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バックエンドピルとは敵対的買収に対抗するための方策の一つで、ある一定の条件を満たした際に、既存の株主に対して持ち株を現金や債券などに交換できるようにする権利を与えることを言います。その結果買収者にとっての買収コストを高めることができ、抑止効果を狙うことができるのです。Back-end pillと表記します。

■ポイズンピルとバックエンドピルの違い

いわゆるポイズンピルの一種ですが、ポイズンピルを用いることができない場合に、このバックエンドピルの活用が検討されます。

ポイズンピルは既存株主に時価より低い一定価格での新株予約権を与えるという、とても強力な買収な買収抑止効果を発揮しますが、その性質上、新株式を発行する余地がない場合には使うことができません。(参考:授権資本

ポイズンピルを使うことはできないが、敵対的買収から企業を防衛したいと考える場合に、このバックエンドピルの活用が検討されるのです。

<ポイズンピルとの違いの簡易まとめ>

比較項目 バックエンドピル ポイズンピル
発動条件 買収者が株式を取得したとき 買収者が株式を取得したとき
効果 買収コストを高める 持株比率の希薄化(経済的打撃)
制限 授権資本が枯渇していても使用可 授権資本の範囲内でないと不可
既存株主に与えるもの 金銭的リターン 新株予約権


■買収コストが上がる

敵対的な買収者は基本的には買収から何らかの形で利益を得ることを目的としています。その利益は、買収したのちに企業をバラバラに解体して売却することで実現することであるかもしれませんし、買収後に経営をテコ入れし、企業価値を高めることかもしれません。

その他にも、買収者の既存の事業とのシナジーを発揮して利益を上げる事かもしれません。

しかし、いずれの方策で利益を狙うにしても、買収価格以上の利益を上げることが必要となります。そして、買収価格が上がれば、得られる利益の額が同じでも買収案件の魅力は変わってきます。

例えば、1億円の利益を得られる企業買収を5千万円で実施する事ができるならば、その投資は前向きに検討されると考えられます。しかし同じ1億円の利益を得られる企業買収をしようとしたとき、相手側がバックエンドピルを活用して9千万円のコストがかかるようにしていたらどうでしょうか?

確かに利益は得られそうですが、買収に伴うリスクも存在する中で1千万円の利益を狙いに行くために買収をするかどうかは前者よりも慎重に検討することが必要となってきます。

このように、バックエンドピルは買収へ対しての抑止力を発揮する方策なのです。

■バックエンドピルの導入について

日本企業では一般的ではないものの、昨今の不安定な経営環境において導入検討例や類似の防衛策が議論される場面も増えています。


とくにアクティビストの動きが活発な上場企業では、株主還元と経営の安定の両立が求められる場面で選択肢となります。

■会社はだれのもの?

さて、このバックエンドピルは名目上株主の投資を保護するという大義名分があります。いっけんすると「株主保護」を大義名分にしていますが、実質的には経営者の保身策になりかねないリスクもはらんでいます。

例えば、敵対的な買収者が企業を買収した場合には経営が改善され企業価値が高まる見込みが高い場合はどうでしょうか?

その場合、株主にとってバックエンドピルでいくばくかのお金をもらい(抑止力ですから実際に発動されるケースは少ないでしょう)現状の相対的に経営能力が劣っている経営者に経営を任せ続ける事が正当化できるでしょうか?

言い換えれば、現経営陣の保身のためにこのような方策を用いることが株主の利益につながるでしょうか?明確な答えは出ませんが、買収防衛策には株主の本来的な利益と逆行する場合があると言った、疑問が投げかけられるのです。

■その他の買収防衛策

ホワイトナイト:有効的な第三者に買収を(多くの場合経営陣が)依頼
クラウンジュエル:重要事業の切り離し。(自爆型の防衛策)
パックマンディフェンス:逆に買収をかける方策

買収防衛策は株主の利益という大義名分と現経営陣の保身という本音がぶつかり合う領域です。中小企業や非上場企業でこのような施策を考えることはあまりありませんが、このようなことも考えられると知っておく価値はあるでしょう。