テイラーの科学的管理法とは、テイラー(Taylor)が20世紀初頭に提唱した管理論です。課業管理、作業の標準化、作業管理のための組織構築などを掲げ客観的・科学的に作業を管理しましょうといった発想で、従来の勘や経験に頼っていた生産管理を改め、生産性の改善を果たした管理論です。
テーラーシステムなどとも呼ばれます。
■科学的管理法が誕生した背景
テイラーが科学的管理法を考え出した当時アメリカの産業界は、能率の低下や組織的怠業などの様々な問題に直面していました。
原因としては、経験や習慣、勘に頼り、その時々の状況によって、成行で管理する「成行管理」が行われていたためといわれています。
経験や習慣、勘といえばまだ聞こえがいいのですが、要するに管理者が仕事についてあまり理解をしておらず、その結果不能率が生じていたのです。
とはいえ、経験や勘でもある程度は仕事を理解しているから管理できていると考えられます。機械を作るための工程は管理者ならば理解できているはずですよね?
しかし、テイラーは本当に細かい作業内容まで知らないと管理する事ができないと考えたのです。
■科学的管理法は何が科学的なのか
仕事といった大きな塊では管理が難しかったため、作業を細かく分けて管理することを考えました。
そのために労働者に対して割り当てるべき仕事量を決める必要があると考えたのです。
仕事はいくつかの動作が組み合わさってできています。
おまんじゅうの生地にあんこを入れるといった工程では、あんこを適量取って、生地に入れると言った工程であると考えられます。
しかし、これではまだざっくりとしているので「手を伸ばす」、「あんこを測る」など合理的な範囲で分解をし、それぞれの作業にかかる時間を合理的に計ったのです。
分解して、計測すると言ったところが科学的な考え方ですよね。なので、科学的管理法なのです。
KKDよ!いつの時代も経営や生産管理はKKD。
KKDって何ですか?
経験、勘、度胸よ。生産管理どんとこいよ!
100年ぐらい前に科学的管理法を提唱したアメリカはすごかったんだなー
あら、今の技術を甘く見ちゃだめよぉ。君たちの作業は全て観察済みだから、作業標準は設定済みよ。それも一番生産性の高いパンダ君の生産量でノルマを決めるわよ。
ノルマって果たしたら高い賃金が,果たせないと低い賃金にするって言っていましたよね。
そうよ、科学的管理法で生産性革命ね!
■テイラーの考えた科学的な方法論
前述の通り、当時のアメリカ産業界は能率の低下や組織的怠業などに悩まされていました。
この状況を打破すべく、テイラー(Taylor)はその経験から以下の方法論を考え出しました。以下ご案内します。
■1.課業管理
一日の仕事量を第一線の労働者ならば達成可能であるような水準に設定し、仕事量の標準として課業します。
この標準の算出方法は決して勘や経験に頼るのではなく、動作研究、時間研究を行い科学的に求めます。
ノルマというとなんとなく非科学的であったり精神論的なニュアンスがありますが、この科学的管理法では、あくまで科学的に割り出した標準時間を元に設定したものとなります。
ここまでは説明したとおりです。
■2.差別出来高給
ただ、ノルマを課すだけでは労働者が熱心に働く保証がないため、課業を達成できたら、高い賃金を支給し、課業を達成できなかったら低い賃金としました。
ノルマを達成すれば、高い方の賃金が、ノルマが達成できなければ低い方の賃金が支払われるといったイメージです。
たくさん作れば作るほど、もらえる金額が変わると言った単純な出来高給ではない方法です。
今日風に言えば労働者へ対するインセンティブまでしっかりと考えていたのです。
■3.職能別職長制
機能性を追求し機能別に管理者を設置しました。この考え方は、ファンクショナル組織の原型となっています。
また、計画を立てる人とその計画を実行する人も切り離しました。計画を実行する人が自分自身で計画を立てると、結局は元の木阿弥になりがちですので、切り離したのです。
このように、生産計画の部署が現場から切り離されたことも科学的管理法の特徴です。
テイラーの科学的管理法とは、これらの事を通じて工場の能率を向上させ、その結果、労働者も工場も双方が繁栄できるように考えているといったものです。
■テイラーの科学的管理法へ対する批判
一方このテイラーの科学的管理法には以下のような批判がなされています。
■1.労働者を命令を受けて作業するだけの機械のようなものとみなしている。
■2.作業の管理という視点は持っているが、企業全体の管理という視点が欠けている。
このまんがでは、パートリーダーがかなり高い目標を設定し、うまくその目標を達成した女子生徒には賞賛が与えられますが、達成できなかった方の男子生徒は叱責されています。
課業管理と差別出来高給を表現しています。
なお、その後ホーソン実験で科学的管理法だけでなく、職場には人間関係論的なアプローチが必要であり、職場の生産性を向上させる手法であると指摘されています。
解説で出てきた用語・関連用語