遺言信託
遺言信託とは、遺言の執行者を信託銀行に指定し、相続が生じた段階で、その信託銀行が遺言の通りに財産の分割等を行うサービスです。

サービスですので、遺言の記載通りに財産の分割をするだけではなく、それに関係する各種手続きまで行う形になります。
 
例えば、近い将来相続人になるであろう者が障害を抱えていたり、幼少であったりなどの理由で管理能力に乏しい場合に、遺言者が信託銀行に相続財産を委託することを考えたとします(誰かに管理を委託すれば安心ですからね)。

この場合、その財産の管理・運用を行って貰うことで、自分の死後も相続人の安定した生活を確保することができるのです。

被相続人の立場からすると、非常に幼い相続人にそのまま財産を相続させるよりも、しっかりとした組織がバックアップしてくれたほうが安心できますよね?
 
このように、遺言信託のメリットは、信託会社という組織に依頼することが挙げられます。

組織に依頼することになるので、遺言書の管理や執行が数十年先になっても比較的安心であること(弁護士に依頼するとその弁護士が途中で亡くなる可能性があります)や、資産運用や税金対策などについて専門的アドバイスが受けられることなどが挙げられます。

もちろん、遺言はこのようなサービスを利用しなくても、有効です。しかし、せっかく遺言を残したとしても、所定の様式に沿っておらず、無効となってしまったり、不明瞭なことが書いてあったがために被相続人の遺志が伝わらないことがあります。

遺志が伝わらないくらいなら良いのですが、相続が争族になってしまっては大変です。そのため、こういったサービスを利用したり、最低限、公正証書として遺言を残しておきたいものです。

なお、財産を相続する人(生きている人)を相続人、財産を相続させる人(なくなった方)を被相続人といいます。

■遺言信託の費用と注意点

遺言信託はこのようにとても安心できる仕組みですが、当然費用もかかります。信託報酬や執行手数料など契約時に数十万円がかかり、その後執行時に遺産総額の数%程度かかります。

このように、信託銀行などに依頼すると手数料や管理費用などもかかりますので、どのサービスを使うか、自分の希望をどうやって実現させるかをよく考えておく必要があります。

なお、遺言信託があっても相続時に単純承認(全部引き継ぐ)、限定承認(プラスの財産の範囲で引き継ぐ)、相続放棄の選択肢を制約する事にはなりません。

遺言信託があっても多額の借金がないとは保証されないため、相続人は選択する事ができるのですね。

例えば、父の莫大な財産を信託銀行が管理してくれていたが、それ以上の借金もあったなんてことも起こり得るのです。

この意味から遺言信託は被相続人の意思を残す仕組みでありますが、相続人(引き継ぐ人)はその意志には拘束されるものではないのです。