内部留保_001
内部留保とは、企業活動の結果得られた利益の中から社外に流出した分を除いた残りの部分の事を言います。

ここで、社外に流出した部分とは、租税の支払とか配当、役員賞与などが該当します。

と、難しく書いていますが、簡単に言うと「会社が儲けたうち、社内に残した部分」の事です。

■内部留保って現金なの?

さて、「儲けた中で社内に残した部分」というと、「それって現金なの?」って思われる方もいるかもしれません。

社会人でも誤解しがちの内容です。おそらく、『内部留保→社内に残した儲け→金庫の中に現金を入れておくイメージ』といった連想をしている人もいると思います。(経営マンガの中の人も昔はそんな風にイメージしていました。)

そのため、「内部留保が厚い企業は(現金を沢山持っている企業だから)、不況になっても雇用を維持する事が求められる。(だってお金を沢山ためているんでしょ?)」といった意見が良く出てくるのです。

でも、ざっくり言えば、「内部留保」とは会社が儲けたお金のうち、配当や税金などに使わず社内に残った部分のことです。

ではその「残ったお金」は、いま現金で金庫に入っているのでしょうか?答えはどうでしょうか?現金を沢山もっているって本当でしょうか?

答えは。。。「わからない」のです。

■内部留保と現金は一致しない

企業の利益は、負債と合わせて資産として投資されています。

たとえば現金のまま持っていることもあれば、機械を買っていたり、工場を建てていたり、在庫として仕入れていたりします。また、売上債権(売掛金など)として取引先に貸し付けているかもしれません。

つまり、現金で残っているとは限らず、すでに別の「資産」に形を変えて使われていることが大半です。

よくある誤解として、「内部留保があるなら社員の給料を上げられるはずだ!」という声がありますが、実際には資金がすでに運用済みのことも多く、そう簡単に使えるものではないのです。

■内部留保は貸借対照表の右側にある

会計の世界では、貸借対照表という帳簿で、企業の財政状態(一定時点の財産や負債の目録)を記録します。

この中で「内部留保」は貸方(かしかた)、つまり会社がどこからお金を得てきたか?を示す「資金の出どころ」として記載されます。

この図を見てください
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貸借対照表の貸方(右側)には「資金の調達源泉」って書いてありますよね?

内部留保の額というのは繰り返しになりますが、純資産(資金の出元が自前のお金)として貸方(右側)に記載されます。

そのため、「この会社は1億円の資産があって、そのうち3千万円は自己資本です。」という事はできますが、その自己資本がどうやって運用されているか?は分かりません。

例えば、あなたが自己資本の100万円と借りてきた(他人資本の)100万円を合わせて200万円を使ってお店を始めたとします。この時、お金を借りた人がやってきて、「うちの100万円は今どうやって使っているの?」と聞かれても困りますよね?

このように、内部留保も同様で、企業の資金の調達源泉であるのは確かなのですが、今現在、何に使われているかは分からないのです。

その為、内部留保が100億円あっても、それは工場や店舗として投資されており、金庫の中にはほとんどお金がないかもしれません。

■お子さん向けの説明

例えば、お小遣いをもらった子どもが全部使わずに机の引き出しに貯めていたとします。

でもそのお金でマンガを買ったら、現金はなくなります。

でも仮に財産目録(貸借対照表)を作ったら、お小遣いで買ったマンガが(同額の)資産になるので、内部留保は減らないのです。

その際に、「内部留保は残ってるはず!」だから、「内部留保が無くなるまでお小遣いはあげません!」って怒られるのと同じです。

理不尽で困りますよね?企業もそれと同じです。

■内部留保の「活用」ってどういう意味?

よくニュースなどで「企業は内部留保を活用して投資をすべき」とか「内部留保を活用して賃上げすべき」といった表現が出てきます。

ただ、それは「負債を活用して(誰かからお金を借りてきて)投資すべき」とか「負債を活用して(借金して)賃上げすべき」といっているのと変わらないのです。

ですので、「内部留保の活用=現金で何かできる」というイメージでは、現実とズレてしまうのです。

■内部留保についての誤解

内部留保が多すぎる→企業がお金を溜め込みすぎている

といった論調もあります。

しかしこれは、上で見てきた通り

内部留保が多すぎる→自前でお金を資金調達しすぎている

といったことしか言っていないのです。

なお、「どうして内部留保を多くすることを我が国企業が好むか」といった疑問があると思います。ファイナンス理論的には資本コスト(内部留保など自前のお金の活用)よりも負債コスト(借金の活用)のほうが安い。つまり、借りてきたお金を運用するほうが合理的とされています。

ですが、バブル崩壊後に仕方なかったにしても貸し渋り貸し剥がしといった行為を、我が国の金融機関が行ったため、イザという時に借りられないかもしれないといった恐怖心が経営者にあるのかもしれません。


◎まとめ
内部留保とは「自前の資金源」であり、現金ではなく企業活動の成果の蓄積です。



内部留保の議論が噛み合わない理由や、構造的な問題については → もう、内部留保って言うの止めませんか?もぜひご参照ください。

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タコ配

初出:2013/05/24
更新:2025/07/21