まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

経営

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2025年11月12日

IR

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IRとは、企業が株主(現在の株主や潜在的な株主)や投資家向けに、投資判断に有益な情報を積極的に提供するような広報活動のことを言います。英語ではInvestor Relationsと表記されます。

企業は様々な利害関係者(ステークホルダー)に囲まれて存在しています。そして、企業に資金を提供してくれる株主や投資家はその中でも大切な利害関係者です。

また、株主や投資家などは、経営者と情報の非対称性がある為、経営者が自分に有利になるような行動を取るのではないのかと疑っていたりします。(このような事をエージェンシー問題と言います。)

このような疑いを晴らすためや、しっかりと投資家に対して情報提供をする事によって株価を正当で適正な水準に保つこと(安くなりすぎないようにする事)がIR活動を通じて実現できるとされています。

■IRの目的は「信頼される企業」になること

色々書いてきましたが、IRの目的は単に情報を出すことではなく、企業価値を正しく理解してもらうことになります。「うちの会社はすごいんだぞー」とまで言わなくとも「うちの会社はちゃんとやっているよ」と理解してもらうことが重要なのです。

そして、そのような地道な情報提供によって信頼してもらう。そして、長期的な視点で投資してもらうための関係性を構築することです。

こうすることで、誤解や憶測で株価が乱高下するのを防ぐ効果も狙えますし、IR活動は企業にとって戦略的なものとなっているのです。

■IRの具体的な手法って?

ではそんな重要なIRですが、どのようなことをすればいいのでしょうか?

とはいえ別に特別なことをする必要はなく、「決算説明会の開催」、「統合報告書の作成」、「投資家向けサイトの運営」、「アナリストとの面談」、「株主総会の説明資料」などです。

みなさんが株式投資をされるのでしたら、投資判断の参考にする資料を提供するといったふうに考えればよいですね。

とはいえ、本当に重要なのはどんなふうに見せるかではなく、社会に役立つ企業であろうとする姿勢であることは言うまでもありませんが。。。

■IRとCSRの関係って?

企業のIR活動として、株主や投資家向けに自社の必要性を訴えていくのですが、それでは、株主以外の社会全体に対する責任であるCSRとはどのように違うのでしょうか?


例えば、環境に優しいプロセスで製品を作ったり、障碍をお持ちの方を法定雇用率にかかわらず積極的に雇用し社会的責任を果たすと言った観点です。

これらの行動は、いっけんするとコストアップにつながるように見えますが、様々な背景の人を雇用するダイバーシティの推進は新たな組織の活力を生みますし、環境に優しい製造プロセス自体が製品の魅力を高める事もありますので、それらの取り組み自体を強みにしている企業も多いのです。

その意味で、CSRをうまく強みとしてIRで発信するといった企業も増えてきており、IRとCSRは特に相反したり、相互排他的な観点ではないという点に注意が必要です。

初出:2013/03/27
更新:2025/06/03
再更新:2025/11/12
経営
2025年9月24日

業務的意思決定

業務的意思決定_001
業務的意思決定とは、与えられた資源を用いて短期間で最大限の効率化を図るための意思決定の事です。この業務的意思決定を行うのは主にロワーマネジメント層です。

イメージとしては主任さんや係長さんが日々の業務を最大限効率化できるようにする意思決定のイメージとなります。

例えば穴を掘るという業務があったとします。使える道具はスコップで、いる人員は5人とします。この条件のもと、最も効率の良い穴の掘り方を決定するようなことが業務的意思決定にあたります。

ここで、スコップではなく、ショベルカーを持ってくるといった決定であったり、5人ではなく10人の人員を使うであったりするような、決定は一般的にはロワーマネジメントが行う業務的意思決定の範囲外となります。

このまんがでは効率の良い生産方法を決定していますが、人員の増強については権限がないとのことで、上長に増員要請を行っています。

業務的意思決定とはこのように与えられた資源を活用する意思決定の事を言います。

■業務的意思決定と他の意思決定の違い

業務的意思決定と他の意思決定(管理的意思決定戦略的意意思決定)には階層構造(意思決定の階層構造)があり、誰が意思決定するか、どの範囲で意思決定するかが決まっています。

これは無駄にヒエラルキーを作って喜んでいるというよりも、意思決定に階層構造をもたせたほうが効果的に管理できるためです。

■業務的意思決定の例

仕事で穴を掘るとき、スコップしか現場にないならば、そのスコップをどう使って効率的に仕事をするのかを決めるのが業務的意思決定です。

現場の経営資源をどう使い、同効果を上げるか。日常の業務をより良く執行するための意思決定ですね。

■上の階層で考えること

これに対して、「スコップじゃなくてショベルカーを投入すべきだ。購入することにしよう。」とか「現場の人員を増員させ、そのための管理者も然るべき訓練をされた人間にしよう」と言ったふうに考えるのが管理的意思決定のイメージです。

更に、「弊社は、土木関係の仕事をやるのはやめ、これからは内装工事に集中しよう」と会社の進むべき方向、あり方を決めるのが戦略的意思決定となります。こういったのがトップマネジメントの仕事なのですね。

■業務的意思決定をより良くするための権限

上記のように、業務的意思決定は与えられた経営資源で工夫する事です。そのため逆に言えば与えられた経営資源を活用するための権限を移譲しておくことが重要です。

例えば、スコップで現場対応する際に、道具が人数と比較して足りないということが発生するかもしれません。その場合「少額でも現場判断で経費を使える権限」を付与しておけば、足りない道具を買い足すことができます。

また、「臨時にシフトを追加する権限」なども与えておけば、多少の業務遅れを上位層の判断を仰がずにリカバリーできるかも知れません。(報告はする必要がありますが)。

これら、必要な権限を移譲しておくことで、仕事を止めないで効率的な運営ができたりするのです。

初出:2012/03/09
更新:2025/09/24
経営
2025年9月17日

水平的競争

水平的競争_001
水平的競争とは、流通の段階の同じ事業者間で生じる競争を言います。(流通は川に例えられることが多く、消費者に近い方を川下、商品を製造している側を川上と表現することがあります。これから、川上どうしが直接競争する、川下どうしが直接競争する→同じ段階での競争のイメージ→水平的競争という風にイメージしていただければと思います。)

この水平的競争とは垂直的競争に対する言葉で、いわゆる通常の競争のイメージになります。

例えば、製造業者同士が製品のシェア争いをする競争や小売業者同士が同じ商圏内で競争するといったイメージですね。

■水平的競争がもたらす影響

同じ立地や立場のお店や会社が競争することは消費者にとっては良いことです。なぜならば、競争があるところでは、価格の低下や品質改善、サービスの向上などあの手この手で顧客を獲得しようと利潤を削ってまで頑張るからです。

その意味で、便利で良い商品を適正価格で手に入れることができます。

他方で、企業の側から言えば、水平的競争はあまり望ましくないです。真っ向から勝負するなれば価格競争やサービス競争など利潤を削った消耗戦に陥ります。

特に取り扱う商品に差がないような業態で、参入障壁が低いような業態の場合は最終的には値引き合戦になってしまいます。その結果、この競争が亢進すれば最終的には敗者が生まれ、事業継続が難しくなる事業者が出てきてしまいます。

そのため、私達がアドバイスする場合は、競争にならないように、なにか軸をずらして直接競争に陥らないような方策を考えていきます。

■消費者行動の変化

近年では、スマホでお店の値段や評判などを口コミで比較することが従来よりも更に容易になってきています。

また、少し遠方のお店も口コミを見ることができ、推薦される(レコメンドエンジンという仕組みがあります)という仕組みもあることから、かなり広域でライバル店になってしまいます。その上、ネット上の通販サイトからも同じ商品を購入できるといったことすら発生しています。

そのため、従来のローカルな商圏内での競争を超えた、水平的競争が発生してしまっているのです。

■水平的競争を避けるために

同じお店同士ですから価格競争に陥ってしまうと上で指摘した通り、消耗戦になります。お客さんにとってはどっちのお店で買っても同じとなってしまえば、安い方で購入することが合理的ですからね。

そのため、この競争を避けるために以下のような方策を考えます。
などなど、いろいろな方法が考えられます。これらは考えることがたくさんありますが、一般的なアドバイスを書くとするならば、「あなたの会社がもつ経営資源を活かして、競合のお店と違うことをやってください」ということにつきます。

そして、その違うことは競合が真似しにくい事のほうが望ましいです。こういったことを丁寧に積み上げることで、どこにもないユニークなお店が出来上がっていくのですから。

■水平的競争と水平統合の関係

この水平的競争が激化していくと、企業はいっそのこと競合と統合してしまおうと検討することがあります。これを「水平統合」といい、力を合わせて経営に取り組むことでバイイングパワーも強くなりますし、規模の経済を達成することも可能です。

ただし、あまりに寡占が進むような統合案の場合は、独占禁止法の観点から規制が入り可能性もあります。

関連用語

初出:2013/01/08
更新:2025/09/17
経営
2025年8月18日

ベンチマーキング

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ベンチマーキングとは、他社の優れた事例を分析し業務や製品を改善する手法です。
この記事では、競合や異業種の成功事例を活かして自社の効率化や競争力向上を図る方法がわかります。

<簡単な説明>
ベンチマーキングとは、自社の製品・サービス、業務プロセスといった要素を測定し、自社の非効率な個所を、競合他社の優良な事例(ベストプラクティス)を分析して、取り入れ、改善するという手法です。

このベンチマーキングは業務プロセスなどを改善するためのアプローチなので、同業種の中から選んでしまいそうですが、そのような必要はなく、異業種をベンチマーキングしても良いとされています。

■建築業の例からみるベンチマーキング

例えば、建築業をやっている企業が、自社の工程管理の方法を改善したいと考えたとします。特に意識しなければ、おそらく「同業他社の優れたプロセスを参考にしよう」といった発想になると思いますが、あえて異業種の優れた工程管理のプロセスをベンチマークするという考え方です。

ここで、建築業の中でベストプラクティスを探すよりも、IT業界などの異業種まで視野を広げて、参考となるプロジェクト管理の手法を探すのです。

そして、その結果、業界内では全く新しく、非常に効率的な管理手法を確立することができるかもしれません。 また、何の目標もないときに比べ、迅速に競争優位を確立することができるかもしれません。

もっとも、このような手法は経営陣が強力に推進するという事が欠かせません。というのは、ベストプラクティスを達成することは困難な目標となる事が考えられるからです。

そして、この困難な目標を達成するためには既存のやり方を色々な面で変えていく必要がでてきますが、このような業務の見直しには、業務を変えたくないという抵抗がつきものです。

そのため、経営陣が「社内の抵抗を押し切ってでも推進する」といった強いリーダーシップを発揮する必要があるのです。

■ベンチマーキングの導入ステップ

ベンチマーキングはうまくいっている人のやり方を真似して、自分たちを良くする方法です。とはいえ、がむしゃらに進めようとしても何からやったらいいか全くわかりませんよね。

そのため、ベンチマーキングの導入には、いくつかのステップを踏んで実施していくことが大切です。以下そのステップ毎に注意するべき点などを考えていきます。
  • 自社の現状分析(まずは自分を知りましょう)
自社の業務プロセスや経営資源等を整理し、どこに課題があるのかを明確化します。ちょっと分けた言い方をするならば、まずは問題を特定し、どうなりたいかを分析し、そのなりたい姿になるために解決すべき課題を決めます。

言い換えるならば、今の状況はどうかなのかをはっきりさせることが大切です。たとえば、テスト勉強で自分がどの教科が得意で、どの教科が苦手かを整理するイメージです。
  • ベンチマーク対象の選定(誰を参考にするかを決める)
競合他社や異業種企業から参考にしたい「ベストプラクティス」(優れた事例)を見つけ出して抽出します。

これも簡単に言い換えるならお手本にする人を誰にするかを決めるというイメージです。例えば、同じ学校の先輩でもいいし、別の学校の優秀な生徒でもいいですね。
  • データ収集と比較分析
とはいえ、誰をお手本にするか決めても情報を集めないと始まりません。そのため、公開情報やインタビュー、事例紹介などを通じて定量・定性的な情報を収集します。そして、自社との差を洗い出すのです。
  • 改善策の設計と導入
自社との差がわかれば、その差・ギャップを埋めるための改善策を決めていく必要があります。そして、策定した改善策を自社プロセスに適合する形で導入していきます。

自社のプロセスに適合する形を言い換えれば、「自分のできるやり方で取り入れる」ことが大切です。ベンチマークといえども、全部コピーするのではなく、自分に合うやり方として組み合わせるのがコツです。
  • 効果測定と継続改善(やりっぱなしはダメ)
ここまでで導入した方法を元に、改善施策を設定・測定して定期的に見直しを行う事が重要です。

一番良くないのは改善をしようといろいろやるのはいいのですが、そのままやりっぱなしにしてしまうことなのです。そのため、よく言われるPDCAサイクルなどがとても重要なのですね。

これらの流れを踏むと、部活や勉強でも「ただ頑張る」より力がつきます。ベンチマーキングは勉強やスポーツなど日常生活にも応用できる考え方なのですね。

関連用語
経営計画

初出:2013/05/11
更新:2025/08/18


経営
2025年8月12日

SPA

SPA_001
SPA(製造小売)とは、製造から小売までを一貫して行う垂直統合型のビジネスモデルです。
本記事では、SPAの意味や仕組み、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。

<簡単な説明>

SPAとは、製造から小売までを統合して一貫して行うという業態の事を言います。日本語では製造小売といった言葉があてられています。

さて、この言葉を最初に使ったのはGAPの会長です。自社を評してSpeciality store retailer of Private label Apparelと述べたことからSPAとされているのです。

■SPAの優位性とは

製造から販売までという事ですから、垂直統合の究極の形の一つであると考えられます。このような業態では、物流の各段階でのコストを削減することができるので非常に大きな利幅を確保することができます。

垂直統合の場合、製造、卸、小売がそれぞれ存続できるだけの適正な利潤があるわけですから、それらをすべて自社でやることで利潤を総取りできるという発想です。経営資源の重複を排除できる範囲の経済も効いてくるので強いのですね。

また、小売業を営んでいることで、顧客の情報を一番近くで入手することができ、顧客の欲しがるものを提供することが容易になります。

■他方で弱い面も

その一方、自ら企画・製造して販売まで行う為、売れなかったときの損失をそのまま負う事になります。それも、製造、卸、小売にかかるすべての損失を負うためリスクはとても大きくなります。

また、製造や企画、物流、販売、店舗管理といった通常はその一つ一つに対して非常に高い専門性を持たなければならないような領域に対して、全て自社でこなさなければならないといった問題もあります。

つまり、各分野の第一線にいる競争相手と真っ向勝負しないといけないのですね。例えば洋服屋さんがSPAを志向する場合、

  • 製造では一流の縫製メーカー等と競合し、
  • 卸や物流面では、一流の物流企業などと競合し、
  • 小売面では、一流の店舗オペレーションを誇る事業者と競合します。

また、自社内に製造機能や物流機能などを抱えることは固定費の増加を意味します。市場変化を読み誤ると、大量の在庫が発生したり製造ラインや物流施設の遊休化が発生しやすく、損益への影響は甚大です。

特に消費者の嗜好は多様化・細分化していますので、トレンド予測精度と在庫管理能力の優劣が競争優位に直結します。徹底してオペレーションを磨き上げる必要があるのですね。(そのため、工場を持たないで固定費を抑えるファブレスを組み込んだビジネスモデルを採用する大手企業もあります(ZARAが有名ですね))

このようにSPAは、なかなか舵取りが難しそうですよね?なので、割と多くの人が思いつくビジネスモデルですが、実際に取り組む人は少ないビジネスモデルだったりします。

■変化にすばやく対応できるというSPAの強みと弱み

競合面から考えてきましたが、今度は変化に素早く対応できる、顧客ニーズへの対応面から考えていきます。

SPAは、商品を作るところからお客さんに売るところまで全部自分でやります。このようにSPAは製造から販売まで垂直統合しているため、情報の伝達がとても速く行うことが可能です。

その結果、意思決定から商品化、商品化から店頭に並べるまでのリードタイムを短縮できます。

例えば服屋さんなら、流行している色や形をすぐに商品にしてお店に並べることが勝負の分かれ目になります。洋服もナマモノなのですね。そのため、店頭で掴んだトレンドなどを反映した商品開発が重要となります。

初出:2013/05/05
更新:2025/08/12

SPAの形態であればPOSデータや店舗スタッフからのフィードバックを即座に企画部門へ反映し、数週間単位で新商品を投入することすら可能だったりします。

店頭に並べるという意思決定から商品化、商品化から店頭まで並べることを外の会社にお願いするよりも早く動けるので、流行に乗りやすいという強みがあるのですね。

これにより短期的なトレンドや季節需要に的確に対応できます。

他方で、極めて短期的な流行(ファッドといいます)にのってしまうと大変です。意思決定がから店頭投入までが早いのはいいのですが、様子見といったフェーズが無いので、たくさん作った商品がそのまま不良在庫として残ってしまうことが発生しがちです。


関連用語
シナジー効果
経営
2025年8月1日

模倣戦略

模倣戦略_001
模倣戦略とは、他社が先行して販売している製品やサービスと同じようなモノを後発で販売していく戦略です。言いかえると、マネする戦略という事ができます。

■模倣と言っても完全模倣ではありません

もちろん、全く同じようなものを同じような価格で販売していたのでは、先行した企業に勝つことは難しくなります。

そのため、先行して販売されている製品やサービスを改良して販売する、先行して販売されている製品やサービスを単純化して価格を引き下げたものを販売するといった事を行います。

このような戦略は競争地位としてはフォロワー(参考:競争地位の4類型)に位置付けられるような企業が意図的に採る戦略です。

実際に売れている製品やサービスという事は、需要があるという事が実証されているため、開発リスクを負わずに販売していくことが可能となります。

■リーダーが行う模倣戦略は同質化戦略とも呼ばれる

また、このような模倣を競争地位がリーダーに位置付けられるような企業が行う場合、同質化戦略と言われます。(リーダーの戦略定石

この場合は、同じ土俵で戦えば規模の大きな企業の方が有利であるという非常に単純な理屈を利用した戦略です。

いずれにしても、他社を上手に真似するという戦略は有効なのですね。

■模倣戦略と後発優位の関係

模倣戦略はいわゆる単なる「パクリ」ではありません。先行企業が市場に出して成功した製品・サービスを分析することがまずは大切です。

その中で、「何が顧客に支持されているか」といった本質部分を把握したうえで、自社の強みに基づいた改善やコスト削減を行うのです。ポイントは自社の強みに基づいた改善です。

自社が「アンコが美味しい和菓子屋さん」だったら、美味しい餡にこだわった商品として改善をするのが大切です。

この改善により、開発コストや市場教育コスト(市場の人に新しい商品の内容を伝えるコスト)を大幅に削減でき、スピーディに顧客に届けられるという後発優位が発揮されます。

たとえば、先行商品が「高品質・高価格」であれば、後発企業は「標準品質・低価格」で勝負することも可能です。これは低価格戦略や単純化戦略と呼ばれる手法で、割と常套手段となっています。

特に2000年代の我が国家電メーカーはこの模倣戦略に随分苦しめられました。

本質的な機能以外での高品質・高価格化競争を行っていた我が国家電に対して、必要十分の性能を安く提供するといった海外家電が消費者の支持を受けていったのです。

■模倣戦略における後発優位の具体的メリット

  • 市場が育っているため、失敗のリスクが低い
  • 顧客ニーズを分析して、より適した形で提供可能
  • 宣伝・教育コストが削減できる
  • 価格・流通チャネルで差別化しやすい
例えば、2025年においては退職代行サービスは大手企業がありますが、先発起業は別の企業でした。

先発企業は市場があるかどうかわからない中で顧客を教育し、様々な論点をクリアーしていったのですが、後発企業はその部分に経営資源を投入する必要なく、本質的な価値に経営資源を集中することができたのです。

■模倣戦略と差別化戦略の違い

混同されがちですが、模倣戦略は丸パクリを目指すのではなく「他社の戦略を参考に、自社らしくアレンジし提供する」ことが重要です。

切り口の例として、成分を変えてコストダウン(例:具材のランクを下げて低価格に)したり、逆に高級路線・高付加価値路線で高価格帯を狙うといったことが考えられます。

また、限定パッケージやノベルティで差別化するのもよいですね。

■模倣戦略を成功させるためのポイント

模倣戦略を効果的するためには、ターゲットを絞り、誰にとって価値のある商品なのか明確にすることが重要です。また、いっけんすると同じように見えても、どこかが・何かが違うと思わせる仕掛けが重要になります。

そしてその違いを自社の経営資源のなかでいわゆる「強み」を使って実施することが重要なのです。

■模倣が上手く行きにくいケース

とはいえ、知的財産権(特許権や商標権)で守られている領域は模倣が困難だったりしますし、先行している事業が強いブランドを構築している場合は模倣が難しかったりします。

いずれにしても当社が気が付かない部分に本質的な価値があるケースもあるため、模倣戦略を採用する際は慎重な調査が必要です。

関連用語
リバースエンジニアリング

初出:2012/10/20
更新:2025/08/01

経営
2025年7月24日

競争地位別戦略 | 競争地位によって取るべき戦略は異なりますがそれぞれにセオリーがあります

競争地位別戦略_001
競争地位別戦略とは、企業の市場における地位によって最適な戦い方が存在すると指摘した、古典的な戦略理論です。この企業の市場における地位は(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー)の4類型に分類されております。(競争地位の4類型)本記事ではそれぞれの戦略定石をご説明します。

なお、この競争地位別戦略は古典的理論であることから、「ランチェスター戦略」や「ポーターの競争戦略」などでも重視されています。
この考え方では、総体的に自分の市場での地位がどうであるかによって、推奨される定石が変わるのがポイントです。

■競争地位別戦略:リーダーの戦略定石

ココで言うリーダーとは、業界内でトップのシェアを誇り、豊富な経営資源(資金力、人材、ブランド力)を相対的にに持っています。

そのため、敢えて差別化をしなくても、スタンダードな戦略で勝ち切れるという前提から導き出される戦略です。

そして、リーダーは、一言でいうと、基本的なオーソドックスな戦略を採ることが推奨されます。(詳しくはリーダーの戦略定石

■王道で勝てる理由

一例を紹介すると、リーダーは経営資源が豊富というのが何よりも大きな強みです。この強みは非常に強力であり、奇をてらったことをしなくても良いのですし、変なことをやって評判を落とすリスクを負うことは推奨されません。

ただし、競争相手が奇をてらった大胆な差別化戦略を採用してきたらどうでしょうか?

この場合、そのまま同じような戦略を実施してしまえば、経営資源大きさで押しつぶして勝つことができます。

よく、似たような雰囲気の居酒屋がありますが、あれは経営資源が多い、相対的に大きな企業側が後からあえて雰囲気を似せている面があります。

同じようなことをやれば、大きな企業の方が規模の経済や範囲の経済、経験曲線効果が効いてくるので低コストで質のいいもの。言い換えれば、同等以上のものを安く提供できるのです。

その結果、競合が苦心して編み出した差別化要因を敢えて似せるという戦略で無効にできるという強力な強みがあるのです。

この他には、某飲料大手の自販機を考えてみます。その自販機には素敵な商品が沢山あり、スポーツドリンクも、緑茶飲料、コーヒー飲料も、大抵の他社の看板商品と似たような商品が存在しています。

このようにリーダーは相手の出方を見て戦うということができるのが強みなのですね。

■競争地位別戦略:チャレンジャーの戦略

チャレンジャーは二番手以下の勢力なので、リーダーを駆逐する必要があります。そのため、なんとしてでもリーダーの市場シェアを奪う必要が出てきます。

しかし、上で見てきた通り、正面から勝負してもリーダーには叶わないのです。

そのため、チャレンジャーはリーダーにはできない非オーソドックスな戦略で差別化を目指します。

対リーダーの戦い方は、創造的、革新的がキーワードとなります。

リーダーと同じ事をやっていてもかなわないため、リーダーとは違う方法をあえて取ります。この方法は苦し紛れに見えますが、とにかくやってみて突破口を開くために色々やっていくしかないのです。

■アサヒスーパードライは画期的だった

有名な例で、アサヒビールがキリンにシェアで負けていたときに味の軸を変えました。従来は『苦み』がキーワードだったのですが、『コク』と『キレ』に集中してアサヒスーパードライを販売しシェアを逆転したのです。

この際に、キリンがリーダーとして真似してきたらどうなったかはわかりませんが、いずれにしても、アサヒビールは独自の切り口を打ち出すことでシェアの逆転を果たしたのです。

このように軸をずらす戦略こそがチャレンジャーの突破口に成るのです。

(そして可能ならば、リーダーが模倣しにくい仕掛けも用意しておくとよいです。例えばリーダーはアクセスできない自社だけの経営資源を活用するなどです。)

■競争地位別戦略:フォロワーの戦略

フォロワーはリーダーやチャレンジャーの戦略を模倣します。模倣戦略、低コスト、臨機応変がキーワードとなります。

細々と生き残りを図るのも決してわるい選択肢ではありません。もしかしたら、市場が縮小して、上位陣が市場から退出するかもしれませんから。

その結果、残存者利益を獲得する可能性すら存在しています。

また、市場が十分に大きければ自社が生き残るだけのパイがあるかもしれません。例えば大企業にとっては、微妙な規模であっても、中小企業であれば代々事業を営めるほどの大きさがあるかもしれません。

成長市場でなければシェアの逆転は難しいかもしれませんが、新規投資もそこまで要求されませんので適正な利潤を積み上げることも可能かもしれません。

いずれにしても、市場のトレンドに乗り遅れないように長く続ける事が重要になってきます。

■競争地位別戦略:ニッチャーの戦略

ニッチャーは自らの市場を競争者と違うところに定義し、その市場にニッチを築くことを目指します。市場細分化、特定市場でのミニリーダー戦略、特定ニーズがキーワードとなります。

ニッチャーは、その選んだ市場のリーダーとなります。そのためニッチャーが自分の市場を築いた後の戦略は基本的にはリーダーの戦略定石と同じになります。

■フォロワーになりがちな中小企業の戦い方

経営資源に限りがあるため、リーダーやチャレンジャーと同じように考えると徐々に圧迫されていってしまいます。

そのため、基本は「模倣」を試みて手堅く収益を確保するのが重要です。そして、なにも奇をてらうだけが差別化ではなく、長く商品やサービスを提供してきたことによる「使いやすい」とか「安心」「信頼性」といった軸も目立たないですが強みになってきます。

ただし、ココぞというときには一点突破を試みることが大切になります。この一点突破は結果としてニッチャーを目指す方向に行くことになるかもしれませんが、中小企業にも長く営業を続けてきたという強みが蓄積されています。

その強みが最大限活かせる場所で、強みを活用した展開を行えば、十分に戦うことができたりするのです。

(どうしても用語集では一般論になってしまいますね。実際に一点突破した具体論も守秘義務があるから書きにくいですし。

ただ、実際に特定の市場のフォロアーだった会社が一点突破を図って新しい市場のリーダーになり高収益企業に変貌したというケースは割とあります。

そのため、ぜひ自分の会社のお客さんの顔を思いうかべて、「どうして自分の会社の商品を買ってくれるか?」を寝る前に書斎でノートを開いて書き出してみると突破口が浮かぶかもしれませんよ。)


説明で出てきた用語
残存者利益
範囲の経済
ランチェスター戦略

初出:2011/08/03
更新:2025/07/24

経営
2025年7月20日

ピュアカンパニー | 単純に規模の拡大を志向すれば良いというものではありません

ピュアカンパニー化
ピュアカンパニー化とは、企業の組織が多角化し複雑化していく中で、その弊害が目立ってきた時に、特定の分野に集中的に経営資源を透過し、企業にとって最適な範囲での経営を実施することを指す言葉です。

■拡大路線のデメリットとピュアカンパニー

企業の規模が拡大して、多角化すると範囲の経済シナジーと呼ばれる相乗効果が生まれてくると言われています。いわば、こういった拡大方向は、企業戦略上のセオリーだったのですね。

しかし、ある範囲を超えて企業の活動領域が拡大した場合には意思決定が遅くなるであったり、組織内での意見調整が難しくなるなどといった弊害が見られてきます。

「このハンコはどうして必要なのかな?」とか「あの話なら○○課長に話を通して、そのあと、関係会社にも声をかけて…」などといった風に、明らかに必要以上の調整が必要になってくるといった現象を経験したことがある人もいるはずです。

このような調整などに時間をかけているという事は、その分時間がかかって、納期が遅くなったり、コストが余計に係ったりとお客様に対しては関係のない部分で自社の競争力を殺いでいる事につながっているのです。

こういった弊害をシナジーに対してアナジーと呼ばれるのですが、このようなアナジーが目立ってきた際に、初心に戻って競争力のある分野に特化する方向を探るといった考えをピュアカンパニー化と呼ぶのです。

会社(カンパニー)を複雑なものから純粋にする(ピュアにする)ことからピュアカンパニー化と呼ばれるのですね。

■ピュアカンパニー化の実例

有名なピュアカンパニー化の実例は、かの有名なGE(ゼネラル・エレクトリック)です。コングロマリットを志向し、多角化し巨大企業の代名詞だったのですが、シナジーを活かしきれずに不効率(アナジー)が表面化しつつありました。

そのような中、最終的には医療機器、航空などの中核事業に経営資源を集中する方向へかじを切りました。

GE、事業別に3社分割へ-コングロマリットの歴史に終止符

米ゼネラル・エレクトリック(GE)は、ヘルスケア、電力、航空の3事業別に分社化する。コングロマリットとしての同社の歴史に終止符が打たれる。

中略

カルプ氏はインタビューで「われわれが行っているのは、ヘルスケア、航空、エネルギーの各分野で3つの優れた投資適格企業を生み出すことだ」と説明。「GEは長い間、これらの市場を率いてきた。これからは次の世紀のリーダーシップに向けて踏み出す」と述べた。

中略

GEの分社化により、20世紀のコーポレート・アメリカを特徴付けていたコングロマリットの時代は終わりを迎えることになる。投資家は多面的に事業展開する企業よりも焦点を絞った企業を選好するようになり、他の大規模な多角的企業もこれまでに複数が分社化を選択してきた。

出典:ブルームバーグ (掲載日2021/11/9)
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-11-09/R2B0GGT0G1KW01

GEといった巨大企業でさえ、本業に経営資源を集中投入すると言った方向に回帰しているのです。

また、ソニーなどもゲーム・エンタメ側に経営資源を集中しており、2025年現在、家電を作っているイメージは希薄になっているでしょう。

このように、事業ごとの収益性や将来性を冷静に評価し、採算の合わない分野から撤退する判断は、多くの中小企業にも参考になります。特に経営資源が限られている場合には、集中と選択こそが競争力の源泉となるのです。

■多角化は難しい?

多角化すると、範囲の経済を追求できるので良さそうに見えますが、経営の専門性が分散しますし、組織間の調整コストが増大します。

人間の限られた認知能力ではこれらの調整を完ぺきにこなすことが難しく、特定分野を専業で行ってる企業に遅れを取りがちとなり、結果的に全体のパフォーマンスが低下するといったことが発生するのです。

多分、組織人の皆さんは経験があると思う一つの例を出します。

自部門が組織全体を冷静に見た際に、組織を牽引するだけの成果を出していないとします。

その時、その自部門の代表として会議に臨んだとして、全体最適のために自部門へ投入される経営資源の削減を訴えたりしますか?また、そのような議題になったら、抵抗しませんか?

この問に、「私は組織全体のために動きます」と胸を張って答えられる方は、ぜひ社長になることを目指してください。(社長になるまでの何処かで、自部門を切り捨てるような言動をすると放逐されるリスクが大いにありますので、大望は社長に成るまで隠すといった処世術を身につけることをオススメしますが。)

初出:2015/05/14
更新:2025/07/20

経営
2025年7月9日

社会的比較論

社会的比較論_001
社会的比較論とは、フェスティンガーによって提唱された理論で、人は自分自身を正しく評価したいという動機を持っていますが、自分自身を評価するための基準として、自分に似通っている他者との比較を用いるとする理論です。

簡単に言い換えると、人は自分に似た他人と比較して自分自身の評価を行うという理論です。そして、比較した結果、安心したり、自分の所属している集団に合わせたりするわけです。逆に比較することができないとなんとなく不安になってしまうという事もいえますね。

例えば、あなたが会社員だとします。その時に、数多くの同僚と一緒に働いていれば、なんとなく日々、自分が同僚たちと比較してどのような位置にいるのかと考えることができますよね。

■社会的比較論の上方比較と下方比較

この社会的比較論の上方比較と下方比較とは、同僚たちに比べて自分のパフォーマンスが低ければ、向上する努力をしますし、自分のパフォーマンスが高ければ安心するといった心理です。

自分よりも優れている人と比較すると、「負けるものか」と向上心が生まれるという前向きな効果があります。ただ、必ずしも前向きな効果だけが生まれるわけではなく、嫉妬心や劣等感が生まれることもあり、

他方で、自分よりも劣っている人と比較すると「自分はいい感じだね」と安心感や自身を得ることに繋がります。ただ、こちらも慢心を生んで努力を怠ると行ったマイナス効果もあり得るから怖いのです。

いずれにしても、人は無意識に他人と比較してそれによって幸福度や自尊心を上下させるというものです。

■比較できないと不安になる

とすると、人と比較することで精神状態が左右されるならば、隔絶されたところで比較することなく活きたら幸せになれるのでしょうか?

ただ、これも冷静に考えてみると当てはまらないような気がします。

例えば、同僚たちと隔絶された場所で一人働いていたらどうでしょう?(他者と比較ができない状態)なんとなく不安になりませんか?

または、自分とはくらべものとならないようなハイパフォーマーの中で仕事をしたらどうでしょうか?(自分と似た他者と比較ができない状態)これも不安になりそうですよね。

この社会的比較論はその様な状況ではなく、自分と似たような他者と比較する事で自分自身を評価するという理論なのです。

また、この理論を提唱したフェスティンガーさんは、認知不協和理論を提唱した事でも有名ですね。

■ビジネスにおける社会的比較論の適用について

さて、本稿は「まんがで社会学」とかではないので、あくまで経営にどのように影響するかで考察を進めます。

■従業員のモチベーション

ここまでの説明でピンと来た方も多いと思いますが、従業員のモチベーションを大いに左右する要素になります。

例えば、組織内での評価はある程度似た属性(能力や経歴など)の同僚と比較して行っていくことが必要ですし、納得感を生み出しやすくなります。

あまりに上方比較を強いると(業績の良い人と比較させてしまうような処遇をすると)向上心が刺激される可能性はありますが、逆にモチベーションを低下させたり最悪の場合は離職につながったりもします。

また、下方比較になるような部署に配属すると安心材料になってメンタルは安定するかもしれませんが、努力の停滞を招く可能性があります。

つまり、どのような部署に配属するかの検討材料の一つとなりうるのですね。

■消費者心理の理解

消費者も社会的比較論からは逃れられません。消費者も見栄をはったり、マウンティングしたり、周囲にどう見られるかを意識した消費行動を取ります。

ここをうまく設計して、少し憧れられるような商品のポジションを取ったりすると、消費者からの支持を得やすくなったりします。

■社会的比較論:誰と比較するかのまとめ


比較先 どんな影響が出るの?
上方比較 向上心・劣等感・モチベ低下・憧れ
下方比較 安心・停滞・慢心・守りの姿勢
比較できない状態 不安・孤独・評価不能感


このように、誰と比較させるか、どう比較させるかの巧妙な設計は、ビジネスに貴重な示唆を与えてくれるのです。

参考関連用語
マズローの欲求階層

※本記事では、心理学の理論を経営・組織論の視点から応用的に解説しています。学術的な厳密さよりも、実務での活用に重点を置いています。

初出:2012/08/27
更新:2025/07/09
経営
2025年7月9日

S字カーブ理論

S字カーブ_横軸に練習量、縦軸に成果をとったグラフを描くと、最初は緩やかな伸び → 急激な成長 → 再び緩やかな伸びとなり、全体としてS字型になります。
S字カーブ理論とは技術の進歩の過程を横軸に投入した資源(時間や費用)、縦軸に成果を取ったグラフを書いた場合にちょうどS字のようになることから名付けられた理論です。

■S字カーブの3段階

S字カーブ理論は以下の3つの状況を仮定して考えられています。

1.新しい技術の登場(導入期)
研究開発に資源を投入してもなかなか成果が出ない段階です。

2.発展期
資源を投入すればするほど、技術向上の幅が大きくなる段階です。

3.成熟期
技術が成熟し、資源を投入してもそれほど成果が得られなくなる段階です。資源の投入に対し、成果は逓減していきます。簡単に言うと限界期です。


このまんがではS字カーブ理論を練習の量と成果に置き換えて説明しています。楽器は最初はなかなかうまくなりませんが諦めずに頑張って練習をすればどこかでコツをつかみます。

コツをつかんだ段階で急激に練習の成果が上がり、練習すればするほどうまくなる段階がやってきます。

その後、ある程度うまくなると練習をしてもそれ以上なかなかうまくならなくなる段階がやってきます。

このように、頑張っても成果が出にくい時期があるという経験則を述べた理屈ですが、技術開発に当てはめると、関連用語で記載した技術開発の非連続性という理論につながっていきます。(詳しくは関連用語をご覧になっていただければですが、成熟期以後はなかなか伸びないので、新技術が生まれ、それに旧技術が駆逐されがちという理論です。)

関連用語
技術革新の非連続性

■S字カーブ理論的な進展になりがちなもの

一般に様々なものがこのS字カーブ理論に当てはまりますが、幾つか例をあげてみます。

・資格の勉強など:
 基礎が固まるまで成果が見えなくて焦ると思いますが、基礎が固まると一気に伸びたりします
・プログラミング学習など:
 最初はなんのことかわかりませんが、文法を理解すると一気に応用が効くようになります。
・ビジネスなど
 売上が伸びない時期が続きますが、あるポイントで成長が加速します。

これらのように、「頑張っても成果が出ないな・・・」と考えがちな時期こそ、S字カーブの導入期にいるのかもしれません。

この理屈を知っていれば、今は導入期だと考えて粘り強く取り組むことができるのです

■ビジネスにおけるS字カーブ理論について

と、励ますような綺麗事を書きましたが、ビジネスの場合は経営資源が尽きるとそこで試合終了になってしまいます。(学習はめげずに頑張れば、効率の悪いやり方をしていてもいつか芽が出ますが、ビジネスは資金が尽きたらおしまいです。)

ですので、見切り千両ともいうように、方法論に固執しないバランス感覚が重要です。

特に最初の構造でビジネスは勝算の有無がはっきりと別れます。

(飲食店などは売上の上限が『客席✕回転率✕客単価』で決まります。他方で、固定的にかかる費用もほとんど決まるので、商売を始めた後の調整の余地が小さいということができます。)

ですので、特に飲食店などを「美味しいコーヒーを淹れられるから」とか「私の作るそばは絶品」などと考えて開業計画を立てる場合には、必ず(必ずですよ!)商工会や商工会議所などの公的相談機関に勝ち筋があるかの相談をしてください。

よく、FCの主催者や、創業支援者(というなの不動産やさんとか什器やさん)などに話を聞く方がいますが、商人に「私、あなたの商品を買うべきですか?」と相談しているようなものです。

ドリームクラッシャーなどとネガティブなアドバイスをする人を呼ぶ事もありますが、利害関係のない公的支援機関が「やめたほうが良いですよ」と言う場合は、一度立ち止まることをオススメします。

本記事を忘れてもいいですが、「嫌なことを言ってくれる助言者」こそあなたの本当の味方なのですから。

初出:2011/10/24
更新:2025/07/09

経営
2025年6月18日

戦略的意思決定

戦略的意思決定_001
戦略的意思決定とは企業の方向性を決めるような重要な問題に対する意思決定です。簡単に言うと、工場の場所を決定する、出店を行う地域を決定するなどの非常に大きな意思決定を言います。

この戦略的意思決定は主にトップマネジメント層が行う意思決定となります。

戦略的意思決定の特徴として、繰り返しが少ない非定型的な意思決定であることがあげられます。また、非常に不確実性が高いですがうまくいけば非常に大きな効果を得ることができます。言い換えればハイリスク・ハイリターンの意思決定という事もできます。

例えば出店する地域の決定等は繰り返して行うタイプの意思決定ではなく、一度きりの非常に大切な意思決定です。その意味で非定型的な意思決定であるという事ができます。

さらに、出店する地域をうまく決定できれば非常に大きな効果を得ることができますが、失敗したら日常業務の意思決定以上にひどい損失を受けることになります。

このまんがでは先生がトップマネジメント層として、戦略的意思決定を行っています。今回は学食との提携に関する意思決定を行っているようです。

このように、組織の長期的な方向を決定する意思決定を戦略的意思決定と言います。 

■組織階層ごとに意思決定のレベル感がある

意思決定の階層構造といった記事で触れたことがありますが、組織階層ごとに意思決定のレベル感があります。

この戦略的意思決定は本稿の通り、トップマネジメント層が行う非定型の意思決定ですが、中間管理職が行う管理的意思決定、現場で行う定型的反復的な意思決定である業務的意思決定と言ったふうに分類されます。

とはいえこれは厳密なものではなく、相対的なものとなっています。

■経営は意思決定の連続です

例えば、仕入れ数量やアルバイトさんのシフト決定など繰り返し発生する意思決定はとても重要ではありますが、繰り返し発生し影響範囲も限定的であるため、業務的意思決定に該当します。他方で、起業の方向性や存続に直結するような意思決定は戦略的意思決定に該当します。

ただし、お店を数百と出しているような大企業にとっては新規出店検討は戦略的意思決定ではなく、中間の管理的意思決定かもしれませんが、地域で頑張っている多くの中小企業・小規模事業者にとっての新規出店計画は企業自体の存続基盤に関わる意思決定である戦略的意思決定にほかなりません。

■まんがの例と実務的追記

今回の事例は学食との提携という一見すると些細な意思決定に思えるかもしれません。しかし、この組織にとっては存続基盤を左右するような戦略的意思決定にほかならないのです。

このように、組織の規模によっても意思決定の重要性は変わってきます。多くの中小企業・小規模事業者さんの相談は、大きな企業出身の支援者からすると些細な意思決定に見えるかもしれません。

しかし、企業自体の存続に影響を与える極めて重要な意思決定に悩んで相談してきているケースもとても多いため、相談者に寄り添った支援の第一歩は相手の立場に自分をおいてみることなのです。

初出:2012/02/28
更新:2025/06/18


経営
2025年6月11日

持続的イノベーション

持続的イノベーション_001
持続的イノベーション(sustaining innovation)とは自社を支える主な顧客の持つニーズを満たすために、自社の製品やサービス、またそれらを生み出す業務プロセスについてより良いものを生み出すために行うイノベーションのことを言います。

持続的イノベーションの「持続的」という言葉から単なる改善を繰り返すだけのイメージを持たれる方がいるかもしれません。確かに、改善を繰り返すということも非常に重視されています。

しかし、イノベーションという言葉も使用されており、この持続的イノベーションは単なる改善の域にとどまらず自社を支える顧客のニーズに基づいた抜本的な技術革新をも含む事があります。

ただし、この持続的イノベーションはあくまで自社を支える顧客のニーズに基づいた改善や技術革新です。そのため、既存の技術ではなく全く新しい価値を生み出すような「破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)」が生じた場合、新興企業に取って代わられてしまうといった現象が生じることがあります。このような現象をイノベーションのジレンマと呼んでいます。

このまんがでは製品を日々改良し、お客様の声に耳を傾け続け何度も抜本的な技術革新にも取り組んだと言っています。このような既存の顧客のニーズに基づいて行うようなイノベーションを持続的イノベーションといいます。

■持続的イノベーションの具体的なイメージ:日本車の改良とハイブリッド技術

例えば、改善活動を繰り返して現在の顧客ニーズを満たしていくイメージです。エンジンを使った車を究極に突き詰めていく日本の自動車などが挙げられます。

より良い燃費で、より良い乗り心地、より安全な車といった顧客の要望する大切なことをカイゼンで突き詰めていく日本の車作りがこのイメージに該当してきます。

また、この持続的イノベーションの文脈で、ハイブリット車という顧客の期待を遥かに超えてくる素晴らしい乗り物を作っていきました。ハイブリット車も既存の製品群の延長線上にあるイメージで、高度な技術の蓄積がそれを可能としています。

このような取り組みを通じて市場シェアを維持し、ブランドイメージの構築や規模の経済経験曲線効果での低コスト(販売価格が安いとは限りませんが)を享受することで競合が参入しにくくなる参入障壁を築くことができます。

■持続的イノベーションの対比として:EVが切り開く可能性

他方で、顧客が予期しないニーズがあるかもしれません。本当に顧客はエンジンで動く乗り物に乗りたいのでしょうか?

例えば、顧客は単に自動車という利便性がほしいだけだと考えれば、エンジンを使う乗り物といった切り口ではなく、モーターで動くEV車という切り口も考えられます。

この切り口は、既存のエンジンで動く車が蓄積してきた価値観や市場構造を根本的に変える可能性があります。精巧なエンジンを作る技術やエンジンから動力を得る前提で作られた車体設計などの先行者の蓄積に基づく参入障壁などをスキップできるかもしれないからです。

この切り口が真のイノベーションであれば、顧客の価値観や市場構造を根本的に引っくり返すことができるかもしれません。(2025年現在ではEV車の失速が目立ちますが。)

■相対的に変化するイノベーションの評価:2030年からの視点で振り返る

ひょっとしたら2030年には、移動手段の概念が根本的に変わっており、EV車自体も「あれは自動車という概念から生まれた持続的イノベーションだった」と振り返られるかもしれません。あくまで印象論ですが、EV車は自動車という体験の延長でしかないように思われます。

このように、持続的イノベーションと破壊的イノベーションは絶対的な分類ではなく、相対的な考えであるという点にも注意が必要です。

最初にこの記事を書いたときは2011年だったのですが、2025年現在、当時すごい革新的だった製品の幾つかはすでに旧製品の徒花的なものだったと理解できていますので。


みなさんは、今「破壊的イノベーション」だと思われている製品のうち、10年後に「持続的イノベーションだった」と評価されるものには何があると感じますか?

関連用語
インクリメンタルイノベーション 


初出:2011/11/04
更新:2025/06/11
経営
2025年6月9日

Off-JT(OFF the Job Training)

Off-JT_001

Off-JT(OFF the Job Training)とは職場外で専門の指導者によって行われる教育訓練の事です。いわゆる社外での研修会のイメージとなっています。この訓練は一般化された知識や技能を学ぶことを主眼としています。

Off-JTの長所と短所は次の通りです。
長所
・特定の分野について体系的に指導することが容易です。

・受講生がある程度の効果を実感しやすい。

短所
・研修の結果を日常の業務に生かすかどうかは参加者各自に委ねられてしまいます。

・対象者を適切に絞らないと研修の内容が抽象的になり、実践しにくくなる場合があります。

このまんがでは、1コマ目でみんなを集めて研修を行うと宣言しています。

それを受けて、2コマ目で研修対象者を募集し、3コマ目で研修を実施しています。どうやらいつもの学校ではなく外部の会場で実施しているようです。普段の練習では身に付きにくい内容を体系的に指導するといっています。

ただし4コマ目で、学んだことの使い方が分かりにくいと嘆いています。これは日常にどのように生かすかが参加者各自に委ねられているためであると考えられます。企業の業務の進め方であるワークフローなんかをOff-JTで学んで現場へ配属なんてよく行われますよね。

関連用語
OJT
自己啓発
インターンシップ

■OFFJTは抽象的

どうしても、机上で学ぶといった観点からOff-JTは抽象的になりがちです。

というのは、様々なケースに対応できるようなトレーニングといった設計をする以上、ある程度抽象度を上げる必要があるからです。

この短所を補うため、OffJTで学んだことを実際に使うようにOJTを設計すると定着率が上がります。

学んだら学びっぱなしでは良くなく、上司や先輩からのフォローアップを行うことでこのOffJTの効果が高まるのです。

そのため、多くの組織では、研修後にレポートを書かせたり学んだことの報告会などをさせます。

研修を受けた人からするとめんどくさい限りですが、せっかく学んだことを「使ってみる」ようにするための設計になっております。

■対象者の業務水準から設計することも重要

せっかくの研修を効果的に行うためには、対象者の業務水準にあった形で設計する必要もあります。

ベテランさんに新人向けの基礎を改めて復習してもらうことに意義がないとは言いませんが、ベテランさんにはベテラン向けの高度な内容を提供するようにした方がより効果が上がってきます。

何を学ぶかを誰に学んでもらい、どのように使ってもらうかまでしっかりと設計することが重要です。

■Off-JTは効率的だけど、設計が重要

教える側にとってはOff-JTはとても効率的です。しかし、しっかりと活用イメージから設計しなければ、形骸化してしまいます。

業務でどのように活かすかまで設計することが、Off-JTを効果的にするポイントです。

関連用語
企業内大学

初出:2011/10/02
更新:2025/06/09

経営
2025年6月5日

アンゾフの成長ベクトル | アンゾフの成長ベクトルとは?図でわかる4つの戦略と実務での使い方

アンゾフ成長ベクトル_001
アンゾフの成長ベクトルとは企業の成長の方向性を考えるための戦略フレームワークになります。「どの方向に成長するか」を何を売るかという製品の軸と何処でうるかの「市場」の軸で整理して4つの戦略パターンを考える枠組みです。

<用語解説>
アンゾフの成長ベクトルとはロシア生まれの経営学者、アンゾフ(Ansoff)が提唱した経営戦略上の意思決定の実用的枠組みです。今後の成長の方向性を分析・評価するために用います。

この成長ベクトルとは、製品と市場の二軸を取った表を作成し、成長戦略をそれぞれ①「市場浸透」②「市場開拓」③「製品開発」④「多角化」と分類して考えます。以下その4つの類型について簡単に説明していきます。

アンゾフ成長ベクトル

1.市場浸透戦略
現在の製品、現在の市場に対して他社との競争に勝利し売上増大や市場シェアの向上を目指す戦略です。一般顧客をロイヤルカスタマー化する事を目指す場合もあります。
用いる手段としては
 ・広告宣伝の強化
 ・価格の改定
 ・カスタマーリレーションシップ・マネジメント(CRM)の導入
等があります。

2.市場開拓戦略
現在の製品で新市場を開拓していく戦略です。新市場への投入の場合、しばしば新ブランドを立ち上げます。用いる手段としては
 ・国内市場から海外進出
 ・業務用から一般用への進出
等があります。
このまんがの例では、今まで販売していなかった付属中の職員へ同じ製品を売るということを言っています。

3.製品開発戦略
現在の市場に対して新製品を開発・販売する戦略です。用いる手段としては
 ・短いサイクルで新製品の投入
 ・製品のバージョンアップ
等があります。
このまんがの例では、同じターゲットに向けて海鮮サンドという新製品を開発すると言っています。

4.多角化戦略
新しい市場に新しい製品を提供していくという戦略です。例えば、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースです。用いる手段は様々なものが考えられます。

多角化戦略について詳しくは後日ご説明しますが、アンゾフは、多角化戦略の類型として以下のようなものがあると指摘しています。

すなわち、横に事業を広げるイメージの「水平型多角化戦略」、流通経路の川上や川下へ事業を広げる「垂直型多角化戦略」、技術、マーケティング分野について少なくとも既存の事業と片方が関係する方向へ進む、「集中型多角化戦略」、全く関係ない分野へ進む「集成型多角化戦略」です。

漠然と、成長を目指すと考えるよりも、このアンゾフの成長ベクトルといった考え方を用いると、考えが整理されますよね。

■実務面からの加筆:


中小企業の支援を行う際、この成長ベクトルはもちろん念頭に置きますが、実際に事業計画で効果的だと認められる(≒融資や補助金獲得に結びつく)ものは、

①の市場浸透戦略(現製品✕現市場)
②の市場開拓戦略(現製品✕新市場)
③の製品開発戦略(新製品✕現市場)

となります。いずれも既存の経営資源を土台としており、実現可能性が高いと判断しやすいものです。

■④の多角化について

一方④の多角化(新製品✕新市場)は原則おすすめしません。唐突な印象を与える事業計画は実現性や成功可能性が低いと判断されがちですし、実際に補助金等の採択は難しくなります。

仮に多角化を志向する場合は、その企業なりの必然性が必要です。

例えば、上の例から持ってくると、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースを上げていますが、

実は社長が大学の体育会の出身でコーチなどとのツテがある、トレーニング理論に精通しているとか、トレーニング支援アプリを開発している等

といった経営資源を活用できることが重要です。

■事業再構築補助金という補助金

少し前に事業再構築補助金といった補助金がありましたが、あの補助金は新規事業進出という多角化を求めて作られている補助金でした。

建設業がカフェをやりたいなど、唐突な印象を受ける事業で「補助金が取れないか?」といった相談を受けたものでしたが、その企業なりの必然性があるかどうかがとても重要でした。

必然性があれば、事業計画の作成支援はとてもスムーズに行きましたし、逆に必然性がない場合は相談の段階で「この計画で事業を行うことはオススメしません」とはっきりとお伝えしていました。


初出:2011/07/27
更新:2025/06/05
経営
2025年6月5日

シナジー

シナジー_001
シナジーとは異なる経営資源を組み合わせることによって1+1が2以上になる効果の事を言います。

このような効果は経営資源間の相乗効果によりもたらされます。このシナジーの源泉には販売チャネルや生産設備の転用、技術や人材など組織に蓄積された知識・知恵の活用などが考えられます。

例えば、新製品を発売する場合を考えてみます。一から販売チャネルを構築する、生産設備を用意する場合には相当の投資を行う必要があります。

しかし、この時に既存事業の販売チャネルや生産設備を用いることができれば、費用を低減することができます。

そして、このことにより一から事業を立ち上げる場合に比べてより大きな利益を得ることができます。

具体的には、店舗網をすでに持っている薬局が関連事業として介護用品を取り扱うようなケースが考えられます。

この場合、店舗網をそのまま利用できること、既存事業の顧客が介護用品事業の顧客になってくれる可能性があること、薬局事業で培った信頼性などのブランドを活用できることなど有利な材料がたくさん出てきます。

このシナジー効果は上記のとおり範囲の経済に非常に近い考え方であるという事ができると思います。

このまんがでは一つのパートで練習するよりも複数のパートで一緒に練習する方が効果が上がると言っています。


実務面からの加筆:
シナジー、相乗効果とも言いますが、限られた経営資源を最大限に活かすためのキーワードであり、事業計画を考える際には重要視して書いていくことが大切です。

特に補助金獲得を目的とする場合、「補助金で導入する新たな設備が既存のシナジーを生む」(相乗効果の強調)が鉄板のストーリーとなります。

■シナジーが生まれるとは限らない

とはいえ、シナジーは生まれるとは限らないという身も蓋もない現実も覚えておいてほしいです。

例えば、組織が連携するときはシナジーが発生するとほとんどのケースで言いますが、組織文化が違うとシナジーは生まれず、単に経営資源が重複して非効率を生むだけだったりします。(アナジーとか負のシナジーといった言葉も作られているぐらい、ありふれた事象です)

単なる寄せ集めからはシナジーは発生しにくいといったことは、なんとなく感じると思います。

■シナジーが生まれるような設計が重要

経営資源に余裕がない中小企業などでは、シナジーが発生するように設計することがとても重要です。そのためには、

・コストが発生する経営資源の共有(設備や人など)をうまく共有する
・売上拡大へ顧客基盤や商品への信頼感をうまく共有する
・組織全体をうまく統合する(特にインセンティブの設計をうまく行う)

など、多岐にわたって意識的に設計することが重要です。

もちろん、具体的な状況が異なる中で万能な正解はありません。そのため、このような「うまくやる」としか一般論ではかけないです。

しかし、、「どの経営資源を、どう組み合わせればシナジーが出るか?」という視点を持つことがとても重要なのです。

初出:2011/12/28
更新:2025/06/05

経営
2025年6月4日

短期経営計画

短期経営計画_001
短期経営計画とは、半年や一年くらいの比較的短期間を対象とした経営計画のことを言います。

比較的短期の計画ですので、長期経営計画中期経営計画の中身を具体的な数値に落とし込んだような計画となります。

例えば、中期経営計画でA地区の市場シェア一位を目指すという計画があったとします。

「目指せA地区市場シェア一位」と言われただけでは今年や今月、何をすればいいのかわかりませんよね?

でも、中期経営計画を一年単位の短期経営計画で「今年はA地区に一店舗出店し、さらに集中出店(ドミナント戦略)を行うために調査を行う」とされれば、具体的に何をすればいいかが分かりますよね?

このように、中・長期の経営計画で目指すべき姿を、短期経営計画で具体的な行動計画を決めていくような計画です。

そして、しばしば短期経営計画は予算計画といった形で決められます。

■短期経営計画を作ってみよう(事例:飲食業A社の場合)

ここまで短期経営計画の考え方を見てきましたが、実際にどのように作成するのか、具体例で見てみましょう。

■短期経営計画の位置づけ

まず位置づけを明確にします。例えば、

目的:中期経営計画に基づいて、今期の顧客基盤を強化する
期間:2025年4月から2026年3月
方針:「リピート率増大」による顧客数増大

といった感じで、なんの目標であるかを明確にします

■数値目標

売上高:1440万円(前年比10%増)
客単価:3000円(現状維持)
月間客数:400名
リピート率:60%(+5ポイント)

■行動施策

・販促
再来店を促すクーポン配布
地域イベントと連携し、周知を図る
・メニュー改善
旬のものを取り扱い、季節感を提供する
・運営
スタッフ研修による接遇力向上、接客品質の統一

このように、短期経営計画では「中長期の目標」を1年単位の行動と数値目標にブレイクダウンしていくことが重要です。



実務面からの加筆:
計画って社長の頭の中には存在していたりします。なので、コンサルを名乗る部外者が理想論を掲げた変な計画を持ち込むよりも、社長の思いをそのまま実行したほうがうまく行ったりすることも多くあります。

ただ、だからといって計画を見えるように書き出すことは無駄だと考えるのは早計です。

短期経営計画を見えるように書き出しておくことはとても有効なことなのです。


まず、手を動かして書き出すことで計画の中身がより深まります。

また、その日の気分に左右されてしまい、方針が徹底されないといったことも防ぐことができます。(どんな社長でも人間ですから)

そのため、仕事が忙しいとは思いますが、「経営計画なんて必要ない!」と思う社長さんこそ、ぜひ一度立ち止まってチラシの裏でもいいので書いてみてください。

きっと発見があって明日からの仕事に芯が通ることがわかると思います。


初出:2013/03/21
更新:2025/06/04

経営
2025年6月4日

中期経営計画

中期経営計画_001
中期経営計画とは3年から5年程度の中期計画であり、経営ビジョンを実現するための計画です。

この経営ビジョンとは企業があるべき姿を示しているので、現状とのギャップを中期経営計画を立てることによって認識することができるのです。

この中期経営計画は、一年単位の短期間では達成できないような目標を定めていきます。これは例えば、ROEや売上高などのように定量的な指標を設定する場合もありますし、定性的な事象について目標を立てることもあります。

一年では、出来ることは限られていますが3年から5年という期間ならばできることは増えていきます。例えば、工場や店舗で発生する減価償却費は一年では管理不能であるケースが多いですが、時間軸を変えて3年とか5年で考えると管理可能になる場合があります。(時間軸によって管理可能費と管理不能費は異なります。) 

このように、 少し長いスパンで企業のあるべき姿に近づいていくような計画を立てるのが中期経営計画です。これは、長期経営計画をもう少し短いスパンに書き直し、具体的で精度の高いものにしているという事ができます。(もっとも長期経営計画は作られないケースも多いのですが。)

このまんがでは、中期経営計画が先生から提示されたようでそれを元に、具体的な日々の計画に落とし込もうと言っています。

■中期経営計画のメリットとデメリット

中期経営計画はすぐにはできないけど数年かければできることを盛り込むことができ、短期計画では考えることが難しい、成長シナリオを考えることができる点にあります。

設備投資や人材育成など、短期経営計画だとほとんど有効にならないような施策を中期経営計画ならば考えていくことができるのです。

他方で、外部環境が短期経営計画に比べて大きく変化する可能性が出てきます。このため、変動を織り込んで進捗を点検しつつ、調整をしていく必要がある(こういったのをローリングプランといいます)といった点はデメリットとなってきます。


関連用語
短期経営計画

実務面からの加筆:
この中期経営計画は実際に立てる計画としては一番長い種類のものとなります。長期経営計画まで行くと、不確実性が高すぎて完全に絵に描いた餅になるケースが多いです。

それに対して中期経営計画であれば、なんとか見通しが立つ範囲で作ることとなりますので実際に作ることが多い計画だと言えます。

特に、補助金などで求められる3年から5年の計画は中期経営計画に位置づけられるような長さですので、売上や費用などを根拠を持って積み上げていくことができるのです。


初出:2012/07/11
更新:2025/06/04

経営
2025年6月3日

経営理念

経営理念_001
経営理念とは、企業という組織自体の存在する意義・目的を明文化したものです。簡単に言うと、「この会社は何のために存在するのか」を言葉にしたものです。

この企業理念は、企業の価値観を提供するもので非常に重要なものです。そして、意思決定を行う際に拠り所になる価値観であるということができます。

内部的には、経営理念が明確に示されていると目標が明確となりますし、働く人たちの目標も明確になって、共有されやすいといったメリットがあります。

例えば、「なんだかよく分からないけど、とにかく稼いで来る事が大切」な会社よりも、「お客様に価値を提供することが自社の目的である」と言われた方が、従業員がその経営理理念に共感する限り、従業員一人ひとりのモチベーションも高まるというものです。

また、外部的には、経営理念は株主や顧客等の様々なステークホルダーに対し自社の存在意義を伝えるといった大切な役割があります。

このような役割があるため、経営理念はその企業のアイデンティティであるという事ができると思います。

しかし、こういった大切な役割を持っているため、経営理念を定める場合ある程度普遍的で抽象的な表現を取らざる得なくなります。

そのため日常の業務を行うためには、この経営理念から導かれたビジョンや戦略・経営計画を用いる必要があります。

このまんがでは、学食で働いている男子生徒が何のために働いているかを見失ってしまったようです。先生に聞いたところ、経営理念を改めて教えてくれたようです。

この男子生徒は、学食の経営理念が心に響いたらしくやる気を取り戻しています。経営理念には、このような効果もあるんですね。

実務面からの加筆:
こんなふうにさらりと書いていますが、経営理念はめちゃくちゃ重要です。これは言い換えれば、組織はどうしたいの?どうなりたいの?という究極的な質問だからです。

また、「うちは経営理念なんか作っていないよ、小さな会社だからね」っておっしゃる社長さんに対しては、「社長はどうなりたいんですか?」ということを問うと、結構色々話してくれたりします。

実は言葉に落とし込んでいないだけで、どのような企業にも思いはこもっているのだと感じることが多くあります。

■どうして経営理念が大事なの?

すごく抽象的で漠然とした話になってしまいますが、社長や企業の価値観に合わない事業って勢いというか推進力がが出ないのです。

補助金を獲得できるからと言って始めたあの事業。どうしてうまく行っていないかというと、心にそれをやりたいと思う熱いものがないから。

そして、経営理念に沿った事業って、この熱い思いが生まれてくるから、困難にぶつかってもそれを乗り越える力が湧いてくるのです。

経営理念は、企業の羅針盤であり、芯です。迷ったとき、ぶれそうなとき、そこに立ち返れるような言葉になっているかどうかが大切です。

初出:2012/07/02
更新:2025/06/03


経営
2025年6月3日

意思決定の階層構造 | 日々行う意思決定ですが組織内の役割の違いで実施する意思決定にも違いが出ます

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組織での意思決定は、その組織に所属している人は皆行っています。といっても誰でも同じレベルの意思決定ができるわけではありません。

その意思決定を次の3つに分類したのがアンゾフです。

1.業務的意思決定
日常業務の効率的遂行を果たすために行う意思決定です。主にロワーマネジメントが行う意思決定です。

2.管理的意思決定
 仕事の流れや、組織形態等組織の構造に関する意思決定です。主にミドルマネジメントが行う意思決定です。

3.戦略的意思決定
 企業目標の決定やどんな事業に進出するかなどに関する意思決定です、主にトップマネジメントが行う意思決定です。

このマンガでは、
1.パートリーダーはロワーマネジメントとして、日々のパート練習の計画を立てる事でパートの技術の底上げを図るための意思決定をします。

2.吹奏楽部部長はミドルマネジメントとして組織を編成し目標を与えて実行するための意思決定をします。

3.顧問はトップマネジメントとしてどのような演奏会を開くかなどの意思決定をします。

曲目や演奏会の会場などがいまいちであった場合、どれだけ効率的に練習を行っても演奏会を成功させる事は難しくなってしまいます。その意味で戦略的意思決定が非常に重要となってきます。

キャプチャ


  • その意思決定は定型的か非定型か



意思決定について階層構造があることを見てきました。

さらに推し進めてその意思決定がどのような性格を持つのかについても触れていきたいと思います。

まず業務的意思決定はどちらかと言うと定型的な意思決定になります。

日々の業務で困ったことがあった時にどのように解決するかそういったことを考えていくような意思決定です。

これに対して戦略的意思決定は非定型的な意思決定となります。

企業を取り巻く環境が変化したり、企業内部の経営資源が変化したりすることがあります。

このような場合意思決定の前提条件が変わってしまうため、通常の意思決定プロセスではなく様々な経営資源を投入できる階層の人間が意思決定する必要があります。

つまり経営のトップ層がこの種の意思決定をする必要があるということです。

なお、管理的意思決定はこの2つの意思決定のあいだの性格を併せ持ちます。


実務面からの加筆:
何かを提案するときは、誰と話しているの?と問うことが大切です。ここで見た通り意思決定には階層構造があるので、いわゆる「決裁権」(決める権利)のある人に話さないと大抵のことは徒労に終わります。

逆に、決められるけど現場レベルのことを長々と管理者に話すのも相手の時間を奪いますので、その人が持つ権限に過不足のない提案が重要となります。

なお、実際の職位と組織内での権勢は別の概念になりますので、権限だけ見てキーパーソンを外して提案すると「私は聞いていない」という日本組織的な面倒が発生するので注意が必要ですよ。

また、フォロワーシップを育てていき、建設的な議論ができる組織にしていくことも重要です。


初出:不明(初期に作った記事なので結構古いはず)
更新:2019/11/10
更新:2025/06/03

経営
2025年6月2日

DPO(ディスカウントペイオフ) | 借りたお金を返さないのです。そう、DPOならね

ディスカウントペイオフ
DPO(ディスカウントペイオフ)とは金融機関等が持っている債権の取り立てが困難であるような場合に、金融機関が元金よりも低い金額で第三者に売却をし、その後、買い取ってもらった債務者が第三者からその債権を買い取るなどして、残りの債権をあきらめてもらうといったモノです。

なんだか、債務者(借りている人)だけが得をしてそうな一連の取引ですね。しかし、このような方法を採ることによってみんながそれぞれ少しずつ得るものがあったりします。

誰かが損をするだけなら、あまり継続的に行われたりしませんからね。
  • 債務者(借り手)のメリット
さて、債務者のメリットは非常に分かりやすいと思います。やってもらう事は実質的に借金の棒引きですからね。

つまり借りていたお金を返さなくても良くなるわけですから、仮に本業が十分な利益を上げていれば、一気に事業の再建も見えてくるというわけです。

もっとも、棒引きされた分の債務はそのまま利益となってしまうので、十分な現金を持っていたり、累積赤字を抱えていたりしないと、今度は税金の支払いで大変な事になってしまいます。利益と現金の出入りは違いますからこういった点には注意が必要です。(参考:黒字倒産) 
それでは、これらの第三者はどうでしょうか?こういった第三者は金融機関から債権を安い金額で譲渡してもらい、それを少しでも上回る金額が回収できれば利益になります。

例えば、金融機関から1億円の債権を1,000万円で買い取って、債権者から1,200万円回収できればそれだけで利益を得ています。

この例だと200万円分の利益を得ていますね。そして、この場合、1億円の債権の残りの部分にこだわらなくても十分な利益を得ていると判断できれば、残りの部分については放棄してしまっても良くなります。

というか、もともとの債権全額を回収しようとすると、非常な困難が予想されるので(問題なく回収できるなら、金融機関も1億円の債権を1,000万円で売ったりしませんからね)むしろ全額を回収することを考えない方が合理的なのかもしれません。
  • 債権者(貸し手)のメリット
さて、このような制度の説明をしていて、一番わかりにくいのは貸し手側のメリットです。「結局、貸していたお金の回収を放棄するんだよね?だったら損なのでは?」と思われる方も多いと思います。

しかし、しっかりと債権者側にもメリットがあるのです。分かりにくいですが、債権を放棄できるという事自体がメリットになってきます。

これは、金融機関はそう簡単には債権放棄をするわけにはいかないという点を考えていただくことから始まります。

というのは、隣のお店からは全額回収したにもかかわらず、あなたのお店の債権だけ放棄するというわけには基本的にはいかないですよね?さらに、金融機関にも株主がいますので、株主の利益に反するような行為を勝手に行ったとなると、経営陣に説明責任が出てきてしまいます。

このように、金融機関が債権を放棄しようとすると色々と大変なのです。

しかし、金融機関が債権を放棄したいと考えるような状況というのもあるのです。例えば、無理に回収した場合、お金を貸している企業が倒産してしまうとしたらどうでしょうか?この企業は本業でしっかりと利益を上げているので、債権のうちの一部を放棄できれば立ち直ることが見込めるといった条件も付けてみます。

このような場合では、例えば債権のうち一部を放棄して企業を再生した上で残金を取り立てる方が合理的ですよね。

また、どうしても取れないような債権をいつまでも持っておくのではなく、損金扱いにして税金を減らしたいと考えるような場合もあります。

債権の放棄は必ずしも金融機関にとって不利であるとは言えないのです。その為、ディスカウントペイオフのような事を行うような場合、当事者にはそれなりの思惑があり、それなりの利益を引き出すことになるのです。


実務面からの加筆:
これは何を意味するかというと、企業が窮境に陥っても諦めるだけが選択肢ではないということです。
社長が諦めなければ道が拓ける可能性はゼロではないので、まずは一人で悩まずに地域の経営支援機関(商工会や商工会議所)や中小企業診断士、、中小企業活性化協議会などに相談してみてください。

関連用語
ディストレスト

初出:2015/02/06
更新:2025/06/02
経営
2019年2月20日

魔の川 | 基礎研究と具体的な製品に結びつく研究の間には川が流れています

魔の川_001
魔の川とは基礎研究の成果と応用研究の間に存在する障壁を表現した言葉です。ネーミングにインパクトがあるので、この魔の川と死の谷は名前だけは知っているといった人がいるかも知れません。

■基礎研究と応用研究

基礎研究とは純粋に知識の獲得を目的として行われる研究で、それが何に役立つのか?という事はあまり問われない研究であるという事ができると思います。

ただこういった基礎研究が積み重なっていくことで人類の技術が進歩してきたのです。

一方、応用研究とは、具体的な問題解決のために行うような研究であるという事ができると思います。(どちらも厳密な定義ではありませんが。)

そして、この純粋な好奇心から始まった基礎研究の成果を応用研究に活用するためには魔の川が流れているというわけです。

■魔の川とは

例えば、ある研究者がカメレオンの色がどうやって変わるのか?を詳細に調べたとします。これが基礎研究に当たると思います。では、この研究から得られた知識は何の役に立つのでしょうか?

きっと思わぬ分野で役に立つのでしょうが、具体的な応用研究にはすぐには結び付きにくいと考えられます。(カメレオンのように色の変わるスーツが市場で強く求められているであれば別ですが。)

このような基礎研究と応用研究の間にある障壁を魔の川と表現しています。

この他にも様々な有望な基礎技術が開発されたとしても、それが市場に求められているかどうかとは別の話ですので、全てが具体的な応用研究につながるわけではないのです。

そのため有望な技術があったとしても、それを製品化していくためには昨日は製品に応用するための研究を続ける必要があります。そしてその研究には往々にしてなかなか予算がつきません。

このような状況を指して魔の川というのです。魔の川には具体的な製品にならなかった技術がたくさん浮かんでいるのです。

neko
すごい画期的な素材が色々あったんだよね。

kitsune
例えば全然汚れない糸とか。後は周りの空気をきれいにする触媒機能付きの糸なんかもあったね。

neko
そんなのがあったらすごいいいぬいぐるみができるよね 。

onnanoko_bustup
でもそういうものもなかなか製品だってないわよね。基礎研究で終わってしまって魔の川を越えられなかったのよ。


■魔の川の先には死の谷があります

そして、この魔の川を超えると今度は死の谷が待ち構えているとされています。このように上手く基礎研究を行った技術が、本格的な製品開発につながるような研究開発に進んだとしても、それが成功につながるかどうかは別の話しなのです。

そして、製品が事業化されるためにはダーウィンの海と呼ばれる生存競争を超えていく必要があります。

このように一つの製品が世に出てしっかりとした事業に育つまでには大変な苦労があるのです。

このまんがでは、猫についての基礎研究を行っていたようです。その成果を使って予算を獲得しようとしていますが、どうやら難しいようですね。

このように、基礎研究と応用研究の間には魔の川が流れているのです。 


解説で出てきた用語・関連用語
経営
2019年2月3日

SWOT分析 | プラス面とマイナス面を企業内部・外部に分けて把握する方法です

SWOT分析
SWOT分析とは、企業の環境を把握するための考え方で、企業内部の強み(S:strong)、弱み(W:weaknesses)、企業外部の機会(O:opportunities)、脅威(T:threats)を分けて考えましょうというものです。

「敵を知り己を知れば百戦危うからず」といった格言がありますが、己の強みと弱み、敵(外部環境)の機会と脅威を分類して書きだしましょうという事です。

そして、分類して書き出した結果、自社の進むべき方向性について示唆を得ることを目的としています。このSWOTの結果を使って、強みと機会を組み合わせて戦略を考えましょうというクロスSWOTを行ったりします。

■SWOT分析の書き方は簡単です

と、なんだか難しそうな感じですが、実際には非常に簡単に行う事ができます。

下図をご覧ください。
SWOT分析 

このように、企業内部にとって良い事と悪い事をそれぞれSとWの欄に記述し、企業外部の環境が自社にとって機会になりうるか、脅威になりうるか(つまり有利な状況なのか、不利な状況なのか)をOとTの欄に記述するのです。

そうすると、企業にとっては内部環境と外部環境について「もれなくダブりなく」(こういうのをMECE、ミッシーなどと言います)考慮する事ができるのです。


hiyoko
SWOT分析ってなんだか難しそうだけど、要するに企業の中と外をそれぞれプラスとマイナスに分けるってだけなのね。

neko_negane
でも、分けて考えると必要な要素を漏らさないし、ダブらないからわかりやすいよね。


■まずは事実を集めよう

このSWOT分析ですが、最初からS(強み)とW(弱み)、O(機会)とT(脅威)に分けて分析しがちです。

ただ、最初から分けようと考えると、SWOT分析を行うことはとても難しくなります。そのため、最初は事実を集めていきましょう。

■1.企業内部の事実を集めるための考え方

まずは自社について事実を集めていきましょう。例えば、自社の商売の流れを考えて見ます。

仕入れから販売までの流れで、他社と比べた特徴は何かないでしょうか?

例えば、仕入れ先と長年にわたって密な付き合いがあるという事実がある、在庫水準少なく管理するノウハウを持っている、接客販売のノウハウを持っているなどといった感じです。

これらの特徴は、強みだと考えがちですがこの段階では判断しないようにするのがコツです。

■2.企業外部の事実を集めるための考え方

企業を取り巻く環境については、PEST分析という考え方が活用できます。このPEST分析は企業を取り巻く環境について、政治、経済、社会、技術と言った観点から考えて見るといった考え方です。

例えば、政治的な事柄として何らかの規制が行われますが、自社の事業は既得権として保護されるなどとあれば、高い参入障壁を築くことができるといった事を意味します。

また、自社の想定顧客の所得水準が上がった・下がった、大きな道が通ったことで地方都市のベッドタウン化しつつある、IOT技術が進展しているなどと言った環境の変化を考えて行くことができます。

また、ファイブフォースモデルなども使って、競合の参入などについても考えることが可能です。

これらの企業外部の事実もこの段階では判断しないようにして、たくさんの事実をまずは集めることがコツです。

neko_negane
強みと弱みをいきなり分けて考えるのって難しいですよね。

onnanoko_bustup
そうね、だから最初は他社と違う特徴をたくさん挙げてみるのがコツよ。これは企業外部もおんなじで、何か変わったことがないかって考えてみるのよ。

neko_negane
特徴を出すだけならたくさん出せそうですね。


■企業内部について

SWOT分析では企業内部について集めた事実を強みと弱みに分けていきます。

■1.強みと弱みは相対的なモノです

ここで注意があります。強みと一言で言いますが、強みと言うからには競合に勝っていなければ強みではありません。逆に、弱みと言っても競合に負けていなければ必ずしも弱みではありません。

例えば、100メートルを11秒で走れる人がいたとしても、オリンピックで金メダルを狙うのであれば『強み』にはなりえませんし(9秒台で走らないと金メダルには届きませんからね。)、町内の運動会を考えれば相当な『強み』になるはずです(○○町の韋駄天と呼ばれるかもしれません)。

このように、企業内部で強みと弱みを分ける際には、あくまで競合を意識して相対的にどうなのかを考えなければならないのです。(とはいえ、一般的に強い弱いで良い場合も多いのですが。)

■2.戦略(進むべき方向)を念頭に置きながら分類します

ここが、SWOTの最大の弱点なのですが強みか弱みかは企業の戦略との関連でしか捉えられないといった事があります。

戦略をたてるためのツールと紹介されるSWOTですが、戦略がないと分類できないと言った実務的な矛盾を抱えているのです。

例えば、社長が高齢という事実を強みとして捉えるか、弱みとして捉えるかを考えて見ます。

その場合、誰をターゲット顧客にして何を売るかといった企業の戦略によって強みか弱みかが変わります。

「高齢の顧客層に上質の商品を落ち着いた雰囲気で…」といった経営戦略をとるならば、社長が高齢であるという事実は、顧客の潜在ニーズを捉える事ができやすいため強みになると考えられます。

このように、分類が主観的になってしまう傾向がありますし、実際のSWOTは経営戦略を事後的に説明するためだけに使われるという、曖昧さがあります。

このことは、解決しようがない問題なのですが、戦略的な仮定をおいてとりあえず分類してみると言った割り切りが必要です。

■3.強みが本当に強みかを判定する手法もあります

出された強みが本当に有効なのかをフィルタリングするためのVRIO分析というツールもあるので、ブレスト的にどんどん出してみても良いかもしれませんね。

ただ、このように書いても「えー、ウチに強みなんかあるのかな…」と言う中小企業の経営者は多いものです。

このような場合、現に売上を取れている理由を問うてみると良いと思います。「自社の売上があるという事は、顧客が競合ではなく自社を選んだ理由があるわけですから、それこそがあなたの会社の強みなのです。」と尋ねてみるのです。

neko_negane
オーナーさん、ウチは老舗のファンシーショップなんですけど、これは強みなんですか?

onnanoko_bustup
もちろん強みよ!ウチは強みしかないのよ!

hiyoko
でも、新鮮さがないから客足が伸び悩んでるんじゃないの?什器もちょっと古くなっているし。

onnanoko_bustup
いいのよ、競合と比べればウチの什器はまだ新しいし、競合よりも歴史があるから、お客様は2世代にわたってきてくれてるのよ。(この辺を戦略として活用したいわ)


■企業外部について

さて、難しいのは企業外部の分析です。

簡単に機会と脅威に分けてくださいとしか、このSWOT分析では言ってくれないのですが、外部の事象が機会なのか脅威なのかは、やはり自社の経営戦略との関わりでしか分けられません。

例えば、高齢化の進展は一般的には『脅威』になると考えられますが、高齢者に対応した商売を実施するのであれば『機会』になりえます。

また、一般の小売業であっても、きめの細かい配達サービスができるのであれば、高齢化の進展は『機会』になりえます。

このように、分類は中々難しいのですが、「その環境は自社にとってどうなのか」を問うていくことで機会と脅威に分けられるはずです。

こちらも企業内部環境について考える場合と同じで、経営戦略を仮定しながら分類していくと言ったことも行われます。

なお、ポジティブシンキング過ぎて、何でもかんでも機会であると考えてしまっては分析になりませんので、そこは冷静に考えてみてくださいね。

■ここまでで説明したSWOTの流れを絵にするとこんな感じです

SWOTの流れ

■きれいに整理できるというメリットがありますが、デメリットもあります

このようにSWOT分析は、企業を取り巻く環境を総合的に見る事ができるという大きなメリットがあります。

企業内部だけの視点、企業外部だけの視点に陥らずに、総合的に企業を考えることができるというのはとても重要なことです。

ただし、SWOT分析は上で触れたように戦略を決めるためのツールなのに、戦略が決まらないとSとW、OとTが分類しにくいと言った弱点もあります。

そのため、迷ったら仮置きするぐらいの心構えで取り組んでください。

hiyoko
なんかSWOT分析って簡単で、わかりやすいけどあやふやな気がするわ。

neko
ですよね、僕も思ったけどウチの強みが老舗って言うのは、お客様が2世代にわたっているからですが、2世代にわたったお客様をターゲットにするのは、ウチが老舗だからなんですよね。

onnanoko_bustup
ふふふ。その辺は飲み込むのがSWOTのお約束なのよ。

経営
2019年1月27日

事業計画を作ることがなぜ必要なのか、事業計画策定支援のプロが挙げる5つの理由

事業計画

経営者の皆様。事業計画を作っていますか?いきなりこのように訊くと、「事業計画って何ですか?」といった反応が返ってくることが多くあります。

平成28年版の中小企業白書によると、中小企業の約47%が事業計画や収支計画などを作成したことがないので、事業計画は身近な存在ではないといえます。


確かに、計画などしなくても上手くいくケースもあります。また計画通り行かずに、途中で軌道修正したことが結果として成果に結びついたといった事例も多数存在しています。


しかし、事業計画を作成しないで経営をすることはとても危険な事です。また、事業計画があれば成長
が加速するといった局面も存在します。


そのようなことを踏まえ、なぜ事業計画が必要であるかをお伝えできればと思います。

理由1:事前判断の精度が良くなる

事業を実施すべきかしないべきか。その事業にどれだけの人モノ金といった経営資源を投入すべきか。

事業を始める際に、こういったことは事前に決めることになります。

何を売りとして商売をするのか。


どこで商売をするのか。


誰を顧客として商売をするのか。


どんな風に商売をするのか。


ちょっと思いつくだけでも、いくつかの応えるべき質問が出てきます。こういった内容に応えようとして調べていけば、ある程度の見通しがつくはずです。


onnanoko_bustup
行けるかしら?それとも無理かしら…

hiyoko
迷っていても仕方ないじゃない。とりあえず計画を立ててみたら?

onnanoko_bustup
絵っと計画を立てるためには、商圏について調べて、この業態だと客単価は…、お店の家賃は…

hiyoko
ほら、一人で迷っていても何も始まらないけど、事業計画を作ろうとしたらある程度見えてくるじゃない。

・事業実施の可否も判断できる


例えば、売上の上限がある程度開始時点でわかる業態があります。


飲食店などは、席数が決まれば回転数の上限もある程度決まりますし、客単価の上限もある程度見込めます。


このことは、売上の上限がある程度決まってしまうことを意味します。


売上は客数×客単価で算出されますので、客数の上限が席数×回転数で決まりますし、客単価もお店の業態であるていど見えます。


そして、お店の立地によって家賃などの固定費も決まりますし、食材費や人件費もある程度相場があるのでその事業が儲かるかどうかも見えてきます。


そのため計画の下振れも考慮して、『十分儲かる』状態まで計画を詰めて行くことが可能です。

この事前判断の段階でギリギリなんとかなるぐらいの計画の場合は、悪いことは言わないので、一度落ち着いて考えてみましょう。


とくに「自分の作る○○は絶品だから立地が悪くてもお客様が来るはず」というのは、リアル死亡フラグなので絶対にやめておきましょう。

理由2:危機回避の可能性が高まる

事業計画を作成し、それに沿って事業を行うと計画通りに行かないことが出てきます。


「それじゃだめじゃん。事業計画なんか意味ないじゃない。」と思うかもしれませんが、計画通りに行かない事が計画通りなのでそれでいいのです。

しかし、計画通りに行かない事には何らかの理由があるはずです。その理由を考えるきっかけになります。

onnanoko_bustup
計画通りにいかないわ。でも、計画通りにいかないことが当たり前だって先生が言っていたわね。

hiyoko
そうよ、でも計画通りにいかないのには何か原因があるんじゃない?もう一度計画を見直してみたら?

onnanoko_bustup
そうねぇ。何となく頑張りが足りないと思ったけど、毎日遅くまで頑張っているから、がむしゃらに頑張るんじゃなくって、やり方を修正しなきゃいけないのかもしれないわね。

neko
いずれにしても、軌道修正をしなきゃいけないことが分かったから、明日から考えていこうよ。


・頑張り不足という原因分析を避けられる


事業計画を持っていないと、利益が上がらないことの原因を頑張り不足に求めてしまうことがあります。


頑張るという言葉はとてもいい言葉ですが、事業は仕組みを構築することに他なりません。仕組みが良くないのに必死に頑張ってもおそらく報われないでしょう。


もちろん、「担当者が怠けまくっているっていうのは頑張り不足じゃないか」といった声も聞こえてくるかとはお思います。


しかし、怠けまくっているという現状はやはり怠けることができる、怠けてしまう仕組みが要因だと考えられます。


そのため、単に「怠けないでがんばれ」といった掛け声だけでは意味がなくなってしまいます。


・軌道修正の例


事業計画が明らかに実行できないような場合に、頑張りが足りないと原因分析してしまったら、あとは今やっていることを今よりも頑張るしかありません。


しかし、狙っていた客層が当初の想定よりも来店していない等といった事が分かれば、狙っていた客層に対して、よりプロモーションを強化する等の対策が打てます。


この対策をある程度の期間に繰り返すことができれば、漠然と「売上が上がらないけど、今頑張ればなんとかなるはず」とやるよりもうまくいくはずです。


問題の兆候が見えてきたら早めに対処するのが大切ですが、事業計画がないと問題の兆候が見えませんので怖いのです。

理由3:経営資源を集中することができる

ホースの出口を強く握ると水の勢いが増して、遠くまで飛ぶようになりますよね。これと一緒で、一定の目標に向かって企業の持つ経営資源を集中するとパフォーマンスが向上します。

onnanoko_bustup
あれもこれも…あー経営を始めるとやらなきゃならない事や、やりたいことがどんどん出てくるから大変よね。

neko
でも、計画があるから集中しなきゃならない事はわかるよね。

onnanoko_bustup
そうね、事前に事業計画を立てておかなかったら、あれもこれも手を付けちゃって全部中途半端になっちゃてたかもね。


「別に事業計画がなくても、目標があればいい」とおっしゃる方もいるのですが、漠然と「営業利益を10%増を狙う」として何をすればいいか判断ができるでしょうか?


それよりも、「販売数量を5%増加させる。そのためには既存顧客との関係深耕を図り、販売数量を○%増加させ…」と計画として落とし込んでいった方が行動が具体的ですよね。


その結果、どのような営業を実施するかなど細かい具体策につながるため、日々の行動を具体的に規定することが可能となります。


また、いつまでに〇〇を行うといった行動計画を事業計画にもりこんでおけば、その実施については日常の業務に加えて取り組んでいくことが可能です。


「つい忙しくって」といった言葉を聞くことが多いのですが、経営者の時間という貴重な経営資源を目
標達成のために投下するというのも事業計画の大切な役割なのです。


理由4:企業外部から経営資源を調達することができる

企業外部からの経営資源の調達というと資金調達が最初に来ると思います。しかし、事業計画はそれ以外の人やモノ、情報といった経営資源の調達にも役立つのです。


tanuki_2
融資のご相談ありがとうございます。結果は後程…

onnanoko_bustup
はー銀行さんに相談するのって緊張するわね。でも、前向きに検討してくれたみたいでよかったわ。

neko
オーナーさんが銀行に行っているときに、協力したいって人が来てましたよ。

onnanoko_bustup
あー前にネットで知り合った人なのよ。やりたいことがあるのって説明したらぜひ協力したいって言ってくれてね。

hiyoko
旗を掲げると、人が集まってくるのよね。


・お金の調達のため

企業が金融機関へ融資を申し込むときに、求められるのは決算書数期分と事業計画書となります。どうせ必要なものとなりますので、最初に作っておいた方がよいと考えられます。


また、他者から出資を受ける時にも必ず事業計画書は必要となります。金融機関の場合は、決算書の方を重視する傾向がありますが、出資を受ける場合は事業計画書がとても重要です。


というか、事業計画書以外にあなたの会社の将来性を証明するツールがないわけですから、気合を入れて作る必要があるのです。


この場合は、しっかりと儲かる理由を根拠をもち、理念を掲げて描く必要があります。


・人もの情報の調達のため

事業計画が明確ならば、自社に足りない人材や設備、ノウハウ等が明らかになります。

事業のビジョンと目的を明確に伝えることで、企業外部からサポートを得られるといった事は割とあります。こういった事がやりたいと明確に打ち出せていれば手伝いたいといった人が近づいてきてくれるイメージです。

理由5:撤退の判断のために

事業をやって一番難しい意思決定は撤退です。今まで必死になってやってきたことを諦めるわけですから、並大抵の判断ではありません。


また、経済的な致命傷を負って市場から退場するといった形の撤退は、だれも望みませんので(本人はもちろん、取引先や企業を取り巻く地域全体も望みません。)あらかじめ事業計画に撤退の時期も盛り込んでおくことが望ましいです。

onnanoko_bustup
この新事業はもう駄目ね…

neko_akire
残念ですが、これ以上がんばっても傷口を広げるばっかりですね…

onnanoko_bustup
でも危なかったわ。最初に撤退ラインを決めておかなかったら、たぶんまだいけるって考えていたわ。まだいけるって結論ありきで情報を集めれば、そういった情報はいくらでも集めることができるから。

neko_akire
そうですね。この損失はいたいですけど、幸いまだ致命傷ではないので、いつか取り戻すこともできますよ。

onnanoko_bustup
最初に事業計画を作っておいて本当によかったわ。



撤退の時期を明記しておくべき理由は以下のとおりです。


・追い詰められた時の判断力を信用しないで済むため


事業がギリギリの状況まで来てしまうと資金繰り等で文字通り忙殺されます。そうなると、考える時間や気力がなくなります。


ほとんど不眠不休で働いているときに、難しい判断を冷静に下せるでしょうか?


少なくとも、判断の精度は落ちると考えれらます。


・人は信じたいものしか見ないため

人は見たものを信じるわけではありません。信じたいものを見てしまうのです。


例えば、業績が明らかに悪くなってくると、「今は〇〇だから、もう少し頑張れば事態が好転する。」などと考えだします。そして、好転すると考えられる根拠を探し始めます。

しかし、冷静に考えて今までうまくいかなかったことが、同じことをやっていてうまくいく可能性は低いでしょう。


・事業を生き延びさせるための方法で傷を広げないため

また、無理に事業を生き延びさせるために、採算度外視で受注を取るケースも出てきます。

ほとんど利益が出ないけれども、資金繰りを回すために入金の早い案件に注力して、利益の取れる案件を断るなどといったことも行われます。


このような状況になると、いわゆる自転車操業に陥ってしまいますので、何のために事業をやっているかが分からない状況になってしまいます。


そして、仕入れなどに伴う未払金がたまっていくと、いよいよ止まれなくなってしまいます。

事業計画を作っておけば、もしここまでダメだったら撤退するという損切ポイントをあらかじめ決めておくことができます。


事前の想定なので机上の空論かもしれませんが、少なくともギリギリまで追い詰められて不眠不休で働いた後に下す判断よりは精度が高いはずです。


と、長々と書いてきましたが、結論は「事業計画マジ大事」ってことです。事業をするならほんとに必須です。


時間がないなら、日本政策金融公庫の創業融資のフォーマットだけでもいいので(A3で1枚分です。)埋めてみてください。


解説で出てきた用語・関連用語
経営
2019年1月14日

プロダクトイノベーション | 消費者に革新的な製品が届けられます

プロダクトイノベーション
プロダクトイノベーションとは革新的な製品を生み出す事をいいます。英語ではproduct innovationと表記されます。直訳してプロダクト(製品)のイノベーション(革新)といったイメージで捉えておくといいと思います。

さて、革新的な製品を作り上げるというのはどのようなイメージになるでしょうか?改善という言葉ではなく革新という強い言葉を使うぐらいですから、既存の製品やサービスにはない画期的なものであるはずです。

例えば、ポケットベルから携帯電話、携帯電話からスマートフォンといった風に、既存のモノやサービスとは異なるモノを作りだすようなイメージですね。

このプロダクトイノベーションが発生すると、消費者に届く製品やサービスが根本的に変わりますので、世の中に大きな影響を与えます。

これは、スマートフォンが存在していなかった頃の生活と、今の生活がどれだけ変わったかを考えてみれば理解できると思います。
  • 従来にない製品を生み出すイノベーションとは
このプロダクトイノベーションは従来には存在しなかった製品を作り出すことです。そして、従来には存在しなかった製品とは全く新しい製品を最先端の技術を活用して作り上げることのことのように思われます。

しかし、プロダクトイノベーションは別に最先端の技術が必要なモノだけではありません。以下、プロダクトイノベーションの類型について見ていきます。

1.技術型・新規型全く新しい技術を背景に製品を作り出すイメージです。このタイプがプロダクトイノベーションとして想像しやすい類型だと考えられます。

2.組み合わせ型技術自体は存在していたのですが、それを組み合わせることで新しい製品をうみすことができます。

そして、このタイプのイノベーションを生み出すために、企業は他社と連携をしたりしていきます。
このタイプもプロダクトイノベーションのイメージに沿うと考えられます。

3.顧客ニーズ型顧客のニーズに沿った商品を開発したら、プロダクトイノベーションとなったイメージです。

例えば、飲料を缶に詰めてどこでも飲めるようにした缶ジュースは、従来お店で買っていた飲料を気軽に飲めるようにしました。

また、従来はお茶は自宅で煎れて飲むものだったのですが、缶入りの緑茶やウーロン茶などが登場して外出先で気軽に飲めるようになりました。

一見するとそんなに最新技術が使われているわけではないのですが、顧客にとっては革新的に便利になっているのです。
  • プロダクトイノベーションでは最終製品やサービスが変わる
プロダクトイノベーションでは、消費者や顧客に届く製品やサービス自体が変わります。

類似の言葉であるプロセスイノベーションでは製品サービスはそのままに、企業内部のプロセスがかわるだけなのですが、ここが大きな違いとなります。

こちらは抜本的な生産性の向上に結び付くような、製造工程の革新や、物流の革新等のことを言います。 但し、こちらのイノベーションの結果、消費者の手元に革新的な製品やサービスが届くという事はありません。そのため、あくまで企業内部の革新であると言われています。

プロダクトイノベーションとプロセスイノベーションは、消費者の手元に革新的な製品が来るか否かで区別することができるのですね。

なお、プロダクトイノベーションにともなってプロセスイノベーションも発生する事があります。

新しい製品を効率的に作るために、従来の業務プロセスを改革すると言ったことが存在するためです。
  • 損益計算書の売上に効いてくる
また、このプロダクトイノベーションは、損益計算書上の売上を向上させる方向で効いてきます。

プロセスイノベーションが費用を削減して利益率を改善させる方向に効いてくるのと対照的ですね。
  • プロダクトイノベーション後の対応
このプロダクトイノベーションを発生させた後には、大きく分けて2通りの選択肢があります。

1.研究開発費の回収を急ぐ一つ目は、革新的な製品である事から比較的高額の価格をつけて早急に研

究開発費を回収するといった方法です。スキミングプライシングと呼ばれる考え方です。
比較的市場が小さい、もしくは製品ライフサイクルが短いと判断されるような場合はこの方法がとられます。

2.市場シェアの獲得を目指すもう一つは、なるべく安く提供して市場シェアを一気におさえる方法です。

比較的市場規模が大きい、もしくは製品ライフサイクルが長いと判断できるような場合は、この方法がとられます。

そして、作り続けているうちに製造原価が下がってきますので(経験曲線効果や規模の経済が効いてくる)、長期的に見て十分に儲けることができる可能性のある方法です。

解説で出てきた用語・関連用語
コンカレントエンジニアリング
プロセスイノベーション
技術提携
スキミングプライス
市場浸透価格
製品ライフサイクル
市場シェア
経験曲線
規模の経済
物流



経営
2019年1月13日

コモディティ化 | 原因と対策としてのブランド化が難しい理由

コモディティ化_001
コモディティ化とは製品が差別化できる要因(品質、機能、ブランド等)を失い一般的なものとなってしまい、消費者にとってはどこのメーカのものを購入しても大差がない状態になってしまうことを言います。

コモディティ化が進むと、消費者はどれを選んでも同じといった状態となるため、企業間の競争は価格競争が主なものとなります。その結果、低価格化が急速に進行します。

考えてみてください、ほとんど同じものが小売店に並んでいてワザワザ高い方を選びますか?消費者にどちらを選んでも同じようなものだと思われると、そういった状態となってしまいます。そしてこのような状態になるのがコモディティ化です。

そして、低価格化が進行すると、当然ですが利益が圧縮されてしまいます。論理的には超過利潤が得られなくなる水準まで価格が下がりますので、そんなにおいしくない市場、ついり儲からない市場となる訳です。
  • コモディティ化が進んでいる製品の例
コモディティ化が進行している製品カテゴリーの例として、家電やPCなどがあげられます。

たとえば、冷蔵庫では食品を冷やして保存するといった主要機能についてはどこのメーカのものでも同じと言えます。

またPCでは、どこのメーカのものであっても同じソフトウエアさえ導入すれば機能面の差異はほぼありません。

消費者にとってはどれを選んでも、最低限の機能は持っている。また、コモディティ化が進んで安く購入できるといったことはとても良いことです。しかし、企業経営の面では低価格化が進行するとおいしくないので良くないとされるのです。
  • どうしてコモディティ化がすすむのか?
コモディティ化の推進要因として、以下のような点があげられます。

1.モジュール化の進行
製品を構成する部品がすでに市場に存在・流通しているような場合、どのメーカも同じようなモジュールを組み込んで製品を構成するため性能の差がつけにくくなります。

PCでいうと、CPUやHDD、メモリー等をPCメーカはわざわざ自社開発せず、市場から調達して組立をおこないます。そのため、どこのメーカのものであっても、同じCPUを積んでいれば同等の処理速度を実現できるのです。

2.顧客の要求水準の頭打ち
製品の機能・品質の向上に伴い、どの製品でも顧客の求める機能・品質の水準を超えるようになるといった場合が考えられます。

冷蔵庫は食品を腐らずに保存できれば十分と考えている顧客に、デザインやドアの開閉のしやすさで訴求してもなかなか差別化は難しいと考えられます。

この流れによって近年はジェネリック家電と呼ばれる必要十分な機能を持った家電が提供されています


3.みんなが真似する(できる)から
良いモノはすぐに真似をする人が出てきます。これは製品やサービスでも同様です。

模倣を避けて差別化要因を維持するために、特許権等の知的財産権を確保するのですが、特許権は20年しか権利として認められていませんので、特許が切れた後は模倣を防ぐ術が少なくなります。

また、競合他社も必死ですので、他社の特許権に抵触しないように同様の機能を実現するための開発も行われます。

そのため、すぐに市場にその製品やサービスの類似品があふれてしまうのです。
  • 対策はあるのか
コモディティ化が良くない現象であると捉えるのならば、対策も考えられます。

1.ブランド化
よく言われる対策は、ブランド化です。製品やサービスに名声を確立し付加価値(多分に心理的な付加価値となります)を訴求できれば、競合品と区別することができるのでコモディティ化を避けることができます。

とはいえ、このブランド化は安易に言われていますが茨の道です。ブランド化が簡単にできれば誰も苦労しませんし、非常に大きなコストがかかります。

また、コモディティ化するような商品は世の中にすでにあふれているため、単なる差別化を通り越してブランド化するといった切り口を取ろうと考えると、必然的に客層を絞り込む必要があります。

例えば、コモディティ化を避けてブランド化するために、食塩を「35歳男性専用食塩」などと打ち出すことは考えられます。

35歳の男性が好むモノを調べ上げ、その嗜好に合った食塩で訴求するイメージです。(例えば、35年前に精製した食塩、35億年前の地層から掘り出した岩塩などのストーリーを付与して行く感じです。)

ただし、このようなアプローチを取る場合は、逆にいえば35歳男性以外のターゲットは追いかけないことを意味します。

そのため、既存の製品はそのままにして別の製品ラインとして打ち出す事となるでしょう。(既存の製品はコモディティ化したままですが、既存製品をブランド化するためには、小売店の売り場から排除される等の大きなリスクを負う必要があるため現実的ではないでしょう。)

2.顧客とコミュニケーションを密にする
最初からブランド化を考えるのではなく、顧客に製品やサービスの魅力を伝えるコミュニケーションを密に取るところから始めると追加のコストがあまりかかりません。

コモディティ化している製品やサービスであっても競合他社と違う何らかの特徴があるはずです。前述の食塩であっても、製法が違うとか、原材料を確保した場所が違うなどがあるはずです。

そして、その特徴を適切に伝える努力を行えば、多少は効果が出てくると考えられます。例えば、福井県出身の人なら、福井の海で作った塩といわれれば愛着がわくはずです。

このような些細なことでも良いのでしっかりと顧客とコミュニケーションを取っていく必要があるのです。


このまんがでは4コマ目で言われている通り同じパン屋さんから仕入れている焼きそばパンを、学食と購買で売っています。このように同じものであったり、品質に大差のないものは価格競争が主なものとなってしまっています。

そのため、 1コマ目で学食のおばさんが値下げを断行した際、3コマ目で購買を運営している販売クラブの面々も焼きそばパンの値下げで対抗しています。

関連用語
追随価格
レッドオーシャン

経営
2019年1月12日

自己成就予言 | 自分でいった事がそのまま実現するという心理的な効果があるのです

自己成就予言_001
自己成就予言とは、予言されたことを実現するような行動を意識してあるいは無意識に取る事によって、予言通りの結果が生じるという現象のことを言います。

予言されていた状況が起こりそうだとみんなが考えることによって、そのような予言がなければ発生しなかったような事が起こるといったイメージです。

例えば、PPMで負け犬という事業部に位置付けられて人々がやる気を失って本当に負け犬になってしまうといった現象が生じると言われています。

または、ある新入社員を「彼は10年に一人の逸材だ」と言い続けることについても同じような効果があるかもしれません。

周囲もそういった目で彼を見るようになり、難易度の高い仕事をどんどん任せるようになるとします。言われている新入社員自身も、やる気を出してその仕事をどんどん成功させていくとします。

その結果、本当に「10年に一人の逸材」になるかもしれません。

人の心理にはこういった傾向があるため、人を評価する言動には気を付けないとならないのですね。
  • 企業を取り巻くマクロ環境に影響します
この自己成就予言ですが、経営には企業を取り巻くマクロ環境を通じて影響します。

例えば、影響力のあるメディア等が不景気だとあおり立てれば、消費者の財布のひもが固くなって本当に不景気になります。

また、安く商品を提供するお店がいいお店だといった空気感をずっと作っていたら、デフレ傾向のままでした。(デフレ脱却のためにリフレ政策をとっていたのですが、世間の空気感の方が強いらしく、いまいち効果を発揮していません。)

公務員がお給料をもらいすぎていてけしからんとみんなが批判したら、民間の給与もつられて下がってしまいました。

国税庁「民間給与実態統計調査」によると、2000年の平均年収が男女平均で461万円、15年後の2015年が420万円です。

このように予言は結構実現されるのです。
  • 個別企業も油断できない
製品ライフサイクル仮説といった、モノやサービス、事業の成長と衰退を生物に例えて説明する理論があります。

直感的に理解しやすいためか結構浸透しているのですが、この理論に基づく自己成就予言には注意が必要です。

例えば、「この事業はもう成熟していているから」といった説明が企業内で共通認識となると

成熟している→大きな成長は見込めない

といった風な予言となってしまいます。そして、実際に事業は大きく成長できないといった事が起こるのです。

しかし、本当に事業が成熟しているかどうかは誰にもわかりません。本当は、自己成就予言が効いて、無意識に営業活動や技術革新などにブレーキをかけていたことから成長が阻害されているのかもしれません。

例えば、経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンディブ」という報告書によると我が国と米国・欧州の企業では、以下のように利益率に差がついています。もちろん規模の違いや重視する経営指標の違いもありますが、利益率に差がある事は厳然たる事実です。

カテゴリー ROE
日本・製造業4.6%
日本・非製造業 6.3%
米国・製造業 28.9%
米国・非製造業 17.6%
欧州・製造業 15.2%
欧州・非製造業 14.8%

出所:「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト (伊藤レポート) 平成26年8月 から抜粋

このような大差をつけられる理由の一つに、我が国の利益率はこんなもんだといった自己成就予言の罠があるのかもしれません。

解説で出てきた用語
カラーバス効果
リフレ
ROE

キャンペーン記事:経営マンガマラソン   
経営
2019年1月10日

クロスSWOT | SWOT分析の結果をさらに活用するのです

クロスSWOT
クロスSWOTとは、SWOT分析で抽出した企業内部の強み(S:strong)、弱み(W:weaknesses)、企業外部の機会(O:opportunities)、脅威(T:threats)といった情報を元に、自社の戦略を探っていくという方法の事をいうのです。

簡単に言うと、単なる情報整理であるSWOT分析から戦略策定につなげるための方法論です。

さて、この手のフレームワークは抽象的なことを沢山書いてもわかりにくいので、具体的に例を挙げていきたいと思います。
  • 内部環境と外部環境を掛け合わせます。
さて、クロスというぐらいですから、組み合わせで考えるのですが、どのように組み合わせるのでしょうか?

SWOTというぐらいですので4つの要素から2つの組み合わせを作るのでしょうか?その場合、ダブりを排除して、6通りを考えるのでしょうか?(この場合すべての組み合わせは(SW、SO、ST、WO、WT、OT)となります。)

でも、自社の強みと弱みを組み合わせた戦略、外部環境の機会と脅威を組み合わせた戦略などと言っても意味が分かりませんよね?

その為、組み合わせると言っても、内部環境であるS、Wと外部環境であるO、Tの組み合わせのみを考えるのです。この場合(SO、ST、WO、WT)の組み合わせのみを考えます。
クロスSWOT
  • どのような方向性を取るべきか
さて、上の図表で、各組み合わせの意味を示してみました。

S×O、つまり強みと機会を組み合わせて、自社の強みを活かして機会をとらえる方向性。色を付けて示した通り、重要な考え方です。
 
S×T、つまり強みと脅威を組み合わせて、自社の強みで脅威を克服するという方向性。

W×O、つまり弱みと機会を組み合わせて、自社の弱みではあるが機会があるので弱みを克服して機会をとらえるために何とかするという方向性

W×T、つまり弱みと脅威を組み合わせて、自社の弱みと脅威の組み合わせから発生する問題を克服するという方向性です。

経営資源に強い制約がある組織としてのセオリーとしては、S×Oつまり強みと機会を組み合わせる方向性を目指すという方法です。

弱みを克服するために限りある経営資源を費やすよりも、今持っている強みを活かす。さらに、外部環境の脅威に対応するために経営資源を費やすよりも、機会に対応することに集中するという考え方です。

もちろん、致命的な弱みや、脅威をそのままにしておくわけにはいきませんが、大きな方向性としては、S×Oが良いという事は覚えておくと良いと思います。
  • クロスSWOTは実務的か
このクロスSWOTが実際に機能するためにはいくつか前提条件があります。その前提条件を見ていきます。

1.しっかりとSWOT分析をする事
よく、このSWOT分析にあやふやな意見が混ざっていることがあります。

例えば、「店長の接客力が高い」といった強みを挙げたとして、この強みは本当に強みなのでしょうか?

言い換えれば、何を根拠に接客力が高いと言っているのでしょうか?根拠が示せるのならば、本当に強みだと考えられますが、そうでないなら単なる感想でしかない可能性があります。

そして、単なる感想の羅列を元に経営戦略を立てることは、危険ですので気をつけないといけません。

また、強みと弱みの切り分けもあやふやになりがちです。例えば、上の例で「店長の接客力が高い」といった事が本当だとしても、それが強みであるかどうかは不明です。

例えば、人を極力配置せずに徹底したローコストオペレーションを志向する企業の場合、店長の接客力は特に重要な要素にはなり得ません。

このように、SWOT分析自体がちゃんとやろうと思うと難易度の高い方法ですので、しっかりと取り組む必要があるのです。

2.論理立てて戦略を作ること
強みと機会を掛け合わせて戦略を構築するのがこのクロスSWOTですが、機会にだけ目を奪われて戦略を構築する例があります。

例えば、地域に子育て世代が増えると言った機会を見いだしたとします。

この場合、やりがちなのは、「地域に子育て世代が増えるから、子育て支援のお店をやる」といった戦略構築です。

一見すると、何の問題もないように感じられますが、自社の強みがこの戦略では言及されていません。子育て支援にかかわるような強みがあるならば、妥当な戦略と考えられるのですが、自社の状況が不明なので、この戦略がいいかどうかは判断できないのです。

また逆に、自社の強みだけに目を向けて戦略を考えると行った事もやられがちです。クロスSWOTがクロスしている意味を再度確認して、戦略構築を行う必要があるのです。

3.欲張りすぎ
また、クロスSWOTは戦略を絞り込む方向には向きません。強みと機会を掛け合わせることから、いくらでももっともらしい戦略を構築することができます。

その結果、あれもこれも捨てがたいと、あたかも大企業が市場全体を狙うような戦略を作りがちなのです。

しかし、戦略とは「戦いを略す」と書くように、戦わないことを決める事が肝です。そのため、一番の強みと、一番の機会を掛け合わせるといった気持ちで戦略を考える必要があるのです。

  • どこで戦うかを決めてからが事業計画
さて、このクロスSWOTで戦略の方向を決めてから、マーケティング戦略等に落とし込んでいきます。

ただし、小さな企業の新規事業等の相談では、やりたいことがすでに決まっていてそれを実現するための方策の相談といった切り口が多いのが現実です。

その場合は、クロスSWOTは参考程度になってしまうのですが、この方法だけが正解ではなく、戦略の方向性に示唆を与える方法でしかないため、「クロスSWOTの結果貴社はこうすべきだ」などと言って自分の考えを押しつけないようにしましょう。


こちらもご参考に
経営戦略の実務的な構築方法
アンゾフの成長ベクトル
経営
2019年1月10日

貸しはがし | 融資を引き上げるという禁じ手ですが、景気が悪くなると横行するかもしれません

貸しはがし_001
貸しはがしとは、金融機関が融資を行っている資金を回収にかかる事を言います。

貸し出しを渋る、貸し渋りよりも一歩進んで、貸し出ししているお金を無理に回収するというニュアンスです。

例えば、貸し出しの期限が残っているにもかかわらず、残金を無理やり返済させるといった行為です。

この貸しはがしは、結構ひどい感じがしますよね。というか、このような行為をされた企業にとっては命取りになりかねない、非常に悪質な行為です。
  • 金融機関側の都合
金融機関側も別に慈善事業ではないため、自社を守るためにこのような行為に及ぶことは当然考えられます。

しかし、貸しはがしが致命傷となって企業の倒産を誘発すれば、さらなる景気悪化を招く可能性もありますし、連鎖倒産が発生する可能性もあります。

このように、貸しはがしとは社会全体に大きな悪影響を与える行為です。
  • 期限の利益で借り手は守られる
融資を受けた場合、本来ならば、しっかりと返済をしていれば期限の利益があるため、一括返済を求められることはありません。

ただし、一度でも返済が遅れると期限の利益が喪失するといった契約となっているのが一般的ですので、一括返済を求められても本来は文句を言うことはできません。

まずは、契約書上で期限の利益が喪失する原因を把握しておき、それに抵触しないようにするのが身を守るための一つの方策です。

と、法律で守られてはいるのですが、実際に期限前に一括返済を求められたりすることが横行していました。

とはいえ、法的には応じる義務のない内容なので、銀行が何を言ってきても不当な要求だと突っぱねることはできたのです。

  • 貸し剥がしが横行した時代背景
バブル崩壊後の経済危機の時代、金融機関も追い詰められていました。

金融機関は国際業務を行うために自己資本比率を一定に保つ必要があったのですが、不良債権(要するに返ってこないと見做された債権)がたくさんあって、その部分も考えると自己資本比率が一定部分を割り込んでしまう危険性があったのです。

金融業の健全化を目的として国が金融検査マニュアルを運用していたのですが、取引先の財務状況によっては、貸しているお金を不良債権として損金処理しなければならないと言った規定がありました。

そこで登場したのが、貸し渋りと貸し剥がしです。

例えば、全額を損金としなければならないとされた企業に1億円貸している場合、1億円は貸している限りずっと自己資本から差し引く必要が出てしまいます。

しかし、1千万円でも回収して、後は潰してしまえば少なくとも1千万円は自己資本に算入することができます。

このような事から、貸し剥がしをするインセンティブが金融機関にはあったのです。

・不景気の兆候が見えたら気をつける
といった貸し剥がしですが、今は一応過去の事となっています。しかし、不景気の兆候が見えてきた場合、また貸し剥がしが再燃するかもしれません。

そのときに備え、企業の経営者は

1.適正な利益を確保する事業を経営すること

2.過度に借入金に依存しない事業を構築すること

3.条件が有利なときに借り入れを起こすなどして、現金・預金を手元に持っておくこと

4.資金が必要な局面を理解すること

を心がける必要があります。特に3.の資金が必要な局面ですが、売上増加の局面でも運転資金として資金需要が増えると言った事実を抑えておくだけでも大分立ち回りが変わります。

解説に出てきた用語
期限の利益
運転資金
経営
2019年1月9日

オペレーショナルエクセレンス | 日々のオペレーションを磨き上げることで競争優位にするのです

オペレーショナルエクセレンス
オペレーショナルエクセレンスとは、現場の力つまりオペレーション力が卓越しており、競争優位の源泉になるほどに高められているような状態を示す言葉です。英語ではoperational excellenceと表記されます。

イメージとしては、常により良いオペレーションを追求するような企業文化が定着しており、継続的にオペレーションが改善されていくような企業になります。

例えば、常により良いオペレーションを実施する事を意識しているようなパンを製造し販売しているようなお店があったとします。

このお店は、常にお客様に感動を与えるような接客をする事を目指しており、また、お客様が感動するような品質のパンを提供することも目指しています。

そして、そういった事を実現するため、無駄のない動きによるコスト削減、品切れによる機会ロスや作りすぎによる廃棄ロスを徹底して排除するような経験に裏付けられた需要予測、お客様の過去の要望を全社で共有してより良いサービスの開発などといった活動が行われています。

このお店は、市場を細分化してニッチな客層を狙うとか、規模の拡大を追求し規模の経済ローコストオペレーションを実施するといった事ではなく、日々のオペレーションを洗練させていくという事が強みにつながっています。

そして、このように日々のオペレーションが素晴らしい事が経営資源となっており、コアコンピタンスとなっているような状態をオペレーショナルエクセレンスと呼ぶのです。
  • 中小企業においては
中小企業においては、機械装置の導入による抜本的な生産性改善が難しいこともあるため(お金がかかりますからね)、日々のオペレーションを磨き上げることで競争優位を作り出す方向を志向することとなります。

どのような業務であっても、工夫の余地はあり、5分かかる業務を3分でできればそれは地味ですが、大きな競争優位の源泉となります。

当たり前のことを徹底的にやるといた言葉がありますが、文字通り徹底的にやれば競争優位となり得るのです。
  • とはいえ技術革新も取り入れる
とはいえ、日々の改善に拘泥すると大局として見ることを忘れがちになるので注意が必要です。

例えば、機械を止めずに稼働させ続けて生産性を上げるノウハウを磨き上げている企業があるとします。

定期的に監視をおこない、機械が停止をしていたら素早く復旧させることで製造ライン全体の稼働率を上げると言ったノウハウを持っている企業で、そのことから低コストで競争力を持っているようなイメージです。

しかし、現在の技術を活用すれば一つ30円のセンサーをいくつかつけるだけで同じ事ができるかもしれません。機械が停止した瞬間にセンサーで知らせれば監視する人は不要になります。

この意味で、センサーを一つつければ機械の監視業務が不要になるといった可能性は常に検討する必要があるのです。
  • 技術革新も取り入れたオペレーショナルエクセレンスを追求する
このような、技術革新と通常業務の徹底した改善は相反しません。上記の例でセンサーを取り入れたならば、その前提条件でさらに業務を磨き上げていけばいいのです。

もしかしたら、機械の停止の兆候をセンサーで判断することができるかもしれず、そのような事になればもっと大きな生産性の改善が達成でできるのです。

経営
2019年1月9日

暗黙知 | 言葉にできないノウハウなので共有が難しいのですが、組織全体で活用する必要があります

暗黙知_001
暗黙知とは、人が持っている知識のうちで、言葉で表すことができない知識の事を言います。

文字通り暗黙の知識です。例えば、ベテランの職人さんの持っている非常に高い技術で言葉では表現できないような「技」が暗黙知のイメージです。

言葉で表現することが難しいので、「技術は見て盗め」と言われていたのですね。
  • 暗黙知の具体例
ではどういった知識が暗黙知なのかを一緒に考えてみたいと思います。

突然ですが、あなたは泳げない人に、泳ぎ方を言葉で説明できますか?これは非常に難しいと思います。

このように言葉では伝えられない(伝えにくい)事を暗黙知というのです。
  • 企業の暗黙知
企業では、仕事の進め方などたくさんのノウハウがあると思います。でもそのノウハウをちゃんと新人さんに伝えているでしょうか?

OJTと言って、「見て覚えてね」みたいな研修を行っていませんか?そうではなく、企業が持っている暗黙のノウハウを、マニュアルなどの形式知に落とし込むことが大切だと言われています。
  • 暗黙知の承継は大変です
ノウハウとは、多くの場合暗黙知となっています。特に、職人芸的な長年の経験に裏付けられたノウハウ等は暗黙知となってしまいます。

このことから、中小企業においては、技術の承継が課題となってしまっています。

言葉にできないから伝えられず、伝えられないから、承継できないといった問題です。このことに対処するために、OJTと称して教育訓練を技能を引き継ぎたい人に対して施すのですが、言語化できていないので「技術は見て盗め」的な教育訓練となってしまうのです。

しかし、このような方法では素早く技術を伝えることは難しいため、技能の承継に時間がかかってしまいます。そのため、計画を立てて定期的に若い人を採用し、技能の承継を行っていく必要があるのです。
  • そんな時間がない場合
しかし、そのような計画を立てて定期的に技能の承継を行うといったのは残念ながらすべての企業ができるわけではありません。

場合によっては、企業の強みが。この道50年のベテラン従業員【70歳】しか持っていない技術といった状況になってしまいます。

この場合、そのベテラン従業員が何らかの形で組織を去ってしまった瞬間にその企業の強みが喪失してしまいます。

そうならないように、最低限のマニュアルの整備等で暗黙知を形式知(つまり見えるノウハウ)にする努力をしていく必要があります。

現在では、様々な記録技術が利用可能ですので、不完全ではありますが技術を活用している風景を動画で撮り、様々なセンサーを利用して微妙なノウハウを数値化するといった事をしておけば最低限の情報は残せます。

もちろん、技術を持っている人に手順書やマニュアルといった形で言葉にしてもらう方が微妙なコツも盛り込めるとは考えられますが、取り急ぎ動画を撮っておけば全くマニュアルがないよりも良い状態となります。

その上で、直接OJTで教えてもらうなど工夫をすることで技術が失われることを避けることができます。


関連用語
形式知
OJT
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