行政指導とは、行政機関が誰か特定の人に対して、何かをする事(作為)や、しない事(不作為)を処分に該当しない形式で求める事です。
この行政指導は指導や勧告、助言といった形で行われます。但し、処分に該当しないため強制力はありません。
あくまで市民や団体などが自発的に行政機関に協力するからこそ、この行政指導が効果を発揮するのです。
行政指導って言葉は聞く機会が多いと思いますが、建前上は強制力がないって知っていましたか?
■強制力がないってどういうこと?
行政指導には、強制力がないといわれてもいまいちピンときませんよね?指導する以上、何らかの強制力が伴うと感じるのが通常の感覚だと思います。しかし、行政指導には本当に強制力がないため、従わなくとも良いですし、(自発的に)したがってもよいのです。
■穴を掘る場合
『庭に穴を掘ろう!』と思った人が、役所に相談に行った場合に、行政の担当者に「庭に穴を掘るなんて止めた方が良いですよ。」と行政指導された場合を考えてみます。(この説明においては、庭に穴を掘るという行為が法律的には何にも問題がないと仮定します。)
この場合、役所の人の発言に強制力はありません。(つまり『庭に穴を掘る』という行為を、やめなければいけないという義務はありません。)
但し、そうはいっても庭に穴など掘ると落ちる危険がありますし、穴を掘っている間に事故があるかも知れません。
だから、行政側は止めて欲しいので指導とか勧告とか助言という形で「庭に穴を掘らないで」という風に言っているのです。
そのため、行政指導を受けた人が任意に協力をする(この場合は言われた人が、『庭に穴を掘らない』事に決める)事が期待されているのです。
そして、この行政指導は処分ではないため(強制力がないため)強制してはならないし、逆に処分ではないため(強制力がないため)法律の根拠がなくても行えるといった形になるのです。
・任意に協力する人が多い
どうでしょうか?強制でなく、任意の協力を求めているだけという言い方、ピンときましたか? そして、行政の担当者に言われたら、強制ではないと知っていたとしても「でも強制じゃないと言ってもお上に逆らうと色んな不利益が…」とか、「この程度の内容なら角を立てても仕方ないし…」と感じる人が多いのです。
また、少なくとも行政でその仕事をしている人なら、庭に穴を掘ることに対する知見も持っているでしょうから、行政指導に信憑性もあるのです。
そのため、強制力を持たないという建前の行政指導ですが、多くの人や団体は行政指導の通り、することやしないことを決めるため効果を発揮するのです。
また、この行政指導は、企業に対しても行われます。そして、企業側も上で挙げたように考えるため、従う場合が多く、行政の考えたとおりにある程度は誘導されていくのです。
■法令の隙間を埋める
我が国は法令上の根拠があって初めて行政機関が動くことができると言った仕組みになっています。 しかし、通常は法令の制定よりも世の中の動きの方が早いため、隙間が生まれます。
そして、その隙間で無秩序が発生しないように行政指導が行われているのです。
…ということでお願いしますね。
なんか役場の人が来ていましたけど、なんかやっちゃいました?ちゃんと消防法などにも準拠してお店をやっているはずなんですけど。
街作りのことでお店の営業方法で協力して欲しいって行ってきたのよ、さすが、役場の人は街全体を見ているから的確な行政指導だったわ。もちろん強制力がないのは知っているけど、別に従わない理由もないし、従うわよ。
■任意とは言っても
そして、行政指導は任意とは言いつつもある程度は強制させる仕組みも備えています。例えば、行政指導に従わなかったことを公表するなど、企業のレピュテーションリスクに対する危機管理を刺激することが行われます。と、なんとなく、不透明ですよね?
その通りで、この不透明さは一昔前、外国から市場参入を妨げていると非難されていました。
もっとも、「行政指導に従わない」と言われたらしつこく指導を続けてはいけないとされていますし、行政指導にもかかわらずあたかも強制力を持っているような表現をしてはなりません。
さらに、行政指導の内容や趣旨、責任者は誰なのかを明確に示すことも要求されています。これは求めれば特段に支障がない場合は書面で交付することがルールとなっています。
このように、なるべく不透明にならないように運用されているのです。
解説で出てきた用語・関連用語
レピュテーションリスク
法令
行政手続法