競争地位別戦略_001
競争地位別戦略とは、企業の市場における地位によって最適な戦い方が存在すると指摘した、古典的な戦略理論です。この企業の市場における地位は(リーダー、チャレンジャー、フォロワー、ニッチャー)の4類型に分類されております。(競争地位の4類型)本記事ではそれぞれの戦略定石をご説明します。

なお、この競争地位別戦略は古典的理論であることから、「ランチェスター戦略」や「ポーターの競争戦略」などでも重視されています。
この考え方では、総体的に自分の市場での地位がどうであるかによって、推奨される定石が変わるのがポイントです。

■競争地位別戦略:リーダーの戦略定石

ココで言うリーダーとは、業界内でトップのシェアを誇り、豊富な経営資源(資金力、人材、ブランド力)を相対的にに持っています。

そのため、敢えて差別化をしなくても、スタンダードな戦略で勝ち切れるという前提から導き出される戦略です。

そして、リーダーは、一言でいうと、基本的なオーソドックスな戦略を採ることが推奨されます。(詳しくはリーダーの戦略定石

■王道で勝てる理由

一例を紹介すると、リーダーは経営資源が豊富というのが何よりも大きな強みです。この強みは非常に強力であり、奇をてらったことをしなくても良いのですし、変なことをやって評判を落とすリスクを負うことは推奨されません。

ただし、競争相手が奇をてらった大胆な差別化戦略を採用してきたらどうでしょうか?

この場合、そのまま同じような戦略を実施してしまえば、経営資源大きさで押しつぶして勝つことができます。

よく、似たような雰囲気の居酒屋がありますが、あれは経営資源が多い、相対的に大きな企業側が後からあえて雰囲気を似せている面があります。

同じようなことをやれば、大きな企業の方が規模の経済や範囲の経済、経験曲線効果が効いてくるので低コストで質のいいもの。言い換えれば、同等以上のものを安く提供できるのです。

その結果、競合が苦心して編み出した差別化要因を敢えて似せるという戦略で無効にできるという強力な強みがあるのです。

この他には、某飲料大手の自販機を考えてみます。その自販機には素敵な商品が沢山あり、スポーツドリンクも、緑茶飲料、コーヒー飲料も、大抵の他社の看板商品と似たような商品が存在しています。

このようにリーダーは相手の出方を見て戦うということができるのが強みなのですね。

■競争地位別戦略:チャレンジャーの戦略

チャレンジャーは二番手以下の勢力なので、リーダーを駆逐する必要があります。そのため、なんとしてでもリーダーの市場シェアを奪う必要が出てきます。

しかし、上で見てきた通り、正面から勝負してもリーダーには叶わないのです。

そのため、チャレンジャーはリーダーにはできない非オーソドックスな戦略で差別化を目指します。

対リーダーの戦い方は、創造的、革新的がキーワードとなります。

リーダーと同じ事をやっていてもかなわないため、リーダーとは違う方法をあえて取ります。この方法は苦し紛れに見えますが、とにかくやってみて突破口を開くために色々やっていくしかないのです。

■アサヒスーパードライは画期的だった

有名な例で、アサヒビールがキリンにシェアで負けていたときに味の軸を変えました。従来は『苦み』がキーワードだったのですが、『コク』と『キレ』に集中してアサヒスーパードライを販売しシェアを逆転したのです。

この際に、キリンがリーダーとして真似してきたらどうなったかはわかりませんが、いずれにしても、アサヒビールは独自の切り口を打ち出すことでシェアの逆転を果たしたのです。

このように軸をずらす戦略こそがチャレンジャーの突破口に成るのです。

(そして可能ならば、リーダーが模倣しにくい仕掛けも用意しておくとよいです。例えばリーダーはアクセスできない自社だけの経営資源を活用するなどです。)

■競争地位別戦略:フォロワーの戦略

フォロワーはリーダーやチャレンジャーの戦略を模倣します。模倣戦略、低コスト、臨機応変がキーワードとなります。

細々と生き残りを図るのも決してわるい選択肢ではありません。もしかしたら、市場が縮小して、上位陣が市場から退出するかもしれませんから。

その結果、残存者利益を獲得する可能性すら存在しています。

また、市場が十分に大きければ自社が生き残るだけのパイがあるかもしれません。例えば大企業にとっては、微妙な規模であっても、中小企業であれば代々事業を営めるほどの大きさがあるかもしれません。

成長市場でなければシェアの逆転は難しいかもしれませんが、新規投資もそこまで要求されませんので適正な利潤を積み上げることも可能かもしれません。

いずれにしても、市場のトレンドに乗り遅れないように長く続ける事が重要になってきます。

■競争地位別戦略:ニッチャーの戦略

ニッチャーは自らの市場を競争者と違うところに定義し、その市場にニッチを築くことを目指します。市場細分化、特定市場でのミニリーダー戦略、特定ニーズがキーワードとなります。

ニッチャーは、その選んだ市場のリーダーとなります。そのためニッチャーが自分の市場を築いた後の戦略は基本的にはリーダーの戦略定石と同じになります。

■フォロワーになりがちな中小企業の戦い方

経営資源に限りがあるため、リーダーやチャレンジャーと同じように考えると徐々に圧迫されていってしまいます。

そのため、基本は「模倣」を試みて手堅く収益を確保するのが重要です。そして、なにも奇をてらうだけが差別化ではなく、長く商品やサービスを提供してきたことによる「使いやすい」とか「安心」「信頼性」といった軸も目立たないですが強みになってきます。

ただし、ココぞというときには一点突破を試みることが大切になります。この一点突破は結果としてニッチャーを目指す方向に行くことになるかもしれませんが、中小企業にも長く営業を続けてきたという強みが蓄積されています。

その強みが最大限活かせる場所で、強みを活用した展開を行えば、十分に戦うことができたりするのです。

(どうしても用語集では一般論になってしまいますね。実際に一点突破した具体論も守秘義務があるから書きにくいですし。

ただ、実際に特定の市場のフォロアーだった会社が一点突破を図って新しい市場のリーダーになり高収益企業に変貌したというケースは割とあります。

そのため、ぜひ自分の会社のお客さんの顔を思いうかべて、「どうして自分の会社の商品を買ってくれるか?」を寝る前に書斎でノートを開いて書き出してみると突破口が浮かぶかもしれませんよ。)


説明で出てきた用語
残存者利益
範囲の経済
ランチェスター戦略

初出:2011/08/03
更新:2025/07/24