

生産管理とは、製品を納期通りに、一定の品質、低コストを実現しつつ製造するために行う活動のことを言います。
つまり、自社の持っている経営資源を活用して、顧客が望むモノを、品質、コスト、納期(総称してQCDと言います)のバランスを取りつつ製造するという事ですね。
まず、なぜQCD『Quality(品質)Cost(コスト) Delovery(納期)』のバランスを取る必要があるのでしょうか?■生産管理とQCD(品質・コスト・納期)
それはQCDが生産管理の根幹となる概念であり、いっぺんには両立できないからです。

品質もコストも納期もすべてお客様のために大切なのよ!

でも、品質を上げようとしたらコストが余計にかかったり、丁寧に仕事をする必要があるので、納期は遅くなりますよね?

じゃあ、コストを優先するのよっ

コストを下げようとしたら、品質を犠牲にしたり、余裕がある時に作るから納期は遅くなりますよ?

だったら、納期最優先にしましょう

でも、納期最優先にするためには、コストを掛けて特急対応したり、品質が犠牲になりますよ

そこはあれよ、裏技的なあれでなんとかするのよっ

もちろん裏技なんかありませんので、QCDのバランスを取ることが求められます。
この3つを総称してQCDと言います。(詳しい解説はリンクから見ることができます)
■QCDを高いレベルで最適化するための生産管理プロセス
さて、このようにQCDを高いレベルで最適化するというのが生産管理の一つの目的ですが、これだけではまだ漠然としていて、どこから手を付けていけばいいかわかりませんよね?そこで、まずは生産管理のプロセスについて把握することが大切です。そして、どんなプロセスがあるかを眺めながら改善点を探していくのです。
■生産管理のプロセス
生産管理の論点は多岐にわたりますが、流れだけを抽出すれば、計画する→必要な経営資源を集めてくる→管理しながらやってみる→実施内容を確認をし、改善に結びつける
といったものとなります。
以下の図では馴染みが深いPDCAの観点からどのプロセスが何にあたるのかを整理してみました。
プロセス | 概要 | 主な論点 | PDCAとの関連 |
---|---|---|---|
計画(Plan) | 需要予測や受注状況を基に、生産量・時期・手順を設計 |
・生産計画 ・需要予測 ・能力負荷計画 ・販売との連携 |
P:生産目標・方針を立てる (QCDのバランスを取って設定する) |
調達(Do) | 必要な原材料・部品・人材などの資源を用意する |
・資材調達 ・仕入先管理 ・在庫管理 ・人員管理 |
D:計画に基づき準備を実行する |
実行(Do) | 実際にモノを作る工程(加工・組立など) |
・標準作業の遵守 ・設備の稼働状況 ・不良率と歩留まり ・作業者教育 |
D:モノづくりを実施 |
統制(Check・Act) | 進捗・品質・コストなどを監視し、問題があれば是正 |
・納期遵守率 ・工程進捗管理 ・トラブル対応 ・KPI分析と改善 |
C:進捗や結果をチェック A:改善策を講じて反映 |
■生産計画という似た言葉と生産管理との違いは
生産管理は上の表全体を示した考え方ですが、生産計画は生産管理の一部で、「いつ、何を、どれだけ作るか」を決めていく部分に当たります。この図では、上のPlan(計画)の部分に当たります。この計画が無いまま調達や実行に移ったら、本件のマンガのように行き当たりばったりの対応になってQCDの両立どころか、ちゃんと製造すらできなくなってしまいますよね。
このように生産計画は重要ではあるのですが、それは生産管理全体がなされることが前提となります。その意味で、生産計画は、「生産管理のスタート地点」であるとも言えます。
■製造業だけが生産管理をするの?
とここまでの説明で、「ふーんたしかに大切だよね。でもうちはお弁当屋さんだからあんまり関係ないね」と思った、非製造業の方も多いと思います。しかし、この全体的な考え方はどのような業種であっても重要です。以下のように考え方のエッセンスはどのような商売でも使えますので、自社のQCDを念頭に生産管理的な考えをしてみると見えてくるものがあるかもしれません。
業種 | 生産管理の主な対象 | 計画(Plan) | 調達・実行(Do) | 統制(Check・Act) |
---|---|---|---|---|
製造業(参考) | モノの製造 | 何を・いつ・どれだけ作るか | 資材調達、加工・組立、作業手順 | 品質検査、納期管理、不良対策 |
サービス業 | 人的サービスの提供 | 予約・顧客対応の見込み、担当割 | スタッフ配置、接客の標準化 | 満足度調査、クレーム対応、教育 |
小売業 | 商品・売場の整備 | 販促計画、在庫補充計画 | 仕入・陳列、接客応対 | 販売実績分析、欠品・廃棄率の管理 |
飲食業 | 食事の提供 | メニュー計画、仕込みスケジュール | 食材調達、調理オペレーション | 提供スピード・味のブレ、顧客評価 |
■生産管理の考え方は小売業にも必要

ねぇ、このかわいいぬいぐるみ。ちゃんと什器に入らないんだけど

あら、妙な隙間がもったいないわねぇ。棚に3つしか入らないし、しかもギチギチ。。。。

4つ無理やり入れたら、一つは横を向いちゃってますよ

見栄え悪いし、在庫はバックヤードに溢れているし。。。せめて計画ぐらい立てて仕入れるべきだったわねぇ
こんな微妙なオペレーションに覚えはないですか?これって小売業の話ですが、いわゆる生産管理に失敗している状況なんです。
ただ、こんな微妙なオペレーションをしていてもお店が存続しているわけですから、伸びしろがとてもあるという前向きに捉えることもできます。
■最後は経営資源の浪費につながっています
この例でもなんとか存続はできているかもしれません。しかし、ちゃんと管理してお店を運営すればお客様に、今よりも良い品質のものを(商品の管理をしっかりするので品質は良くなります)、今よりも安い価格で(在庫ロスがなくなればお客様へ還元できます)、今よりも素早い納期で提供することができるかもしれません。

このQCDは確かにトレードオフですべてを両立することができないとする考え方ですが、生産管理をしっかりやることで、今まで発生していた無駄をなくせば、より高いあるべき水準に近づけていくことが可能なのです。
初出:2013/08/30
更新:2025/07/11