範囲の経済とは、単一の事業ではなく複数の事業を持つことによって、低コストの運営が可能になることを言います。シナジーと非常に近い考え方ということもできるかもしれません。
範囲の経済性とも呼ばれ、企業規模が拡大することにより、様々な経営資源を共用することができるようになるために生じる効果であると言われています。
近い言葉で規模の経済がありますが、規模の経済は単一の製品やサービスの生産量が増加することで生じる効果です。
範囲の経済はこれとは異なり、様々な製品やサービスを一つの企業が提供する事で生まれる効果なのです。 簡単に比較すると以下のような関係性になります。
範囲の経済 | 規模の経済 | |
発生する条件 | 一つの企業が多数の事業を行うこと | 一つの事業の規模を拡大すること |
生じる効果 | 総コストの削減 | 総コストの削減 |
効果が生じる理由 | 経営資源を共用することができ、単一の事業を実施する時に比べ固定費が薄まるため | たくさん作ることで、固定費が薄まるため |
- 範囲の経済は経営資源が共用できることで生じる
以下、具体的にどのような経営資源が共用できるかを見ていきます。
1.既存事業の販売チャネルやブランド
既存事業が持っている販売チャネルやブランドをそのまま用いることが可能です。イメージとしてはブランドを確立し店舗網を持っている薬屋さんが、関連商品として介護用品を取り扱う感じです。この場合、○○薬局の介護用品とのブランドや、店舗網がそのまま活用可能です。
2.既存事業の生産設備
既存事業が持っている工場や機械を使用できれば、追加の設備投資をせずに、新規事業に進出することが可能です。
3.固有の技術
食品事業を営んでいる企業が、その事業のなかで獲得した技術を用いて、健康食品事業に進出するケースなどがあります。
但し、何でもかんでも範囲の経済が生じるわけではありません。まんがで指摘しているように、全然合わない食品を製造・販売したり、本業のイメージを損なうようなものを製造・販売すると、範囲の経済はうまく働かないといわれています。
- 範囲の経済を大きく働かせるためのコツ
それは、事業の重複範囲をなるべく大きくさせることです。
例えば、いくら範囲の経済が効いていると言っても、薬局が自社店舗の空きスペースでオーディオ機材を売るよりは、健康食品を販売する方が範囲の経済は大きく働きます。
これは、販売員といった経営資源がオーディオ機材を売る場合にはあまり重複しませんが、健康食品を売る場合には重複するためです。
また、調味料を作っている企業が、その発酵技術などを活かして健康食品を開発するなどと言ったことも範囲の経済が大きく働くと考えられます。
- 単なる多角化とは違う
しかし、全く既存の事業と関係ない分野に進出してもあまり範囲の経済が効いてきません。
アンゾフのマトリックスの考え方で言うところの製品軸か、市場軸のどちらかを既存のものにすると言った考え方で企業を大きくしていけば、範囲の経済が働きつつ成長していくことができる可能性が高いでしょう。
解説で出てきた用語・関連用語
アンゾフの成長ベクトル
経験曲線
シナジー
規模の経済
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