自己成就予言とは、予言されたことを実現するような行動を意識してあるいは無意識に取る事によって、予言通りの結果が生じるという現象のことを言います。
予言されていた状況が起こりそうだとみんなが考えることによって、そのような予言がなければ発生しなかったような事が起こるといったイメージです。
例えば、PPMで負け犬という事業部に位置付けられて人々がやる気を失って本当に負け犬になってしまうといった現象が生じると言われています。
または、ある新入社員を「彼は10年に一人の逸材だ」と言い続けることについても同じような効果があるかもしれません。
周囲もそういった目で彼を見るようになり、難易度の高い仕事をどんどん任せるようになるとします。言われている新入社員自身も、やる気を出してその仕事をどんどん成功させていくとします。
その結果、本当に「10年に一人の逸材」になるかもしれません。
人の心理にはこういった傾向があるため、人を評価する言動には気を付けないとならないのですね。
- 企業を取り巻くマクロ環境に影響します
この自己成就予言ですが、経営には企業を取り巻くマクロ環境を通じて影響します。
例えば、影響力のあるメディア等が不景気だとあおり立てれば、消費者の財布のひもが固くなって本当に不景気になります。
また、安く商品を提供するお店がいいお店だといった空気感をずっと作っていたら、デフレ傾向のままでした。(デフレ脱却のためにリフレ政策をとっていたのですが、世間の空気感の方が強いらしく、いまいち効果を発揮していません。)
公務員がお給料をもらいすぎていてけしからんとみんなが批判したら、民間の給与もつられて下がってしまいました。
国税庁「民間給与実態統計調査」によると、2000年の平均年収が男女平均で461万円、15年後の2015年が420万円です。
このように予言は結構実現されるのです。
- 個別企業も油断できない
製品ライフサイクル仮説といった、モノやサービス、事業の成長と衰退を生物に例えて説明する理論があります。
直感的に理解しやすいためか結構浸透しているのですが、この理論に基づく自己成就予言には注意が必要です。
例えば、「この事業はもう成熟していているから」といった説明が企業内で共通認識となると
成熟している→大きな成長は見込めない
といった風な予言となってしまいます。そして、実際に事業は大きく成長できないといった事が起こるのです。
しかし、本当に事業が成熟しているかどうかは誰にもわかりません。本当は、自己成就予言が効いて、無意識に営業活動や技術革新などにブレーキをかけていたことから成長が阻害されているのかもしれません。
例えば、経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンディブ」という報告書によると我が国と米国・欧州の企業では、以下のように利益率に差がついています。もちろん規模の違いや重視する経営指標の違いもありますが、利益率に差がある事は厳然たる事実です。
カテゴリー ROE 日本・製造業 4.6% 日本・非製造業 6.3% 米国・製造業 28.9% 米国・非製造業 17.6% 欧州・製造業 15.2% 欧州・非製造業 14.8% 出所:「持続的成長への競争力とインセンティブ ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト (伊藤レポート) 平成26年8月 から抜粋
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