
アンゾフの成長ベクトルとはロシア生まれの経営学者、アンゾフ(Ansoff)が提唱した経営戦略上の意思決定の実用的枠組みです。今後の成長の方向性を分析・評価するために用います。
この成長ベクトルとは、製品と市場の二軸を取った表を作成し、成長戦略をそれぞれ①「市場浸透」②「市場開拓」③「製品開発」④「多角化」と分類して考えます。以下その4つの類型について簡単に説明していきます。

1.市場浸透戦略
現在の製品、現在の市場に対して他社との競争に勝利し売上増大や市場シェアの向上を目指す戦略です。一般顧客をロイヤルカスタマー化する事を目指す場合もあります。
用いる手段としては
・広告宣伝の強化
・価格の改定
・カスタマーリレーションシップ・マネジメント(CRM)の導入
等があります。
2.市場開拓戦略
現在の製品で新市場を開拓していく戦略です。新市場への投入の場合、しばしば新ブランドを立ち上げます。用いる手段としては
・国内市場から海外進出
・業務用から一般用への進出
等があります。
このまんがの例では、今まで販売していなかった付属中の職員へ同じ製品を売るということを言っています。
3.製品開発戦略
現在の市場に対して新製品を開発・販売する戦略です。用いる手段としては
・短いサイクルで新製品の投入
・製品のバージョンアップ
等があります。
このまんがの例では、同じターゲットに向けて海鮮サンドという新製品を開発すると言っています。
4.多角化戦略
新しい市場に新しい製品を提供していくという戦略です。例えば、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースです。用いる手段は様々なものが考えられます。
多角化戦略について詳しくは後日ご説明しますが、アンゾフは、多角化戦略の類型として以下のようなものがあると指摘しています。
すなわち、横に事業を広げるイメージの「水平型多角化戦略」、流通経路の川上や川下へ事業を広げる「垂直型多角化戦略」、技術、マーケティング分野について少なくとも既存の事業と片方が関係する方向へ進む、「集中型多角化戦略」、全く関係ない分野へ進む「集成型多角化戦略」です。
漠然と、成長を目指すと考えるよりも、このアンゾフの成長ベクトルといった考え方を用いると、考えが整理されますよね。
こちらもご参考に
経営戦略の実務的な構築方法
■実務面からの加筆:
中小企業の支援を行う際、この成長ベクトルはもちろん念頭に置きますが、実際に事業計画で効果的だと認められる(≒融資や補助金獲得に結びつく)ものは、
①の市場浸透戦略(現製品✕現市場)
②の市場開拓戦略(現製品✕新市場)
③の製品開発戦略(新製品✕現市場)
となります。いずれも既存の経営資源を土台としており、実現可能性が高いと判断しやすいものです。
仮に多角化を志向する場合は、その企業なりの必然性が必要です。
例えば、上の例から持ってくると、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースを上げていますが、
実は社長が大学の体育会の出身でコーチなどとのツテがある、トレーニング理論に精通しているとか、トレーニング支援アプリを開発している等
といった経営資源を活用できることが重要です。
建設業がカフェをやりたいなど、唐突な印象を受ける事業で「補助金が取れないか?」といった相談を受けたものでしたが、その企業なりの必然性があるかどうかがとても重要でした。
必然性があれば、事業計画の作成支援はとてもスムーズに行きましたし、逆に必然性がない場合は相談の段階で「この計画で事業を行うことはオススメしません」とはっきりとお伝えしていました。
①の市場浸透戦略(現製品✕現市場)
②の市場開拓戦略(現製品✕新市場)
③の製品開発戦略(新製品✕現市場)
となります。いずれも既存の経営資源を土台としており、実現可能性が高いと判断しやすいものです。
■④の多角化について
一方④の多角化(新製品✕新市場)は原則おすすめしません。唐突な印象を与える事業計画は実現性や成功可能性が低いと判断されがちですし、実際に補助金等の採択は難しくなります。仮に多角化を志向する場合は、その企業なりの必然性が必要です。
例えば、上の例から持ってくると、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースを上げていますが、
実は社長が大学の体育会の出身でコーチなどとのツテがある、トレーニング理論に精通しているとか、トレーニング支援アプリを開発している等
といった経営資源を活用できることが重要です。
■事業再構築補助金という補助金
少し前に事業再構築補助金といった補助金がありましたが、あの補助金は新規事業進出という多角化を求めて作られている補助金でした。建設業がカフェをやりたいなど、唐突な印象を受ける事業で「補助金が取れないか?」といった相談を受けたものでしたが、その企業なりの必然性があるかどうかがとても重要でした。
必然性があれば、事業計画の作成支援はとてもスムーズに行きましたし、逆に必然性がない場合は相談の段階で「この計画で事業を行うことはオススメしません」とはっきりとお伝えしていました。
初出:2011/07/27
更新:2025/06/05