経営の執行と監督の分離
経営の執行と監督の分離とは委員会設置会社における企業統治体制を示した言葉です。経営を執行する人とそれを監督する人が分離、つまり独立して別々にいるという事を示しています。

さて、「経営を執行する人?それって取締役会で決めるんだよね?」と思われる方もいるかもしれません。

しかし、委員会設置会社においては、経営を実際に執行するために執行役という特別な役職を設けており、取締役会で決まった事項を執行することが求められています。

つまり、取締役会で決まった(経営についての事項)を実際に執行するのが執行役というわけです。

という事は、経営を実際に執行するのが執行役で、その人たちを監督するのが取締役会と言い換えることが出来ますよね?

(例えば、パンを仕入れてきて売るという事を決めた後、実際に他の人たちにその業務の執行を任せた場合、当然、それが上手く執行されているかを監督しますよね?)

このように、委員会設置会社では経営の執行と監督が分離しているという事ができるのです。そして、そのような状況を示した言葉が『経営の執行と監督の分離』というのです。

所有と経営が分離したり、経営について考えるのは大変ですね。 

■経営の執行と監督を分けるメリットと課題

ではなぜ、経営の仕事を実際に行う人と、チェックする人を分けるのでしょうか?これはいわゆるガバナンスの強化をもたらすというメリットがあります。

経営の執行を担う人が大胆な意思決定を行った場合、チェック機能が働かないと間違った方向へ行ったときに歯止めが効きません。

しかし、監督する人が入れば、株主だけでなく、株主以外のステークホルダーの利益も守っていくことができます。内部統制の要素として重要なのですね。

例えば、生徒が部活の練習メニューを自分で考え自分で実施する場合を考えます。この場合、自主性が備わってとても好ましいことではありますが、誰かが監督しないとトレーニング理論に従った科学的な練習になっているかどうかわかりませんし、時には危険な練習メニューを組み込んでいるかも知れません。そのため、監督するための顧問の先生が必要なアドバイスや指導を行うのです。

他方で、この執行と監督を分けることは本質的にはブレーキを組み込むこととなります。そのため、経営のスピード感が鈍化したり、意思疎通が上手くいかないと執行側、監督側、相互に不信感を招くと言ったリスクも存在しています。

そのため、バランスを取った制度設計が重要なのです。

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