アメーバ経営
アメーバ経営とは、企業内に小集団を作り、その小集団ごとに時間当たりの採算性の最大化を図るという経営手法のことを言います。京セラの稲盛会長が確立した経営手法です。
 
企業内に小集団を沢山作り、時間当たりの採算制で評価するというのがポイントとなります。まさに、アメーバのような小さな組織を沢山作るといったイメージですね。

そして、時間当たりの採算性(売上-費用=利益)を労働時間で割るという労働生産性的な指標で管理していくというイメージです。

また、このアメーバ―という小集団は一つ一つがプロフィットセンターとなっています。

■アメーバ経営の限界

アメーバ経営は小集団毎に数字をはっきりさせる手法です。そのため、分権的な管理ができ、素早い意思決定や現場の自主性を高いレベルで引き出すことができます。

しかし、どのような制度出会っても開発された当時の理念のまま動き続けるのは難しく、次のような課題も指摘されています。

■部分最適とその例

1つ目は、部分最適化が発生するというものです。これは分権的な組織管理を行うと必ずと行っていいほど弊害として現れるものです。具体的には、会社全体の利益を追求するのではなく、自チームの利益を最大化する動きをするといったものです。

例えば、短期的に異動を繰り返す店長であっても、洋服屋さんなどでは本来はお客様が似合っていない商品はお勧めせずに、長期的な信頼感を構築すべきです。

しかし部分最適を図るならば、自分が店長の間の売上が最優先ですので、お客様に全く似合っていないことが明らかでも無理やりおすすめして売ってしまうのが自分にとっては利益になります。

このような部分最適を抑えるための仕組みも一緒に実装する必要があるのですが、長く続けた仕組みだと形骸化していってしまうのです。

■短期志向

2つ目は短期志向に陥るということです。労働生産性が成果指標ならば、短期の労働生産性向上に繋がらない研究開発や教育訓練は軽視されるリスクがあります。

これも、全体最適の観点ではなく部分最適の一例になってきています。仮に人材が本社部門から供給されるならば、その人材を育てるのではなく、成果があがる仕事だけにアサインし(長期的な育成は度外視し)生産性を最大化させるような運用です。

■運用が難しい

上記のような弊害をさけようとすれば、どうしても成果指標が複雑にならざるを得ず、その収支計算の複雑さや責任範囲の適切な設定など、導入や運用コストが高めになると言った問題もあります。

そのため、稲村和夫氏というカリスマ経営者のリーダーシップが働かない京セラ以外の企業では制度の運用が難しく、結果として形骸化しかねないと言った指摘もあるのです。

複雑な制度を運用するためには、皆が制度の趣旨を理解し尊重するなどの組織文化が求めらたりするのです。

■デジタル時代のアメーバ経営

この考え方をデジタル技術を活用して運用するというアイディアもあります。

従来の紙ベースの収支報告ではリアルタイムに各アメーバ(小集団)の業績を把握することは難しかったのですが、現在の技術水準でBIツールなどを使うことでリアルタイムで、各チームの利益や掛かっている工数、そして時間あたりの生産性を可視化することができます。(とはいえ、データ入力のための工数もかかるため、何処まで精緻に管理するかの設計は必要ですが)

このように、部門横断の比較も、迅速な意思決定も容易となり、分権的な全員参加経営も維持しやすくなりますが、単純な数字競争に陥るリスクも大いにあるため、バランスを取るための経営管理が重要となってきます。