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財務・会計

財務・会計
2025年11月9日

固定費 | 固定費とは?変動費との違い・損益分岐点の求め方と削減のコツ【例題つき】

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固定費とは、使っても使わなくても固定的にかかる費用の事を言います。会社で言うと工場とかお店とかで作ったり売ったりしなくてもかかってしまう費用の事です。

たとえば、工場やお店の建物の減価償却費や工場やお店で働いている人のお給料などは何も作らなかったり、お客さんが来なかったりしても一定の額はそのまま発生してしまいます。

また、お店などを借りていれば家賃がかかりますし、お金を借りていれば支払利息がかかります。 これらの費用は、使っていても、使っていなくても(操業度の増減にかかわりなく)固定的にかかる費用なので固定費というのです。

この反対の言葉として、変動費というものもあります。こちらは、お店で販売すればするほどかかる売上原価(仕入代などですね)や水道光熱費などが該当します。

■固定費が多いと

さて、この固定費ですが多ければ多いほど経営上のリスクが増します。 簡単に言うと、何もしないで出ていくお金が大きければ大きいほど経営は不安定になりそうですよね?

そのため、上手く工夫して固定費の金額を抑えていくことが重要なのです。

■コスト削減のコツは

コスト削減のコツは、この固定費の削減に優先して取り組む事です。

例えば、不要な倉庫を借りていたりしませんか?不要な営業車を持っていませんか?不要な保険に加入していませんか?

こういった固定費を一つ一つ見直していくことで、稼がなければならない粗利益の額が少なくなるため、経営が楽になります。

逆に言えば、使っていない倉庫を持っているならば、その倉庫のために売上を上げなければならないといった状況になっているわけです。

この倉庫の維持に月10万円のコストをかけているとします。この場合、小売業を営んでいるとすると、一般的な粗利率は、30%程度になりますので、売上で言うと33万円分を毎月損している事となります。

33万円×30%≒10万円 逆に言えば、不要な倉庫の維持費を削減できれば毎月33万円の売上を上げたのと同じ効果が得られるのです。

なお、固定費と変動費の分解には勘定科目法高低点法などの方法が用いられます。

■固定人損益分岐点の関係を考えよう

このように、固定費は売れても売れなくても毎月固定的に出ていくお金です。では、いくら売れば利益が出るかを知ることはできるでしょうか?

ここで出てくるのが損益分岐点の考え方です。(この考え方が管理会計のエッセンスです)

例えば、上の例で倉庫の維持に10万円、お店の家賃や人件費などに40万円掛かっているとします。これらがすべて固定費だとすると固定費50万円の会社ですね。

この時、一般的な小売業の場合は30%の粗利率となりますので100万円売れれば30万円の粗利益が出るとします。

この2つの関係性がわかっていれば、固定費50万円を取り戻すためには、50万円÷30%で166.7万円を売ればいいことが分かります。

では実際に試してみます。

<この企業の損益計算書>(単位:万円)
売上   :166.7
売上原価 :116.9
売上総利益:49.8
販管費  :50
営業利益 :▲0.2

端数が出てしまいましたが、おおよそ損益トントンになりましたよね?つまりこの会社は月に166.7万円の売上を上げることが損益トントンに必要だということがわかるのです。

■無駄な倉庫の削減がどれだけ効くか

さて、上で使っていない倉庫に10万円を毎月払っているとありました。その倉庫契約を解除(明渡し)した場合はどうなるでしょうか?

固定費は倉庫の維持に10万円、お店の家賃や人件費などに40万円でしたが、倉庫の維持が必要なくなったので40万円に変わります。

粗利率が同様だとすると固定費40万円を取り戻すためには、40万円÷30%=133.3万円となります。

改善後も実際に試してみましょう。

<この企業の損益計算書>(単位:万円)
売上   :133.3
売上原価 :93.3
売上総利益:40
販管費  :40
営業利益 :0

今回もうまくいきましたね。

ここでのポイントは、固定費をわずか10万円下げた時、必要な売上高がどれだけ変わったかです。この場合166.6万円から133.3万円と33.3万円も変わっています。

つまり、固定費の削減はとても大きな効果を企業にもたらすということなのです。

■固定費削減実践のポイント

さて、このような大きな効果をもたらす固定費削減ですがどうすればいいでしょうか?

まずは、『ほとんど使っていない』をキーワードに削減していくことになります。

上の例で使っていない倉庫の削減は誰も困らない手段でした。ただ、意識しないと払い続けていたと考えられます。

このように、「空間」に対する費用を考えていくと色々見えてくるものがあります。本当にそんなに広い事務所が必要ですか?等といった問いかけです。

また、「デジタル」に関する費用も固定費となりがちです。あまり活用していないSaaS契約はありませんか?あまり見ていないレポートを発行するためにシステムの費用を払っていませんか?

このように、まずは使っていない無駄を探していくことが第一歩になります。使っていない無駄ならば削減しても士気に影響を与える危険性は少ないですから。

そのうえで。使っているけど、代替品に置き換えられる物を探していくといったアプローチになるでしょう。こちらは注意が必要で、削減だけを目的にすると従業員の士気を下げる危険性があります。

■似た言葉のまとめ

固定費の話をすると、変動費とか準固定費、準変動費と言った似た言葉がでてきます。以下まとめておきますのでご参考にしてください。

区分 定義 代表例 特徴
固定費 使っても使わなくても発生する費用 家賃、人件費、減価償却費 固定費発生の意思決定は慎重にする必要がある
変動費 売上や生産量に応じて増減する費用 仕入代、水道光熱費 売上が増えると同時に増える費用
準固定費操業度によって階段状に増減する費用人件費(増員の判断)など 拡張に伴って段階的に上昇する
準変動費操業度がたとえゼロでも、一定額発生する費用 電話代、電気代など 一定額まで固定、以降変動

初出:2011/03/01
更新:2025/11/09
財務・会計
2025年11月4日

配当政策

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配当政策とは、得られた利益のうちどれだけを投資家に還元するかの方針のことです。そして、実際に配当に充てられた比率を配当性向と言います。

企業の獲得した利益は株主に帰属しますが、経営者はその獲得した利益を株主に配分するか、内部留保として取っておくかを選択する必要があります。

内部留保を多くすれば、安定した資金の調達源(内部金融)となります。逆に、株主に多く配当すれば、株主はインカムゲインを得ることができます。

もっとも、配当が多ければ多いほど株主のためになるとは限りません。例えば、配当を行わずに事業に再投資し、企業価値を高め株価の最大化を目指すといった方法もあります。この場合株主は株式を売却した際にキャピタルゲインを得ることが可能となります。

このように、配当政策をどのようにするのが最も適切かを一概に判断する事はできないのです。

このまんがでは利益を内部留保して設備投資を行うか、株主に配当で還元するかどちらにするか株主のおじさんと、男子生徒が話していますが、今回は内部留保を増やして設備投資を行う事に決まったようです。

■配当政策の考え方

配当政策にはいくつかの考え方があります。配当は一概にたくさん出せば出すほど株主にとって良いとは限らないのがポイントです。

■配当を出さないケース(配当しないという配当政策)

例えば、企業がこれから大きくなるという成長ステージにおいては、配当よりも内部留保を重視することが多くなります。

これは、これから大きな成長が期待される中では数%の配当でのリターンではなく、成長による数十%、場合によっては数倍のリターンになったほうが株主のためになるという判断に基づきます。

このことから、創業期のベンチャー企業などはほとんど配当を出さないといった配当政策を取りがちですので、配当が得られないと理解したうえで投資することが望ましいでしょう。アメリカの大企業では配当をずっと出さずに成長で株主に報いるとしていたマイクロソフトやアマゾンがありました。

これらの会社に投資していたら非常な利益が得られた事は私達は知っていますので、配当をせずに内部留保を優先するという考え方も十分に正当化されることを知っています。

■配当を出す場合いくら出すかが問題です

他方で、成熟期に入った企業では安定的な配当を重視する安定配当政策や、業績に連動して配当を考える利益連動型の配当政策を取ったりします。

前者の安定配当政策は、利益が増えても減っても基本的には配当を一定額出していくという考え方で、利益減少局面や赤字局面での目先の配当利回りの高さだけで投資判断をしないことが重要です。

後者の利益連動型の配当政策の場合は、配当の水準が不安定となるため株主としては不満が残るケースがあります。

株主が満足するとかしないとかにふれているということは、配当政策によって株価に影響を与えることができるということにつながります。

そのため、株主など利害関係者の利益を最大化するためにはどうしたら良いのかを考えるのも経営者の大事な仕事だったりします。特に、業界の標準からかけ離れた配当政策を行うと、良くも悪くも株価への影響が大きくなります。

■配当政策と内部留保のバランス

前段では配当の出し方の考え方について述べましたが、配当と内部留保のバランスについても見ていきます。

会社は獲得した利益を「貯める」「使う」「分ける」とバランス良く考えていくことが重要です。

このバランスは配当性向自己資本利益率(ROE)資本コストなどを踏まえて考えていく必要があります。

短期的に株主還元を配当で行うと、成長のための投資余力を失ってしまいます。逆に内部留保を優先しすぎると株主価値を毀損してしまいます。

これらのバランスの鍵は、自己資本利益率(ROE)で、自己資本利益率(ROE)が十分に高いならば配当で株主に利益を分配するよりも再投資したほうが株主価値が高くなります。

多くの日本企業では配当性向を35%前後を目安としつつ(獲得した利益の35%前後を配当する)、単年度の利益増減で配当の額を増減させずに安定的に配当すると言ったことを行っています。

大きく儲かった場合は自社株買いで株主還元すると言ったイメージですね。

初出:2012/04/15
更新:2025/11/04
財務・会計
2025年7月30日

繰延資産 | 現金化できない資産ってなんですか?徹底解説します

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繰延資産とは、既に支払ったけれども効果が将来にわたって現れるような費用を、経過的に資産として計上するものです。単に経過的に資産として計上されているだけですから、その繰延資産は基本的に換金することはできません。

繰延資産というのはこういったモノなのですが、それではどうしてこのような考え方をする必要があるのでしょうか?

■繰延資産はすでに払った費用です

でも、既に払った費用だったら、交通費とか、人件費のように支払った期の費用にして良いと思いませんか?また、お金に換えられないのに資産って変ですよね?

これを説明するためには、企業会計の目的にまでさかのぼる必要があります。

■繰延資産で遡る企業会計の目的

企業会計の目的の一つとして、期間の利益を正しく算定するという事があります。そして、この期間の利益を正しく算定するためには、費用と収益を対応させる事が必要であるとされています。

この考えから、売上という収益を上げたなら、その収益を上げるために使われた費用のみが対応する費用になるという、売上原価といった考え方が生まれています。(どれだけ仕入れても、売れた分しか企業会計上は費用にならないのです。)

この考え方からいくと、例えば企業を創業するために支払った費用はどうでしょうか?その費用は企業が続く限り効果が続きますよね?

そういった事から例えば企業を創業するために支払った「創立費」は繰延資産として計上することが認められています。

もっとも、この「創立費」は換金することができない資産なので、いつまでも資産にしておいては貸借対照表上、資産の額が過大になってしまいます。そのため、一定の期間で償却することが必要であるとされています。

このように企業会計のルールはいろいろなバランスを取って作られているんですね。

■繰延資産について詳しく見ていきます

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上で繰延資産について述べましたが、改めて別の表現で表してみます。重複になるかもしれませんが、大事なところなのでぜひ押さえてください。

繰延資産とは、既に支払い義務が発生している支出する費用のうちで、その費用の効果が将来にわたって発生するため、一旦資産に計上しておき、将来にわたって費用化していくような資産の事を言います。英語で表記するとdeferred chargesとなります。

このような繰延資産の考え方は収益とそれを得るために使われた費用は同じ期間に計上するという考え方(費用収益対応の原則)から来ています。

そして、この繰延資産がいわゆる通常の資産(流動資産固定資産ですね)と大きく異なる点は現金化できない資産だという事です。

現金にならない資産?費用化するための資産?何のことかよく分からないですね。

■繰延資産は現金化できない資産

誰かに対する債権でもないし、形があるわけでもない。単に費用を将来に繰り延べるために存在する資産。なんというか、貸借対照表上、置き場所がないから便宜上、資産として計上しておくといったイメージです。

(この繰延資産は容認規定なので「計上しなければならない」のではなく、「計上できる」といった考え方になります。原則は一時費用化なのですね。)  

と、抽象的な話を続けても混乱するだけなので、具体的な例を示していきたいと思います。

■繰延資産の具体例

この繰延資産に該当する資産は、「創立費」、「開業費」、「開発費」、「株式交付費」、「社債発行費」、「新株予約権発行費」などです。

資産なのに「○○費」とついていることからも、通常の資産と毛色が異なることが見て取れると思います。

以下、「創立費」を例に考えてみたいと思います。「創立費」は上で挙げたように、

1.既に費用は支払済みです。
例えば、「創立費」は会社を作るときに払っているはずの費用ですよね。

2.誰かに対する債権でもないし、形もないので換金できません。
例えば、「創立費」を換金すると言っても、どうやって換金するかわかりませんよね?

3.これらの費用の効果は将来にわたって発生する費用です。
「創立費」の効果はその企業が存続していれば効果を発揮し続けると考えられます。

という特徴を持っています。

そして、「創立費」は名前の通り、とても費用的な感じが強いと思います。というか、どう考えても費用ですよね?

でも、単純に発生した期の費用にしてしまうと問題が生じます。それは3.の『将来にわたって効果が発生する』という要件が「費用収益対応の原則」に抵触するのです。

そのため、便宜的に繰延資産という箱を用意しておいて、そこから将来にわたって(創立費は5年で)費用化していくというイメージになるのです。

なんだか、減価償却に近い考え方ですよね。

■繰延資産の具体例と償却方法

上でふれたとおり繰延資産には、次のような種類があります。それぞれ、企業活動において将来にわたって効果があるとされ、会計上の資産として扱われます。ココでは簡単にまとめておきます。

繰延資産の種類と償却期間

繰延資産には、次のような種類があります。それぞれ、企業活動において将来にわたって効果があるとされ、会計上の資産として扱われます。

繰延資産の種類 内容 償却期間の目安
創立費 会社設立時の登記費用や定款認証費用など 原則5年以内に償却
開業費 開店・開業準備のための広告費や設備調整費 原則5年以内に償却
開発費 新技術・新商品の研究や試作費用など 原則5年以内に償却
株式交付費 株式発行のための手数料や印刷代など 原則3年以内に償却
社債発行費 社債発行の際の引受手数料など 原則3年以内に償却

■繰延資産はどう表示されるか?

この繰延資産は貸借対照表上は次のような位置に表示されます。(流動性配列法の場合)

おさらいになりますが、一言で資産と言いますが、次のように分けることができ、特徴がそれぞれあります。

  • 流動資産
具体的には現金や売掛金で換金性があります。また実態もあります。
  • 固定資産
固定資産は有形固定資産と無形固定資産に分けられます。有形固定資産はその名の通り形がある建物とか機械装置みたいな資産で、(換金することはあまりありませんが)換金性があり、実態もあります。

無形固定資産は特許権などのように換金性は原則的にはなく、実態も無いというのが特徴です。
  • 繰延資産
今回見てきた繰延資産で開業費などが該当します。換金性も実態もありません。

このように、一口で資産と言っても、流動資産、固定資産、繰延資産に分類されるのです。以下に貸借対照表の例を示しますのでどのように表示されるかのイメージを掴んでいただければと思います。
繰延資産
初出:2012/11/04
更新:2025/07/30


財務・会計
2025年7月21日

内部留保

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内部留保とは、企業活動の結果得られた利益の中から社外に流出した分を除いた残りの部分の事を言います。

ここで、社外に流出した部分とは、租税の支払とか配当、役員賞与などが該当します。

と、難しく書いていますが、簡単に言うと「会社が儲けたうち、社内に残した部分」の事です。

■内部留保って現金なの?

さて、「儲けた中で社内に残した部分」というと、「それって現金なの?」って思われる方もいるかもしれません。

社会人でも誤解しがちの内容です。おそらく、『内部留保→社内に残した儲け→金庫の中に現金を入れておくイメージ』といった連想をしている人もいると思います。(経営マンガの中の人も昔はそんな風にイメージしていました。)

そのため、「内部留保が厚い企業は(現金を沢山持っている企業だから)、不況になっても雇用を維持する事が求められる。(だってお金を沢山ためているんでしょ?)」といった意見が良く出てくるのです。

でも、ざっくり言えば、「内部留保」とは会社が儲けたお金のうち、配当や税金などに使わず社内に残った部分のことです。

ではその「残ったお金」は、いま現金で金庫に入っているのでしょうか?答えはどうでしょうか?現金を沢山もっているって本当でしょうか?

答えは。。。「わからない」のです。

■内部留保と現金は一致しない

企業の利益は、負債と合わせて資産として投資されています。

たとえば現金のまま持っていることもあれば、機械を買っていたり、工場を建てていたり、在庫として仕入れていたりします。また、売上債権(売掛金など)として取引先に貸し付けているかもしれません。

つまり、現金で残っているとは限らず、すでに別の「資産」に形を変えて使われていることが大半です。

よくある誤解として、「内部留保があるなら社員の給料を上げられるはずだ!」という声がありますが、実際には資金がすでに運用済みのことも多く、そう簡単に使えるものではないのです。

■内部留保は貸借対照表の右側にある

会計の世界では、貸借対照表という帳簿で、企業の財政状態(一定時点の財産や負債の目録)を記録します。

この中で「内部留保」は貸方(かしかた)、つまり会社がどこからお金を得てきたか?を示す「資金の出どころ」として記載されます。

この図を見てください
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貸借対照表の貸方(右側)には「資金の調達源泉」って書いてありますよね?

内部留保の額というのは繰り返しになりますが、純資産(資金の出元が自前のお金)として貸方(右側)に記載されます。

そのため、「この会社は1億円の資産があって、そのうち3千万円は自己資本です。」という事はできますが、その自己資本がどうやって運用されているか?は分かりません。

例えば、あなたが自己資本の100万円と借りてきた(他人資本の)100万円を合わせて200万円を使ってお店を始めたとします。この時、お金を借りた人がやってきて、「うちの100万円は今どうやって使っているの?」と聞かれても困りますよね?

このように、内部留保も同様で、企業の資金の調達源泉であるのは確かなのですが、今現在、何に使われているかは分からないのです。

その為、内部留保が100億円あっても、それは工場や店舗として投資されており、金庫の中にはほとんどお金がないかもしれません。

■お子さん向けの説明

例えば、お小遣いをもらった子どもが全部使わずに机の引き出しに貯めていたとします。

でもそのお金でマンガを買ったら、現金はなくなります。

でも仮に財産目録(貸借対照表)を作ったら、お小遣いで買ったマンガが(同額の)資産になるので、内部留保は減らないのです。

その際に、「内部留保は残ってるはず!」だから、「内部留保が無くなるまでお小遣いはあげません!」って怒られるのと同じです。

理不尽で困りますよね?企業もそれと同じです。

■内部留保の「活用」ってどういう意味?

よくニュースなどで「企業は内部留保を活用して投資をすべき」とか「内部留保を活用して賃上げすべき」といった表現が出てきます。

ただ、それは「負債を活用して(誰かからお金を借りてきて)投資すべき」とか「負債を活用して(借金して)賃上げすべき」といっているのと変わらないのです。

ですので、「内部留保の活用=現金で何かできる」というイメージでは、現実とズレてしまうのです。

■内部留保についての誤解

内部留保が多すぎる→企業がお金を溜め込みすぎている

といった論調もあります。

しかしこれは、上で見てきた通り

内部留保が多すぎる→自前でお金を資金調達しすぎている

といったことしか言っていないのです。

なお、「どうして内部留保を多くすることを我が国企業が好むか」といった疑問があると思います。ファイナンス理論的には資本コスト(内部留保など自前のお金の活用)よりも負債コスト(借金の活用)のほうが安い。つまり、借りてきたお金を運用するほうが合理的とされています。

ですが、バブル崩壊後に仕方なかったにしても貸し渋り貸し剥がしといった行為を、我が国の金融機関が行ったため、イザという時に借りられないかもしれないといった恐怖心が経営者にあるのかもしれません。


◎まとめ
内部留保とは「自前の資金源」であり、現金ではなく企業活動の成果の蓄積です。



内部留保の議論が噛み合わない理由や、構造的な問題については → もう、内部留保って言うの止めませんか?もぜひご参照ください。

関連用語
タコ配

初出:2013/05/24
更新:2025/07/21

財務・会計
2025年7月10日

回収サイト

回収サイト_001
回収サイトとは、取引先から資金を回収するために必要な期間の事を言います。

事業を営んでいると売上が上がったとしても、スグにお金を回収できないケースが発生するため、この回収サイトについて考えておく必要があるのです。

例えば、あなたが小売業をやっていて「おまんじゅう」を売ったとします。お金はどうなるでしょうか?通常はその場で受け取れますよね?

でも、あなたが卸売業をやっていて「おまんじゅう」を小売業に卸したとします。その場合、現金の回収条件は「二十日締めの翌月末払い」とか言われます。

これは、売上高を二十日に締めて(集計して)翌月末に支払ってもらうという事を意味しています。

つまり、今日卸した「おまんじゅう」の代金はスグには受け取れないわけなのですね。

いくらたくさん売り上げたからと言って、現金が回収できないのであれば、自分の支払に回すことができませんよね。

そのため、この回収サイトと支払サイトに気を付けないと現金が足りなくなってしまい、事業の継続が難しくなってしまうのです。(このような状態を資金ショートと言います。)

関連用語
黒字倒産 

■回収サイトが長いとどうなるの?

上で言っている通り、たとえ売上が順調に伸びたとしても「現金」が手元に入ってこないととても困ることが発生します。

仕入れの代金や、お給料、家賃などは現金が無いと払えませんよね?また、現金が手元に少なくても約束通り支払う必要もあります。

そのため、回収サイトが長いと資金繰りが悪化してしまうのです。

例えば、下の表を見てください。

日付 内容 支出 入金 残高
6月1日 初期残高 100円
6月10日 家賃の支払い 50円 50円
6月15日 仕入れ代金の支払い 40円 10円
6月20日 売上の回収 100円 110円
6月25日 給料の支払い 50円 60円

ここで6月20日に売上の回収ができなかったら大ピンチになることが分かると思います。(現金の残高がゼロを下回ったらそこで会社は終了です。)

このように、「そのうちお金が入ってくるから大丈夫だよー」と呑気に構えていると、とても大変なことが発生してしまうのです。

■支払いサイトとのズレに注意

上のように資金繰りはプールの残高をゼロ以下にしない事を考える仕事なのですが、以下のような支払いサイトと回収サイトだったらどうでしょうか?

・回収サイト(入金サイト) :60日
・支払いサイト      :40日

いっけんするとあんまり大変そうではなさそうですが、実はこれは大問題です。自社が支払う仕入のほうが、入金よりも先になるため、資金繰りがとても厳しくなります。

そのため、いわゆる運転資金の調達などを検討する必要が出てくるのです。

■回収サイト(入金サイト)を短くする方法

回収サイトを短くしましょうと、世の中の本には書いてありますし、私達みたいな支援者も簡単に指摘します。

しかし、「それができたら苦労はしないよ」といったのが実情だとは思います。

ただ、できませんでは本記事が提供できる価値はなくなってしまうので以下のようなアイディアもありますよと列記しておきます。

・与信管理の徹底
これは回収サイト云々ではないですが、いちばん大事なので敢えて書いておきます。どんなに売上が上がっても回収できないとどうにもなりませんので、与信管理の徹底はとても重要です。

また、一日でも支払いが遅れたら、直ぐに電話したり訪問してください。嫌がられるかもしれませんが、長い目で見ればあなたの事業がお金をしっかりと管理しているという評判に繋がりますのでメゲずに励行してください。

お金を滞納しがちな人は、沢山借りている人から払うわけではありません。「うるさい、面倒な人から順番に払っていくのですから。」

・業界団体として取り組む
支払いサイト短縮について業界団体として取り組んでいるケースが多くあります。一昔前はこのまんがのような180日手形すらまかり通っていたのですが、最近はそのようなことはなくなっています。

ただ、それでも回収サイトが慣習として長くかかるような取引先もまだいますので、機会を捉えて集団で交渉して行くと良いでしょう。

もちろん、下請法などで2024年11月1日以降は60日を超えるような支払いサイトは行政指導の対象になるという事も念頭に置いたうえで取り組むと良いです。(正論だけで交渉できないのが厳しいところですけどね)

・力関係を自社に傾ける
最後には面白くない正論を書かざるを得ないのですが、最終的には自社の製品やサービスが簡単には代替できない、あなたの会社から買うしか無いといった境地を目指していく必要があります。

そうなれば、回収サイトの短縮にも応じてくれる可能性は高まるでしょう。


この他に商社金融を活用するなどといった方法もあったりします。

■資金繰りについて(ファクタリングとABL)

手元資金が足りないイザとなった場合、売掛債権をもとに資金を得る方法として以下の2つがあります。

■ファクタリング(売掛債権の買い取り)

ファクタリングは売掛債権(未回収金)をファクタリング会社に買い取ってもらい現金化する方法です。

重要なのは、誰の信用力で資金を動かすかですが、ファクタリングの場合「あなたの取引先の信用力」が重要になります。(ファクタリング会社は売掛債権を買い取るのですから、取引先の信用力が回収可能性を左右します)

・3社間ファクタリング(取引先に通知されるタイプ)
 ファクタリング会社を恒常的に利用していることが取引先に知られると、資金繰りが厳しいと見られる危険性があります。

・2社間ファクタリング
 取引先に知られにくいため、取引先や外部への影響は限定的となります。ただし、手数料は高めになります。

■ABL(売掛債権担保融資)

ABLは売掛債権(未回収金)を担保に金融機関などから融資を受ける方法です。こちらの場合はあなたの会社の信用力が重要です。、(信用力を補完するため金融機関に売掛債権を担保として差し出すイメージ)

・ABLでは売掛債権が担保となるの、取引先には通知される事に留意が必要です。

・ただし、制度設計や契約形態により通知無しで運用される場合もあります。

いずれにしても、金融機関に相談してどのような取引なのかを理解してから対応するようにしましょう。

<ファクタリングとABLのまとめ>
項目 ファクタリング ABL(売掛債権担保融資)
内容 売掛債権を「売却」して資金を得る 売掛債権を「担保」にして融資を受ける
資金の出し手 ファクタリング会社 銀行・信用金庫など金融機関
重視される信用力 取引先(売掛先)の信用 自社(債務者)の信用
資金調達までのスピード 比較的早い(数日〜1週間) やや時間がかかる(審査・契約に時間)
通知の有無 3社間では通知あり/2社間では通知なし 原則通知あり(ただし契約によっては通知なしも可能)
手数料・金利 手数料制(やや高め) 金利制(低めのことが多い)
バランスシートへの影響 オフバランス(債権を売却するため) オンバランス(借入として計上される)
与信管理への影響 3社間では取引先に知られ信用低下リスクあり 通知が必要な場合は取引先に把握されることも
向いているケース 緊急性のある資金需要、創業間もない企業 中長期の資金需要、信用力のある企業


どちらの方法も売掛債権を元にお金を得る方法ですので、あなたが取得する売掛債権をどんな手段で売掛金を現金化しても気にしないという立場の企業も多くありますが、相手がどのように受け取るかも慎重に見極めて対応することをオススメします。

■むすびに

いずれにしても、回収サイトが長い状態を放置していると、いつか資金繰りに行き詰まる可能性が高まります。

回収のタイミング・支払のタイミング・そして信用の維持。この三者をバランスよく設計しておくことが、安定した経営の鍵なのです。

単に「お金が足りないから調達する」ではなく、「なぜ足りなくなるのか」「それを防ぐにはどうするか」を冷静に見つめていくことが大切なのです。


解説で出てきた用語
行政指導

初出:2013/03/14
更新:2025/07/10

財務・会計
2025年6月14日

自己資本

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自己資本とは株主に帰属する純資産のことを言います。資本金や、各種法定準備金、剰余金がこれにあたります。なんだか難しそうな説明ですが、簡単に言うと、自分のお金、つまり誰かに返さなくていいお金の事です。

株式会社では、主に株主から払い込まれた資金と、事業活動によって獲得した利益の内部留保分からなります。
BS

上記に示した、貸借対照表の純資産の部が自己資本にあたります。そして、この自己資本は負債のように返済することは不要です。そのため、長期安定的な資金源となるという事ができます。

このまんがでは、吹奏楽部の先生が販売クラブに出資しています。そして、この出資されたお金は自己資本にあたります。 

■お金の出どころで捉える

上の図の自己資本と負債の違いは何でしょうか?これは、お金の出どころを表しています。

負債は、「誰かから借りてきた」→つまり返済する義務がある

自己資本(純資産)は自前のお金→つまり返済する『義務がない』という切り口です。

■自前のお金の種類

この自前のお金ですが、事業を営んでいくと少しずつ増えていきます。(それが目的で事業をしていますからね)

そして、増えた時に最初に投資してもらったお金と増えた分を分けて考えていきます。

厳密にはもっと細かい分類もありますが、自己資本は

・資本金(自分たちが会社に払ったお金)
・利益剰余金(儲かったお金)

と分けていくことができます。

このマンガでは、先生が出してくれたお金は、返す必要がないお金です。なので、資本金としてこの貸借対照表に記載されてきます。なお、現物出資でお金を集めて会社を設立することも可能です(変態設立事項

■実務面からの加筆:

この自己資本は「返さなくて良いお金」といったことを捉えて、商売を始める際に出資(自己資本)で資金調達したがる人がたくさんいます。

しかし、実務的には「返さなくて良いお金」ではなく、『「返せない」≒「関係性を清算できない」お金』だという着眼点が必要です。

最終的には社長さん個人の価値観になりますが、私は創業の際に他人から出資を受けないほうが良いとアドバイスすることが多いです。

また、仮に出資を受けるとしたら、33%よりも低い比率、最悪でも49%までにしたほうが良いですとアドバイスします。

なぜならば、33%以上の株式を他人に握られると、株主は特別決議を阻止することができるため、その種の意思決定が自由にできなくなります。そこまでいかなくても、少しでも株式を持っている株主からは、適切でない意思決定の経営責任を追求されますし良いことはあまりないです。

そして、過半数を握られると、株主はいつでも社長の交代や取締役の解任が可能となり、経営権を獲得することができるようになるためです。(つまり社長を首にできる権利を与えることになります。)

たいてい、そこそこ上手く経営ができている間は、株主は何も言ってきません(言ってきても「配当してください」ぐらいです)が、会社が軌道に乗って大儲けの目が出てくるとあなたを首にして別の人間を社長にしようとか、良くてもお目付け役のNo2を送り込んできたりします。


出資を受けられるような事業計画ならば、たいていの場合は融資を受けられますので、融資で(負債で)資金調達をすることをオススメしています。

融資ならば返済は大変ですが、会社のコントロール権は社長が確保できますので。

初出:2012/04/16
更新:2025/06/14
財務・会計
2025年6月14日

変動費型ビジネス | 売上の減少が大きな損失につながりにくいビジネスです

変動費型ビジネス_001
変動費型ビジネスとは、比較的大きな変動費が発生しますが、固定費は小さいビジネスのことを言います。

工場を持たずに製造業を行うファブレスといった形態のビジネスがこの変動費型ビジネスの代表例となります。(工場を持たないので、発生する費用のほとんどが変動費になります。)

このような変動費型ビジネスは変動費が大きいため粗利率は低くなります。つまり、売り上げが沢山上がっても儲かりにくいビジネスという事ができるのですね。

と、こんな風に説明すると「売り上げが上がっても、儲かりにくいなんて意味ないじゃん。変動費型ビジネス=儲からないビジネスなのかな?」と考える人もいるかもしれません。

しかし。この変動費型ビジネスには、儲かりにくいという弱点を補う大きな利点があるのです。
  • 損をしにくい
この変動費型ビジネスは固定費型ビジネスと比較して、損をしにくいという特性があります。

一般的に言って、変動費型ビジネスは固定費をそれほどかけていないビジネスとなります。という事は、損益分岐点の売上高は低めになります。(つまり売り上げが下がっても赤字になりにくいという事です。)
変動費型
また、売上が減少してもそれほど急激に損失は拡大しません。(固定費型ビジネスに示した図表と比べてみてください。)

■変動費型ビジネスの例を幾つか

この他にも、外注費を中心に使うビジネスがあります。例えば、クラウドソーシングを使ったWeb制作業が考えられます。

この場合は受注してから外注を行うので固定費はかなり押さえられます。

また、ECサイトの中でもドロップシッピング型(在庫を持たないで注文だけ取って直送してもらう)ならばこの変動費型のビジネスモデルであると言えます。

■利幅が薄い以外の弱点

一見すると手堅いビジネスであるように見えますが、変動費型のビジネスモデルには弱点があります。

一つは、利幅が薄いというよく言われる弱点ですが、実務的にはもっと大きな弱点が存在します。

それは、漫然と行うと参入障壁を築くことがとても難しいため、売上基盤が脆弱になりがちであるということです。

極端な話をすれば、外注先があなたの会社と付き合うメリットを感じなければ、競合とパートナーシップを構築する可能性もありますし、外注先が直接受注することすらありえます。

そのため、外注先と長期的な信頼関係を築くような取り組みをする必要があるといった点も注意が必要です。

また、注文だけ取って実際の製造やサービスは外注するため、製造やサービスや商品の品質など一般的に差別化しやすい部分で自社のノウハウを蓄積できる余地が少ないです。

そのため、受注した内容をそのまま外注するのではなく、

引合→商談→提案→受注

といったふうに自社独自の提案を行えるようにノウハウを蓄積していき、自社独自の価値を乗せていく工夫ががとても重要となってきます。

また、外注先とビジネスパートナーとなるような関係性を深めることによってネットワーク資産を構築することも重要です。

いずれにしても、「自社だから提供できる価値」というビジネスの本質を作りにくいため、その点wくぉ意識することが重要となっているのです。

初出:2013/07/03
更新:2025/06/14


財務・会計
2025年6月12日

経営分析(財務分析)

経営分析_001
経営分析とは、主に企業の財務情報を用いて企業の現在の状態を分析・把握し、将来の予測に役立つ情報を作り出す技法の事を言います。一般に経営分析は財務分析と同義語で使われる事が多いと言われています。

経営分析は、ただ数字を読むだけではありません。立場によって同じ数字の意味はまったく異なり、それが現場の判断を大きく左右します。

この財務情報を加工して作り出した様々な指標を業界平均や競合他社と比較することで、自社の特徴や改善すべき点が見えてきます。

また、取引先の与信管理に役立てて貸し倒れによる損失を防いだり、投資家として投資すべき企業を選別する際に用いたりすることができます。

この経営分析は大きく分けて次のように分けられます。

1.収益性の分析
企業がどの程度の利益を上げているかを分析する手法です。ROI等が指標として用いられます。

2.安全性の分析
企業の財務内容は健全であるかを分析する手法です。自己資本比率等が指標として用いられます。

3.生産性の分析
経営資源のインプットと付加価値として得られるアウトプットの関係を分析する手法です。労働生産性等が指標として用いられます。

このまんがでは経営分析の説明を聞いた男子生徒は逃げ出してしまいましたが、計算自体はほぼ、四則演算のみで行うことができますので、アレルギーを起こさずに取り組んでみるとよいと思います。

関連用語
自己資本
他人資本

実務面からの加筆:
経営分析、財務分析をどのように扱うかは悩ましいテーマです。

極論を申し上げると中小企業の財務で全く問題がないというのは稀です。そのため、財務分析をすると結構辛い数字が出てきたりします。

その時、自分のスタンスによって取りうる方策は変わってきます。

■与信管理のスタンス

主に与信審査担当、取引先を審査する方のアプローチを見ていきます。

この場合は、貸倒を避けることが任務になりますから、かなり厳格に数字を見ていく必要があります。

会計の格言で「費用は大きく、収益は保守的に見積もる」といった物があり、会計は用心深く行うといったアプローチがあります。(保守主義の原則といいます)

この観点から、財務諸表については安全性や流動性の指標を見るだけでなく、場合によっては「粉飾があるかもしれない」といった観点で数期分の数字の推移や同業他社との比較も行っていきます。

特に、利益が出ているけど、在庫や売掛金が著しく増えているなど不自然な動きをしていたら要注意です。

このように、どちらかというと性悪説的に、最悪の場合に備えて厳しく見ていくことが求められます。

■営業担当者のスタンス

取引先と取引をしたいわけですから、なるべく前向きに見ていくことが求められます。

とはいえ、貸倒になったらせっかく頑張って販売してもマイナスにしかなりませんので、細かく見るところは見ていく必要があります。

どちらかというと成長の余地や前向きな点を探し、社内稟議に備えていく必要があります。

■支援者(コンサルタント)など私達と同業者

現状をまずはありのままに把握します。意見は事実をもとに構築すればいいので、まずは現状がどうであるかを見ていくことが重要です。

その結果、あまり良くない数字だったとしても、どのような動きをすれば改善できるかという可能性も追求していく必要があります。

その意味で、与信管理者の厳しいスタンスで現状をみつめ営業担当者の未来を一緒に作っていくスタンスで希望を見ていくことが重要です。


なお、支援者が厳しく査定し会社のだめな部分だけを指摘するような態度はあまり望ましくないと考えます。会社の状況が良くないのは会社の人が一番ご存知ですので、そこを強調しても仕方ないのです。

支援者にとっての経営分析は企業を裁くための道具ではなく、企業と一緒に可能性を見出す対話の第一歩といったスタンスが求められるのです。

■動的分析とキャッシュフローの視点

経営分析における動的分析とは、単年度の財務指標だけを見るのではなく、複数期にわたるトレンドを把握する手法になります。

損益計算書の分析だけでなくキャッシュフロー分析も重要となり、、実際の資金の流れも分析対象にすることができます。

このキャッシュフロー分析を行う中で、営業活動によるキャッシュフロー(営業CF)が安定していれば、本業で現金を生み出せているため、それを成長の原資として投資することが可能になるため、企業は持続的に成長できます。

逆に、営業CFがマイナスの場合は、投資CFによっては資金繰りに課題が生じやすくなりがちなのです。

そして、複数期をまたいでこのトレンドを見ていくことで企業の状況が見えてくるのです。

このように、財務分析にキャッシュフローの視点も取り入れることで、利益と現金について見誤らずに済むのですね。

初出:2011/10/31
更新:2025/06/12

財務・会計
2025年6月3日

変動費

変動費_001置換
変動費とは操業度の変化に伴って比例的に変化する費用の事を言います。

例えば、たこ焼きを作っているお店があるとします。このお店では、タコや小麦粉などの材料費は売上の増減に伴って変化しますよね?(たくさん売れれば、たくさん材料が必要になって材料費も増えるという関係です。)

また、売り上げが増えれば電気代やガス代、水道代といった水道光熱費も増加します。

このように売上高の変化に伴って比例的に変化する費用を変動費と言います。

この反対に操業度が変化しても変わらない費用というものもあります。例えば、お店を借りていれば家賃が発生しますし、お金を借りていれば支払利息が発生します。これらの費用はたとえ売り上げがゼロでも変わらず発生しますよね?こちらは固定費と言います。

このように、発生する費用は大きく分けると変動費と固定費に分けることができます。そして、このように分けておくと管理会計目的で会計データを用いる際に役に立つのです。(貢献利益率を使って損益分岐点を求めること等ができるようになります。)

このまんがでは、1コマ目の女の子が女子力アップの費用は操業度の増減によって増えないから固定費だと言っています。変動費は、操業度の増減によって増減する費用、固定費は増減しない費用なので、この理解で間違ってないと思うのですが、なんとなく釈然としませんよね。

この、女子力アップ費用は自らの意思で増減させることができる管理可能費であるので、固定費という事に違和感があるかもしれません。しかし、操業度の増減によって増減しないので固定費という事ができるのです。

逆に、デートの回数によって増減するデート代は操業度の増減によって増減する費用なので変動費です。もっとも、この女の子の場合、デート代は男子持ちみたいなので、変動費は限りなく低いようです。 

実務面からの加筆:
変動費とはざっくり言えば売上が上がると増える費用です。これが事業計画に盛り込めると一気に真実味が出てきます。

例えば、以下の事業計画だったらどっちのほうが真実味があるでしょうか?

A 売上が100万円増えます

B 売上が100万円増えますが、変動費が30万円かかるので70万円利益が増えます。

これはもちろんBですよね。

この変動費の考え方は難しそうなことを言うコンサルタントが使う『管理会計』の基礎概念になりますので、「100円の売上を増やすためにどのくらい費用が増える?」といったといを持つと良いですよ。


初出:2025/06/03
更新:2012/05/30


財務・会計
2025年6月2日

減価償却

減価償却_001
減価償却とは取得した固定資産を毎期一定の費用を計上して各期に配分する事を言います。

建物や車などは永遠に使えるわけではなく、使い続けるうちに少しずつ劣化していきます。築30年の建物、10年乗っている車などは新築の建物や新車に比べてだいぶガタがきているイメージになると思います。

このことは使い続けると少しずつすり減っていくと言い換えてもいいと思います。そして、この少しずつすり減るイメージを帳簿の価格にも反映させましょうというのが減価償却の考え方となっています。たとえば100万円で買った新車が10年後いくらくらいになっているでしょうか?100万円のままとは直感的に言いにくいですよね。

それでは、帳簿価格を何年もかけて減らしていくという事はどのようなことになるかを考えてみたいと思います。

1.費用配分
会計の目的の一つとしてその期間の経営成績を算出する事があります。これは損益計算書(P/L)で表現されます。

それでは先ほど出てきた10年使える車にかかった費用はいつの期間の費用にした方がいいでしょうか?買った時に一気に計上する方がよいでしょうか?

10年間使えるという事は10年間の収益獲得に貢献するという事です。それならば、車の購入費用はある期の費用ではなく10年間に配分して費用化することが合理的ですよね。このように 収益に貢献している期間に費用を配分するという機能が減価償却にはあります。

2.資産評価
ある時点での企業の財政状況を表示する事も会計の目的です。これは貸借対照表(B/S)で表現されます。

先ほどの10年間使える車であっても、ある程度使った車を新車と同じ額では表現できないですよね。減価償却を毎期行うことによって毎期少しずつ固定資産の価値がすり減っていくことを表現することが可能となります。減価償却を行うことで例えば、5年後にはすり減った部分を控除した残りの部分が貸借対照表に記載される事となります。

3.資金回収
減価償却費という費用は現金が出ていく費用ではありません。(現金は車を買った時に出て行っています。)

でも、費用としては計上されています。すると、減価償却費の分は現金として回収されていることになります。減価償却にはこのような側面もあります。

このまんがでは学食の先生が設備投資するかどうかをずっと考えています。最終的には設備投資をすることを決めたようですが、今後は減価償却費がかかるからもっと稼がなきゃならないと言っています。

それに対して生徒さんはなぜ費用が増えるのかいまいち腑に落ちていないようです。

答えは、今回のテーマである減価償却費が毎期かかるからという事ですよね。


実務面からの加筆:
減価償却って、ルールで決まっているっぽいんですが、『あえて』損金になるよりもたくさん計上するケースや、全く計上しないで利益を増やすようなケースもあります。

なので、減価償却を止めてしまって表面上利益が出ているかのように見せている財務諸表もあるので注意が必要です。

(1期分の財務諸表だけ渡されてもわかりにくいですし、ずーとそのような処理をしている場合は、数期分渡されても読み取れないケースもあります。総勘定元帳でも入手できれば一目瞭然ですが、支援者側でも入手しにくいのに、与信判断などで入手することはほぼ不可能です。)

ただ、場数を踏むと、固定資産の額などで不自然さを感じるようになったりします。

・そんな財務諸表に出会ったらどうするの?

その場合は減価償却をルールに則って実施していた場合と仮定し、計算し直して現在の財務諸表を見ることも求められたりします。

財務情報は一見すると絶対の真実のように思われがちですが、あくまで相対的な真実でしかないというところに目を向けると、より深く事業を理解することができますよ。


初出:2011/12/25
更新:2025/06/02

財務・会計
2019年2月6日

インタレストカバレッジレシオ | 本業+利子でどれだけ支払利息をカバーできているかの指標です

インタレストカバレッジレシオ_001
インタレストカバレッジレシオとは、企業の定常的な活動によって生じる利益で、支払利息をどの程度カバーできるかを示した指標です。英語ではinterest coverage ratioと表記されます。

このインタレストカバレッジレシオは企業の信用力を測る指標の一つです。

ココで、インタレストは利息という意味になります。直訳すると『利息をカバーしている割合』といった意味合いの言葉なのですね。

■言い換えます

さて、この直訳を踏まえてインタレストカバレッジレシオを言い換えると、企業が特別なことが無かったら稼いで来ることができるお金で、支払う必要がある利息をどれだけカバーしているか?(それは何倍なのか?)を表した指標です。

計算式で表すと
【インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+金融収益)÷金融費用】

となります。どうでしょうか?この計算式から、「支払利息の何倍を通常の企業活動で稼ぎ出しているか?を見る指標なんだな」といったふうに考えていただければと思います。

(ここで金融収益とは、金融活動によって生じる収益、つまり受取利息や受取配当金を指し、金融費用とは、金融活動によって生じる費用、つまり支払利息や支払割引料などを指します。)

■営業利益って?

さて、ここで営業利益についても簡単に説明したいと思います。

営業利益とは、売上高から売上原価を差し引き(これを売上総利益と言います)、そこからさらに販売費及び一般管理費を差し引いたものとなります。

簡単に言うと、事業を運営していて稼いだ本業の利益の事になります。視点を変えれば、資金調達にかかわる費用や資金運用にかかる収益はこの営業利益には含まれていません。
・営業利益に金融収益を足します

この営業利益には、本業のほかで稼いだ利益(投資の結果得た利息や配当などのインカムゲインや、有価証券の売却によるキャピタルゲイン)は含まれませんし、資金調達のためにかかった費用(支払利息)なども含まれません。

このほかにも本業ではない投資にかかる費用や収益も加えると経常利益という、企業が何か特別なことがなければ稼ぎ出せる利益の考え方となります。

■本業の儲けと金融収益を足して、金融費用で割ります

さて、このインタレストカバレッジレシオは経常利益とは異なり、金融関係の費用だけで考えます。

その意味で
経常利益-金融以外の費用・収益が計算式の分子となります。
(ここは定義されていないので覚えなくていいです。)

つまり、このインタレストカバレッジレシオは、本業の儲けと受取利息などの金融収益の和を金融費用で割って算出する事となるのです。

例えば、営業利益が500万円で、金融収益を50万円得ている企業があったとします。

この企業が、利息を10万円支払っていたとしたら

【インタレストカバレッジレシオ=(500万円+50万円)÷10万円=55倍】

となります。

このような指標なので、インタレストカバレッジレシオが低くなってくると苦しくなる事は想像できますよね?その為、金融機関などがお金を貸し出す際は、こういった指標をチェックするのです。

■損益計算書との関係で示すと

インタレストカバレッジレシオを損益計算書との関係で示すと次の通りになります。




科目  金額
 中略    
 営業利益   500円
Ⅳ 営業外収益    
 受取利息・配当金 50円  
 受取地代 150円  
 雑益 20円 220円
Ⅴ 営業外費用    
 支払利息 10円  
 有価証券評価損 50円 60円
 経常利益   60円
この場合

インタレストカバレッジレシオ=(営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息 

となります。(緑色にした部分だけ関係します)

(500円+50円)÷10円=55倍

損益計算書に様々な数字が出てきても定義通り計算することが重要です。

■インタレストカバレッジレシオの高さは安定度のしるしです

さて、様々な安定性の指標がありますが、インタレストカバレッジレシオも安定性の指標です。

利息の支払い能力をはかるための指標ですので、高い方が安全性が高いということができます。

なお、この比率が1倍以下になってしまうと、事業の収益で支払利息がまかなえない状態なので、極めて危険な水準です。貸し倒れの危険があるため、そういった企業との取引には厳重に警戒をする必要があります。

財務・会計
2019年2月5日

負債コスト | 税率分だけ安くなる理由をちゃんと解説しました

負債コスト_001
負債コストとは負債として資金を調達した際に支払う必要があるコストの事です。他人資本を利用した場合に支払うコストと言い換えることもできます。

他人のお金を使わせてもらうわけですから、何らかの対価は必要ですよね。通常はこの対価は利息として支払う事となります。そのため、この負債コストは借入金にかかる利息などが該当します。

また、あまり該当しないのですが社債などを発行するならばその発行コストも負債コストとなります。

要するに、お金を借りることにかかるコストといった意味合いの言葉なんですね。

■負債コストは税金の分だけ安くなります

さて話は変わりますが、企業が儲かった場合必ず取られるものがあります。それはなんでしょうか?

そう、税金ですよね。そして、この税金の分だけ、負債コストが安くなると言ったらびっくりする人がいると思います。

■1.税金の負債コストへ対する影響

では、利息を支払うという事は税金の額にどのような影響を及ぼすでしょうか?

まず、支払利息は損金に算入することができます。そのため負債コストは税金の分だけ低く考えることができます。

例えば、A社は営業利益の段階で120円儲けていましたが、営業外費用として負債の利息50円を支払っています。この場合税金の対象となる儲けは70円となるという事です。

そしてもうけが70円なので、税率を40%とすれば28円の税金の支払いとなります。その結果会社には
70円-28円=42円
が内部留保として残ることになります。

一方B社は無借金経営で同じ120円の営業利益を上げたとします。その場合、税金の対象となる利益は120円となるので、税率を40%とすえば48円の税金を支払うことになります。

こちらは、
120円-48円=72円

とすると、会社に残るお金は、50円の利息を支払ったにもかかわらず、前者の方は30円しか少なくなりません。

つまり、負債コストの利息は、税率の分だけ安くなるということがいえるのです。

■2.負債コストを計算式で示してみます

負債コストは以下の式で算出されます。

負債コスト=負債の時価×支払利率×(1-税率)

この計算式を書き換えると以下のようにも言うことができます。

負債コスト=負債の金利×(1-税率)

上の例では利益の額も出していますが、利益が出ている限りそれがいくらであっても負債コストには関係しません。

例えば、上の例で、負債の利息が50円、税率が40%とした場合の負債コストは

負債コスト=50円×(1-40%)=30円

となります。どうでしょうか、1.の計算結果と一致しましたよね。

■3.どうして負債コストは税金を考慮するのか表にしてみます

計算式は1.と2.の例を使って再度計算してみます。

A社は120円の利益を上げたましたが借入金があるため50円の負債の利息を支払います。
B社は120円の利益を上げ、借入金がないため負債の利息を支払いません。
また、税率40%だとすると

A社 B社
営業利益 120円 120円
支払利息 50円 0円
税引き前利益 70円 120円
税金(税率40%) 28円 48円
税引き利益 42円 72円

となります。このように最終的に残るお金が50円の利息を支払ったにもかかわらず、差は30円なのです。

このように、税率分だけ実質的な負債コストが安くなることから負債コストの計算式には税金が出てくるのです。

なお、利益が出ていない企業にとっては税金は関係ないので負債コストは圧縮されない事に注意が必要です。


このまんがでは負債の利息が損金扱いとなって税金が少なくなると言っています。そして、この節税分だけ負債として資金を調達した場合の負債コストは引き下がります。


解説で出てきた用語・関連用語
DSCR
無借金経営
営業利益
デットファイナンス
他人資本
財務・会計
2019年1月23日

後入先出法 | 後から仕入れたモノを先に払い出すという仮定で計算をする方法です

後入先出法_001
後入先出法(LIFO)とは、棚卸資産などの払い出し価格を評価する方法の一つです。この後入先出法は、一番直近に取得したものから払い出していくと仮定して計算を行う方法です。

商品の実際の動き

一番直近に買ってきたものから使うという一見奇妙なことが本当に発生しうるのでしょうか?モノの流れを缶が手みたいと思います。

魚屋さんや八百屋さんがそれをやったらお店には昔仕入れた、干物になってしまった魚や萎びた野菜があふれることになってしまいますよね。

そのため一般的な小売業では後から仕入れたモノを先に払い出すと言ったことはしません。

でも、このようなモノの動きをする業種もあります。

例えば、セメント屋さんが使うための砂利を野積みしているとします。この野積みしている状態で新たに砂利を買ってきた場合どのようなモノの動きになるでしょうか?

買ってきた砂利は一番上に積むことになります。その場合使うのも一番上からとなります。

そのため、実際のモノの動きは一番直近に買ってきたモノから使う事となります。

このほかには、混ざり合ってしまって仕入れた順番と関係なく払い出さないといけないモノもあります。

例えば、ガソリンスタンド等で一旦タンクに入れてそこから払い出す(タンク内で混ざってしまう)ような場合です。

■後入後出法は一つの仮定です

このように、モノの動きはいろいろあります。しかし、モノの動きを正確に追いかけていくことは非常に困難となります。

そのため、実際のモノの動きと必ずしも一致しない仮定をおいて棚卸資産の払い出し価格を評価していきます。

この後入先出法は、後から仕入れたモノが先に払い出されると仮定して払い出し単価を計算するモノとなります。

実際にどのように考えるかを例を示して見たいと思います。

日付 受入 払出 残高
1/10 10個(@100円) 10個(@100円)
1/20 5個(@150円) 10個(@100円)
5個(@150円)
1/25 5個(@175円) 10個(@100円)
5個(@150円)
5個(@175円)

この場合、合計20個の商品を合計2,625円で仕入れています。

全ての商品を期中に販売するならば、先入先出法や総平均法、後入先出法いずれの計算方法をとっても今期の払い出し価格の合計は2,625円となります。

しかし、例えば1/26に6個払い出した場合には、今期の払い出し価格と在庫の金額が問題となります。

後入先出法の場合は、後から仕入れたモノを先に払い出したと仮定して計算しますので6個だけ払い出したならば1/25の5個と1/20の1個を払い出したと考えます。

帳簿にすると以下の通りです。

日付 受入 払出 残高
1/10 10個(@100円) 10個(@100円)
1/20 5個(@150円) 10個(@100円)
5個(@150円)
1/25 5個(@175円) 10個(@100円)
5個(@150円)
5個(@175円)
1/26 5個(@175円)
1個(@150円)
4個(@150円)
10個(@100円)

この場合、今期の払い出し単価は
175円×5個+150円×1個=1,025円

となります。

とはいえ、この方法も計算をするためのお約束であると割り切っていただければと思います。

■後入先出法の特徴は

インフレ時(モノの値段がどんどん上がっていく場合)には払い出し価格は直近の時価を反映することができます(インフレに伴う名目上の利益の排除が可能)が、在庫分は物価の上昇分を反映せずに安い在庫を持ち続けることとなります。

上の例のように、価格が一貫して上がっている場合のケースが該当します。

ただ、販売が好調で期首の在庫分まで販売するようなことがあると非常に安い原価の商品を販売する事となるので利益が過大に計上されるといった問題も指摘されています。

モノの動きとほとんど一致しない計算方法であると言った批判もありますが、砂利の野積みのケースのように、絶対に一致しない訳ではありません。

なお、この方法は財務会計目的としては2010年4月1日以降の会計期間での使用は廃止されています。

onnanoko_bustup
後から仕入れたモノが先に売れるって仮定して売上原価を計算する方法があるらしいのよ。

hiyoko
それって、ウチのお店みたいですね…私たち、古参のぬいぐるみはぜんぜん売れなくって、なんか言葉が話せるようになっちゃったし。

neko_akire
すごーくモノを大事にすると、魂が宿るって言うからね。

onnanoko_bustup_2
魂とかいいから、売れてくれないと困るのよねー。でもウチは先入先出法で原価を計算してるから、君らの仕入れ単価はもう売上原価になってるのよね。


このまんがでは砂の販売を行っている業種を紹介しています。このような業種は、仕入れた商品をどんどん上へ上へと積んでいきますし、販売するのも上からとっていきますので、一番下が一番古いものとなっています。

このように後に入ったモノから払い出すと仮定するのが後入先出法の動きです。この例ですと、後入先出法で管理している場合、在庫の単価は江戸時代の単価で残っている事となります。ありえない例ではありますが後入先出法はこのような問題があると言われています。


解説で出てきた用語・関連用語
先入先出法
最終仕入れ原価法
売価還元法




財務・会計
2019年1月22日

他人資本 | いわゆる借金ですが他人資本を活用すれば事業が加速して儲かります

他人資本_001
他人資本とは、返す必要がある資金の事を言います。いわゆる負債というやつですね。

企業は返済義務のない自己資本と、返済義務のある他人資本を組み合わせて資金を調達しています。(貸借対照表の貸方(右側)は資金の調達源泉を示していると言うことができます。)

■他人の資本は返す必要があります


他人のモノを借りたら返す必要がありますよね?逆に、自分のモノの場合は返す必要はありません。

これは資本も同じです。自分のお金は誰かに返す必要はありませんよね。でも、借りてきた資本、商売の元手は、借りた人に返す必要があります。そして、通常は利息も支払う必要があります。

このように、他の人から借りてきたお金を他人資本と呼び、元本の返済義務や利息を支払う必要が出てくるのです。
 BS

■貸借対照表の例を示します


貸借対照表は右側が資金の調達源泉、左側が資金の運用形態を示します。

そして、上の貸借対照表の右側にある負債の部が他人資本にあたります。負債と借りてきたお金って日本語的にはほとんど同じだから直感的に理解しやすいと思います。

では、負債の部にはどのような『借りてきたお金』が乗ってくるのでしょうか?

これは、いわゆる外部金融で調達してきた資金がこちらに記載されてきます。

具体的には銀行からの借り入れ(間接金融)や、社債の発行(直接金融)、買掛金(企業間信用)などが該当します。

■他人資本とはひとことで言うと

さて、色々な言葉が出てきましたが、要するに自分のお金でないものが他人資本となって、貸借対照表上は負債の部に記載されます。

■他人資本は悪いの?

さて、負債というと借金というネガティブな言葉と結びついてしまいます。ということは他人資本=借金なんですね。

しかし、他人資本を活用することは別に悪いことではありません。

例えば、8%の利益を上げられる事業を金利2%の他人資本で調達したお金で実施できれば6%分儲かりますよね?こういった考え方をレバレッジと言います。

また、お金の入金と支払いのスパンにずれが出ることがあります。例えば、1月に70万円の商品を100万円で打った際に、仕入れは1ヶ月後に支払い、1ヶ月在庫で眠らせた後に売上が発生し、売上は1ヶ月後に回収できるような場合です。


1月 2月 3月
支払い 70万円
入金 100万円

この場合2月に仕入れ分の70万円の支払いが必要ですが、売上は2月に上がっていますので、3月まで待たないと100万円入金されません。

他に現金がないと、資金ショートを起こして倒産してしまいますが、他人資本で運転資金を調達できれば無事に30万円儲かります。


このまんがでは、経営の調子がいい要因として他人資本を利用して経営しているからと言っています。

解説で出てきた用語・関連用語
間接金融
社債
直接金融
企業間信用
貸借対照表
自己資本
財務・会計
2019年1月21日

企業間信用 | 商売をやっている中で企業の間で貸し借りをする事です

企業間信用_001
企業間信用とは、商品売買に伴い支払期日をずらす事によって生じる企業間の債権・債務の関係の事を言います。この企業間信用は外部金融の一つの形となります。

はい、何のことかわかりませんね。ちょっと定義が堅すぎると思います。

それなので思いっきり柔らかくしてみます。

これは簡単に言うと、企業が支払いをお互いに待つことで、直接お金の貸し借りをしていないけど資金調達できてますよねーって事を言っているのです。

■お金を払うのを待ってもらうのは

例えば、払わなきゃならない支払いを少し待ってもらうとします。それも広い意味ではお金を借りている事にあたりますよね。

逆にもらうことが出来るお金の回収を少し待つ。こちらはお金を貸している事にあたりますよね。

あなたがお店を経営しているとします。そして、よく知っている常連さんにつけで飲ませてあげました。この取引では、常連さんにお金を貸しているのと同じですよね?

逆に、常連さんはあなたのお店にお金を借りているのと同じですよね?

これを堅く言うと、あなたのお店は常連さんに対してお金を請求する権利を持ち(債権:資産)常連さんはあなたにお金を払う義務が発生します(債務:負債)。

そして、簿記を勉強された方にとってはおなじみの「買掛金」「売掛金」「支払手形」等が、この企業間信用に該当します。

onnanoko_bustup
あのお店には2ヶ月分の貸しがあって、あっちには、3ヶ月分ね。ファンシーグッズのレンタルなんて需要がないと思ったけど、結構頼まれるモノね。

onnanoko_bustup
で、あっちの会社には1ヶ月分の貸しと。回収サイトをバラバラにしたのはミスだったかしらねぇ。でも、与信管理をしっかりしないといけないし。

neko
なんだか管理が大変ですね。でも、それだけ貸しがあったら全部回収できたらすごく儲かりそうですね。

onnanoko_bustup
そうでもないのよ。あちこちから借りているから。なんか企業間信用ってすごいわよね。現金がほとんど動かなくっても商売できちゃうんだから。


■企業間信用は流動○○

この企業間信用は一般的に、金融機関からの借り入れと比較して短期間となります。また、正常営業循環基準という基準にも当てはまるので流動資産、流動負債に該当します。

短期間で回収したり、短期間で支払ったりしないとならない貸し借りなので貸借対照表上には流動○○と表示されます。

そして、比較的短期間に払ったり回収したりするお金が足りているかを見るのが安全性分析にというのです。

■確実にお金が返ってくるかの管理が必要です

このように、企業間信用でもお金の貸し借りが発生します。そのため、しっかりとお金が返ってくるかどうかを管理する必要があります。(こういうのを決済リスクと言います)

もちろん貸し手側(売掛金を計上する側)は、その企業がお金を払ってくれないような事態になれば貸し倒れが発生してしまうので、与信管理をしっかりとやっていく必要があります。

このまんがでは、メガネの先輩はお財布を忘れたようですごく焦っています。それは、どうやら後輩へご飯をご馳走すると言ってしまったからのようです。

それを察した学食の先生は、お代はもらっている事にすると言ってくれています。この場合、学食は男子生徒に対して食事代を貸していることになります。


解説で出てきた用語・関連用語
流動負債
流動資産
決済リスク
財務・会計
2019年1月20日

ワンイヤールール | 一年基準で貸借対照表の流動と固定を区分しておくと便利なのです

ワンイヤールール_001
ワンイヤールールとは、一年基準とも呼ばれ、資産や負債が貸借対照表上の流動○○に分類されるか否かを判定するための基準の一つを指します。

これは、単純に一年以内に現金化されるor現金が出ていくものは流動○○にしましょうというものです。英語ではそのままone year ruleと表記されます。

厳密には貸借対照日(要は決算日)の翌日から起算して1年以内という考え方になります。

■先に正常営業循環基準がある

この基準は、正常営業循環基準を適用したうえで、それで流動○○と判断できなかったものに対して用います。

判定の順番は以下の通りです。
1.正常営業循環基準
判断できなかったら↓
2.ワンイヤールール

■わかりやすくワンイヤールールの例を示します

売掛金や買掛金はどうでしょうか?これは正常な営業循環の流れに入っていますので、流動資産、流動負債と判別します。

また、棚卸資産(要するに商品)も正常な営業循環の中に入っていますので、流動資産と判別します。

では、どこかの金融機関から借りてきた借入金はどうでしょうか。また、経営者へ対して貸し付けたお金はどうでしょうか?

これらは営業循環の中には入っていませんよね?

そのため、ワンイヤールールを適用して判断します。

これを仮に、貸借対照表上の流動と固定を正常営業循環基準だけで判断するのであればどうなるでしょうか。

この場合は、営業循環の中に入っていないので『固定資産』『固定負債』となります。

しかし、決算日の翌月が返済期日であった場合に固定負債として問題ないでしょうか?

また、決算日の翌々月に返ってくる貸付金を固定資産として問題ないでしょうか?

少し考えると、すぐに返ってくる、すぐに払わなければならないモノだとわかりますので、固定○○に分類するのは不合理ですよね。

また、利害関係者(ステークホルダー)の判断を誤らせる可能性がありますよね?(流動比率が200%で短期的には安全だろうと判断した企業だったのですが、翌月多額の返済があって資金ショートしたなんてことになったら、何のために財務諸表を見たのかわからないですよね。)

そのため、このワンイヤールールは正常営業循環基準を適用した後に、この基準を補うように適用されます。
onnanoko_bustup
ウチは流動比率がいいから潰れませんよ。だからご融資を…

neko
融資の件はどうでしたか?

onnanoko_bustup
断られちゃったよ。ウチの流動比率を見たら問題ないと判断されると思ったんだけどなぁ。まあ、平気だけどね。

neko_akire
役員貸付金がワンイヤールールで流動資産になってるけど、この貸付金って期限が来ると借り換え借り換えでやっていて返ってこないから、実質的に固定資産、もっと言うとすでに貸し倒れているんだよなぁ。

onnanoko_bustup_2
何か言ったかしら?


固定資産
固定負債

財務・会計
2019年1月15日

DSCR | キャッシュフローで返済や利息の支払いが賄えますか?

DSCR
DSCRとは、ある企業がお金を借りた際に、負債の元金と利子を獲得したキャッシュフローでどれだけ返すことができるかという指標の事言います。英語ではDebt Service Coverage Ratioと表記されます。

元利金返済カバー率ともいい、獲得したキャッシュフローは元利(元金と利息)支払いの何倍かを示す指標です。なお、数字が大きい方がより安定していると考えられる指標です。

単純に言い換えれば、100万円のキャッシュフローを獲得している企業が10万円の元利金返済を行った場合と、100万円のキャッシュフローを獲得している企業が100万円の元利金返済を行っている場合のどちらが苦しいかを比較する指標であるといえます。
  • 借りたら返さなければなりません
さて、企業がお金借りてくれば当然返済をしなければなりません。そして、お金を返済するわけですから、どこかからお金を持ってこないといけないですよね?

もちろん、他人から借りてきても、資産を売却してもお金は生み出すことができます。

しかし、そのようなお金で返済できたとしても早晩行き詰まってしまうため、本業で稼いできたお金と返済すべきお金の比率を示して検討しようと言った発想で生まれたのが、このDSCRなのです。
  • DSCRの例

例えば、『田中正造商店』が元金と利息で合わせて100万円返済しなければならないとします。そして、この企業は活動の結果120万円の現金を生み出しているとします。(キャッシュフローは利益概念とは別の考え方になります。参考:キャッシュフロー経営)

この場合、DSCRを計算してみると

DSCR=返済前のフリーキャッシュフロー÷元金と利息の返済額

DSCR=120万円÷100万円=1.2

となります。


他方、『相田商事』が元金と利息を合わせて60万円返済しなければならないとします。相田商事は80万円の現金を事業活動で生み出してたとします。

このままだと、『田中正造商店』と『相田商事』どちらの企業の方が安定しているかわかりません。

ここで『相田商事』のDSCRを計算してみると両者を比較することができます。

DSCR=80万円÷60万円1.33

このことから、後者の『相田商事』の方が企業としては安定していると言うことができるのです。

・貸すのはいいけど…

ざっくりというとこのDSCRは、「貸すのはいいけど、おたくの会社は本当にお金を返せるの?」という事を見る指標なのですね。

onnanoko_bustup
金利が低い今のうちに借りられるだけ借りるのよ。レバレッジをかけてROEを高めるのが素敵な経営者なのよ。

neko_akire
確かに金利は低いから利益はあんまり圧迫しませんが、返済大丈夫ですか?

onnanoko_bustup
大丈夫よ。DSCRって指標でみると10ぐらいあるから。元利の返済の10倍のフリーキャッシュフローを稼ぐうちに死角はないわ。

neko
意外と堅実なんですね。


  • DSCRは不動産投資でも使われます
さて、上の説明は企業全体についての説明でした。しかし、この考え方は不動産投資などでも簡単に応用することができます。

すなわち、取得した物件から得られる利益で返済額がどれだけカバーできるかを見るという指標です。

この場合、

DSCR=利益÷元金と利息の返済額

となります。※利益ではなく、キャッシュフローとする場合もあります。

この指標が1.0以上になれば、取得した物件からの収益で返済ができているという事になりますし、1.0に満たないと、取得した物件の収益だけでは返済ができないのでどこからか返済の原資を持ってこないといけないというわけです。

もちろん、1.0ではカツカツなので話になりませんし、うまみがありません。節税などと言ったセールストークでこういった案件の話しが来るかも知れませんが、企業は税金を払ってでも成長すべきというのが本サイトの立場です。

また、現金を吸い取られるような投資をしていると、いざというときに本業の足を引っ張ることになりますのでおすすめはしません。(現金預金がいざというときにはものを言います。)

なお、このDSCRが1.0を下回るケースでは金融機関は融資を行わないと言われています。(一説には1.2未満が基準とも言われます。)

解説で出てきた用語・関連用語
財務・会計
2018年12月24日

ゼロベース予算 | 去年の事は関係ないのです。忘れてください

ゼロベース予算
ゼロベース予算とは、予算を立てる際に、過去がどうであったかを考慮せず、文字通りゼロから予算を策定していくことを言います。

長く続いている組織では予算であっても事業であっても「前年がこうだったから…」とか「前例を踏襲して…」といった事が行われることが多くなります。

もちろん、「前人の知恵」と言う言葉もありますし、そもそもどんな事業であれ始めたときは一定の効果を生んでいたはずですから、それを踏襲することは一概に悪いという事はできません。

むしろ、安定的な事業運営を実施していくといった観点に立つならば、褒められるべき行為かもしれません。

しかしながら、時代は変化します。その結果、始めた当初は有効だった事業であっても、形骸化してしまい、全くの無駄になっている可能性もあります。

ただし、そうであっても「前年比で…」といった発想で考えた場合、無駄とわかっていても完全に断ち切るのが難しいのです。

そこで、ゼロベースで考える。サンクコストを無視し、もし今この事業を新しく始めるならどれだけの予算を確保するか、またそもそもやるべきか否かを検討して予算を作るといった知恵が生まれたのです。

その結果、予算が自然に膨れ上がる事を防ぎ、必要な投資を行う事ができるとされています。

但し、ゼロベース予算を組もうと考えると、前年踏襲型の予算と比較してコストが余計にかかるといったデメリットもあります。
  • 前年踏襲型予算のメリットとデメリット
このゼロベース予算について考えるために、従来型の前年踏襲が他予算について考えてみます。

まず、前年踏襲型の予算は、策定に余計なコストがかかりません。いちいちすべてのことを精査していたら、非常に時間がかかってしまいます。そしてビジネスにおいて時間がかかると言うことはコストがかかると言うことです。

その意味で、最小限の時間で策定することができる前年踏襲型予算の場合は、コストを抑えることが可能となります。

また、昨年の予算にプラスマイナスして作成するだけなので、以前検討したリソースを活用することができます。

このことから、ある程度合理的な予算編成をすることができると言ったメリットもあります。

とはいえ、予算規模は膨張し続けます。たいていの場合前年比プラス○%とされるため(外部環境が変化していてもお構いなしです)そのうち現実から乖離して不合理な予算となってしまいます。

そして、売上予算は達成できない可能性がありますが、費用の予算は必ずといっていいほど使い切られてしまいます。

そのため、どんどん従来型の前年踏襲型予算は現実と乖離した精神論予算になりがちです。そしてその結果、組織の採算は悪くなっていきます。
  • ゼロベース予算のメリットとデメリット
一方、ゼロベース予算の場合はゼロから積算しますので、積算した際の外部環境に合わせた予算編成が可能となります。

この結果、無駄な費用の削減につながることも多くあります。

しかし、予算編成自体にコストがかかるといった弱点もありますので、あまり重要でない部分を毎年ゼロベース予算で策定するなどとやってしまうと、せっかくの費用削減効果が無駄となってしまいます。

このように、万能な方策はあり得ませんので、どのような方策であっても使うところを選んで行くことが重要なのです。
財務・会計
2018年12月22日

販管費 | 販売費及び一般管理費という言葉は聞く機会が多いと思います

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販管費とは販売費及び一般管理費のことで、売上原価以外の本業の費用が該当します。

例えば、あんパンを仕入れて販売しているあんパン専門店を考えてみます。

この企業は

100円であんパンを売るために70円であんパンを仕入れてきたとします。また、今期は仕入れた数量すべてを販売しており、仕入れた70円が売上原価となっているとします。

この場合、100円の売上から70円の売上原価を差し引いた額が売上総利益(いわゆる粗利額)となります。

売上-売上原価=売上総利益

【関連用語】
売上原価

売上総利益(粗利益)

この粗利額がそのまま企業の本業の利益になるかというと、そうは問屋が卸しません。このあんパン屋さんが営業するためには、お店の家賃も必要ですし、従業員の給料も必要です。また、お店を営むための交際費や、水道光熱費などもかかります。

また、広告費も必要とおなるでしょうし、場合によっては販売手数料も必要とされるかもしれません。

このように、本業を営むために必要な費用のうち、売上原価以外の部分がこの販管費とされます。

そして、この販管費を売上総利益から差し引いた額を営業利益といい、企業が本業で稼ぐことができる利益とされています。

売上総利益-販管費=営業利益

なお、損益計算書はこの後に、企業が実施している金融活動で生じた収益と費用を調整して経常利益を計算します。

こちらは、企業の特別なことがない場合の、資金の調達・運用も含めた収益力を図る指標です。

また、経常利益から普段は生じない特別な損益を加減して当期純利益を計算していきます。
  • マンガでは
マンガでは粗利額で評価すると言われたといっています。これを逆手にとって、広告を打ちまくって(広報費は販管費になりますから)、赤字だけど好評価を得たというお話です。
財務・会計
2018年12月21日

不渡り | お金が受け取れなかったら一大事です

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不渡りとは、小切手や手形を支払呈示したにもかかわらず支払いがされないことを言います。

大雑把に言うと小切手や手形は、銀行に持って行くと現金に換えてもらえる紙ぐらいのイメージで覚えておいていただければ大丈夫なのですが、その現金に換えてもらうという肝心の機能が機能しなかったらただの紙切れでしかありません。

言い換えると、小切手や手形は相手を信用して適法に呈示したら支払われることが期待されて運用されています。そのため、その支払いが拒絶されると言うことは極めて重いことなのです。

なお、不渡りとなった小切手や手形は不渡小切手、不渡手形と呼ばれます。
  • 不渡り即倒産ではありませんが…
さて、不渡りという言葉を聞くと直ぐに倒産という言葉が連想されてますが、不渡り即倒産ではありません。

確かに、約束していた期限までにお金を払ってもらうことができなかったというとても重い事故を起こしたことには違いがありませんが、それだけでは倒産までには至りません。

不渡りを起こしても、1回目では全金融機関に通知されるだけなのでその後の商売は信用がなくなるためとても難しくなりますが、それでも現金払いを徹底するなどの条件ならば続けることは可能です。

とはいえ、期日までにしっかりとお金を返してくれない企業と取引をしたいと望む企業はほとんどないと考えられますので(どんなに売上を上げても、現金が回収できなければ何の意味もありませんから。)極めて企業の存続は難しくなります。

そして、さらに2回目の不渡りを6ヶ月以内に起こしてしまうと、今度は銀行取引停止処分という重い処分が下されます。

こうなってしまうと、商売が止まってしまうので倒産まで突き進んでしまうこととなります。
  • 債務超過の場合
なお、似た言葉に債務超過という言葉があります。こちらは、会社の財産ををすべて売却しても負債を返済しきれないという状態であり、不渡りや倒産とは異なる言葉です。

特に、中小企業のなかでも比較的規模の小さい企業では役員が企業に貸し付けをすると言うことが行われるため、債務超過の状態でも問題なく経営している企業もあります。
財務・会計
2018年12月20日

外部資金と内部資金 | 外から調達するか、自分で稼ぐかが分ける決め手です

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外部資金とは、企業外部から調達した資金の総称のことです。この外部資金に対して内部資金という言葉があり、こちらは、企業の内部から調達した資金のことを言います。

他方、自己資本他人資本という言い方がありますが、これらの言葉は調達源泉の区分を指しており、負債など他人から調達した資金を他人資本、株式の発行など返済が不要である資金を自己資本といいます。
  • 外部資金は企業外部から
この外部資金は企業外部から調達した資金ですので、社債などの直接金融や銀行からの借入金といった間接金融、買掛金などの企業間信用といったものが該当します。

さらに、株式の発行もこの外部資金には含まれますので、外部資金=他人資本ということはできません。払込資本なども分類的には外部資金になります。

  • 内部資金は企業内部から
他方、内部資金は企業の内部から生み出される資金となります。その意味から、内部資金とは返済の必要がない資金ですよという説明がされることが多いのですが、株式の発行も返済の必要がない資金ですので正確な説明ではありません。

そのため、言葉の通りイメージしてもらい、企業外部から調達してきた資金が外部資金、企業内部の蓄積(現金が出ていかない費用である減価償却費や利益の内部留保など)を内部資金と考えます。

利益の蓄積といった意味で獲得資本などもこの内部資金に分類されますので、定義を覚えると言うよりも、何が該当するかを見ていく方が覚えやすいかもしれませんね。
財務・会計
2017年12月25日

未払金 | まだ払っていないお金ですが、一定の条件の下では買掛金となるのでわかりにくいですね

未払金
未払金とは、まだお金を支払っていない債務で、営業活動に伴う取引以外で発生したものを言います。

例えば、事務用品や機械や装置を買って、それを後払いにした場合等が未払金扱いとなります。
  • お金を払っていないだけなら
さて、この未払金と混同しやすい言葉に買掛金というのがあります。こちらは、仕入れ等通常の営業活動をしていく中で生じたものを指します。

例えば、パン屋さんが小麦粉を仕入れたりする際に、すぐにお金を払わなかったらそれは買掛金になります。

このパン屋さんにとっては、小麦粉の仕入れは原材料の仕入れですから、通常の営業活動になるわけです。

そのため、買掛金になるというわけです。

これに対して、このパン屋さんがパンを焼くためのオーブンを買ったり、その電気代を後払いにしたりした場合は未払金となるイメージです。

通常の営業活動かどうかで、未払金と買掛金というふうに言い方が変わるといったイメージですね。
  • 会計上は
さて、この未払金は通常は流動負債という扱いになります。厳密には、流動負債固定負債は正常営業循環基準とワンイヤールールの二つで分類するのですが、おおむね、1年以内に支払うことが多いので、ほぼ流動負債扱いになります。

簿記を学ぶと、費用が発生した段階で未払金が発生し、実際に支払った際にその未払金がなくなるといった風に教わると思います。

しかし、小さな企業などは会計処理上、お金を支払った段階で費用を計上しているケースが多くあります。

もちろん、税理士の先生や会計担当者がそのように処理しているので忘れる場合ないと思いますが、そのように処理した場合は、翌年度に実際に支払ったときにしっかりと未払金勘定を減らすようにしましょう。

財務・会計
2017年11月15日

清算価値 | 今やめて今持っているものを全部売ったらいくらになるかを考えます

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清算価値とは、ある時点で企業を清算したした場合の企業価値のことを言います。清算ですから、貸し借りを全て整理して始末をつけるといった意味合いの言葉になり、文字通り、今持っている資産を全部売り払って、今借りている負債を返した時にいくら残るかを考えるものとなります。

英語表記ではliquidation valueとされ、今日仮に企業を解散させて清算した場合、いくら株主の手に残るかを考える概念です。
  • 帳簿と一致するの?
さて、このように説明すると勘の良い方は、「一定時点の財政状況を表す貸借対照表に近い考え方なのかな。」と思うかもしれません。

確かに、一定時点の財政状況を表すので、すべての資産や負債が時価で計上されていればそうなるかもしれません。

しかし、実際の貸借対照表は取得原価で表示されていたり、帳簿上は価値がありますが、実際には売却できない繰延資産が計上されてあったり、いわゆるオフバランスの項目があったりと厳密には一致しません。

そのため、実際に清算価値を考える際は、仮に今の資産を全部売却して負債を返した場合、どれだけの価値が残っているかを考えるようなアプローチになります。
  • どんな時に使うの?
この清算価値の考え方を実際に使うのは少ないのですが(株式投資の際に一株当たり純資産を考えるときはあるかもしれません)、企業再生の際に、破産させたほうが回収額が多いのか、事業を継続させたほうが回収額が大きくなるのかを判断する際に使ったりします。

すなわち、清算価値を参考にしつつ、継続価値と比較してどちらが良いかを考えていくといった使われ方をするのです。


財務・会計
2017年11月14日

継続価値 | 企業が存続することを前提とした企業価値算定方法です

4_001
継続価値とは、企業がずっと継続するという前提に立った企業価値算定方法です。一応企業会計上の建前は企業は永続するという事になりますので、その建前に従った企業価値算定方法です。

英語ではgoing concern valueと表記し、文字通りゴーイングコンサーンの時の企業価値といったぐらいの言葉になります。
  • まずは計算式をコンパクトに
さて、この前提に従ったときの企業価値の算定方法は次のようになります

現在価値(PV)=キャッシュフロー(CF)÷割引率(r)

PV=CF/r

となります。

例えば、100万円のCFを資本コスト5%で毎年稼ぐ企業の継続価値は

PV=100万円÷5%=2,000万円

で2,000万円となります。
  • 資産価値とは異なります
さて、この計算式で算出した継続価値は2つの仮定が用いられています。それは将来のキャッシュフローに関する仮定と資本コストに関する仮定です。

どちらも、あくまで現時点での予測でしかありませんので、予測に基づいた企業価値も予測にしかすぎません。

しかし、一般的にはこの継続企業価値は現時点の企業の資産価値よりも高く算定されます。

例えば、上記の企業の純資産が1,000万円だったとします。そして、その企業を継続価値で買収したいと考えた場合、2,000万円で買収することとなります。

この場合、1,000万円の客観的な価値のものを2,000万円で買うわけですから企業会計上、いわゆる『のれん』が生じます。

この『のれん』の源泉は既存顧客との関係性や無形のノウハウなどグッドウィルであると言われますが、のれんの価格は実際の買収価格と純資産額の差額になります。

参考:清算価値
財務・会計
2017年11月13日

大馬鹿理論 | びっくりするような理論名ですが、内容もびっくりです

3_001 (1)
大馬鹿理論とは金融市場などにおいて、仮に価格決定要因が完全に織り込まれており、これ以上は高値になり得ないとしても、それ以上の価格で購入する『バカ』が相当数いるので投機が正当化されるという理論です。(ヒドイ理論ですよね…)

といっても、理論とは名ばかりで、「ババ抜きのババを引く人間がいるはずだから買っておけ」ぐらいのことを意味する言葉です。

英語表記ではgreater fool theoryと表記され、文字どおり愚か者理論となっています。
  • 本当に投機する人は愚か者なのか
とはいえ、投機自体は悪いことではなく、市場に流動性という価値をもたらしています。

誰も、投機的に金融市場に資金を投下しなくなってしまえば、売りたいときに売れないといった流動性リスクが生じてしまいますし、そのようなリスクが存在する市場では、その分のリスクを割り引いた価格でしか取引ができなくなるので、正確な価値で取引をすることができなくなります。

また、投機している当事者にとってはこのような社会的な意義は別として儲かればいいので、結果として儲けることができれば、決して投機は愚かな行為ではないのです。

逆に言えば本来価値よりも低い価格で取引されていると考え、投資した結果、損をしたらそれは愚かな行為となってしまいます。(結果論ですが)
  • 価値以上というけど
そもそも、金融商品の正確な価値とは何でしょうか?配当割引モデルなどを用いた理論株価の算定も可能ですが、その通りに行かないのは皆様の方がご存知のはずです。

そのため、どうしても実際の価値とは(それが算定できればの話ですが)離れた価格で取引が成立するのです。(実勢価格で取引が成立します)

また、1600年代に現在のオランダでチューリップの球根が莫大な金額で取引をされていたという実例があります。最盛期には数ヘクタールの土地や熟練の職人10人分の年収でチューリップの球根1個が取引されていたという、にわかには信じがたい話です。

この例もチューリップの球根自体の価値ではなく(美しいチューリップには確かに価値がありますがその価値をはるかに超えて取引価格がつけられていました)もっと高く買う人が現れることを期待して投機が行われたのです。

財務・会計
2017年11月8日

信用リスク | 相手がお金を返してくれなければ、どんな投資も大損になってしまいます

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信用リスクとは取引先等が倒産などの原因でお金を払ってくれなくなるリスクです。取引相手の信用によるリスクなので信用リスクというイメージです。

一般事業者の場合は、上のような説明になりますが有価証券に投資しているような場合はいわゆるデフォルトリスクの事を指します。

と言っても話の筋はほとんど同じです。相手が何らかの原因でお金を返せなくなることから、株式投資の場合は相手企業の破たんに伴って株券が無価値になることを指しますし、社債などの債券投資の場合は相手が返済してくれなくなるといった事を指します。

いずれにしても、お金を貸した相手がお金を返してくれなくなるといったリスクを指す言葉です。
  • リスクはコントロールすることが大切です
このようなリスクはどのような企業と取引をしてもつきものですから、信用リスクをコントロールするために様々な手段を講じる必要があります。

例えば、取引先の業績が悪化傾向にあれば取引を絞っていくことや、支払いサイトを短くしてもらう事を検討する必要があります。

例えば、毎月100万円の取引を3カ月サイトでしていれば300万円ほどは常に売掛金という形で売上債権となっています。その取引を80万円に絞り込み、支払いサイトも2か月にすれば160万円に売上債権が減るので、万が一のことがあったとしても貸し倒れの金額は大幅に抑えることが可能です。

また、金融機関であれば、新規の貸し付けを行わずに通常の返済だけを受け入れれば貸付金は減っていきます

(逆に言うと、このようなことをされる危険性があるため、業績の悪化を隠そうとする企業が多いのです。)

また、証券投資の場合はある程度投資銘柄を分散させる事で信用リスクを分散させることが可能となります。
  • 国の制度でもリスクコントロールできる
また、国の制度で経営セーフティー共済(中小企業倒産防止共済制度)といった制度も用意されており、取引先が倒産した場合に、無担保無保証人で掛け金の最大で10倍まで借り入れることができるというものもあります。

とはいえ、貸倒損失が出るのは避けられませんので、この制度は緊急回避以上のものではありません。そのため、しっかりとした与信管理の方が相対的に重要なのです。

■取引先の信用を調べるための方法

では、この取引先に起因するリスク(カウンターパートリスク)をどのように考えていけばよいでしょうか?言い換えれば、取引先の信用度をどうやって調査、管理(与信管理)していけばいいかということです。

例えば、ニュースで倒産が報じられたりすれば信用リスクが顕在化した事がわかりますが、それでは手遅れです。(とはいえ、ネットでの口コミも重要な調査項目です)

コストを多少かけられるならば信用調査会社(帝国データバンクなど)に信用調査を依頼することも可能です。

また、商業登記などは誰でも見ることができますので、重要な取引先になりそうでしたら法務局で調べることをおすすめします。

そこまででない場合は、国税局の法人番号検索で登記している住所を見ることができますので、その住所にちゃんと建物があるのかどうかを見ることもできますし、社会保険の加入状況を調べることも役立ったりします。

■支払遅延の噂などへの対応

支払が遅れがちとか、社長と連絡を取りにくいなどと言った噂は、結構重要な噂になります。この種の噂が聞こえてきたら、取引額を縮小する、回収サイトの短縮を図るなどの対策を行うことが重要です。

また、何よりそのようなな企業に対しては、請求書の発行を確実に行い、支払が位置日でも遅れたらすぐに連絡を取ることが重要になってきます。

いずれにしても、どんなに売上を上げてもお金を回収でできなければ何の意味もありませんので、どうやって回収するかを常に考えておくことが重要になってくるのですね。

関連用語
クレジットスコアリング
抵当権と根抵当権
財務・会計
2015年11月25日

債務超過 | 債務超過イコール倒産は明らかに言い過ぎです

債務超過
債務超過とは、貸借対照表上の純資産がマイナスとなっている状態を示す言葉です。

この債務超過に陥っている企業がどういう状況であるかを端的に示すと、もし現時点で会社を解散した場合を考えてみればわかりやすいと思います。

この債務超過という状態では、持っている資産を全て帳簿にのってい価格の通りに売り払えたとしても負債を返済しきれないといった状態です。

■資産が無いの?

と、債務超過と書くと資産が無いと考える人がいるのですが、必ずしも資産の多い少ないとは関係のない考え方となります。

例えば、3000万円の新社屋を建てた企業は3000万円の資産を持っています。このほかには運転資金として1000万円の現金を持っている企業であっても、赤字を続けて負債総額5000万円になったらどうでしょうか?

この場合、総資産が4000万円、総負債額が5000万円となり、1000万円分が債務超過になります。

このように、資産があったとしても債務超過になるケースは大いにあります。

■債務超過になったらたちまち倒産するの?

債務超過になったからと言っても、会社は資金繰りが回り続ける限り倒産することはありません。仮にどれだけ大赤字になって莫大な債務超過に落ち痛っとしても 、現金が回り続ければその会社は存続します。

例えば、大幅な債務超過に陥っていたとしても、十分な売り上げがあり、かつ売り上げを現金で回収できるような取引条件に恵まれた業態であれば意外にしぶとく存続しつづけることが可能となります。

もっとも、債務超過の状態になると、取引先の金融機関が新規融資に応じてくれにくくなったり、取引先との取引が難しくなってきます。(債務超過な企業に後払いなんかを許していたら、回収しそこなう可能性がありますからね。)

その結果、債務超過になると業績に響き始めて、最終的には窮境に陥るケースも多くなります。しかし、債務超過イコール倒産というのは明らかに言い過ぎになります。


 

財務・会計
2015年11月18日

リスケジュール(リスケ) | 残念ながらなかなか企業再建の決め手にはなりえないのが現実です

リスケ
リスケジュールとはリスケとも呼ばれ、金融機関に対して債務の返済計画を変更してもらい、返済を長期化することを指す言葉です。

そして、返済が長期化するという事は、毎月支払う元金分が減少するという事になります。

例えば、600万円を5年で返済するという約束で金融機関からお金を借りていたとします。
当初は約束通り(約定どおり)毎月10万円の元金を支払っていたとします。(5年は60か月なので、600万円÷60か月でひと月10万円です)

その後、経済状況の変化によって、どうしても月10万円の返済が難しくなってしまって、リスケジュールをお願いし、月5万円の返済にしてもらったと言うのがこのリスケのイメージです。

この場合、月5万円の返済では当初約束していた期間よりも返済期間が長くなりますよね?

このような当初の返済スケジュールをリスケジュール(予定を組みなおす)といった意味合いでリスケと呼ばれているのです。

■リスケは企業再建の切り札となりえるか

さて、ここで当初の予定と異なる返済計画(つまり月々の返済を少なくするという事です)を金融機関にお願いするため、毎月の資金繰りは楽にはなります。

しかし、筆者の経験や周りの状況を訊く限りリスケジュール(リスケ)単体では企業再建の決め手とはなりえないと感じています。

企業の業績を良くするためには日々のコストカットや返済元金のカット等の資金繰りだけではなく、しっかりと利益を獲得していくことが必須です。

そして、利益を獲得するためには売上の向上を図る必要があります。しかし、この売上の向上を図るためにはある程度の運転資金が必要となってきます。

しかし、リスケを金融機関にお願いした企業については追加の融資を金融機関に打診しても応じてくれる可能性は極めて低くなります。

(リスケをすると金融機関内の格付けの関係上、経営改善計画書等を提供してもらえないと機械的に融資対象外となるとの事です。逆に言えば、そういった計画書をしっかりと作成し提出できれば良いので、その辺は専門家の出番です。)

しっかりと、将来を見据えてどうやって現在の状況を抜け出すのかまで含めた計画を作成し、その窮境を抜け出すための手段の一つとしてリスケジュールを活用するのならば、リスケは有効な手段とはなりえますが、目先の資金繰りが苦しいからといった理由だけでリスケを打診したとしても、企業再建の切り札とはなりえないのです。

■リスケ後に必要な対応

リスケを行って毎月の返済が軽くなってもそこから企業を立て直すためには、基本に忠実に頑張っていく必要があります。

上で書いている通り、あくまでリスケは時間を稼ぐための方法であり、問題自体を消滅させるものではありません。

短期的には資金繰りの改善やキャシュフローの改善が重要ですが、長期的には結局は利益が返済原資となります。

そのため、収益を増やす(売上を増やすか副収入を得る)か費用を減らす(売上原価を減らすか、販管費等を減らしていく)しか無いのです。

これらの収益を増やす方法はマーケティングの施策が有効になりますし、費用を減らすためには在庫管理の精緻化による在庫圧縮などが有効になってきます。

いずれにしても、リスケは最終解決策ではなく、再出発のための猶予時間なのです。

ただし、実務的には売上を増やすためにも、コストを減らすためにも投資が必要だったりします。

わかりやすい事例では、とある小売業がすごく旧型の冷蔵庫を使っていて毎月100万円近い電気代が掛かっていました。

新型の1000万円の冷蔵庫を導入すれば毎月の電気代が50万円になるという状況でも、リスケをした場合は融資を受けるのは事実上不可能になります。

願わくば、こういった明らかな改善につながる投資には融資してもらえるようになるといいのですが。

財務・会計
2015年11月11日

季節資金 | 特定の時期に発生する資金需要を指す言葉です。季節という言葉を使うなんて詩的ですよね

季節資金
季節資金とは季節的な要因で発生する資金需要のことを指す言葉です。いつも必要となるような運転資金ではなく、特定の時期に発生する資金を切り離して言う言葉です。

■季節によって必要な資金です

これは、納税に必要な資金や賞与の支払資金、特定の時期のみに需要が発生するような商品の仕入資金等が挙げられます。

例えば、賞与(ボーナスですね)を出している企業では、6月や12月には賞与を支払わなければならないため、その月については通常の月よりも支払いの原資となる資金が余分に必要となります。

また、食品小売業などでは年末にはお正月用の食材を買い求めるお客さんが殺到します。小売業は現金商売なのでそれほどではないかもしれませんが、小売業に商品を卸す卸売業や、商品を作る製造業は正月用の商品を確保するために、事前にお金を支払って製造を行ったり、製造業からの仕入を行うはずです。

その結果、お正月用の売上を確保するために、大きな資金需要が発生するというわけです。

そして、このような季節的な変動に基づく資金需要を季節資金と呼ぶのです。


これに対して定常的に発生する資金を上でも挙げている通り運転資金といいます。それぞれをまとめると以下のようになります。
項目 運転資金 季節資金
資金の性質 継続的に必要となる資金 特定の時期に一時的に発生する資金
主な使途 仕入代金、給与、家賃などの日常経費 賞与、納税、繁忙期の仕入、イベント準備など
発生時期 毎月継続的に発生 年に数回など、特定のタイミングで発生
予測のしやすさ 比較的安定的に予測可能 時期が固定されているため予測しやすい
資金調達の方法 短期借入、手形割引など 短期借入や一時的な資金手当が中心
資金繰り表での扱い 常に考慮される基本的な要素 一時的な資金ギャップとして考慮

■季節資金は突発的に発生しません(季節資金は予想できる)

さて、このような季節資金ですが、かなりの確度を持って事前に予測できるといった特徴を持っています。

お正月用の商品を製造するのなら、年末前後に大きな資金需要が発生するのは毎年の事ですし、賞与の支払いや税金の支払いも前もって予測できるものとなります。

また、多くの業種には繁忙期というものがあり、大きな売り上げが作れる季節というのは逆に言うと多くの運転資金が必要とされる季節であるという事ができます。

このように、事前にある程度予測できる資金需要ですので、先を見越して事前に手当てしていくのが望ましい資金であると考えることができます。

具体的には、賞与資金が必要な6月と12月に一時的な借り入れを起こして手元資金を厚くしておき、売上が回収できたら返済するなどです。

■資金繰り表をつけてみませんか?

このような季節資金や運転資金など現金の動きは、未来についてある程度は予測できます。それをまとめた表が資金繰り表と呼ばれるもので、入金と支出の予定を一覧にして現金の不足に陥らないようにするためのものです。

本当に月次レベルの簡単なものでいいのでぜひこの資金繰り表をつけてみてください。それも大学ノートでいいので、
  • 現在の現金残高
  • 入金(売上の入金、借り入れの実施など)
  • 出金(仕入れ代金、給料、家賃、税金、返済、今回のテーマの季節資金など)
をまとめて書いてみてください。何処かの月で現金が足りなくなることが把握できれば、そこで足りなくならないように手当をすればよいのです。(数カ月先に資金ショートすると見えていれば対処方法も考えられます)

財務・会計
2015年11月10日

つなぎ資金 | 現金が無くなった時点で経営は立ちいかなくなるので、次の入金までどうにかしてつなぐ必要があります

つなぎ資金
つなぎ資金とは資金繰りの都合上、入金は確定しているものの、その入金が必要な時期に間に合わないような場合において、一時的に借り入れてくる資金の事をさす言葉です。

文字通り、次の入金までのつなぎの資金なのですね。

■入金と出金にはタイムラグがある

例えば、建築業を営んでいる人がいるとします。この人が3か月で完成できる1,000万円の工事を受注したとします。

工事の着手金として200万円が、工事が完成した翌月に残額の800万円が支払われるとして、工事には1か月後に支払う材料費が200万円、毎月100万円ずつ人件費を支払い合計300万円の原価がかかるとします。

この時、工事自体では売上高1,000万円-工事原価500万円で500万円が儲かります。

しかし、この工事を請け負う場合、最初に現金を300万円以上持っていないと黒字倒産になってしまう危険性があります。

これは、入金と出金のタイミングで考えてみると理解できると思います。

入金と出金はそれぞれ

  • 1か月目には
入金:200万円
出金:100万円(人件費)
  • 2か月目には
入金:0円
出金:300万円(材料費の支払+人件費)
  • 3か月目には
入金:0円
出金:100万円(人件費)
  • 4か月目には
入金:800万円
出金:0円

となり、合計すると500万円の利益が出ます。(このように長期で見ると資金繰りと利益の概念は一致します)

しかし2か月目には現金が200万円のマイナスとなり、3か月目には300万円のマイナスが発生します。
(このマイナス分をいわゆる運転資金と呼ぶのです。)

このようなケースが生じるため、例えば当初、手元に200万円しか現金が無かったような場合、不足している100万円分の運転資金を調達する必要が出てきます。

■入金と出金の間を埋めるお金

さて、このような入金と出金の時間的な差を埋めるために導入する資金をつなぎ資金と呼びます。このような種類の資金はある意味返済できるのが前提の資金となります。そしてこの種の資金は比較的資金調達の難易度が低いものとなります。

そのため、主義として無借金経営を志向しているような企業以外は、この種のつなぎ資金を活用するといった選択肢はありだと思います。

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