ERG理論_001
ERG理論とはモチベーションの理論の一つで、マズローの欲求段階説をアルダーファー(Alderfer)が修正したものです。

このERGはそれぞれ、生存(existence)、関係(relatedness)、成長(growth)の頭文字であり、この生存、関係、成長の三つの欲求を元にモチベーションについて説明しようとしたものです。

このERG理論はマズローの欲求段階説を修正したものであるので、マズローの欲求段階説の低次の欲求が満たされた場合にはその欲求の重要度を減少させ、更に高次の欲求の重要度を増加させるとした仮定を受け継いでいます。

■ERG理論がマズローの欲求段階説に付け加えたこと

基本はマズローの欲求段階説なのですが、そのうえで、次の仮定を加えています。

・欲求の各段階は同時に活性化することもある。
・高次の欲求が満たされない場合、より低次の欲求が重要視される。

マズロー欲求段階説の場合、低次の欲求が満たされた場合のみ、より高次の欲求へ段階的に移行するとしていました。しかし、ERG理論では同時に活性化することもあるし高次の欲求が満たされない事を低次の欲求で補う場合があるとしています。

一言で比較すればマズローの欲求段階説は低次の欲求から高次の欲求への一方通行を想定していましたが、ERG理論では相互に行き来できるし、唐突にほかの欲求が活性化することもあるという事です。

■人は一方通行に発達しない

例えば、最上位の欲求である成長の機会に恵まれない人(Gが満たされない)が職場内での仲間づくりを非常に重視する(Rを満たそうとする)といったケースが考えられます。
 
また、職場内での人間関係がうまくいかない場合(Rが満たされない)にひたすら自己の成長を志向する(Gを満たそうとする)といったケースも考えられます。

これらの例はマズローの欲求段階説では説明しきれない現象です。

■まんがのERG理論の例

このまんがではパートの仲間がいない状態のオーボエパートの生徒が、人間関係が満たされない(Rが満たされていない)状態から、自己の成長を志向するようになった(Gを満たそうとする)ケースを書いてみました。

その結果、彼の腕前は抜群だと部長に言われています。 結果として信頼が得られて人間関係も満たされるといった良い循環が生まれているのですね。

■実務におけるERG理論の活用例

ERG理論は、実務において、従業員のモチベーションを把握・向上させるために役立ちます。

例えば、昇進やスキルアップといった成長(G)の機会が不足している職場では(そんな職場は沢山ありますよね。ここで無理やりポストを作るというのはあまりいいやり方ではありません)、社員が同僚との関係(R)を強く求めるようになるケースがあります。

一方で、人間関係に不安を感じている従業員が、自分自身の成長に集中し、成果を上げようとする場面も見られます。

このように、ERG理論を理解することで、単なる報酬や役職だけでは説明しきれない、多層的な動機づけを捉えることが可能になります。

とはいえ、人間関係に満足していない従業員がスキルアップに全力を挙げているのは、組織からの脱出を図っている可能性もあるのであまり良い兆候ではありません。

そのような場合、しっかり成果を出したらならば報いていくようにしないと、貴重なやる気のある従業員が退職するといった最悪の結末につながるので、注意が必要です。

■ERG理論と人材マネジメントとの相性

2025年現在、職場では「人材の定着」が大きな課題となっています。その中でERG理論は、従業員の心理状態を把握するうえで実用的な理屈です。

たとえば、単に「昇進を与えればやる気になる」といった単純化された考えではなく、成長(G)、関係(R)、生存(E)のバランスをどう整えるかを考えることが、人材流出を防ぐ鍵となります。

■洞察の材料にはなります

このように、マネージャーや人事担当者、社長にとって、「なぜこの社員は急にスキルアップに熱心になったのか」「どうしてチーム活動を重視しているのか」といった背景理解の材料とすることができます。

人間の心理はとても複雑なものですが、読み解くためのモデルがあれば理解を促進することができ、実務にも直結する理論といえるでしょう。