競争戦略・差別化_001
本記事では、ポーター教授が提唱した3つの基本戦略のうち「差別化戦略」に焦点を当て、コストリーダーシップ戦略・フォーカス戦略との違いを整理しながら、中小企業がどのように独自性で勝つかを具体例を交えて解説しています。

<用語解説>
差別化戦略とは競合他社には見られない独自の特色を出すことによって独自性を打ち出し、顧客に選ばれることを目指す戦略です。

差別化戦略としては、例えば、品質の高さ、デザインの良さ、独自機能、プロモーションでの社会的認知度やイメージを高める、販売チャネルの独自性、接客力の高さ、アフターサービスや販売経路で差をつける、ブランドを構築する等が考えられます。

わりと思い浮かぶことすべてが差別化の源泉となるのが特徴なのですね。

また、この差別化がうまくいかないと最終的にはコモディティ化(ありふれた商品になってしまう)してしまい、価格競争に巻き込まれてしまいます。

■ポーターの競争戦略における差別化戦略とは

この差別化戦略はポーター(Porter)教授が提唱する3つの基本戦略の一つです。ちなみに3つの基本戦略とは、前回解説した「コストリーダーシップ戦略」、今回解説する「差別化戦略」、次回以降解説する「フォーカス戦略」です。

今回のテーマの『差別化戦略』とは、価格ではなく、『違い』で勝つための戦略になります。

■差別化戦略のメリット

さて、この差別戦略には以下のようなメリットがあります。
  • 価格競争からの脱却
独自の価値を提供し、価格以外の側面で訴求するわけですから、単純な価格競争を避けることが可能となります。

いいかえれば、競合他社と比べることができない商品やサービスになっていくため、欲しければうちの言い値で買ってくださいという境地を目指せるということです。
  • ブランドロイヤルティの向上
顧客に「君のお店の商品だから買うんだよ」と感じてもらうことで、リピーターが増えます。また、顧客が競合他社に移行することを緩やかに防ぐことも可能となります。
  • 利益率の確保(価格競争をしないですむわけですから)
これはそのままの意味で、価格競争をしないですむわけですから、適正な利潤確保がしやすくなります。

■差別化戦略のリスク

さて、差別化戦略を採用する場合次のリスクがあるとされています。
  • コストの差が広がりロイヤルティが維持できなくなる
 競合品とのコストの差があまりに広がりすぎて、差別化によるブランドロイヤルティが維持できなくなる可能性があります。

一定の価格差の範囲内であれば戦える優れた製品であっても、販売価格の差が2倍3倍と開いて来た場合に顧客が差別化した商品を選択するかどうかはわからないのです。
  • 差別化要因へのニーズが落ち込む
 このまんがでは生ものを押していく方法を考えていますが、例えば梅雨時に生ものを敬遠されてしまうなど、差別化要因へ対するニーズが落ち込む危険性があります。

他には、丁寧な接客という差別化要因を採用していた場合に、顧客が商品情報を十分に知ってしまえば、「煩わしい説明を聞かされた上に値段まで高い」と差別化要因が反転するリスクもあるのです。

■差別化戦略は中小企業のセオリーです

さてこの差別化戦略は中小企業にとってまず最初に検討する戦略であるということができます。なぜならば経営資源が相対的に乏しいと考えられるため、価格競争で真っ向勝負することは避けなければならないためです。

差別化戦略の採用にはリスクがありますが、何らかの形で競合他社と差別化をして自社が選ばれるようにしていく必要があるのです。

ただし、差別化戦略は顧客からの視点を持つことが重要です。顧客から見て十分に自社が差別化されているかどうか、これをしっかりと意識していく必要があります。

■差別化戦略はお客様がどう受け取るかが重要です

この視点を持たないと、この違いがわからないお客様がいけないんだなどと言う思考に陥ってしまいます。

そのためお客様からみて違いがわかるように打ち出していく必要があります。
例えば、一般消費者向けに販売してるにも関わらず、プロが見ないと微妙な差異を見抜けないような訴求してもそれは作り手の自己満足です。

また逆に、プロ用に販売しようとしているにもかかわらず、一般消費者向けの差異を訴求しても仕方ないのです。プロに向けて売るのであればプロから見て良いものを作っていく必要があります。
差別化したと考えて使いにくいものを作ってしまうといったケースも散見されます。

ボタンがごちゃごちゃ付いている一昔前の我が国メーカーが作ったような家電だと、多機能を訴求して差別化を図ったのかもしれませんが、単にわかりにくいものとなり、買ってから一度も使わない機能の実装費用分、高額な物を買わされた的な感情を持たれる危険があります

(というか、私はそう感じており、残念ながら大手国産メーカーの家電をなんとなく避けるようになってしまいました。)
  • 精神論もよくありません
また差別化戦略を取るためには自社の経営資源を冷静に考える必要があります。

経営資源とはヒトモノカネで表現されますが、自社の差別化ポイントは卓越した接客であると定義しているにもかかわらず、十分なの接客ができるだけの人がいなければそれは絵に描いた餅です。

また高い品質を差別化ポイントとしようとした場合、その品質を安定して提供できるだけの経営資源が必要となります。

それがないまま高い品質を努力で維持するというのも、また精神論になってしまいます。

品質とコストと納期はすべてを両立させることができないというQCDといった言葉もありますので、どの要素に差別化要因を求めるのかといった観点はとても重要です。

■まんがのお話

上のまんがでは前職の経験を生かして、「新鮮なお刺身定食」を通じて差別化戦略を実践している様子を書いてみました。先生が考えたポイントは

- 競合が提供していない“生もの”で勝負
- 前職が漁師という経営資源(お魚の目利きと新鮮な魚を仕入れられる流通ルート)を活かした差別化

と言った点でした。その結果、『顧客からの支持を集めて成功』といったシナリオで書いてみたのです。

このように「自社にしかできない価値」を活かすことが差別化戦略の本質です。

関連用語
デコンストラクション
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