのインカムゲインを得られるといった発想なのですね。

なんだかアクティビストみたいな考え方であるという事もできますね。

■共益権とコーポレートガバナンス

共益権は株主全体の利益を守る仕組みです。その意味で(共益)権なのです。例えば、会社が正しく運営されていなければ株主の利益が守られません。そのため、株主がコーポレートガバナンスを改善させるための監視の目となりえるのです。

株主は議決権を持っていますので、役員に対して解任するとか次選任しないといったあ圧力をかけることができます。

この事が、会社の役員へ対して緊張感を与えることにつながるのです。また、近年では株主によるガバナンス機能の発揮が注目されています。

不祥事があった際、自浄作用が働かないような組織の場合は株主から圧力をかけて運営を正常化させることに繋がるのです。

また、株主には役員へ対して株主代表訴訟というムチを振るってしっかりと経営してもらうと言ったこともおこわれます。会社が誰のものかという議論は難しい議論になりますが、会社の損失は株主の損失ですので、役員の不味い意思決定で会社が損失を受けたら株主代表訴訟を起こして、弁償させることも可能なのです。

関連用語
自益権
組織論
2014年9月19日

企業風土 | 企業にも固有の風土が育ってくるのです

企業風土
企業風土とは、企業を構成しているメンバーが共有する、その企業特有の考え方や価値観などの環境のことを言います。と、なんだか難しく書いてしまいましたが平たく言うといわゆる社風の事です。

企業に長く勤務していると「あれがウチの会社の社風だからね…」といった言葉を聞くことがあるかもしれません。

別に言葉で定義されているわけではないのですが、その企業の従業員がなんとなく同じような価値基準に基づいて行動をする。その場合の価値基準が企業風土であるといったイメージです。

この企業風土が存在していることによって同僚同士のコミュニケーションがとりやすくなるといった効果が期待できます。

「うちの会社の社員だったら、こう言う風に判断するよな…」といった暗黙の了解があれば、その為に必要なコミュニケーションにかかるコストが節約できますからね。

■企業風土の良い面と悪い面

企業風土の良い面としては、皆が同じような考え方を持つことでチームワークが良くなります。価値観が似てくるため判断も早くなりますし、協力もしやすくなってきます。(とはいえ、これは協力するという望ましい企業風土が根付いている場合に限りますが)

ただ、一般的に好ましくない企業風土だとしても、暗黙知が共有化されることで意思決定は早くなり、業務効率は高まります。

ただし、企業風土が強まってくると「いや、それはうちはこうやって居るんだよ」といったふうに新しい考え方を受け入れない雰囲気ができてくるケースもあります。

いわゆる硬直化してくるというやつです。世の中の外部環境はドンドン変わっていくのが普通ですから、外部環境の変化についていくことが難しくなって来てしまうのです。

また、新しく入ったメンバーが企業風土への同調を強いられるという面が出てきます。そのため、企業風土が一般的に好ましければまだいいですが、昭和のパワハラ上等とか、不合理な年長者は偉い的な暗黒のノリが残っていると人材採用にも大いに支障をきたしてしまいます。

このように、企業風土は大切ですが、時代に合わせて経営理念やビジョンに基づいて定期的に再評価して望ましい次代にあった企業風土の構築を促す制度設計を行うことが大切なのです。

関連用語
経営
2014年8月18日

機能資本 | 企業経営に影響力を行使できるような出資のことです

機能資本

機能資本とは、企業経営に直接影響力を行使できる株式や出資のことです。
この記事では、機能資本と無機能資本の違いや、所有と経営の分離が起きる理由を解説します。


<簡単な説明>

機能資本とは、経営の関与に結びついている資本、つまり、経営に関与している出資のことを言います。

イメージとしては、モノを言う株主(アクティビスト)と言った感じで、経営に関与していきたいと考えているような出資者の事ですね。

でも「あれ、株式会社では通常は株を買えば議決権が行使できるよね?だったら基本的にはすべて機能資本では?」という考え方もあると思います。

しかし、大きな企業では所有と経営の分離という状況が発生しがちで、一株主は何ら経営に関与することができないという事があります。

例えばあなたが「経営に関与していきたいよ」と考えてソニーやトヨタ、イオン、といった大企業の株を取得したとします。

でも、あなたの議決権を行使したところで、取締役の選任に影響を与えられるわけではないですし、実質的には意味を持たないですよね?そのため、実質的には無機能資本という分類になるのです。(もちろんあなたは大富豪で莫大な数の株式を集められるならばこの限りではありませんが。)

逆に、大株主の持っている株式は同じ株式というモノでありながら数が多いという事で機能資本になります。こちらは会社の経営に影響力を行使できるわけですからね。

■機能資本と経営支配権の関係

経営支配権とは、企業の意思決定に決定的な影響を与え得る権限のことをいいます。この経営支配権を得るためには株式の保有による議決権比率や株主間での契約など自身の持つ株式で影響力を与える構図をどう作るかにかかってきます。

今回のテーマである機能資本は、支配権を有する株主や株主グループが保有する資本を指します。一般的には議決権の過半数(50%超)または特別決議要件(3分の2以上)を確保すれば株主の考えで取締役を専任したりできますので、強固な支配力を持ちます。

また、仮に持株比率が低くても株主構成によっては高い影響力を発揮するケースもあります。例えば、経営に関与するつもりが無い人が持っている株式の比率が大きければ、その人達の影響力を無視して、実質的に影響力を行使することができたりするのです。

また、前述の通り、少数の株式しか持っていない株主は経営に関与することが基本的にはできませんので、株主が広く分散していれば比較的少しの株式でも機能資本となりえます。

例えば、創業者一族があまり多くの株式を持っていないケースであっても、社内持株会や取引先が安定株主になっていれば、実質的に会社を支配するつもりで株式を保有しているのが創業者一族だけだったりするため、その企業を支配することができると言ったことが起こりうるのです。

イメージで記載するならば、会社を動かす権利は「経営のハンドル」のようなものです。

少しだけ株を持っていても、そのハンドルには手が届きません。でも、たくさん株を持っていると、ハンドルをしっかり握って方向を決められます。

また、その株式の数が過半数でなくても、自分に基本的に賛成している人と合わせて過半数を保有していれば「経営のハンドル」を握ることは可能です。

■他人に機能資本を握らせるな

と、ココまでは概念論でしたが、企業を創業したい方が出資を受けられそうですと嬉しそうにお話をしてくれることがあります。

確かに出資を受ければ返さなくて良いお金が手に入り、企業の運営は安定しそうですが決して出資者に機能資本となるような量をわたしてはならないと考えます。

出資は『返さなくて良い』お金ではなく『返せない』お金なのです。基本的に経営者の意思だけでは出資者と手を切ることができませんし、経営者と出資者では制度上は出資者のほうが立場が上になります。(会社は株主のもので、経営者は代理で経営しているに過ぎない)

そのため、機能資本となりうるような量の株式を単一の主体へ渡すべきではありません。特に単一の株主に特別決議要件の3分の2以上の株式、また過半数(50%超)の株式を渡すというのは、出資をしてもらう行為ではなく、会社を売り渡すのと同義だと考える必要があります。

■会社が大きくなった時に何が起こるか

経営者の献身的な努力によって会社が大きくなり、いよいよ「これから夢を実現できるかな」となった時に別の『プロ』経営者と交換されても文句を言えなくなってしまいます。

別の『プロ』経営者を送り込んでくる口実は、「経営基盤の強化」とか「ガバナンス向上」などと相場が決まっています。仮に抵抗が成功して一気に経営者交代までいかなくとも、株主から取締役の過半数を占める取締役を送り込まれたりと、機能資本を持っている側が経営権を握るやり方はいくらでもあります。

そのため、出資を受ける際は出資者の意向(経営に関与するつもりがあるのかどうか)を慎重に検討し、可能ならば自分が少なくとも過半数の株式を保有する、それが難しければ、複数の出資者が牽制し合い、結果として自分が会社を支配できるような資本構成を志向することが重要です。

なお、とても革新的なベンチャー的なビジネスの場合はこの考え通りではないかもしれませんが、多くの事業はそこまで革新性を重要な要素としていませんので頭の片隅においていただけると嬉しいです。

経営
2014年7月30日

MOT | 技術を経営に活かせればとても強い競争力を確保できるはずです

MOT
MOTとは日本語で記すと技術経営の事で、マネジメントオブテクノロジー(Management of Technology)の頭文字をとったものです。

技術経営なので「技術者が経営するのかな?」とか「さかさまにして経営の技術、つまり経営の技法の事かな?」といった風に考える方もいるかもしれませんね。でもMOTはもっと素直に捉えて、『技術力に立脚しているような事業の経営管理』といった意味になります。

つまり、技術力に立脚している事業の経営管理ですから、どのような技術が将来有望であるかを見極める必要がありますし、その技術をどのように事業に結び付けていくかを考えていく必要があります。(技術を事業化するまでには、死の谷ダーウィンの海魔の川といったRPGみたいな名前の付いた関門を越えていく必要があるのです。)
  • 学問分野の呼び方にもなっています
「そのような意思決定を適切に行うためには、経営管理のみならず技術にも精通した人材を育てないといけないよね」という発想から、MOTという学問分野も生まれています。

このMOTは技術分野のMBAなどと説明されることもあります。

■MOTが活用される場面

MOTという英語3文字の用語はなんだか難しめに感じるかも知れませんが、割と身近な分野に関わっています。

例えば、研究開発の事業化のプロセスなどです。例えば新しいスマートフォンを作る際に、技術だけが先行していても革新的すぎで、かつ、高すぎて買いにくいと言ったことが起こりがちです。

そのような場合、MOTの考え方では技術をどうやって役立てるかを考えます。ひいては、技術の価値をどうやってお客様に届けて、適正な利潤を確保するかが問題となります。

知的財産権の管理や資金調達など会社が技術を消費者に届けるためにやるべきことはたくさんあります。またオープンイノベーション(オープン戦略)の推進などにもMOTの知見が使われたりします。

このように優れた技術の種を、みんなが使えるようにして皆が幸せになれるような事が重要だったりするのですね。


経済学
2013年11月12日

基礎的消費 | 最低限を生活を営む上で必要な基本的な消費です

基礎的消費
基礎的消費とは、最低限度の生活を営む上で通常は必要となる消費のことを言います。英語ではbase consumptionと表記されます。

「最低限度の生活を営むための消費?」と思われた方もいるかもしれませんね。というか、最低限度の生活を営むための消費ですから、具体例を挙げていった方が分かりやすいかと思います。

例えば、生活していくうえで最低限必要な食品(食べないと生きていけません)、水道光熱費(水道や電気のない家には住みたくないですよね?)、住居費(家賃とかを払わないと家から追い出されます)、被服費(裸で暮らすわけにはいきませんからね)といったモノです。

簡単に言うと、生きていくうえで通常は必ず消費する必要があるモノのことを言います。
 
そして、このような消費は、たとえ所得がゼロであっても、消費が行われるのです。企業でいうところの固定費に近い考え方ですね。

■基礎的消費は変動します

生活必需品という言葉から、これに分類される消費は普遍的であるような気がします。例えば、上で述べていた食品や水道光熱費、住居費、被服費は基礎的消費であり続けたし、これからもあり続けると考えられますよね。

でも、冷静に考えてみれば水道光熱費、特に電気の消費はどうでしょうか?電気を利用できない時代が長くありましたよね。そのため、電気が基礎的消費でない時代がずっと続いていたのです。

また、文化的にも基礎的消費が規定される場合があります。例えば、外出するときに必ず私達は靴を履いています。そのため、靴の費用は我々には基礎的消費となります。

しかし、靴をはかない文化圏の人たちがいればその人達にとって靴は基礎的消費にはならないのです。

これと同じように、インターネットや通信は今や社会参加に必要不可欠と見られています。その結果、基礎的消費に近い扱いを受けているのです。

このように、基礎的消費は動的に動いていく概念なのですね。

関連用語
選択的消費
マーケティング
2013年11月7日

記号的消費 | 記号論とかボードリヤールとか言うとちょっと賢くなった感じがします

記号的消費
記号的消費とは、商品やサービスを消費する際に、そのもの自体の実用的価値ではなく、社会的な意味付け『記号』に価値を見出して消費を行う事を言います。

例えば、あなたが車を購入しようと考えているとします。その際に、「車の価値は安全に目的地にたどり着けることだよね。」と考えていたとすれば、別に中古であってもデザインが微妙であっても、かまわないと考えるはずです。

このような場合、商品の実用的な価値に目を向けていると考えることができますよね。

一方、「○○というメーカーのクルマは、職人が…で、そもそも19世紀に…、また、デザインも…」といった風に個人の趣味や嗜好、こだわりなどに合致することに価値を感じて購入するような場合もあります。

こういった『こだわった』車は、しばしば通常の車よりも高額となりますが、商品の実用的な価値に大きな差異はあるでしょうか?

言い換えると、『安全に目的地に着く』という実用的な価値が、追加に支払う価格に見合うほど向上しているでしょうか?一般的にはそんなことはないですよね?

しかし、このような社会的な『記号』があるような商品は高く販売されます。そして、このように、『記号』に着目した消費を記号的消費と言います。

これに対し、消費の意味にこだわった消費行動を意味的消費といいます。(エコに価値を感じて多少高くても燃費の良い車を買うなどの消費行動のイメージです)

■現代における記号的消費

現代においては、記号的消費はより身近になっています。というよりもSNSを通じた消費は味ではなく、「流行り物」、「オシャレ」、等といった記号的な価値を求めていると整理すると企業側の売り方も変わって来ます。

ハイブランドのバッグなども、実用的価値はもちろんのことブランドという記号が重要となってきます。

その意味で、いくら知名度があったとしても一般的な価値観で眉をひそめられかねないような分離集団となりがちな人たちを広告塔にしてしまうと、記号的価値が損なわれると言ったマイナス面も出てきます。

■中小・小規模事業者の勝ち筋

中小・小規模事業者においては一般的に供給量が僅少になるといったマイナス面を抱えています。しかし、記号的消費の文脈から整理するとその希少性が記号となり得ます。

どのような記号が自社の経営資源で実現できるかを検討し、うまく記号をSNSで発信できれば通常よりも高価な価格設定でも十分に売ることができるのです。その意味で、差別化が行いやすい時代になりつつあるということができますね。

■記号的消費とマーケティング戦略の関係

視点 従来の消費 記号的価値に基づく消費 マーケティングの観点
購買動機 商品の性能・機能・価格 商品の象徴性や「持っていることの意味」 広告では「性能」だけでなく「体験・物語」を強調する
商品例 日用品、生活必需品 高級ブランド品、SNS映えする飲食物、希少な一点もの 機能ではなく「記号づけ」で差別化
価格設定 原価+利益 希少性や社会的評価により高額化が可能(むしろ高いほうがいいまである:ヴェブレン効果 小規模事業者は「希少性」が有効
消費者 コストパフォーマンス重視 自己表現・ステータス重視 ターゲット層ごとに訴求方法を変える
SNSとの相性 便利さ・コスパで拡散 写真・動画映えで「象徴性」が拡散 SNS戦略は記号的消費を意識して設計する

関連用語
スノッブ効果
組織論
2013年8月19日

キャリアプラン | 人任せにすることができない時代がやってきたようです

キャリアプラン_001
キャリアプランとは、自らが主体的にどのような仕事をし ていきたいかを主体的に決めて取り組んでいくことをいいます。英語ではcareer planと表記されます。

さて、どうしてわざわざ計画などたてる必要があるのでしょうか?「そうやって上の世代の人たちはいうけれども、本当にみんな自分のキャリアプランなんか考えていたの?」といった疑問も生まれるかもしれませんね。

というのは、このようなことが言われ出す以前の人たちでも、立派なキャリアを気づいたヒトがたくさんいますからね。

でも、近年になってわざわざこのようなことが言われ出したのには訳があるのです。
  • 終身雇用の崩壊
以前であれば、終身雇用を前提としていた会社が多かったため、そういった会社についてはその人のキャリアについて考えてくれました。

というのは、「雇い続けなきゃならないんだから、しっかりと成長してもらわないと困るよ…」といった発想があったからです。

そのため、ジョブローテーションといった風に、将来管理職になるために様々な職種を経験してもらったりと、いわば会社が代わりにキャリアプランを考えてくれていたのです。

しかし、残念なことに時代は『雇用は流動化する』といった風に変わってしまい、自分のことは自分で考える必要が出てきたのです。
  • 具体的になにを考えるの?
さて、「キャリアプランを考えましょう」とだけ言われても具体的にはなにを考えたらいいのか、わかりませんよね?

自分のキャリアについて計画を立てると言うことですから、どんな仕事をして、どんな人生を送るかといった結構本質的なことまで考える必要が出てきます。

このとき、「自分はなにができて、なにをしたいのか?」という視点と、「会社や社会はなにを求めているのか?」という外部の視点に分けて考えてみるといいと思います。

関連用語
キャリア開発
マーケティング
2013年8月9日

キャズム | 新製品が普及するためには大きく深い溝を超える必要があるのです!

キャズム_001
キャズムとは、新しい製品やサービスがイノベーターアーリーアダプターに採用された後に存在する深く大きな溝の事を言います。そして、この深く大きな溝(キャズム)を乗り越えて初めて一般層に普及していくのです。英語ではchasmと表記されます。

これは、新し物好きの人たちに売り込む方法と、一般層に売り込む方法には大きな違いが存在していて、その大きな違いを乗り越えるためには、非常に大きな壁や溝があるといった事を比喩的に表した言葉です。
  • 初期採用者が採用したら普及に弾みが付きます
イノベーターは新しい製品やサービスが『新しい』といった点に価値を置きます。また、アーリーアダプターは『新しさと有用性』に価値を置きます。

そして、これらの層に浸透した段階で(理論上では大体普及率16%)を超えた段階で、普及に弾みがつくとされています。(これをクリティカルマスと言います。)
  • と思っていた頃が私にもありました
と、「だったらイノベーターとアーリーアダプター向けにどんどん売り込んでいけばいいんだよね?」といった風に新規採用者層に向けて売り込む努力をしていき、結果として新規採用者層に浸透したとします。

ここまで頑張れば一安心のはずですよね?でも現実には、なかなか普及に弾みがつかないケースも存在しています。

例えば、本当に革新的な技術があったとします。この技術に基づく製品を導入すれば、生活が一変するような力を持っているようなものです。

このような技術は、初期採用者にとっては、上手く使いこなせれば、他者と大きな差別化が狙えるため、積極的に採用されていきます。

しかし、これら新規採用者層の後に採用していくであろう、アーリーマジョリティ層にとっては、他者との差別化ではなく、自分が便利に使えることが目的となっています。

そのため、「この製品を採用すれば、他者と一気に差別化できますよ!」などと言ってもこの層には刺さらないのです。

そういったアプローチではなく、「この製品はあなたの日常を便利にしますよ。」といった風に言って行かないといけないのです。

関連用語
死の谷
経営
2013年7月27日

金庫株 | 自社株を買っても金庫に入れておくくらいしか使い道がない件

金庫株_001
金庫株とは、企業が持っている自社の株式の事を言います。

手許にある株式なので、「金庫にしまっているんでしょ?」という連想で金庫株と呼ばれています。(今は株券は発行しないので、金庫にしまっておくということは無いのですが、そのような連想なのです。)

そして、この金庫株は自分で議決権を行使することはできないため、通常の株式と異なりどれだけ保有していてもあまり意味をなしません。

そのため、単純に金庫にしまっておくぐらいしか使い道がないといった意味でも『金庫株』と呼ばれています。
  • どうして金庫株を持つの?
さて、意味のない資産です。と書きましたが、それならどうしてワザワザ企業は自社の株式を取得するのでしょうか?

この金庫株の保有(自社株の取得)には、自社株の株価の上昇といった効果があります。株式を発行する場合、調達した資金を効率的に運用できなければ、一株当たりの利益は薄まります。(これを希薄化と言います)

そして、自社の株式を余剰資金で購入する場合、希薄化の逆の現象が発生するわけですね。

その場合、一株当たりの価値が高まり、その結果、株価が上昇するといった効果が得られるのです。

■金庫株を持つことによって生じる利点

この、金庫株には配当を支払う必要がないため、企業としては余計な資金流出を防ぐこともできます。あまりこの観点は強調されたりはしませんが、一応こんな効果もあります。

また、金庫株は議決権を持たないため、結果として発行済株式数の分母が減少し、他の株主の議決権割合が相対的に上昇するという効果もあります。

この効果は株式の希薄化の逆が生じると言い換えてもいいかもしれませんね。ただ、これらの効果は株式を償却してしまっても同じ効果が生じますので厳密には「金庫株の利点」とはいいにくいことに注意です。

この金庫株は、将来の戦略的な活用の選択肢を提供するといったところが利点の本質になると考えられます。

例えば、将来的にこの金庫株を再放出することで、ストックオプションやM&Aの対価として活用されるケースが該当します。

ただし、金庫株がいつまでも使われないまま残ると、「使い道のない株」というネガティブな印象を与えることもあるため、活用方針の明確化が求められます。

いっそのこと株式消却してしまうといった判断もありでしょう。

店舗管理
2013年7月15日

キーテナント | お客を呼べるテナントが一番大切なテナントです

キーテナント_001
キーテナントとは、商業施設内で顧客を吸引するための核となっているテナントのことを言います。英語ではkey tenantと表記します。(和製英語です。)

例えば、大規模ショッピングセンターなどにおいて、知名度の高いホームセンターが出店していて、「○△というショッピングセンターの○○というホームセンターに行こう」といった形の行動を顧客にとらせるようなテナントをキーテナントと言います。

この、『○○というホームセンター』に来た顧客の一定の割合は、ショッピングセンター内の他の店舗を見て回ると考えられます。

つまり、『○○というホームセンター』が集客の役割を果たしたと言えるのですね。

このように、集客の役割を果たすようなテナントをキーテナントというのです。

■キーテナントはどんな基準で選定するか

どんなに大きなショッピングセンターであってもすべてのお店が平等に大切というわけではありません。(もちろん建前では出店者様と言われると思いますが)

お店の中でも特にお客様を呼ぶ力の大きなお店があり、そのようなお店をショッピングセンターはキーテナントとして選定するのです。

例えば、大型スーパー(生鮮三品に強みがあるとか明確な強みがあると望ましいです)や電気屋さん、映画館、大型書店などです。最近ではジム(フィットネスクラブ)なんかもキーテナントとなり得ます。

こういったお店に行きたいと考えるお客様がショッピングセンターを訪れる機会が増えますので、いわゆるキーテナントとされるのですね。

こういったキーテナントは、集客力があり、継続的に運営され、他のお店とのシナジーを持つなどのポイントで選定されます。どんなに集客力があっても継続性がなかったり、他のお店とマッチしない場合はキーテナントとして誘致することが難しくなったりします。

ショッピングセンターにもいわゆる客層があり、ショッピングセンターのターゲットとしている客層と合わないお客様を集めても、回遊があまり見込めないためシナジーが薄くなるなどの事情も考慮されるのですね。

関連用語
組織論
2013年6月30日

業績連動型賞与 | 業績好調な時にこういった制度を導入してリスクを回避するのです

業績連動型賞与_001
業績連動型賞与とは、組織の業績に合わせて賞与の額を変動させようとするアプローチの事です。業績に合わせて変動するので、業績連動型と言われてるのですね。

さて、賞与(ボーナスの事ですね)は【基本給×○か月分】という形で一般的には支給されます。

このような形をとった場合に、「じゃあウチの会社の賞与は【基本給×2か月分】ね」と言われたときに、ある意味固定的な費用となります。(業績が良くても悪くても、基本給20万円の人だったら40万円を支払うわけですからね。)
さて、業績連動型賞与という形が採られた場合、賞与はどのような考え方になるでしょうか?

仮に支払総額が変わらなかった場合を考えてみたいと思います。

「どっちにしても払う額が同じなら変わらないんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれませんが、経営的には大きな違いが出てきます。

これは、賞与分が変動費化できるという点です。売上の水準に関係なく一定額が発生する固定的な賞与と異なり、業績が悪くなったら一定額を下げることはできますし、業績が良くなったら増額することもできます。

このことから、企業経営のリスクを減らすことができるんですね。(例年の7割しか売上が上がっていない時に、7割の賞与でいいとなればリスクは小さいですよね。)
  • モチベーションアップの効果
また、モチベーション面の効果も見逃せません。

報酬が完全に固定の状況では、「どうせ頑張っても、報酬は増えずに仕事が増えるだけだしね…」なんて考える人も、「頑張れば報酬が増えるんだよね。」となったらモチベーションが上がるかもしれません。

(『動機づけ要因・衛生要因』という理論では、報酬額は衛生要因に位置付けられるため、報酬アップが一概にモチベーションアップに結びつかないと言われることもあります。)

■不況期または業績不振時における業績連動型賞与の課題

定義から、業績が上がっている際は賞与がたくさんもらえるのはわかっていただけたと思います。しかし逆に、不況期や業績悪化時期には賞与が減少します。

綺麗事を廃して本音ベースでいえば、賞与と連動した住宅ローン(ボーナス払いなど)や生活の原資に(もっと言えば月々の給料では足りない生活費の穴埋めに)使っている従業員が非常に多くいます。

このため、生活設計をしにくくなるといったことが発生します。特に、金融などの景気に敏感な業種などは業績連動型賞与が激しく増減する事となってしまいがちです。

また、不況期や業績不振の際にはもっと従業員にやる気を出して頑張ってもらわなければならない筈ですが、報酬水準は下がるけど頑張ってくださいと言ったメッセージを発する事となりかねません。

これは、経済全体が不況であれば仕方ないとあきらめも付くかも知れませんが、自社だけが業績不振になった場合は、退職の増加を招きかねません。(そしてそういったときに退職するのは、いわゆる会社を支えるエースであることが多いです。)

これらのことから、賞与の「最低補償額」などを設けて、重要員の安心感をしっかりと確保することが求められます。

業績連動型賞与を導入することにより、多少のコスト削減や人件費の変動費化(というよりも準変動費化)といった副産物が得られるかも知れませんが、あくまで目的は公正な報酬設計を行い組織全体のモチベーションアップである事を抑えておく必要がありますね。

組織論
2013年6月25日

ギャップイヤー | 見聞を広げて学問へ問題意識を持って取り組もうという制度

ギャップイヤー_001
ギャップイヤーとは、大学の入学資格を得た学生が、見分を広げるために、入学前に入学猶予の権利を与えられるといった制度です。英語ではgapyearと表記します。

この入学猶予の権利を利用して、ボランティア活動を行ったり、外国に行ったりして、自らの見聞を広げるのですね。

さて、ギャップイヤー制度ですが、上手く運用できれば非常に有益な制度であると考えることができます。

というのは、大学で学ぶ前に社会をいろいろ見ることによって、大学で学ぶ理由や意思も育てられるでしょうし、「自分が何をしたいのか」を見つめなおす機会にもなると考えられるからです。問題意識や目的意識を持って学ぶとやはり、学習の効率は上がると考えられますしね。

但し、我が国ではあまりこのギャップイヤー制度は広がってはいません。というか、現在でも休学等を利用すれば似たような事は出来るのです。

しかし、そのような疑似ギャップイヤーを行った結果はあんまり芳しくありません。残念なことに就職活動などの際に「見分を広げ、問題意識を持って学問に取り組んだ君を評価するよ」といったポジティブな反応ではなく、ネガティブな反応を投げかけられることが多いのが現状なのです。 

■ギャップイヤーと人事の視点

ギャップイヤーを遊んでいた時間と見る傾向があるのが我が国ですが、異文化理解や自主性の発揮、リーダーシップ構築などの時間と見る傾向が外国にはあります。

どちらが優れているかという問題ではないのですが、自主的にリーダーシップを発揮する人材がほしいと願っているならば、一概にギャップイヤーを遊んでいた時間と捉えてしまうのは違うと考えられます。

いずれにしても、ギャップイヤー制度を活用した場合得られるであろう特性を企業として求めるのであれば、採用時点でマイナス評価をすることは避けなければなりません。

そうでなければ、「言っていることとやっていることが違う」という状態になってしまいますので。

また、ギャップイヤー制度を活用した人材を採用した後にも、そのような多様な経験を積んだ人間を尊重するという組織文化を涵養することも重要になります。

組織論
2013年6月24日

企業内大学 | 企業にとって、優秀な人材を自ら育てようという発想が求められています

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企業内大学とは、企業が行う研修制度の一環であり、あたかも大学のように従業員自ら選択し、教育訓練を受けるいったモノを言います。コーポレートユニバーシティなどとも呼ばれることがあります。

企業が、自社の従業員のために運営しているので、通常の大学と比較して実践的な内容が多くなります。

イメージとしては業務に直結する専門知識の習得などに重点を置いて教育訓練がなされるという事ですね。

この、業務と直結する教育訓練をおこなうために、関係部署の従業員が講師を務めたり、企業の経営管理層が自社の戦略や経営理念について語ったりします。

このように、実践的な内容を、自らが選択して受講していくといった所で企業内大学と言われているのですね。

但しこの企業内大学は正規の学校教育とは異なる為、「企業内大学」と言っていますが大学ではないので、卒業したからと言って学位は与えられません。

■人材育成とキャリア形成のための企業内大学

企業内大学は、従業員の能力開発と企業の戦略を結びつけるように設計されます。そのため一般的な大学のように教養科目を学ぶような機会の提供ではなく、マーケティング講座や生産管理講座などより実務寄りのカリキュラムとなります。

さらに、企業の戦略と結びつくような設計ですから、DXやAI等の新たな技術に企業として取り組んでいくという方針ならばその方向の講座が多く開講されたりします。

働く人からすれば自身のキャリア開発につながるわけですから、単なる研修活動ではなく自律的に受講するモチベーションにつながってきます。

企業内大学で学ぶことで自身のキャリアにつながるならば、長く勤務するモチベーションにもつながるわけで、単なる人材育成だけでなく学び続けることを良しとする前向きな組織文化の醸成や、人材を引き付ける魅力にもなるわけですね。

関連用語
off-JT
組織論
2013年6月21日

キャリア開発 | 自らのキャリアに責任を持って取り組もうという考え方です

キャリア開発_001
キャリア開発とは、個人が自分自身のキャリアを主体的に開発するために、自らスキルや能力を身に着けようとすることを言います。

かつての終身雇用の元では会社の思惑通りにキャリアを伸ばしていけば十分でした。また、ある意味では、会社の思惑通りのキャリアを積んでいくことが望まれていて、自分からキャリアを築き上げていこうという考え方はどちらかというと、会社から嫌がられる考え方でした。

しかし、雇用が流動化してきた今日では、個人が自らの責任でキャリアを築き上げていくといった発想が必要となってきています。

その為、キャリア開発という概念が誕生してきており、会社主導でキャリア開発が行われる場合でも、社内公募されているプロジェクトに自ら応募するといった形で自らのキャリア開発に関与できるようになってきています。
  • 会社にとって都合のいい人材とは
なぜこのような社内公募制といった事が行われるのでしょうか?「会社の言うとおり働いている方が、忠誠心も示せるしいいんじゃないの?」と考える人もいるかもしれませんね。

でも、会社側は「会社は別に、忠誠心競争を行う場ではないので、自らやる気を持って働いてもらった方が良いよ…だって成果を出してナンボでしょ?」と考えるようになってきているのです。

例えば、自分が「営業管理の仕組み作りに関与したい」といって始めた人と、「会社の命令で仕方なく営業管理の仕組みを作っています」といった人では一般的に言って、前者の方がやる気が出そうですよね?

そして、やる気があるという事はそういった人の方が高いパフォーマンスを発揮する可能性が高いというわけです。

このようなことを言い換えると、自らキャリア開発を行って、会社にとって雇用し続ける価値のある能力(エンプロイアビリティ)のある人を雇用していた方が、忠誠心をこじらせて「会社の言う事は何でも聞きます!」という思考停止に陥って、会社にぶら下がる人を雇用しているよりも、いいと考えているという事ですね。 

会社も、温情で「社員自らキャリア開発をしてください」と言っているわけではなく、その方が経済的に有利だからそういう風に言っているわけなんですね。

関連用語
キャリアプラン
経済学
2013年6月4日

協調介入

協調介入_001
協調介入とは、複数の国の通貨当局が協調して為替介入を実施することを言います。

イメージとしては日本の通貨当局とアメリカの通貨当局、欧州の通貨当局が一緒になって、共通の目的である為替相場の安定を図るといった行為となります。

協調介入を行う場合、どこかの国の通貨当局が単独で為替介入を行うのに比べ、大規模に行う事ができます。また、協調して介入しているという大義名分があるため、通貨当局が為替介入に全力を尽くす事ができます。(日本などの大国が介入する場合こちらの方が要素としては、大きいかもしれません。)

このような理由の為、為替相場を動かしたい方向へ強力に誘導することができるのです。

さて、「そんな一つの目的に向かって、各国の通貨当局が一致団結した行動を取る事なんてあるの?協調介入なんて単なる理念でしょ?」と考える人もいるかもしれませんね。

しかし、この協調介入は実際に行われたことがあり、結果として非常に大きなインパクトを私達に与えたことがあるのです。

例えば、1985年のプラザ合意で「ドル買いを各国が行おう」といった合意がなされ、協調介入が行われたという実績があります。

■協調介入が行われる理由とその効果

協調介入は世界各国の通貨バランスが崩れそうなときに行われます。それは、単独介入では効果が限定的な場合があるからです。

外国為替は取引規模が極めて大きくどのような国であっても長期的に相場を完全にコントロールすることはできないからです。

そのため、単独介入であれば短期的な為替変動を起こして市場の加熱に冷水を浴びせることは可能ですが、投機筋の動きを完全に抑え込むことができない場合があります。

しかし、複数の国々が話し合って協調介入を行えば為替レートを一気に望む方向に動かすことが可能になってきます。

何と言っても主要国が一斉に為替介入を同じ方向に行うわけですし、その為替介入の方向は短期的な投機とは異なる動機で行われるので投機筋のポジションなど一気に吹き飛ばすことが可能なのです。そしてこのような極めて強力な動きですから、市場の混乱も一気に抑えることが可能なのです。

とはいえ、協調して介入するほど各国の利害が一致することは稀ですので、基本的には市場の混乱を抑えるために行われる事が多くなります。
マーケティング
2013年5月25日

均一小売制(ワンプライスショップ)

均一小売制_001
均一小売制とは、主に最寄品の販売を行う小売業で採られる価格政策で、一種類ないし数種類の価格で販売をするというものです。ワンプライスショップともいいます。

例えば、100円均一のお店とか、1,000円均一のお店とかがこの均一小売性(ワンプライスショップ)に該当します。最近では3coinsといった300円均一もあったりします。

このようなお店は消費者にとっては分かりやすいし、一定の価格であるという安心感があります。

逆に小売店の側にとっては、細かく値段を付ける手間が省けますし、値段を均一に設定する事によって需要を喚起する事もできます。

■どうやって利益を上げているの?

さて、この均一小売制(ワンプライスショップ)は均一価格を採っているわけですが、すべての商品で同一の粗利益を確保しているのでしょうか?

逆に言うとお店で売っている、カップめんも、飲み物も、収納用品も掃除用品もすべて同じ原価率で仕入れているのでしょうか?

実は、そんなことはなく、例えば飲み物で大きく利幅を確保し、収納用品はほとんど儲かっていないといった事が起こり得るのです。

それでも、全体として一定の水準の利幅を確保しようという発想の小売業なのですね。

■均一小売制の歴史と海外事例

素朴な疑問ですが、100円ショップはいつからあるの?と思ったことはありませんか。なんとなく、昔からあったと思うかもしれませんが、均一小売制(ワンプライスショップ)は1980年代にダイソーが、1990年代にキャンドゥ、セリアなどが台頭してきたように比較的新しい業態です。

この他にも、100円均一での商売というのはスーパーの催事でされていたりしました。

また、海外でも米国の「Dollar Tree」などの1ドルショップなんというのもあります。これらの均一価格の小売業は、低価格帯の購買層をターゲットに市場を拡大しています。

値段が一緒だと「安心して買える」と思えますので、ある程度世界共通なんですね。そのため、日本の100円ショップが海外進出を果たした事例も存在しています。

■均一小売制(ワンプライスショップ)と消費者心理(なぜ人気が続くのか?)

ではなぜ、「全部同じ値段」だと安心してお買い物ができるのでしょうか?

ついつい「全部100円!」と言われると、安心してたくさん買ってしまいますよね。これは消費者のアンカリング効果(一定の価格が基準として意識される)や単純化によって比較検討する心理的なコスト削減を利用した考え方です。

価格の比較検討が不要となり「買いやすさ」が心理的バリアを下げるため、平均購買点数が増える傾向にあります。

例えば、お値段を見て冷静になり、「ほしいけど無理に買わなくってもいいか」と思ったことがありませんか?でも均一小売制の場合は、値段を見なくても例えば、100円とわかっているので、冷静になる機会が無いのというところがポイントです。

また「お得感」や「宝探し感覚」も購買動機を刺激します。たとえばお祭りのくじ引きでも実際にはあんまりいいものが当たらないかもしれませんが、「全部同じ値段」なので、ワクワク感のほうがハズレを引いた損した気持ちを克服できたりしますよね。

このように100円ショップでも「なにかいいものがあるかも」とか「ハズレってあんまりないかも」といった気持ちが働き、結果として思ったより多くの商品を買ってしまう心理があるのです。

■デジタル時代の均一小売制

近年ではデジタル技術を活用して効率的かつ効果的な管理を行うことが均一小売制のお店でも行われています。

大手の100円ショップではECサイトとの連携を深めるオムニチャネル化を進めていますし、AI等を活用した売上データ分析を通じて、商品の選定なども行われています。

こうしたデータ活用によって品揃えも最適化されてきており、単に安いだけでなく、データに基づいたマーケティングが行われているのですね。

店舗管理
2013年5月12日

業態 | 売り方で分類した考え方です

業態_001
業態とは、どのような方法で販売活動を行うかという観点で事業を分類した言葉です。方法ですので、誰に何をどのように売るかといった切り口になります。(事業ドメイン)

イメージとしては、スーパーマーケットや、コンビニエンスストア、百貨店といった分類になります。また、均一小売制(ワンプライスショップ:100均)などもありますね。

このようなスーパーやコンビニといった切り分けは扱う商品での分類だけではないですよね?(最寄品を中心に扱うスーパーマーケットに対して、百貨店は買回品専門品を取り扱っていますが、モノの違いだけではありません。)

ではどのような分類なのでしょうか。これから詳しく見ていきます。

■業態はモノだけでは分類できません

例えば、ナショナルブランドのカップめんは、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、ドラッグストア、ホームセンターなどでも同じものを扱っています。

また、スーパーもコンビニも百貨店もある程度、扱っている商品やサービスは共通しています。

そのため、モノを切り口とした場合、上にあげた様々な業態は分類することが難しいのです。

なお、パン屋さんと魚屋さん、金物屋さんのように明確に扱っている商品が違う場合は、モノで分類ができます。(こういった考え方を業種と言います。)

■業態とは売り方や顧客ターゲットが違います

では、スーパーマーケットとコンビニエンスストアは何が違うのでしょうか?

仮に扱っているモノが同じであっても、スーパーとコンビニが同じという人はいないと思います。

よくよく考えて見れば、「どのように売っているか?」という売り方が違いますよね。また、「誰に売っているか」という顧客ターゲットも違いますよね。このような売り方の違いを切り口にして業態というのです。

■業態は顧客視点と言われることもあります

このような事を捉えて、業態は顧客視点であると捉えられることがあります。何を売ると言ったお店の都合ではなく、どうやって売るという顧客視点であると言った捉え方です。
ただ、業種の「何を」といった切り口に加えて、「誰に」「どのように」といったように検討する要素は増えていますが、それを以て必ずしも顧客視点とは言い切れません。

お店の独りよがりな顧客と売り方の設定は常に可能ですので、業態は顧客志向であるとまではいえないと考えられます。

例えば、「うちのサービスは日本一だから、気持ちのいい接客で富裕層に高級品を売るんだ」などと言っても、所得水準が高い地域でなければそのような商売は成り立ちません。
このように、正確に言うならば、「業態はより顧客志向になる可能性が強い」と言った歯切れの悪い言い方になるでしょう。

onnanoko_bustup
隣町にすごいファンシーショップができたらしいのよね。

hiyoko
ですわ。定員さんは一切接客をしないでセルフサービスでお買い物をするみたいですわ。

onnanoko_bustup
うちは人的販売を重視した業態だから、別業態って考えていいわよね?

hiyoko
そうですわ。同じファンシーショップだけど、売り方が違うから別業態ですわね。


■新しい業態が生まれる事への説明

小売りの輪と言った仮説があります。この仮説は小売業の業態が、らせん状に発展していくといった仮説で、業態と関連づけて説明させることが多い内容です。

革新的な低価格の業態の小売業が市場を席巻しますが、そのうち同じような業態の競争相手が参入してきます。そのような競争相手に対抗するため、革新的小売業はサービスの向上と言った方向に舵を切り、最終的に別の革新的な低価格の業態の参入を招くといった理論です。


解説で出てきた用語・関連用語
事業ドメイン
小売りの輪
店舗管理
2013年5月12日

業種

業種_001
業種とは、どのような商品やサービスを取り扱っているかという観点で事業を分類した言葉です。

イメージとしては、野菜を扱っている八百屋さん、魚介類を扱っている魚屋さん、衣料品を扱っている洋服屋さんといった感じですね。

他には、金融というサービスを行っている金融業や、建築業といった感じです。

このように、取り扱っている商品やサービスを元にした切り口であるという事ができますよね。 
この業種と似た言葉で業態という言葉があります。「何を売っているか」という観点の業種に対して、業態は「どんなやり方で売っているか?」という観点になります。

■業種の分け方は国がある程度決めてくれています

日本産業分類というものを聞いたことがありますでしょうか?国が日本にある産業を大中小の3分類+細分類で整理しているものとなります。

例えば、

E製造業(大分類)>09食料品製造業(中分類)>097パン・菓子製造業>0973ビスケット類・干菓子製造業

といえば、クラッカーや乾パンなどを製造する事業者になります。

この分類のすごいのは、「だったら、乾いている菓子だから『せんべい製造業』もこれかな?」と考えたとしてもせんべい製造業は

せんべい製造業(米を原料とするもの)[0974]

と別に定義されているところです。

■業種は色々聞かれる

この分類は結構重要で、国などに何らかの申請をする場合、自社がどのような事業を営んでいるかをちゃんと特定して記載する必要があったりします。

また、「業種別審査辞典」といった書籍でもこの産業分類のような業種分類を使って分けられたりしています。

■事業再構築補助金で業種転換が求められた

コロナ禍の際に事業再構築補助金が脚光を浴びたことを覚えている方もいるかも知れません。この場合も、補助金を活用するために業種転換などが求められました。

ただ、うまく自社の事業を再定義できた事業者さん(自社の経営資源を再定義した結果、新たな業種で勝負できるだけの経営資源があった)はこの事業再構築補助金を活用できていましたが、補助金獲得のために再構築補助金申請をしたような事業者さんは、いつまで経っても交付申請が通らないなど非常に苦労したのを間近で見ておりました。

どのような業種であっても、すでにそこで業歴を積んで業務プロセスを洗練させた競合事業者が先行して存在していますので(なので、産業分類で定義されているわけです)、業種転換は容易な選択肢ではなかったわけですね。

■業種の変化と新しい分類

業種は以前はある意味とてもわかりやすく、八百屋さんや魚屋さん、肉屋さんと生鮮三品であっても、他の業種の商品は取り扱わないことも多かったのです。例えば、八百屋さんは青果だけを売っていたイメージですね。

しかし、近年では境界があやふやになってきており、八百屋さんでも簡単な日配品やその他の必要なものも売ったりしますし、コンビニなんかは顕著で何でも屋さんになっています。

また、大手スーパーなどは配達サービスを実施しており、ネットショップと実店舗の境界もあやふやになっています。(クリック・アンド・モルタルなんてイメージですね)

また、製造業も自社サイトでBtoCのビジネスをしていたりしますし、技術の進歩で売り方は非常に多様になってきています。

その意味で、業種をうまく分類することが難しくなってきており、「複合サービス業」なんていう「その他」みたいな業種も生まれてきています。

そのため、我々支援者は業種を特定する事を求められることもありますが、事業を営んでいる方は自社が何を売っているか?といった観点ではなく、「自社がお客様にどんな価値を提供しているか?」といった価値軸で捉えていくと良いでしょう。
経営
2013年5月10日

キャッシュフロー経営

キャッシュフロー経営_001
キャッシュフロー経営とは、キャッシュフローの最大化を目的として経営を行うといった経営手法のことを言います。

「どれだけ儲けられるか」という観点ではなく、「どれだけの現金を稼ぎ出せるか」を目的とするといったイメージです。
  • 儲けと現金の違い
一般的な企業会計では、一定期間の経営成績として損益の計算を行う事が大きな目的の一つです。(損益計算書を作るのが目的の一つです。)

しかし、会計上の損益の額は相対的な真実に過ぎません。というのも、全く同じ会社であっても、棚卸資産の評価方法や減価償却の方法などが異なってくると、損益の額にもズレが出てくるからです。(それでも、真実を報告していることになります。参照:真実性の原則

これに対して、キャッシュフロー経営の場合は現金をベースに考えるので、非常に客観性が高い経営方法となります。

また、従来の損益計算書を見て経営をする場合、現金の流れは見えてきません。極端な例を出せば、一円も現金を回収しなくても儲けが計上されるような場合もあるのです。

このようにキャッシュフローを無視していれば資金ショートを起こし、黒字倒産に陥る危険性もあるのです。
店舗管理
2013年5月7日

キャッシュ&キャリー

キャッシュ&キャリー_001
キャッシュ&キャリーとは、会員制で、現金購入を行って商品を持ち帰る卸売業者を指します。

キャッシュ(お金)でキャリー(運ぶ)という言葉なので、「お金を払って持っていく」といった、感じの言葉です。卸売業者では、掛けで取引を行ってくれるケースが多いにもかかわらず、「現金のみでお願いします」と言っているようなものです。

会員制かつ卸売りなので、ホールセールクラブと似ていますが、こちらは原則として小売販売はしませんし、現金販売のみになっています。

また、キャッシュ(お金)でキャリー(運ぶ)というように、配送も行わず、顧客自ら購入した商品を運びます。このように運営に費用がかからないような仕組みになっていますので、低価格販売を実現しているのです。

ドイツの「メトロ」がこの業態を開発しました。

もっとも、最近ではサービス競争のため、配送サービスを行ったり、クレジットの利用を許容したりしています。(参考:小売の輪理論

■キャッシュアンドキャリーのメリットとデメリット

このキャッシュ&キャリーのお店は自分で持って買えるということがポイントになります。つまり、在庫管理や配送コストを顧客に負担させるといったイメージになります。

この種のお店があることで、中小小売業者や中小飲食店はこのお店から仕入れて販売するといったことが可能となります。こういった中小の小売業や飲食店にとっても大量仕入れによる価格低減の効果を享受できるのです。

とはいえ、大量に買わない顧客からするとちょっと利用しにくいお店になります。パスタ10キロ単位を安く売ってくれると言われも、お店をやっていない人とかパスタを主食で食べるような人、大家族など大量に消費する人以外にとってはロットが大きすぎてちょっと不便ですよね。

このように、小口取引や個人客にとってはちょっと向いていないといったデメリットもあるのです。

この辺の顧客ターゲットを大胆に絞り込むのが商売の真骨頂ですね。ここでコンセプトを崩して小口顧客向けの取り組みを行ったりするとお店の魅力が損なわれてしまったりします。(ただ、多くの企業がこのコンセプトのブレをやってしまうんですけどね。)

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