事後保全_001
事後保全(Breakdown Maintenance:BM)とは、故障や性能の低下発生後に修理などの対応を行って、復旧する事を言います。文字通り、故障などの問題が発生した後(事後)に修理(保全)を行うといったイメージです。

■事後保全は最古の保全活動と言ったら言い過ぎですか?


この事後保全は設備保全の方法として、もっとも古くからおこなわれた保全方法の一つだと言われています。というか、この事後保全は壊れたら対応するといった事ですから、人類が道具を使い始めた頃にまでさかのぼれるかもしれませんね。

一歩進んだ考え方としては、計画的にメンテナンスを行い、故障が起こる前に対策を行う「予防保全」や、故障が起こりにくくなるように改良を行う「改良保全」、保全自体を行わないことを目指す「保全予防」、設備の導入から廃棄までのコストの最小化を目指す「生産保全」などの考え方があります。

しかし敢えてこの事後保全にとどまるといった選択肢もあり得ます。「え、故障なんて発生しない方がいいに決まってるよ。」と考える方もいらっしゃるとは思いますが、故障が発生してから修理した方が経済的な場合についてはこの事後保全が適用されます。

■あえての事後保全もありうる

例えば、みなさんの家の電球などはどうでしょうか?切れてから取り替えているのであれば事後保全を行っているという事ができます。

予防保全をやろうと思えば、使用時間がある程度たったらあらかじめ交換するといった方法を採ることもできますがそんなことをやっている人は少数派だと思います。

■事後保全が向いている設備の特徴は?

以下のような条件に当てはまる場合、事後保全のほうが有効になります。
  • 壊れてもすぐに修理できる
すぐ直るなら壊れるまで使い潰したほうが合理的ですよね?
  • 安全に関わるリスクが小さい
壊れたら怪我などにつながるなら予防保全などを徹底すべきですが、壊れても大勢に影響のない装置は壊れてから直せばいいです。
  • 交換コストが低い
交換コストが安いなら、壊れるまで使ったほうが合理的です。
  • 複数台が並列で動いている
たくさんある電球の一つぐらい切れても、速やかに交換すれば問題は少ないですよね?

■事後保全のメリットとデメリット

まとめると事後保全には以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット デメリット
・追加費用がかからない ・故障時に生産停止のリスクがある
・使える限り使い切れる ・人的被害や安全リスクを伴う場合がある

・突発修理のコストが高くなる場合がある

上記のようなメリットがあるので、シンプルな設備には事後保全が向いています。そして、デメリットが生じるような設備は事後保全方式を利用しないようにすればこのデメリットは克服できます。

■あらかじめ取り替える予防保全との違いは?

比較項目 事後保全 予防保全
メンテナンス時期 故障してから対応 故障する前に計画的に実施
コストの考え方 直す時だけ費用が発生 継続的にコストがかかる
リスク 故障時に機能停止の恐れあり リスクを最小限にできる
向いている設備 単純でリスクが少ない設備 重要性が高い・複雑な設備

先ほどから予防保全と比較していましたので、比較表を作ってみました。どちらが片方の完全上位互換ではなく、一長一短があるので設備によって適切に選んでいくことが重要ですね。

もちろん人命にかかわるものであったり、取り返しのつかない損失を被る可能性がある場合については、この事後保全では全く不十分です。

家庭にあるモノの例では、ガス器具は壊れたら直すという事後保全の考え方でいると、火災につながる危険があります。それなのでちゃんと点検しないとダメですよね。

このまんがでは、なんだかよく分からないモノが大きな音を立てた挙句、爆発してしまいました。しかし、このモノが壊れたところで特に問題はないようで、4コマ目では壊れた後に電池を入れ替えています。

このように、問題が発生した後に対応を行う事を事後保全と言います。 

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