競争戦略・コスト_001
コストリーダーシップとは競合他社より「低い原価」を達成することを目指す戦略です。このコストリーダーシップ戦略は「低価格」を目指すということとは違う事に注意が必要です。

一旦「低い原価」を達成したした場合、販売価格を引き下げ低価格で高い市場シェアを目指す、他社と同じ金額で販売し高い利益率を確保するといった展開が可能となります。

低価格販売を行う場合、高い市場シェアを生かしてさらなる低価格を実現しコスト面でのリーダーシップを取る事が可能となります。(先日解説した経験曲線規模の経済の効果でさらにコスト削減が可能となります。)

このコストリーダーシップ戦略はポーター(Porter)教授が提唱する3つの基本戦略の一つです。ちなみに3つの基本戦略とは、今回解説する「コストリーダーシップ戦略」、次回以降解説する「差別化戦略」「フォーカス戦略」です。
さて、コストリーダーシップ戦略を採用する場合次のリスクがあるとされています。

1.テクノロジーの発展
 技術の進歩が過去の投資や習熟を無駄にしてしまうケースがあります。例えば、そろばん製造でどれだけ優位性を誇っていたとしても、計算機やパソコンが誕生した段階で基本的には過去の投資は陳腐化してしまいます。

2.コストにだけ集中してしまう
 製品やマーケティング方法の変更の必要性に気づくことができなくなってしまうケースがあります。

このまんがの例では学食のおばちゃんは、どうやら政治力を駆使した参入障壁の構築には失敗しましたが、メニューを2割引きしても問題ない程度にコストの引き下げには成功していたようです。
  • コストリーダーシップは禁じ手か
コストリーダーシップは、競合よりも低コストを達成することを目指す戦略です。このことから、経営資源が相対的に乏しい中小企業にとっては禁じ手であるとされています。

というのは、このコストリーダーシップが結果としての安売りと結びついてしまうからです。

安売りを始めると、最終的には経営資源の豊富な自社よりも企業規模の大きな企業にはかないません。また、一度下げた価格は再度上げることは非常に困難である事から、安売りは禁じ手であるとされているのです。

しかし、本当の意味でのコストリーダーシップは原価を下げることを目指すだけであって、安売りをすることを目指すわけではありません。十分に原価を引き下げれば適正な利潤を確保しやすくなりますし、競合に対して低価格以外の戦略をとることが可能となります。

例えば、価格はそのままにしますが(価格を下げるのは簡単ですが、一度下げると再度価格を上げるのは困難を極めます)サービスを追加する事で競争力を確保するといった方法です。

また、コストリーダーシップ戦略が成功すれば、競合が参入してきにくくなりますし、原材料等の仕入れ価格の上昇も吸収することが可能です。
  • コストリーダーシップで自社よりも弱い企業を叩け
このような大きなメリットのある方法なのですが、やはり経営資源が豊富でないと難しい面があります。

コストを引き下げるためには、規模を大きくする規模の経済、様々な商材を取り扱うことで得られる範囲の経済、累計生産量を増加させることで得られる経験曲線効果などが必要ですが、どれも規模の大きな企業の方が有利になる考え方です。

しかし、規模の大きな企業と言っても絶対的な規模ではなく、相対的な規模で考えます。
例えば、あなたの会社が客観的にはそれほど大きな企業でないとしても、地元で1番の規模ならば、コストリーダーシップ戦略で2番手、3番手の市場シェアを奪うと言った方法は検討に値します。(こういった考え方がランチェスター戦略です。)
  • 定石は
と、コストリーダーシップについて書いてきましたが、やはり中小企業にとっての定石は差別化戦略であると言われています。

ただ、競争相手の出方を知っておく意味でもコストリーダーシップ戦略については知っておく必要があるでしょう。


説明で出てきた用語
範囲の経済
ランチェスター戦略

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