5Sとは職場で徹底されるべき状態を示した言葉です。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つの要素は全て頭文字がSとなるため、5つのSから5Sとなります。
■5つのSとはなにか
この5Sは以下の5つですが、それぞれに達成すべき状態が決まっています。以下、ざっくりと説明します。
「整理」とは、いるものといらないものとを分け、いらないものを捨てる事です。
「整頓」とは、いるものをいつでも使えるように明示しておく事です。
「清掃」とは、掃除をして綺麗にしておく事です。
「清潔」とは、上の三つを徹底して維持する事です。
「しつけ」とは、決められた事を守るように習慣づけする事です。
このまんがの例ように整理整頓がされていないと、必要な時に必要な物が見つからないため無駄が生じますし、最悪の場合事故につながる危険性もあります。
5Sは当たり前の事といえば当たり前の事ですが、その当たり前の事を徹底する事によって、安全の確保や無駄の削減、従業員の士気の向上等の効果を得る事ができます。
■5Sの各要素について
ここから5Sの各要素について細かく見ていきます。なお、5Sとはこの順番に進めていくと言った一つの行動指針でもあります。
また、それぞれの要素を『徹底する』といったニュアンスがあります。この徹底という言葉が重要で、気まぐれに整理整頓するといった活動ではなく、徹底した改善活動なのです。
もちろん一つ一つの要素は心がけるだけで誰でもできます。しかし、物事を徹底するのは非常に難しいことなので、5Sを徹底する指導を行うだけで非常に高い業績を上げているコンサルタントの先生もいますし、奥深い分野なのです。
■1.整理とは何か
5Sの最初の一つは整理です。整理とはいるモノといらないモノを区別して、いらないモノを捨てることです。
この順番にも意味があって、『整理』つまりいらないモノを捨てる事が最初に来ている事に注意してください。最初に捨てるというのはECRSという考え方に通じますね。
まずは、いらないモノを捨てる。いらないモノがある段階で、その後の整頓しても清掃しても上手くいかないと言ったことを示唆しています。
例えば、いらない箱が床に置いてある向上を考えてみます。いつか使うだろうと思って、倉庫の入り口付近においてある事を想定します。
この倉庫は毎日、材料の入庫と出庫が行われるため、入り口にある箱は微妙に邪魔です。実はその箱をよけるために1回あたり10秒の時間がかかっているとします。
入庫と出庫は一日120回行われており、工場は年間240日稼働だとします。また工場で働く人の平均賃金は1時間あたり2,000円だとします。
この箱はどれだけの余計なコストを発生させているかわかりますか?
答えは
10秒×120回×240日÷60秒÷60分=80時間
80時間×2,000円=160,000円
となります。
邪魔な箱が一つ置いてあるだけですが、これだけの余計なコストが生じているのです。また、箱に入っているモノの在庫コストなどを無視しているので、これよりももっと無駄が生じているかも知れません。
ここまで極端じゃないにしても、モノがある事によって探す手間がわずかですが増えますし、整頓や清掃の手間も増えます。このわずかなモノが積み重なると大きなコストとなります。
あーもーぜんぜん片つかないわ!一生懸命しまってもすぐに散らかっちゃうし!
オーナーさん、最初にいらないモノを捨てるといいってききましたよ。色々しまっていますけど、本当に使うかどうかで分けた方がいいと思います。
わかってはいるのよね。開店当初のPOPとか絶対使わないけどつい取っておいちゃうのよね。でも、確かにこのPOPを捨てれば仕事が楽になる気がするわ。
■2.整頓とは何か
次にモノを使えるように並べておくことをします。整理を最初にしてモノを減らしてから整頓するわけですから合理的ですよね。
仕事や学校で、何かを探し回る手間って感じたことがありませんか?すごく忙しい感じはしますが、残念ながら何かを探している時間は何の付加価値も生んでいない時間です。
そのような時間の発生を防ぐために整頓を徹底するのです。
飲食店で考えるならば、包丁は包丁がしまってあるところへ、ザルはザルがしまってあるところへ、フォークはフォークがしまってあるところへと誰が見てもわかるように必ずそこにしまっておくことです。
また、しまい込んではだめで、必要な時にすぐ取り出せるようにする必要もあります。このようなしまい方をしっかりと工夫することが整頓なのです。
ふー片ついたわ。やっぱりモノがなくなると仕事がしやすいわね。
次は、決められたところにモノをしまうことよ。POPを作るために、いつも色紙とかマジックを探し回っているからそうならないようにするといいと思うわ。
そうね、いつも思っていたけど、探し回る時間がなくなればもっと早くうちに帰って次の企画が立てられるのよね。
■3.清掃とは何か
清掃とは5Sの3番目にきていますが、掃除をしっかりとしてきれいな状態に保つことを言います。
汚いのときれいなのであれば綺麗な状態がいいぐらいの意味に取る人もいるかも知れませんが、清掃で言うところの綺麗な状態は、清掃を行いながら細部を確認するといった意味を持ちます。
機械や道具に違和感があれば、壊れる前に保全活動を行えますよね?壊れてから直すのではコストがかかりますので、壊れる前に異常を感知するといった意識を持つことが大切です。
また、清掃を常に行っていれば、職場に余計なモノがないはずです。そのような状況で余計なモノがあれば「あれ、なんか変だぞ」といった違和感につながります。
そのような違和感は改善の大きなヒントになりますし、事故を未然に防ぐといった意味でも重要なのです。
5S頑張るって宣言したのはいいんですけど、清潔って何かちがくないですか?
そうよね、ニュアンス違うわよね。でも状態を維持するって事は重要なのよ。
■4.清潔とは
5Sの4番目である清潔は今までの言葉とはニュアンスが異なってきます。『整理』『整頓』『清掃』は行動です。しかし『清潔』は状態を示す言葉です。
そのため、清潔は整理整頓清掃が行き届いた状態を維持するといった意味になります。
では、なぜ清潔にしておく必要があるのでしょうか?それは、異常を浮かび上がらせるためです。
例えば、汚い工場では機械が油漏れを起こしていても誰も気がつきません。しかし、綺麗で清潔な工場であれば、油漏れを起こした機械はすぐにわかります。
このことは事故を防ぐ意味でも重要です。
そして、清潔を徹底するためにあえて汚れが目立つ色に床を塗る事までします。清潔という状態まで徹底で来てれば、逆に汚れが目立つ方が異常がわかりやすくて良いと言った境地になるのです。
■5.しつけとは
そして5Sの最後は躾です。この躾とは、従業員の教育訓練を表しています。言われなくても、5Sの整理、整頓、清掃、清潔を守るようにする事です。
また、それらが実現しやすくなる環境や仕組みを整えることも示しています。さらに、教育訓練だから従業員にやらせるだけで良いと考えるのは大きな間違いです。
社長が、工場長が、部門長が、料理長が率先して5Sを実行するのが一番の躾となります。
要するに、職場ぐるみで5Sを行う状態にするといった事が躾なのです。
さー5Sよ!ちゃんとやってよね!
ぴーーーーオーナーさん。それはだめよ。
あらどうして?ちゃんと5Sを徹底するのが躾じゃないの?
躾って、状態を習慣化することだから、偉い人が率先しないとだめなのですわ。
そっか、5Sで職場がとても改善したからついつい、調子に乗ってしまったわ。自分でちゃんとやっていかないとね。
■5Sで何が変わるのか
このようにしっかりと順番をおって5Sに取り組めば、職場が変わるイメージがつかめたと思います。
なお、5つの要素を簡単にまとめましたので参考にしていただけばと存じます
解説で出てきた用語・関連用語
ECRS
在庫費用
予防保全
事業を営むのに必要な情報姉妹サイトとして開業や創業、事業経営に大切な情報をコンサル目線でまとめてみました。