社会的比較論_001
社会的比較論とは、フェスティンガーによって提唱された理論で、人は自分自身を正しく評価したいという動機を持っていますが、自分自身を評価するための基準として、自分に似通っている他者との比較を用いるとする理論です。

簡単に言い換えると、人は自分に似た他人と比較して自分自身の評価を行うという理論です。そして、比較した結果、安心したり、自分の所属している集団に合わせたりするわけです。逆に比較することができないとなんとなく不安になってしまうという事もいえますね。

例えば、あなたが会社員だとします。その時に、数多くの同僚と一緒に働いていれば、なんとなく日々、自分が同僚たちと比較してどのような位置にいるのかと考えることができますよね。

■社会的比較論の上方比較と下方比較

この社会的比較論の上方比較と下方比較とは、同僚たちに比べて自分のパフォーマンスが低ければ、向上する努力をしますし、自分のパフォーマンスが高ければ安心するといった心理です。

自分よりも優れている人と比較すると、「負けるものか」と向上心が生まれるという前向きな効果があります。ただ、必ずしも前向きな効果だけが生まれるわけではなく、嫉妬心や劣等感が生まれることもあり、

他方で、自分よりも劣っている人と比較すると「自分はいい感じだね」と安心感や自身を得ることに繋がります。ただ、こちらも慢心を生んで努力を怠ると行ったマイナス効果もあり得るから怖いのです。

いずれにしても、人は無意識に他人と比較してそれによって幸福度や自尊心を上下させるというものです。

■比較できないと不安になる

とすると、人と比較することで精神状態が左右されるならば、隔絶されたところで比較することなく活きたら幸せになれるのでしょうか?

ただ、これも冷静に考えてみると当てはまらないような気がします。

例えば、同僚たちと隔絶された場所で一人働いていたらどうでしょう?(他者と比較ができない状態)なんとなく不安になりませんか?

または、自分とはくらべものとならないようなハイパフォーマーの中で仕事をしたらどうでしょうか?(自分と似た他者と比較ができない状態)これも不安になりそうですよね。

この社会的比較論はその様な状況ではなく、自分と似たような他者と比較する事で自分自身を評価するという理論なのです。

また、この理論を提唱したフェスティンガーさんは、認知不協和理論を提唱した事でも有名ですね。

■ビジネスにおける社会的比較論の適用について

さて、本稿は「まんがで社会学」とかではないので、あくまで経営にどのように影響するかで考察を進めます。

■従業員のモチベーション

ここまでの説明でピンと来た方も多いと思いますが、従業員のモチベーションを大いに左右する要素になります。

例えば、組織内での評価はある程度似た属性(能力や経歴など)の同僚と比較して行っていくことが必要ですし、納得感を生み出しやすくなります。

あまりに上方比較を強いると(業績の良い人と比較させてしまうような処遇をすると)向上心が刺激される可能性はありますが、逆にモチベーションを低下させたり最悪の場合は離職につながったりもします。

また、下方比較になるような部署に配属すると安心材料になってメンタルは安定するかもしれませんが、努力の停滞を招く可能性があります。

つまり、どのような部署に配属するかの検討材料の一つとなりうるのですね。

■消費者心理の理解

消費者も社会的比較論からは逃れられません。消費者も見栄をはったり、マウンティングしたり、周囲にどう見られるかを意識した消費行動を取ります。

ここをうまく設計して、少し憧れられるような商品のポジションを取ったりすると、消費者からの支持を得やすくなったりします。

■社会的比較論:誰と比較するかのまとめ


比較先 どんな影響が出るの?
上方比較 向上心・劣等感・モチベ低下・憧れ
下方比較 安心・停滞・慢心・守りの姿勢
比較できない状態 不安・孤独・評価不能感


このように、誰と比較させるか、どう比較させるかの巧妙な設計は、ビジネスに貴重な示唆を与えてくれるのです。

参考関連用語
マズローの欲求階層

※本記事では、心理学の理論を経営・組織論の視点から応用的に解説しています。学術的な厳密さよりも、実務での活用に重点を置いています。

初出:2012/08/27
更新:2025/07/09