インフレリスク_001
インフレリスクとは、手持ちの金融資産の価値が、物価が上昇することによって下がってしまうリスクの事を言います。

例えば、あなたがタンス預金をしていたとします。それも一千万円くらいタンスにしまっておいたとします。

そして、今なら一千万円あれば家が建てられるとします。しかし、あなたは無駄遣いするのが嫌いな性分のためか、5年間その一千万円をタンスに入れたままでした。

そして、5年後に色々と考えることがあり、家を建てたいと考えるようになったとします。

しかし、5年間のうちに物価水準は上昇しており、家を建てるのには一千二百万円必要となっていました。

この時、あなたが持っている一千万円は実質的に価値が低下していますよね?こういったリスクをインフレリスクというのです。

インフレが金利上昇を招く

例えば、年5%インフレが進む国を考えてみたいと思います。その時にあなたは2%利息が付く国債を購入しますか?

実質的に毎年3%ずつ目減りする国債なんて購入しませんよね?この場合、2%の利息の国債は買い手がつかなくなってどんどん値下がりします。

そして、この国債は購入すれば5%以上の利回りが得られる価格水準まで低下していきます。(例えば、100円で償還してくれる国債を95円で買うといったイメージです。)

こういった流れによってインフレ率が5%となった場合、国債の利回りも5%以上が求められます。

そして、国債利回りが5%まで上昇した時に、金融機関は「あなたの事業」に5%以下の金利で融資してくれるでしょうか?

安全な(リスクフリーレート)が5%の時に、リスクのある「あなたの事業」に5%以下で融資するなんて考えられませんよね?(やってもいいですが、ステークホルダーに袋叩きにされそうです。)

このように原理的にはインフレ率が上がると金利も上がるのです。(短期的には市場の歪みでそうならないケースもありますが、長期では原理原則に順張りしたほうが望ましいでしょう)

■なぜ今、インフレリスクに注目すべきなのか?

2025年現在、物価上昇が目に見えて進んでいます。少し前までデフレ傾向が強かったのですが、世の中の環境は大きく変わってきています。

そして、インフレによって、個人の預金や企業の資金計画に大きな影響がで始めているのです。

「値上げが続くのだったら、現金の価値はドンドン目減りしてしまう」ことに気づきはじめた人も多いでしょう。

インフレリスクとは、こうした「お金の価値が目減りする」ことによって、将来的な購買力が減少するリスクのことを指します。(物価が上がるとも言えますが、本質的にはお金の価値の目減りです。)そして、このような考え方は企業の資金調達や借入金利にも深く関係しています。

本サイトをご覧になっている方は経済人を想定しています。そのため、物価が上昇傾向であるとぼやくのではなく、物価が上昇傾向になったという環境に適応し、適正な利潤を上げるように行動して生きたいものです。

■インフレリスクが影響する対象

さて、このインフレリスクですが、以下のような影響が想定されます。
  • 個人の預金:現金預金のもつ力(購買力)が下がる
  • 個人のローン:固定金利なら実質的に借金の目減り
  • 年金生活者や退職金保持者:インフレによってマネープランが崩れる可能性があります
  • 企業の資金調達:金利上昇により、借入負担増加
  • 投資家:名目利回りと実質利回りの差(インフレ率を差し引いた利回り)を意識する必要が出てきます
  • 不動産:債券の利回りが上がるならば、不動産価格は下落傾向になります
   債券利回りアップ→不動産利回り<債券利回り→不動産の処分圧(リスクの低い債券のほうが利回りがいいなら投資しないほうが合理的)→不動産価格下落

良い面も悪い面もありますが、いずれにしても事業環境の変化と捉えて適応していく必要があります。

■実質金利とは?

たとえば、名目金利が3%でインフレ率が5%だった場合、実質金利は-2%となります。このような状況では、たとえ3%の利息が付いていても、お金の価値がそれ以上に減っているため、実質的には損をしていることになります。

こういった考え方を実質金利といいます。借金が目減りするのはありがたいですが、資産が目減りするのは困りますよね。

■まとめ:インフレ時代に備えるべきこと

インフレリスクは、お金の保有方法・借入戦略・資産運用すべてに影響を与えます。まさに経済というゲームのルールがデフレ時代から転換したのです。

そのため、数十年続いたデフレ時代で適切とされた行動様式を転換して、インフレ時代に望ましいとされる行動を取っていきましょう。

一例として、現金は眠らせず適切に運用すること(持っていると目減りします)、金利の固定・変動の選択を慎重にすること、実質的な価値(購買力)で資産をとらえるといった感じです。

今後も物価上昇が続く中で、このインフレリスクへの理解と対策が、経済的な生存力に直結してくると言えるでしょう。

なお、人類の経済は基本的にはインフレ基調で推移してきましたので、デフレというイレギュラーな時代と異なり、先人たちが遺した知恵を大いに活用できる時代です。少なくてもあなたの競合は、先人の知恵を研究していることを想定し、考え方を切り替えていく必要があります。

関連用語
マネタイゼーション

初出:2013/03/01
更新:2025/08/04