カーブアウト_001
カーブアウトとは、自社の事業やコアとなる技術を切り出して、外部からの経営資源の提供を受けたうえで、ベンチャー企業を立ち上げる戦略の事です。英語ではcarveoutと表記します。

このカーブアウトとよく似た言葉にスピンオフという言葉がありますが、スピンオフは外部の経営資源を利用しない、カーブアウトの場合は外部の経営資源を利用するといった違いがあります。

単純にスピンオフする場合と比較して、外部の経営資源を利用するため成長が加速される(事を目指す)といった狙いがあるのですね。
  • スピンオフと同じメリット
さて、ではなぜワザワザ分社化する必要があるのでしょうか?「どうせ出資するなら、最初から自社の内部で事業を行えば、規模の経済範囲の経済が働くからもっと効率がよいのでは?」といった考え方もありうると思います。

でも、大きな企業ではなかなか迅速な意思決定ができないという欠点があります。大きな船は、なかなか方向転換が難しいのです。(参照:規模の不経済

この点、小さな企業は、意思決定を素早く行えることができるため、効率的に新事業を行っていくことができるのです。
  • スピンオフにはないメリット
カーブアウトは、親会社以外から経営資源を提供してもらえるため、親会社の影響力を抑えることができます。その為、スピンオフよりも機動的に経営を行う事ができるのです。(会社を立ち上げた人にとってもうれしい事ですよね。)

また、親会社側も自社だけで支援するよりも、素早く、低コストでベンチャー企業を育成することができるといったメリットがあります。

関連用語
スピンアウト  

  • 非主流の技術や組織が活きる
選択と集中という言葉があるとおり、企業は自らの強みに着目して経営を行った方が企業価値を高めることができる傾向があります。


しかし、そうなってくるとせっかく培ってきた本流の強み以外の強みをどうするかといった問題が生じます。

そのような際に、カーブアウトという手法を用い自社から出資を行い別会社として企業を立ち上げるといった方策を取ることができます。

非主流の技術・組織に所属している人たちにとっても、無理に自社にとどまり続けるよりも、思い切った投資などを行って機動的に経営を行う方が企業価値が高まる可能性が出てきます。

さらに、企業外部からも投資や人材の受け入れを行うことで成長が加速することが見込めるのです。
  • 元の企業にとっても良いことがある
このようなカーブアウトで切り離した企業が大きくなれば元の企業にとっても大きな収益を得る可能性が出てきます。

そのまま企業を保有してその果実を得続けてもいいですし、株式を売却するといった方法も考えることができます。

また、事業ポートフォリオの最適化にもつながりますので長期的に見て企業価値を高めることにもつながります。
この背景には、製品ライフサイクル(プロダクトライフサイクル)の短縮化などが上げられます。

せっかく開発した製品であっても、従来よりも安定して稼ぐことができる期間が短くなっているため、有望な新技術は非主流であるといっても素早く製品化して投資を回収していく必要があります。

そのためには、比較的身軽な組織にして、大胆な投資の意思決定などが求められるのですが、親会社にとどまったままではなかなか大胆な方策をとることが難しくなります。

その点、別会社としてしまえば、自らの裁量で大胆に投資の意思決定を行うこともできるためスピード感のある経営をすることが可能です。また、企業外部から経営資源を調達することにもつながりますので、単に自社から切り離したというよりも素早い成長が見込めるのです。
  • とはいえ
と、とても良い方策のように思えますが、当然デメリットがあります。

このマンガのように、働いている人にとっては強制的に親会社から切り離されてしまうように感じる場合があります。出向ならまだしも、転籍となるとその企業で働く魅力を感じなくなってしまい、離職につながる危険性もあります。

誰もが挑戦と成長を望んでいるわけではなく、仕事の安定は職業選択にあたってとても大きな要素ですので、しっかりと対象となる従業員の意見を聞く必要があります。

また、外部から経営資源を調達するということは、外部へ自社のノウハウが流出すること表裏一体です。そのあたりにも注意して運用する必要があるでしょう。
事業を営むのに必要な情報
姉妹サイトとして開業や創業、事業経営に大切な情報をコンサル目線でまとめてみました。