まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

経済学

経済学
2025年9月28日

有形財

有形財_001
有形財とは形のある財(何らかの価値のあるもの)の事を言います。

例えば、食料品やテレビや洋服、パソコン、書籍といった形のある価値のあるモノの事を言うのです。

これは、サービスなど形が無いけれども有益なモノに対応する言葉ですね。これに対して形のない財を無形財といいます。こちらは形はないけど価値があるものでサービスなどが代表例になります。
  • 有形財の特徴とは? 
さて、この有形財。いちいち意識はしないと思いますが、無形財と比較して次のような特徴があります。

・実物を目で見たり、試すことができる。
形があるわけですから、実物を見たり触ったりすることができます。
 
・貯蔵することができる。
生ものとかでは日持ちはしませんが、貯蔵することが可能です。これに対して、無形財は貯蔵することが基本的にまったく不可能です。

言ってみれば当たり前の特性ですが、この当たり前の特性を備えていない無形財を考える時、この有形財の特徴を押さえておくとわかりやすいのですね。

■有形財の分類と活用方法

有形財は更に「消費財」と「生産財」に分類されます。消費財は生活の中で消費される財になり、食料品とか文房具、お菓子、洋服などになります。

これに対して生産財は、工場や会社で他のものを生産するために使われるもので機械や工具、材料などが該当します。

どちらも形があるという意味では有形財ですが、使い方で分類することができるのですね。

さて、このような分類はいわゆるBtoCBtoBの分類に該当してきます。物自体は一緒かもしれませんが、使われ方や使う人が異なるため、マーケティング戦略や流通をどうするかなど様々な面が異なってきます。

自社の商品は有形財を作っているということから一歩すすめて、それが消費財に当たるのか、生産財に当たるのかを考えてみると事業のヒントが得られるかも知れませんね。

■耐久性での分類

さらに有形財を異なる切り口で分類するならば、耐久財非耐久財といった分類もあります。

耐久財は使ってもすぐに無くならないモノをいいます。例えば、冷蔵庫や自動車、自転車などある程度長く使える財のことをいいます。

他方で非耐久財は消費したらそのときになくなってしまうような財で、食品(食べたらなくなりますからね)、衣料品、日用品などが該当します。

この分類も、売り方の違いに関連してきます。耐久財と非耐久財では売り方を買えないとうまくいきませんので自社の取り扱い商品について整理して考える必要があります。

■まとめー有形財の分類ー

上記のように、有形財は「消費財/生産財」と「耐久財/非耐久財」という2つの軸で整理することができます。

用途と使用期間の両方で分類することで、マーケティングや統計分析に役立ちますよ。

分類 耐久財(長く使える) 非耐久財(すぐなくなる)
消費財
(家庭や個人が使うもの)
テレビ・冷蔵庫・家具・自動車
⇒ 長期的に生活で使用する
食料品・飲料・日用品・衣料品
⇒ 消費や使用と同時になくなる
生産財
(企業や工場が使うもの)
工場機械・工作機械・建設設備
⇒ 生産活動で繰り返し利用される
原材料・燃料・部品
⇒ 生産過程で消費される

初出:2013/05/05
更新:2025/09/28
経済学
2025年8月4日

インフレリスク

インフレリスク_001
インフレリスクとは、手持ちの金融資産の価値が、物価が上昇することによって下がってしまうリスクの事を言います。

例えば、あなたがタンス預金をしていたとします。それも一千万円くらいタンスにしまっておいたとします。

そして、今なら一千万円あれば家が建てられるとします。しかし、あなたは無駄遣いするのが嫌いな性分のためか、5年間その一千万円をタンスに入れたままでした。

そして、5年後に色々と考えることがあり、家を建てたいと考えるようになったとします。

しかし、5年間のうちに物価水準は上昇しており、家を建てるのには一千二百万円必要となっていました。

この時、あなたが持っている一千万円は実質的に価値が低下していますよね?こういったリスクをインフレリスクというのです。

インフレが金利上昇を招く

例えば、年5%インフレが進む国を考えてみたいと思います。その時にあなたは2%利息が付く国債を購入しますか?

実質的に毎年3%ずつ目減りする国債なんて購入しませんよね?この場合、2%の利息の国債は買い手がつかなくなってどんどん値下がりします。

そして、この国債は購入すれば5%以上の利回りが得られる価格水準まで低下していきます。(例えば、100円で償還してくれる国債を95円で買うといったイメージです。)

こういった流れによってインフレ率が5%となった場合、国債の利回りも5%以上が求められます。

そして、国債利回りが5%まで上昇した時に、金融機関は「あなたの事業」に5%以下の金利で融資してくれるでしょうか?

安全な(リスクフリーレート)が5%の時に、リスクのある「あなたの事業」に5%以下で融資するなんて考えられませんよね?(やってもいいですが、ステークホルダーに袋叩きにされそうです。)

このように原理的にはインフレ率が上がると金利も上がるのです。(短期的には市場の歪みでそうならないケースもありますが、長期では原理原則に順張りしたほうが望ましいでしょう)

■なぜ今、インフレリスクに注目すべきなのか?

2025年現在、物価上昇が目に見えて進んでいます。少し前までデフレ傾向が強かったのですが、世の中の環境は大きく変わってきています。

そして、インフレによって、個人の預金や企業の資金計画に大きな影響がで始めているのです。

「値上げが続くのだったら、現金の価値はドンドン目減りしてしまう」ことに気づきはじめた人も多いでしょう。

インフレリスクとは、こうした「お金の価値が目減りする」ことによって、将来的な購買力が減少するリスクのことを指します。(物価が上がるとも言えますが、本質的にはお金の価値の目減りです。)そして、このような考え方は企業の資金調達や借入金利にも深く関係しています。

本サイトをご覧になっている方は経済人を想定しています。そのため、物価が上昇傾向であるとぼやくのではなく、物価が上昇傾向になったという環境に適応し、適正な利潤を上げるように行動して生きたいものです。

■インフレリスクが影響する対象

さて、このインフレリスクですが、以下のような影響が想定されます。
  • 個人の預金:現金預金のもつ力(購買力)が下がる
  • 個人のローン:固定金利なら実質的に借金の目減り
  • 年金生活者や退職金保持者:インフレによってマネープランが崩れる可能性があります
  • 企業の資金調達:金利上昇により、借入負担増加
  • 投資家:名目利回りと実質利回りの差(インフレ率を差し引いた利回り)を意識する必要が出てきます
  • 不動産:債券の利回りが上がるならば、不動産価格は下落傾向になります
   債券利回りアップ→不動産利回り<債券利回り→不動産の処分圧(リスクの低い債券のほうが利回りがいいなら投資しないほうが合理的)→不動産価格下落

良い面も悪い面もありますが、いずれにしても事業環境の変化と捉えて適応していく必要があります。

■実質金利とは?

たとえば、名目金利が3%でインフレ率が5%だった場合、実質金利は-2%となります。このような状況では、たとえ3%の利息が付いていても、お金の価値がそれ以上に減っているため、実質的には損をしていることになります。

こういった考え方を実質金利といいます。借金が目減りするのはありがたいですが、資産が目減りするのは困りますよね。

■まとめ:インフレ時代に備えるべきこと

インフレリスクは、お金の保有方法・借入戦略・資産運用すべてに影響を与えます。まさに経済というゲームのルールがデフレ時代から転換したのです。

そのため、数十年続いたデフレ時代で適切とされた行動様式を転換して、インフレ時代に望ましいとされる行動を取っていきましょう。

一例として、現金は眠らせず適切に運用すること(持っていると目減りします)、金利の固定・変動の選択を慎重にすること、実質的な価値(購買力)で資産をとらえるといった感じです。

今後も物価上昇が続く中で、このインフレリスクへの理解と対策が、経済的な生存力に直結してくると言えるでしょう。

なお、人類の経済は基本的にはインフレ基調で推移してきましたので、デフレというイレギュラーな時代と異なり、先人たちが遺した知恵を大いに活用できる時代です。少なくてもあなたの競合は、先人の知恵を研究していることを想定し、考え方を切り替えていく必要があります。

関連用語
マネタイゼーション

初出:2013/03/01
更新:2025/08/04

経済学
2025年7月13日

売り手市場 | 売り手がわの立場が強くなる状況の事を言います

売り手市場
売り手市場とは、市場で取引されている売り物が需要に対し相対的に不足しているため、売り手側にとって有利な状況になっていることを示す言葉です。

■売り手市場の具体的状況

例えば、あなたが持っている時計をネットで販売しようとした時を考えます。

このような時に、買いたいとのオファーが殺到したならば、その中で有利な条件を探すことができますよね?特に個人的な恩や思い入れが無ければ、条件の悪い相手にワザワザ売ったりはしないはずです。

このように、売り物(供給)にたいして買い手(需要)が多ければ、売り手側の方が有利となるのです。

(最終的には、「そんなに有利なら、売り手として参入しようか」といった風に、売り手側が増えて売り手の有利さは解消されます。この辺は経済学の需要と供給が均衡するといったお話ですね。)

■人事用語としての売り手市場

さて、以上が一般的な売り手市場についての説明でしたが、人事用語、特に新卒の就活に対して売り手市場と言われる事があります。この場合の売り手は学生さん(労働力の売り手)、買い手は企業側(労働力の買い手)になります。

というのは、新卒の就活はどれだけ企業側の需要が増えても供給が増えることは基本的にはありませんし、どれだけ企業が採用を絞っても、供給が減ることがないので、売り手市場や買い手市場になりやすいのです。

(需要が多いから前倒しで学校を卒業しようとか、需要が少ないから学校の卒業を控えようといった事はあまりないですよね?(全体の一部は進学といった行為で調整されます))

という事は、供給は常にほぼ一定で需要のみが増減する。つまり、売り手市場や買い手市場は就活生には何の責任のない外部的な事象なのです。

関連用語
買い手市場

■売り手市場では中途採用や転職でも、求職者側が有利になるか

新卒採用については、このように売り手市場となっていますが、中途採用や転職市場ではどうなるでしょうか?

これは、企業側の考えを想像すればある程度見えてくると思います。

それは、

新卒の採用が上手くいかない→それならば中途採用に力を入れよう→企業間での争奪戦激化

といった流れです。

採用市場全体は一つの大きな市場であることから、中途採用や転職市場に置いても求職者側が有利となるです。

その証拠に一昔前(本記事を最初に書いた2015年当時はそこまでではなかったですが、2000年代においては)転職35歳限界説などが語られていました。しかし、2025年において転職が35歳で限界だなどとは求職者も企業も考えていません。

■売り手市場には労働環境を恒久的に変えるインパクトがあります

このようにそもそも新卒採用が難しくなり、転職市場が活性化している状況では、新卒初任給をあげたり処遇の改善を行うなど、労働市場で人材という経営資源を調達するための競争が行われています。

そのため、一昔前の日本企業のように従業員を使い潰す的な「ここで通用しなかったら何処へいっても上手くいかない」といった働く人の足元を見るような、労務管理はすでに過去の遺物です。

そのようなことをしていると、評判が悪化し従業員の採用に苦労したり、何より、今いる従業員さんが転職してしまい人手不足で大変なことになります。(レピュテーションリスクといいます)

そのため、邪悪な労務管理は市場原理で淘汰されるというわけです。

■企業側の採用戦略はどうするか

身も蓋もない言い方をすれば、少なくとも競合他社と同じだけの報酬と処遇を用意して・・・となりますが、すでに中小企業の労働分配率は以下の表(中小企業の人件費および労働分配率の推移を示したものです。赤線は労働分配率であり、既に非常に高水準であることがわかります。)のようにかなりの水準となっており、もはや賃上げ余力は乏しいと考えられます。
 中小企業白書_労働分配率
出典:2024年度版_中小企業白書 中小企業庁
図表からは、中小企業の労働分配率は一貫して高止まりしており、獲得した付加価値の殆どをすでに従業員に配分しているのです。そのため、そのためそれができたら苦労はしないでしょう。

その場合は、「働いてくれれば我が社で〇〇といったキャリアを積むことができる」とか、「我が社の理念は」とか「不効率な働き方を廃止して、早く帰れるようにしています」などで訴求を図る必要があるでしょう。

いずれにしても、人口動態調査からは生産年齢人口が減少し続けることがわかっていますので、人手不足傾向は今後も変わらないと考えるのが妥当です。

そのため、昭和的、平成的な労務管理からパラダイムシフトし、働きやすい職場と成果をちゃんと上げることができる職場を両立させる必要があるのです。

■制度は「整っていて当然」の時代へ

近年の売り手市場では、単に給与や待遇が良いだけでは、求職者の心を掴むことが難しくなってきています。

特に若い世代ほど、「制度が整っているのは当たり前」という感覚で企業を見ています。

たとえば、育児休業制度などはすでに男女問わず取得できるのが前提とされつつあります。「男性も育休を取れるのが当然ですよね?」といった目線で見られる時代になっており、制度が形式上あるだけではなく、実際に使える雰囲気や実績があるかも問われます。

このような背景から、育児休業やリモートワークなどの働き方に関する制度は、「攻めの差別化」ではなく、「守りの必須項目」になりつつあります。

売り手市場での人材確保においては、制度整備の「遅れ=リスク」と捉え、外部環境に敏感に対応していくことが重要です。


初出:2015/02/17
更新:2025/07/13
更新:2025/08/02

経済学
2025年7月7日

資産効果

資産効果_001
資産効果とは、持っている資産が値上がりすることによって、消費や投資が促される効果の事を言います。

例えば、あなたが100万円の株を持っていたとします。この時、株が値上がりして200万円になったとしたら、「資産が増えたから少し贅沢しようか。」となりませんか?

なるとしたら、それが資産効果です。

また、投資が促されると言う効果もあります。この投資が促される効果によって、

資産価格の値上がり→投資の増加→さらなる資産価格の値上がり

といった循環も生まれるのです。この循環によってどんどん景気は拡大していくのですね。これは、資産が値上がりしたから、更にリスクを取って投資をしていくというイメージの行動です。

この逆で、資産の値下がりが消費や投資を抑制する効果もあります。こちらはそのものズバリ、『逆資産効果』といいます。

■資産効果が発生しやすい状況

例えば、株価の上昇局面、不動産価格の上昇局面、仮想通貨(暗号通貨)の高騰局面など、どんどん自分の資産が増えるタイミングです。

そのようなタイミングでは、

資産が増える

資産効果

消費増大

景気拡大

企業業績上昇

株価などの資産価格上昇

といった形で良いスパイラルが回ります。

■ただし、資産効果が加熱しすぎると。。。

ただ、この資産効果が加熱しすぎると、いわゆるバブル状態となり、過剰消費や過剰投資の問題が生じてきます。また、厄介なインフレなどの問題も生じてきます。

過剰消費ぐらいならば環境に良くない・拝金主義的な不健全な文化が育まれる程度ですみますが(どっちも大問題ですね)、過剰投資はその後にも尾を引くので厄介です。

例えば、負債で資金調達して過剰投資した場合は、(割高な価格で購入してしまった資産を損切りできなければ)その負債の返済負担が長く続きます。

また、仮に現金で一括購入したとしても企業業績には減価償却費(減価償却についての解説はこちら)の増大や設備等の維持管理費用の増大といった点で長い期間ダメージが入り続けます。

バブル経済の崩壊後、我が国企業はこの悪影響に長く苦しみ、非常に長期にわたる景気悪化に苦しんで来たわけです。

■政府や中央銀行の役割

この資産効果が加熱した際、政府や中央銀行は景気の加熱を抑え持続的に経済発展できるようにソフトランディングさせるように動きます。

例えば、金融政策による段階的な引き締め(金利を徐々に上げる)を行い、資金供給を徐々に減らし、投機的な資金の流入を減らしていきます。

また、劇薬ですが不動産融資の規制(融資の自己資本比率規制や不動産評価額の制限)や株式の信用取引を制限するなどの動きもありえます。

■我が国はバブル経済をハードランディングさせてしまった

と、歴史のお勉強になってしまい恐縮ですが、バブル景気はプラザ合意の円高不況に対応するために大規模な金融緩和を実施したことにより、この資産効果のスパイラルが制御不能になってしまったことを発端としています。

そして、「これではまずい」ということで日銀は政策金利を急激に引き上げ(6%台へ急騰させた)、さらに、不動産融資への総量規制まで行ったので地価の下落が、以下のような逆資産効果を発生させてしまったのです。

不動産価格の下落

担保価値の既存

貸し渋り貸し剥がし(用語解説あり)

倒産

さらに時系列的には若干錯綜しますが、消費税が導入されたのもこの時期です。

以下あるべき姿と、我が国がバブルを崩壊させた時にやってしまったことをまとめます。
項目 ソフトランディング(あるべき姿) ハードランディング
(我が国がやってしまったこと)
金融政策 段階的に金利を引上で景気過熱を抑制 急激な利上で資産価格を急落させる
資産市場への対応 規制などの導入で、投資家心理を落ち着かせる 総量規制などを急激に導入し信用収縮を招く
政府・中央銀行のメッセージ 市場との対話し、過熱感を和らげる 「バブル退治」など強硬姿勢
経済への影響 資産価格を安定させ、持続的成長へ 景気後退、不良債権問題、長期停滞

■われわれ経済人が取る対応とは

と、資産効果はいっけんすると問事尽くめのように感じますが、加熱した際の悪影響や、加熱を冷ますための政府や日銀の対応いかんで大惨事を招く危険性すらあるのです。

そのため、資産効果が亢進し「今回はいままでと違う(何処まででも資産価格は上がる)」と周りが振る舞い始めたら、立ち止まって収穫の秋の後に訪れる冬に備える事も重要かもしれません。

なにより、現在の我が国を代表する任天堂やキーエンスといった企業はバブル景気に踊らされず、無理な設備投資や不動産登記などを行わなかったといった実例もあります。

われわれ経済人が冷静に利を見ることが結果として我が国の社会全体の安全弁になれるのですから。

※資産価格が下落することによる影響については、別記事「逆資産効果とは?」もご覧ください。

初出:2013/01/30
更新:2025/07/07

経済学
2025年7月7日

逆資産効果

逆資産効果_001
逆資産効果とは、持っている資産が値下がりすることによって、消費や投資が抑制される効果の事を言います。

資産効果の逆なんですね。

「これってどういうこと?」って思った方は次の例を考えてみてください。

あなたは、100万円を株に投資しています。しかし、様々な要因が重なって株が値下がりし、50万円になってしまったとします。

さて、あなたはどのように感じるでしょうか?「資産が減ったから少し節約しようか…」となりませんか?

なるとしたらこのような効果を逆資産効果と言います。

■逆資産効果が生じやすい資産について

これは身も蓋もない言い方になれば、価格変動が激しい資産が該当します。

例えば、株式やビットコインやイーサリアムみたいな暗号資産(仮想通貨)、不動産といった資産になります。

特に、株式などは流動性が非常に高く、価格変動が日々起こりますし、景気動向や企業業績、金利水準などによっても影響が生じます。

そして何より、資産効果や逆資産効果によって価格変動自体が、景気を左右しそれによって更に価格変動が生じると言った動きに繋がります。

また、暗号通貨などはボラティリティ(変動性)が極めて高く、よくわからないアルトコインに至っては、技術的要因や投資家心理などで急騰・暴落が繰り返されます。(株式などで一日に数%も価格が動いたらニュースですが、暗号通貨ではそのような値動きは頻繁に発生します。)

以下、主な資産クラスごとにまとめました。
資産クラス 価格変動リスク 逆資産効果との関連 備考
株式 高い 高い 景気・企業業績・金利動向に強く影響される
暗号資産(仮想通貨) 非常に高い 非常に高い 投機的色彩が強く、急騰・暴落が日常的に発生
不動産 中〜高 中程度 地域・政策・金利に左右されるが、価格変動は比較的緩やか
債券 低〜中 低い 価格変動は小さめだが、金利上昇局面では価格下落リスクあり
現預金 ほぼなし なし 価格が固定されており、逆資産効果の影響は受けにくい

■個人の消費とマクロ経済の動向について

個人は、この逆資産効果が生じれば、前述の例の通りに節約志向が高まり、消費を減少させる形になります。

そして、その個人の動きが企業の売上低下を招き、景気後退のリスクが生じ、更に資産価格が下がり、個人消費にブレーキをかける負のスパイラルが生じるのです。

リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)の頃には、この逆資産効果が生じて、一気に景気が減速したことを覚えている方もいらっしゃると思います。

我が国のバルブ崩壊に遡れば、株価・不動産価格が暴落し、消費が冷え込み、強烈な景気後退が生じたのです。

■政府や中央銀行の役割は大きい

このような逆資産効果が生じて景気悪化リスクが顕在化した際には、中央銀行が金利を引き下げたり、国債などを買い入れて市場に資金を供給したりします。また、財政出動として公共投資などを行って、消費の底割れを防いだりすることも求められます。

と、教科書的な説明ですが、何度も逆資産効果による景気悪化を経験した世代からすると、あんまりこういった政府や中央銀行が役割を発揮したといった実感は感じないです。

しかし、少なくともリーマンショックやコロナショックの際は大恐慌のようなことは発生しなかったため、マクロ的な経済施策には効果があるのでしょう。

ただし、読者の皆様も含め本サイトの読者の方は経済人だと存じますので、政府や中央銀行がなんとかしてくれるではなく、悪くなったら悪くなったなりの環境に適応して生き残っていく必要があるのだと考えます。

※資産価格が上昇することによる影響については、別記事「資産効果とは?」もご覧ください。

初出:2013/02/02
更新:2025/07/07



経済学
2025年6月30日

外国為替資金証券

外国為替資金証券_001
外国為替資金証券とは、政府短期証券の一つで、為替介入などを目的として外国の通貨を購入する際に、その対価となる円を調達するために発行される証券です。外為証券とも呼ばれます。

「外国為替資金証券って何?」と聞かれてピンと来なくても、実は私たちの事業活動にも影響を与えている存在です。

この外国為替資金証券を発行して得た円で、外貨を購入し(外貨準備高が増える)、為替相場を円安に誘導するというのが、為替介入のイメージとなります。

このように、外国為替資金証券は円売り介入を行う際発行される証券で、外国為替資金特別会計法にもとづき発行されるのです。

■外国為替資金証券が発行される場合(円売り介入時)

と、かなりコアな金融寄りの論点となりますが、私達中小企業にとってはこの介入が行われる場合は円安に誘導することを目的として行われると理解することが重要です。

円安方向を目指すわけですから、輸出する財の価格は言質の消費者にとっては下がる方向になります。

(1ドルと70円が交換できたのを1ドルと140円を交換するような方向にするということですから。)

一例として、

東日本大震災前後には1ドルと70円を交換するような超円高になっていました。このときは、輸出業者は頑張って7000円の値段をつけても、ドルを使っている経済圏では100ドル払わないとこの商品を入手することができませんでした。(いろいろな費用は無視して説明します)

他方で、2025年現在の為替レートは140円程度で推移していますので、同じ7000円の商品はドルを使っている経済圏では50ドル支払えば手に入れることができます。

つまり、為替相場が動いただけで、日本の製品は半額になっている。つまり、海外の人からすると日本の製品が安くなり、価格競争力が強くなったということです。

他方で、

輸入業者からするととんでもないことが発生しています。

海外で100ドルのものを1ドル70円の時代に輸入してきたならば、7000円で日本の消費者に届けることができていました。しかし、現在の1ドル140円時代では、海外で100ドルのものは、14,000円もしてしまうのです。

■便利な介入ですが

このような介入ですから、自国にとって有利なタイミングで有利な方向に介入すれば皆が喜ぶと考えるかもしれません。しかし、このような強力な方策であることから、為替介入は国際的には「為替操作」と批判されるリスクがあります。

このように、外国為替資金証券はただの短期証券ではなく、「為替レートという我が国の信頼と競争力」にかかわる道具なのです。

我々中小企業の立場としては、自社に有利な方向に為替が動けば嬉しいですが、そのようなことは期待せず、環境に適応するように事業を運営していくことが重要なのです。

■どうすればいいの?:公的支援機関の活用

為替レートに限らず、事業環境が大きく変動しているときはチャンスであるとともにピンチであったりもします。

そのような際は、お近くの商工会や商工会議所、よろず支援拠点などの公的な支援機関に相談してみるのも一案となります。

専門家がたくさんいますし、商工会や商工会議所は会員にならなくても相談に乗ってくれますので(とはいえ何度も活用するなら会員になった方がより安心です。なによりマル経融資という特権的な融資制度を活用できる可能性がありますので)相談してみるのも一つの手です。

初出:2013/06/04
更新:2025/06/30


経済学
2025年6月24日

付加価値 | 差し引いたり積み上げたりして計算します

付加価値
本記事では付加価値についての基本的な考え方だけでなく、経営革新計画などの行政が行う支援制度での活用方法まで解説します

<用語解説>
付加価値とは、企業などが活動した結果、生み出された価値のことを言います。言い換えると、外から買ってきたモノやサービスに、自社が活動することによって付け加えられた価値のことを言います。英語ではadded valueと表記されます。付け加えられた価値といった意味ですね。

■付加価値(付け加えられた価値)って?

さて、製造業を例にして、企業が活動したことによって付け加えられた価値について考えていきたいと思います。モノを作る訳ですから理解しやすいと思います。

あるパン工場が小麦粉と勤勉な従業員の努力でパンを作っています。また、少しだけ外注もしているとします。

そして、このパン工場は一年間の活動の結果、200万円の売上を上げたとします。この際、小麦粉を50万円、外注費を10万円、人件費を50万円、減価償却費を50万円が発生したとします。(期首期末とも在庫は無かったし、作るそばから売れたものとします。)


すると、次のような経営成績となったわけですね。


売上高 200万円
売上原価 110万円
販売費及び一般管理費 50万円
営業利益 40万円
経常利益 40万円
税引前当時純利益 40万円
法人税等 16万円
当期純利益 24万円

(製造原価)
材料費 50万円
労務費 50万円
経費 10万円

※在庫が無く作るそばから売れたので、製造原価=売上原価となっています。

では、この数字をもとにパン工場が生み出した付加価値について考えてみましょう。

■付加価値イコール最終的な利益の24万円ではありません

まずは、利益の額を考えてみましょう。この金額はなんとなく付加価値と言ってもよさそうな気がしますよね?

企業が活動した結果生み出された価値ですから、最終的な利益はぴったりとくるような気がします。

しかし、そう考えるならば、従業員さんのお給料はどこから出たのでしょうか?

付加価値とは、『外から買ってきたモノやサービスに、自社が活動することによって付け加えられた価値』の事ですから、従業員さんのお給料も引いている最終的な利益では少なそうですよね?

■付加価値の計算は差し引いて考えよう(中小企業庁方式)

それでは、従業員さんのお給料も含めて付加価値を計算するためにはどうしたらよいでしょうか?それは、売上高から外から買ってきた費用を差し引いてみればよいのです。

上の例では、

付加価値=売上高-(材料費+外注費)

で計算しますので、

付加価値=200万円-(50万円+10万円)=140万円

となります。この企業が活動した結果、140万円の付加価値が生まれ、そのうち50万円を従業員に分配したと考えるのですね。

■付加価値の計算は積み上げてもいいよ(日銀方式)

さて、同じことを売上高から差し引くのではなく、積み上げ計算でも求めることができます。こちらは以下のような計算式となります。

付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

付加価値=40万円+50万円+0+0+0+50万円=140万円

となります。こちらの方だと、明示的に人件費を足していますね。

■計算方式は異なっていても同じ値になる

このようにどちらの方式でも140万円になりました。このパン工場が活動したことで世の中に140万円の価値を追加して分配したということになるのです。

そして、その価値は、人件費として従業員や、金利として銀行へ、賃借料や税金としてそれぞれのステークホルダーに分配されたというわけです。

企業が活動するということは、世の中に今まではなかった価値を生み出して色んなところに分配しているということを意味するのです。

■付加価値を高めることを行政も求めている

地域内で生み出す価値が大きければ行政も喜びますよね?

そして、付加価値✕行政といえば、何と言っても「経営革新計画の承認」が経営支援の華です。経営革新計画は補助金等のご褒美があるわけではないので、純粋な経営支援として実施する感じです。

この経営革新計画の承認を目指す際にはこの付加価値の伸びを設定していく必要があります。

もちろん、経営革新の承認を受けた場合の微妙なメリットとして、低利の融資を受けられるなど幾つかの利点があります。ただ、社長自ら活用しないならばそれほどメリットは感じないと言った所が本音です。

ものづくり補助金の加点になると効果が喧伝されたこともありましたが、補助金は筋が良い計画であれば無理に加点を狙わなくても普通に採択されますので。

ただ、経営革新の承認は都道府県のお墨付きを得ることには繋がりますので、積極的に営業推進を行おうとした場合、都道府県から一定の信用を与えられるのは強みです。

■経営革新の実際(余談です)

厄介なことに都道府県ごとに運用ルールも微妙に異なっていて、関東の某県ではめちゃくちゃ認定されるのに、他の件ではほとんど認定されないなんてことも起こっています。

専門職として差し支えがあるので何処とは書きませんが、気になる方は各県の実績を検索してみてくださいませ。都道府県ごとに結構承認件数の差があることがわかります。

とはいえ、認定基準が著しく違うと言った感じではなく、単に都道府県側の受け入れキャパの差≒担当者とのアポの取りやすさの差であるような気がします。

■付加価値を高める経営革新の目指す所

経営革新計画の承認を受けるためには、【経営の相当程度の向上】のために、毎年3%以上の付加価値額(もしくは一人あたりの付加価値額)の伸び率を計画に盛り込む必要があります。

これが3年計画の場合は9%、5年計画の場合は15%と言った形で、結構なハードルになります。

また、給与支給総額の伸び率として、毎年1.5%の伸びが必要で、3年計画の場合は4.5%、5年計画の場合7.5%の伸び率が必要です。

本記事は経営革新の記事ではないのでここまでにしますが、従業員を減らして一人あたりの付加価値を増やすなんて計画を立てても、行政はいい顔をしませんので念の為覚えていてくださいませ。

■狙う制度の定義に従いましょう

と、経営革新計画を例に書いてきましたが、制度ごとに計算方法を明示している場合があります。その場合は、制度ごとに示された計算方法で付加価値を計算し、目標の達成を狙っていきましょう。

なお、本当に革新的な計画を考えるときには、計画上の付加価値額の伸び率がとんでもないことになる場合があります。

特に小規模な事業者さんにとってはあり得る話しです。

例えば、付加価値を10億円生み出している企業が15%増大を狙うのはすごく大変ですが、この記事のように生み出している付加価値が140万円の事業であれば、この取組の結果付加価値が300万円になるみたいなことはよくあります。

この場合付加価値の伸びが100%を超えてくるので腰が引けてしまうかもしれませんが、自信と根拠を持って、どうしてこの付加価値に成るのかを明示することが重要です。

初出:2014/06/03
更新:2025/06/24

経済学
2025年6月2日

Jカーブ効果

Jカーブ効果_001
2025年現在、円安や為替変動が中小企業経営に大きな影響を与えています。特に、原材料費の上昇や輸出入のバランス変化に対し、対応を迫られる場面も多くなっています。

こうした為替の動きが、なぜ貿易収支に直ちに影響しないのか。それを理解するうえで「Jカーブ効果」という概念がヒントになります。


Jカーブ効果とは、自国通貨の上昇や下落局面において、貿易収支が最終的に想定される方向と、短期的に逆に動くことを言います。
  • 長期的には
例えば、自国通貨が下落する局面では、国際的な競争力が向上します。(円安になると、今まで1ドルで販売していたものが1ドル以下で販売できるイメージです。つまり安く販売できるようになるという事ですね。)

また、自国通貨が安くなるわけですから、外国から購入するモノは高くなります。

安くなれば需要が喚起され、高くなれば需要が抑制されるという極めて自然な流れから、自国通貨の下落は輸出の増加と輸入の減少を招くと考えられます。

このように、輸出が増えて輸入が減るわけですから、長期的にみると貿易収支は改善します。
  • 短期的には
しかし、短期的には逆に貿易収支が悪化するというのがこのJカーブ効果です。

さて、なぜ短期的に逆の動きをするのでしょうか?

まず、為替相場下落しても短期的には輸入の需要は変わりません。例えば、石油の値段が上がったからと言っても、スグに石油を使わないというわけにはいきませんよね?(長期的には需要は抑制されます。)

この場合、為替相場は下落しているので、輸入に必要なお金は多くなります。(数量が減らずに単価が上がるわけですから、輸入金額が増加するのです。)

逆に、輸出する数量も短期的にはあまり変わりません。

この場合も、為替相場は下落しているので、輸出によって受け取るお金は少なくなります。(数量が変わらず、単価が下がるわけですから、輸出金額は減少します)

この結果、短期的には自国通貨の下落から想定される貿易収支の改善とは逆に動くのです。

Jカーブ

この図のように、自国通貨の下落が短期的に貿易収支を悪化させ、長期的には通常考えられる通りに貿易収支を改善させるのがJカーブ効果のイメージです。

グラフを描くと、ちょうどアルファベットの『J』の字に似ていることから Jカーブ効果と呼ばれるのです。

■Jカーブ効果の応用と企業経営

Jカーブ効果は国と言ったマクロな話だけではなく、企業経営の判断にも活用できます。

例えば省エネ投資や新規市場への参入を考えてみます。

最初は投資を行う必要がありますよね。もちろん減価償却の考え方や費用収益対応の原則があるので、すべてがすぐに費用化されるわけではありませんが、どうしても費用は増大します。

それに対して収益は、なかなか最初は上がらないため収支は悪化します。

しかし、投資がうまく行けば時間の経過とともに効率改善や販路拡大が進んで利益水準に反映されていきます。このように利益水準の変化もJカーブのような形になるのです。

なお、実際に事業計画を数字に落としてみると、新規事業の損益はやはりJカーブを描きます。このことから、雇われ社長の最適解は長期的な新事業へ取り組むのではなく、既存事業のコストカットになりがちです。業績設定を適切にしないとこのような近視眼的な行動になってしまうので注意が必要なのです。

(関連してマーケティングマイオピアといった言葉もあります)


初出:2013/02/21  
更新:2025/06/02
経済学
2019年1月20日

限界消費性向 | 数式を使わずにまんがとキャラクターで限界消費性向について説明してみました

限界消費性向_001
限界消費性向とは、所得が増えた際に、増えた所得の分に関する消費性向の事を言います。(経済学でいう限界とは「少し増やした時の」という意味です。それなので、限界消費性向は少し増えたときの消費性向という意味です。)

経済学を勉強される際には、MPCと略されて記述されることもあります。( Marginal Propensity to Consume)

限界消費性向は1が基準で、1の場合追加で得た所得を全て使ってしまう、1より小さい場合、例えば0.8の場合は追加で得た所得の8割を使ってしまうと言った意味となります。

よほどの浪費家でない限りこの限界消費性向は1より小さくなりますし、社会全体などのマクロな視点となると、みんなが増えた所得よりも多く使うとは考えにくいため、1よりも小さいと考えられます。

逆に、0になる事も考えにくく(追加で得た所得を一切使わない事も考えにくいですよね?)、限界消費性向は0から1の間の値を取ると言われます。

■具体例を挙げてみます

この説明では、「え、どういう事?消費性向となにが違うの?」といった声が聞こえてきそうですね。

では具体例を挙げて考えてみたいと思います。

例えば、年間100万円の可処分所得を得ていた人がいるとします。生活にはあまり余裕がなく、消費性向は0.9を超えていたとします。

このことから、この人は90万円を消費に回していたという事ですね。

さて、この人が新たに50万円を追加でもらえることになったとします。この追加でもらえた50万円の消費性向はどうなると思いますか?(この時の追加の50万円分の消費性向を限界消費性向と言います。)

例えば、この場合の限界消費性向が0.8だった場合、40万円が消費に回ります。

■限界消費性向と消費性向は一致しない!


この例で、「もともとの消費性向が0.9なのだから、45万円は使うはずだ」と思いませんか?

しかし、「最低限の生活必需品は賄えているハズなので、それほど消費性向は大きくならない。」と考える事もできますよね?

一般的に言うと、所得が大きくなれば限界所得性向は小さくなると言われています。

この例では、後者の「最低限の生活必需品は賄えているハズなので、それほど消費性向は大きくならない。」といった意見の方が正しい可能性が高いというわけです。

どうしてかというと、生活に余裕があれば無理に使わなくっても良いので、貯蓄する可能性が高くなるということです。

■貯蓄って?

と、上の例では貯蓄と消費が二者択一でした。ということは、限界消費性向と限界貯蓄性向(増えた分の所得を貯蓄する割合)は足して1になるということができます。

1=限界消費性向+限界貯蓄性向

ということができるんですね。

onnanoko_bustup
あら、1万円のお買い物券当選ですって。

neko
ぱーっと使っちゃいましょう!

onnanoko_bustup
ふふふのふ。色々買ってたら12万円も使っちゃったわ。私の限界消費性向は12ってところね。これは、学会で発表できるかも知れないわね。限界消費性向が1以上になる可能性もあるって。

neko_akire
個人だとそういう人もいますよね。でも、世間全体をみると限界消費性向は0と1の間になるんですよ。

■乗数という考え方

さて、この限界消費性向ですが、誰かの消費は誰かの所得となります。(AさんがBさんのお店でお金を使ったら、Bさんの所得が増えます)

そのため、誰かに臨時収入があれば一国の限界消費性向分だけ回り回って経済効果を生むと考えられます。

例えば、国が1億円を国民に配ったとします。(国がお金を配るなんて荒唐無稽な話しと思うかも知れませんが、地域振興券とかで定期的に配ってますよね。)

このときの国全体の限界消費性向が0.8だった場合

その場合1億円をもらった人→全額を消費に回す

1億円もらった人→0.8億円を消費に回す

0.8億円をもらった人→0.64億円を消費に回す

といった感じで最初の1億円が呼び水になって次から次へと消費が生じるのです。

解説で出てきた用語・関連用語
経済学
2015年8月26日

利下げ | 景気後退には利下げといった、腹痛には正露丸的な対処法です

利下げ
利下げとは、一国の中央銀行が一般的に景気後退局面において行う金融政策の事で、景気の後退を防ぐ事を目的として政策金利を引き下げることを言います。文字通り『(金)利(の引き)下(げ)』なのですね。

と、このように書くと、「どうして金利の引き下げが景気後退を防ぐことにつながるのかなぁ?」と思われる方もいると思われます。

(経済学的にはグラフを描いて細かく説明することもできるのですが(学生さんなら、そのような図を理解する必要が出てくると思います。)、用語集サイトでグラフを見てもそれほど理解が深まるとは思えないので、言葉で説明を試みます。)

金利が引き下がることが景気後退を防ぐ、景気を良くするのには、次のような論理構成となります。
  • 内需への影響
まず、中央銀行が政策金利を引き下げる事により、市中銀行(三井住友銀行とか三菱東京UFJ銀行とかですね)が調達してくるお金の金利が引き下がります。

その結果、市中銀行が貸し出すお金の金利が引き下がります。

すると、企業や個人が調達してくる金利が引き下がる為、設備投資や消費が促されます。
その結果、内需が刺激されて景気が良くなるといったロジックです。
  • 為替への影響
また、金利が引き下がるという事は、金利が引き下がった通貨の魅力が相対的に失われて通貨が売られることにつながります。(持っていれば3%の利息が付く通貨が、2%しか利息が付かなくなったら魅力が低下しますよね?)

この結果、利下げされた通貨の為替レートが引き下がる(と言われています。)

あまり直接的には言われませんが、利下げの結果、為替レートが下落し、輸出が増えるといった効果も存在します。
経済学
2015年8月15日

買い手市場 | 買い手の立場が強くなる状態を示す言葉です

買い手市場
買い手市場とは、市場で取引されている売り物が、需要に対して相対的に過剰なため、買い手側にとって有利な状況になっていることを示す言葉です。

売り手市場に対応する言葉ですが、あえて書いて市場であると指摘される事は少ないと考えられます。(というのは、現代では財は需要と比較して潤沢に提供されているため、基本的には買い手市場であるためです。)

このような状況の場合、古典的な経済学的説明では、財の供給者が「こんなんじゃ採算が合わないから撤退するよ。」と考え、最終的には需要と供給が均衡し、買い手市場は解消されると説明されるのですが、イマイチその通りには動いていないと思われます。

買い手市場であなたがモノを買おうとしている場合を考えてみます。この場合、あなたにとって欲しいものがあったとしても他の人からも購入することができるといった状況になります。

すると、「確かにそれは欲しいけど、別にあなたから買わなくても…」と言う事ができてしまうんですね。その結果「では10%値引きをします」といった売り手側からの譲歩を引き出せる余地があるのです。

このように、買い手市場は、買い手側にとっては有利な状況ですが、売り手側にとっては不利な状況という事ができます。
  • 人事用語としての買い手市場
さて、この買い手市場は人材の採用現場では良く使われます。採用市場には、景気の良しあしには関係なく基本的に一定の人たちが供給されます。景気が悪いからと言ってほとんどの人は学校の卒業を待ったり、卒業を早めたりはしませんからね。(人に対して、供給なんて言うとちょっと嫌な感じですけどね。)

しかし一方で、人材の需要側の企業は景気動向次第で大きく需要が変動します。そのため、ほとんど毎年のように「今年は買い手市場だ」とか「今年は売り手市場だ」といった風に言っているのです。
経済学
2015年7月17日

信用財 | 判断ができないモノについては、信用するか否かが問われます

信用財
信用財とは、製品やサービスを利用した後であっても、その製品やサービスの品質が良いものであるか判断できない。ある意味、供給側を信用するしかないような財のことを言います。英語ではcredence goodsなどと表記されます。

例えばお医者さんの診療を考えてみたいと思います。前回皆様が利用したお医者さんの医療サービスはどうだったでしょうか?

「まあ、風邪がちゃんと治ったから良かったんじゃないの?」といったくらいにあやふやな判断しかできないと思われるのですがいかがでしょうか?本当に自信を持って判断することができるでしょうか?

また、いわゆる士業が提供するような法律や税務、企業コンサルサービスについても信用財となります。あなたの会社があるコンサルにお願いして業績を伸ばしたとして、果たしてそれが本当にそのコンサルの手腕によるものか、偶然なのか。それとも、コンサルのアドバイスは単なるきっかけに過ぎなかったのかは誰にもわからないですから。

このように、財を購入・利用したとしてもその本質を消費者が判別できない。根本的に提供者を信用するしかないといった財が世の中には存在するのです。

■口コミや第三者の保証で信用財の信用を担保する?

買い物をするときに口コミやレビューを見る方は多いと思います。これは信用財に対して、あらかじめ使ったことがある人の意見を参考にして不安を和らげるための方法になります。

また、安心マークとか、認証マークがついていればそれらのマークが付いていない場合より安心できると思います。

このように、第三者の評価や認証などは、利用したあとに「もっと良いアドバイスを受けられた可能性があったのでは?」と考えられるような分野については、こういった外部評価指標が参考になります。

完全な保証にはならないものの、比較する際の一つの要素として一定の機能をこういった認証や評価制度が持っています。

本来は、士業は一定の能力を持っているという国からの認証になりますので、経営相談はお近くの中小企業診断士へお願いしますね。(こういうのをポジショントークといいます。)

関連用語
探索財
経験財
経済学
2015年7月15日

経験財 | 利用して見なければ分からない。経験がモノを言うといったモノも存在するのです

経験財
経験財とは、その製品やサービスを購入する場合、事前にはその財の品質を判断することが困難で、実際に経験した後でないとなかなか判断できないようなモノを言います。英語ではexperience goodsなどと表記されます。

例えば、レストランでの食事や理容サービスなど。実際に食べてみたり利用したりして経験しないと判断することが難しいようなモノが該当します。

また、化粧品や香水などのように、どんなに見た目が良くとも、自分に合うかどうかは実際に利用してみるまで分からない。といった商品も存在します。

このように、事前の探索があまり効果を発揮せず、実際に使ってみるまで価値を判断することが難しい財を経験財と呼ぶのです。

このような財を提供する側では、品質に自信を持っていたとしても、一度利用してもらわなければはじまりません。

また、経験財の場合、口コミや評判といった事前情報が消費者が購入するか否かの大きな要素となる為、良い評判を作る事を意識していく必要があります。

■経験財の売り方の工夫

経験財は「使って経験してみないとよくわからない商品やサービス」になります。そのため、売るためにはお試しなど、利用前の不安感(変な商品やサービスを買って損したら嫌だな)を軽減する仕組みがポイントになります。

例えば無料サンプルを配ったり、トライアル利用、初回割引など、最初の一回の利用のお客さんのリスクを低減する方法を考えるのが重要になります。

また、使ってみないとよくわからないということですから、口コミなどで不安を低減することも重要となります。

そして、利用してくれた人からの好意的な口コミを引き出すことも重要です。会員紹介制度などを用意して、最初の一回のハードルを下げるお手伝いをお客様にしてもらうのも良い方法だったりします。


関連用語
探索財
信用財 
経済学
2015年7月14日

探索財 | 調べれば比較することができ判断できます

探索財
探索財とはその製品やサービスを購入する際に色々比較検討することが容易にできるような財のことを言います。英語ではsearch goodsなどと表記されます。

カタログが流通しており、事前に調べる気さえあれば調べることができるような製品やサービスがこれに該当します。

例えば、家電製品などはどのようなスペックであり、別のメーカーの製品と比較して優れた点や劣った点を比較的簡単に把握することができます。この場合、実際に購入して使ってみなくても、ある程度の品質や性能を把握することができるのです。

このように、財を購入するに当たって、事前に探索を行う事ができるようなモノを探索財と呼ぶのです。

このような切り口は、消費者が財の品質などの比較がどの程度容易であるかといったモノとなります。

この切り口ではほかに、『経験財』『信用財』といったモノが挙げられます。

■探索財と価格競争

探索剤は色々調べて比べられていく商品となります。洗濯機を買うときには、洗濯できる容量・重量、電気代、水道代、サイズ、デザインをネットやカタログ、場合によっては雑誌で調べますよね。

その結果、「どっちが良いかな?」と多くの人が比べる対象となります。

■比較は競争そのものです

情報がたくさんあって、比べられるならばスペックや価格で消費者は比較してより良い意思決定をしようとします。

そのことが、メーカーや小売店に価格競争を強いる事となってきます。そしてその結果、いわゆる利幅が縮小しやすい財であるということができます。(比べるならより良いものをみんなが選びますからね)

■価格以外の競争軸を打ち出せるか

このように探索財は素朴に製造・販売すると価格競争の圧力にさらされます。そのため、競争の軸をずらして品質基準で言うならば二次品質三次品質での競争に持ち込むなどの方策が使われます。

また、アフターサービスを徹底する等といった考え方も良いかも知れませんね。
経済学
2015年3月11日

ホテリング効果 | ホテリングの法則とも呼ばれ、似たようなお店が集中していくのです

ホテリング効果
ホテリング効果とは、お互いに競合する製品・サービスを提供する企業が、あえて近くに(距離的にも、取り扱い商品・サービスラインナップ的にも)存在していく傾向の事を指します。ホテリングの法則などと呼ばれることもあります。

例えば、秋葉原のような電気街や神田神保町の古書街といった風に、一つの業種がある特定の街に集まることがあります。

また、家電製品であっても、競合同士が同じような機能、同じような価格の製品をあえて販売するといった事も発生します。

(冷蔵庫とか、電子レンジとかは、どのメーカの製品であっても同じような機能、同じようなデザイン、同じような価格帯ですよね?)

このような現象は、「競争相手に近づく(物理的にも・サービス的にも)事によって相手のお客を奪う事ができる」といった現象か説明できるのです。
  • どういう事?
さて、イマイチ説明になっていないですよね?どうして競合と近づくことによって顧客が奪えるのでしょうか?

それを説明するため、海の家について考えてみます。

ある海水浴場に海の家が2店舗あったとします。別に特別に焼きそばが美味しいわけでもなければ、アイスクリームもラーメンも普通のモノが置いてある海の家です。

このような場合、顧客が海の家を選択する理由として何が一番大きいでしょうか?同じような商品を同じような売り方をしているわけですから、商品は選択基準にはなりえないですよね?

それでは価格でしょうか?確かに価格で差を付ければ安い方が顧客を集めそうです。しかし、みなさんもご存じのとおり海の家の商品価格はどこも同じような価格となっています。

(このようなお店は、基本的に仕入れてきて、売るだけですから原価はほぼ同じだと考えられます。とすると、取りたい粗利もほぼ一緒でしょうから値段もほぼ一緒になるんですね。)

こういった状況で一番モノを言う要素はズバリ距離になります。

同じようなモノをワザワザ遠くまで歩いて行って買わないですよね?近くで買えればそれでいいはずです。
  • 距離が顧客獲得の大きな要素なら
さて、距離が顧客獲得の大きな要素ならどのようになるでしょうか?

例えば、海の家が二つしかない海岸であれば、より中央に寄った方が顧客を獲得することができます。

【もともとの位置】
==A店===|===B店==

【A店が中央に寄った場合】
====A店==|==B店==

上のような単純な図で考えてみると、A店はA店よりも左側の顧客を総取りでそのうえ、B店側の顧客を奪う事に成功しています。(何と言っても近いか遠いしか顧客にとっては重要ではないのですから。)

でも、B店もこのまま黙っている訳にはいきません。この後B店が採る戦術としては、B店も中央に寄るという事です。(商品の質を改良し差別化するという選択肢はココでは考えません。)

【B店も中央に寄った場合】
====A店=|=B店====

この結果、最初と同じ顧客数をお互いに分け合う事となります。(左側と右側の顧客にとってはお店が中央に集まったため不便な海水浴場となりました。)

このように、お互いに競合するお店があえて近くに存在していく傾向をホテリング効果と呼ぶのです。

関連用語
差別化戦略
経済学
2015年2月12日

インバウンド消費 | 外国の人が来日して消費してくれると経済効果があるのです

インバウンド消費
インバウンド消費とは、来日した外国人が日本国内で行う消費活動のことを言います。インバウンドが外国人が来日することを指し占める言葉なので、来日した人の消費活動といった意味になるのですね。

例えば、トルコやタイの人が来日して何かを買って行ったような場合をインバウンド消費というのです。また、中国の人が来日して高級品を買ったり(銀座とかに行くとビックリするくらいいろんな国の人が歩いていますよね?)するようなイメージです。

現在では、国を挙げて外国人観光客を呼びましょうと取り組んでいる事もあり、非常に訪日外国人の人が増えています。

そのため、訪日してくれた外国の人の消費活動が脚光を浴びているのですね。
  • 優遇措置も
このように、脚光を浴びているインバウンド消費ですが、外国人が日本国内でモノを購入するような場合では、日本人がモノを購入する際に当然かかるアレがかからないといった優遇措置も行われています。

日本人にとって日常となってしまっているため、今更意識する人はあまり多くないと思いますが、アレがかからないと非常にお得ですよね。

と、この説明でピンときた方いらっしゃいますか?

実は、あれとは消費税の事を指しています。つまり、訪日観光客は消費税が免税となるため、日本人よりも安く商品を購入することができます。

「ずるいなぁ…」と感じる方もいるかもしれませんが、観光客が国内でモノを購入しても、実際に消費するのは海外となる(はず)なので、輸出といった考え方になるのです。

そして、消費税は国内で消費されたものにかかる税金ですので(だから輸入商品のオリーブオイルとかを買っても消費税がかかるのです)、輸出扱いなら消費税はかからないのです。
経済学
2015年1月22日

ヴェブレン効果 | 高い方がモノの効用が高まるという考え方があります

ヴェブレン効果
ヴェブレン効果とは、高いモノであればあるほど、モノ自体の効用が高まるという効果のことを言います。英語ではVeblen Effectsと表記されます。

さて、ここで言う効用ですが、使用した際の『使用価値』ではなく、使用した人が感じる満足度の事を示します。

例えば、ペンを考えてみましょう。100円のペンも、5万円する高級ペンも、文字を書くという使用価値にはそれほど差がありません。(どちらも本質的には文字を書く道具であり、その機能は100円のペンでも十分に満たします。)

しかし、100円のペンを5万円のペンでは使用した人が感じる満足度には差がありそうですよね?

もちろん、すごく差を感じる人もいれば、ほとんど感じない人もいるかもしれません。しかし、いずれにしても満足度に多少の差は感じるはずです。

逆に言うと5万円のペンは、5万円であるという所に価値があり、逆にそれが1000円に値下げされてしまっては、価値が損なわれてしまうのです。

なんだか、誇示的消費といった内容に近い言葉ですね。また、こういった価格の付け方は心理的価格政策でいう所の威光価格と呼ばれるものです。(参考:価格のシグナル効果
  • 歴史について
さて、このような効果が提唱されたのはアメリカ、それもアメリカの景気が非常によく見せびらかすために消費を行うような人たちが多くいた時代の事です。

この時代、幸運にも富を得た人たちは、自らの経済力を誇示するためにあえて値段の高いものを買い求めました。

そして、このような消費行動を説明するためにアメリカの学者さんであったヴェブレン氏(Thorstein Veblen)が提唱した理論なのです。そうなのです、人の名前なんですね。

(日本人が仮にこのような効果について提唱していたら、山田効果とか、岡崎効果、伊集院効果といった風に呼ばれていたのかもしれませんね。)

関連用語
経済学
2015年1月13日

スノッブ効果 | 人と同じモノを持つなんて嫌だという心理から生まれる効果です

スノッブ効果
スノッブ効果とは、手に入りにくいモノほど余計に欲しくなり、逆に、みんなが簡単に手に入るモノはあまり欲しくないという現象のことを指します。英語ではSnob Effectsと表記されます。

「みんなが持っていないから欲しい。」とか「なかなか手に入らないから、たまたま見かけた時に衝動買いする」といった風に、モノそれ自体が持っている『使用価値』以上に希少であるといった事に価値を感じるといった心理です。(意味的消費記号的消費誇示的消費に近い考え方かもしれませんね。)

さて、このスノッブ効果は端的に言うと、「自分は他人とは違う」という事を示したいという心理から生まれるのです。その結果、そのモノを消費している人が増えれば増えるほど、自分がそのモノを消費した際に得られる満足が減少するといった結果をもたらします。

「他人と同じモノは嫌。他人が持っていたり使っていないモノを所有したり使いたい!」と言った事を、みなさんも経験したことがあると思います。このような感覚をちょっと硬く言うと上のような説明になるのですね。
  • 具体的には
さて、具体的にどのようなことなのでしょうか?例えば、豪華な夕食が食べられるくらいの金額を費やして、ちょっと高級なペンをあなたが購入したとします。

このとき、隣の席の同僚やクラスメートが同じものを使っていたら少しがっかりしてしまいますよね。

逆に、周りを見回して誰もそういったモノを持っていなかったら満足感が高まると思いませんか?(ちょっと嫌らしい心理ですね。まあ、スノッブという言葉自体に「知識・教養をひけらかす嫌な奴」といったニュアンスがありますからね。)

また、ある画期的な商品が発売された際には嬉しくて持ち歩いていたにもかかわらず、みんなが使うようになると、かっこ悪いような気がして、使わなくなるといった感じも近いかもしれませんね。

ただ、決してそのように感じる人が天邪鬼なのではなく、個性を出したいと願う自然な心の動きであると考えられます。

関連用語
ヴェブレン効果
経済学
2015年1月6日

労働分配率 | 賃上げを要求するときには良く聞くキーワードですが、景気が悪くなると必然的に上昇します

労働分配率
労働分配率とは、企業が生み出した付加価値のうち、どれだけを労働者に還元したか、すなわち『労働』者に『分配』した『率』を表す言葉です。

この労働分配率は以下の計算式で求められます。

労働分配率=人件費÷付加価値額×100%

もっとも、この付加価値の計算がくせ者です。この付加価値の考え方はコチラで詳しく解説しているのですが、『企業などが活動した結果、生み出された価値のことを言います。言い換えると、外から買ってきたモノやサービスに、自社が活動することによって付け加えられた価値のこと』を付加価値と言うのですが、これをまずしっかりと求めない事には労働分配率の計算はできないのです。
  • 労働分配率を実際に計算してみよう
さて、労働分配率を具体的に計算してみたいと思います。ある企業が100万円の付加価値を稼ぎ出したとします。

そして、この企業の人件費は80万円だったとします。

この場合、労働分配率は

労働分配率=80万円÷100万円×100
労働分配率=80%

となります。

なお、付加価値の額の中には以下のように必ず人件費が含まれている事も指摘しておきます。(日銀方式)

付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費
  • 労働分配率を人件費の指標に用いるケースもあります

さて、この労働分配率を人件費の指標に使うという考え方があります。企業が生み出した付加価値のうち○%を人件費として従業員に分配するといった考え方ですね。

この場合、不況期や自社の業績が悪化した場合、分母となる付加価値額が低下することが考えられます。

この結果、労働分配率が向上するので、あらかじめ決めてある労働分配率に戻そうとした場合、人件費を減らすという意思決定になるのです。

但し、人件費といった給与は動機づけ要因・衛生要因という理論では、衛生要因に位置付けられ、満たされないと不満の要因となるが、非常に多くなっても満足をあまり高めないとされています。

このため、単純に人件費を単純に削ると、従業員の士気が下がりさらに業績が悪くなるという悪循環に陥る可能性があります。
経済学
2015年1月5日

資本取引(経済) | 国際的な資本の流れを示す言葉です。同じ言葉で企業会計用語もあります。

資本取引(経済)
資本取引(経済)とは、外国との金融取引を示す言葉で、モノやサービスを媒介とせず、直接に資本のみが動くことを指します。

通常の貿易では、モノやサービスを売り買いすることによってその対価としてお金(資本)が動きます。しかし、資本取引の場合、こういったモノやサービスの対価としてお金を動かすのではなく、直接お金のやり取りをするという事です。

例えば、外国の人と株式や社債などの金融証券を売り買いしたりするものとなります。

この場合、別に財(モノ)やサービスの対価としてお金をやり取りしているわけでなく、単に資本をやり取りしているだけなので、資本の取引(資本取引)としているのですね。
 
また、株式や社債などをやり取りするだけでなく、金融派生商品を用いた取引や、現金の預金、貸付等も含まれます。これから成長が見込める国の企業の株式を購入する、高利回りが見込める債権を購入するといった投資行動をマクロでみると資本取引に分類されるのですね。

なお、このまんがにもあるように、資本取引という言葉は会計でも使います。それはコチラ(資本取引 企業会計)を参照してくださいね。

経済学
2014年8月7日

マキシミン戦略 | 失敗しても最大の利益が確保できるような選択をするのです

マキシミン戦略
マクシミン戦略とは、ゲーム理論の考え方の一つで、最悪の場合の得られる利得が一番大きくなるモノを選択するという考え方です。英語ではmaximin principleと表記されます。

「よく分からないよ」という声が聞こえてきそうな説明ですね。そのため、例を出して説明します。

例えば、某駅前に『田中堂』と『鈴木ベーカリー』というパン屋さんが並んで営業していたとします。あなたはその2件のうちの『田中堂』の店主です。

今、商工会から『暑気払い売り出しセール』の実施を提案されています。『鈴木ベーカリー』がこのセールに参加するか否かによって『田中堂』の売上が左右されるような状態のとき、セールに参加するか否かを決めます。(相手の出方次第で利得の額が変わるという事ですね。)

さて、『田中堂』が採れる方法は【参加する】か【参加しない】の二通りです。この2つの選択肢を『最悪の場合に最大の利得が獲得できる』という視点で選択するという事です。なお、利益の額はゼロサムゲームであるとします。

【参加する】場合
【参加する】場合、『鈴木ベーカリー』が参加する、参加しないと意思決定した場合それぞれ、0単位の追加の儲け、4単位の追加の儲けになるとします。

【参加しない】場合
【参加しない】場合も同様に、-5単位の追加の儲け、2単位の追加の儲けとなるとします。

これを整理すると以下の図表のようになります。
マキシミン

このような場合【参加しない】方が、最大の儲けは5で大きくなりますが、『最悪の時に最高の結果を』といった視点だと、【参加する】方を選べば最悪でも、0単位の追加の儲けが確実なのでこちらを選択します。

このように、「最悪でも0単位儲かる方がいいよね」という発想ですからリスクを取らずに確実に儲けていくという手堅い戦略であると考えることができます。

関連用語
ミニマックス戦略
経済学
2014年8月7日

ミニマックス戦略 | 一番損失の可能性が少なくなる案を採用するという戦略です

ミニマックス戦略
ミニマックス戦略とは、ゲーム理論の考え方の一つで、最悪の場合の損失が一番少なくなるモノを選択するという考え方です。英語ではmini-max starategyと表記されます。

さて、この考え方は最悪の場合に被るダメージが最小になるという考え方ですから、非常に手堅い方法になります。

例えば、相手の出方次第で投資の成否が決まるような案件があったとします。この案件はゼロサムゲーム(つまり相手が損した分を自分が獲得できる)というものだとします。

この時、A案を選んだ時、相手もA案を選べば3単位の損失、相手がB案を選んだ場合1単位の利得、B案を選んだ場合、相手がA案を選んだ場合2単位の利得、相手もB案を選んだ場合1単位の損失という投資案件があったとします。

まとめると以下の図になります。
ミニマックス

この場合、ミニマックス戦略に従うと「最悪の場合(失敗した時)に被るダメージが一番少なく(損失が少ない)という事」ですから、B案の1単位の損失の可能性の方がマシと考えるのです。

また、十分に相手が賢いという前提があるのならば、相手はB案を選びます。相手の立場に立つと、一番損失が少なくなるのはB案の-1ですからね。

すると、この投資案件は双方ともB案を採用するという所に落ち着くはずなのです。

似た言葉の『マクシミン戦略』は最悪の場合の利得を最大にするという発想なので、こちらは利得に目を向けていると考えることができますね。 

なお、このまんがのメガネ君はミニマックス戦略に従った場合、謝罪することを選択するはずです。冤罪だと言っているので理不尽ですが被害が一番少なくなる合理的な選択なのかもしれませんね。
経済学
2014年8月4日

ゲーム理論 | 相手の出方を読んで自分の行動を決めましょうという理論です

ゲーム理論
ゲーム理論とは、自分が他者の意思決定の影響を受け、また自分の意思決定が他社に影響を与えるような状況においてどのように振る舞うべきかを考える理論のことを言います。
 
正確さを犠牲にしてあえて簡単に言い換えると『駆け引き』について考えましょうという理論です。

ココであえて『駆け引き』という言葉を使いましたが、現実にはこの駆け引きが必要な場面が多くあります。

例えば、同じような商品を販売している小売業、AショップとBストアが並んでお店を営んでいたとします。どちらのお店も特に競合している別のお店と協力関係を結んでいませんし、また自社の利益を最大化したいと考えていたとします。

この時、相手の出方を読みつつ自社はどのような方策を取るのが望ましいのかを考えるのです。それぞれの行動による結果は以下の4通りが考えられます。
  • パターン1、2:どちらかのお店が抜け駆けして安売りをはじめた場合。
安売りをした方のお店は大きく儲かり、安売りをしなかった方のお店は壊滅的な打撃を被るとします。
  • パターン3:双方のお店が安売りを始めてしまった場合。
適正な利潤が確保できなくなり、双方ともあまり儲からなくなって苦しい立場に追いやられるとします。
  • パターン4:双方のお店が現状のままの価格水準でいた場合
大儲けはできないまでも、双方ともそれなりに儲かるとします。

このような時に、「あなたのお店は安売りをすべきですか?」といった事を考える理論がゲーム理論です。

今回の例は有名な『囚人のジレンマ』というお話を元に作っています。このような場合、双方とも協力して現状のままの価格水準でいる『パターン4』が最適解なのですが、自社が壊滅的な打撃を被る『パターン1や2』を恐れ、抜け駆けしようとして安売りを始める『パターン3』の双方とも安売りを始める事になると言われています。

このまんがでも、自白してしまっています。 

関連用語
ミニマックス戦略
マキシミン戦略
経済学
2014年7月16日

人口オーナス | 人口構成が経済の重荷になることもあります

人口オーナス
人口オーナスとは、人口構成が経済成長の重荷(onus:オーナス)になっている状態を指す言葉です。具体的には従属人口指数が高い状態、すなわち、子どもや高齢者などの働き手ではない人たちの比率が高い状態を指します。

イメージとしては、いわゆる現役世代の人が少なく、子どもや高齢者を少ない働き手で支える必要がある状態になります。

このような状態となると「社会を支える人たちが少ないから、働いている人が沢山社会保障費を負担してね」といった状態となり、働く世代の可処分所得が減少します。

年金制度に支払うお金や健康保険にかかるお金、社会保障のための財源と称した税金がどんどん上がっていくような状況ですから、同じだけ稼いでいても自分が使えるお金はどんどん減っていってしまいますよね。

そして、可処分所得が減ってしまえばモノやサービスは売れにくくなりますし、国全体で見れば、経済成長に役立つようなインフラ投資などに税収を振り分けることが難しくなってしまいます。

従属人口指数が高くなると、このような現象が発生すると考えられるため、経済成長の重荷になってしまいそうですよね。

そして、このように人口構成が経済成長の重荷になるような状態を人口ボーナスの逆、人口オーナスと呼ぶのです。

■人口オーナスを緩和するためには

このような人口オーナスは、働き手が少なく、支えないといけない人が多くなるという負担の大きな状況です。

ではこの負担を減らすためにはどうすればよいでしょうか?まずは、労働参加率の引き上げ、言い換えれば働き手を増やすことです。例えば介護や子育てで働くことが難しかった人が安心して働くことができることを目指すことが大切です。

介護をしながらでも働き続けることができる制度(例えばフルタイム勤務以外での時短勤務や週3日勤務を認める。これを国が制度として推進する)等を作ることで、安心して働きながら介護をすることが可能となります。

ちゃんと制度を整えることは、その制度を利用する人の為でもありますが、働き手を増やし社会を支えるという、社会全体でも大切なことなのです。

また、生産性向上も鍵となります。新しい技術を活用して一人あたりの働く力を高めることと言い換えることができます。

例えば、従来は1の力を出せていた人が1.5の力を出せるようになれば、1.5人分の働き手であるのと同じですからね。

このように、働く人数を増やす工夫と、一人ひとりの働く力を高める工夫。これらの工夫をしっかりとやっていくことが重要なのです。


経済学
2014年7月15日

人口ボーナス | 働き手が多いと経済発展しやすいという考え方です

人口ボーナス
人口ボーナスとは人口構成が経済成長にとって都合の良い状態のことを言います。具体的には、従属人口指数が低い、すなわち、子どもや高齢者などの働き手ではない人たちの比率が低い状態を指します。

いわゆる現役世代が多く、子どもや高齢者を支える人たちが多ければ「社会を支える人たちが多いから、一人あたりの負担は少なくて済むよね。」といった状態となるため、働く世代の可処分所得が増加します。

すると、働く世代が使えるお金が増えるわけですからモノやサービスの売れ行きも良くなります。この結果、経済成長に結びつきやすくなるという事が言えるのです。

また、社会を支えるために使われる教育や医療、年金制度に必要とされる費用も少なくなります。(年少者が少なければ教育のための費用が、高齢者が少なければ医療費や年金支給額が少なくなりますよね。)

この結果、国全体では税収をインフラ投資などに振り向けることができるため、この面でも経済成長に有利となります。

このように、人口構成が経済成長に都合の良いような状態を、ボーナスに例えて『人口ボーナス』と呼ぶのです。

もっとも、経済成長は人口構成のみではなく、技術水準の向上や、知恵や知識の蓄積による生産性の向上といった要因でももたらされます。

そのため人口ボーナスがすべてではないという点に注意が必要です。

■人口ボーナスはいつ発生するの?

さて、このボーナスという言葉が示す通り人口ボーナスは特別な状態です。硬い言葉でいうと「従属人口指数が低下する局面」、言い換えれば、働き手が多く子どもやお年寄りが少ない時期に発生するものです。

我が国日本では、1960年代から90年代ぐらいがその時期で「高度経済成長」や「バブル経済」など、我が国がドンドン成長して社会を非常に多い働き手がドンドン押し上げていったというイメージです。

丁度、いまの東南アジアの国々(インドやベトナム、インドネシアなど)がこの人口ボーナス期にあるのです。

■人口ボーナスの終わりに発生する問題

人口ボーナス期が終了したあとは、今の我が国のように、少子高齢化による社会保障料(年金や健康保険など)の急増などにともなう、可処分所得の減少が経済にダメージを与えます。

我が国は1990年代以降はいわゆる人口オーナス(人口ボーナスの逆)期に該当し、労働力人口が経済成長の成約となっています。

このような状況においては、生産性向上に真剣に取り組むことが重要です。(というか、それしか活路が無い状況です。)

ただし、現在の先進諸国は人口ボーナス期を終えた、ほぼ同じ条件ですから我が国だけが特別に不利というわけではありません。そのため、生産性向上が本当に重要になるのです・

■経済成長は人口ボーナスだけが要因ではない

もちろん、人口が多いだけが我が国の高度経済成長の要因ではありません。経済成長には「労働投入量」「資本蓄積」「技術進歩」といった要素が必要で、高度経済成長期はこの3つが噛み合っていたため、素晴らしい発展を遂げることができました。

しかし、現状でも「資本蓄積」や「技術進歩」のエンジンは行きていますので、我が国の発展のためには出来ないことを嘆くのではなく、今できる「資本蓄積」と「技術進歩」を追求していく必要があるのです。

なにより、スマホやAI、大規模な工作機械などがあれば、少ない人数で従来よりも大きな仕事をすることが可能なのですから。

■人口ボーナスと賃金・消費の関係

人口ボーナス期には、生産年齢人口の増大によって労働供給量が増大します。その結果実質GDPを力強く押し上げるのですが、同時に賃金上昇圧力も高まります。

そして、賃金上昇は所得の増大をもたらし、消費支出の拡大につながります。さらに、消費が増大すれば企業側は設備投資を行ったりしますので乗数効果を発揮するのです。

何となく難しく書いてみましたが、単純にいえば、経済的には良い循環が回るのでどんどん経済が発展するということです。

実際に我が国でも1960年代は毎年給料が上がり、三種の神器と呼ばれた家電が飛ぶように売れていったのです。

統計でも可処分所得が毎年増大していった事がわかっています。

このように、人口ボーナスは労働供給が多くなるだけでなく、

労働供給増大

所得増

消費像

投資増

といった循環が発生するため、極めて力強い経済発展のエンジンとなるのです。

経済学
2014年7月14日

従属人口指数 | 「現役世代何人で働けない世代を支えるか」という指標の事です

従属人口指数
従属人口指数とは15歳未満の年少者と65歳以上の年長者の人口が、生産年齢人口年齢に対して占める比率のことを言います。英語ではage dependency ratioと表記されます。
 
15歳以下の年少人口と65歳以上の老年人口を、従属人口(働き手ではない人たち)と考え、働き手に対する比率を考えようという指標です。

よくマスメディアなどで言われる「このまま高齢社会が進展すると、高齢者を現役世代○人で支える必要がある…」という発想に、年少者を加えた考え方です。

発想としては「働き手何人で働き手でない人を支える必要があるか?」といった事を考えるための指標なのですね。

この従属人口指数を求める計算式は

【従属人口指数=(年少人口+老年人口)÷生産年齢人口×100%】

となります。分子に従属人口(年少人口+老年人口)をとり、分母に生産年齢人口をとるという、定義通りの計算式ですね。
  • とはいえ…
従属人口指数が増加していくと、現役世代一人あたりの負担が重くなり、経済成長についてはマイナスの効果になると言われています。

生産年齢人口が多くなることによって発生する人口ボーナスの逆、人口オーナス(onus:重荷)の原因になると言われています。

もちろん、年少者の労働は『児童労働』等の問題があり、規制をしっかりする必要があると考えられます。この意味で一括りに従属人口として捉えてしまって良いと思われます。
 
しかし、年長者は老年人口と一括りにして従属人口として捉えるのではなく、年長者の知恵や経験をうまく生かすような社会にしていければ、見かけの従属人口指数と実態が変わってくるかもしれませんね。
経済学
2014年5月22日

対外純資産 | 外国に持っているプラスの財産が多い状態です

対外純資産
対外純資産とはある国が海外に保有している債権(資産ですね)から、海外への債務(借金)を差し引いたモノを言います。

イメージとしては、企業会計に出てくる貸借対照表自己資産(純資産)といった感じです。

海外にいずれ返さなくてはいけない債務から、海外からいずれ回収できるお金を差し引いた値を対外純資産というので、この数値がプラスになっているという事はある国が外国に持っている財産がプラスであると考えても良いと思います。
  • 利子や配当を受け取れます
さて、海外からお金を借りていたらどうなるでしょうか?タダでお金を貸してくれる人はいないというのは、個人レベルでも国レベルでも同じなので当然利息を支払う必要がありますよね?

また、海外から投資を受けていたらどうなるでしょうか?こちらもタダで投資する人はいないので当然、利益の一部を配当という形で投資家に還元する必要が出てきます。

このように、海外からお金を借りていたり投資を受けていたらお金が出ていきます。(もちろん海外から資金を導入すれば経済が成長するという面も大きいのですが、その対価は支払う必要があります。)

そして、海外へお金を貸していたり、投資を行っていれば上の例の逆にお金を受け取ることができるのです。

ちなみに我が国は2014年時点で世界最大の対外純資産を保有していると言われています。

■対外純資産がプラスの意味

対外純資産がプラスという意味は、国が外国にお金を貸しているといういわゆる「貯金が多い」という状態を示します。この貯金は、投資ですから利子や配当をもたらしてくれます。

我が国はこのような状況であり、国際投資収支における第一次所得収支が黒字となることから、経常収支の安定化に寄与しています。言い換えれば、外国から利子や配当を通じて沢山のお金を受け取っている状況なのです。

他方で、この対外純資産がマイナス(純資産がマイナスという言葉には違和感がありますが、説明の便宜上このまま記述します)の場合、「借金が多い」状況に当たるため、返済負担や利息の負担が多くなります。

アメリカなどは対外純資産がマイナスになっておりますが、経済規模が大きいこと、自国通貨のドルが国債基軸通貨であることから、国際金融市場から資金を吸収しつづけることができます。

ただし、一般的には対外純資産の大きなマイナスは国の経済の足を引っ張ることにつながる傾向があるので(通貨危機の原因にもなり得ます)注意が必要だったりします。




経済学
2014年5月21日

中所得国の罠 | 順調に経済発展をしていても高所得国になるには壁があるのです

中所得国の罠
中所得国の罠とはある国の経済が発展していわゆる中所得国水準になったものの、そこで停滞してしまい高所得国水準にたどり着けない状況を指す言葉です。英語ではmiddle income trapなどと表記されます。

所得水準が低い国が、自国の低廉な労働力や天然資源を活用して急激に経済発展を実現し、その結果中所得国の仲間入りするという事はいろんな国で起こっています。しかし、その経済発展の勢いを持続させ、そのまま高所得国水準まで至る国は少ないのが現状です。
 
というのも、低廉な労働力を活用して製造拠点として発展していたとしても、ある一定のところで労働コストの低い人材の供給は枯渇し、賃金水準は上昇に転じます。(参考:ルイスの転換点

その結果、中所得国水準までたどり着いた国はいつまでも低廉な労働力に頼ることはできなくなります。(国民の生活水準は向上するので良い事なのですが、低い賃金水準という強みは失われていきます。)

このような状況に陥った時に、自国の賃金水準の低さが主な優位性であった場合、なかなか従来のようなペースの経済発展を持続させることは難しくなります。(投資をしてくれていた企業などが「もっと人件費の安い国でモノを作ればいいや…」といった風に考えてしまいますからね。)

この中所得国の罠から抜け出すためには、人件費が高くとも、内需が大きいとか、先進的な技術を開発しているといった、持続的に経済発展するような仕組みを作っていく必要があるのです。

■中所得国の罠を脱する教育の役割

このように中所得国の罠を抜けるためには、ものを作るだけでは足りません。部品を安く大量に作ることができても、得られる付加価値はその製品自体を企画・開発することができる企業には全く及ばないのです。

例えば、スマホの部品をたくさん作ることが出来ても、自分たちで新しいスマホを企画・開発することができる企業と比較すれば、全く得られる付加価値は異なってきます。

このように、中所得国の罠を脱するためには安価な労働力を武器にするのではなく、高度な技能を持つ労働者層を育成することが重要です。

そのような分厚い労働者層が生まれてくると次は技術革新、イノベーションが生まれてくるのです。シンガポールや韓国は充実した教育制度と研究開発投資で中所得の罠を突破したということができるのです。

経済学
2014年5月16日

資本生産性 | 投入した資本の効率性を見る指標です

資本生産性
資本生産性とは、事業などに投下した資本の効率性を示す言葉で、資本の投入量と成果の産出量の比率を示す言葉です。英語ではCapial Productivityと表記されます。

この資本生産性とは投入した資本の効率を見るという指標です。一般的に機械や設備を導入すれば産出量は増加しますよね。

例えば、手作業でおまんじゅうを丸めている工場よりも、機械で製造している工場の方が産出量は多くなると思います。

では、機械を導入して製造している工場同士を比べようと考えたときはどうしたらよいでしょうか?

こういった場合に役に立つ指標がこの資本生産性です。
  • 資本という資源に着目した生産性指標です
さて、この資本生産性は

【資本生産性 =産出量(付加価値)÷総資本】

といった計算式で算出されます。この式からわかる通り、投入した資本一単位当たりの産出量を求める指標なのですね。

そのため、異なる企業であっても投入した資本が有効に使われているかを比較することができるのです。

例えば、A社は100万円の機械を使って500万円の付加価値を生み出し、B社は50万円の機械を使って300万円の付加価値を生み出していたとします。

この場合、A社よりB社の方が資本生産性が大きくなるのでB社の方がより資本という希少な資源をより有効に活用できていると考えることができるのです。

関連用語
労働生産性
経済学
2014年5月15日

労働生産性 | 労働時間という切り口の生産性です

労働生産性
労働生産性とは、労働力の効率を示す言葉で、労働力の投入量と産出量の比率を示す言葉です。英語ではlabor productivityと表記されます。

生産性という資源の投入量と産出量の比率を指す言葉に労働とついているので、労働力という資源に着目した生産性の指標であるという事ができます。
  • 従業員数や労働時間数で算出します
さて、労働力と一言で言っても、従業員の数や投入した労働時間などといった切り口があります。従業員一人当たりでどれだけのアウトプットを出したか、といった従業員一人あたりの切り口や、一時間当たりどのくらいのアウトプットを出したかという労働時間当たりの切り口です。

例えば、従業員の数という切り口で見る場合、従業員一人あたりの生産性といった指標となるので

【労働生産性=産出量(付加価値)÷従業員数】

といった計算式で求められます。

また、労働時間という切り口で見る場合は

【労働生産性=産出量(付加価値)÷総労働時間】

となります。

これらの違いは、分母側の指標が従業員数や労働時間になるんですね。 
  • 労働生産性を向上させるためには
さて、労働生産性は産出量を投入量で割るといった単純な式で求められる指標なので、この指標を向上させる方法も原理としては単純になります。

すなわち、分子となる産出量(付加価値)を増やすか、分母となる投入量(この場合従業員数や労働時間ですね)を減らすのです。

付加価値を増やしたり、労働時間数を減らして労働生産性を向上させるという方法ならば、生産性が向上しているという事が出来ると思いますが、従業員数を減らすと言い始めたら要注意です。

従業員数という指標を用いる際には、従業員の勤務時間は計算式に入ってきません。そのため、従業員が長く働けば働くほど生産性が上がっているかのように見えてしまいます。(一時間の仕事の成果より二時間の仕事の成果の方が、成果の総量は多くなりますよね?)

この場合、長時間仕事を行えば従業員一人あたりの労働生産性は増えてきます。(3時間働く従業員も、8時間、12時間働く従業員もカウントとしては1人ですからね)

但し、収穫逓減の法則といった言葉もあるように、度を越した長時間労働は生産性を下げてしまいます。(この場合、労働時間当たりの生産性という意味ですね。)

「労働生産性を上げよう」という掛け声がかかった際には、従業員一人当たりなのか、1時間当たりなのかを確認した方が良いというわけですね。

※労働生産性を上げるためにはFAなどを実施し、労働資源の投入量を減らすというアプローチもありますが、この場合資本生産性(投入した資本に対する付加価値額の量)は低下してしまいます。

この労働生産性を上げるためのアプローチの一つとしてLSPなどが上げられます。


サイト紹介
まんがで気軽に経営用語を学んじゃおう。難しい・なじみのない経営用語でも、まんがなら簡単に親しめます。
まんがで気軽に経営用語について
TOP絵一覧

📘 noteでも発信中

経営支援の現場から、
言葉のリアルをお届けしています。

▶ noteを見る
索引
あ行
か行
さ行
た行
な行
は行
ま行
や行
ら行
わ行
英字 A B C D E
F G H I J
K L M N O
P Q R S T
U V W X Y
Z
数字 1 2 3 4 5
6 7 8 9 0
ライブドアさんから
badge
リンクについて

このブログはリンクフリーです。
以下のバナーもご自由にお使いください。

まんがで気軽に経営用語バナー
ランダム
  • ライブドアブログ