過剰在庫_001
過剰在庫とは、在庫を適正在庫数量を超えて過剰に持ちすぎている状態のことを言います。企業が保有している在庫水準にはいわゆる適正量があり、それを超えていることを示す言葉です。

■必要な在庫量を持つ意味って?

小売業などを営む上で、ある程度の在庫を持つことは当然必要なこととなります。というのは、在庫がなければ消費者が商品を購入することができませんし、せっかくお客様が来店した時に、欲しい商品がなかったという機会ロスという非常に残念な結果が出てしまう為です。

また、機会ロスはその時だけの問題ではなく、お客様に「品揃えの悪い店」といった印象を持たせてしまうと決定的に顧客を失うことにも繋がりかねないのです。また、タイムベース競争を志向する場合などは、在庫を持っていることが決定的に重要だったりします。

このように、ある程度の在庫を持つことはお店の運営を適正に行うために役立つという面があります。

■在庫の持ち過ぎはダメ

と、適正に在庫を持つことの重要性は言うまでもないかもしれませんが、在庫を持ちすぎるという事も、考えものなのです。

というのは、在庫を持ちすぎると、在庫の保管費用がかかりますし、在庫に投入している分の現金が固定化されてしまい、資金繰りの悪化にもつながってしまうのです。

また、在庫の整頓作業は付加価値を生みませんし、ずっと在庫で持っていることによって在庫が陳腐化する、また品質が劣化して売り物にならなくなる(廃棄ロスの発生)といった問題点も生じるかもしれません。

このような過剰在庫のデメリットを列記すると以下のようになります。

  • 資金繰り悪化(在庫に投じた現金がそのまま滞留するため、運転資金の不足要因となる)
  • 保管コストの増大(倉庫も用意しないといけませんし、管理する人件費も必要になります。また、保険料などもかかります)
  • 廃棄ロス・陳腐化リスク(ナマモノなのは生鮮食品だけではありません。洋服なども陳腐化して腐って定価で売れなくなってしまいます。)
  • 整頓工数の増大(邪魔な在庫でも、棚卸しや管理に工数がかかります)
  • 利益の圧迫(在庫に投入した現金には金利がかかっています:在庫金利
このように在庫は大切な資産であるのですが、資産を管理するために費用がかかると言った側面もあるのです。

■過剰在庫を防ぐには

過剰在庫を防ぐためには、売れるものを過不足なく在庫しておくという理想論を何処まで追求するかにかかってきます。

このためには、ABC分析を実施するとともに、需要予測の精度向上を図る必要があります。(どの商品を重点管理するかの分析手法:ABC分析

また、滞留在庫を可視化して少しでも市場価値が残っている間にどんどん赤字でもいいので処分すると言った思い切りが必要になります。

在庫を多く持つことは安心に繋がりますし、それを否定するものではありません。しかし、それが過剰だと経営リスクに繋がります。

よく、大量の商品を「安く仕入れられた!」と胸を張って教えてくださる社長がいますが、売れなければどんなに安く仕入れても無駄になってしまいます。その原点をもう一度思い出していただけると嬉しいです。

うちはそんな事無いよとおっしゃる方も多いと思いますが、倉庫の隅に20年前に仕入れたカーテンの生地が眠っていませんか?冷凍庫の隅にブリが凍っていませんか?『ナショナル』という銘が入った住宅設備が保管されていませんか?(ナショナルは現在のパナソニックが2008年まで使っていた商号です)

■過剰在庫が産む見えないコスト

過剰在庫にはこのようにお金がかかると言った側面以上に、見えないコストがかかるという面があります。在庫金利や保管費用など見えるコストを中心に上では指摘しましたが、実際には現場の作業効率を下げる見えないコストのほうが大きな影響を及ぼします。

例えば、倉庫の中にものが多すぎれば、欲しい商品を探してくるのも大変です。そして仕事で大変だということは、作業時間がかかって、コストがかかるということと直結します。これによって補充や陳列の導線が悪くなって、作業あたりの時間がどんどん伸びていきます。

また、ものなどがぎっしり詰まっていれば新商品を入れたくてもスペースをまずは開けるという対応をする必要が出てきます。

そして、スペースを開けるという意思決定をできればいいですが、「わざわざ既存の商品をどかしてまで売れるかどうかわからない新商品を入荷しなくてもいいのでは」となってしまう可能性もあるのです。

この結果、売れるチャンスをのがしてしまい機会ロスをもたらす可能性があります。この種の判断の遅れは財務諸表には現れにくいですが、確実に利幅を削っていきます。

さらに棚卸し作業などは余計な在庫が沢山あったら最悪です。担当者総出で棚卸し作業をやると思いますが、在庫の量が増えれば増えるほどその苦労が増えていきます。

このように、作業の遅延や判断の遅延といった見えないコストが企業を蝕んでいくのです。

さらに、従業員の確保にも悪影響を与えます。常に作業がしにくいお店や企業というのは常に従業員に負荷がかかるということです。働く人からすると、仕事のコスパが悪くなるため従業員の定着や採用にも不利に働いてしまうのですね。

関連用語
滞留在庫