まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

中小企業診断士が実務で培った経験を基に用語集を作っています。

経営用語を解説することを通じて、社会の生産性向上に貢献したいと考えています。そして、社会の生産性向上を通じて、

生産性の向上で時間的・経済的に余裕ができる→地球環境への関心UP→省エネ性能の優れている製品への買い替えを促す→経済的成長と次世代に良い環境を残す

といった風にまんがで気軽に経営用語は貢献したいと考えています。

ご意見を頂戴できれば幸いです。
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マーケティング
2025年7月14日

プライスリーダー | 業界リーダーは市場の秩序を作り出します

プライスリーダー_001
プライスリーダーとは、業界全体の価格設定に影響を与えることができる業界リーダーのことを言います。簡単に言うと、価格支配力を持った企業という事です。

プライスリーダーは市場シェアが二位以下の戦略を出方を見ながら戦略を考えることが可能です。なぜならは市場で最大の経営資源を持っているからです。

そして、プライスリーダー以外の競合他社はプライスリーダーの定めた価格を基礎として、自社の価格を設定する事となります。(プライステイカーといいます)

■プライスリーダーとプライステイカー

この業界全体に影響力をプライスリーダーに対してその他大勢の企業をプライステイカー(価格受容者)といいます。

ざっくりとこの2つを表にまとめてみました。
項目 プライスリーダー プライステイカー
価格決定権 自社で価格を決定する 市場価格を受け入れる
市場での立場 業界のリーダー企業 フォロワー(追随者)企業
競争戦略 価格を維持・安定させることで主導権を維持 リーダーの価格を前提に自社の利益を確保
影響力 業界全体の価格形成に影響を与える 価格にはほとんど影響を与えない
典型的な業界構造 寡占市場 完全競争市場
代表例 トヨタ、ユニクロ、Amazon(カテゴリによる) 中小規模の同業他社

これらの代表例と比較して、中小規模の同業他社が価格決定する力がないことは明らかです。自社が適正な利潤を取ろうとしてある程度の高値をつけても、プライスリーダーが決めた価格帯から逸脱して高額だったならば、殆ど売れずに市場から退場させられるのが想像されますよね。

■プライスリーダーは自ら値下げはしない

このような市場全体の構造から、プライスリーダーが自ら値下げをすることは無い(少なくても戦略定石としてはあまり考えにくい)といえます。

例えばプライスリーダーが値下げした場合、ほかの競合他社はその値下げに追随せざるを得なくなってしまいます。
スクリーンショット 2025-07-14 213747
<この図は、プライスリーダーが価格を決定し、競合が追随する流れを示しています。競合が値下げしてもリーダーは動かないという力関係がポイントです。>


逆に、プライスリーダー以外の競合他社(プライステイカー)が値段を下げたとしても、プライスリーダーは追随する必要はありません。なぜならば、プライスリーダーは市場シェアを十分に握っており、その結果として最も低コストで製品を供給できるだけの経営資源を持っている可能性が高いからです。

そのため、競合他社が非常に無理をしてせってした価格に付き合わなくとも、相手の息切れを待つことが可能です。

また、仮に競合他社が市場シェアを侵食して来たとしても、十分な余力を持って対処することができるため、慌てて追従する必要がないからです。

このように、業界のリーダーはあえて価格競争を行わないという選択肢が一般的なのです。(リーダーの戦略定石

■市場シェアを取りすぎないという選択もありうる

この背景には、最適な市場シェアを維持することの方が市場シェアを単純に最大化するよりも利益につながるといった冷静な判断があります。

例えば、市場シェアを過剰に取るために魅力的ではない市場に進出するのではなく、美味しいところだけ確保したシェアを維持できればそれでいいのです。

そのため、価格を維持するといった発想にがあるのです。

このようにプライスリーダーは業界全体の価格設定に主導権を持てる立場であるということができます。

この意味でプライスリーダーが存在する市場においては、商品の価格が下がりにくいという傾向が出てきます。

この価格の下方硬直性は 商品やサービスの供給元が少ない場合だけでなく プライスリーダーが存在する場合も生じるのです。

■仮にプライスリーダーが値下げをする場合

このような場合もプライスリーダーの立場はとても有利です。

例えば、あなたの会社が業界の中でプライスリーダーでなかったとします。その時、プライスリーダーがさらなる市場シェア拡大を目指して衝撃的な水準の値下げを断行したとしたら、その値下げに追従しないわけにはいかなくなります。

たとえそれが、あなたの会社にとって適正な利潤を到底確保できる水準でなくてもです。

このようにプライスリーダーはほぼ一方的な力を行使することができるのです。

■プライスリーダーはその市場で最強の企業です

上記のことは、プライスリーダーは通常、その市場内で最大の企業であるということが背景となります。

そのため、規模が大きいことによる低コスト(規模の経済)や累積生産数が多いことによる低コスト(経験曲線の効果)を享受しています。

簡単に言うとプライスリーダーは競合よりも安く物を作れるんですね。そして、そのような企業が価格設定の主導権を持って、価格を維持している場合、2位以下の競合他社は何とかしないとジリ貧になってしまいます。

このまんがでは2コマ目ではリーダーの言う事に、その他の人たちは追従せざるおえない事を示しており、3コマ目では逆にその他の人たちの行動にリーダーは付き合う必要がない事を示しています。

まあ、通常はこのまんがのように振る舞ったら感じ悪いですよね。

解説で出てきた用語・関連用語
市場シェア
価格の下方硬直性
プライステイカー
プライスメーカー


参考記事
プライスリーダーに対抗するためのに:競争地位の4類型

■プライスリーダーに対抗するために(中小企業の戦略)

多くの読者は中小企業側の立場で本記事を読まれると思いますので、プライスリーダーへ対抗する方向性を示して本記事を締めたいと思います。

その方向性は、プライスリーダーと正面から戦わない・相手にしないということです。

例えば、
  • 地域密着のサービス(迅速な対応、地域柄に合わせた柔軟なカスタマイズ)
  • 専門性の高さや、ニッチ市場を深堀りする
  • ブランドストーリーなどナラティブな文脈で理念追求したり共感を形成する
  • アフターサービスなど保証の手厚さで戦う
といった大手企業と直接戦わないことです。これは中小企業側の戦略の定石と言ってもよく、「山崎パンや第一パンとパンの値段や品質で勝負しないでください」とお伝えしているところです。

中小・小規模事業者さんはパンを作るなら、独自の酵母を使うとか、この街で取れた酵母を使うとか、あなたの会社が適正な利潤を確保して存続できる値段を正当化できるストーリーや差別化要因を作り上げることが重要なのです。

初出:2012/05/17
更新:2025/07/14



マーケティング
2025年7月13日

ジャラパゴス | 独自の進化をすると言っても、世の中の流れも見ておかないと取り残されます

ジャラパゴス
ジャラパゴスとは、日本独自仕様で進化を遂げ、日本国内では競争力を持つが、世界的には競争力を持っていないような製品やサービスを指す言葉です。

この言葉は、日本(ジャパン)とガラパゴスの2語を組み合わせた造語で、世界の潮流を無視し、日本独自仕様で進化を遂げた製品やサービスが、その特殊な進化ゆえに世界的には需要が著しく少なくなってしまうとの現象を指した言葉です。

(ガラパゴス諸島の生物のように、外界から隔絶された環境で独自に進化を遂げたといったイメージです。)

例えば、スマートフォンが生まれる前の携帯電話などを思い浮かべていただければと思います。

この種の携帯電話は日本のユーザの求めるニーズを満たす、非常に高性能な製品でした。

しかし、世界的には日本独自に進化した方向性とは異なる仕様が求められており、日本の優れた携帯電話であったとしてもあまり世界的には競争力を持てずにいました。

そして、スマートフォンといった黒船がやってきた時、ジャラパゴス化していた国内の携帯電話は総崩れといった状況を迎えてしまったのです。

このように、顧客が求めるモノを作るという顧客志向とか、ニーズ志向などというキーワードで示される方向で頑張っていたけれども、独自仕様が強すぎてジャラパゴス化してしまったというのは皮肉ですね。

■ジャラパゴスあれこれ

幾つか挙げてみると、
・おサイフケータイのFelica
・地デジとかのテレビ
・家電のごちゃごちゃしたインターフェース
などなど

いや、技術は優れている場合も多いんですよ。むしろ世界標準のデファクトスタンダード(普及したから事実上の標準になったもの)とかデジュールスタンダード(ちゃんと標準を決めたもの)よりも優れているケースも多くあるのですが、どうしても普及率という意味で我が国市場に閉じ込められてしまったのです。

(皆が使うと技術的優位性云々とは異なった切り口のネットワーク外部性(皆が同じものを使うからこそ価値が生まれるという考えかた)という効果が働き始めるのです。)

■ジャラパゴスが許されるほど独自性と内需が分厚かったが・・・

我が国市場はとても大きく、内需だけで完結するだけの規模がありました。我が国で覇権をとれば、それだけで食べていけるわけです。また、英語圏と言語が断絶しているので我が国独自の市場が温存されたといった構造もあります。

このように、我が国独自で進化してもいいじゃないかと考えることもできなくはないのですが(そういったマーケティング戦略上のポジショニングは十分に正当化されます)、世界に打って出る事が難しくなりますし、調達コストも高止まりします。

また、海外からいわゆる黒船(上の例でスマホですね)がやってきた際に、一気に駆逐される危険性も存在するのです。

■今もジャラパゴスは発生しうるの?

筆者は、システムで決裁するとハンコ画像を押してくれるといった機能を見たことがあります。また、2025年現在FAXが現役だったりする姿も見たことがあります。

でも、我が国独自のニーズに対応する仕組みって刺さるんですよね。だから、腹をくくってジャラパゴスを狙うのも中小企業の戦略としては十分にあり得るのです。

初出:2013/09/27
更新:2025/07/13


経済学
2025年7月13日

売り手市場 | 売り手がわの立場が強くなる状況の事を言います

売り手市場
売り手市場とは、市場で取引されている売り物が需要に対し相対的に不足しているため、売り手側にとって有利な状況になっていることを示す言葉です。

■売り手市場の具体的状況

例えば、あなたが持っている時計をネットで販売しようとした時を考えます。

このような時に、買いたいとのオファーが殺到したならば、その中で有利な条件を探すことができますよね?特に個人的な恩や思い入れが無ければ、条件の悪い相手にワザワザ売ったりはしないはずです。

このように、売り物(供給)にたいして買い手(需要)が多ければ、売り手側の方が有利となるのです。

(最終的には、「そんなに有利なら、売り手として参入しようか」といった風に、売り手側が増えて売り手の有利さは解消されます。この辺は経済学の需要と供給が均衡するといったお話ですね。)

■人事用語としての売り手市場

さて、以上が一般的な売り手市場についての説明でしたが、人事用語、特に新卒の就活に対して売り手市場と言われる事があります。この場合の売り手は学生さん(労働力の売り手)、買い手は企業側(労働力の買い手)になります。

というのは、新卒の就活はどれだけ企業側の需要が増えても供給が増えることは基本的にはありませんし、どれだけ企業が採用を絞っても、供給が減ることがないので、売り手市場や買い手市場になりやすいのです。

(需要が多いから前倒しで学校を卒業しようとか、需要が少ないから学校の卒業を控えようといった事はあまりないですよね?(全体の一部は進学といった行為で調整されます))

という事は、供給は常にほぼ一定で需要のみが増減する。つまり、売り手市場や買い手市場は就活生には何の責任のない外部的な事象なのです。

関連用語
買い手市場

■売り手市場では中途採用や転職でも、求職者側が有利になるか

新卒採用については、このように売り手市場となっていますが、中途採用や転職市場ではどうなるでしょうか?

これは、企業側の考えを想像すればある程度見えてくると思います。

それは、

新卒の採用が上手くいかない→それならば中途採用に力を入れよう→企業間での争奪戦激化

といった流れです。

採用市場全体は一つの大きな市場であることから、中途採用や転職市場に置いても求職者側が有利となるです。

その証拠に一昔前(本記事を最初に書いた2015年当時はそこまでではなかったですが、2000年代においては)転職35歳限界説などが語られていました。しかし、2025年において転職が35歳で限界だなどとは求職者も企業も考えていません。

■売り手市場には労働環境を恒久的に変えるインパクトがあります

このようにそもそも新卒採用が難しくなり、転職市場が活性化している状況では、新卒初任給をあげたり処遇の改善を行うなど、労働市場で人材という経営資源を調達するための競争が行われています。

そのため、一昔前の日本企業のように従業員を使い潰す的な「ここで通用しなかったら何処へいっても上手くいかない」といった働く人の足元を見るような、労務管理はすでに過去の遺物です。

そのようなことをしていると、評判が悪化し従業員の採用に苦労したり、何より、今いる従業員さんが転職してしまい人手不足で大変なことになります。(レピュテーションリスクといいます)

そのため、邪悪な労務管理は市場原理で淘汰されるというわけです。

■企業側の採用戦略はどうするか

身も蓋もない言い方をすれば、少なくとも競合他社と同じだけの報酬と処遇を用意して・・・となりますが、すでに中小企業の労働分配率は以下の表(中小企業の人件費および労働分配率の推移を示したものです。赤線は労働分配率であり、既に非常に高水準であることがわかります。)のようにかなりの水準となっており、もはや賃上げ余力は乏しいと考えられます。
 中小企業白書_労働分配率
出典:2024年度版_中小企業白書 中小企業庁
図表からは、中小企業の労働分配率は一貫して高止まりしており、獲得した付加価値の殆どをすでに従業員に配分しているのです。そのため、そのためそれができたら苦労はしないでしょう。

その場合は、「働いてくれれば我が社で〇〇といったキャリアを積むことができる」とか、「我が社の理念は」とか「不効率な働き方を廃止して、早く帰れるようにしています」などで訴求を図る必要があるでしょう。

いずれにしても、人口動態調査からは生産年齢人口が減少し続けることがわかっていますので、人手不足傾向は今後も変わらないと考えるのが妥当です。

そのため、昭和的、平成的な労務管理からパラダイムシフトし、働きやすい職場と成果をちゃんと上げることができる職場を両立させる必要があるのです。

初出:2015/02/17
更新:2025/07/13


情報
2025年7月12日

UU

UU_001
UUとは、ユニークユーザーの事で、Webサイトに何人のユーザが訪れたかというアクセス数の考え方の一つです。英語ではUnique Userと表記されます。グーグルAnalyticsではユーザー数と表示される指標です。

アクセス数と言えば、累計表示回数であるPVとこちらのUUが良く用いられます。

■PVとUUの違いはなんですか?

それでは、PVとUUの何が異なるのでしょうか?簡単に言うとPVは累計閲覧数、UUは訪問者数を示す指標です。

UUは訪問者数を示しているので、訪問者が累計何ページを見たかなどは関係ありません。
 
例えば、100人の閲覧者がそれぞれ100ページずつ閲覧しても、1ページしか閲覧せずに帰ったとしても同じ100UUなのです。

逆に、PVは累計閲覧数を示しているので、上の例では、100人の閲覧者が100ページずつの閲覧の場合、10,000PVになりますし、100人の閲覧者が1ページずつしか閲覧しなかった場合100PVなのです。

■UUを把握してどうするの?

さて、このようなUUですが把握して何に使うのでしょうか?これは定義に戻って考えていきたいと思います。

UUは『ユニークユーザーの事で、Webサイトに何人のユーザが訪れたかというアクセス数の考え方』と本サイトでは解説していますので、何人Webサイトに来たかを知りたい時に使う指標となります。

■施策の成果指標としてUUを使う

例えば、何らかのキャンペーン施策を行う場合を考えます。このときの効果測定として、例えばSNSでの投稿前後でのUUを測定することが考えられます。

キャンペーン情報を提供したらUUが50%増えたとかであれば、そのキャンペーンが集客という意味では効果があったと認識することが可能です。(売上につながっているとは言っていません)

この時に、PVを成果指標とすると、ページビューですから、1人のすごく興味を持った人を誘客しその人が100ページも見たら数値が歪んでしまい、目的を達成できなくなる危険性もあるわけですね。

(UUなら+1ですがPVは+100なので、例えば、誘客したサイト規模が月間100UU、200PVぐらいだった場合、+100PVになってしまうので、すごい成果が出たと誤認する可能性があります。)

■サイトの改善に向けた示唆を得るためUUとPVをセットで使う

例えば、UUは増えていますが、PVが伸びないといったことも考えられます。その場合、せっかく見に来てくれた人があまり他のページを見てくれていないことを示します。

このような場合は、サイト内の導線を改善して回遊性を高めるといった方策に繋がります。

他方で、UUはそのままで伸びていないがPVが伸びている場合は、特定の有用なコンテンツがあり、ファンの育成が進んできていると考えることができるのです。

■UUの目安は

わざわざ難しい論点を書かなくてもいいと自分でもわかっているのですが、自分自身の調査のために以下のように調べてみました。

本サイトやスモールビジネス向けのWebサイトについての統計は見つけられませんでしたが、HubSpotの調査では、平均サイト訪問者数が月間375,773UU、中央値20,000UUと報告されています(対象は主に米国のB2B・B2C混合)

これは大規模サイト過ぎてあまり参考にならないかもしれません。もう少し中小規模向けではDatabox社の調査が参考になります。

Industry(業種) Users(月間UU平均)
Apparel & Footwear(アパレル・履物)21.41K
Automotive(自動車)9.06K
Construction(建設)1.86K
Consulting & Professional Services(コンサルティング・専門サービス)1.91K
eCommerce & Marketplaces(EC・マーケットプレイス)7.08K
Education(教育)5.37K
Food(食品関連)6.12K
Health Care(医療)2.46K
Health & Wellness(健康・ウェルネス)3.18K
Information Technology & Services(情報技術・ITサービス)2.87K
Industrials & Manufacturing(製造・工業)3.04K
Real Estate(不動産)2.02K
SaaS(クラウド型ソフトウェア)2.74K
Technology(テクノロジー全般)3.66K
Travel & Leisure(旅行・レジャー)7.12K

※出典: Databox – Website Traffic Benchmarks by Industry(2023年4月時点)
※日本語訳は著者によるものです。


どうでしょうか?例えば、月3Kとあるのは3000UUとのことですから、一日あたり100UUといった水準です。

目標にすることができそうでしょうか?ちなみに本サイト、『まんがで気軽に経営用語』はConsulting & Professional Services(コンサルティング・専門サービス)に該当するようですから、1.91Kが一般的なUUのようですね。(1910UU/月)

■これから頑張るサイトでのUU活用の工夫

まずは、毎月のUUを増やすようにコンテンツの充実を図っていきましょう。月500UUを月700UUにするような工夫など少しずつ積み上げていくことが重要です。

また、個人的な印象ではSEO施策はオカルトに近いと考えていますが、よく言われる施策を列記しておきますので心がけてみてください。
  1. 内部リンクの強化
  2. 検索意図にちゃんと答える記事を投入
  3. SNSの投稿を継続する
  4. 過去記事のリライトをして充実させる
  5. 被リンクの獲得(誰かがリンクをしたくなるような専門性のある記事を書く)
といった感じです。

■商売につながるUU水準は?

さて、一番知りたいことだと思いますが、これは1UUでもあれば商売に繋がります。一人でも見ていればそこから問い合わせが来る可能性はありますから。

ただ、よくあるケースで、連絡を取ろうとしても何処にも連絡先が乗っていない場合があります。それだと商売には決してつながりませんので、Webサイトから商売につなげたいなら連絡先は必須です。

え、綺麗事はいいからちゃんと教えてほしいですって?

これは外部環境にもよるので(本サイトを始めたばかりの2011年と2025年では全く違うので)なんとも言えませんが、月500UUをまずは目指してみると良いと考えます。

なお、アフィリエイトなどの広告集客型Webサイトを運営している場合は、PV数こそ正義ですので、とにかくたくさん集めてみてください。

テーマが特に絞られていない中で、月数万PV程度だとお小遣い稼ぎ程度にしかなりませんので商売として取り組むのは割と茨の道だとお伝えしています。

ただ、趣味系のテーマに絞ったサイトで数万PVあれば、自社商品やサービスを提供して客単価を上げると言った方法は考えられます。(例えば釣りメディアとかキャンプとか)

結局は

売上=客数✕客単価

ですし、Webサイトの客数(購入数(CV数))は

客数=PV数✕CV率

の確率論になりますので、何処に施策を打っていくかを考えて取り組んでいく必要があるのです。



合わせて読みたい関連用語
PVとは何か?
セッション数とは何か?

初出:2013/04/07
更新:2025/07/12
生産管理
2025年7月11日

生産管理 | 管理もせずにただ作るだけではダメなのです

生産管理
生産管理とは、製品を納期通りに、一定の品質、低コストを実現しつつ製造するために行う活動のことを言います。

つまり、自社の持っている経営資源を活用して、顧客が望むモノを、品質、コスト、納期(総称してQCDと言います)のバランスを取りつつ製造するという事ですね。

■生産管理とQCD(品質・コスト・納期)

まず、なぜQCD『Quality(品質)Cost(コスト) Delovery(納期)』のバランスを取る必要があるのでしょうか?

それはQCDが生産管理の根幹となる概念であり、いっぺんには両立できないからです。

onnanoko_bustup_3
品質もコストも納期もすべてお客様のために大切なのよ!

kitsune_odoroki
でも、品質を上げようとしたらコストが余計にかかったり、丁寧に仕事をする必要があるので、納期は遅くなりますよね?

onnanoko_bustup_2
じゃあ、コストを優先するのよっ

neko_akire
コストを下げようとしたら、品質を犠牲にしたり、余裕がある時に作るから納期は遅くなりますよ?

onnanoko_bustup_2
だったら、納期最優先にしましょう

panda
でも、納期最優先にするためには、コストを掛けて特急対応したり、品質が犠牲になりますよ

onnanoko_bustup_2
そこはあれよ、裏技的なあれでなんとかするのよっ

tanuki
もちろん裏技なんかありませんので、QCDのバランスを取ることが求められます。


この3つを総称してQCDと言います。(詳しい解説はリンクから見ることができます)

■QCDを高いレベルで最適化するための生産管理プロセス

さて、このようにQCDを高いレベルで最適化するというのが生産管理の一つの目的ですが、これだけではまだ漠然としていて、どこから手を付けていけばいいかわかりませんよね?

そこで、まずは生産管理のプロセスについて把握することが大切です。そして、どんなプロセスがあるかを眺めながら改善点を探していくのです。

■生産管理のプロセス

生産管理の論点は多岐にわたりますが、流れだけを抽出すれば、

計画する→必要な経営資源を集めてくる→管理しながらやってみる→実施内容を確認をし、改善に結びつける

といったものとなります。

以下の図では馴染みが深いPDCAの観点からどのプロセスが何にあたるのかを整理してみました。

プロセス 概要 主な論点 PDCAとの関連
計画(Plan) 需要予測や受注状況を基に、生産量・時期・手順を設計 ・生産計画
・需要予測
・能力負荷計画
・販売との連携
P:生産目標・方針を立てる
(QCDのバランスを取って設定する)
調達(Do) 必要な原材料・部品・人材などの資源を用意する ・資材調達
・仕入先管理
・在庫管理
・人員管理
D:計画に基づき準備を実行する
実行(Do) 実際にモノを作る工程(加工・組立など) ・標準作業の遵守
・設備の稼働状況
・不良率と歩留まり
・作業者教育
D:モノづくりを実施
統制(Check・Act) 進捗・品質・コストなどを監視し、問題があれば是正 ・納期遵守率
・工程進捗管理
・トラブル対応
・KPI分析と改善
C:進捗や結果をチェック
A:改善策を講じて反映


■生産計画という似た言葉と生産管理との違いは

生産管理は上の表全体を示した考え方ですが、生産計画は生産管理の一部で、「いつ、何を、どれだけ作るか」を決めていく部分に当たります。

この図では、上のPlan(計画)の部分に当たります。この計画が無いまま調達や実行に移ったら、本件のマンガのように行き当たりばったりの対応になってQCDの両立どころか、ちゃんと製造すらできなくなってしまいますよね。

このように生産計画は重要ではあるのですが、それは生産管理全体がなされることが前提となります。その意味で、生産計画は、「生産管理のスタート地点」であるとも言えます。

■製造業だけが生産管理をするの?

とここまでの説明で、「ふーんたしかに大切だよね。でもうちはお弁当屋さんだからあんまり関係ないね」と思った、非製造業の方も多いと思います。

しかし、この全体的な考え方はどのような業種であっても重要です。以下のように考え方のエッセンスはどのような商売でも使えますので、自社のQCDを念頭に生産管理的な考えをしてみると見えてくるものがあるかもしれません。

業種 生産管理の主な対象 計画(Plan) 調達・実行(Do) 統制(Check・Act)
製造業(参考) モノの製造 何を・いつ・どれだけ作るか 資材調達、加工・組立、作業手順 品質検査、納期管理、不良対策
サービス業 人的サービスの提供 予約・顧客対応の見込み、担当割 スタッフ配置、接客の標準化 満足度調査、クレーム対応、教育
小売業 商品・売場の整備 販促計画、在庫補充計画 仕入・陳列、接客応対 販売実績分析、欠品・廃棄率の管理
飲食業 食事の提供 メニュー計画、仕込みスケジュール 食材調達、調理オペレーション 提供スピード・味のブレ、顧客評価

■生産管理の考え方は小売業にも必要


neko_akire
ねぇ、このかわいいぬいぐるみ。ちゃんと什器に入らないんだけど

onnanoko_bustup
あら、妙な隙間がもったいないわねぇ。棚に3つしか入らないし、しかもギチギチ。。。。

neko_akire
4つ無理やり入れたら、一つは横を向いちゃってますよ

onnanoko_bustup_2
見栄え悪いし、在庫はバックヤードに溢れているし。。。せめて計画ぐらい立てて仕入れるべきだったわねぇ

こんな微妙なオペレーションに覚えはないですか?これって小売業の話ですが、いわゆる生産管理に失敗している状況なんです。

ただ、こんな微妙なオペレーションをしていてもお店が存続しているわけですから、伸びしろがとてもあるという前向きに捉えることもできます。

■最後は経営資源の浪費につながっています

この例でもなんとか存続はできているかもしれません。

しかし、ちゃんと管理してお店を運営すればお客様に、今よりも良い品質のものを(商品の管理をしっかりするので品質は良くなります)、今よりも安い価格で(在庫ロスがなくなればお客様へ還元できます)、今よりも素早い納期で提供することができるかもしれません。

スクリーンショット 2025-07-11 235300

このQCDは確かにトレードオフですべてを両立することができないとする考え方ですが、生産管理をしっかりやることで、今まで発生していた無駄をなくせば、より高いあるべき水準に近づけていくことが可能なのです。

初出:2013/08/30
更新:2025/07/11

情報
2025年7月11日

PV

PV_001
PVとはページビューの事で、ページが何回閲覧されたかというアクセス数の考え方の一つです。英語ではPage Viewと表記されます。グーグルAnalyticsではページビュー数と表示される指標です。

「え、アクセス数の考え方の一つってことは、アクセス数にはいくつかの指標があるってことだよね。」って思われた方もいるかもしれませんね。

そうなんです、アクセス数と一口で言っても、今回のPVとか、UU、セッション数といった、いくつかの考え方があるのです。

■いくつかある考え方の中のPVとは

PVは簡単に言うと、訪問者が何ページ読んだかの累計を示しています。だから、この指標には何人が来たかは関係ない指標です。

例えば、100人が来て1ページずつ読んでも100PVですし、1人が100ページ読んでも100PVです。基本的には、PV≧UUという関係になります。

■具体的なPVのカウント方法

さて、あなたがTOPページからこの記事にたどり着いたとします。その場合、

【TOPページの閲覧→PV+1】
   ↓
【本記事の閲覧→PV+1】

で PVは2になります。
 
このように、PVを伸ばすためには、訪問者に様々な記事を見てもらうような方策が有効となります。

本サイトでも、サイドバーにおすすめ記事を載せたり、記事間でリンクを張っていますよね。それは、色んな記事を見てもらいたいからなのです。

ただ、ちゃんとやるならば、関連記事にもれなく誘導したり、タイトルを読みたくなるように工夫するなどが重要になってきます。

■似た用語であるUU

いっぽう、上で挙げた例に出てきたUUは「何人」の訪問者が来たかを表す指標になります。

同じ例で恐縮ですが、
【TOPページの閲覧→PV+1,UU+1】
   ↓
【本記事の閲覧→PV+1、UUはそのまま】

になりますのでPVは2、UUは1になります。(1人が2ページ見た)

このPVとUUなどを組み合わせて分析することでより正確なサイト評価ができてくるのです。

■PVがなぜ大切なのか?

このPV数が多ければ、広告収入の単価も上がりやすくなりますし、ECサイトでは商品ページがそれだけ見られたということですから、売上向上につながっていくのです。

少ないお客様を相手にしている商売ならば、心を込めた接客などがとても重要ですが、ネット販売などは最終的には確率論の世界になってきます。

具体的には

UU数:何人閲覧してくれたか
 ↓
PV数:何ページ見てもらったか?
 ↓
CV率:どれくらいの確率でコンバージョン(商品やサービスの購入につながるか)するか
 ↓
CV数:売上数

となってきますので、売上につながるCV数は以下の計算式で示されます。

CV=CV率✕PV数

つまり、
ヒットを打つため(CV数を増やす)には、打席に沢山立つ(PV数を増やす)か、打率を上げる(CV率を上げる)
しか無いため、打席数であるPV数が重要なのです。


この記事では、Webサイト運営やECビジネスに欠かせない「PV(ページビュー)」について、初心者にもわかりやすく解説してみました。PVとよく比較されるUUやCVとの関係も踏まえ、アクセス解析の基本を学んでみましょう。

合わせて読みたい関連用語
UUとは何か?
セッション数とは何か?

初出:2013/04/07
更新:2025/07/11

財務・会計
2025年7月10日

回収サイト

回収サイト_001
回収サイトとは、取引先から資金を回収するために必要な期間の事を言います。

事業を営んでいると売上が上がったとしても、スグにお金を回収できないケースが発生するため、この回収サイトについて考えておく必要があるのです。

例えば、あなたが小売業をやっていて「おまんじゅう」を売ったとします。お金はどうなるでしょうか?通常はその場で受け取れますよね?

でも、あなたが卸売業をやっていて「おまんじゅう」を小売業に卸したとします。その場合、現金の回収条件は「二十日締めの翌月末払い」とか言われます。

これは、売上高を二十日に締めて(集計して)翌月末に支払ってもらうという事を意味しています。

つまり、今日卸した「おまんじゅう」の代金はスグには受け取れないわけなのですね。

いくらたくさん売り上げたからと言って、現金が回収できないのであれば、自分の支払に回すことができませんよね。

そのため、この回収サイトと支払サイトに気を付けないと現金が足りなくなってしまい、事業の継続が難しくなってしまうのです。(このような状態を資金ショートと言います。)

関連用語
黒字倒産 

■回収サイトが長いとどうなるの?

上で言っている通り、たとえ売上が順調に伸びたとしても「現金」が手元に入ってこないととても困ることが発生します。

仕入れの代金や、お給料、家賃などは現金が無いと払えませんよね?また、現金が手元に少なくても約束通り支払う必要もあります。

そのため、回収サイトが長いと資金繰りが悪化してしまうのです。

例えば、下の表を見てください。

日付 内容 支出 入金 残高
6月1日 初期残高 100円
6月10日 家賃の支払い 50円 50円
6月15日 仕入れ代金の支払い 40円 10円
6月20日 売上の回収 100円 110円
6月25日 給料の支払い 50円 60円

ここで6月20日に売上の回収ができなかったら大ピンチになることが分かると思います。(現金の残高がゼロを下回ったらそこで会社は終了です。)

このように、「そのうちお金が入ってくるから大丈夫だよー」と呑気に構えていると、とても大変なことが発生してしまうのです。

■支払いサイトとのズレに注意

上のように資金繰りはプールの残高をゼロ以下にしない事を考える仕事なのですが、以下のような支払いサイトと回収サイトだったらどうでしょうか?

・回収サイト(入金サイト) :60日
・支払いサイト      :40日

いっけんするとあんまり大変そうではなさそうですが、実はこれは大問題です。自社が支払う仕入のほうが、入金よりも先になるため、資金繰りがとても厳しくなります。

そのため、いわゆる運転資金の調達などを検討する必要が出てくるのです。

■回収サイト(入金サイト)を短くする方法

回収サイトを短くしましょうと、世の中の本には書いてありますし、私達みたいな支援者も簡単に指摘します。

しかし、「それができたら苦労はしないよ」といったのが実情だとは思います。

ただ、できませんでは本記事が提供できる価値はなくなってしまうので以下のようなアイディアもありますよと列記しておきます。

・与信管理の徹底
これは回収サイト云々ではないですが、いちばん大事なので敢えて書いておきます。どんなに売上が上がっても回収できないとどうにもなりませんので、与信管理の徹底はとても重要です。

また、一日でも支払いが遅れたら、直ぐに電話したり訪問してください。嫌がられるかもしれませんが、長い目で見ればあなたの事業がお金をしっかりと管理しているという評判に繋がりますのでメゲずに励行してください。

お金を滞納しがちな人は、沢山借りている人から払うわけではありません。「うるさい、面倒な人から順番に払っていくのですから。」

・業界団体として取り組む
支払いサイト短縮について業界団体として取り組んでいるケースが多くあります。一昔前はこのまんがのような180日手形すらまかり通っていたのですが、最近はそのようなことはなくなっています。

ただ、それでも回収サイトが慣習として長くかかるような取引先もまだいますので、機会を捉えて集団で交渉して行くと良いでしょう。

もちろん、下請法などで2024年11月1日以降は60日を超えるような支払いサイトは行政指導の対象になるという事も念頭に置いたうえで取り組むと良いです。(正論だけで交渉できないのが厳しいところですけどね)

・力関係を自社に傾ける
最後には面白くない正論を書かざるを得ないのですが、最終的には自社の製品やサービスが簡単には代替できない、あなたの会社から買うしか無いといった境地を目指していく必要があります。

そうなれば、回収サイトの短縮にも応じてくれる可能性は高まるでしょう。

■資金繰りについて(ファクタリングとABL)

手元資金が足りないイザとなった場合、売掛債権をもとに資金を得る方法として以下の2つがあります。

■ファクタリング(売掛債権の買い取り)

ファクタリングは売掛債権(未回収金)をファクタリング会社に買い取ってもらい現金化する方法です。

重要なのは、誰の信用力で資金を動かすかですが、ファクタリングの場合「あなたの取引先の信用力」が重要になります。(ファクタリング会社は売掛債権を買い取るのですから、取引先の信用力が回収可能性を左右します)

・3社間ファクタリング(取引先に通知されるタイプ)
 ファクタリング会社を恒常的に利用していることが取引先に知られると、資金繰りが厳しいと見られる危険性があります。

・2社間ファクタリング
 取引先に知られにくいため、取引先や外部への影響は限定的となります。ただし、手数料は高めになります。

■ABL(売掛債権担保融資)

ABLは売掛債権(未回収金)を担保に金融機関などから融資を受ける方法です。こちらの場合はあなたの会社の信用力が重要です。、(信用力を補完するため金融機関に売掛債権を担保として差し出すイメージ)

・ABLでは売掛債権が担保となるの、取引先には通知される事に留意が必要です。

・ただし、制度設計や契約形態により通知無しで運用される場合もあります。

いずれにしても、金融機関に相談してどのような取引なのかを理解してから対応するようにしましょう。

<ファクタリングとABLのまとめ>
項目 ファクタリング ABL(売掛債権担保融資)
内容 売掛債権を「売却」して資金を得る 売掛債権を「担保」にして融資を受ける
資金の出し手 ファクタリング会社 銀行・信用金庫など金融機関
重視される信用力 取引先(売掛先)の信用 自社(債務者)の信用
資金調達までのスピード 比較的早い(数日〜1週間) やや時間がかかる(審査・契約に時間)
通知の有無 3社間では通知あり/2社間では通知なし 原則通知あり(ただし契約によっては通知なしも可能)
手数料・金利 手数料制(やや高め) 金利制(低めのことが多い)
バランスシートへの影響 オフバランス(債権を売却するため) オンバランス(借入として計上される)
与信管理への影響 3社間では取引先に知られ信用低下リスクあり 通知が必要な場合は取引先に把握されることも
向いているケース 緊急性のある資金需要、創業間もない企業 中長期の資金需要、信用力のある企業


どちらの方法も売掛債権を元にお金を得る方法ですので、あなたが取得する売掛債権をどんな手段で売掛金を現金化しても気にしないという立場の企業も多くありますが、相手がどのように受け取るかも慎重に見極めて対応することをオススメします。

■むすびに

いずれにしても、回収サイトが長い状態を放置していると、いつか資金繰りに行き詰まる可能性が高まります。

回収のタイミング・支払のタイミング・そして信用の維持。この三者をバランスよく設計しておくことが、安定した経営の鍵なのです。

単に「お金が足りないから調達する」ではなく、「なぜ足りなくなるのか」「それを防ぐにはどうするか」を冷静に見つめていくことが大切なのです。


解説で出てきた用語
行政指導

初出:2013/03/14
更新:2025/07/10

経営
2025年7月9日

社会的比較論

社会的比較論_001
社会的比較論とは、フェスティンガーによって提唱された理論で、人は自分自身を正しく評価したいという動機を持っていますが、自分自身を評価するための基準として、自分に似通っている他者との比較を用いるとする理論です。

簡単に言い換えると、人は自分に似た他人と比較して自分自身の評価を行うという理論です。そして、比較した結果、安心したり、自分の所属している集団に合わせたりするわけです。逆に比較することができないとなんとなく不安になってしまうという事もいえますね。

例えば、あなたが会社員だとします。その時に、数多くの同僚と一緒に働いていれば、なんとなく日々、自分が同僚たちと比較してどのような位置にいるのかと考えることができますよね。

■社会的比較論の上方比較と下方比較

この社会的比較論の上方比較と下方比較とは、同僚たちに比べて自分のパフォーマンスが低ければ、向上する努力をしますし、自分のパフォーマンスが高ければ安心するといった心理です。

自分よりも優れている人と比較すると、「負けるものか」と向上心が生まれるという前向きな効果があります。ただ、必ずしも前向きな効果だけが生まれるわけではなく、嫉妬心や劣等感が生まれることもあり、

他方で、自分よりも劣っている人と比較すると「自分はいい感じだね」と安心感や自身を得ることに繋がります。ただ、こちらも慢心を生んで努力を怠ると行ったマイナス効果もあり得るから怖いのです。

いずれにしても、人は無意識に他人と比較してそれによって幸福度や自尊心を上下させるというものです。

■比較できないと不安になる

とすると、人と比較することで精神状態が左右されるならば、隔絶されたところで比較することなく活きたら幸せになれるのでしょうか?

ただ、これも冷静に考えてみると当てはまらないような気がします。

例えば、同僚たちと隔絶された場所で一人働いていたらどうでしょう?(他者と比較ができない状態)なんとなく不安になりませんか?

または、自分とはくらべものとならないようなハイパフォーマーの中で仕事をしたらどうでしょうか?(自分と似た他者と比較ができない状態)これも不安になりそうですよね。

この社会的比較論はその様な状況ではなく、自分と似たような他者と比較する事で自分自身を評価するという理論なのです。

また、この理論を提唱したフェスティンガーさんは、認知不協和理論を提唱した事でも有名ですね。

■ビジネスにおける社会的比較論の適用について

さて、本稿は「まんがで社会学」とかではないので、あくまで経営にどのように影響するかで考察を進めます。

■従業員のモチベーション

ここまでの説明でピンと来た方も多いと思いますが、従業員のモチベーションを大いに左右する要素になります。

例えば、組織内での評価はある程度似た属性(能力や経歴など)の同僚と比較して行っていくことが必要ですし、納得感を生み出しやすくなります。

あまりに上方比較を強いると(業績の良い人と比較させてしまうような処遇をすると)向上心が刺激される可能性はありますが、逆にモチベーションを低下させたり最悪の場合は離職につながったりもします。

また、下方比較になるような部署に配属すると安心材料になってメンタルは安定するかもしれませんが、努力の停滞を招く可能性があります。

つまり、どのような部署に配属するかの検討材料の一つとなりうるのですね。

■消費者心理の理解

消費者も社会的比較論からは逃れられません。消費者も見栄をはったり、マウンティングしたり、周囲にどう見られるかを意識した消費行動を取ります。

ここをうまく設計して、少し憧れられるような商品のポジションを取ったりすると、消費者からの支持を得やすくなったりします。

■社会的比較論:誰と比較するかのまとめ


比較先 どんな影響が出るの?
上方比較 向上心・劣等感・モチベ低下・憧れ
下方比較 安心・停滞・慢心・守りの姿勢
比較できない状態 不安・孤独・評価不能感


このように、誰と比較させるか、どう比較させるかの巧妙な設計は、ビジネスに貴重な示唆を与えてくれるのです。

参考関連用語
マズローの欲求階層

※本記事では、心理学の理論を経営・組織論の視点から応用的に解説しています。学術的な厳密さよりも、実務での活用に重点を置いています。

初出:2012/08/27
更新:2025/07/09



経営
2025年7月9日

S字カーブ理論

S字カーブ_横軸に練習量、縦軸に成果をとったグラフを描くと、最初は緩やかな伸び → 急激な成長 → 再び緩やかな伸びとなり、全体としてS字型になります。
S字カーブ理論とは技術の進歩の過程を横軸に投入した資源(時間や費用)、縦軸に成果を取ったグラフを書いた場合にちょうどS字のようになることから名付けられた理論です。

■S字カーブの3段階

S字カーブ理論は以下の3つの状況を仮定して考えられています。

1.新しい技術の登場(導入期)
研究開発に資源を投入してもなかなか成果が出ない段階です。

2.発展期
資源を投入すればするほど、技術向上の幅が大きくなる段階です。

3.成熟期
技術が成熟し、資源を投入してもそれほど成果が得られなくなる段階です。資源の投入に対し、成果は逓減していきます。簡単に言うと限界期です。


このまんがではS字カーブ理論を練習の量と成果に置き換えて説明しています。楽器は最初はなかなかうまくなりませんが諦めずに頑張って練習をすればどこかでコツをつかみます。

コツをつかんだ段階で急激に練習の成果が上がり、練習すればするほどうまくなる段階がやってきます。

その後、ある程度うまくなると練習をしてもそれ以上なかなかうまくならなくなる段階がやってきます。

このように、頑張っても成果が出にくい時期があるという経験則を述べた理屈ですが、技術開発に当てはめると、関連用語で記載した技術開発の非連続性という理論につながっていきます。(詳しくは関連用語をご覧になっていただければですが、成熟期以後はなかなか伸びないので、新技術が生まれ、それに旧技術が駆逐されがちという理論です。)

関連用語
技術革新の非連続性

■S字カーブ理論的な進展になりがちなもの

一般に様々なものがこのS字カーブ理論に当てはまりますが、幾つか例をあげてみます。

・資格の勉強など:
 基礎が固まるまで成果が見えなくて焦ると思いますが、基礎が固まると一気に伸びたりします
・プログラミング学習など:
 最初はなんのことかわかりませんが、文法を理解すると一気に応用が効くようになります。
・ビジネスなど
 売上が伸びない時期が続きますが、あるポイントで成長が加速します。

これらのように、「頑張っても成果が出ないな・・・」と考えがちな時期こそ、S字カーブの導入期にいるのかもしれません。

この理屈を知っていれば、今は導入期だと考えて粘り強く取り組むことができるのです

■ビジネスにおけるS字カーブ理論について

と、励ますような綺麗事を書きましたが、ビジネスの場合は経営資源が尽きるとそこで試合終了になってしまいます。(学習はめげずに頑張れば、効率の悪いやり方をしていてもいつか芽が出ますが、ビジネスは資金が尽きたらおしまいです。)

ですので、見切り千両ともいうように、方法論に固執しないバランス感覚が重要です。

特に最初の構造でビジネスは勝算の有無がはっきりと別れます。

(飲食店などは売上の上限が『客席✕回転率✕客単価』で決まります。他方で、固定的にかかる費用もほとんど決まるので、商売を始めた後の調整の余地が小さいということができます。)

ですので、特に飲食店などを「美味しいコーヒーを淹れられるから」とか「私の作るそばは絶品」などと考えて開業計画を立てる場合には、必ず(必ずですよ!)商工会や商工会議所などの公的相談機関に勝ち筋があるかの相談をしてください。

よく、FCの主催者や、創業支援者(というなの不動産やさんとか什器やさん)などに話を聞く方がいますが、商人に「私、あなたの商品を買うべきですか?」と相談しているようなものです。

ドリームクラッシャーなどとネガティブなアドバイスをする人を呼ぶ事もありますが、利害関係のない公的支援機関が「やめたほうが良いですよ」と言う場合は、一度立ち止まることをオススメします。

本記事を忘れてもいいですが、「嫌なことを言ってくれる助言者」こそあなたの本当の味方なのですから。

初出:2011/10/24
更新:2025/07/09

経済学
2025年7月7日

資産効果

資産効果_001
資産効果とは、持っている資産が値上がりすることによって、消費や投資が促される効果の事を言います。

例えば、あなたが100万円の株を持っていたとします。この時、株が値上がりして200万円になったとしたら、「資産が増えたから少し贅沢しようか。」となりませんか?

なるとしたら、それが資産効果です。

また、投資が促されると言う効果もあります。この投資が促される効果によって、

資産価格の値上がり→投資の増加→さらなる資産価格の値上がり

といった循環も生まれるのです。この循環によってどんどん景気は拡大していくのですね。これは、資産が値上がりしたから、更にリスクを取って投資をしていくというイメージの行動です。

この逆で、資産の値下がりが消費や投資を抑制する効果もあります。こちらはそのものズバリ、『逆資産効果』といいます。

■資産効果が発生しやすい状況

例えば、株価の上昇局面、不動産価格の上昇局面、仮想通貨(暗号通貨)の高騰局面など、どんどん自分の資産が増えるタイミングです。

そのようなタイミングでは、

資産が増える

資産効果

消費増大

景気拡大

企業業績上昇

株価などの資産価格上昇

といった形で良いスパイラルが回ります。

■ただし、資産効果が加熱しすぎると。。。

ただ、この資産効果が加熱しすぎると、いわゆるバブル状態となり、過剰消費や過剰投資の問題が生じてきます。また、厄介なインフレなどの問題も生じてきます。

過剰消費ぐらいならば環境に良くない・拝金主義的な不健全な文化が育まれる程度ですみますが(どっちも大問題ですね)、過剰投資はその後にも尾を引くので厄介です。

例えば、負債で資金調達して過剰投資した場合は、(割高な価格で購入してしまった資産を損切りできなければ)その負債の返済負担が長く続きます。

また、仮に現金で一括購入したとしても企業業績には減価償却費(減価償却についての解説はこちら)の増大や設備等の維持管理費用の増大といった点で長い期間ダメージが入り続けます。

バブル経済の崩壊後、我が国企業はこの悪影響に長く苦しみ、非常に長期にわたる景気悪化に苦しんで来たわけです。

■政府や中央銀行の役割

この資産効果が加熱した際、政府や中央銀行は景気の加熱を抑え持続的に経済発展できるようにソフトランディングさせるように動きます。

例えば、金融政策による段階的な引き締め(金利を徐々に上げる)を行い、資金供給を徐々に減らし、投機的な資金の流入を減らしていきます。

また、劇薬ですが不動産融資の規制(融資の自己資本比率規制や不動産評価額の制限)や株式の信用取引を制限するなどの動きもありえます。

■我が国はバブル経済をハードランディングさせてしまった

と、歴史のお勉強になってしまい恐縮ですが、バブル景気はプラザ合意の円高不況に対応するために大規模な金融緩和を実施したことにより、この資産効果のスパイラルが制御不能になってしまったことを発端としています。

そして、「これではまずい」ということで日銀は政策金利を急激に引き上げ(6%台へ急騰させた)、さらに、不動産融資への総量規制まで行ったので地価の下落が、以下のような逆資産効果を発生させてしまったのです。

不動産価格の下落

担保価値の既存

貸し渋り貸し剥がし(用語解説あり)

倒産

さらに時系列的には若干錯綜しますが、消費税が導入されたのもこの時期です。

以下あるべき姿と、我が国がバブルを崩壊させた時にやってしまったことをまとめます。
項目 ソフトランディング(あるべき姿) ハードランディング
(我が国がやってしまったこと)
金融政策 段階的に金利を引上で景気過熱を抑制 急激な利上で資産価格を急落させる
資産市場への対応 規制などの導入で、投資家心理を落ち着かせる 総量規制などを急激に導入し信用収縮を招く
政府・中央銀行のメッセージ 市場との対話し、過熱感を和らげる 「バブル退治」など強硬姿勢
経済への影響 資産価格を安定させ、持続的成長へ 景気後退、不良債権問題、長期停滞

■われわれ経済人が取る対応とは

と、資産効果はいっけんすると問事尽くめのように感じますが、加熱した際の悪影響や、加熱を冷ますための政府や日銀の対応いかんで大惨事を招く危険性すらあるのです。

そのため、資産効果が亢進し「今回はいままでと違う(何処まででも資産価格は上がる)」と周りが振る舞い始めたら、立ち止まって収穫の秋の後に訪れる冬に備える事も重要かもしれません。

なにより、現在の我が国を代表する任天堂やキーエンスといった企業はバブル景気に踊らされず、無理な設備投資や不動産登記などを行わなかったといった実例もあります。

われわれ経済人が冷静に利を見ることが結果として我が国の社会全体の安全弁になれるのですから。

※資産価格が下落することによる影響については、別記事「逆資産効果とは?」もご覧ください。

初出:2013/01/30
更新:2025/07/07

経済学
2025年7月7日

逆資産効果

逆資産効果_001
逆資産効果とは、持っている資産が値下がりすることによって、消費や投資が抑制される効果の事を言います。

資産効果の逆なんですね。

「これってどういうこと?」って思った方は次の例を考えてみてください。

あなたは、100万円を株に投資しています。しかし、様々な要因が重なって株が値下がりし、50万円になってしまったとします。

さて、あなたはどのように感じるでしょうか?「資産が減ったから少し節約しようか…」となりませんか?

なるとしたらこのような効果を逆資産効果と言います。

■逆資産効果が生じやすい資産について

これは身も蓋もない言い方になれば、価格変動が激しい資産が該当します。

例えば、株式やビットコインやイーサリアムみたいな暗号資産(仮想通貨)、不動産といった資産になります。

特に、株式などは流動性が非常に高く、価格変動が日々起こりますし、景気動向や企業業績、金利水準などによっても影響が生じます。

そして何より、資産効果や逆資産効果によって価格変動自体が、景気を左右しそれによって更に価格変動が生じると言った動きに繋がります。

また、暗号通貨などはボラティリティ(変動性)が極めて高く、よくわからないアルトコインに至っては、技術的要因や投資家心理などで急騰・暴落が繰り返されます。(株式などで一日に数%も価格が動いたらニュースですが、暗号通貨ではそのような値動きは頻繁に発生します。)

以下、主な資産クラスごとにまとめました。
資産クラス 価格変動リスク 逆資産効果との関連 備考
株式 高い 高い 景気・企業業績・金利動向に強く影響される
暗号資産(仮想通貨) 非常に高い 非常に高い 投機的色彩が強く、急騰・暴落が日常的に発生
不動産 中〜高 中程度 地域・政策・金利に左右されるが、価格変動は比較的緩やか
債券 低〜中 低い 価格変動は小さめだが、金利上昇局面では価格下落リスクあり
現預金 ほぼなし なし 価格が固定されており、逆資産効果の影響は受けにくい

■個人の消費とマクロ経済の動向について

個人は、この逆資産効果が生じれば、前述の例の通りに節約志向が高まり、消費を減少させる形になります。

そして、その個人の動きが企業の売上低下を招き、景気後退のリスクが生じ、更に資産価格が下がり、個人消費にブレーキをかける負のスパイラルが生じるのです。

リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)の頃には、この逆資産効果が生じて、一気に景気が減速したことを覚えている方もいらっしゃると思います。

我が国のバルブ崩壊に遡れば、株価・不動産価格が暴落し、消費が冷え込み、強烈な景気後退が生じたのです。

■政府や中央銀行の役割は大きい

このような逆資産効果が生じて景気悪化リスクが顕在化した際には、中央銀行が金利を引き下げたり、国債などを買い入れて市場に資金を供給したりします。また、財政出動として公共投資などを行って、消費の底割れを防いだりすることも求められます。

と、教科書的な説明ですが、何度も逆資産効果による景気悪化を経験した世代からすると、あんまりこういった政府や中央銀行が役割を発揮したといった実感は感じないです。

しかし、少なくともリーマンショックやコロナショックの際は大恐慌のようなことは発生しなかったため、マクロ的な経済施策には効果があるのでしょう。

ただし、読者の皆様も含め本サイトの読者の方は経済人だと存じますので、政府や中央銀行がなんとかしてくれるではなく、悪くなったら悪くなったなりの環境に適応して生き残っていく必要があるのだと考えます。

※資産価格が上昇することによる影響については、別記事「資産効果とは?」もご覧ください。

初出:2013/02/02
更新:2025/07/07



組織論
2025年7月6日

定期昇給

定期昇給_001
定期昇給とは、年齢や勤続年数が増えるにしたがって、賃金が増えていく制度のことを言います。簡単に言うと、一年たてば、一年先輩と同じ賃金が支払われる制度といったイメージですね。

この定期昇給は、あらかじめ賃金表(賃金テーブルと呼ばれるときもあります)といったモノが定められており、その賃金表内での異動といったイメージです。この賃金表内の移動という事が、良く似た言葉であるベースアップと異なる点です。

ベースアップはこの賃金表そのものの水準を底上げするもので、まさに「べース(基準)」が「アップ(上昇)」するのです。
teisyou
ここで、賃金表(賃金テーブル)とは簡単に言うと何歳の時にどれだけの賃金を支払うかといった表です。(この図はその表をグラフにしてみたものです。)そして、定期昇給はこの図のように、同一の賃金表のなかで動くイメージですね。

この定期昇給には年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給する自動昇給部分と、能力の向上・実績部分を査定して昇給枠を決める査定昇給部分があります。

このように、定期昇給は制度的に組み込まれた賃金の自然上であるということができます。(他方で、ベースアップは制度そのものの改定による賃金水準の上昇)

■定期昇給が廃止・停止されるケース

近年では、企業の経営状況や年功序列制度の見直しをするとの名目で、定期昇給制度自体を見直す企業も増大しています。

例えば、業績連動型(成果主義という弊害の多い制度で取られる事が多い)の給与制度に移行したり、一定年齢以上になると昇給が止まったりする設定です。

この賃金カーブの例を見てもらえればピンとくるかもしれませんが、中高年層では賃金が高止まりしますので、ここを下げたいと考える企業があるのです。

■定期昇給制度は合理的か?

定期昇給制度は、将来の収入がある程度見通せるため、従業員にとってはライフプランが立てやすく成るといったメリットがあります。

そのため、離職率の低下につながったり、組織内の秩序が安定したりします。(将来お給料が高くなることが見通せるんだったら、「今辞める」のはあまり合理的ではないですよね)

他方で、いわゆる年功序列になり、やる気と能力のある人材でも年齢が若いと報われにくいため、「頑張っても給料が変わらないんだったらやーめた」と言った考えを招き、人材流出リスクがあります。

ただ、総体的には一定程度の合理性があるため、多くの企業で定期昇給が維持されてきたといった歴史的経緯があります。

■安易な改革は命取りになるかも

このような年功序列的な古い制度は、改革の大義名分の下、槍玉に上がりがちです。例えば、上でも挙げた成果給にする等といった「改革」をするといった感じです。

ただ、急な定期昇給制度の廃止は、これからその利益を享受するはずだった年齢層にとっては裏切り行為ですし、聞こえの良い成果主義は、「ちゃんと評価できる」といった評価制度や処遇などの制度と一体になって導入する必要があります。

そうしないと、成果給で測定されない組織に対する貢献(例えば、後輩に隠れたノウハウを教えるなど)を引き出すことがすごく難しくなってしまいます。

働くひと個人にとっては、成果主義で測定される「成果」を後輩や同僚が上げるような秘訣を教えても、その指導が個人の成果にならないなら囲い込んで教えないことが合理的ですから。


また、改革の名のもとに定期昇給を廃止することは、労働契約内容の一方的な不利益変更であるとされる危険性もあります。

いずれにしても、人事に係る制度は会社組織の根幹になりますので慎重にも慎重を重ねて判断していくことが望ましいでしょう。

初出:2012/12/24
更新:2025/07/06

情報
2025年7月4日

BtoB

BtoB_001
BtoBとはインターネットなどのネットワーク上で企業同士が商取引を行う事を言います。B2Bと表記されることもあります。またBtoBは(Business to Business)の略称です。

このBtoBのイメージとしては、卸売りから小売業が商品を仕入れる取引や、各企業に対して消耗品をECの仕組みを用いて販売するといったモノになります。

例えば、部品とか原材料をワザワザ電話やFAXなどで注文するのではなく、インターネットなどのネットワークを介して注文を行うといった事が行われています。

部品や原材料は、非常に多種多様なモノがありすべてを管理しようと思うと手間がかかります。(ということはコストがかかります。)

そこで、例えばABC分析などを行い、金額的にそれほど重要でないような商品については発注点を決めて定量発注方式などを採ると便利です。

そして、このような多品目の発注の場合、電話やFAXで伝えようとすると非常に手間がかかりますので、インターネットなどのネットワークを介してデータ形式で注文をすると、発注側も、受注側も助かりますよね。

また、消耗品の発注など、企業が最終消費者となるというケースもあります。

関連用語
EC(電子商取引) 
CtoC 
BtoC
BtoE
BtoG
フルフィルメント  
クリックアンドモルタル
ピュアプレーヤー

■BtoB ECの具体的メリット

このBtoB取引をインターネット上で行う「BtoB EC」といったものが今日では行われています。(特に名前をつけるほどの内容でもないのですが、便利にしたいという世の中の人の気持ちが、世界を良くしていっていますね。)

このBtoB ECでは企業の購買業務を効率化することができます。

2025年時点で具体例を出してしまうならば『モノタロウ』や『ASKUL』といったBtoB向けのECサイトがあります。これらのサイトでは、法人アカウントでログインすることで、発注履歴管理、定期発注、請求書払いなど法人ならではの機能を使うことができます。

これにより、経理・購買業務の手間が削減され、コストダウンや人的ミスの低減といった効果も期待できるのです。

モノタロウ等の狙いとしては、ビジネスユースで不便な部分を効率化し、顧客を掴むと言った観点になります。(2025年時点では昔ながらの非常に分厚いカタログも活きていますが、売る側も買う側も双方に利便性が高いBtoB ECに徐々になっていくことが想定されますね。)

これらの企業の他にも、製造業向けの部品ECサイト「ミスミ」や、建設業向けの工具販売「プロツール.com」など、業界特化型のBtoB ECも多数存在します。

■BtoBマーケティングの特徴

BtoBにおけるマーケティングは、BtoCと異なり「専門性」などが重視されます。また、見込み客が取引をしやすくなる仕掛け(具体的には見込み客が社内稟議を通しやすくする仕掛け)等も重要となってきます。

■BtoBマーケティングにおける価格面

また、BtoCで使われるような心理的な価格制作のテクニック(端数価格など)もあまり有効ではないため、愚直に対応していくことがとても重要となっています。さらに言うと取引先の決裁構造を逆算して、取引先企業の想定決裁者が持つであろう専決権(その人のレベルで決裁できること)も考慮した価格設定なども行われます。

例えば、想定する決裁者が30万円までであれば専決権を持っていると考えるならば、機能面や納品ロットなどを調整して30万円に満たない価格設定にすることが合理的です。

専決ラインの図
図表:企業ごとに「課長は30万まで」「部長は50万まで」など専決ラインがあるため、想定される決裁者の権限に合わせて、価格・納品条件を調整することがBtoBの戦略になります。

■BtoBマーケティングにおける商品・サービス面

意思決定者はその商品やサービスについて知り尽くしている可能性が高いです。そのため、有効な機能に絞った商品・サービス開発が肝心です。この考え方の流れで、一般的には巨大なロットでしか購入できないような商品を、多少割高でも小ロットで販売するといった方法も考えられます。

また、サポート面も重視される傾向があるため、サポート面で勝負することも十分にありえます。(あくまで傾向です。売ろうと考えている商品やサービスの特徴から考えることが重要です。)

■BtoBマーケティングにおける流通面

商品などの納入ロットが大きくなりがちですので、どのように商品を届けるかなどを詳しく設計する必要があります。

お客様が何で困っているかを考え、例えば納期面で困っていると想定するならば、即納などの体制を整えるなどの工夫が重要です。

また、発注者が都内の本社であっても実際に利用するのが地方の現場だったりすることも想定されます。発注元と納品先を明確に区分することも想定していくと良いでしょう。

■BtoBマーケティングにおけるプロモーション面

ロットや金額が大きくなる。また、専門的になりがちであることから、リアル販売ではいわゆる営業さんがおこなう人的なプロモーションが主流です。

しかしネット販売を前提としているBtoBではあまり営業さんの営業に経営資源をさくことが難しいと考えられます。また、競合他社は一般にASKULなどの大企業となりますので、自社の専門性に焦点を当ててどの切り口でプロモーションをかけて行くかを考慮する必要が高いです。

いずれにしても、競合を比較的簡単に調べることができますので、競合他社と比較して自社がどのようなサービスを展開していくのかなどをポジショニングマップなどで整理するととても有益で、他社とのどのような違いを打ち出していくかが明確になったりします。


初出:2013/04/04
更新:2025/07/04


組織論
2025年7月3日

転籍

転籍_001
転籍とは、転籍元と雇用関係をいったん解消して転籍先に雇用される配置転換のことを言います。

■転籍についての概要


例えばA社に勤めていた人が、関連会社のB社に移る場合を考えてみたいと思います。

この時、A社をいったん辞めて(A社との雇用契約を打ち切って)B社に改めて雇用されるケースを転籍と言います。

このような場合、A社を退職していますので、転籍元のA社に戻るのは稀なケースになります。この転籍はグループ会社内で人材を有効活用するという事を目的として行われると言われています。
 
但し、単に人員削減のためといった後ろ向きの目的に、この転籍を使う場合もあります。

関連用語
出向

■転籍と似た出向との違いは?

転籍と出向は本質的に違います。出向について詳しくは関連用語をご覧になっていただくとして、簡単に整理すると以下のような整理となります。
項目 転籍 出向
雇用関係 元の会社との契約は終了 元の会社との契約は継続
元の会社に戻れるか 通常は戻らない 期間満了後に戻ることが多い
雇用先はどこになるか? 『転籍先企業』と新たに結ぶ 『元の会社のまま』だが働く場所は『出向先』
※給料は元会社から

この表を単純化して一言で説明すると、転籍はいわゆる片道切符に近い感じです。

■転籍の背景と目的

このように出向とは根本的に異なる転籍ですが、以下のような背景と目的の下、行われます。

・ポジティブな目的
グループ内心事業立ち上げのための人材配置や、従業員本人のキャリア希望を叶えるための配置転換

・ネガディブな目的
事業縮小に伴う人員削減の手段としての「転籍提案」や、コスト削減や雇用責任回避手段

我々コンサルタントは、ポジティブな目的を掲げたりするようにアドバイスしますが、実務の現場ではネガティブな目的でしばしば実施されてしまいます。

■転籍を打診された時にどうするとよいの?

企業側の意図は上のとおりですが、転籍は本人の同意が原則として必要となります。(一旦退職するわけですから。)

そのため、実務的には以下のような要素を検討して慎重に考える必要があります。

1 雇用条件(給与、勤務地、役職など)はどうか?
2 退職金や福利厚生の取り扱いはどうか?
3 転籍先の企業としての評価(安定しているか?成長しているかなど)
4 拒否した場合の処遇

特に、現在の企業での勤続年数が長い場合、退職金や企業年金などについてもよく確認する必要があります。

また、元の企業云々ではなく、事実上の転職と感じられるケースもあります。そのため、転籍先の企業を冷静に見る必要もあります。

■転籍を拒否はできるの?

原則論は本人の同意が必要となっています。しかし、会社からの転籍の要請は本人にとっては極めて重い意味を持ちます。

その意味からも、拒否はできるけど一旦持ち帰って即答はしないほうが望ましいと考えます。

「持ち帰ったらどうするか?」ですが、まずは第三者的なアドバイスを求めて社会保険労務士に相談することをオススメします。(多少お金がかかるかもしれませんが、あなたの人生の必要経費です)

中立的な立場から、制度について助言してくれると考えられます。

そのうえで、圧力を感じたり、不利益な条件変更や納得感が無いなど、法的な権利行使を視野にいれるならば弁護士や労働組合に介入を求める事も可能です。

(逆に言えば、弁護士や労働組合の介入は会社側としても避けたいわけですから、不利益な変更などを巧妙にわかりにくくして伝えてくる可能性があります。その意味でまずは社会保険労務士先生に相談することがおすすめです。)

■企業側は成長機会として提示することが重要

逆の視点で、転籍を打診する企業側の立場で考えてみます。

人員整理のニュアンスがある転籍などの勧奨を、不適切な方法で行うと、上記のような法律家などの介入を招く危険性があります。また何より、働いてくれている人の不信感を招き、離職を誘発しかねません。

その意味で、あくまでキャリアパスの一つとしてしっかりと位置づけ、提示できるような制度設計が重要です。

例えば、成長分野や新市場を開拓する子会社への出向。それも、裁量を増やしやりがいも一緒に提供するといった制度設計です。

また、社内公募制を実施するなど、可能ならば「挑戦者求む」といったアプローチを取り、あくまで会社都合の配置転換・人員整理などではなく、会社も転籍対象者も成長できる機会として位置づけることが重要です。


このように、転籍制度は使い方や制度設計次第でポジティブにもネガティブにもなりうる制度です。そのため、可能な限り自社の企業文化(新しい挑戦を尊ぶなど)と連動させながら、前向きな制度として活用していきたいものです。

転籍は、会社と従業員双方にとって重要な転機となります。前向きに制度を活かすためにも、制度の趣旨や実情を正しく理解し、納得のいく形での転籍制度を運用することを目指すことが大切です。

初出:2012/11/30
更新:2025/07/03


経済学
2025年6月30日

外国為替資金証券

外国為替資金証券_001
外国為替資金証券とは、政府短期証券の一つで、為替介入などを目的として外国の通貨を購入する際に、その対価となる円を調達するために発行される証券です。外為証券とも呼ばれます。

「外国為替資金証券って何?」と聞かれてピンと来なくても、実は私たちの事業活動にも影響を与えている存在です。

この外国為替資金証券を発行して得た円で、外貨を購入し(外貨準備高が増える)、為替相場を円安に誘導するというのが、為替介入のイメージとなります。

このように、外国為替資金証券は円売り介入を行う際発行される証券で、外国為替資金特別会計法にもとづき発行されるのです。

■外国為替資金証券が発行される場合(円売り介入時)

と、かなりコアな金融寄りの論点となりますが、私達中小企業にとってはこの介入が行われる場合は円安に誘導することを目的として行われると理解することが重要です。

円安方向を目指すわけですから、輸出する財の価格は言質の消費者にとっては下がる方向になります。

(1ドルと70円が交換できたのを1ドルと140円を交換するような方向にするということですから。)

一例として、

東日本大震災前後には1ドルと70円を交換するような超円高になっていました。このときは、輸出業者は頑張って7000円の値段をつけても、ドルを使っている経済圏では100ドル払わないとこの商品を入手することができませんでした。(いろいろな費用は無視して説明します)

他方で、2025年現在の為替レートは140円程度で推移していますので、同じ7000円の商品はドルを使っている経済圏では50ドル支払えば手に入れることができます。

つまり、為替相場が動いただけで、日本の製品は半額になっている。つまり、海外の人からすると日本の製品が安くなり、価格競争力が強くなったということです。

他方で、

輸入業者からするととんでもないことが発生しています。

海外で100ドルのものを1ドル70円の時代に輸入してきたならば、7000円で日本の消費者に届けることができていました。しかし、現在の1ドル140円時代では、海外で100ドルのものは、14,000円もしてしまうのです。

■便利な介入ですが

このような介入ですから、自国にとって有利なタイミングで有利な方向に介入すれば皆が喜ぶと考えるかもしれません。しかし、このような強力な方策であることから、為替介入は国際的には「為替操作」と批判されるリスクがあります。

このように、外国為替資金証券はただの短期証券ではなく、「為替レートという我が国の信頼と競争力」にかかわる道具なのです。

我々中小企業の立場としては、自社に有利な方向に為替が動けば嬉しいですが、そのようなことは期待せず、環境に適応するように事業を運営していくことが重要なのです。

■どうすればいいの?:公的支援機関の活用

為替レートに限らず、事業環境が大きく変動しているときはチャンスであるとともにピンチであったりもします。

そのような際は、お近くの商工会や商工会議所、よろず支援拠点などの公的な支援機関に相談してみるのも一案となります。

専門家がたくさんいますし、商工会や商工会議所は会員にならなくても相談に乗ってくれますので(とはいえ何度も活用するなら会員になった方がより安心です。なによりマル経融資という特権的な融資制度を活用できる可能性がありますので)相談してみるのも一つの手です。

初出:2013/06/04
更新:2025/06/30


マーケティング
2025年6月29日

後発優位

後発優位_001
後発優位とは、既にある市場に参入する事で既に参入している競合に対するメリットを言います。

既にある市場ですから、確実にそこに顧客がいるという事ができますし、社内調整(稟議制度などを利用)もやりやすいと思われます。

新しい市場へ参入した場合、先発優位を得ることはできますが、確実に売れるかどうかは誰も保証してくれないのです。(売れると思って製品を作ってみたけど、誰もそんなものを欲しがっていなかったという事もあり得ますよね。)

さて、後発優位とはどのようなことでしょうか。以下、説明をしていきます。
  • 広告宣伝費用を節約できる
全く新しい製品を世に送り出した場合、それが「どのように消費者の生活を便利にするのか?」といった点をアピールしていかなければなりません。

しかし、既存の市場に参入する場合には、そういった事に費用をかける必要はなく、「競合と比較してウチの方がいいよ(便利だよ)」とアピールするだけで大丈夫です。
  • リスクを避けられる
先発企業が事業を行っているという事は、そこには顧客がいる事の証明になります。そのため、新市場に参入してみたが、顧客がいなかったというリスクを避けることができます。

関連用語
ファーストムーバーズアドバンテージ
セカンドムーバーズアドバンテージ

■君は退職代行業を知っているか?

筆者はこの後発優位で極めて強い優位性を発揮した業態があると考えます。

それは、「退職代行業」です。

少し前はそんなニーズが存在するなんて誰も考えつかない業種でした。そして、そのようなニーズを初期にこの市場へ参入した先発企業が、「そもそも退職代行とは何なのか?」といった啓発活動から始めていき、退職代行は「退職交渉なのか(法律的に交渉できるの?)、意思表示(代理なの?)なのか?」など様々な法律的な論点もクリアーしていって定着させる必要がありました。

このような、利用者側の法的懸念や倫理的な疑問にも対応しつつ、サービスの意義を社会に伝えていく必要があり、それをやり遂げたのです。

しかし、後からこの市場に参入した企業は、「退職代行」という言葉自体が広く認知された後だったため、その説明に広告費を割く必要がほとんどなくなりました。

加えて、先行企業が築いた価格帯や対応内容などの「業界標準」に乗ることで、比較的スムーズに顧客獲得ができるという後発優位を享受できたのです。

さらに、先行企業が法的トラブルや炎上などの失敗を経験していれば、それを教訓に「信頼性」「弁護士監修」場合によっては「労働組合としての交渉」などの付加価値を訴求しやすくなります。このように、後発企業は先行企業のノウハウや失敗事例を参考にしながら、より洗練されたサービス提供が可能となったのです。

■実務面からの追記(競合が参入してきますのでその対応が重要です)

実務的には、大企業でないあなたが考えた画期的なビジネスには必ず競合が参入していきます。

そのため、(知的財産権:特許権や実用新案)などを使って法的に参入ができなくする、(知的財産権:商標権)を確保して他社が類似の名称で参入できなくするといったことが行われます。

また、この他にもロビー活動を行って法規制をしてしまうとかいろいろな手法が存在はしています。

なお、参入障壁のセオリーとして規模の経済を追求し、多大な投資をしないと参入できないようにするなどがありますが、自分の会社よりも経営資源が乏しい企業に対しては有効ですが、自社よりも大きな企業に対しては難しい参入障壁の作り方になります。

■簡単にできる参入障壁

特許を取ったり許認可が必要な業種であると法規制してもらうなどはかなり強い参入障壁ですが、そこまでできなくても、心理的な障壁(スイッチングコストを高める)ことやブランド価値を高める、信頼感を高める(弁護士監修とかの明記)、非常に多い実績を作るなどで参入障壁を築くことは可能です。

少なくとも、何らかの参入障壁を作らないと、お城のない戦国大名のように脆弱な立場になってしまうので、意識して参入障壁を作っていく必要があります。

なお、逆にあなたが新規参入して後発優位を取ろうと考えた場合、相手はこれらの参入障壁というなの城を築いていますから、何処から攻めるか、自社が先発企業と比較して勝っている部分はどこかを冷静に見極めることが重要です。

関連用語
参入障壁

初出:2013/03/17
更新:2025/06/29

組織論
2025年6月27日

Iターン | UターンやJターンという言葉がありますが、Iターンはもはやターンしていない件

Iターン_001
Iターンとは、都会で生まれ育った人が、地方に移住する事を指します。アルファベットのUやJのように故郷やその周辺に戻るといった言葉があることに対する言葉で、行ったっきりになるからIターンなのです。

例えば、『東京』で生まれ育った人が『栃木県』に移住するといったイメージです。(栃木はいいところですからね。)

「もはやターンしていないよね?」といったツッコミはしないのがお約束です。(色んなお約束を覚えながら人は大人になるんです。)

これはおそらく、地方を『戻るべきところ』と捉えて、ターンという言葉を使っているのではなく、単純にUターン等に対する言葉としてIターンと言っているのだと考えられます。

関連用語
Uターン
Jターン 

■Iターンなどを整理すると


用語 主な出身地 移住先 備考
Uターン 地方 都会→地方 生まれ故郷に戻る
Uの字のようにもとに戻る
Jターン 地方 都会→地方 生まれ故郷近くに戻る
ターンとしてはUまで至らないイメージ
Iターン 都市部 地方 出身地とは関係ない地方へ移住

■いわゆる移住的な感じです

いろいろな地域が、地域を進行するためにこれらの人材の受け入れを行っています。地方の企業にとっては、外部の視点を持ち込んでくれるIターン人材の活用はとても有用だったりします。

ただ、どうしても縁もゆかりも無い地域への移住ですからIターンをする人は心細く感じているため、しっかりとした定着支援を行っていくことがポイントとなります。

また、一般的な傾向ですが、Iターン者は文化的な同一性が希薄なだけでなく、しっかりと権利を主張しますので(義務もしっかりと果たしてくれます)、地元のナアナアな感じで労働契約にない理不尽な指揮命令や残業などを命じると非常に大きな摩擦を生んだりします。

(尤もこれは何処の出身者であっても同じですが)

■行政が補助を出したりします

そして、実務的には肝心な点ですが、Iターンを始めとして都市部から地方部へ移住する方へは行政が様々な補助を出していたりします。(補助金サイトではないので概要だけの紹介ですが)

2025年段階では以下のような補助制度があったりします。
・移住支援金制度
東京23区に在住・通勤する人が東京圏外へ移住して起業や就業する場合に100万円程度の支援金が出る制度
・各都道府県が都市部の人材採用を手助けする仕組み
移住や就職を促すためのサイト運営や取り組みを行っています。

おおよそ国などの制度は一度できた補助制度は類似の制度が作られ続けますので、本稿を2030年にお読みになられたとしても、類似の制度がないか調べると良いですよ。


初出:2013/07/18
更新:2025/06/27

法務・支援施策
2025年6月27日

有限会社

有限会社_001
有限会社とは、会社の形態の一つです。日本においては過去に設立することができた会社形態ですが、2006年の会社法施行によって新設はできなくなりました。(現在存在している有限会社を特例として存続させることは可能です。(特例有限会社))

この有限会社は(有)などと略して表記されることもあります。

新たに設立することはできませんが、当時は小規模企業に適合する会社形態としてこの有限会社があったとされています。

■なぜ小規模企業に有限会社が多かったか?

それは、資本金の額が300万以上で設立することができ(株式会社は1,000万円以上が必要でした)また、社員の数は50名以下に限られており(ここでいう社員とは従業員ではなく出資者の事です。)、持ち分の譲渡を自由に行う事はできなかったのです。

更に、取締役が一人いれば設立することが可能であったといった事などから小規模企業向けであるということができると思います。

■責任が有限という意味です

さて、この有限会社の有限とは、期限が有限でそのうち解散しなければならないといった意味ではなく、責任が有限であるといった意味です。(有限責任

有限責任を簡単に説明すると、出資者は出資した金額以上の責任を負わなくともよいとするものです。

このまんがでは会社の設立について言っています。このまんがのように、資本金額が少なくても設立できるといった利点から小規模事業を営む会社は有限会社を設立する傾向がありました。

また、このまんがの最終コマで言っているように、有限会社を新設することはできないので、有限会社とついている会社はある程度古くから営業している会社であるという事もできます。

関連用語
無限責任

■実務的な視点

有限会社を作ることができた当時、有限会社は株式会社の資本金1000万円よりも低い、資本金300万円で設立することができたため、比較的小さな会社がこの有限会社という形態を選択していました。

今日では合同会社(LLC)と株式会社の選択で比較的カンタンに作ることができる合同会社が好まれるような違いがあったのです。

(本稿では詳しく説明しませんが合同会社は登録免許税が安かったり、トータルの費用がおおよそ半分ぐらいで設立することができたり、役員の選定などに自由度が大きかったりするのです。)

今日では株式会社は1円の資本金から作ることができるのでそんな感覚はないのですが、当時は会社を作るのはけっこう大変だったのです。

■社歴がある、資本金もある、だから有限会社は今見ると信頼感がある

このように、今日の株式会社は最低資本金の制限もないですし、社歴が長い保証はありません。

また、会社の設立は割と簡単にできますので、会社≒信用ができるといった図式はもはや成り立たないのです。

そのため、会社名だけで判断するならば合同会社や株式会社よりも、当時の厳格な基準で設立されたことが確実である有限会社のほうが信頼できるような気がする逆転現象すら発生しているのです。

■【実務視点】取引先の確認には法人番号検索が便利です

読者の皆様は取引先名を聞いたら、ちゃんと存在することを国税局の法人番号検索で確認しているとよいと考えますよ。

https://www.houjin-bangou.nta.go.jp/

初出:2012/08/21
更新:2025/06/27



組織論
2025年6月27日

トップマネジメント

トップマネジメント_001
トップマネジメントとは、企業における最高意思決定機関の事を言います。簡単に言うと社長さんや取締役会のようなイメージとなります。

一般的にはトップマネジメントはその組織の長期的な基本的な方向を決定する事を担っていると言われます。いわゆる戦略的意思決定を担っているのです。

■費用が管理できるかどうかは時間軸との関係性で決まります

このトップマネジメント層にとっては長期的な意思決定を行えるとすると、基本的には企業のほぼすべての費用が管理可能費となります。例えば、工場の設置に関する意思決定ができるのであれば、工場にかかわる費用も管理可能費としてトップマネジメント層の責任とすることが可能です。

ただし、いくらトップマネジメントといっても短期的にはすべての費用が管理可能費となるわけでないことには注意が必要です。

工場廃止の意思決定をするとしても、工場が廃止されるまでの時間軸においては工場で発生する固定費は管理不能費となります。

まとめると

短期:人件費やリース契約など契約に基づいた費用はすぐには変えられない(管理不能費)
長期:契約を結ぶかどうかの事業構造自体を変えることが可能なので、ほぼすべての費用を変えられる(管理可能費)

■トップマネジメントは単なる偉い人ではない

トップマネジメントは偉い人というイメージがありますが、長期的・全社的・非定型的な意思決定を担うわけですから、権限も責任も集中してくるため偉い人となってくるのです。

長期的・全社的・非定型的な意思決定は以下のような企業の方向性を決める意思決定です。

■経営理念やミッション、ビジョンの策定をすること

企業を長期的にどのような方向性へ導きたいかを考え・決定するのはトップマネジメントが実施することとなります。

これはわかりやすいですよね。

■経営資源の配分をすること

どの分野にどの経営資源(ヒト・モノ・カネ)を配分するかを決めるのもトップマネジメントの役割となります。

上の方で工場の例を出していますが、この工場にどれだけの人員、機械を配備し、カネをかけるかを決めるのはトップマネジメントの仕事となり、配分された経営資源を最適に運用するための意思決定がミドルマネジメントの仕事となります。

そして、日々の業務を最適化する意思決定がロワーマネジメントの仕事となります。

■ステークホルダー(利害関係者)との関係性を管理すること

株主対応や顧客対応の最終責任者になりますし、従業員対応についても最終的な責任を負うのがトップマネジメントとなります。

どの利害関係者を重視し、どの利害関係者には我慢してもらうのか。そしてその我慢を許容可能な範囲でコントロールすることが重要となります。

もちろん、すべてが重要だという綺麗事は理解したうえで、現実的に限りある経営資源で誰を重視するのかのすり合わせるという難しいバランスを取ることが求められます。

このような、企業の長期的なあり方を決めるような意思決定はトップマネジメントのお仕事となるのです。

■典型的な戦略的意思決定はなにか

このようなトップマネジメントの役割を述べてきましたが、具体的にはどのような役割になるかを見ていきます。

・業務提携やM&Aなど

このまんがでは学食のおばさんがトップマネジメントだと宣言しています。それを受けて、男子生徒が近くの女子高の学食と提携しましょうと言っています。

このように、業務提携等の意思決定もトップマネジメント層が意思決定すれば可能となります。 

・新市場進出

例えば、海外展開など新たな市場に打って出るといった意思決定もトップマネジメントの仕事となります。

現場レベルは頑張り方を決めることができますが、トップレベルではどう頑張るか、何処で頑張るかを決めることができるのです。

・事業の再編や大規模な投資

このまんがでは触れていませんが、IT投資やいわゆるDX化など企業の仕組み自体を変革するような投資の意思決定を行うことも可能です。

また、事業再編の意思決定も可能です。

■実務的にはトップマネジメントだけが経営資源となっている企業もある

このように、企業にとってトップマネジメントは極めて重要となります。特に、小規模事業者においては、トップマネジメントこそが最大の経営資源となって来ます。

経営資源というか、実務的には社長がやらなければ何も決まらないし動かないといった状況すら生じます。

ただし、。このような企業においても、将来の意思決定は社長自身が行わないといけないのです。

社長の相談に乗っていると「儲かる事業を教えて下さい」などと言われることもありますが、どこで儲けるかを決めるのは社長さんご自身となるのです。

■実務面でのワンポイント

経営支援を行っている際に、『社長の意思決定力がそのままその企業の能力である』と感じることがあります。

ですので、社長さん自身の意思決定力を引き出し、本来の力を発揮できるような支援スタイルを取る必要もあったりします。

その意味で、時として「先生は何も教えてくれない」などと言われることも覚悟したうえで支援に当たる強い気持ちも大切だったりします。

■考えてみよう

あなたの職場において「トップマネジメント」に当たるのはどなたになるでしょうか?

またこのトップマネジメントが機能せず、判断が遅れるとどのような影響が出るでしょうか?

初出:2012/02/27
更新:2025/06/27

経済学
2025年6月24日

付加価値 | 差し引いたり積み上げたりして計算します

付加価値
付加価値とは、企業などが活動した結果、生み出された価値のことを言います。言い換えると、外から買ってきたモノやサービスに、自社が活動することによって付け加えられた価値のことを言います。英語ではadded valueと表記されます。付け加えられた価値といった意味ですね。

■付加価値(付け加えられた価値)って?

さて、製造業を例にして、企業が活動したことによって付け加えられた価値について考えていきたいと思います。モノを作る訳ですから理解しやすいと思います。

あるパン工場が小麦粉と勤勉な従業員の努力でパンを作っています。また、少しだけ外注もしているとします。

そして、このパン工場は一年間の活動の結果、200万円の売上を上げたとします。この際、小麦粉を50万円、外注費を10万円、人件費を50万円、減価償却費を50万円が発生したとします。(期首期末とも在庫は無かったし、作るそばから売れたものとします。)


すると、次のような経営成績となったわけですね。


売上高 200万円
売上原価 110万円
販売費及び一般管理費 50万円
営業利益 40万円
経常利益 40万円
税引前当時純利益 40万円
法人税等 16万円
当期純利益 24万円

(製造原価)
材料費 50万円
労務費 50万円
経費 10万円

※在庫が無く作るそばから売れたので、製造原価=売上原価となっています。

では、この数字をもとにパン工場が生み出した付加価値について考えてみましょう。

■付加価値イコール最終的な利益の24万円ではありません

まずは、利益の額を考えてみましょう。この金額はなんとなく付加価値と言ってもよさそうな気がしますよね?

企業が活動した結果生み出された価値ですから、最終的な利益はぴったりとくるような気がします。

しかし、そう考えるならば、従業員さんのお給料はどこから出たのでしょうか?

付加価値とは、『外から買ってきたモノやサービスに、自社が活動することによって付け加えられた価値』の事ですから、従業員さんのお給料も引いている最終的な利益では少なそうですよね?

■付加価値の計算は差し引いて考えよう(中小企業庁方式)

それでは、従業員さんのお給料も含めて付加価値を計算するためにはどうしたらよいでしょうか?それは、売上高から外から買ってきた費用を差し引いてみればよいのです。

上の例では、

付加価値=売上高-(材料費+外注費)

で計算しますので、

付加価値=200万円-(50万円+10万円)=140万円

となります。この企業が活動した結果、140万円の付加価値が生まれ、そのうち50万円を従業員に分配したと考えるのですね。

■付加価値の計算は積み上げてもいいよ(日銀方式)

さて、同じことを売上高から差し引くのではなく、積み上げ計算でも求めることができます。こちらは以下のような計算式となります。

付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

付加価値=40万円+50万円+0+0+0+50万円=140万円

となります。こちらの方だと、明示的に人件費を足していますね。

■計算方式は異なっていても同じ値になる

このようにどちらの方式でも140万円になりました。このパン工場が活動したことで世の中に140万円の価値を追加して分配したということになるのです。

そして、その価値は、人件費として従業員や、金利として銀行へ、賃借料や税金としてそれぞれのステークホルダーに分配されたというわけです。

企業が活動するということは、世の中に今まではなかった価値を生み出して色んなところに分配しているということを意味するのです。

■付加価値を高めることを行政も求めている

地域内で生み出す価値が大きければ行政も喜びますよね?

そして、付加価値✕行政といえば、何と言っても「経営革新計画の承認」が経営支援の華です。経営革新計画は補助金等のご褒美があるわけではないので、純粋な経営支援として実施する感じです。

この経営革新計画の承認を目指す際にはこの付加価値の伸びを設定していく必要があります。

もちろん、経営革新の承認を受けた場合の微妙なメリットとして、低利の融資を受けられるなど幾つかの利点があります。ただ、社長自ら活用しないならばそれほどメリットは感じないと言った所が本音です。

ものづくり補助金の加点になると効果が喧伝されたこともありましたが、補助金は筋が良い計画であれば無理に加点を狙わなくても普通に採択されますので。

ただ、経営革新の承認は都道府県のお墨付きを得ることには繋がりますので、積極的に営業推進を行おうとした場合、都道府県から一定の信用を与えられるのは強みです。

■経営革新の実際(余談です)

厄介なことに都道府県ごとに運用ルールも微妙に異なっていて、関東の某県ではめちゃくちゃ認定されるのに、他の件ではほとんど認定されないなんてことも起こっています。

専門職として差し支えがあるので何処とは書きませんが、気になる方は各県の実績を検索してみてくださいませ。都道府県ごとに結構承認件数の差があることがわかります。

とはいえ、認定基準が著しく違うと言った感じではなく、単に都道府県側の受け入れキャパの差≒担当者とのアポの取りやすさの差であるような気がします。

■付加価値を高める経営革新の目指す所

経営革新計画の承認を受けるためには、【経営の相当程度の向上】のために、毎年3%以上の付加価値額(もしくは一人あたりの付加価値額)の伸び率を計画に盛り込む必要があります。

これが3年計画の場合は9%、5年計画の場合は15%と言った形で、結構なハードルになります。

また、給与支給総額の伸び率として、毎年1.5%の伸びが必要で、3年計画の場合は4.5%、5年計画の場合7.5%の伸び率が必要です。

本記事は経営革新の記事ではないのでここまでにしますが、従業員を減らして一人あたりの付加価値を増やすなんて計画を立てても、行政はいい顔をしませんので念の為覚えていてくださいませ。

■狙う制度の定義に従いましょう

と、経営革新計画を例に書いてきましたが、制度ごとに計算方法を明示している場合があります。その場合は、制度ごとに示された計算方法で付加価値を計算し、目標の達成を狙っていきましょう。

なお、本当に革新的な計画を考えるときには、計画上の付加価値額の伸び率がとんでもないことになる場合があります。

特に小規模な事業者さんにとってはあり得る話しです。

例えば、付加価値を10億円生み出している企業が15%増大を狙うのはすごく大変ですが、この記事のように生み出している付加価値が140万円の事業であれば、この取組の結果付加価値が300万円になるみたいなことはよくあります。

この場合付加価値の伸びが100%を超えてくるので腰が引けてしまうかもしれませんが、自信と根拠を持って、どうしてこの付加価値に成るのかを明示することが重要です。

初出:2014/06/03
更新:2025/06/24

店舗管理
2025年6月21日

小売業

小売業_001
小売業とは、商品を生産者や卸売業者から仕入れて、それを一般の消費者(最終消費者)に直接販売する業者の事を言います。一般的なお店のイメージが近いと思います。

もちろん、一般的なお店も、他の事業者に販売するような事もあります。例えば、お弁当屋さんがお店に行って、コメを買うような事ってあり得ますよね。

この時、お弁当屋さんにお米を売っているような(卸しているような)お店は小売業なのでしょうか?卸売業なのでしょうか?

考え出すと分からなくなってきますよね。

このようなことがあるので、小売業の判定基準があります。それは、最終消費者に年間の売上の50%以上を販売していれば小売業者とされます。

そのため、上の「お米屋さん」の例では最終消費者(住民とかの一般の人に)50%以上販売していれば小売業とされるのです。

実務面からの加筆:

■小売業かどうかの判定はそんなに重要ではない

定義は補助金などで中小企業の判定だったり、小規模事業者の判定だったり、税理士さんに確認してほしいのですが、消費税の簡易課税の判定だったりで使うものになります。

支援者として小規模事業者向けの補助金などを支援する際に、重要な小規模事業者の判定ですが、小売業も卸売業も同じ常時使用する従業員が5人以下で小規模事業者扱いですので、あまりシビアに考える機会はないと考えます。

もちろん、中小企業の定義では卸売業と小売料では随分違うのですが、ここの定義を判定することはあまりないから気にしなくて良いと考えます。

支援の現場や経営の現場では、企業が小売業が卸売業かを厳密に分けることよりも、どんなお客様にどうやって売上を作っているかを把握するほうがよほど重要だったりします。

■実際は境界がすごく曖昧です

実際には、「小売と卸売のどちらか一方」だけ、BtoCで消費者にだけ売っているのではなく、BtoBの取引も行っている事業者さんも多かったりします。

例えば、以下のようなケースです。

・八百屋さんで一般家庭に野菜を売っている小売業だと思ったら、近くの介護施設に食品をおろしている。

・衣料品店で近所の人に洋服を売っていると思っていたら、学校の体操服を一括して扱っている。

・電器屋さんが、小売もしているけど、エアコン工事などの設置工事で多くの売上を上げている。

更に、最近ではネット販売への参入が容易なので、地域の消費者向けの店舗を持っていない、一見すると完全な卸売業に見えても小売業だったりします。

このように、実態は複合的であることが多いのです。

■カイゼンの方向性を掴むためには

さて、このような分類が難しい時代ですので小売業だからといって小売業のセオリーに従った支援だけを行うと決めつけてはいけません。

大切なのは、その企業の主な収益源(何で売上を取っているのか)、そして何で利益を得ているか、誰に売っているのかの構造を理解することです。

小売業と卸売業は別のビジネスモデルであり、収益構造なども少し違うため、最初にどんなご商売をしているかを考えていくことが重要なのです。

支援者としては最初に事実を把握すること。事業者さんとしても、漠然と取り組むのではなく、売上は誰に何を売って上げているのか、その粗利率はどれくらいかを最初に書き出してみることが重要です。

そこら辺があやふやでしたら、まずは1ヶ月分をノートでもExcelでもいいので書き出してみることをオススメします。

事実を見えるようにすることがカイゼンの第一歩です。

初出:2013/05/03
更新:2025/06/21


マーケティング
2025年6月19日

市場細分化戦略 | 誰に集中するかを選ぶ方法

市場細分化戦略_001
市場を分類する方法や細分化する変数の選び方は別記事で解説しています。本記事では分類した後、『誰に』集中するかについて考えてきます。



市場細分化戦略とはある基準によって細分化された、同質であるとみなされる集団に対してアプローチする戦略のことをいいます。

一言でいうと、みんなを相手にするのではなくある条件に合致するグループを相手にする戦略です。

これは単一市場に対して大量に単一製品を投入するようなマス・マーケティングでは消費者を満足させることが難しくなってきているためです。

例えば、日本全国老若男女すべての人に満足してもらうようなカップラーメンを作るとします。その場合、何か際立った特徴を打ち出すことはできるでしょうか?こってりし過ぎてもよくないし、あっさりし過ぎてもダメ。麺も太すぎず細すぎず、野菜の量も肉の量も万人受けする水準を目指す。

みんなが満足できるような製品を作ろうとすると、みんながなんとなく物足りない思いをしそうですよね。その結果魅力の乏しい製品になりがちだと思います。

その様な努力をするのではなく、市場細分化(セグメンテーション)を行い、細分化したある市場に経営資源を集中投入することが効率的であると考えられています。

そして、コトラーによればこの市場細分化の有効性は以下の要素によって決まってくると言われています。
  • 市場の測定可能性
その細分化した市場に対して行ったアプローチの効果を測定できるのか?という要素です。何をやっても反応を測定できないのであれば、その細分化が正しかったのかを判別することはできません。
  • 利益確保性
その細分化した市場で利益は確保できるのか?という要素です。例えばものすごくケチな人々みたいな市場を細分化して特定したとします。なんとなくこの市場では利益を生み出すのは難しそうですよね。
  • 市場への接近可能性
その細分化した市場にアプローチできるのか?という要素です。どんなに素晴らしい市場を細分化したとしても、そこにアプローチできないのであれば意味がありません。例えば、その市場は規制がかかっていて参入が不可能というのであればその分類は意味をなさないのです。
  • 差別化可能性
その細分化した市場にアプローチする際、差別化することができるのか?という要素です。せっかく市場を細分化したとしても、その市場に他社と同じものしか提供できないのであれば、その分類を行う有効性は低くなってしまいます。
  • 戦略の実行可能性
その細分化した市場にアプローチする戦略は実現可能か?という要素です。できない戦略を考えても仕方ありません。例えば革新的な製品を送り出すために接客時に細かく説明をして販売するとの戦略を立てたとします。しかし、経営資源が乏しく接客を行う人員を確保できないのであればこの戦略は絵に描いた餅になってしまいます。

このまんがではターゲットを絞り込んで新製品を開発したところ成功しています。

みんなに好かれるものはもちろん理想ですが、みんなに好かれるものを目指すとみんなが物足りないものになりがちです。そうではなく、少なくとも特定の層に好かれるものを提供していくことが大切なのです。

■誰に届けないか?も重要な観点です

このように絞り込む考え方をする際には、誰に届けるかに焦点が向きがちですが、誰に届けないかを割り切ることも重要です。

ここのいい意味の諦めができるかどうかが良い戦略とそうでない戦略を分けるカギとなります。

例えば、このマンガの「運動部の腹ペコ男子」にターゲットを絞るということは逆にいえば、そこまで沢山食べることができない少食の人に届けないという選択になりますから。

ただ、大手企業ならまだしも、経営資源に制約が大きい小規模なお店の場合は全員が満足するような戦略を取ることはできません。

ここで妥協して「なんとなく大盛り定食」等とすると、腹ペコ男子は満足しませんし、少食の人からすれば多すぎる微妙なお店担ってしまいます。

このように、思い切った絞り込みをすると『刺さる』戦略と成るのです。

■絞り込みが戦略の方向性を決めていきます

この「運動部の腹ペコ男子」市場に届けるとなると
・値段
・売り方、商品
・お客さんへの届け方(流通)
・お客さんへの伝え方(プロモーション)
といった大切なことも具体的に考えることができてきます。そのため、絞り込みは重要なのです。



合わせて読むと理解が深まる!『市場を分ける!それが成功の第一歩』そんな観点から
市場細分化(セグメンテーション)とは
市場細分化変数とは
市場細分化戦略<本記事>
といったシリーズもので書いてみました。合わせてご覧くださいませ。

初出:2012/03/16
更新:2025/06/19

マーケティング
2025年6月19日

市場細分化変数

市場細分化変数_001
市場細分化変数とは市場細分化(セグメンテーション)を行う際に用いる変数の事です。分類すると言っても、何らかの基準がないと分類のしようがないですよね。この市場細分化変数はその分類のための基準となります。

この市場細分化変数には次のようなものがあります。
  • 地理的変数
国や地域などによる分類です。簡単に言うと関東と関西では好まれる味が異なるといった傾向を用いて分けてみようという事です。
  • 人口統計的変数(デモグラフィック変数)
性別、年齢、職業、所得などの個人に紐づく分類です。例えば、男性と女性では好まれるものはかなり明確に分かれると思います。また、2歳児と10歳の子どもではほしがるおもちゃは明確に分かれると思われます。
  • 心理的変数
ライフスタイルや価値観、購買動機に基づく分類です。例えば、海が好きでヨットに乗る人と、映画を見ることが好きな人の好みは明確に分かれそうですよね。
  • 行動変数
その製品の使用頻度や購買動機に基づく分類です。例えば、安かったから買った人とその製品を親子代々愛してきた人ではその製品に対する態度が異なってくると考えることができると思います。

このまんがでは明らかにされていませんが、何らかの市場細分化変数を用いて分類を行った結果運動部の腹ペコ男子をターゲットにするという結論に到達したようです。


実務面からの加筆:
幾つかの変数を挙げてみましたが、実務的にどう使っていくかを考えてみたいと思います。

■市場細分化変数(地理的変数)

これはなんといってもデータが取得しやすいというのが強みになります。最初に検討していくと示唆を与えてくれる内容になってきます。

ただ、これが決定的な内容に成ることはほとんどないため、考える際にはアイスブレイクで使うといった使い方になってきます。(幾つか思いつくままに挙げていくと、考えが加速していきますから。)

住んでいるところで好みが変わる。だから売るものの味付けを変える。といった観点は重要ではありますが、あんまり実務的ではないです。差別化の観点からはここの変数は逆張りするために使っても良いかもしれませんね。(例えば、関西に敢えて関東風の醤油が強力な物品を提供するなど)

■市場細分化変数(人口統計的変数)

個人を分類する変数ですから、客層を「見える」ようにする効果があります。所得層等を一定程度で分類すれば、生活に余裕がある層に向けるなど見え方が変わってきます。

ただ、これも多くの場合は決定的な差別化要因にはなりにくいです。また、分類した感がでるため、表面上の浅い検討に成る危険性もあります。

「フィットネスが好きなミドル世代の女性」などとターゲットを分類したくなりますが、本質的なニーズが「健康」であれば、心理的変数や行動変数で分類した方が本質的だったりします。

■市場細分化変数(心理的変数)

ライフスタイルや価値観を追いかけますので、より本質的な分類にはなります。

しかし、とても主観的でd測定することが難しいため、本当にそのような価値観を持っている人がどれだけいるのかといった市場規模の測定が難しいことが多いです。

■市場細分化変数(行動的変数)

購買履歴が残っていれば、その購買履歴を用いた分類もできます。ただ、お察しの通り新規顧客の獲得には極めて使いにくいと言った弱点があります。

■じゃあどうすればいいの?

全くの新規事業では仮説を積み上げるしかないのですが、既存の事業では最強の事例があります。

それは「お客様がどうしてうちの商品を使っているのか?」といった観点です。

この観点で見ていくと、行動変数にもとづいた無理のないターゲット像を作ることができたりします。

■市場細分化変数はあくまで市場を見るメガネ

今回の漫画では「運動部の腹ペコ男子」をターゲットにすると言っていますが、それは心理的変数と行動変数の組み合わせてなかなか妥当性があるように思われます。

しかし、市場細分化変数はあくまで市場をどのような目で見るかを分類するだけの切り口となりますので、マーケティングのSTPの

S:分類(事情細分化変数はここで使う)

T:ターゲッティング(分類した何処を狙う?)

P:ポジショニング

といったステップを踏んで考えていくことが重要です。その意味では、市場細分化に過剰にこだわらず先に進んで戦略上違和感があったら戻って考えるといったほうが実務的だったりします。


市場細分化(セグメンテーション)とは何か?」という基本的な内容については、以下の記事をご参照ください。


合わせて読むと理解が深まる!『市場を分ける!それが成功の第一歩』そんな観点から
市場細分化(セグメンテーション)とは
市場細分化変数とは<本記事>
市場細分化戦略とは
といったシリーズもので書いてみました。合わせてご覧くださいませ。


初出:2012/03/17
更新:2025/06/19


マーケティング
2025年6月19日

市場細分化(セグメンテーション)

市場細分化_001
市場細分化(セグメンテーション)とは、企業が市場や顧客をある基準によって細分化して分類することを言います。

この細分化の方法はいろいろ考えることが可能です。例えば、関東・関西では好まれる味付けが異なりますよね。そのため、カップうどんのような商品では関東と関西とでは味が異なってきます。

このように地理的な条件で分類を行う事や、性別・年齢のような人口統計的な条件で分類を行うことが可能となります。これらの分類の条件を市場細分化変数と言います。

この市場細分化(セグメンテーション)に対し、市場を細分化せずに単一市場に対して単一製品を投入するようなマーケティングの手法をマス・マーケティングと言います。

このマス・マーケティングとは、日本全国老若男女すべての人に満足してもらうようなカップラーメンを作るようなイメージとなります。

これに対して市場細分化(セグメンテーション)は若い男性向けにがっつりとした大盛りラーメンを提供するようなイメージとなります。

このように、分類した集団に対してアプローチを行う戦略を市場細分化戦略と言います。
 
このまんがでは、購買に来てくれる生徒さんを分類して新製品開発に役立てようとしているようです。

■代表的な市場細分化変数

市場細分化変数という上から辿れるリンクでも書いていますが、代表的には
・地理的変数
 何処に住んでいるかとかです。関東と関西では味の好みが違うことはよく知られていますよね?

・人口統計的変数
 年齢とか、職業・性別などの個人に紐づく分類です。男女差をことさらに強調する必要はありませんが、年齢等では明らかに好みが違ったりします。(未成年とシニア層では趣味趣向が違う傾向があります。)

・心理的変数
どんなライフスタイルを好むかと言った変数です。バイク乗りとか山屋さんなどのアウトドア派とインドア派はやはり好むものが違いますよね?

・行動的変数
購買歴などに基づく変数です。

と分類していきます。

■分類後の流れ

これらの変数で分類したとして、それを経営に生かさないとなんの意味もありません。そのため、

分類

ターゲットの設定

自社のポジショニングを決める

といった流れで戦略に落とし込んでいきます。

なお、ターゲットの選定には
・市場の測定可能性
・利益確保性
・市場への接近可能性
・差別化可能性
・戦略の実行可能性
といった観点でみていくと良いです。これは(市場細分化戦略という記事で詳しく説明しています)

■マンガの例で市場細分化を考えてみる

今回の漫画では生徒さんを分類したいと言っています。今回挙げた市場細分化の観点では、地理的には同質性が高いですし、年齢や職業は学生さんなのでほぼ一緒になっています。

とすると一案として、生徒さんを心理的変数で分類していく事が考えられます。

例えば、

運動部、健康志向、インドア派

などと分けられれば、

運動部を狙うなら「腹ペコさんへ沢山食べてもらう」といった展開が考えられますね。


記事の内容がかぶるのですが、市場細分化変数の記事には実務的にどのように考えればいいの?といった視点を加えてみました。こちらも合わせてご覧くださいませ。



合わせて読むと理解が深まる!『市場を分ける!それが成功の第一歩』そんな観点から
市場細分化(セグメンテーション)とは<本記事>
市場細分化変数とは
市場細分化戦略とは

といったシリーズもので書いてみました。合わせてご覧くださいませ。


初出:2012/03/15
更新:2025/06/19

経営
2025年6月18日

戦略的意思決定

戦略的意思決定_001
戦略的意思決定とは企業の方向性を決めるような重要な問題に対する意思決定です。簡単に言うと、工場の場所を決定する、出店を行う地域を決定するなどの非常に大きな意思決定を言います。

この戦略的意思決定は主にトップマネジメント層が行う意思決定となります。

戦略的意思決定の特徴として、繰り返しが少ない非定型的な意思決定であることがあげられます。また、非常に不確実性が高いですがうまくいけば非常に大きな効果を得ることができます。言い換えればハイリスク・ハイリターンの意思決定という事もできます。

例えば出店する地域の決定等は繰り返して行うタイプの意思決定ではなく、一度きりの非常に大切な意思決定です。その意味で非定型的な意思決定であるという事ができます。

さらに、出店する地域をうまく決定できれば非常に大きな効果を得ることができますが、失敗したら日常業務の意思決定以上にひどい損失を受けることになります。

このまんがでは先生がトップマネジメント層として、戦略的意思決定を行っています。今回は学食との提携に関する意思決定を行っているようです。

このように、組織の長期的な方向を決定する意思決定を戦略的意思決定と言います。 

■組織階層ごとに意思決定のレベル感がある

意思決定の階層構造といった記事で触れたことがありますが、組織階層ごとに意思決定のレベル感があります。

この戦略的意思決定は本稿の通り、トップマネジメント層が行う非定型の意思決定ですが、中間管理職が行う管理的意思決定、現場で行う定型的反復的な意思決定である業務的意思決定と言ったふうに分類されます。

とはいえこれは厳密なものではなく、相対的なものとなっています。

■経営は意思決定の連続です

例えば、仕入れ数量やアルバイトさんのシフト決定など繰り返し発生する意思決定はとても重要ではありますが、繰り返し発生し影響範囲も限定的であるため、業務的意思決定に該当します。他方で、起業の方向性や存続に直結するような意思決定は戦略的意思決定に該当します。

ただし、お店を数百と出しているような大企業にとっては新規出店検討は戦略的意思決定ではなく、中間の管理的意思決定かもしれませんが、地域で頑張っている多くの中小企業・小規模事業者にとっての新規出店計画は企業自体の存続基盤に関わる意思決定である戦略的意思決定にほかなりません。

■まんがの例と実務的追記

今回の事例は学食との提携という一見すると些細な意思決定に思えるかもしれません。しかし、この組織にとっては存続基盤を左右するような戦略的意思決定にほかならないのです。

このように、組織の規模によっても意思決定の重要性は変わってきます。多くの中小企業・小規模事業者さんの相談は、大きな企業出身の支援者からすると些細な意思決定に見えるかもしれません。

しかし、企業自体の存続に影響を与える極めて重要な意思決定に悩んで相談してきているケースもとても多いため、相談者に寄り添った支援の第一歩は相手の立場に自分をおいてみることなのです。

初出:2012/02/28
更新:2025/06/18


法務・支援施策
2025年6月17日

優越的地位の濫用

優越的地位の濫用_001
優越的地位の濫用とは、取引を行う上で力関係が強い方が弱い方に対して不利益を与える事を言います。文字通り、優越的地位(力が強い事)を濫用するといったイメージです。

例えば、大手小売チェーンが商品の供給者に対して非常に優越的な地位を持つことは想像できると思います。

この大手小売りチェーンが、「棚卸を手伝わないと購入を取りやめる」とか「売れ行きの悪かった商品を無理やり返品させろ」、「消費者に割引販売を行った商品の仕入れ代金を支払う際に、割引額を支払代金から差し引きたい」などの要求してきたらどうでしょうか?

商品の供給者はこのような要求を断れるでしょうか。なかなか難しいですよね。

そのため、優越的地位の濫用は行ってはならないとされています。現在では、公正取引委員会は独占禁止法を根拠に、課徴金(罰金のイメージですね)の納付を命じることができます。

■よくある濫用行為の類型(5つ)

取引関係ができると自ずと力関係の差が出てきます。そのさい、どのような行為がこの優越的地位の濫用に該当するかを知っておくことは有用です。

よく挙げられる類型は以下のとおりですが、優越的地位の濫用という言葉にピッタリの、力の強い側が弱い側に押し付けるイメージが掴めると思います。

1 不当な返品(売れ残り商品など)

2 無償での役務提供要求(棚卸し・陳列など)

3 一方的な代金減額(割引分の負担を供給者に強制)

4 支払遅延(資金繰りへの悪影響)

5 協賛金・広告費の負担強要

■優越的地位の濫用が発生しがちな取引関係

上記のような不当な要求が以下のような関係性で生じがちだと言われています。

例えば、『大手流通⇔中小メーカー』、『フランチャイズ本部⇔加盟店』、『出版社⇔著者・フリー編集者』、『ECモール運営会社⇔出店者』などです。

これもイメージ通りだと思いますが、このような取引関係を構築する場合の防御策も示します。

■守る側のポイント1:契約書が生命線

一度このような力関係ができてしまうとなかなか脱することが難しいですが、しっかりと「明文化された契約≒契約書の整備」を行うことで契約外の要求に対抗することが可能となってきます。

例えば、あるメーカーが大きな小売業に納品した際、「陳列はオタクがやってくれるんですよね?」と契約にないことを言われたときに、契約書を明確にしていれば対抗しやすくなります(対抗できるとは言っていません)

■守る側のポイント2:雇われ人の心理をつく

大抵の場合、大きな企業側の交渉相手はいわゆる雇われ人です。そのため、交渉相手の組織人としては極めて強い立場にいても、個人としては不適切な言動を行う事ができないという弱い立場にもあります。

ですので、あまりに理不尽な要求をしてくるようでしたら、組織としての要求であるか?をやんわりと聞いてみるとトーンダウンする可能性もあります。

■守る側のポイント3:組織リスクをほのめかす

組織ぐるみで理不尽な要求をしてくると、公正取引委員会がやっている「優越Gメン」といった組織もありますし、公表されたりすると組織自体の評判が著しく悪くなるリスクがあります。

結構大きなダメージになるため、このような公表は避けたいと考える組織がほとんどのはずです。

もちろん、このような伝家の宝刀を抜くのは現実的には難しいですが、交渉材料としてありうるということは覚えておくとよいです。

■攻めすぎた場合のリスク(購買担当側への注意喚起)

逆に購買担当側で優越的地位を濫用しようとしている場合、相手先はこのようなカードを切ってくる可能性もありますので注意が必要です。

あなたの交渉相手も立派なビジネスパーソンですし、あまり理不尽な要求をすると、あなたのキャリアを破壊する事も辞さない反撃をしてくる可能性もあります。

上に挙げたような反撃を直接上長にやられるとかなり厳しいですよね?特にあなたの要求が相手側に議事録等としてメモが残っていたりして、その上で公正取引委員会に告発などされると窮地に立たされる危険性があります。

ですから、相手を尊重した取引を行う必要があるのです。

■長期的には商品力・交渉力がカギになります

長期的には、力関係は「取引の継続性・取引量の依存度」、「取引の代替先を見つける困難性」などで生じてきますので商品力を磨いて、力関係を自社に有利な方にかたむけていく努力が重要です。

初出:2012/09/11
更新:2025/06/17
生産管理
2025年6月16日

個別生産 | なぜ個別生産はコスト高になりやすいのか?

個別生産_001
個別生産とは、注文に応じてその都度生産を行う形式です。ロット生産連続生産と比較して注文一件当たりの金額が比較的大きくなりますが、生産量は少量になります。また、製品の仕様や納期も注文の都度異なってきます。

この個別生産形式を採る場合、注文の形式は主に受注生産となります。顧客の注文を受けた際に、毎回設計を行い材料を手配し、製造を個別に行います。

また、製造品種は多品種となり、数量は少量となるため、多品種少量生産という事ができます。

加工の流れから見てみると、この個別生産形式では、主に機能別レイアウト(ジョブショップ)型のレイアウトがとられると言われています。また、段取りの頻度が比較的多くなると言われています。

このまんがでは特別な注文が入ったため、いつもと違う料理を作っています。そのため最終的にはレシピを間違ってしまったようです。

今回の料理人さんは包丁を振り回して危ない感じですね。事故が起こる原因になりますので刃物は振り回しちゃだめですね。 

■個別生産は高コストになりがち

個別生産方式で製品を作る場合、多品種少量生産となるためスケールメリットが働きにくいです。その上、段取り替えがその都度発生したり、設計業務が発生したりと間接コストも多くかかりがちです。

また、作業も平準化できないため、稼働率が低下し作業者の手待ち時間が発生します。(何もしなくても人件費や設備のアイドルコストはかかりますので間接コストの発生要因です)

また、材料や部材なども都度発注(小口発注で高単価、最悪は余剰在庫になる)することになりますし、保管しておく場所も大きなスペースが必要となり、管理の手間も非常にかかります。

■個別生産は既製品家具に対する注文家具のイメージです

既製品の家具ならばある程度部品も共通でき、工程も共通化できるため大量二生産することができます。その結果、良いものを低コストで顧客に提供することが可能です。

しかし、注文家具の場合は注文者の要望を細かく聞いて、個別に材料を仕入れたりと非常に手間がかかります。そのため、既製品家具と注文家具を比べると一般的には注文家具のほうが高くなるのが普通です。

なぜならば、一つ一つの家具に対して、設計・税料選定・加工が発生し、そのすべてが少量対応となるためです。言い換えれば、世界に一つという価値を既製品よりも高いお金を出して買っているのです。

■原価は個別原価計算で集約します

このような個別生産方式となる注文家具の場合、注文ごとに原価(直接材料費・直接労務費・製造間接費)を集約するので、個別原価計算で製造原価を計算することとなります。

とくにオーダーメイドのビジネスモデルでは、この計算方法で計算された製造原価が経営判断の鍵となります。

初出:2012/02/03
更新:2025/06/16


店舗管理
2025年6月15日

在庫金利 | 金利を考えないと誤った意思決定をしてしまう可能性があります

在庫金利
在庫金利とは、在庫を持つことによって発生する(と見なされる)金利の負担のことを言います。実際に金利が発生していなくとも、発生しているとみなすという考え方です。そして、実際に発生していないので管理会計上で用いられる考え方になります。

この在庫金利には機会費用的な考え方として、在庫に投入している資金を銀行に預金していたら得られていたであろう利息収入を在庫金利と考える方法や、実際に負債として調達していると考えて、その調達金利を在庫金利として考えるような方法があります。

「仕入値が今は安いから、たくさん仕入れておこう」といった意思決定がなされてしまう可能性がありますが、在庫を持っていると見える費用としては倉庫代などの在庫費用が発生します。また、なかなか目立たない費用としてこの在庫金利もあるのです。

いずれにしても、在庫は持っている事自体でコストが発生するのでそれを意識づける事を目的とした考え方です。

このまんがのように、いくら安かったからと言っても仕入れ過ぎてしまうと、在庫金利等の在庫費用が沢山発生してしまい、売上原価は安くなったとしても全体的に見てみると経常利益を圧迫するような結果になってしまいます。


実務面からの加筆:
在庫ということは、現金が形を変えて企業の内部に滞留しているということを意味します。

ということは、その「現金を調達するための費用」がかかるということです。

例えば、100万円を年2%で借りてきてチョコレートを仕入れてきたとします。そのチョコレートが首尾よく売れればいいですが、1年間ずーっと売れなければ100万円が形を変えたチョコレートは在庫金利として毎年2万円のコストを発生させているのです。(100万円✕2%=2万円)

現金が動いたときにコストが発生していると感じがちですが、在庫があるだけでもコストが発生しているという意識が重要です。

このような考え方もあり、「在庫は少なく」と言われたりするのです。

実際にはこの他に、売れなければ陳腐化するリスクもありますし(この例の1年売れないチョコレートは陳腐化している可能性がありますよね)、在庫自体を管理するコストや、売り場を塞いでいる事によって発生する機会ロス(他の商品を並べていたら売れたかもしれない)などが発生するのです。

だから、時には赤字になっても大幅に割引販売して処分してしまうといったことが行われるのですね。

※なお在庫金利という言葉は厳密には金利だけを示しますが、実務的には上で上げたような様々なコストも含めて使うこともあります。また、在庫金利は経理上、在庫があることで仕訳を実施するようなものではありません。その意味で見えないコストですが、経営判断としては意識する必要があるのです。


初出:2015/01/07
更新:2025/06/15


財務・会計
2025年6月14日

自己資本

自己資本_001
自己資本とは株主に帰属する純資産のことを言います。資本金や、各種法定準備金、剰余金がこれにあたります。なんだか難しそうな説明ですが、簡単に言うと、自分のお金、つまり誰かに返さなくていいお金の事です。

株式会社では、主に株主から払い込まれた資金と、事業活動によって獲得した利益の内部留保分からなります。
BS

上記に示した、貸借対照表の純資産の部が自己資本にあたります。そして、この自己資本は負債のように返済することは不要です。そのため、長期安定的な資金源となるという事ができます。

このまんがでは、吹奏楽部の先生が販売クラブに出資しています。そして、この出資されたお金は自己資本にあたります。 

■お金の出どころで捉える

上の図の自己資本と負債の違いは何でしょうか?これは、お金の出どころを表しています。

負債は、「誰かから借りてきた」→つまり返済する義務がある

自己資本(純資産)は自前のお金→つまり返済する『義務がない』という切り口です。

■自前のお金の種類

この自前のお金ですが、事業を営んでいくと少しずつ増えていきます。(それが目的で事業をしていますからね)

そして、増えた時に最初に投資してもらったお金と増えた分を分けて考えていきます。

厳密にはもっと細かい分類もありますが、自己資本は

・資本金(自分たちが会社に払ったお金)
・利益剰余金(儲かったお金)

と分けていくことができます。

このマンガでは、先生が出してくれたお金は、返す必要がないお金です。なので、資本金としてこの貸借対照表に記載されてきます。

■実務面からの加筆:

この自己資本は「返さなくて良いお金」といったことを捉えて、商売を始める際に出資(自己資本)で資金調達したがる人がたくさんいます。

しかし、実務的には「返さなくて良いお金」ではなく、『「返せない」≒「関係性を清算できない」お金』だという着眼点が必要です。

最終的には社長さん個人の価値観になりますが、私は創業の際に他人から出資を受けないほうが良いとアドバイスすることが多いです。

また、仮に出資を受けるとしたら、33%よりも低い比率、最悪でも49%までにしたほうが良いですとアドバイスします。

なぜならば、33%以上の株式を他人に握られると、株主は特別決議を阻止することができるため、その種の意思決定が自由にできなくなります。そこまでいかなくても、少しでも株式を持っている株主からは、適切でない意思決定の経営責任を追求されますし良いことはあまりないです。

そして、過半数を握られると、株主はいつでも社長の交代や取締役の解任が可能となり、経営権を獲得することができるようになるためです。(つまり社長を首にできる権利を与えることになります。)

たいてい、そこそこ上手く経営ができている間は、株主は何も言ってきません(言ってきても「配当してください」ぐらいです)が、会社が軌道に乗って大儲けの目が出てくるとあなたを首にして別の人間を社長にしようとか、良くてもお目付け役のNo2を送り込んできたりします。


出資を受けられるような事業計画ならば、たいていの場合は融資を受けられますので、融資で(負債で)資金調達をすることをオススメしています。

融資ならば返済は大変ですが、会社のコントロール権は社長が確保できますので。

初出:2012/04/16
更新:2025/06/14
財務・会計
2025年6月14日

変動費型ビジネス | 売上の減少が大きな損失につながりにくいビジネスです

変動費型ビジネス_001
変動費型ビジネスとは、比較的大きな変動費が発生しますが、固定費は小さいビジネスのことを言います。

工場を持たずに製造業を行うファブレスといった形態のビジネスがこの変動費型ビジネスの代表例となります。(工場を持たないので、発生する費用のほとんどが変動費になります。)

このような変動費型ビジネスは変動費が大きいため粗利率は低くなります。つまり、売り上げが沢山上がっても儲かりにくいビジネスという事ができるのですね。

と、こんな風に説明すると「売り上げが上がっても、儲かりにくいなんて意味ないじゃん。変動費型ビジネス=儲からないビジネスなのかな?」と考える人もいるかもしれません。

しかし。この変動費型ビジネスには、儲かりにくいという弱点を補う大きな利点があるのです。
  • 損をしにくい
この変動費型ビジネスは固定費型ビジネスと比較して、損をしにくいという特性があります。

一般的に言って、変動費型ビジネスは固定費をそれほどかけていないビジネスとなります。という事は、損益分岐点の売上高は低めになります。(つまり売り上げが下がっても赤字になりにくいという事です。)
変動費型
また、売上が減少してもそれほど急激に損失は拡大しません。(固定費型ビジネスに示した図表と比べてみてください。)

■変動費型ビジネスの例を幾つか

この他にも、外注費を中心に使うビジネスがあります。例えば、クラウドソーシングを使ったWeb制作業が考えられます。

この場合は受注してから外注を行うので固定費はかなり押さえられます。

また、ECサイトの中でもドロップシッピング型(在庫を持たないで注文だけ取って直送してもらう)ならばこの変動費型のビジネスモデルであると言えます。

■利幅が薄い以外の弱点

一見すると手堅いビジネスであるように見えますが、変動費型のビジネスモデルには弱点があります。

一つは、利幅が薄いというよく言われる弱点ですが、実務的にはもっと大きな弱点が存在します。

それは、漫然と行うと参入障壁を築くことがとても難しいため、売上基盤が脆弱になりがちであるということです。

極端な話をすれば、外注先があなたの会社と付き合うメリットを感じなければ、競合とパートナーシップを構築する可能性もありますし、外注先が直接受注することすらありえます。

そのため、外注先と長期的な信頼関係を築くような取り組みをする必要があるといった点も注意が必要です。

また、注文だけ取って実際の製造やサービスは外注するため、製造やサービスや商品の品質など一般的に差別化しやすい部分で自社のノウハウを蓄積できる余地が少ないです。

そのため、受注した内容をそのまま外注するのではなく、

引合→商談→提案→受注

といったふうに自社独自の提案を行えるようにノウハウを蓄積していき、自社独自の価値を乗せていく工夫ががとても重要となってきます。

また、外注先とビジネスパートナーとなるような関係性を深めることによってネットワーク資産を構築することも重要です。

いずれにしても、「自社だから提供できる価値」というビジネスの本質を作りにくいため、その点wくぉ意識することが重要となっているのです。

初出:2013/07/03
更新:2025/06/14


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