
固定費とは、使っても使わなくても固定的にかかる費用の事を言います。会社で言うと工場とかお店とかで作ったり売ったりしなくてもかかってしまう費用の事です。
たとえば、工場やお店の建物の減価償却費や工場やお店で働いている人のお給料などは何も作らなかったり、お客さんが来なかったりしても一定の額はそのまま発生してしまいます。
また、お店などを借りていれば家賃がかかりますし、お金を借りていれば支払利息がかかります。 これらの費用は、使っていても、使っていなくても(操業度の増減にかかわりなく)固定的にかかる費用なので固定費というのです。
この反対の言葉として、変動費というものもあります。こちらは、お店で販売すればするほどかかる売上原価(仕入代などですね)や水道光熱費などが該当します。
■固定費が多いと
さて、この固定費ですが多ければ多いほど経営上のリスクが増します。 簡単に言うと、何もしないで出ていくお金が大きければ大きいほど経営は不安定になりそうですよね?そのため、上手く工夫して固定費の金額を抑えていくことが重要なのです。
■コスト削減のコツは
コスト削減のコツは、この固定費の削減に優先して取り組む事です。例えば、不要な倉庫を借りていたりしませんか?不要な営業車を持っていませんか?不要な保険に加入していませんか?
こういった固定費を一つ一つ見直していくことで、稼がなければならない粗利益の額が少なくなるため、経営が楽になります。
逆に言えば、使っていない倉庫を持っているならば、その倉庫のために売上を上げなければならないといった状況になっているわけです。
この倉庫の維持に月10万円のコストをかけているとします。この場合、小売業を営んでいるとすると、一般的な粗利率は、30%程度になりますので、売上で言うと33万円分を毎月損している事となります。
33万円×30%≒10万円 逆に言えば、不要な倉庫の維持費を削減できれば毎月33万円の売上を上げたのと同じ効果が得られるのです。
なお、固定費と変動費の分解には勘定科目法や高低点法などの方法が用いられます。
■固定人損益分岐点の関係を考えよう
このように、固定費は売れても売れなくても毎月固定的に出ていくお金です。では、いくら売れば利益が出るかを知ることはできるでしょうか?ここで出てくるのが損益分岐点の考え方です。(この考え方が管理会計のエッセンスです)
例えば、上の例で倉庫の維持に10万円、お店の家賃や人件費などに40万円掛かっているとします。これらがすべて固定費だとすると固定費50万円の会社ですね。
この時、一般的な小売業の場合は30%の粗利率となりますので100万円売れれば30万円の粗利益が出るとします。
この2つの関係性がわかっていれば、固定費50万円を取り戻すためには、50万円÷30%で166.7万円を売ればいいことが分かります。
では実際に試してみます。
<この企業の損益計算書>(単位:万円)
売上 :166.7
売上原価 :116.9
売上総利益:49.8
販管費 :50
営業利益 :▲0.2
端数が出てしまいましたが、おおよそ損益トントンになりましたよね?つまりこの会社は月に166.7万円の売上を上げることが損益トントンに必要だということがわかるのです。
■無駄な倉庫の削減がどれだけ効くか
さて、上で使っていない倉庫に10万円を毎月払っているとありました。その倉庫契約を解除(明渡し)した場合はどうなるでしょうか?固定費は倉庫の維持に10万円、お店の家賃や人件費などに40万円でしたが、倉庫の維持が必要なくなったので40万円に変わります。
粗利率が同様だとすると固定費40万円を取り戻すためには、40万円÷30%=133.3万円となります。
改善後も実際に試してみましょう。
<この企業の損益計算書>(単位:万円)
売上 :133.3
売上原価 :93.3
売上総利益:40
販管費 :40
営業利益 :0
今回もうまくいきましたね。
ここでのポイントは、固定費をわずか10万円下げた時、必要な売上高がどれだけ変わったかです。この場合166.6万円から133.3万円と33.3万円も変わっています。
つまり、固定費の削減はとても大きな効果を企業にもたらすということなのです。
■固定費削減実践のポイント
さて、このような大きな効果をもたらす固定費削減ですがどうすればいいでしょうか?まずは、『ほとんど使っていない』をキーワードに削減していくことになります。
上の例で使っていない倉庫の削減は誰も困らない手段でした。ただ、意識しないと払い続けていたと考えられます。
このように、「空間」に対する費用を考えていくと色々見えてくるものがあります。本当にそんなに広い事務所が必要ですか?等といった問いかけです。
また、「デジタル」に関する費用も固定費となりがちです。あまり活用していないSaaS契約はありませんか?あまり見ていないレポートを発行するためにシステムの費用を払っていませんか?
このように、まずは使っていない無駄を探していくことが第一歩になります。使っていない無駄ならば削減しても士気に影響を与える危険性は少ないですから。
そのうえで。使っているけど、代替品に置き換えられる物を探していくといったアプローチになるでしょう。こちらは注意が必要で、削減だけを目的にすると従業員の士気を下げる危険性があります。
■似た言葉のまとめ
固定費の話をすると、変動費とか準固定費、準変動費と言った似た言葉がでてきます。以下まとめておきますのでご参考にしてください。| 区分 | 定義 | 代表例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 固定費 | 使っても使わなくても発生する費用 | 家賃、人件費、減価償却費 | 固定費発生の意思決定は慎重にする必要がある |
| 変動費 | 売上や生産量に応じて増減する費用 | 仕入代、水道光熱費 | 売上が増えると同時に増える費用 |
| 準固定費 | 操業度によって階段状に増減する費用 | 人件費(増員の判断)など | 拡張に伴って段階的に上昇する |
| 準変動費 | 操業度がたとえゼロでも、一定額発生する費用 | 電話代、電気代など | 一定額まで固定、以降変動 |
初出:2011/03/01
更新:2025/11/09





















