地政学リスク_001
地政学リスクとは、ある国や地域にテロの発生や軍事的緊張が高まる事によってもたらされるリスクのことを言います。

このようなリスクは、発生を予測することが困難であり、さらにリスクが顕在化した場合には経済活動に対して非常に大きな障害になります。

(政情不安が進行して無政府状態になったり、いつ戦争が始まるか分からないような状態になったとしたら、商売どころじゃないですよね?)

■世界は狭くなったので地政学リスクは広く影響を及ぼす

そして、現在ではたとえ地政学リスクが発生したのが遠くの国であったとしても、世界中の市場は緊密につながっているため、広い範囲に影響を及ぼします。

例えば、中東の産油国で軍事的緊張が高まったとします。その場合、原油価格が高騰し、遠くの国々であっても様々な影響が出るといったイメージですね。

■地政学リスクとカントリーリスクの違い

「地政学リスク」と似た言葉に「カントリーリスク」がありますが、意味は少し異なることに注意が必要です。

カントリーリスクは「特定の国で政変・経済危機・法改正・債務不履行(デフォルト)」などが起こるリスクで、より包括的です。そして、その国に起因するリスク、つまりカントリーリスクなのです。

一方、地政学リスクは軍事的対立やテロなど、国際安全保障に関わるリスクを指します。

2025年現在においては、特定の(米国)で関税が上がるとか上がらないとかといった議論をしていますが、そういった種類のリスクです。ちょっと前までは米国とカントリーリスクを結びつけて語るなどほとんど考えられなかったです。

このように、事業を取り巻く環境は常に変化しているので注意が必要なのですね。

■最近の地政学リスクの具体例

さて、安全保障などの地政学リスクについては2025年時点では、以下のような事例が地政学リスクとして認識されます。
  • ロシアによるウクライナ侵攻
  • 中国と台湾の緊張
  • 中東の紛争激化
いずれも、予測できるようなリスクではないですし、個人や個別企業がリスクを無くすることはできません。(ほんとうの意味で平和な世界を求めて人類が団結できればこの限りではないのでしょうけど)

また、地政学リスクは特定地域だけでなく、世界全体の経済活動や企業活動に連鎖的に波及するリスクとなっています。半導体が高くなったり、原油に由来する製品が高くなったり、穀物価格が高くなったりと、特にグローバル展開していない企業であっても無関係ではありません。

この意味で中小企業だから地政学リスクとは無縁だとは言えないのです。

■企業としての備え:BCPとコンティンジェンシープラン

このような不確実なリスクに対して、企業はBCP(事業継続計画)やコンティンジェンシープランを策定し、調達先や生産拠点の分散、情報収集体制の強化などを進めておくことが重要です。

最近では経済産業局が事業継続力強化計画(ジギョケイ)といったBCP計画の簡易版を推進していますのでぜひ作ってみることをおすすめします。簡単にできますが、自社のいろいろなリスクを見直すきっかけになるのでとてもおすすめです。

中小企業庁:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/antei/bousai/keizokuryoku.html


関連用語
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コンティンジェンシープラン