期限の利益の喪失とは、債務者が期限の利益を失う事を言います。期限の利益とは期限が到来するまで債務を返さなくても良いという事で、期限の利益の喪失とはその利益を失うという事です。
■そもそも期限の利益とは
さて、この期限の利益とはどのような考え方なのでしょうか?
期限の利益とは、期限が到来するまではその債務を履行しなくてもいいですとといったモノです。
簡単に言い換えると、すぐに返さなくてもいいですよ。約束したときまでに返してくれればといった事です。
すぐに返さなくってもいいと言うことから、利益があると言われているのですね。
逆に言うと、どんなに多額の借金をしていても、期限の利益がある限りその期日まで取り立てを受けるいわれはないと言うことです。
よく、ドラマなどでは銀行などが、お宅に貸している融資を全て返してもらいますといった、貸し剥がしをしている場面が描かれますが、そのような事には期限の利益がある限り、応じる必要はないのです。
■期限の利益を失うとは
それでは、この期限の利益を失うとどうなるでしょうか?
期限の利益として得ていた、期限が到来するまで債務を返さなくてもよいとう権利が失われるという事です。つまり、今すぐ全額を返してくれという事になるという事ですね。
例えば、カードローンを返済していた人が返済を怠って期限の利益を失ったとします。その場合、ただちにカードローンの残額を一括で全額返済する必要が出るといったイメージです。
そして、このような内容は基本的にお金を借りるときの契約書には必ず書いてありますので注意が必要です。
期限の利益の喪失かあ。怖いねぇ。一括返済を求められて応じられる企業はほとんどないから、それが致命傷になるのよね。
どうしたんですか?今日はずいぶん社会派ですね。
ちょっと運転資金が足りなくなったから融資の申し込みをしようと思ってね。で、契約書を読んでいたら期限の利益の喪失について書いてあったのよ。
ちゃんと契約書を読むなんて偉いですね。
あたりまえよぉ。契約書に書いてあることははんこを押す以上、知らなかったじゃあすまされないからね。
■どういうときに期限の利益が失われるの?
このような借り手にとって重要な内容ですので、貸し手側が一方的に期限の利益の喪失を主張することはありません。
ただし、貸し手側としては契約書に盛り込んでいた事項で期限の利益期の喪失を主張できる際には、主張してきます。
貸し手側としては、お金を取りっぱぐれるのが何よりも怖いからです。
以下、期限の利益が失われる代表的なケースを挙げてみます。
1.破産手続き開始の決定を受けたとき
2.債務者が担保を滅失、損傷、減少させたとき
3.債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。
これらは民法上で決まっている期限の利益を喪失する条件です。しかし、これだけだと実務上、資金の貸し手が取りっぱぐれる事が多くなりますので、契約書で条件を加重します。
一般的な事項は以下の通りです。
4.決められた期日までにお金を返さなかった場合
融資を受ける場合には、一括して返済するのではなく、分割して返済することが一般的です。
その際に、1度でも返済期日に遅れた場合期限の利益を喪失して全額の返済を求められてしまいます。
例えば、
1200万円を10年で借りて、元金均等払いで返済しているとします。
その場合、
月々の返済額は1200万円÷120ヶ月=10万円+利息
となります。
順調に5年間返済をして600万円まで残額を減らした段階で、返済が遅れてしまったとします。
その場合、翌月に2ヶ月分の20万円を返済すれば問題ないと考えるかも知れません。
しかし、この段階で期限の利益を喪失してしまうため、残額の600万円を一括して返済する必要があるのです。
(実務的には1回の遅延でそこまで求められることは少ないようですが、ルールとしてはそのように契約書を結ぶはずです。)
5.契約内容に偽りがあった
契約内容の記載事項に偽りがあった場合にも期限の利益を喪失します。融資をどうして設けたいからと言って、嘘の内容で契約申し込みをすると後から非常に大変なことになると言うことです。
逆に、融資側の立場に立つと、融資の前提条件が変わってしまうわけですから全額返してくださいとなるはずです。また、信頼関係が崩れてしまったといった事も大きな問題です。
6.他の債務について仮差し押さえ、仮処分、強制執行を受けた場合や競売や破産、民事再生、会社更生手続きの申し立てがあった場合
色々書きましたが、要するに破産まで行かなくても、他の人への借金を返せなくなったときということです。
このようなときに、ぼやぼやしていると回収する事ができなくなってしまうので期限の利益をなくしましょうと言ったです。
7.その他
契約書でそのほかにも条件を定めることができます。
解説で出てきた用語・関連用語
期限の利益法令
民法(136条、137条)
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