QCD_001
QCDとはQuality(品質)Cost(コスト) Delovery(納期)の頭文字をとったもので、生産の3条件とも言われます。つまりモノづくりには、もっと言うと仕事には、品質・コスト・納期が大切ですよという当たり前のことを言っている用語です。

これらのQCD3つとも大切ですが、これらすべてを同時に追求することは難しいことが現実です。たとえば、

1.品質を高めようとした場合
より精度の高い部品を用いることによって余分なコストがかかったり、慎重な作業を行うために完成まで時間がかかり納期長くなったりします。

2.コストを下げようとした場合
精度が若干劣るが許容範囲内の部品を用い、品質を許容範囲内で落とす。もしくは、工場の操業に余裕があるときに製造し納期は長くなります。

3.納期を早めようとした場合
こちらも許容範囲内で精度の低い機械を用いる、もしくは、コストをかけ時間外労働を行ってもらえば納期を早めることは可能です。

ただし、現実的には品質を下げるということは行われません。これは、QCDがこの順序で記述されることにも関係しています。ではなぜアルファベット順でCDQではいけないのでしょうか?

これはQすなわち品質が一番重要であるからです。これは、品質が低いものをいくら低コスト・短納期で作ったとしても、そのようなものは市場には受け入れられないからです。

また、仮に受け入れられる範囲の低品質のものを製造したとしても、

1.低品質であるが故のコストがかかる
歩留りが悪いため作り直しのコストがかかる、不良品に備え在庫を余分に抱えておく必要がある、検査工程に余分な資源を割く必要がある。

2.低品質であるが故の納期へ余裕を持つ必要がある
各工程の品質が不安定であると、必要数量を確実にそろえるために余裕を持った納期の設定が必要となる。

といったことが考えられます。

キャプチャ
  •  工夫の余地はあります
ただしこのトレードオフは『既存の経営資源・ノウハウ』で到達可能な範囲で生じています。経済学でいうところのフロンティアに近いような考え方です。

現在のまま品質やコスト納期などの要素のどれかを向上させようと思うと、トレードオフが発生します。

しかし新たな経営資源を導入し他場合(例えば非常に生産性の良い機械を導入するような場合)このQCD全てが改善するということもあり得ます


また経営支援を導入するのではなく、新たなノウハウに基づいて工程を簡略化するといったことが行われれば、コストや納期面で有利になります。

そしてコストや納期面で有利になった為生じた余剰経営資源を品質にふり向ければ、やはりQCD全てが改善するということもあり得ます。


実務面からの加筆:
QCDは原則論ですが、事業計画を作成する際には意識する必要があります。

特に製造業の方をご支援する際にはこのようなことをわざわざ言うことはないのですが、サービス業の方やその他の業種をご支援する際には一度目線合わせをしておくとよいです。

例えば、「良いものを早く安く提供したい」と考える社長は多いものですが、それらは一般的には両立せず、なにか新しい設備投資を行わないとできないといったことだけでも柔らかく伝え、理解してもらえれば、支援した甲斐があるというものです。

「すべてを両立できない中で、どのようなバランスで商品やサービスを設計するかが大事ですので、お客さんの声を聞いてみましょう」などとつなげていくと、良い支援につながっていくと思います。

社長は「うちは納期が早いことが魅力だと思うし、そうなるように心がけています」などとおっしゃっていても、実際にお客さんの声を聞いてみると、実は納期はそんなに重視していなく、品質の高さを魅力に感じていたといったことも起こるわけですから。(この場合、SWOT分析で自社の強みにあげるのは納期が早いではなく、品質が良いになります)

また、弱みを強みにしていくような商売もありえます。例えば、「職人の手仕事なので納期は遅くなります」というのは一般には弱みですが、それを訴求ポイントとしてより品質が良いものだと考えてもらうような売り方も存在します。

商売は自由なんですね。

・最後に
もちろん支援者側としては自分たちの身を守るためにも念頭に置いておく必要があります。特急対応を依頼された場合、コスト面か品質面が犠牲になるといったことを考えて断るか受けるかの選択をすることが重要です。

初出:2011/07/20
更新:2025/06/07