ムーアの法則_001

ムーアの法則とは、ゴードン・ムーア(Gordon Moore)氏が1965年の論文に記載した、半導体の集積密度は18か月から24か月で倍増するという法則(経験則)です。

半世紀近く前の経験則ですが、;現在においても生きているとされています。

半導体の集積密度が倍増するという事は、半導体の性能も向上していくという事とほぼイコールです。という事は、コンピュータのCPUは18か月から24か月で性能が2倍になるといった事もいえるのです。

また逆の面から考えると、同じ性能の CPU であれば24ヶ月から18ヶ月の間でコストが半分になるということができます。 

この法則は、単なる経験則でしたが、現実とおおむね一致していると言われています。

もっとも、半導体を細分化して小さくしていったとしても、物理的に限界がありますので(原子レベルまで小さくなったらそれ以上小さくできません。)から、このムーアの法則には寿命があると言われています。

■ムーアの法則は予言だったのか

さて、このムーアの法則は卓越した予言だったのでしょうか?それとも、自己成就予言(予言が実現するように、受け止めた人がその予言に沿った行動を取る事によって、予言が実現する事)だったのでしょうか?

それは分かりませんが、少なくともこういった傾向があったという事ですね。

■経営的に何を意味するか

さてこのムーアの法則ですが、 経営としては何を意味するでしょうか。半導体産業やシステム関係の産業を営んでなければ関係ないと言えるでしょうか 。

これは意見が分かれるところですが、継続的にコンピューターの性能は上がり続けると言うことが、自社の属する産業においてどのような意味をなすかを考えることは非常に重要です。

一般的にコンピューターの性能は不可逆的に向上していくと考えることができます。そのため人間の手でやらなければコストが合わなかったようなものであっても、コンピューターを使ってやることがコスト的に優位になる可能性があります。

このようなこと考えると、人間が持っているのは葉が競争優位の源泉であるような商売を営んでる場合は、将来的に強力な競合が生じる可能性があります。

もちろん未来などのようになるかは誰にも分かりません。しかしそのようになるという可能性があることを想定しておくことは非常に有益であると考えられます。

このまんがでは、おそらく先生はこのムーアの法則を説明したかったのだと思います。でも、生徒さんは24か月ごとに倍になり続けるという言葉から「雪だるま式」に増えるものを考えたようです。
 
この2倍になり続けるという事は 、24か月後は元の2倍、48か月後は元の4倍、72か月後は元の8倍、になるという事です。雪だるま式に膨れ上がっていますよね。半導体の性能ならば歓迎できるこの現象も、借金では大変なことになってしまいます。

■ムーアの法則が与えた影響

このムーアの法則は、単に半導体メーカーだけでなく、社会全体に多大な影響を与えてきました。それはコンピュータの性能が法則通りに増大すると高い精度で見込まれる以上、その法則に則った技術進歩を事業計画に盛り込んでおくことが合理的だったからです。

たとえば以下のような分野で影響が見られます:

  • スマートフォンの性能向上と小型化

  • インターネットの普及とクラウド化

  • AI(人工知能)や機械学習の進化

  • 製造業の自動化・ロボット導入

  • ゲームや映像の高精細化

このように、コンピュータの性能が指数関数的に上がることで、「できなかったこと」が「できるようになる」転機が定期的にやってくるのです。(データマイニングなんかができるようになり、ソレが更に機械学習やAI担っているのです。)

つまり、企業経営においても「今はまだ無理」と思っていたことが、近い将来にはコスト的に実現可能になる可能性がある──そうした前提で戦略を考える視点が重要になってくるのです。



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