後入先出法(LIFO)とは、棚卸資産などの払い出し価格を評価する方法の一つです。この後入先出法は、一番直近に取得したものから払い出していくと仮定して計算を行う方法です。
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商品の実際の動き一番直近に買ってきたものから使うという一見奇妙なことが本当に発生しうるのでしょうか?モノの流れを缶が手みたいと思います。
魚屋さんや八百屋さんがそれをやったらお店には昔仕入れた、干物になってしまった魚や萎びた野菜があふれることになってしまいますよね。
そのため一般的な小売業では後から仕入れたモノを先に払い出すと言ったことはしません。
でも、このようなモノの動きをする業種もあります。
例えば、セメント屋さんが使うための砂利を野積みしているとします。この野積みしている状態で新たに砂利を買ってきた場合どのようなモノの動きになるでしょうか?
買ってきた砂利は一番上に積むことになります。その場合使うのも一番上からとなります。
そのため、実際のモノの動きは一番直近に買ってきたモノから使う事となります。
このほかには、混ざり合ってしまって仕入れた順番と関係なく払い出さないといけないモノもあります。
例えば、ガソリンスタンド等で一旦タンクに入れてそこから払い出す(タンク内で混ざってしまう)ような場合です。
■後入後出法は一つの仮定です
このように、モノの動きはいろいろあります。しかし、モノの動きを正確に追いかけていくことは非常に困難となります。
そのため、実際のモノの動きと必ずしも一致しない仮定をおいて棚卸資産の払い出し価格を評価していきます。
この後入先出法は、後から仕入れたモノが先に払い出されると仮定して払い出し単価を計算するモノとなります。
実際にどのように考えるかを例を示して見たいと思います。
帳簿にすると以下の通りです。
最終仕入れ原価法
売価還元法
日付 | 受入 | 払出 | 残高 |
1/10 | 10個(@100円) | 10個(@100円) | |
1/20 | 5個(@150円) | 10個(@100円) 5個(@150円) |
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1/25 | 5個(@175円) | 10個(@100円) 5個(@150円) 5個(@175円) |
この場合、合計20個の商品を合計2,625円で仕入れています。
全ての商品を期中に販売するならば、先入先出法や総平均法、後入先出法いずれの計算方法をとっても今期の払い出し価格の合計は2,625円となります。
しかし、例えば1/26に6個払い出した場合には、今期の払い出し価格と在庫の金額が問題となります。
後入先出法の場合は、後から仕入れたモノを先に払い出したと仮定して計算しますので6個だけ払い出したならば1/25の5個と1/20の1個を払い出したと考えます。
帳簿にすると以下の通りです。
日付 | 受入 | 払出 | 残高 |
1/10 | 10個(@100円) | 10個(@100円) | |
1/20 | 5個(@150円) | 10個(@100円) 5個(@150円) |
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1/25 | 5個(@175円) | 10個(@100円) 5個(@150円) 5個(@175円) |
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1/26 | 5個(@175円) 1個(@150円) |
4個(@150円) 10個(@100円) |
この場合、今期の払い出し単価は
175円×5個+150円×1個=1,025円
となります。
とはいえ、この方法も計算をするためのお約束であると割り切っていただければと思います。
■後入先出法の特徴は
インフレ時(モノの値段がどんどん上がっていく場合)には払い出し価格は直近の時価を反映することができます(インフレに伴う名目上の利益の排除が可能)が、在庫分は物価の上昇分を反映せずに安い在庫を持ち続けることとなります。
上の例のように、価格が一貫して上がっている場合のケースが該当します。
ただ、販売が好調で期首の在庫分まで販売するようなことがあると非常に安い原価の商品を販売する事となるので利益が過大に計上されるといった問題も指摘されています。
モノの動きとほとんど一致しない計算方法であると言った批判もありますが、砂利の野積みのケースのように、絶対に一致しない訳ではありません。
なお、この方法は財務会計目的としては2010年4月1日以降の会計期間での使用は廃止されています。
後から仕入れたモノが先に売れるって仮定して売上原価を計算する方法があるらしいのよ。
それって、ウチのお店みたいですね…私たち、古参のぬいぐるみはぜんぜん売れなくって、なんか言葉が話せるようになっちゃったし。
すごーくモノを大事にすると、魂が宿るって言うからね。
魂とかいいから、売れてくれないと困るのよねー。でもウチは先入先出法で原価を計算してるから、君らの仕入れ単価はもう売上原価になってるのよね。
このまんがでは砂の販売を行っている業種を紹介しています。このような業種は、仕入れた商品をどんどん上へ上へと積んでいきますし、販売するのも上からとっていきますので、一番下が一番古いものとなっています。
このように後に入ったモノから払い出すと仮定するのが後入先出法の動きです。この例ですと、後入先出法で管理している場合、在庫の単価は江戸時代の単価で残っている事となります。ありえない例ではありますが後入先出法はこのような問題があると言われています。
解説で出てきた用語・関連用語
先入先出法最終仕入れ原価法
売価還元法