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経営

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2019年11月10日

意思決定の階層構造 | 日々行う意思決定ですが組織内の役割の違いで実施する意思決定にも違いが出ます

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組織での意思決定は、その組織に所属している人は皆行っています。といっても誰でも同じレベルの意思決定ができるわけではありません。

その意思決定を次の3つに分類したのがアンゾフです。

1.業務的意思決定
日常業務の効率的遂行を果たすために行う意思決定です。主にロワーマネジメントが行う意思決定です。

2.管理的意思決定
 仕事の流れや、組織形態等組織の構造に関する意思決定です。主にミドルマネジメントが行う意思決定です。

3.戦略的意思決定
 企業目標の決定やどんな事業に進出するかなどに関する意思決定です、主にトップマネジメントが行う意思決定です。

このマンガでは、
1.パートリーダーはロワーマネジメントとして、日々のパート練習の計画を立てる事でパートの技術の底上げを図るための意思決定をします。

2.吹奏楽部部長はミドルマネジメントとして組織を編成し目標を与えて実行するための意思決定をします。

3.顧問はトップマネジメントとしてどのような演奏会を開くかなどの意思決定をします。

曲目や演奏会の会場などがいまいちであった場合、どれだけ効率的に練習を行っても演奏会を成功させる事は難しくなってしまいます。その意味で戦略的意思決定が非常に重要となってきます。

キャプチャ


  • その意思決定は定型的か非定型か



意思決定について階層構造があることを見てきました。

さらに推し進めてその意思決定がどのような性格を持つのかについても触れていきたいと思います。

まず業務的意思決定はどちらかと言うと定型的な意思決定になります。

日々の業務で困ったことがあった時にどのように解決するかそういったことを考えていくような意思決定です。

これに対して戦略的意思決定は非定型的な意思決定となります。

企業を取り巻く環境が変化したり、企業内部の経営資源が変化したりすることがあります。

このような場合意思決定の前提条件が変わってしまうため、通常の意思決定プロセスではなく様々な経営資源を投入できる階層の人間が意思決定する必要があります。

つまり経営のトップ層がこの種の意思決定をする必要があるということです。

尚管理的意思決定はこの2つの意思決定のあいだの性格を併せ持ちます。



経営
2019年2月20日

魔の川 | 基礎研究と具体的な製品に結びつく研究の間には川が流れています

魔の川_001
魔の川とは基礎研究の成果と応用研究の間に存在する障壁を表現した言葉です。ネーミングにインパクトがあるので、この魔の川と死の谷は名前だけは知っているといった人がいるかも知れません。

■基礎研究と応用研究

基礎研究とは純粋に知識の獲得を目的として行われる研究で、それが何に役立つのか?という事はあまり問われない研究であるという事ができると思います。

ただこういった基礎研究が積み重なっていくことで人類の技術が進歩してきたのです。

一方、応用研究とは、具体的な問題解決のために行うような研究であるという事ができると思います。(どちらも厳密な定義ではありませんが。)

そして、この純粋な好奇心から始まった基礎研究の成果を応用研究に活用するためには魔の川が流れているというわけです。

■魔の川とは

例えば、ある研究者がカメレオンの色がどうやって変わるのか?を詳細に調べたとします。これが基礎研究に当たると思います。では、この研究から得られた知識は何の役に立つのでしょうか?

きっと思わぬ分野で役に立つのでしょうが、具体的な応用研究にはすぐには結び付きにくいと考えられます。(カメレオンのように色の変わるスーツが市場で強く求められているであれば別ですが。)

このような基礎研究と応用研究の間にある障壁を魔の川と表現しています。

この他にも様々な有望な基礎技術が開発されたとしても、それが市場に求められているかどうかとは別の話ですので、全てが具体的な応用研究につながるわけではないのです。

そのため有望な技術があったとしても、それを製品化していくためには昨日は製品に応用するための研究を続ける必要があります。そしてその研究には往々にしてなかなか予算がつきません。

このような状況を指して魔の川というのです。魔の川には具体的な製品にならなかった技術がたくさん浮かんでいるのです。

neko
すごい画期的な素材が色々あったんだよね。

kitsune
例えば全然汚れない糸とか。後は周りの空気をきれいにする触媒機能付きの糸なんかもあったね。

neko
そんなのがあったらすごいいいぬいぐるみができるよね 。

onnanoko_bustup
でもそういうものもなかなか製品だってないわよね。基礎研究で終わってしまって魔の川を越えられなかったのよ。


■魔の川の先には死の谷があります

そして、この魔の川を超えると今度は死の谷が待ち構えているとされています。このように上手く基礎研究を行った技術が、本格的な製品開発につながるような研究開発に進んだとしても、それが成功につながるかどうかは別の話しなのです。

そして、製品が事業化されるためにはダーウィンの海と呼ばれる生存競争を超えていく必要があります。

このように一つの製品が世に出てしっかりとした事業に育つまでには大変な苦労があるのです。

このまんがでは、猫についての基礎研究を行っていたようです。その成果を使って予算を獲得しようとしていますが、どうやら難しいようですね。

このように、基礎研究と応用研究の間には魔の川が流れているのです。 


解説で出てきた用語・関連用語
経営
2019年2月3日

SWOT分析 | プラス面とマイナス面を企業内部・外部に分けて把握する方法です

SWOT分析
SWOT分析とは、企業の環境を把握するための考え方で、企業内部の強み(S:strong)、弱み(W:weaknesses)、企業外部の機会(O:opportunities)、脅威(T:threats)を分けて考えましょうというものです。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」といった格言がありますが、己の強みと弱み、敵(外部環境)の機会と脅威を分類して書きだしましょうという事です。

そして、分類して書き出した結果、自社の進むべき方向性について示唆を得ることを目的としています。このSWOTの結果を使って、強みと機会を組み合わせて戦略を考えましょうというクロスSWOTを行ったりします。

■SWOT分析の書き方は簡単です

と、なんだか難しそうな感じですが、実際には非常に簡単に行う事ができます。

下図をご覧ください。
SWOT分析 

このように、企業内部にとって良い事と悪い事をそれぞれSとWの欄に記述し、企業外部の環境が自社にとって機会になりうるか、脅威になりうるか(つまり有利な状況なのか、不利な状況なのか)をOとTの欄に記述するのです。

そうすると、企業にとっては内部環境と外部環境について「もれなくダブりなく」(こういうのをMECE、ミッシーなどと言います)考慮する事ができるのです。


hiyoko
SWOT分析ってなんだか難しそうだけど、要するに企業の中と外をそれぞれプラスとマイナスに分けるってだけなのね。

neko_negane
でも、分けて考えると必要な要素を漏らさないし、ダブらないからわかりやすいよね。


■まずは事実を集めよう

このSWOT分析ですが、最初からS(強み)とW(弱み)、O(機会)とT(脅威)に分けて分析しがちです。

ただ、最初から分けようと考えると、SWOT分析を行うことはとても難しくなります。そのため、最初は事実を集めていきましょう。

■1.企業内部の事実を集めるための考え方

まずは自社について事実を集めていきましょう。例えば、自社の商売の流れを考えて見ます。

仕入れから販売までの流れで、他社と比べた特徴は何かないでしょうか?

例えば、仕入れ先と長年にわたって密な付き合いがあるという事実がある、在庫水準少なく管理するノウハウを持っている、接客販売のノウハウを持っているなどといった感じです。

これらの特徴は、強みだと考えがちですがこの段階では判断しないようにするのがコツです。

■2.企業外部の事実を集めるための考え方

企業を取り巻く環境については、PEST分析という考え方が活用できます。このPEST分析は企業を取り巻く環境について、政治、経済、社会、技術と言った観点から考えて見るといった考え方です。

例えば、政治的な事柄として何らかの規制が行われますが、自社の事業は既得権として保護されるなどとあれば、高い参入障壁を築くことができるといった事を意味します。

また、自社の想定顧客の所得水準が上がった・下がった、大きな道が通ったことで地方都市のベッドタウン化しつつある、IOT技術が進展しているなどと言った環境の変化を考えて行くことができます。

また、ファイブフォースモデルなども使って、競合の参入などについても考えることが可能です。

これらの企業外部の事実もこの段階では判断しないようにして、たくさんの事実をまずは集めることがコツです。

neko_negane
強みと弱みをいきなり分けて考えるのって難しいですよね。

onnanoko_bustup
そうね、だから最初は他社と違う特徴をたくさん挙げてみるのがコツよ。これは企業外部もおんなじで、何か変わったことがないかって考えてみるのよ。

neko_negane
特徴を出すだけならたくさん出せそうですね。


■企業内部について

SWOT分析では企業内部について集めた事実を強みと弱みに分けていきます。

■1.強みと弱みは相対的なモノです

ここで注意があります。強みと一言で言いますが、強みと言うからには競合に勝っていなければ強みではありません。逆に、弱みと言っても競合に負けていなければ必ずしも弱みではありません。

例えば、100メートルを11秒で走れる人がいたとしても、オリンピックで金メダルを狙うのであれば『強み』にはなりえませんし(9秒台で走らないと金メダルには届きませんからね。)、町内の運動会を考えれば相当な『強み』になるはずです(○○町の韋駄天と呼ばれるかもしれません)。

このように、企業内部で強みと弱みを分ける際には、あくまで競合を意識して相対的にどうなのかを考えなければならないのです。(とはいえ、一般的に強い弱いで良い場合も多いのですが。)

■2.戦略(進むべき方向)を念頭に置きながら分類します

ここが、SWOTの最大の弱点なのですが強みか弱みかは企業の戦略との関連でしか捉えられないといった事があります。

戦略をたてるためのツールと紹介されるSWOTですが、戦略がないと分類できないと言った実務的な矛盾を抱えているのです。

例えば、社長が高齢という事実を強みとして捉えるか、弱みとして捉えるかを考えて見ます。

その場合、誰をターゲット顧客にして何を売るかといった企業の戦略によって強みか弱みかが変わります。

「高齢の顧客層に上質の商品を落ち着いた雰囲気で…」といった経営戦略をとるならば、社長が高齢であるという事実は、顧客の潜在ニーズを捉える事ができやすいため強みになると考えられます。

このように、分類が主観的になってしまう傾向がありますし、実際のSWOTは経営戦略を事後的に説明するためだけに使われるという、曖昧さがあります。

このことは、解決しようがない問題なのですが、戦略的な仮定をおいてとりあえず分類してみると言った割り切りが必要です。

■3.強みが本当に強みかを判定する手法もあります

出された強みが本当に有効なのかをフィルタリングするためのVRIO分析というツールもあるので、ブレスト的にどんどん出してみても良いかもしれませんね。

ただ、このように書いても「えー、ウチに強みなんかあるのかな…」と言う中小企業の経営者は多いものです。

このような場合、現に売上を取れている理由を問うてみると良いと思います。「自社の売上があるという事は、顧客が競合ではなく自社を選んだ理由があるわけですから、それこそがあなたの会社の強みなのです。」と尋ねてみるのです。

neko_negane
オーナーさん、ウチは老舗のファンシーショップなんですけど、これは強みなんですか?

onnanoko_bustup
もちろん強みよ!ウチは強みしかないのよ!

hiyoko
でも、新鮮さがないから客足が伸び悩んでるんじゃないの?什器もちょっと古くなっているし。

onnanoko_bustup
いいのよ、競合と比べればウチの什器はまだ新しいし、競合よりも歴史があるから、お客様は2世代にわたってきてくれてるのよ。(この辺を戦略として活用したいわ)


■企業外部について

さて、難しいのは企業外部の分析です。

簡単に機会と脅威に分けてくださいとしか、このSWOT分析では言ってくれないのですが、外部の事象が機会なのか脅威なのかは、やはり自社の経営戦略との関わりでしか分けられません。

例えば、高齢化の進展は一般的には『脅威』になると考えられますが、高齢者に対応した商売を実施するのであれば『機会』になりえます。

また、一般の小売業であっても、きめの細かい配達サービスができるのであれば、高齢化の進展は『機会』になりえます。

このように、分類は中々難しいのですが、「その環境は自社にとってどうなのか」を問うていくことで機会と脅威に分けられるはずです。

こちらも企業内部環境について考える場合と同じで、経営戦略を仮定しながら分類していくと言ったことも行われます。

なお、ポジティブシンキング過ぎて、何でもかんでも機会であると考えてしまっては分析になりませんので、そこは冷静に考えてみてくださいね。

■ここまでで説明したSWOTの流れを絵にするとこんな感じです

SWOTの流れ

■きれいに整理できるというメリットがありますが、デメリットもあります

このようにSWOT分析は、企業を取り巻く環境を総合的に見る事ができるという大きなメリットがあります。

企業内部だけの視点、企業外部だけの視点に陥らずに、総合的に企業を考えることができるというのはとても重要なことです。

ただし、SWOT分析は上で触れたように戦略を決めるためのツールなのに、戦略が決まらないとSとW、OとTが分類しにくいと言った弱点もあります。

そのため、迷ったら仮置きするぐらいの心構えで取り組んでください。

hiyoko
なんかSWOT分析って簡単で、わかりやすいけどあやふやな気がするわ。

neko
ですよね、僕も思ったけどウチの強みが老舗って言うのは、お客様が2世代にわたっているからですが、2世代にわたったお客様をターゲットにするのは、ウチが老舗だからなんですよね。

onnanoko_bustup
ふふふ。その辺は飲み込むのがSWOTのお約束なのよ。

経営
2019年1月27日

事業計画を作ることがなぜ必要なのか、事業計画策定支援のプロが挙げる5つの理由

事業計画

経営者の皆様。事業計画を作っていますか?いきなりこのように訊くと、「事業計画って何ですか?」といった反応が返ってくることが多くあります。

平成28年版の中小企業白書によると、中小企業の約47%が事業計画や収支計画などを作成したことがないので、事業計画は身近な存在ではないといえます。


確かに、計画などしなくても上手くいくケースもあります。また計画通り行かずに、途中で軌道修正したことが結果として成果に結びついたといった事例も多数存在しています。


しかし、事業計画を作成しないで経営をすることはとても危険な事です。また、事業計画があれば成長
が加速するといった局面も存在します。


そのようなことを踏まえ、なぜ事業計画が必要であるかをお伝えできればと思います。

理由1:事前判断の精度が良くなる

事業を実施すべきかしないべきか。その事業にどれだけの人モノ金といった経営資源を投入すべきか。

事業を始める際に、こういったことは事前に決めることになります。

何を売りとして商売をするのか。


どこで商売をするのか。


誰を顧客として商売をするのか。


どんな風に商売をするのか。


ちょっと思いつくだけでも、いくつかの応えるべき質問が出てきます。こういった内容に応えようとして調べていけば、ある程度の見通しがつくはずです。


onnanoko_bustup
行けるかしら?それとも無理かしら…

hiyoko
迷っていても仕方ないじゃない。とりあえず計画を立ててみたら?

onnanoko_bustup
絵っと計画を立てるためには、商圏について調べて、この業態だと客単価は…、お店の家賃は…

hiyoko
ほら、一人で迷っていても何も始まらないけど、事業計画を作ろうとしたらある程度見えてくるじゃない。

・事業実施の可否も判断できる


例えば、売上の上限がある程度開始時点でわかる業態があります。


飲食店などは、席数が決まれば回転数の上限もある程度決まりますし、客単価の上限もある程度見込めます。


このことは、売上の上限がある程度決まってしまうことを意味します。


売上は客数×客単価で算出されますので、客数の上限が席数×回転数で決まりますし、客単価もお店の業態であるていど見えます。


そして、お店の立地によって家賃などの固定費も決まりますし、食材費や人件費もある程度相場があるのでその事業が儲かるかどうかも見えてきます。


そのため計画の下振れも考慮して、『十分儲かる』状態まで計画を詰めて行くことが可能です。

この事前判断の段階でギリギリなんとかなるぐらいの計画の場合は、悪いことは言わないので、一度落ち着いて考えてみましょう。


とくに「自分の作る○○は絶品だから立地が悪くてもお客様が来るはず」というのは、リアル死亡フラグなので絶対にやめておきましょう。

理由2:危機回避の可能性が高まる

事業計画を作成し、それに沿って事業を行うと計画通りに行かないことが出てきます。


「それじゃだめじゃん。事業計画なんか意味ないじゃない。」と思うかもしれませんが、計画通りに行かない事が計画通りなのでそれでいいのです。

しかし、計画通りに行かない事には何らかの理由があるはずです。その理由を考えるきっかけになります。

onnanoko_bustup
計画通りにいかないわ。でも、計画通りにいかないことが当たり前だって先生が言っていたわね。

hiyoko
そうよ、でも計画通りにいかないのには何か原因があるんじゃない?もう一度計画を見直してみたら?

onnanoko_bustup
そうねぇ。何となく頑張りが足りないと思ったけど、毎日遅くまで頑張っているから、がむしゃらに頑張るんじゃなくって、やり方を修正しなきゃいけないのかもしれないわね。

neko
いずれにしても、軌道修正をしなきゃいけないことが分かったから、明日から考えていこうよ。


・頑張り不足という原因分析を避けられる


事業計画を持っていないと、利益が上がらないことの原因を頑張り不足に求めてしまうことがあります。


頑張るという言葉はとてもいい言葉ですが、事業は仕組みを構築することに他なりません。仕組みが良くないのに必死に頑張ってもおそらく報われないでしょう。


もちろん、「担当者が怠けまくっているっていうのは頑張り不足じゃないか」といった声も聞こえてくるかとはお思います。


しかし、怠けまくっているという現状はやはり怠けることができる、怠けてしまう仕組みが要因だと考えられます。


そのため、単に「怠けないでがんばれ」といった掛け声だけでは意味がなくなってしまいます。


・軌道修正の例


事業計画が明らかに実行できないような場合に、頑張りが足りないと原因分析してしまったら、あとは今やっていることを今よりも頑張るしかありません。


しかし、狙っていた客層が当初の想定よりも来店していない等といった事が分かれば、狙っていた客層に対して、よりプロモーションを強化する等の対策が打てます。


この対策をある程度の期間に繰り返すことができれば、漠然と「売上が上がらないけど、今頑張ればなんとかなるはず」とやるよりもうまくいくはずです。


問題の兆候が見えてきたら早めに対処するのが大切ですが、事業計画がないと問題の兆候が見えませんので怖いのです。

理由3:経営資源を集中することができる

ホースの出口を強く握ると水の勢いが増して、遠くまで飛ぶようになりますよね。これと一緒で、一定の目標に向かって企業の持つ経営資源を集中するとパフォーマンスが向上します。

onnanoko_bustup
あれもこれも…あー経営を始めるとやらなきゃならない事や、やりたいことがどんどん出てくるから大変よね。

neko
でも、計画があるから集中しなきゃならない事はわかるよね。

onnanoko_bustup
そうね、事前に事業計画を立てておかなかったら、あれもこれも手を付けちゃって全部中途半端になっちゃてたかもね。


「別に事業計画がなくても、目標があればいい」とおっしゃる方もいるのですが、漠然と「営業利益を10%増を狙う」として何をすればいいか判断ができるでしょうか?


それよりも、「販売数量を5%増加させる。そのためには既存顧客との関係深耕を図り、販売数量を○%増加させ…」と計画として落とし込んでいった方が行動が具体的ですよね。


その結果、どのような営業を実施するかなど細かい具体策につながるため、日々の行動を具体的に規定することが可能となります。


また、いつまでに〇〇を行うといった行動計画を事業計画にもりこんでおけば、その実施については日常の業務に加えて取り組んでいくことが可能です。


「つい忙しくって」といった言葉を聞くことが多いのですが、経営者の時間という貴重な経営資源を目
標達成のために投下するというのも事業計画の大切な役割なのです。


理由4:企業外部から経営資源を調達することができる

企業外部からの経営資源の調達というと資金調達が最初に来ると思います。しかし、事業計画はそれ以外の人やモノ、情報といった経営資源の調達にも役立つのです。


tanuki_2
融資のご相談ありがとうございます。結果は後程…

onnanoko_bustup
はー銀行さんに相談するのって緊張するわね。でも、前向きに検討してくれたみたいでよかったわ。

neko
オーナーさんが銀行に行っているときに、協力したいって人が来てましたよ。

onnanoko_bustup
あー前にネットで知り合った人なのよ。やりたいことがあるのって説明したらぜひ協力したいって言ってくれてね。

hiyoko
旗を掲げると、人が集まってくるのよね。


・お金の調達のため

企業が金融機関へ融資を申し込むときに、求められるのは決算書数期分と事業計画書となります。どうせ必要なものとなりますので、最初に作っておいた方がよいと考えられます。


また、他者から出資を受ける時にも必ず事業計画書は必要となります。金融機関の場合は、決算書の方を重視する傾向がありますが、出資を受ける場合は事業計画書がとても重要です。


というか、事業計画書以外にあなたの会社の将来性を証明するツールがないわけですから、気合を入れて作る必要があるのです。


この場合は、しっかりと儲かる理由を根拠をもち、理念を掲げて描く必要があります。


・人もの情報の調達のため

事業計画が明確ならば、自社に足りない人材や設備、ノウハウ等が明らかになります。

事業のビジョンと目的を明確に伝えることで、企業外部からサポートを得られるといった事は割とあります。こういった事がやりたいと明確に打ち出せていれば手伝いたいといった人が近づいてきてくれるイメージです。

理由5:撤退の判断のために

事業をやって一番難しい意思決定は撤退です。今まで必死になってやってきたことを諦めるわけですから、並大抵の判断ではありません。


また、経済的な致命傷を負って市場から退場するといった形の撤退は、だれも望みませんので(本人はもちろん、取引先や企業を取り巻く地域全体も望みません。)あらかじめ事業計画に撤退の時期も盛り込んでおくことが望ましいです。

onnanoko_bustup
この新事業はもう駄目ね…

neko_akire
残念ですが、これ以上がんばっても傷口を広げるばっかりですね…

onnanoko_bustup
でも危なかったわ。最初に撤退ラインを決めておかなかったら、たぶんまだいけるって考えていたわ。まだいけるって結論ありきで情報を集めれば、そういった情報はいくらでも集めることができるから。

neko_akire
そうですね。この損失はいたいですけど、幸いまだ致命傷ではないので、いつか取り戻すこともできますよ。

onnanoko_bustup
最初に事業計画を作っておいて本当によかったわ。



撤退の時期を明記しておくべき理由は以下のとおりです。


・追い詰められた時の判断力を信用しないで済むため


事業がギリギリの状況まで来てしまうと資金繰り等で文字通り忙殺されます。そうなると、考える時間や気力がなくなります。


ほとんど不眠不休で働いているときに、難しい判断を冷静に下せるでしょうか?


少なくとも、判断の精度は落ちると考えれらます。


・人は信じたいものしか見ないため

人は見たものを信じるわけではありません。信じたいものを見てしまうのです。


例えば、業績が明らかに悪くなってくると、「今は〇〇だから、もう少し頑張れば事態が好転する。」などと考えだします。そして、好転すると考えられる根拠を探し始めます。

しかし、冷静に考えて今までうまくいかなかったことが、同じことをやっていてうまくいく可能性は低いでしょう。


・事業を生き延びさせるための方法で傷を広げないため

また、無理に事業を生き延びさせるために、採算度外視で受注を取るケースも出てきます。

ほとんど利益が出ないけれども、資金繰りを回すために入金の早い案件に注力して、利益の取れる案件を断るなどといったことも行われます。


このような状況になると、いわゆる自転車操業に陥ってしまいますので、何のために事業をやっているかが分からない状況になってしまいます。


そして、仕入れなどに伴う未払金がたまっていくと、いよいよ止まれなくなってしまいます。

事業計画を作っておけば、もしここまでダメだったら撤退するという損切ポイントをあらかじめ決めておくことができます。


事前の想定なので机上の空論かもしれませんが、少なくともギリギリまで追い詰められて不眠不休で働いた後に下す判断よりは精度が高いはずです。


と、長々と書いてきましたが、結論は「事業計画マジ大事」ってことです。事業をするならほんとに必須です。


時間がないなら、日本政策金融公庫の創業融資のフォーマットだけでもいいので(A3で1枚分です。)埋めてみてください。


また、個別にご相談にも応じますので、どうしても事業計画を作れないといった場合はご相談くださいませ。

あなたの羅針盤になる事業計画を一緒に作成します BLOGOS/Yahooニュースにも寄稿中の中小企業診断士


解説で出てきた用語・関連用語
経営
2019年1月14日

プロダクトイノベーション | 消費者に革新的な製品が届けられます

プロダクトイノベーション
プロダクトイノベーションとは革新的な製品を生み出す事をいいます。英語ではproduct innovationと表記されます。直訳してプロダクト(製品)のイノベーション(革新)といったイメージで捉えておくといいと思います。

さて、革新的な製品を作り上げるというのはどのようなイメージになるでしょうか?改善という言葉ではなく革新という強い言葉を使うぐらいですから、既存の製品やサービスにはない画期的なものであるはずです。

例えば、ポケットベルから携帯電話、携帯電話からスマートフォンといった風に、既存のモノやサービスとは異なるモノを作りだすようなイメージですね。

このプロダクトイノベーションが発生すると、消費者に届く製品やサービスが根本的に変わりますので、世の中に大きな影響を与えます。

これは、スマートフォンが存在していなかった頃の生活と、今の生活がどれだけ変わったかを考えてみれば理解できると思います。
  • 従来にない製品を生み出すイノベーションとは
このプロダクトイノベーションは従来には存在しなかった製品を作り出すことです。そして、従来には存在しなかった製品とは全く新しい製品を最先端の技術を活用して作り上げることのことのように思われます。

しかし、プロダクトイノベーションは別に最先端の技術が必要なモノだけではありません。以下、プロダクトイノベーションの類型について見ていきます。

1.技術型・新規型全く新しい技術を背景に製品を作り出すイメージです。このタイプがプロダクトイノベーションとして想像しやすい類型だと考えられます。

2.組み合わせ型技術自体は存在していたのですが、それを組み合わせることで新しい製品をうみすことができます。

そして、このタイプのイノベーションを生み出すために、企業は他社と連携をしたりしていきます。
このタイプもプロダクトイノベーションのイメージに沿うと考えられます。

3.顧客ニーズ型顧客のニーズに沿った商品を開発したら、プロダクトイノベーションとなったイメージです。

例えば、飲料を缶に詰めてどこでも飲めるようにした缶ジュースは、従来お店で買っていた飲料を気軽に飲めるようにしました。

また、従来はお茶は自宅で煎れて飲むものだったのですが、缶入りの緑茶やウーロン茶などが登場して外出先で気軽に飲めるようになりました。

一見するとそんなに最新技術が使われているわけではないのですが、顧客にとっては革新的に便利になっているのです。
  • プロダクトイノベーションでは最終製品やサービスが変わる
プロダクトイノベーションでは、消費者や顧客に届く製品やサービス自体が変わります。

類似の言葉であるプロセスイノベーションでは製品サービスはそのままに、企業内部のプロセスがかわるだけなのですが、ここが大きな違いとなります。

こちらは抜本的な生産性の向上に結び付くような、製造工程の革新や、物流の革新等のことを言います。 但し、こちらのイノベーションの結果、消費者の手元に革新的な製品やサービスが届くという事はありません。そのため、あくまで企業内部の革新であると言われています。

プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションは、消費者の手元に革新的な製品が来るか否かで区別することができるのですね。

なお、プロダクトイノベーションにともなってプロセスイノベーションも発生する事があります。

新しい製品を効率的に作るために、従来の業務プロセスを改革すると言ったことが存在するためです。
  • 損益計算書の売上に効いてくる
また、このプロダクトイノベーションは、損益計算書上の売上を向上させる方向で効いてきます。

プロセスイノベーションが費用を削減して利益率を改善させる方向に効いてくるのと対照的ですね。
  • プロダクトイノベーション後の対応
このプロダクトイノベーションを発生させた後には、大きく分けて2通りの選択肢があります。

1.研究開発費の回収を急ぐ一つ目は、革新的な製品である事から比較的高額の価格をつけて早急に研

究開発費を回収するといった方法です。スキミングプライシングと呼ばれる考え方です。
比較的市場が小さい、もしくは製品ライフサイクルが短いと判断されるような場合はこの方法がとられます。

2.市場シェアの獲得を目指すもう一つは、なるべく安く提供して市場シェアを一気におさえる方法です。

比較的市場規模が大きい、もしくは製品ライフサイクルが長いと判断できるような場合は、この方法がとられます。

そして、作り続けているうちに製造原価が下がってきますので(経験曲線効果や規模の経済が効いてくる)、長期的に見て十分に儲けることができる可能性のある方法です。

解説で出てきた用語・関連用語
プロセスイノベーション
技術提携
スキミングプライス
市場浸透価格
製品ライフサイクル
市場シェア
経験曲線
規模の経済
物流



経営
2019年1月13日

コモディティ化 | 原因と対策としてのブランド化が難しい理由

コモディティ化_001
コモディティ化とは製品が差別化できる要因(品質、機能、ブランド等)を失い一般的なものとなってしまい、消費者にとってはどこのメーカのものを購入しても大差がない状態になってしまうことを言います。

コモディティ化が進むと、消費者はどれを選んでも同じといった状態となるため、企業間の競争は価格競争が主なものとなります。その結果、低価格化が急速に進行します。

考えてみてください、ほとんど同じものが小売店に並んでいてワザワザ高い方を選びますか?消費者にどちらを選んでも同じようなものだと思われると、そういった状態となってしまいます。そしてこのような状態になるのがコモディティ化です。

そして、低価格化が進行すると、当然ですが利益が圧縮されてしまいます。論理的には超過利潤が得られなくなる水準まで価格が下がりますので、そんなにおいしくない市場、ついり儲からない市場となる訳です。
  • コモディティ化が進んでいる製品の例
コモディティ化が進行している製品カテゴリーの例として、家電やPCなどがあげられます。

たとえば、冷蔵庫では食品を冷やして保存するといった主要機能についてはどこのメーカのものでも同じと言えます。

またPCでは、どこのメーカのものであっても同じソフトウエアさえ導入すれば機能面の差異はほぼありません。

消費者にとってはどれを選んでも、最低限の機能は持っている。また、コモディティ化が進んで安く購入できるといったことはとても良いことです。しかし、企業経営の面では低価格化が進行するとおいしくないので良くないとされるのです。
  • どうしてコモディティ化がすすむのか?
コモディティ化の推進要因として、以下のような点があげられます。

1.モジュール化の進行
製品を構成する部品がすでに市場に存在・流通しているような場合、どのメーカも同じようなモジュールを組み込んで製品を構成するため性能の差がつけにくくなります。

PCでいうと、CPUやHDD、メモリー等をPCメーカはわざわざ自社開発せず、市場から調達して組立をおこないます。そのため、どこのメーカのものであっても、同じCPUを積んでいれば同等の処理速度を実現できるのです。

2.顧客の要求水準の頭打ち
製品の機能・品質の向上に伴い、どの製品でも顧客の求める機能・品質の水準を超えるようになるといった場合が考えられます。

冷蔵庫は食品を腐らずに保存できれば十分と考えている顧客に、デザインやドアの開閉のしやすさで訴求してもなかなか差別化は難しいと考えられます。

3.みんなが真似する(できる)から
良いモノはすぐに真似をする人が出てきます。これは製品やサービスでも同様です。

模倣を避けて差別化要因を維持するために、特許権等の知的財産権を確保するのですが、特許権は20年しか権利として認められていませんので、特許が切れた後は模倣を防ぐ術が少なくなります。

また、競合他社も必死ですので、他社の特許権に抵触しないように同様の機能を実現するための開発も行われます。

そのため、すぐに市場にその製品やサービスの類似品があふれてしまうのです。
  • 対策はあるのか
コモディティ化が良くない現象であると捉えるのならば、対策も考えられます。

1.ブランド化
よく言われる対策は、ブランド化です。製品やサービスに名声を確立し付加価値(多分に心理的な付加価値となります)を訴求できれば、競合品と区別することができるのでコモディティ化を避けることができます。

とはいえ、このブランド化は安易に言われていますが茨の道です。ブランド化が簡単にできれば誰も苦労しませんし、非常に大きなコストがかかります。

また、コモディティ化するような商品は世の中にすでにあふれているため、単なる差別化を通り越してブランド化するといった切り口を取ろうと考えると、必然的に客層を絞り込む必要があります。

例えば、コモディティ化を避けてブランド化するために、食塩を「35歳男性専用食塩」などと打ち出すことは考えられます。

35歳の男性が好むモノを調べ上げ、その嗜好に合った食塩で訴求するイメージです。(例えば、35年前に精製した食塩、35億年前の地層から掘り出した岩塩などのストーリーを付与して行く感じです。)

ただし、このようなアプローチを取る場合は、逆にいえば35歳男性以外のターゲットは追いかけないことを意味します。

そのため、既存の製品はそのままにして別の製品ラインとして打ち出す事となるでしょう。(既存の製品はコモディティ化したままですが、既存製品をブランド化するためには、小売店の売り場から排除される等の大きなリスクを負う必要があるため現実的ではないでしょう。)

2.顧客とコミュニケーションを密にする
最初からブランド化を考えるのではなく、顧客に製品やサービスの魅力を伝えるコミュニケーションを密に取るところから始めると追加のコストがあまりかかりません。

コモディティ化している製品やサービスであっても競合他社と違う何らかの特徴があるはずです。前述の食塩であっても、製法が違うとか、原材料を確保した場所が違うなどがあるはずです。

そして、その特徴を適切に伝える努力を行えば、多少は効果が出てくると考えられます。例えば、福井県出身の人なら、福井の海で作った塩といわれれば愛着がわくはずです。

このような些細なことでも良いのでしっかりと顧客とコミュニケーションを取っていく必要があるのです。


このまんがでは4コマ目で言われている通り同じパン屋さんから仕入れている焼きそばパンを、学食と購買で売っています。このように同じものであったり、品質に大差のないものは価格競争が主なものとなってしまっています。

そのため、 1コマ目で学食のおばさんが値下げを断行した際、3コマ目で購買を運営している販売クラブの面々も焼きそばパンの値下げで対抗しています。

経営どうが「コモディティ化

経営
2019年1月12日

自己成就予言 | 自分でいった事がそのまま実現するという心理的な効果があるのです

自己成就予言_001
自己成就予言とは、予言されたことを実現するような行動を意識してあるいは無意識に取る事によって、予言通りの結果が生じるという現象のことを言います。

予言されていた状況が起こりそうだとみんなが考えることによって、そのような予言がなければ発生しなかったような事が起こるといったイメージです。

例えば、PPMで負け犬という事業部に位置付けられて人々がやる気を失って本当に負け犬になってしまうといった現象が生じると言われています。

または、ある新入社員を「彼は10年に一人の逸材だ」と言い続けることについても同じような効果があるかもしれません。

周囲もそういった目で彼を見るようになり、難易度の高い仕事をどんどん任せるようになるとします。言われている新入社員自身も、やる気を出してその仕事をどんどん成功させていくとします。

その結果、本当に「10年に一人の逸材」になるかもしれません。

人の心理にはこういった傾向があるため、人を評価する言動には気を付けないとならないのですね。
  • 企業を取り巻くマクロ環境に影響します
この自己成就予言ですが、経営には企業を取り巻くマクロ環境を通じて影響します。

例えば、影響力のあるメディア等が不景気だとあおり立てれば、消費者の財布のひもが固くなって本当に不景気になります。

また、安く商品を提供するお店がいいお店だといった空気感をずっと作っていたら、デフレ傾向のままでした。(デフレ脱却のためにリフレ政策をとっていたのですが、世間の空気感の方が強いらしく、いまいち効果を発揮していません。)

公務員がお給料をもらいすぎていてけしからんとみんなが批判したら、民間の給与もつられて下がってしまいました。

国税庁「民間給与実態統計調査」によると、2000年の平均年収が男女平均で461万円、15年後の2015年が420万円です。

このように予言は結構実現されるのです。
  • 個別企業も油断できない
製品ライフサイクル仮説といった、モノやサービス、事業の成長と衰退を生物に例えて説明する理論があります。

直感的に理解しやすいためか結構浸透しているのですが、この理論に基づく自己成就予言には注意が必要です。

例えば、「この事業はもう成熟していているから」といった説明が企業内で共通認識となると

成熟している→大きな成長は見込めない

といった風な予言となってしまいます。そして、実際に事業は大きく成長できないといった事が起こるのです。

しかし、本当に事業が成熟しているかどうかは誰にもわかりません。本当は、自己成就予言が効いて、無意識に営業活動や技術革新などにブレーキをかけていたことから成長が阻害されているのかもしれません。

例えば、経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンディブ」という報告書によると我が国と米国・欧州の企業では、以下のように利益率に差がついています。もちろん規模の違いや重視する経営指標の違いもありますが、利益率に差がある事は厳然たる事実です。

カテゴリー ROE
日本・製造業4.6%
日本・非製造業 6.3%
米国・製造業 28.9%
米国・非製造業 17.6%
欧州・製造業 15.2%
欧州・非製造業 14.8%

出所:「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト (伊藤レポート) 平成26年8月 から抜粋

このような大差をつけられる理由の一つに、我が国の利益率はこんなもんだといった自己成就予言の罠があるのかもしれません。

解説で出てきた用語
カラーバス効果
リフレ
ROE

キャンペーン記事:経営マンガマラソン   
経営
2019年1月10日

クロスSWOT | SWOT分析の結果をさらに活用するのです

クロスSWOT
クロスSWOTとは、SWOT分析で抽出した企業内部の強み(S:strong)、弱み(W:weaknesses)、企業外部の機会(O:opportunities)、脅威(T:threats)といった情報を元に、自社の戦略を探っていくという方法の事をいうのです。

簡単に言うと、単なる情報整理であるSWOT分析から戦略策定につなげるための方法論です。

さて、この手のフレームワークは抽象的なことを沢山書いてもわかりにくいので、具体的に例を挙げていきたいと思います。
  • 内部環境と外部環境を掛け合わせます。
さて、クロスというぐらいですから、組み合わせで考えるのですが、どのように組み合わせるのでしょうか?

SWOTというぐらいですので4つの要素から2つの組み合わせを作るのでしょうか?その場合、ダブりを排除して、6通りを考えるのでしょうか?(この場合すべての組み合わせは(SW、SO、ST、WO、WT、OT)となります。)

でも、自社の強みと弱みを組み合わせた戦略、外部環境の機会と脅威を組み合わせた戦略などと言っても意味が分かりませんよね?

その為、組み合わせると言っても、内部環境であるS、Wと外部環境であるO、Tの組み合わせのみを考えるのです。この場合(SO、ST、WO、WT)の組み合わせのみを考えます。
クロスSWOT
  • どのような方向性を取るべきか
さて、上の図表で、各組み合わせの意味を示してみました。

S×O、つまり強みと機会を組み合わせて、自社の強みを活かして機会をとらえる方向性。色を付けて示した通り、重要な考え方です。
 
S×T、つまり強みと脅威を組み合わせて、自社の強みで脅威を克服するという方向性。

W×O、つまり弱みと機会を組み合わせて、自社の弱みではあるが機会があるので弱みを克服して機会をとらえるために何とかするという方向性

W×T、つまり弱みと脅威を組み合わせて、自社の弱みと脅威の組み合わせから発生する問題を克服するという方向性です。

経営資源に強い制約がある組織としてのセオリーとしては、S×Oつまり強みと機会を組み合わせる方向性を目指すという方法です。

弱みを克服するために限りある経営資源を費やすよりも、今持っている強みを活かす。さらに、外部環境の脅威に対応するために経営資源を費やすよりも、機会に対応することに集中するという考え方です。

もちろん、致命的な弱みや、脅威をそのままにしておくわけにはいきませんが、大きな方向性としては、S×Oが良いという事は覚えておくと良いと思います。
  • クロスSWOTは実務的か
このクロスSWOTが実際に機能するためにはいくつか前提条件があります。その前提条件を見ていきます。

1.しっかりとSWOT分析をする事
よく、このSWOT分析にあやふやな意見が混ざっていることがあります。

例えば、「店長の接客力が高い」といった強みを挙げたとして、この強みは本当に強みなのでしょうか?

言い換えれば、何を根拠に接客力が高いと言っているのでしょうか?根拠が示せるのならば、本当に強みだと考えられますが、そうでないなら単なる感想でしかない可能性があります。

そして、単なる感想の羅列を元に経営戦略を立てることは、危険ですので気をつけないといけません。

また、強みと弱みの切り分けもあやふやになりがちです。例えば、上の例で「店長の接客力が高い」といった事が本当だとしても、それが強みであるかどうかは不明です。

例えば、人を極力配置せずに徹底したローコストオペレーションを志向する企業の場合、店長の接客力は特に重要な要素にはなり得ません。

このように、SWOT分析自体がちゃんとやろうと思うと難易度の高い方法ですので、しっかりと取り組む必要があるのです。

2.論理立てて戦略を作ること
強みと機会を掛け合わせて戦略を構築するのがこのクロスSWOTですが、機会にだけ目を奪われて戦略を構築する例があります。

例えば、地域に子育て世代が増えると言った機会を見いだしたとします。

この場合、やりがちなのは、「地域に子育て世代が増えるから、子育て支援のお店をやる」といった戦略構築です。

一見すると、何の問題もないように感じられますが、自社の強みがこの戦略では言及されていません。子育て支援にかかわるような強みがあるならば、妥当な戦略と考えられるのですが、自社の状況が不明なので、この戦略がいいかどうかは判断できないのです。

また逆に、自社の強みだけに目を向けて戦略を考えると行った事もやられがちです。クロスSWOTがクロスしている意味を再度確認して、戦略構築を行う必要があるのです。

3.欲張りすぎ
また、クロスSWOTは戦略を絞り込む方向には向きません。強みと機会を掛け合わせることから、いくらでももっともらしい戦略を構築することができます。

その結果、あれもこれも捨てがたいと、あたかも大企業が市場全体を狙うような戦略を作りがちなのです。

しかし、戦略とは「戦いを略す」と書くように、戦わないことを決める事が肝です。そのため、一番の強みと、一番の機会を掛け合わせるといった気持ちで戦略を考える必要があるのです。

  • どこで戦うかを決めてからが事業計画
さて、このクロスSWOTで戦略の方向を決めてから、マーケティング戦略等に落とし込んでいきます。

ただし、小さな企業の新規事業等の相談では、やりたいことがすでに決まっていてそれを実現するための方策の相談といった切り口が多いのが現実です。

その場合は、クロスSWOTは参考程度になってしまうのですが、この方法だけが正解ではなく、戦略の方向性に示唆を与える方法でしかないため、「クロスSWOTの結果貴社はこうすべきだ」などと言って自分の考えを押しつけないようにしましょう。


こちらもご参考に
経営戦略の実務的な構築方法
アンゾフの成長ベクトル
経営
2019年1月10日

貸しはがし | 融資を引き上げるという禁じ手ですが、景気が悪くなると横行するかもしれません

貸しはがし_001
貸しはがしとは、金融機関が融資を行っている資金を回収にかかる事を言います。

貸し出しを渋る、貸し渋りよりも一歩進んで、貸し出ししているお金を無理に回収するというニュアンスです。

例えば、貸し出しの期限が残っているにもかかわらず、残金を無理やり返済させるといった行為です。

この貸しはがしは、結構ひどい感じがしますよね。というか、このような行為をされた企業にとっては命取りになりかねない、非常に悪質な行為です。
  • 金融機関側の都合
金融機関側も別に慈善事業ではないため、自社を守るためにこのような行為に及ぶことは当然考えられます。

しかし、貸しはがしが致命傷となって企業の倒産を誘発すれば、さらなる景気悪化を招く可能性もありますし、連鎖倒産が発生する可能性もあります。

このように、貸しはがしとは社会全体に大きな悪影響を与える行為です。
  • 期限の利益で借り手は守られる
融資を受けた場合、本来ならば、しっかりと返済をしていれば期限の利益があるため、一括返済を求められることはありません。

ただし、一度でも返済が遅れると期限の利益が喪失するといった契約となっているのが一般的ですので、一括返済を求められても本来は文句を言うことはできません。

まずは、契約書上で期限の利益が喪失する原因を把握しておき、それに抵触しないようにするのが身を守るための一つの方策です。

と、法律で守られてはいるのですが、実際に期限前に一括返済を求められたりすることが横行していました。

とはいえ、法的には応じる義務のない内容なので、銀行が何を言ってきても不当な要求だと突っぱねることはできたのです。

  • 貸し剥がしが横行した時代背景
バブル崩壊後の経済危機の時代、金融機関も追い詰められていました。

金融機関は国際業務を行うために自己資本比率を一定に保つ必要があったのですが、不良債権(要するに返ってこないと見做された債権)がたくさんあって、その部分も考えると自己資本比率が一定部分を割り込んでしまう危険性があったのです。

金融業の健全化を目的として国が金融検査マニュアルを運用していたのですが、取引先の財務状況によっては、貸しているお金を不良債権として損金処理しなければならないと言った規定がありました。

そこで登場したのが、貸し渋りと貸し剥がしです。

例えば、全額を損金としなければならないとされた企業に1億円貸している場合、1億円は貸している限りずっと自己資本から差し引く必要が出てしまいます。

しかし、1千万円でも回収して、後は潰してしまえば少なくとも1千万円は自己資本に算入することができます。

このような事から、貸し剥がしをするインセンティブが金融機関にはあったのです。

・不景気の兆候が見えたら気をつける
といった貸し剥がしですが、今は一応過去の事となっています。しかし、不景気の兆候が見えてきた場合、また貸し剥がしが再燃するかもしれません。

そのときに備え、企業の経営者は

1.適正な利益を確保する事業を経営すること

2.過度に借入金に依存しない事業を構築すること

3.条件が有利なときに借り入れを起こすなどして、現金・預金を手元に持っておくこと

4.資金が必要な局面を理解すること

を心がける必要があります。特に3.の資金が必要な局面ですが、売上増加の局面でも運転資金として資金需要が増えると言った事実を抑えておくだけでも大分立ち回りが変わります。

解説に出てきた用語
期限の利益
運転資金
経営
2019年1月9日

オペレーショナルエクセレンス | 日々のオペレーションを磨き上げることで競争優位にするのです

オペレーショナルエクセレンス
オペレーショナルエクセレンスとは、現場の力つまりオペレーション力が卓越しており、競争優位の源泉になるほどに高められているような状態を示す言葉です。英語ではoperational excellenceと表記されます。

イメージとしては、常により良いオペレーションを追求するような企業文化が定着しており、継続的にオペレーションが改善されていくような企業になります。

例えば、常により良いオペレーションを実施する事を意識しているようなパンを製造し販売しているようなお店があったとします。

このお店は、常にお客様に感動を与えるような接客をする事を目指しており、また、お客様が感動するような品質のパンを提供することも目指しています。

そして、そういった事を実現するため、無駄のない動きによるコスト削減、品切れによる機会ロスや作りすぎによる廃棄ロスを徹底して排除するような経験に裏付けられた需要予測、お客様の過去の要望を全社で共有してより良いサービスの開発などといった活動が行われています。

このお店は、市場を細分化してニッチな客層を狙うとか、規模の拡大を追求し規模の経済ローコストオペレーションを実施するといった事ではなく、日々のオペレーションを洗練させていくという事が強みにつながっています。

そして、このように日々のオペレーションが素晴らしい事が経営資源となっており、コアコンピタンスとなっているような状態をオペレーショナルエクセレンスと呼ぶのです。
  • 中小企業においては
中小企業においては、機械装置の導入による抜本的な生産性改善が難しいこともあるため(お金がかかりますからね)、日々のオペレーションを磨き上げることで競争優位を作り出す方向を志向することとなります。

どのような業務であっても、工夫の余地はあり、5分かかる業務を3分でできればそれは地味ですが、大きな競争優位の源泉となります。

当たり前のことを徹底的にやるといた言葉がありますが、文字通り徹底的にやれば競争優位となり得るのです。
  • とはいえ技術革新も取り入れる
とはいえ、日々の改善に拘泥すると大局として見ることを忘れがちになるので注意が必要です。

例えば、機械を止めずに稼働させ続けて生産性を上げるノウハウを磨き上げている企業があるとします。

定期的に監視をおこない、機械が停止をしていたら素早く復旧させることで製造ライン全体の稼働率を上げると言ったノウハウを持っている企業で、そのことから低コストで競争力を持っているようなイメージです。

しかし、現在の技術を活用すれば一つ30円のセンサーをいくつかつけるだけで同じ事ができるかもしれません。機械が停止した瞬間にセンサーで知らせれば監視する人は不要になります。

この意味で、センサーを一つつければ機械の監視業務が不要になるといった可能性は常に検討する必要があるのです。
  • 技術革新も取り入れたオペレーショナルエクセレンスを追求する
このような、技術革新と通常業務の徹底した改善は相反しません。上記の例でセンサーを取り入れたならば、その前提条件でさらに業務を磨き上げていけばいいのです。

もしかしたら、機械の停止の兆候をセンサーで判断することができるかもしれず、そのような事になればもっと大きな生産性の改善が達成でできるのです。

経営
2019年1月9日

暗黙知 | 言葉にできないノウハウなので共有が難しいのですが、組織全体で活用する必要があります

暗黙知_001
暗黙知とは、人が持っている知識のうちで、言葉で表すことができない知識の事を言います。

文字通り暗黙の知識です。例えば、ベテランの職人さんの持っている非常に高い技術で言葉では表現できないような「技」が暗黙知のイメージです。

言葉で表現することが難しいので、「技術は見て盗め」と言われていたのですね。
  • 暗黙知の具体例
ではどういった知識が暗黙知なのかを一緒に考えてみたいと思います。

突然ですが、あなたは泳げない人に、泳ぎ方を言葉で説明できますか?これは非常に難しいと思います。

このように言葉では伝えられない(伝えにくい)事を暗黙知というのです。
  • 企業の暗黙知
企業では、仕事の進め方などたくさんのノウハウがあると思います。でもそのノウハウをちゃんと新人さんに伝えているでしょうか?

OJTと言って、「見て覚えてね」みたいな研修を行っていませんか?そうではなく、企業が持っている暗黙のノウハウを、マニュアルなどの形式知に落とし込むことが大切だと言われています。
  • 暗黙知の承継は大変です
ノウハウとは、多くの場合暗黙知となっています。特に、職人芸的な長年の経験に裏付けられたノウハウ等は暗黙知となってしまいます。

このことから、中小企業においては、技術の承継が課題となってしまっています。

言葉にできないから伝えられず、伝えられないから、承継できないといった問題です。このことに対処するために、OJTと称して教育訓練を技能を引き継ぎたい人に対して施すのですが、言語化できていないので「技術は見て盗め」的な教育訓練となってしまうのです。

しかし、このような方法では素早く技術を伝えることは難しいため、技能の承継に時間がかかってしまいます。そのため、計画を立てて定期的に若い人を採用し、技能の承継を行っていく必要があるのです。
  • そんな時間がない場合
しかし、そのような計画を立てて定期的に技能の承継を行うといったのは残念ながらすべての企業ができるわけではありません。

場合によっては、企業の強みが。この道50年のベテラン従業員【70歳】しか持っていない技術といった状況になってしまいます。

この場合、そのベテラン従業員が何らかの形で組織を去ってしまった瞬間にその企業の強みが喪失してしまいます。

そうならないように、最低限のマニュアルの整備等で暗黙知を形式知(つまり見えるノウハウ)にする努力をしていく必要があります。

現在では、様々な記録技術が利用可能ですので、不完全ではありますが技術を活用している風景を動画で撮り、様々なセンサーを利用して微妙なノウハウを数値化するといった事をしておけば最低限の情報は残せます。

もちろん、技術を持っている人に手順書やマニュアルといった形で言葉にしてもらう方が微妙なコツも盛り込めるとは考えられますが、取り急ぎ動画を撮っておけば全くマニュアルがないよりも良い状態となります。

その上で、直接OJTで教えてもらうなど工夫をすることで技術が失われることを避けることができます。


関連用語
形式知
OJT
経営
2018年12月25日

タイムマシン経営 | 時間をさかのぼるというビジネスの必勝法があります

タイムマシン経営
タイムマシン経営とは、遠隔地で成功したビジネスモデルを地元に持ち込んでくるといった経営手法のことを言います。

既に成功している先進的な事例を持ち込むわけですから、圧倒的に有利な状況を構築できるというわけです。

一昔前では地方都市に東京で流行っているビジネスモデルを持ち込んで設けたといった話を聴くケースも多かったですし、ちょっと前にはアメリカで流行っている先進的なWebサービスを日本国内にローカライズして持ち込むといった事が盛んにおこなわれていました。

このことを指してソフトバンクの孫正義社長はタイムマシンで未来からやってきて商売をするようなモノだとして、タイムマシン経営と読んでいるのです。

■時差はまだ存在している

近年ではWebサービスの分野で『時差』は縮小していると言われています。

アメリカで流行っているサービスを国内に持ち込むといったビジネスモデルは言葉の壁という参入障壁があったため強力に機能していた時代がありました。

しかし、クラウドソーシングでの翻訳サービスや技術革新による機械翻訳精度の向上などで言葉の壁がだんだん取り払われてきている今日においては、「そんなに日本で流行るなら、自分たちも日本に進出してみるか」といった意思決定が比較的簡単にできるようになったため、この種の分野でのタイムマシン経営は成り立ちにくくなってきていると言われています。

しかし、この種のビジネスの必勝法は未だ輝きを失っていません。

日本のビジネスモデルを新興国に持ち込むとか、都会のビジネスモデルを地方に持ち込むといった手段はいまだに健在です。また、人口減に直面した地方でうまく行くビジネスモデルがあればそれは都市部における未来の姿なので、地方のビジネスモデルを都市部に導入するといったタイムマシン経営も成り立つはずです。
  • どんなタイムマシンがあるの
さて、通常考えつくタイムマシンはアメリカなどや都会で上手くいったことを日本や地方にもちこむといった方法でしょう。

しかし、逆もあり得ます。よく課題先進国などと言いますが、あれは別に強がって言っている訳ではありません。課題が先んじて明確となっており、その解決策を試したことがあればそれもタイムマシンとなります。

例えば、高齢化がとても進んだ地域の対応策は、都会にとってはタイムマシンとなり得ます。

また、外国人労働者の受け入れを拡大すると政府の方針が示されていますので、すでに外国人の方がたくさん住んでいる地域は課題の先進地域です。

その地域で、外国人の方が日本に住むにあたって困ることを解決できているのならば、そのノウハウは極めて有益なビジネスチャンスを生み出すと考えることができます。これもタイムマシンとなり得ます。

このほかにも、あなたの生まれ育った街では当たり前だったことが、都会や地方としてこれから発生するようであれば、そのビジネスモデルはタイムマシンとなります。

あなたならではのタイムマシンをぜひ見つけてみてください。
 
経営
2018年12月25日

カーブアウト

カーブアウト_001
カーブアウトとは、自社の事業やコアとなる技術を切り出して、外部からの経営資源の提供を受けたうえで、ベンチャー企業を立ち上げる戦略の事です。英語ではcarveoutと表記します。

このカーブアウトとよく似た言葉にスピンオフという言葉がありますが、スピンオフは外部の経営資源を利用しない、カーブアウトの場合は外部の経営資源を利用するといった違いがあります。

単純にスピンオフする場合と比較して、外部の経営資源を利用するため成長が加速される(事を目指す)といった狙いがあるのですね。
  • スピンオフと同じメリット
さて、ではなぜワザワザ分社化する必要があるのでしょうか?「どうせ出資するなら、最初から自社の内部で事業を行えば、規模の経済範囲の経済が働くからもっと効率がよいのでは?」といった考え方もありうると思います。

でも、大きな企業ではなかなか迅速な意思決定ができないという欠点があります。大きな船は、なかなか方向転換が難しいのです。(参照:規模の不経済

この点、小さな企業は、意思決定を素早く行えることができるため、効率的に新事業を行っていくことができるのです。
  • スピンオフにはないメリット
カーブアウトは、親会社以外から経営資源を提供してもらえるため、親会社の影響力を抑えることができます。その為、スピンオフよりも機動的に経営を行う事ができるのです。(会社を立ち上げた人にとってもうれしい事ですよね。)

また、親会社側も自社だけで支援するよりも、素早く、低コストでベンチャー企業を育成することができるといったメリットがあります。

関連用語
スピンアウト  

  • 非主流の技術や組織が活きる
選択と集中という言葉があるとおり、企業は自らの強みに着目して経営を行った方が企業価値を高めることができる傾向があります。


しかし、そうなってくるとせっかく培ってきた本流の強み以外の強みをどうするかといった問題が生じます。

そのような際に、カーブアウトという手法を用い自社から出資を行い別会社として企業を立ち上げるといった方策を取ることができます。

非主流の技術・組織に所属している人たちにとっても、無理に自社にとどまり続けるよりも、思い切った投資などを行って機動的に経営を行う方が企業価値が高まる可能性が出てきます。

さらに、企業外部からも投資や人材の受け入れを行うことで成長が加速することが見込めるのです。
  • 元の企業にとっても良いことがある
このようなカーブアウトで切り離した企業が大きくなれば元の企業にとっても大きな収益を得る可能性が出てきます。

そのまま企業を保有してその果実を得続けてもいいですし、株式を売却するといった方法も考えることができます。

また、事業ポートフォリオの最適化にもつながりますので長期的に見て企業価値を高めることにもつながります。
この背景には、製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)の短縮化などが上げられます。

せっかく開発した製品であっても、従来よりも安定して稼ぐことができる期間が短くなっているため、有望な新技術は非主流であるといっても素早く製品化して投資を回収していく必要があります。

そのためには、比較的身軽な組織にして、大胆な投資の意思決定などが求められるのですが、親会社にとどまったままではなかなか大胆な方策をとることが難しくなります。

その点、別会社としてしまえば、自らの裁量で大胆に投資の意思決定を行うこともできるためスピード感のある経営をすることが可能です。また、企業外部から経営資源を調達することにもつながりますので、単に自社から切り離したというよりも素早い成長が見込めるのです。
  • とはいえ
と、とても良い方策のように思えますが、当然デメリットがあります。

このマンガのように、働いている人にとっては強制的に親会社から切り離されてしまうように感じる場合があります。出向ならまだしも、転籍となるとその企業で働く魅力を感じなくなってしまい、離職につながる危険性もあります。

誰もが挑戦と成長を望んでいるわけではなく、仕事の安定は職業選択にあたってとても大きな要素ですので、しっかりと対象となる従業員の意見を聞く必要があります。

また、外部から経営資源を調達するということは、外部へ自社のノウハウが流出すること表裏一体です。そのあたりにも注意して運用する必要があるでしょう。
経営
2018年12月25日

金融持株会社 | 金融関係の持株会社には特別な名前がついています

金融持株会社
金融持株会社とは純粋持株会社の中で、子会社が金融事業を行っている企業のことを指す言葉です。この種の持株会社は純粋持株会社が我が国で解禁された後もしばらくは禁止されていました。

このような持株会社の形態は現在は解禁されていますが、2015年現在、金融持株会社は一定の業種しか企業を支配することは認められていません。

そのため、金融持株会社である○○銀行ホールディングスといった企業が、一般の○△製麺や○×自動車を傘下に置くことは認められていないのです。

■証券会社や保険会社等を傘下に収める金融グループ

そのため、現在の金融持株会社は、証券会社や保険会社(損害保険会社や生命保険会社)等を傘下に収めている金融グループの親会社となっています。

このように色々な制度の中運用されている会社形態なのですね。

なお、持株会社についてはマンガに埋め込んだ通り、下図のように整理することができます。

 持株会社体系図

持株会社は、事業持株会社と純粋持株会社に分類され(持株会社自体が事業を営んでいるか否かの分類なので必ず二分されます、純粋持株会社の中で特に子会社が金融事業を営んでいる場合、金融持株会社となります。)
  • 目的は
持ち株会社が設立される目的は、グループ内の他社を支配することを目的としています。そして、子会社が金融事業を行っている企業を金融持ち株会社といい、銀行業と証券業の相互参入を目的として考えられていました。

銀行業等の金融業は、ほかの業態への進出が禁じられており、例えば銀行が証券業を営むなどはできません。

とはいえ、銀行と証券、保険業などはとても親和性が高く国際的な競争を考えた際には金融グループを構築するほうが効率が良く経営を行うことができます。そのため、金融持ち株会社の設立が認められるまでは、特定の企業(例えば銀行など)が母体となって、子会社として証券会社や保険会社を設立していました。

しかし、親子会社の関係があると、利益相反の恐れもありますし、効率的な経営が難しくなると言った問題も生じていました。親子会社の関係というのは働く人にとってはやはり難しく、例えば子会社の方が業績が良くとも、子会社の待遇の方を良くするなどを行うのは難しかったりします。

それだけでなく、親子会社形式の場合は、親会社の経営悪化が子会社側に波及するなどの問題や、親子会社が上場すると少数株主の利益が侵害される恐れや、親子会社間での利益相反の恐れも生じます。

このような難しい問題を避けるため、金融持ち株会社を便宜的に親会社として、そこに銀行業や証券業、保険業をぶら下げるといった方法をとって効率的な経営をすることを狙いとしています。
 
経営
2018年12月24日

規模の経済

kibo_001
規模の経済とは同じ製品や事業では、生産量や営業量の大きい方が、単位当たりのコストが低くなる事を言います。但し、一概に規模が大きければよいという物ではなく、規模が大きくなりすぎると規模の不経済が生じるとされています。

これに似た概念としてこちらの経験曲線という考え方があります。こちらは累積生産量と単位当たりのコストに着目しているのに対し、規模の経済は一定時点での生産規模と単位当たりのコストに着目しています。また、規模の不経済は経験曲線の考え方では生じないとされています。

さて、なぜ規模の経済という現象が生じるかといいますと、

1.製品単位当たりの固定費が薄まるため。
 機械等の減価償却は一つ作ってもたくさん作っても同じであるため、たくさん作った方が製品単位当たりで負担すべき固定費が少なくなります。

2.効率的な生産規模が存在するため。
 鉄鋼業の高炉など、ある設備を導入すれば単位当たりのコストを下げられるような設備が存在しますが、小さな規模の企業では導入が難しい設備があるケースがあります。
 身近な所では学校などに置いてある輪転機でプリントを印刷するととても効率的に印刷できるのですが、コピー機だと同じプリントでも時間がかかる(人件費というコストの発生)ようなケースです。

3.労働力の専門化
 規模拡大によって、投入される労働が専門化され能率が向上する。専門的な仕事をする方が効率は上がるというケースです。

というような要因が考えられます。

さて、まんがでも指摘しているように、カスタネットのように小学校に入学する新一年生がみんな買うような楽器と、クラベス(拍子木みたいな楽器です)では一般的にはカスタネットの方が安い(もちろん高級品も存在ますが)というような現象が生じます。 

関連用語
範囲の経済

経営どうが「規模の経済
  • 中小企業においての規模の経済とは
さて、中小企業において規模の経済をガンガン活かした戦略の策定は基本的には難しいとされています。

これは、経営資源が相対的に乏しい中小企業が大企業を相手にして規模の経済性を発揮できるかといったことを考えて見れば納得できると思います。

しかし、規模の経済とは、たくさん作ればその分固定費が薄まって効率が良くなるといったのが基本的なコンセプトですので中小企業でも、小規模事業者でもその考え方を活用することができます。

例えば、工場の稼働に余裕があるならば、多少安くとも受注してしまうという意思決定の背景にも規模の経済の考え方があります。

具体的には、貢献利益がマイナスにならない限り安くしても受注すべきと言うのが規模の経済を活用した考え方となります。そして、工場長や、会計担当者は数字としては多少安屈してでも受注した方がいいといった考えを述べることとなります。

一方、経営全体を見た際には、価格を引き下げてでも受注すべきかどうかは既存の顧客とからの値引き要請の危険性、工場の稼働率向上による将来のよりよい条件での取引受注可能性の放棄(100個しか作れない工場で90個作ってしまっている場合、追加の受注をすることができません)など、決断が必要な問題でもあります。
経営
2018年12月24日

経験曲線

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経験曲線とは、累計生産量の増加とともに製品一単位当たりのコストが逓減(ていげん:次第に減る)するという経験則です。

BCGは、製造コストばかりでなく、管理、販売、マーケティングなども含んだ総コストにもこの現象が当てはまり、1つの製品の累積生産量が2倍になるにつれ、総コストが一定のしかも予測可能な率で低減する事を実証研究によって発見している。それによると、累積生産量が倍増するごとに、総コストは20%から30%ぐらいずつ下がっていくという事が明らかにされている。
(注)

これは、まんがにあるように、

1.習熟効果
 習熟によって労働者の能率が向上します。

2.職務の専門化
 職務が専門化され、作業方法が改善される事によって能率が向上します。

3.生産設備の能率向上
 当初の生産設備から改善が行われ能率が向上します。

4.標準化
 製品が標準化されていく事によって能率が向上します。

などの要因が複合しこのような経験曲線効果が得られるのです。

そして、この経験曲線効果からから導かれるシナリオは、

低価格で需要を喚起

競争相手に対して相対的シェアを高める

累積生産量の差を拡大

費用面での優位性拡大

高い利益の獲得

という事になります。

もうひとつ製品ライフ・サイクル理論と合わせてPPMという理論が導かれるのですが、こちらは後日解説いたします。また、このような効果があるため、先発優位という考え方が存在するのです。

(注)大月博司・高橋正泰・山口善昭(2001).経営学―理論と体系― 同文館

  • 経験曲線効果の活用

さて、この経験曲線ですが中小企業の経営に具体的にどのように役立つのでしょうか?経験曲線効果を享受するために、低価格にして素早く累積生産量を増やすと行った戦略を実行すれば良いのでしょうか?


ここでYesと考えた方は少し立ち止まって考えてみてください。一般的に経営資源が相対的に乏しい中小企業は安売りをすることはセオリー違反であるとされています。


それがなぜかというと、一度下げた価格を上げることは実務上とても難しく、安易な値下げは文字通り命取りになりかねないからです。


また、仮に先行して生産を行い、経験曲線効果で優位性を確立していても、大企業が規模の経済を活用して一気に製造をするとコスト優位性が消失してしまいます。


そのため、経験曲線効果だけを見越して新製品を安く販売するといった行動はあまりおすすめできないのです。

  • 条件を見極める

しかし、競争相手が同規模の企業であれば十分に経験曲線効果を享受することが可能です。


また、中小企業であれば採算が合うが、大企業が容易に参入してこない分野といったものも存在しています。


例えば、極めてニッチで市場規模が数億円程度の分野には、大企業はなかなか参入することが難しいということができます。


このような分野では競合よりも市場シェアを大きく確保し、累積生産量を伸ばしていき、経験曲線効果を享受しながらコスト優位性を確立していくことが重要になります。

  • 逆に

このことは逆に、すでに圧倒的なシェアを確立している競争相手がある分野への新規参入が難しいことも示唆します。


同様の規模の競争相手の場合、活用できる経営資源にも大差がないため、その競争相手が存在している分野では、経験曲線効果が決定的に重要である可能性があります。


技術的に参入可能であったとしても、競合企業は相当な累積生産量を誇っており、新規参入の自社では太刀打ちができないぐらいの低コストで生産をしているかもしれません。


競争相手にとって自社が脅威だとみなされた場合は、自社が新規参入した途端に大幅に価格を引き下げてきて全く採算が合わない状態にされる可能性すら存在しています。


そのため、もし競合企業がすでに存在している分野に新規参入をする場合は、真っ向から対抗するのではなく、別の価値を顧客に提案するなどの工夫が必要となるのです。

経営
2018年12月23日

カウンターパーティー

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カウンターパーティーとは、相対で取引を行う場合の相手方(特に金融取引の相手方)のことを言います。(この相対(「あいたい」と読みます)で取引を行うとは、金融市場を通さずに直接やり取りをするという意味です。)

通常、取引を行おうと思っても相手がいないと取引は成立しませんよね。この相対取引の相手をカウンターパーティーというのです。

さて、金融市場を通してのやり取りの場合、契約した取引が相手方の都合で正常に完了しないという事を、気にする必要はあまりありません。

しかし、相対で取引をしている場合、相手方の都合(決済が終わる前に、相手方が破たんしてしまうとか)で取引が正常に完了しないケースもあり得えるのです。(このようなリスクをカウンターパーティリスクと言います。)
  • 信用できる相手とだけ付き合うのが重要
金融投資をどんなにうまくやったとしても、取引相手側の都合で取引がうまくいかずに損失を被ってしまっては元も子もありません。

その意味で、カウンターパーティーはとても重要であり、相対取引をする場合には業者と直接やりとりをすることになるので、相手方が信用できるかどうかが重要となります。

FX(外国為替証拠金取引)も取引所を通さない場合は、カウンターパーティーについては相手方の業者について本当に信用できる相手なのかを見極める必要が出てきます。
  • 仮想通貨(暗号通貨)においては
仮想通貨(暗号通貨)においてカウンターパーティーという用語が聞かれることがあります。この場合は、取引の相手方という意味ではなく、プラットフォームの名前になります。

このカウンターパーティーというプラットフォームははビットコインのブロックチェーンを利用したものであり、仮想通貨を発行したい人が、自分のトークンを発行できるようになっているという仕組みになります。

そして、ビットコインのブロックチェーンを利用することから、ビットコインの持つ制約もそのまま受け継ぎます。
経営
2018年12月19日

ディストレスト | 破綻に直面していても全く希望がないわけではありません

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ディストレストとは、財務面が芳しくなく、財務危機に陥っている企業の債務のことをいいます。投資する側や取引する側からは、財務危機に陥っている企業の債権であると言うこともできます。

このディストレストは英語表記ではdistressed(困窮などと訳されます)ですから、かなり効きの度合いが強いと考えることができます。

このような企業の債権は、持っていたとしても債務不履行などで返済がされない可能性があり、回収できない危険性があります。

この場合、せっかく債権を持っていても現金化できず損失を受けることとなってしまいます。

そのような場合、ゼロになるぐらいなら少しでも回収できれば良いと、債権を持っている側は考えます。

そのため、投資家としてはかなり安く、バーゲン価格で債権を購入することができるのです。(もちろん、いくら安いバーゲン価格で債権を購入しても破綻してしまったら回収できません。)
  • 積極的に関与する
このままでは(ほぼ)回収できない企業の債権であっても回収する方法があります。

それは、積極的に関与し経営を再建することです。もし仮に経営の再建に成功すればかなりの収益を得ることができます。

しかし、経営の再建は一朝一夕には行きません。そのため、かなり長期間にわたる関与が必要となります。
  • 通常のジャンク債との違い
通常の潰れかけの再建は、ジャンク債あるいはハイイールド債とも呼ばれ一般投資家でも購入するケースがあります。

こちらは、いくら財務面が芳しくないといってもそれなりの確率で債務が履行されますので、多数の企業に投資をすれば平均的に儲けることができます。

例えば、10回の1回は回収できないと考えられていても、平均して儲けることができる利回りで債権を購入するコトができれば投資対象となり得ます。

とはいえ、投資家は収益機会を狙っていますので、非常においしい条件というのはほぼあり得ません。

逆に言えば、このようなジャンク債への投資家であっても投資をすることが難しいディストレストには大きな収益機会がある可能性があります。
経営
2018年12月19日

少数株主 | 大株主でも少数株主になることがあります

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少数株主とは、ある企業の子会社となっている企業の株主のうち、親会社以外の株主のことを言います。とはいえ、1株だけ持っている個人投資家のイメージではなく、ある程度の割合の株式を保有しており、一定の影響力を会社に対して及ぼすことができる株主のことを言います。

株式の過半数は親会社が持っていますので、事実上経営権は持っていませんが、それ以外の権利は(一応)保有しています。

場合によっては数十パーセントの株式を持つ場合もあり、この場合は株主総会の招集件や役員解任の訴えの提起、会社解散の訴えの提起(否決されると考えられますが)など少数株主権を行使することが可能です。

これらの権利を行使するためには一定の株式を保有することが必要となるため、1株だけ持っている株主にはそれらの権利がないのです。
  • とはいえ
とはいえ、1株しか持っていない企業であっても、自益権といって自己の利益を追求する権利は付与されています。


具体的には、配当を受ける権利や会社が解散した際に残った財産の分配を受ける権利です。

このほかにも物言う株主(アクティビスト)として、影響力を行使することも考えられます。

いずれにしても、このトップ画像のように、たとえ49%の株式を押さえていても、親会社がほかにあれば少数株主となってしまうのです。
経営
2018年12月19日

二段階買収 | 過半数を確保してしまえばこちらのモノです

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二段階買収とは、はじめの買収の段階ですべての株式を買い付けることができなかった時に、再度買収を実施し残りの株式を取得することを言います。

上場企業を対象にした場合には、株式の公開買い付け(TOB)等を実施した後に、すべての株式を取得することを目的に、株式交換等の手法を用いて残りの株式を入手します。

多くの場合、最初の買収の段階でかなりの株式数を入手することができるため、2段階目の買収は最初の買収に応じなかった株主にとってあまり有利でない条件となります。
  • 定款変更と合わせ技で
通常の買収の場合、相手方が売却に応じなければそれまでなのですが、会社の憲法である定款を変更して、残りの株式を取得する方法があります。

このような手法をスクイーズアウトといいますが、二段階買収の場合はこのような手法を用いて残りの株主から株式を取得します。
  • 上場廃止を狙う
ではどうしてすべての株式を取得する必要があるのでしょうか?経営権さえ握れればそれでいいと考える方も多いと思います。

また、株式会社の一つのゴールとして株式市場への上場が上げられます。上場企業はなんと言っても信用が得られるので、事業展開にとって有利に働くケースが多くあります。

しかし、確かに信用も得られますが、外部の株主に対する説明責任が生じたりと経営の自由度は小さくなります。

このようなことを嫌い、経営陣が自社を買収するMBOなどが行われることがあります。一般にオーナー企業の方が経営の自由度は大きくなるため、あえて上場しないという選択肢もあり得るのです。

また、企業を買収した場合も、完全子会社にしないと自由に経営が難しくなりますので少数株主を排除して完全子会社にすることを狙いに、二段階買収をすることもあるのです。

なお、少数株主といっても過半数を占めている親会社以外の株主のことを言うので、場合によっては数十パーセントの株式を持っている場合もあるので注意が必要です。
経営
2017年12月12日

ロイヤルティ | (ほぼ)同音異義語ですが、経営用語的には使い分けないといけません

ロイヤルティ

ロイヤルティとは忠誠心のことを言います。そしてこの忠誠心は経営用語的には店舗やブランド、製品などに対して顧客が発揮してくれる忠誠心のことを言います。(なお本稿では2つの意味を解説します。)

忠誠心ですから、このロイヤルティが高ければ多少の価格や品質、納期に差があっても自社の製品を使ってもらうことができるというとてもありがたいものです。

また、このロイヤルティを人事分野で使う場合は、文字通り組織へ対する忠誠心を示す言葉です。

歴史ものを扱っているゲームで忠誠心が高い部下は裏切りにくいといった事を示すあのパラメータをイメージしてもらうと感覚がつかめると思います。

◆あれ、そういう意味だっけ?

このロイヤルティは英語表記ではloyaltyとなります。

なお、フランチャイズ等で本部に支払うロイアルティは、royaltyと表記され、ちょっと行動しやすい言葉になっています。

おそらく、ロイヤルティというとこちらの方が有名かもしれません。本部にロイアルティを支払っている等の言葉を聞いたことがあると思いますので。

これは、日本語ではrとlの区別がないのでほぼ同音になっており、ロイヤルティとロイアルティの表記も便宜的なものです。

そのため、同音異義語と割り切って文脈で区別するぐらいで考えていた方がいいかもしれません。

◆権利の対価の方は
さて、権利の対価で支払う方のロイヤルティは、特許権や商標権などの知的財産権に基づいて支払う形になります。

例えば、特許を実施する権利を与えられた側が、ロイヤルティとして支払う、商標権を使用することを許可された側がロイヤルティとして支払うといったイメージです。

そして、この意味でつかわれるロイヤルティはパテント料とかライセンス料とも言われます。同じような言葉があってややこしいですね。(厳密には異なるのですが、一般的な使い方としては同じような意味で使われています)

◆受け取る側に回るならどちらも高めることが大切
このロイヤルティですが、受ける側であればどちらも高めていくことが大切です。

忠誠心であれば高めることで顧客がほかのお店や製品に流出することが回避できますし、従業員であれば転職してしまう事を防ぐことができます。

また、権利使用料であれば、より価値の高い知的財産権を持ち、より価値の高い使い方をしてもらうことで受け取るロイヤルティを増やすことができます。



経営
2017年11月20日

エスクロー | ワザワザ第三者を間に入れて取引をすることに意義があるのです

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エスクローとは、売り手と買い手が第三者を介して決済を行う仕組みのことを指します。

仕組みとしては、第三者(主として金融機関)に買い手がお金を預け、売り手が債務を履行するなど条件を満たした場合に、売り手側に買い手側から預かったお金を送金するといった形になります。

もちろん、エスクロー業者となる第三者は金融機関だけでなく、民間の事業者がこのようなサービスを実施する事も可能です。

と、わざわざ第三者を介して決済をするなんて、手数料も余計に取られそうですし、その第三者が信用できるかどうかの調査も必要になって来そうです。そのため、そんな面倒なことをせずに当事者同士で決済をしてしまえばいいと思いませんか?

しかし、この第三者を通すという事が生きてくる局面もあるのです。
  • 取引相手が信用できない場合に生きてくる
信用できない相手となんて取引をしなければいいじゃないかというツッコミが聞こえてきそうですが、相対的に信用できない相手との取引というのは存在します。(参考:カウンターパーティーリスク

例えば、売り手の立場からすると、取引先へ対して納品したものの、相手が支払う前に倒産してしまうリスクがあります。

また、買い手の立場からすると、取引先から求められて支払ったものの、相手が納品前に倒産してしまう危険性があります。

これらの取引については、与信管理を徹底的にやるといった対応策がないわけではないのですが、どうしても限界があります。また、そのほかにも、取引の性質上そもそも相手を特的できないといったケースもあり得ます。
  • プラットフォーム運用者がエスクロー業者となるケースも多いです
例えば、ネット上などでのCtoC取引取引の場合、相手が信用できる人なのかそもそもわからないといった事が生じます。

そのような場合、CtoC取引のプラットフォームを運用する企業がその状態を放っておくと、

相手が信用できない


取引をするのが怖い


取引を止めよう

となってしまうので何らかの方策が必要です。レモン市場ならまだしも、市場自体が成り立たなくなる危険性があるのですね。

その場合、(得体のしれない取引先よりは相対的に信用できる)プラットフォームの提供業者が間に入って、エスクロー機能を提供して、取引を促すといった事が行われます。

この場合、買い手は一旦お金をエスクロー業者に預けるため、売り手は確実な代金回収が保証できますし、買い手側はもし品物が届かなかったら取引をキャンセルしてお金を取り戻すことができるので取引に係るリスクを大幅に下げることができるのです。

経営
2017年11月16日

黄金株 | 拒否権には黄金のような価値があります

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黄金株とは、種類株の内、株主総会または取締役会の決議について拒否権が付与されている株式のことを言います。(会社法108条1項8号)この種の株式は、定款に記載することが必要となりますので、買収防衛策として用いる場合には、あらかじめ株主総会の特別決議を経て定款に記載しておく必要があります。
  • 拒否権とは
黄金株とだけ説明されるこの種の種類株ですが、法律の条文では

株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第478条第6項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの

と謳われています。

イマイチよくわかりにくいと思いますので思い切って意訳すると

定款に記載されている事項は『株主総会で決議』+『当該種類株(黄金株)の種類株主総会の決議』が必要である。


株主総会か種類株主総会どちらかで拒否されたら、実施できない。


事実上の拒否権となる。

といった感じです。
  • 例えば
例えば、あらかじめ定款に取締役選任は黄金株を保有している株主の種類株主総会が必要であるとしておけば、黄金株を保有している株主は事実上の拒否権を持つことができます。

このことから、企業買収の防衛策として用いることができるとされているのです。

これは仮に、普通株式を100%買収されたとしても、黄金株さえ確保しておけば、黄金株を保有している株主の種類株主総会で否決できるため、取締役選任を拒否することができるという事です。

このような種類株式の発行は株主間の平等といった原則に反しますが、敵対的買収については非常に強力な対抗策となります。

そのため、現経営者にとって非常に都合の良い制度となっています。
経営
2017年11月10日

バックエンドピル | 買収価格を高くして、買収を割に合わなくさせる防衛策です

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バックエンドピルとは敵対的買収に対抗するための方策の一つで、ある一定の条件を満たした際に、既存の株主に対して持ち株を現金や債券などに交換できるようにする権利を与えることを言います。Back-end pillと表記します。

いわゆるポイズンピルの一種ですが、ポイズンピルを用いることができない場合に、このバックエンドピルの活用が検討されます。

ポイズンピルは既存株主に時価より低い一定価格での新株予約権を与えるという、とても強力な買収な買収抑止効果を発揮しますが、その性質上、新株式を発行する余地がない場合には使うことができません。(参考:授権資本

ポイズンピルを使うことはできないが、敵対的買収から起業を防衛したいと考える場合に、このバックエンドピルの活用が検討されるのです。
  • 買収コストが上がる
敵対的な買収者は基本的には買収から何らかの形で利益を得ることを目的としています。その利益は、買収したのちに企業をバラバラに解体して売却することで実現することであるかもしれませんし、買収後に経営をテコ入れし、企業価値を高めることかもしれません。

その他にも、買収者の既存の事業とのシナジーを発揮して利益を上げる事かもしれません。

しかし、いずれの方策で利益を狙うにしても、買収価格以上の利益を上げることが必要となります。そして、買収価格が上がれば、得られる利益の額が同じでも買収案件の魅力は変わってきます。

例えば、1億円の利益を得られる企業買収を5千万円で実施する事ができるならば、その投資は前向きに検討されると考えられます。しかし同じ1億円の利益を得られる企業買収をしようとしたとき、相手側がバックエンドピルを活用して9千万円のコストがかかるようにしていたらどうでしょうか?

確かに利益は得られそうですが、買収に伴うリスクも存在する中で1千万円の利益を狙いに行くために買収をするかどうかは前者よりも慎重に検討することが必要となってきます。

このように、バックエンドピルは買収へ対しての抑止力を発揮する方策なのです。
  • 会社はだれのもの?
さて、このバックエンドピルは名目上株主の投資を保護するという大義名分があります。しかし、敵対的な買収者が企業を買収した場合には経営が改善され企業価値が高まる見込みが高い場合はどうでしょうか?

その場合、株主にとってバックエンドピルでいくばくかのお金をもらい(抑止力ですから実際に発動されるケースは少ないでしょう)現状の相対的に経営能力が劣っている経営者に経営を任せ続ける事が正当化できるでしょうか?

言い換えれば、現経営陣の保身のためにこのような方策を用いることが株主の利益につながるでしょうか?明確な答えは出ませんが、買収防衛策にはこのような疑問が投げかけられるのです。

経営
2017年11月9日

与信 | 誰にどれだけまで貸せるかを管理することはとても大切な事です

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与信とは、信(用)を与(える)と書くとおり、信用を与える行為です。そして、企業などの組織間で言うところの信用とは一言でいえばお金を貸すことなので、与信とはお金の貸し付けや売上債権の枠を与えることを指す言葉です。

お金の貸し付けの場合、100万円の貸し付けならば100万円分のお金を貸すので、とても分かりやすいのですが、売上後にすぐにお金を払わなくていいとする掛取引もお金の貸し付けの一形態です。

そのため、与信枠がある企業は現金取引ではなく、一定の時期をくぎってまとめて後払いをするような掛取引が認められます。
  • 管理が大切です
さて、このような与信ですが、本質的にはお金を貸すことと同義ですので、その枠を管理することがとても大切です。

せっかく売り上げたとしても、現金が回収できるまでは安心できませんので、信用リスクがある様な取引先については一旦認めた与信枠であっても削減してくようなことが行われる必要があります。

大きな方向性としては、しっかりと信用できるような経営が安定しているような企業については与信枠を拡大しながら取引自体も拡大していく必要があります。

一方、経営の先行きに疑問符が付くような企業に対しては、取引自体の大きさはともかくとして与信枠は削減していく必要があります。

取引自体の大きさはそのままに与信枠を削減するとは、具体的には現金取引の比率を増やしたり支払いサイトを短縮したりする方向になっていきます。(相手が応じるかどうかはわかりませんが)

また、担保を取ることができれば、仮に貸し倒れたとしてもその担保の価値分は回収できますので、交渉していく価値はあるでしょう。(現金担保なら価値が分かりますが、不動産や有価証券の場合は評価額の算定が難しいのである程度割り引いて考える必要があります。)

もっとも、かなり信用が棄損している時点になってから、担保の差し入れを要請することとなるため、実際には担保を取ることは難しいかもしれません。

参考
質権

経営
2017年1月23日

参入阻止価格 | あえて収益を減らしてでも安くするという価格設定もアリです

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参入阻止価格は、後発の同業企業が同じ市場に参入できないよう意識的に低く設定された商品や製品・サービスの価格を指します。

意図的にというところがポイントで、イノベーションの余地が少ない業種・業界で用いられることが多い価格政策となります。
  • 先発企業にとっては
先発企業はすでにその商品・製品やサービスについて相当量を供給しているため、経験曲線効果によってコストが低減されています。(同じものなら累積でたくさん作っている企業の方がコストが安いという経験則)

また、これから参入してくる企業よりも生産設備等の規模が大きいのが普通ですから規模の経済も効きます。

そのため、先発企業がその優位性を生かすために、あえてもうけを少なくしてでも安く供給するといった価格戦略となります。

主な目的は、後発企業の参入を阻止して市場シェアを維持することがです。
  • どのくらいの価格に設定するかの判断はむつかしい
顧客にとっては低価格であることがメリットとなり、商品やサービスを購入してもらう機会が増えます。

しかし、あまりにも安く設定しすぎると、利益を圧迫してしまい、赤字になることも考えられます。

そのため、この参入阻止価格をつける場合、採算ぎりぎりの価格設定になることが一般的だといわれています。なお、相手側のコスト構造が予想できるのなら、相手の採算ラインを下回るギリギリの線にできれば利益を最大化することができます。 
  • 根拠のない参入阻止価格は自分の首を絞めます
前述のような経済的効果(規模の経済・経験曲線効果)などをしっかりと織り込み、戦略的に参入阻止価格を設定するならば許容されます。また、あえて低価格をつけることで長期的に競争者が現れなかった場合の利潤が、短期的に高収益を上げる事よりも望ましいと判断できるのならば、こういった方策はありでしょう。

しかし、あまり計画性を持たずに実施した場合には、その製品群は低収益となってしまいますし、一般的には、一度下げた価格は再び上げることはむつかしいため、もしこのような価格政策を実行する場合にはよく考えて対応する必要があります。

なお、あえて価格を安くするという点ではぺネトレイティングプライスに似ていますが、目的が違います。 
経営
2016年3月11日

決済リスク | 確実にお金を払ってもらえるとは限らないリスクです

決済リスク
決済リスクとは、資金の決済が予定通りに行われないリスクの総称です。そのお金本当に回収できますか?と言い換えられるリスクです。

どんなに売上を上げても、どんなに利益を上げても、取引相手からお金を回収できなければ意味がありませんよね?

そのため、しっかりと資金が決済できるまでが取引なのです。「遠足はうちに帰るまでが遠足です」なんて校長先生がよく言いますが、「取引は現金を回収するまでが取引」なのです。

■決済リスクは何で生じるか

決済リスクの代表的なモノは以下の通りです。
1.売買相手方の破綻などによって決済が不履行となる信用リスクなど、取引相手に由来するカウンターパーティリスク


2.売買相手方から予定された証券や代金を受け取ることができず決済が不履行となる流動性リスク

3.一つの決済不履行が他の決済にも影響し、結果決済システム全体あるいは金融システム全体を麻痺させるシステミックリスクなどが該当します。

現代社会においては各企業・金融機関は多数の相手と取引を行っていることが多く、そのため一箇所で起きた支払不能等が瞬く間に他に波及する危険性もあります。

■具体例です


例えばA社がB社に商品を売り、代金は来月受け取るという契約を結んだとします。

このときA社はB社から代金を回収するまでの間「B社が倒産し、代金を回収出来なくなるリスク」「代金の受け取りが1週間遅れてしまうリスク」「B社から代金が回収できないことで資金不足になり、他社に代金を支払えなくなってしまうリスク」など決済に伴う様々なリスクを背負うことになります。

これらを総称して決済リスクというのです。

■決済リスクを小さくするために

決済リスクを小さくするためには、保険をかける、第三者を介して決済をするエスクローをかませる、与信管理を厳密にするなどの方法があります。

しかし、いずれにしても決済リスクをゼロにすることは難しいため、費用対効果を見極めつつ、リスク回避の方策を考えて行く必要があります。

このリスク管理の意味から、たくさん買ってくれるからと言って、従来取引関係のなかったよく知らない業者に、現金取引以外で多額の商品を売ってはいけないのです。

neko
海外の業者からすごい引き合いが来ましたよー。なんと、ウチの年商の半分を一回の取引で売って欲しいとのことです。

onnanoko_bustup
すごいわね。で、取引条件は?

neko
商品が届いてから6ヶ月後に振り込むと言うことですよ。

onnanoko_bustup
うーん、その海外の業者って信用できるのかしら?お金が回収できなかったらウチは潰れちゃうわよ?

neko
そうかー、お金を回収するまでが取引でしたよね。
 

解説で出てきた用語・関連用語
信用リスク
流動性リスク
カウンターパーティリスク
エスクロー
経営
2016年3月6日

サービスリカバリー | 適切な対応が大切です

サービスリカバリー
サービスリカバリーとは、サービスの失敗に対する対応のことです。

組織がサービスの提供に失敗したことで失った顧客の信頼を回復させるために行う活動のことを指し、顧客のクレームや製品の欠陥が発生した際、それに対して素早い謝罪や原因調査、保証を行うなどの活動が該当します。
 
例えば、ある小型冷蔵庫から発火事故が起こったとします。

調査の結果、その発火事故が『庫内にある冷却器に大量の霜が付いたことで、温度調節をする部品の内部に水が入り、発火した』ということが分かった場合、メーカーは不具合が発生したことに対するお詫びや、発火の原因、そして発火を防ぐため、原因となる部品を無料で改良したものに交換することなどを、テレビや広告を通じて消費者に呼びかけるという活動を行います。これがサービスリカバリーです。
 
優れたサービスリカバリーは、一度不満経験を持った顧客の好感度を以前よりも高め、その結果、再購買確率を高めることに繋がるとされており、企業にとって戦略的にも重要な位置づけを占めるべきと言われています。

■適切な対応が大切です

サービスリカバリーを適切に行わなかったときには、その企業が築き上げてきた目に見えない信頼を損なってしまうことにつながります。

今日では、悪い評判は非常に素早く伝播しますので、対応を誤ると命取りになる可能性すらあります。(組織自体の評判を損なうリスクをレピュテーションリスクといいます。)

しかし、適切な対応を行うことができれば、サービスを失敗したことによって不満を持っていたお客様が当社の熱烈なファンになってくれるといった可能性もあります。

上で述べたように、問題を起こしてしまった顧客に対して、その問題を帳消しにできるような適切な対応を行えれば、むしろ「あの会社は、問題が起こっても適切に対応してくれる。むしろ、安心な会社なんだ」といった形にファンを増やす事にもつながります。

そのため、適切な対応が大切なのですね。


経営
2015年12月28日

スクイーズアウト | 少数株主を締め出して経営を楽にする方法です

スクイーズアウト

スクイーズアウトとは、企業買収などで少数株主を排除して、対象となる企業を完全子会社化する事を言います。英語ではsqueeze outと表記されます。

スクイーズアウトと言った言葉が締め出すといった意味であることから、合併の際に(少数株主を)締め出すといったイメージとなります。

■どうして完全子会社にするの?


さて、株式の過半数を保持していれば、取締役の選任が行えるので、会社の経営権が手に入ります。また、株式の3分の2以上を保持していれば特別決議が行えるので、定款の変更や事業の譲渡等が行えます。

そのため、ワザワザ完全子会社にしなくとも良いと考えられるかもしれません。

しかし、完全子会社化しておけば、株主を管理するコストも削減できますし、株主総会の招集手続きを省略することも可能となります。(持ち回り決議が可能となりますので)

また、親会社と子会社で利益相反が発生した場合、通常は子会社側が不利になるような経営判断がなされます。

しかし、少数株主が子会社側に残っている場合、少数株主の権利に配慮する必要が出てくるため、そのような思い切った経営判断が難しくなります。

企業をわざわざ子会社化したと言うことは、企業グループ全体での最適化を図ると言った目的があり、子会社の都合に配慮することで最適化が難しくなるのであれば本末転倒です。

そのため、少数株主を排除しておく必要があるのです。



■相手が売らなければそれまで?



とはいえ、株式ですから相手が売却に応じなければどうにもならないのでは?と考える方もいるかもしれません。

「どんなに高額の買い取り希望を出しても、相手が売ってくれなかったらそれまで」ですよね?
しかし、そんな事を言っていたらスクイーズアウトはかなり難しくなるため、方法が用意されています。


■定款を変更して

まず、親会社は多数の株式を持っていることが想定されますので、定款変更が可能となります。

そして、定款変更ができるのならば、種類株の発行と全部取得条項付き種類株式方式を組み合わせて、少数株主が持っている株式を金銭を交付することによって取得する事ができるのです。

(もちろん定款変更には特別決議が必要なので議決権の3分の2以上を押さえていないとこの手法は採れません)
  • 中小企業の事業承継の際にも
このスクイーズアウトは事業承継の際にも経営者に経営権を集中させる目的で実施されます。

以前はあえて親族に株式を分散させる事が多く、株式を分散させた人の睨みがきいているうちは安定株主として機能していました。

しかし、事業承継が発生して後継者の代になった途端に株主としての権利を主張してくる(法律的には全く問題のない行為なのですが、実務上経営の安定が脅かされます)といったことが発生しています。

また、株式を相続した人や従業員に株式を持たせていたのがそのままになっているなど利害関係者が増えてくると、株主の管理も大変になりますので、事業承継を契機に経営者に株式を集中させる事が行われています。

特に、近年の事業承継では親族内での事業承継だけでなく、親族以外の人が引き継ぐことも多くなっているため、経営権の集中は重要となってきます。

解説で出てきた用語・関連用語
定款
二段階買収
安定株主
経営
2015年10月16日

サードパーティ | 第三者を指す言葉で、ある製品の周辺機器等を開発するメーカさんとかが該当します

サードパーティ
サードパーティとは、第三者を指す言葉です。とはいえ法律用語といったニュアンスではなく、IT技術用語として使われるケースが多くなります。

例えば、PCのOSを販売している会社があり、それを購入する人がいるとします。こういった人たちを当事者と捉え、それに対して、自社のソフトウエアや製品を第三者的に供給する人をサードパーティと呼ぶのです。この使い方では、当事者に対しての第三者的な意味でサードパーティと呼ばれるのですね。

その意味で、別に数を数えているわけではないので、基本的にはファーストパーティやセカンドパーティなどといった人たちは出てきません。

(ごくまれに製品の供給者をファーストパーティ、顧客をセカンドパーティと呼ぶ場合もあります。)

また、フォースパーティもフィフスパーティも一般的な用語としては出てこないのです。(企業名として絶対ないとは言いませんが、一般的な経営用語的にはそのような言葉はあまり用いられません)

■当事者でない人たち

さて、ある製品やサービスの供給者と顧客が当事者であると捉えた場合に、その当事者以外をサードパーティーと呼びます。

そのため、IT業界以外でも、物流関係ではサードパーティロジスティクスなどといった用語も生まれています。

こちらの言葉は、物流業務に強みを持っている企業に、自社の物流を任せ、自社は自社の強みに集中するといった経営の方向を指す言葉です。3PLなどとも略されますが、基本的には、サードパーティを第三者といったニュアンスで使っている感じになります。

このように、サードパーティというとなんだか難しそうな言葉ですが、当事者以外をサードパーティと言うと覚えておけば大丈夫です。
 
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