貸しはがしとは、金融機関が融資を行っている資金を回収にかかる事を言います。
貸し出しを渋る、貸し渋りよりも一歩進んで、貸し出ししているお金を無理に回収するというニュアンスです。
例えば、貸し出しの期限が残っているにもかかわらず、残金を無理やり返済させるといった行為です。
この貸しはがしは、結構ひどい感じがしますよね。というか、このような行為をされた企業にとっては命取りになりかねない、非常に悪質な行為です。
- 金融機関側の都合
金融機関側も別に慈善事業ではないため、自社を守るためにこのような行為に及ぶことは当然考えられます。
しかし、貸しはがしが致命傷となって企業の倒産を誘発すれば、さらなる景気悪化を招く可能性もありますし、連鎖倒産が発生する可能性もあります。
このように、貸しはがしとは社会全体に大きな悪影響を与える行為です。
- 期限の利益で借り手は守られる
融資を受けた場合、本来ならば、しっかりと返済をしていれば期限の利益があるため、一括返済を求められることはありません。
ただし、一度でも返済が遅れると期限の利益が喪失するといった契約となっているのが一般的ですので、一括返済を求められても本来は文句を言うことはできません。
まずは、契約書上で期限の利益が喪失する原因を把握しておき、それに抵触しないようにするのが身を守るための一つの方策です。
と、法律で守られてはいるのですが、実際に期限前に一括返済を求められたりすることが横行していました。
とはいえ、法的には応じる義務のない内容なので、銀行が何を言ってきても不当な要求だと突っぱねることはできたのです。
- 貸し剥がしが横行した時代背景
バブル崩壊後の経済危機の時代、金融機関も追い詰められていました。
金融機関は国際業務を行うために自己資本比率を一定に保つ必要があったのですが、不良債権(要するに返ってこないと見做された債権)がたくさんあって、その部分も考えると自己資本比率が一定部分を割り込んでしまう危険性があったのです。
金融業の健全化を目的として国が金融検査マニュアルを運用していたのですが、取引先の財務状況によっては、貸しているお金を不良債権として損金処理しなければならないと言った規定がありました。
そこで登場したのが、貸し渋りと貸し剥がしです。
例えば、全額を損金としなければならないとされた企業に1億円貸している場合、1億円は貸している限りずっと自己資本から差し引く必要が出てしまいます。
しかし、1千万円でも回収して、後は潰してしまえば少なくとも1千万円は自己資本に算入することができます。
このような事から、貸し剥がしをするインセンティブが金融機関にはあったのです。
・不景気の兆候が見えたら気をつける
といった貸し剥がしですが、今は一応過去の事となっています。しかし、不景気の兆候が見えてきた場合、また貸し剥がしが再燃するかもしれません。
そのときに備え、企業の経営者は
1.適正な利益を確保する事業を経営すること
2.過度に借入金に依存しない事業を構築すること
3.条件が有利なときに借り入れを起こすなどして、現金・預金を手元に持っておくこと
4.資金が必要な局面を理解すること