多能工_001

多能工とは工場内の複数の作業や工程を担当できる従業員の事を言います。

一人でいろいろな業務ができる人を多能工と言いますが、このような人が増えれば組織の業務が改善されます。

■どうして組織の業務が改善されるのか

従業員が多能工化すれば、労働力の柔軟な活用が可能となり、工場内の負荷を平準化することができ、結果としてコストの削減に寄与すると言われています。

例えば、多品種少量生産を行う際には、様々な種類のものを様々な数量で製造する必要が出てきます。

このようなときに、従業員が一つの作業にしか習熟していないようでは、一定の作業者に負荷が集中し、作業していない人は遊んでいるような状況が生じてしまいます。

パン工場などで小麦粉をこねる達人の単能工がいても、小麦粉をこねる仕事が終わった後にほかの工程を手伝うことができないと、その人は仕事中に手待ち時間が増えてしまいますよね?

「あ、自分小麦粉をこねるためだけに雇われているんで。というかむしろ、それ以外の仕事はわかりませんので」なんて従業員が多いのでは、なかなか生産性が上がりません。

逆に、従業員が多能工化していれば、忙しい工程を手伝うといった柔軟な対応を行う事が可能となるのです。

■職場全体の負荷を下げることができます

この多能工がたくさんいる職場では、忙しくなってしまっている工程に職員をたくさん配置することで生産能力を一時的に高めることが可能となります。

その結果、忙しくなってしまっている工程が工場全体のボトルネックにならないように対応することも可能となります。

このように、全員が多能工とならなくても職場全体の負荷を下げることで生産性が上がるのです。遊んでしまう工程が発生するとアイドルコストが発生してしまいますが、そのコスト発生を避けることが可能となります。

また、この多能工化は工場だけではなくほかの職場でも改善の方策となるといわれています。

貴方の職場でも、いろいろできる人が忙しくなった時に手助けしてくれれば全体の生産性が上がると思いませんか?

onnanoko_bustup
そういえばね、この前少年野球を見に行ったのよ。うちのお店ってファンシーショップだから、お客さんのお兄さんの応援にね。

neko
そうなんですかー。

onnanoko_bustup
でね、一人凄い子がいて。ピッチャーをやってたんだけど、途中からキャッチャーになって、ファーストも守ってたわね。で、7回にレフトに回ったんだけど、すごいファインプレーでね。プレーとしては地味だったんだけど、バッターの子が引っ張るって読んでポジションを少し変えていたのよね、あの動きは…

neko_akire
…オーナーさん、野球詳しいんですね。で、野球の話がしたかったんですか?

onnanoko_bustup
ちがうわよぉ。あの子はグラウンドの多能工だったって言いたかったのよ。あれだけのプレーは相当練習したんだと思うのよね。

■多能工化するためには、従業員への教育訓練が欠かせません。

と、いいことづくめの多能工であり、みんながそうなれば職場の問題が解決するように思えますが、そうは問屋が卸しません。

そもそも、そんなに多能工が優れているならば、どんな職場であっても多能工が主流でなければおかしいですよね。

でも、そうではないのです。(多能工が当たり前だったら従業員を多能工化する方法なんていった情報が一流経済誌の誌面を飾るわけがありませんから。)

この多能工が当たり前でない理由は、従業員へ対する教育訓練が難しいためです。

多能工となるためには、自分の受け持ち以外の工程について作業内容を知っていなければなりませんし、工程の関係性についても知っていなければなりません。

そのような人材を育成するためには当然、教育訓練のコストが発生します。また、お金を変えればそれだけでいいかというとそうではなく、しっかりとした教育訓練の計画を立て、その計画に沿って教育訓練を行う必要もあります。

このように多能工の育成は難しいのです。

■多能工にもデメリットがある

このようなハードルを越えて多能工を育成するとしても、多能工のデメリットも理解しておく必要があります。

1.人件費が高くなり、人事評価も重要となる
一般に多能工はスキルが高くなることから、人件費水準が高くなりがちです。これは一般的な相場で人件費水準が高くなるということです。

そのため、「自社は規定で賃上げをしない」なんてやっていると、せっかく多能工に育成した従業員が競合他社へ転職してしまう危険性があります。

この意味から、多能工化した従業員に対してはそのスキルに報いるような評価をする必要が出てきます。

2.多能工を管理する人が必要
単能工の集まりとは違い、多能工の場合はどこで働くかのしっかりとした指示を行う必要が出てきます。

もちろん、自律的に働けるまで訓練を行い、必要な権限も委譲するといった考え方もありますが、そこまでスキルが高まった従業員にしっかりと報いることができるかは常に考えておく必要があります。


このようなデメリットも理解した上で多能工を育成し、柔軟に労働力を活用できれば生産性向上の要になるという事ができます。

解説で出てきた用語・関連用語
アイドルコスト多品種少量生産

キャンペーン記事:経営マンガマラソン  
事業を営むのに必要な情報
姉妹サイトとして開業や創業、事業経営に大切な情報をコンサル目線でまとめてみました。