まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

中小企業診断士が実務で培った経験を基に用語集を作っています。

経営用語を解説することを通じて、社会の生産性向上に貢献したいと考えています。そして、社会の生産性向上を通じて、

生産性の向上で時間的・経済的に余裕ができる→地球環境への関心UP→省エネ性能の優れている製品への買い替えを促す→経済的成長と次世代に良い環境を残す

といった風にまんがで気軽に経営用語は貢献したいと考えています。

ご意見を頂戴できれば幸いです。
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2025年11月17日

業種 | 業種とは何か?業態との違いまで図解でわかる基本と実務ポイント

業種_001
業種とは、どのような商品やサービスを取り扱っているかという観点で事業を分類した言葉です。

イメージとしては、野菜を扱っている八百屋さん、魚介類を扱っている魚屋さん、衣料品を扱っている洋服屋さんといった感じですね。

他には、金融というサービスを行っている金融業や、建築業といった感じです。

このように、取り扱っている商品やサービスを元にした切り口であるという事ができますよね。 
この業種と似た言葉で業態という言葉があります。「何を売っているか」という観点の業種に対して、業態は「どんなやり方で売っているか?」という観点になります。

■業種の分け方は国がある程度決めてくれています

日本産業分類というものを聞いたことがありますでしょうか?国が日本にある産業を大中小の3分類+細分類で整理しているものとなります。

例えば、

E製造業(大分類)>09食料品製造業(中分類)>097パン・菓子製造業>0973ビスケット類・干菓子製造業

といえば、クラッカーや乾パンなどを製造する事業者になります。

この分類のすごいのは、「だったら、乾いている菓子だから『せんべい製造業』もこれかな?」と考えたとしてもせんべい製造業は

せんべい製造業(米を原料とするもの)[0974]

と別に定義されているところです。

■業種は色々聞かれる

この分類は結構重要で、国などに何らかの申請をする場合、自社がどのような事業を営んでいるかをちゃんと特定して記載する必要があったりします。

また、「業種別審査辞典」といった書籍でもこの産業分類のような業種分類を使って分けられたりしています。

■事業再構築補助金で業種転換が求められた

コロナ禍の際に事業再構築補助金が脚光を浴びたことを覚えている方もいるかも知れません。この場合も、補助金を活用するために業種転換などが求められました。

ただ、うまく自社の事業を再定義できた事業者さん(自社の経営資源を再定義した結果、新たな業種で勝負できるだけの経営資源があった)はこの事業再構築補助金を活用できていましたが、補助金獲得のために再構築補助金申請をしたような事業者さんは、いつまで経っても交付申請が通らないなど非常に苦労したのを間近で見ておりました。

どのような業種であっても、すでにそこで業歴を積んで業務プロセスを洗練させた競合事業者が先行して存在していますので(なので、産業分類で定義されているわけです)、業種転換は容易な選択肢ではなかったわけですね。

■業種の変化と新しい分類

業種は以前はある意味とてもわかりやすく、八百屋さんや魚屋さん、肉屋さんと生鮮三品であっても、他の業種の商品は取り扱わないことも多かったのです。例えば、八百屋さんは青果だけを売っていたイメージですね。

しかし、近年では境界があやふやになってきており、八百屋さんでも簡単な日配品やその他の必要なものも売ったりしますし、コンビニなんかは顕著で何でも屋さんになっています。

また、大手スーパーなどは配達サービスを実施しており、ネットショップと実店舗の境界もあやふやになっています。(クリック・アンド・モルタルなんてイメージですね)

また、製造業も自社サイトでBtoCのビジネスをしていたりしますし、技術の進歩で売り方は非常に多様になってきています。

その意味で、業種をうまく分類することが難しくなってきており、「複合サービス業」なんていう「その他」みたいな業種も生まれてきています。

そのため、我々支援者は業種を特定する事を求められることもありますが、事業を営んでいる方は自社が何を売っているか?といった観点ではなく、「自社がお客様にどんな価値を提供しているか?」といった価値軸で捉えていくと良いでしょう。

■業種判断の観点

業種を考えるときは「お客様に何を一番届けているか?」といった質問が重要です。上でも触れていますが、お客様にどんな価値を一番届けているかです。

また、何をしたときにお客さんがお金を払ってくれるかも判断基準になります。修理をしてお金を払ってもらっているなら修理サービスになりますし、飲食店は料理と座席の提供にお金を払ってもらっています。

このように、分類していってメインとなる売上を基準に考えていきます。例えば、飲食店で青果も売っているといった複合の業種であっても、青果の売上メインならば青果小売業になったりします。

■補助金実務のときは事務局に確認です

なお、補助金で業種ごとに規模要件が違う場合もあります。その場合は補助金事務局に確認が必要です。

例えば小規模事業者向けの補助金(小規模事業者持続化補助金)などでは、小規模事業者の定義が製造業は従業員20名以下ですが小売業などは5名以下です。

この場合、和菓子屋さんなどは製造小売と言って製造業の仲間扱いされることが多いです。

■業態について

同じ青果を売っている小売業でも、売り方の工夫によって全然違うお店になることもあります。例えば24時間営業とか、ネット販売をするなどです。この場合は、業態という整理で業種選択とは異なる軸になります。

このように、まずは業種を特定し、その上で業態を考えていくと自社の商売が明確になってきます。

初出:2013/05/12
更新:2025/11/17
マーケティング
2025年11月13日

ニーズ志向 | 消費者のニーズにあわせて商品やサービスを提供するという考え方です

ニーズ志向_001
ニーズ志向とは、顧客が必要とするものに合わせて製品やサービスを開発・提供するという考え方のことを言います。

顧客が望むものを作って提供しようという考え方ですね。

例えば、高校の側に喫茶店があったとします。この喫茶店のマスターは本格志向でコーヒーを豆から焙煎して提供していました。そして、コーヒーの香りを損なうとの理由から食事類は一切提供していませんでした。

しかし、近くの高校に通う生徒は喫茶店で食事がしたいと考えていたとします。

この時、近くの高校に通う生徒のニーズを調査して、ニーズに合うように食事を提供するといった考え方をニーズ志向と言います。

この考え方は、マーケティング志向といったイメージに近いです。「顧客のほしがるものを提供する!」という言葉が表しているマーケティングコンセプトですね。


これとは逆に、美味しいコーヒーを淹れられるというシーズ側から、美味しいコーヒーを徹底して追求するというシーズ志向という考え方もあります。
  • ニーズ志向は重要
自分の製品やサービスに自信がある人が陥りやすい落とし穴が、「私のお店のラーメンはこだわり抜いた商品だから売れるはず」→「売れないなんて消費者は味がわかっていないんだ」といった思考です。

しかし、消費者は自分の満足度を高めるために商品やサービスを購入するわけであり、そこには消費者のニーズといったモノが不可欠です。

そのため、消費者のニーズを調査し、ニーズを満たすような商品やサービスを最初から開発する方が簡単だし確実ですよといった考え方がニーズ志向なのです。

・ニーズは調査できる

さて、このニーズ志向といったとき忘れがちですが大きな点が一つあります。それは消費者のニーズはある程度調査をすることが可能であると行った事です。

仮説を立てて検証するアドホック調査や一定の調査対象を継続的に調査するパネル調査といった手法があり、市場を調査すれば消費者のニーズをある程度知ることができます。

そして、ニーズを知れば、商品やサービスを市場ニーズに合わせて提供する事ができるのです。

■顕在ニーズと潜在ニーズ、ウオンツとシーズの違い

ニーズは生活をするうえで重要なものですが、単にニーズというだけではなく「潜在ニーズ」と「顕在ニーズ」に分かれてきます。

「顕在ニーズ」は現れているニーズですから、お腹が空いたとか、スマホが欲しいと言った本人が気がついているニーズです。

他方で「潜在ニーズは」本人も気がついていないニーズです。スマホを欲しがっている本当の理由は「良い写真を撮りたい」かもしれませんし、その場合、本人はデジカメ、特にミラーレスや一眼レフカメラを欲しがっていることに気がついていないのです。

■ウオンツやシーズとの違い

ウオンツは、ニーズをさらに具体的にしたもので、お腹が空いたというニーズを具体的に、ラーメンが食べたいと考えるようなものです。

整理すると

ニーズ→ウオンツ→具体的な需要

と言った段階で進んでいきます。

似た言葉でシーズというものもありますが、こちらはシーズ(つまり種)です。企業側が持っている新しい価値を提供できるという種のことをいいます。(シーズを意識する方向性をシーズ志向といいます)

なので、会議で鉄板の言い方をするならば(そして情報量はあんまりない言い方です)

・潜在ニーズを掘り起こしましょう。そしてソレをウオンツに翻訳して、我々のシーズと結びつけて革新的な商品を作りましょう。

と言った言い方が成立します。(うん、当たり前のことをそれっぽく言っているだけですね。)

とはいえ、この言い方にも真理は含まれていて、ニーズだけを追っているとイノベーションのジレンマが発生するのです。

関連用語・説明で出てきた用語
アドホック調査
パネル調査

初出:2012/11/26
更新:2025/11/13

経営
2025年11月12日

IR

IR_001
IRとは、企業が株主(現在の株主や潜在的な株主)や投資家向けに、投資判断に有益な情報を積極的に提供するような広報活動のことを言います。英語ではInvestor Relationsと表記されます。

企業は様々な利害関係者(ステークホルダー)に囲まれて存在しています。そして、企業に資金を提供してくれる株主や投資家はその中でも大切な利害関係者です。

また、株主や投資家などは、経営者と情報の非対称性がある為、経営者が自分に有利になるような行動を取るのではないのかと疑っていたりします。(このような事をエージェンシー問題と言います。)

このような疑いを晴らすためや、しっかりと投資家に対して情報提供をする事によって株価を正当で適正な水準に保つこと(安くなりすぎないようにする事)がIR活動を通じて実現できるとされています。

■IRの目的は「信頼される企業」になること

色々書いてきましたが、IRの目的は単に情報を出すことではなく、企業価値を正しく理解してもらうことになります。「うちの会社はすごいんだぞー」とまで言わなくとも「うちの会社はちゃんとやっているよ」と理解してもらうことが重要なのです。

そして、そのような地道な情報提供によって信頼してもらう。そして、長期的な視点で投資してもらうための関係性を構築することです。

こうすることで、誤解や憶測で株価が乱高下するのを防ぐ効果も狙えますし、IR活動は企業にとって戦略的なものとなっているのです。

■IRの具体的な手法って?

ではそんな重要なIRですが、どのようなことをすればいいのでしょうか?

とはいえ別に特別なことをする必要はなく、「決算説明会の開催」、「統合報告書の作成」、「投資家向けサイトの運営」、「アナリストとの面談」、「株主総会の説明資料」などです。

みなさんが株式投資をされるのでしたら、投資判断の参考にする資料を提供するといったふうに考えればよいですね。

とはいえ、本当に重要なのはどんなふうに見せるかではなく、社会に役立つ企業であろうとする姿勢であることは言うまでもありませんが。。。

■IRとCSRの関係って?

企業のIR活動として、株主や投資家向けに自社の必要性を訴えていくのですが、それでは、株主以外の社会全体に対する責任であるCSRとはどのように違うのでしょうか?


例えば、環境に優しいプロセスで製品を作ったり、障碍をお持ちの方を法定雇用率にかかわらず積極的に雇用し社会的責任を果たすと言った観点です。

これらの行動は、いっけんするとコストアップにつながるように見えますが、様々な背景の人を雇用するダイバーシティの推進は新たな組織の活力を生みますし、環境に優しい製造プロセス自体が製品の魅力を高める事もありますので、それらの取り組み自体を強みにしている企業も多いのです。

その意味で、CSRをうまく強みとしてIRで発信するといった企業も増えてきており、IRとCSRは特に相反したり、相互排他的な観点ではないという点に注意が必要です。

初出:2013/03/27
更新:2025/06/03
再更新:2025/11/12
組織論
2025年11月11日

転籍

転籍_001
転籍とは、転籍元と雇用関係をいったん解消して転籍先に雇用される配置転換のことを言います。

■転籍についての概要


例えばA社に勤めていた人が、関連会社のB社に移る場合を考えてみたいと思います。

この時、A社をいったん辞めて(A社との雇用契約を打ち切って)B社に改めて雇用されるケースを転籍と言います。

このような場合、A社を退職していますので、転籍元のA社に戻るのは稀なケースになります。この転籍はグループ会社内で人材を有効活用するという事を目的として行われると言われています。
 
但し、単に人員削減のためといった後ろ向きの目的に、この転籍を使う場合もあります。

関連用語
出向

■転籍と似た出向との違いは?

転籍と出向は本質的に違います。出向について詳しくは関連用語をご覧になっていただくとして、簡単に整理すると以下のような整理となります。
項目 転籍 出向
雇用関係 元の会社との契約は終了 元の会社との契約は継続
元の会社に戻れるか 通常は戻らない 期間満了後に戻ることが多い
雇用先はどこになるか? 『転籍先企業』と新たに結ぶ 『元の会社のまま』だが働く場所は『出向先』
※給料は元会社から

この表を単純化して一言で説明すると、転籍はいわゆる片道切符に近い感じです。

■転籍の背景と目的

このように出向とは根本的に異なる転籍ですが、以下のような背景と目的の下、行われます。

・ポジティブな目的
グループ内心事業立ち上げのための人材配置や、従業員本人のキャリア希望を叶えるための配置転換

・ネガディブな目的
事業縮小に伴う人員削減の手段としての「転籍提案」や、コスト削減や雇用責任回避手段

我々コンサルタントは、ポジティブな目的を掲げたりするようにアドバイスしますが、実務の現場ではネガティブな目的でしばしば実施されてしまいます。

■転籍を打診された時にどうするとよいの?

企業側の意図は上のとおりですが、転籍は本人の同意が原則として必要となります。(一旦退職するわけですから。)

そのため、実務的には以下のような要素を検討して慎重に考える必要があります。

1 雇用条件(給与、勤務地、役職など)はどうか?
2 退職金や福利厚生の取り扱いはどうか?
3 転籍先の企業としての評価(安定しているか?成長しているかなど)
4 拒否した場合の処遇

特に、現在の企業での勤続年数が長い場合、退職金や企業年金などについてもよく確認する必要があります。

また、元の企業云々ではなく、事実上の転職と感じられるケースもあります。そのため、転籍先の企業を冷静に見る必要もあります。

■転籍を拒否はできるの?

原則論は本人の同意が必要となっています。しかし、会社からの転籍の要請は本人にとっては極めて重い意味を持ちます。

その意味からも、拒否はできるけど一旦持ち帰って即答はしないほうが望ましいと考えます。

「持ち帰ったらどうするか?」ですが、まずは第三者的なアドバイスを求めて社会保険労務士に相談することをオススメします。(多少お金がかかるかもしれませんが、あなたの人生の必要経費です)

中立的な立場から、制度について助言してくれると考えられます。

そのうえで、圧力を感じたり、不利益な条件変更や納得感が無いなど、法的な権利行使を視野にいれるならば弁護士や労働組合に介入を求める事も可能です。

(逆に言えば、弁護士や労働組合の介入は会社側としても避けたいわけですから、不利益な変更などを巧妙にわかりにくくして伝えてくる可能性があります。その意味でまずは社会保険労務士先生に相談することがおすすめです。)

■企業側は成長機会として提示することが重要

逆の視点で、転籍を打診する企業側の立場で考えてみます。

人員整理のニュアンスがある転籍などの勧奨を、不適切な方法で行うと、上記のような法律家などの介入を招く危険性があります。また何より、働いてくれている人の不信感を招き、離職を誘発しかねません。

その意味で、あくまでキャリアパスの一つとしてしっかりと位置づけ、提示できるような制度設計が重要です。

例えば、成長分野や新市場を開拓する子会社への出向。それも、裁量を増やしやりがいも一緒に提供するといった制度設計です。

また、社内公募制を実施するなど、可能ならば「挑戦者求む」といったアプローチを取り、あくまで会社都合の配置転換・人員整理などではなく、会社も転籍対象者も成長できる機会として位置づけることが重要です。


このように、転籍制度は使い方や制度設計次第でポジティブにもネガティブにもなりうる制度です。そのため、可能な限り自社の企業文化(新しい挑戦を尊ぶなど)と連動させながら、前向きな制度として活用していきたいものです。

転籍は、会社と従業員双方にとって重要な転機となります。前向きに制度を活かすためにも、制度の趣旨や実情を正しく理解し、納得のいく形での転籍制度を運用することを目指すことが大切です。

■近年のキャリア型転籍

近年では転籍を単なる人員整理やグループ内での移動ではなく、キャリア型転籍として注目されることもあります。

従業員の専門性や能力をより活かせる企業や事業に移ることで本人のキャリア形成とグループ全体の競争力を両立させるというアプローチです。

特に新規分野の事業では、社内体制が脆弱だったりするケースが多く、管理部門で経験を積んだベテランが、管理の要として転籍すると言ったこともあります。

他方、表向きはキャリア支援でも、実際には体の良い人員調整となっているケースも有るため、声をかけられた人は、ちゃんと見極める必要があります。

ただ、いずれにしても人を減らすとかの発送ではなく、人を育て、活かす仕組みとして転籍を捉え直すことが重要です。

初出:2012/11/30
更新:2025/07/03
再更新:2025/11/11


情報
2025年11月10日

最低有効フリークエンシー

最低有効フリークエンシー_001
最低有効フリークエンシーとは、広告のターゲットとしている人たちに、広告の内容(宣伝している商品やブランド・サービスなど)を覚えてもらう為に最低限必要なフリークエンシーの事を言います。

このような考え方は、「広告を出していても消費者に覚えてもらえなければ意味がないよ。」というある意味当たりまえの発想から出ています。

このことから、「消費者に覚えてもらうためには何回広告を見せる必要があるか?」を考えた指標なのです。
  • 最低有効フリークエンシーの具体例
例えば、あなたが新しいカップめん「ソース味噌ラーメン」の広告を見たとします。一回見ただけで新製品である「ソース味噌ラーメン」を認識できれば最低有効フリークエンシーは一回です。

しかし、通常は何度か接触することでようやく新しいカップめん「ソース味噌ラーメン」を認識することができます。

今回のケースで、三回「ソース味噌ラーメン」の広告に接触した段階で「ソース味噌ラーメンが発売されたんだ。」と認識したとします。

この場合、最低有効フリークエンシーは三回という事ができるのです。

なお、最高有効フリークエンシーという考え方もあるため、広告は最低有効フリークエンシー以上、最高有効フリークエンシー以下で出すとよいとされています。

(難しく書いていますが、要するに「効果がある範囲で広告を出しましょう」という事ですね。)

■最低有効フリークエンシーの測定と活用

最低有効フリークエンシーは単なる理屈ではなく、実際の広告配信のデータを分析することでわかってきます。

具体的には、接触回数ごとに認知率、購入率を調べてグラフに書いてみると、一定の回数で成果が急増するような「しきい値」があることが分かります。

そのしきい値こそが最低有効フリークエンシーになってきます。

例えば、同じCMを数回見ただけでは覚えないかもしれませんが、ある一定回数見れば、「あ、あの商品だ」と覚える事ができると思います。これは個人差がありますが、集団として一定のしきい値があるのです。

これがわかっていれば、最低有効フリークエンシーを超えるまで広告を出していくことが肝心だとわかってくるはずです。

なお、媒体によってこの最低有効フリークエンシーは異なっており、SNS広告やバナー広告ではテレビCM等よりも低めに出てくる傾向があります。

■最低有効フリークエンシーの注意点

広告費の効率的活用の観点から、最低有効フリークエンシーという考え方は示唆を与えてくれます。それは単発で一回だけ広告を打つと無駄になりがちだということです。

すぐに反応がなくとも我慢して一定回数見てもらうまで広告露出をしないと無駄になるということです。

他方で、最高有効フリークエンシーという広告露出の飽和点もある事もわかっています。そのため、最低有効フリークエンシーに到達するする人を多くするため、届ける人の設定を適切に行うことが必要です。

効果が見込めそうだからと言って、同じ集団に広告を打ち続けると無駄になる可能性があるのです。

初出:2013/03/04
更新:2025/11/10
財務・会計
2025年11月9日

固定費 | 固定費とは?変動費との違い・損益分岐点の求め方と削減のコツ【例題つき】

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固定費とは、使っても使わなくても固定的にかかる費用の事を言います。会社で言うと工場とかお店とかで作ったり売ったりしなくてもかかってしまう費用の事です。

たとえば、工場やお店の建物の減価償却費や工場やお店で働いている人のお給料などは何も作らなかったり、お客さんが来なかったりしても一定の額はそのまま発生してしまいます。

また、お店などを借りていれば家賃がかかりますし、お金を借りていれば支払利息がかかります。 これらの費用は、使っていても、使っていなくても(操業度の増減にかかわりなく)固定的にかかる費用なので固定費というのです。

この反対の言葉として、変動費というものもあります。こちらは、お店で販売すればするほどかかる売上原価(仕入代などですね)や水道光熱費などが該当します。

■固定費が多いと

さて、この固定費ですが多ければ多いほど経営上のリスクが増します。 簡単に言うと、何もしないで出ていくお金が大きければ大きいほど経営は不安定になりそうですよね?

そのため、上手く工夫して固定費の金額を抑えていくことが重要なのです。

■コスト削減のコツは

コスト削減のコツは、この固定費の削減に優先して取り組む事です。

例えば、不要な倉庫を借りていたりしませんか?不要な営業車を持っていませんか?不要な保険に加入していませんか?

こういった固定費を一つ一つ見直していくことで、稼がなければならない粗利益の額が少なくなるため、経営が楽になります。

逆に言えば、使っていない倉庫を持っているならば、その倉庫のために売上を上げなければならないといった状況になっているわけです。

この倉庫の維持に月10万円のコストをかけているとします。この場合、小売業を営んでいるとすると、一般的な粗利率は、30%程度になりますので、売上で言うと33万円分を毎月損している事となります。

33万円×30%≒10万円 逆に言えば、不要な倉庫の維持費を削減できれば毎月33万円の売上を上げたのと同じ効果が得られるのです。

なお、固定費と変動費の分解には勘定科目法高低点法などの方法が用いられます。

■固定人損益分岐点の関係を考えよう

このように、固定費は売れても売れなくても毎月固定的に出ていくお金です。では、いくら売れば利益が出るかを知ることはできるでしょうか?

ここで出てくるのが損益分岐点の考え方です。(この考え方が管理会計のエッセンスです)

例えば、上の例で倉庫の維持に10万円、お店の家賃や人件費などに40万円掛かっているとします。これらがすべて固定費だとすると固定費50万円の会社ですね。

この時、一般的な小売業の場合は30%の粗利率となりますので100万円売れれば30万円の粗利益が出るとします。

この2つの関係性がわかっていれば、固定費50万円を取り戻すためには、50万円÷30%で166.7万円を売ればいいことが分かります。

では実際に試してみます。

<この企業の損益計算書>(単位:万円)
売上   :166.7
売上原価 :116.9
売上総利益:49.8
販管費  :50
営業利益 :▲0.2

端数が出てしまいましたが、おおよそ損益トントンになりましたよね?つまりこの会社は月に166.7万円の売上を上げることが損益トントンに必要だということがわかるのです。

■無駄な倉庫の削減がどれだけ効くか

さて、上で使っていない倉庫に10万円を毎月払っているとありました。その倉庫契約を解除(明渡し)した場合はどうなるでしょうか?

固定費は倉庫の維持に10万円、お店の家賃や人件費などに40万円でしたが、倉庫の維持が必要なくなったので40万円に変わります。

粗利率が同様だとすると固定費40万円を取り戻すためには、40万円÷30%=133.3万円となります。

改善後も実際に試してみましょう。

<この企業の損益計算書>(単位:万円)
売上   :133.3
売上原価 :93.3
売上総利益:40
販管費  :40
営業利益 :0

今回もうまくいきましたね。

ここでのポイントは、固定費をわずか10万円下げた時、必要な売上高がどれだけ変わったかです。この場合166.6万円から133.3万円と33.3万円も変わっています。

つまり、固定費の削減はとても大きな効果を企業にもたらすということなのです。

■固定費削減実践のポイント

さて、このような大きな効果をもたらす固定費削減ですがどうすればいいでしょうか?

まずは、『ほとんど使っていない』をキーワードに削減していくことになります。

上の例で使っていない倉庫の削減は誰も困らない手段でした。ただ、意識しないと払い続けていたと考えられます。

このように、「空間」に対する費用を考えていくと色々見えてくるものがあります。本当にそんなに広い事務所が必要ですか?等といった問いかけです。

また、「デジタル」に関する費用も固定費となりがちです。あまり活用していないSaaS契約はありませんか?あまり見ていないレポートを発行するためにシステムの費用を払っていませんか?

このように、まずは使っていない無駄を探していくことが第一歩になります。使っていない無駄ならば削減しても士気に影響を与える危険性は少ないですから。

そのうえで。使っているけど、代替品に置き換えられる物を探していくといったアプローチになるでしょう。こちらは注意が必要で、削減だけを目的にすると従業員の士気を下げる危険性があります。

■似た言葉のまとめ

固定費の話をすると、変動費とか準固定費、準変動費と言った似た言葉がでてきます。以下まとめておきますのでご参考にしてください。

区分 定義 代表例 特徴
固定費 使っても使わなくても発生する費用 家賃、人件費、減価償却費 固定費発生の意思決定は慎重にする必要がある
変動費 売上や生産量に応じて増減する費用 仕入代、水道光熱費 売上が増えると同時に増える費用
準固定費操業度によって階段状に増減する費用人件費(増員の判断)など 拡張に伴って段階的に上昇する
準変動費操業度がたとえゼロでも、一定額発生する費用 電話代、電気代など 一定額まで固定、以降変動

初出:2011/03/01
更新:2025/11/09
店舗管理
2025年11月8日

アウトレットストア

アウトレットストアの仕組みを解説する4コマ漫画
アウトレットストアとは、主に、メーカや卸売業が在庫処分のため割安価格で販売を行う店舗のことを言います。

どこかの業者が単体でこのような形態のお店を出すこともありますが、イメージしていただきやすいのは、アウトレットモール内に設置されたお店ですね。

このようなお店では、通常の価格に比べて割安で(しばしば格安で)販売されています。

さて、どうして割安での販売を行うのでしょう?あなたが在庫を抱えた側の会社の人であると仮定して考えていきたいと思います。

例えば、多少の傷があったり、どうしても売れ残ってしまうような商品があったらどうしますか?そのまま倉庫に置いておけば、保管代もかかりますし、在庫に投入している資金も回収できません。

そのため、企業側には多少安くとも売ってしまいたいという発想があるのです。(時には、原価を割っていたとしても、現金が多少でも回収できるのであれば良いと考える場合もあります。)

どうでしょうか?「仮に原価を割っていても販売したい。」という発想、ご理解いただけますか?
  • 何故原価割れでも売りたいの?
まず、サンクコストという考え方があります。これは、在庫を仕入れるために投入した金額は、どのような意思決定を行っても、今更取り戻せないという考え方です。そして、この取り戻せないコストは、意思決定にあたって無視するのが正しいとされています。

このため、仮に1万円で作ったモノであったとしても、5千円で買いたいという顧客が現れたならば、1万円の原価は無視し、5千円で販売するか、もっと高く購入してくれる顧客がいるかどうかを検討する事が正しいとされているのです。

(仮に原価を割っていても、その金額はもはや取り戻せないため、原価を無視して可能な限り高値で販売するという事が合理的な選択なのです。)

また、倉庫に置いておくという事は、その商品の保管代もかかります。さらに、その商品が売れて回収できたお金を再投資に回す分の機会原価も発生してしまうのです。
  • お金の回収以外の目的は?
もう一つの大きな目的は、実際に商品を販売することによって市場の情報を得るという事です。

製造業や卸売業は直接消費者と接触することが少ないため、消費者が何を好むかといった情報を入手しにくいのです。そのため、アウトレットストアを出店して、直にお客様の反応を得るという目的があるのです。

■観光資源としてのアウトレットストア

アウトレットのお店は単に安く物が買えるお店というだけでなく、地域経済にとっても重要な役割を担うようになってきています。

具体的には、高速道路沿いにアウトレットストア、アウトレットモールが大規模にオープンすると人の流れが変わるというあれです。

皆様も、「ああ、あのお店のことね。」と見当がついているように御殿場だったり軽井沢だったり、木更津にあるような大規模店です。

このようなお店があれば、地域全体の消費を押し上げるなどの波及効果が生まれてきます。

他方で、広域から集客するため道路の交通容量などが適切に設計されていないと毎週のように大渋滞を招くなど迷惑施設にもなりかねません。そのため、誘致する場合は地域全体の今後を変える可能性があるお店であると考え、真剣に取り組んでいくことが求められるのです。

■アウトレットストアとSDGs

地球に優しい持続的開発目標としてSDGsが提唱されて随分立ちます。実はアウトレットストアもこの考え方につながっています。

それは、廃棄する商品を捨ててしまうのではなくアウトレットストアで安く販売する方が環境負荷が下がるということです。

例えば、アウトレットストアで売られることの多いアパレルについて考えてみます。

アパレルは実は非常に環境負荷の高い産業であり、膨大な水資源を原材料の製造(綿花の栽培など)から紡績、染色などで使っています。

また、世界中を股にかけて原材料調達し、縫製し、店頭に並べるため、膨大な量のCO2を排出しています。

その上、供給される衣料品のほとんど(環境省によると1年に供給される衣服の9割)が手放され、その多くの部分が廃棄されます。

このように、作ったのに売れないと廃棄ロスで企業経営を圧迫するだけでなく、純粋に資源の浪費となってしまいます。

これを避けることに貢献するためアウトレットストアは企業の社会的価値向上にも貢献していると言うことができるのです。

関連用語
カテゴリーキラー
パワーセンター 
スーパーセンター
ホールセールクラブ
キャッシュ&キャリー
GMS
ハイパーマーケット
ネイバーフッド・マーケット 
ハード・ディスカウンター
ボックスストア 

初出:2013/05/08
更新:2025/11/08
店舗管理
2025年11月7日

アイテム | アイテムとは?SKU・カテゴリー・単品との違いをわかりやすく解説

アイテム_001
アイテムとは商品の種類を表す言葉で、品目とか、集合単品などと呼ばれることもあります。

さて、「商品の種類?単品の事?」とこのアイテムという言葉を単体で説明してもイマイチわかりにくいため、似た使われ方をするSKUとの比較を示しながらご説明します。


あなたは生鮮三品を扱っているスーパーマーケットの鮮魚売り場で働いているとします。そして今日は、サバを沢山仕入れてサバフェアーをする事にしました。

あなたは、一尾丸ごとサバを欲しがる人や、半身を欲しがる人がいると考えて、一尾と切り身の二種類の商品を用意したとします。

この時、アイテムはサバという1つですが、SKUでは一尾と切り身の2SKUになります。

つまりこの場合は、1アイテム、2SKUとなるのです。

また次の日は、あさりフェアーを開催しようと思ったとします。今回は、グラム数で分けて、100グラム、200グラム、500グラムの3種類にパッケージして販売したとします。

この場合は、1アイテム3SKUとなります。

■アイテム管理の重要性

お店で販売する商品はアイテム単位で管理することが一般的です。SKUレベルでの管理も悪くないのですが、ちょっと細かすぎて分析などが大変になってきます。

そのため、まずはアイテムごとに売上を把握して行くことが重要です。そしてアイテムごとに、棚割りをしたり在庫数の最適化をしたりするのです。そして、どうしても細かく管理したい場合にはSKU単位まで掘り下げるという対応が効率的になってきます。

まんがでは鉛筆の例を出していますが、鉛筆とかシャープペンなど筆記具をアイテム管理して、アイテムごとに売上管理するとどの筆記具が売れているかわかるのでお店の経営に役立つのです。

というか小規模事業者においてはアイテム単位での売上把握も疎かになっているケースが散見されますので、せめてノートでもなんでもいいので記録を取る習慣をつけることがとても重要になってきます。

■アイテムとカテゴリー、SKUの違い

お店の商品を考えるときに、アイテムとカテゴリー、SKUと言った区分で管理していくことになります。

どれも商品を管理するという言葉ですので、管理の粒感を以下のように整理してみました。

用語意味・定義例(文具店の場合)管理の粒度
カテゴリー複数のアイテムをまとめた上位分類。販売戦略や棚割りを考える単位。「筆記具」「ノート」「ファイル」など大分類(最も粗い単位)
アイテム商品群の中で同じ性質を持つ種類。型番やシリーズ単位で管理される。「鉛筆」「シャープペン」「ボールペン」中分類(管理の基本単位)
SKU在庫管理上の最小単位。同じアイテムでもサイズや色・仕様が異なれば別SKU。「赤いB鉛筆」「青いHB鉛筆」など小分類(最も細かい単位)
単品1つの具体的な商品を指す言葉。SKUとほぼ同義で使われることが多い。実際の棚に並ぶ1本の鉛筆最小単位(SKUと同程度)

カテゴリー単位では結構大きな単位になっていることが見えると思います。単品毎の管理は手間暇が非常にかかるため、お店ではどのカテゴリーが売れているか、どのアイテムが売れているかなどカテゴリーやアイテムごとの管理をしていくと改善につながってきます。

初出:2013/05/19

更新:2025/11/07


情報
2025年11月5日

死活監視 | 常に監視をして「返事がない、ただのしかばねのようだ」を見つける方法

死活監視_001
死活監視とは、ITシステムが稼働しているかどうかを監視する方法の一つで、外部から継続的にシステムは『生きているか』を監視するような方法です。英語ではalive monitoringと表記されます。

例えば、一定間隔で監視対象のシステムに対して(サーバ等に対してですね)信号を送信して、反応を見るといった方法を採ります。

システムが生きているのならば、反応を返すように設定しておけば、反応が返ってこない=システムが生きていないという事ができるのです。

一昔前のゲーム風に言うならば、話しかけたにもかかわらず返事がないといったイメージで、「返事がない、ただのしかばねのようだ」みたいな感じです。

■なぜ死活監視なのか

さて、どうして継続的に監視をしないといけないのでしょうか?その理由は、トラブルの発生がいつになるかが読めないためです。

あらかじめトラブル発生がわかっていれば、予防保全などを行い、トラブルなど発生させにくくすると言った対応が可能ですが、何処まで対応してもトラブル発生の確率をゼロにすることはできません。

その為、常に監視を行っておき、トラブルの発生を迅速に把握するというニーズがあるのですね。

■ 死活監視が使われる具体的な場面

さて、上記のような死活監視ですが、以下のような状況で活躍します
  • Webサーバやメールサーバなどの常時稼働が求められるシステム
  • 社内ネットワーク機器(ルーター、スイッチなど)
  • IoT機器やセンサーネットワークの健全性確認
  • クラウド上のマイクロサービス群
これらのサービスは基本的に止まってはいけない類のサービスとなります。

そのため、ECサイト運営企業は、24時間の死活監視を行い、「サイトが落ちた瞬間」に担当者へアラートが飛ぶようにしておくのです。その結果、復旧までの時間が短時間となり売上の機会損失を最小限に抑えることができるのです。

(担当者が気の毒だと思った「感性の鋭い」あなたは、動いているのが当たり前ではなく、当たり前を守っているITエンジニアをぜひ尊重してあげてくださいね。)

■ 死活監視のメリットと限界

死活監視には明確なメリットがあります。それは、シンプルで導入が容易(Pingなどで対応可能)ということです。

※pingは標準機能ですから、特にコストを掛けずに実装可能です。(ping(ピン)とは、「そっちにいる?」とパソコンに声をかけて、返事があるかを確かめるしくみです。)

その結果、異常検知の初期段階でアラートを出せますし、サービスレベル維持が比較的容易で合うrと言った利点があります。


ただし、次のような 限界点があるため注意が必要です。

■ゾンビなどに気をつけろ

死活監視では、表面上生きているように見えるが実際には処理不能というゾンビみたいなケースには弱いです。

例えば、アクセスが集中しているなどの理由で実際には使い物にならない程度に処理が遅延しているケースでも、「生きてるよ!」と返してきますので、検知が難しいです。

(この対応にはアプリケーションレベルでの監視が別途必要)

また、通信経路の問題で「誤検知」もありえます。「生きてるよ!」と返してきたけど、ネットワークが遅く、そのシグナルが届かないで落ちていると誤認してしまうケースもあるのです。

■死活監視とその他の監視手法との違い

  • 死活監視(alive monitoring) システムが生きているかを見る
  • ハートビート監視 クラスタ構成での相互監視。タイムアウトで障害検知
  • ポーリング監視 一定間隔で情報を取得して状態確認
  • エージェント監視 端末に監視ツールをインストールし、内部情報もチェック
ざっくりとまとめるとこんな感じになります。

■死活監視のアラートと対応プロセス

死活監視でシステムが反応しない時には、すぐにアラートを出すように作っていきます。

例えばネットショップが止まれば、担当者にメールなどで「サーバが応答していません」と通知が届いたりします。(担当者から刷ると最悪の瞬間ですよね)

この連絡を受けた担当者はすぐに原因究明を行い、再起動や復旧対応を行っていくのです。原因究明にはログの解析を行ったり、プロセスの再起動を実施し、復旧を図ります。

このように死活監視は、監視するだけではなく

監視→検知→通知→対応→再検証

という一連のサイクルの起点となるのです。

■AI時代の死活監視(アラートの意味づけ)

近年ではAIを活用して異常検知と死活監視が統合しつつあります。

単なるPing応答の有無だけでなく、CPU使用率やレスポンスタイムの変化などから予兆を検出すると言ったアプローチが取られつつあるのです。(予兆が出たら嫌ですね。予兆の段階で何か作業をして障害発生を食い止められればいいのですが・・・)

いずれにしても、反応があるけど正常じゃないという状況を検出しやすくなってきたのは良いことですし、利便性や安定性はそれだけで大きな価値がありますからね。

■まんがの解説

上記の漫画では、死活監視の本質を書いてみました。

「反応さえすれば監視を抜けられる」という仕組みは、まさに死活監視の弱点そのものです。

表面的な生存確認では、「ちゃんと働いているか」まではわからないという現場のジレンマを書いてみました。

初出:2013/07/13
更新:2025/11/05
財務・会計
2025年11月4日

配当政策

配当政策_001
配当政策とは、得られた利益のうちどれだけを投資家に還元するかの方針のことです。そして、実際に配当に充てられた比率を配当性向と言います。

企業の獲得した利益は株主に帰属しますが、経営者はその獲得した利益を株主に配分するか、内部留保として取っておくかを選択する必要があります。

内部留保を多くすれば、安定した資金の調達源(内部金融)となります。逆に、株主に多く配当すれば、株主はインカムゲインを得ることができます。

もっとも、配当が多ければ多いほど株主のためになるとは限りません。例えば、配当を行わずに事業に再投資し、企業価値を高め株価の最大化を目指すといった方法もあります。この場合株主は株式を売却した際にキャピタルゲインを得ることが可能となります。

このように、配当政策をどのようにするのが最も適切かを一概に判断する事はできないのです。

このまんがでは利益を内部留保して設備投資を行うか、株主に配当で還元するかどちらにするか株主のおじさんと、男子生徒が話していますが、今回は内部留保を増やして設備投資を行う事に決まったようです。

■配当政策の考え方

配当政策にはいくつかの考え方があります。配当は一概にたくさん出せば出すほど株主にとって良いとは限らないのがポイントです。

■配当を出さないケース(配当しないという配当政策)

例えば、企業がこれから大きくなるという成長ステージにおいては、配当よりも内部留保を重視することが多くなります。

これは、これから大きな成長が期待される中では数%の配当でのリターンではなく、成長による数十%、場合によっては数倍のリターンになったほうが株主のためになるという判断に基づきます。

このことから、創業期のベンチャー企業などはほとんど配当を出さないといった配当政策を取りがちですので、配当が得られないと理解したうえで投資することが望ましいでしょう。アメリカの大企業では配当をずっと出さずに成長で株主に報いるとしていたマイクロソフトやアマゾンがありました。

これらの会社に投資していたら非常な利益が得られた事は私達は知っていますので、配当をせずに内部留保を優先するという考え方も十分に正当化されることを知っています。

■配当を出す場合いくら出すかが問題です

他方で、成熟期に入った企業では安定的な配当を重視する安定配当政策や、業績に連動して配当を考える利益連動型の配当政策を取ったりします。

前者の安定配当政策は、利益が増えても減っても基本的には配当を一定額出していくという考え方で、利益減少局面や赤字局面での目先の配当利回りの高さだけで投資判断をしないことが重要です。

後者の利益連動型の配当政策の場合は、配当の水準が不安定となるため株主としては不満が残るケースがあります。

株主が満足するとかしないとかにふれているということは、配当政策によって株価に影響を与えることができるということにつながります。

そのため、株主など利害関係者の利益を最大化するためにはどうしたら良いのかを考えるのも経営者の大事な仕事だったりします。特に、業界の標準からかけ離れた配当政策を行うと、良くも悪くも株価への影響が大きくなります。

■配当政策と内部留保のバランス

前段では配当の出し方の考え方について述べましたが、配当と内部留保のバランスについても見ていきます。

会社は獲得した利益を「貯める」「使う」「分ける」とバランス良く考えていくことが重要です。

このバランスは配当性向自己資本利益率(ROE)資本コストなどを踏まえて考えていく必要があります。

短期的に株主還元を配当で行うと、成長のための投資余力を失ってしまいます。逆に内部留保を優先しすぎると株主価値を毀損してしまいます。

これらのバランスの鍵は、自己資本利益率(ROE)で、自己資本利益率(ROE)が十分に高いならば配当で株主に利益を分配するよりも再投資したほうが株主価値が高くなります。

多くの日本企業では配当性向を35%前後を目安としつつ(獲得した利益の35%前後を配当する)、単年度の利益増減で配当の額を増減させずに安定的に配当すると言ったことを行っています。

大きく儲かった場合は自社株買いで株主還元すると言ったイメージですね。

初出:2012/04/15
更新:2025/11/04
マーケティング
2025年9月30日

カニバリゼーション

カニバリゼーション_001
カニバリゼーション(cannibalization)とは、新商品が自社の既存の商品の売り上げを下げてしまうような、共食い現象のことを言います。

例えば、会計システムを主力としているような企業が売り上げの拡大をもくろみ、ある程度機能を制限した廉価版を販売したところ、既存商品のユーザが廉価版の商品に流れ、かえって全体の売り上げが低下するようなケ
ースがあります。

投入した新商品が既存の商品と同じようなターゲット顧客に同じようなモノを販売しようとしている場合に強くこの影響が出ると言われています。

差がよくわからない二つの製品があった場合、安価な方を選んでしまいますよね。それと同じことが起こるということです。

このまんがでは、1コマ目で職員をターゲットとしたお弁当の売り上げがとても良いため、2コマ目で学生さんへもちょっと安くして量を増やした同じような商品を販売していきたいと言っています。

発売した結果、売上数量が増えたのでしょうか、3コマ目でとても忙しそうにしています。ただし、客単価はとても下がったと言っており、結果として売上高は増えたかどうか不明です。場合によっては、安いものばかり売れてしまい、全体の売上高は下がっているかもしれないです。

4コマ目のように新しいお弁当が、元々あったお弁当の売上を食べてしまった、共食いのイメージがカニバリゼーションのイメージとなります。

■カニバリゼーションを防ぐ方法は

このような共食いですから、基本的にはマイナスになります。そして、このカニバリゼーションを防ぐことは、ビジネスにとってとても大切な考え方になります。(だって、味方が同士討ちしていたら勝負になりませんからね)

基本的には「似ている」商品やサービスを市場に投入することでカニバリゼーションは発生してしまいます。固く言えば新商品を既存商品と同一市場セグメントに投入するといった整理になります。


この事を逆に考えれば、「選ぶ理由」とか「魅力」をちょっとずらす事がカニバリゼーションを防ぐヒントとなります。

例えば、「大盛りの牛丼」であれば、ちょっと小さめのサイズを提供することで「小腹を満たしたり」重要な仕事の前に「満腹は避けたいけどお腹になにか入れておきたい」と言ったニーズに答えることができるかも知れません。

これは同じ牛丼という商品ですが、サイズを変えることで違う魅力をもたらすということができるという例です。

また、売るターゲットをずらすのも効果的です。例えば、学生向けとビジネスパーソン向けの商品として正確を明確にして売り出せれば同じような商品でも違った魅力を打ち出し、カニバリゼーションを防ぐことができるのです。

このターゲットずらしは、結構行われていて高級ラインと廉価場なラインを分けるなどというのを見たことがあるかたも多いと思います。アパレルなどでは「〇〇レーベル」とか「〇〇『ブランド名』」などブランド名を想起させる文言入れつつちょっと変えるといった事が行われています。

■逆にあえてカニバリゼーションを起こすケース

この他に、商売というのは面白いものであえてカニバリゼーションを起こして自社で顧客を取り合うという作戦もありえます。

例えば、家電やスマホはあえて旧機種と新機種を競合させて競わせるといったことがあります。当然旧機種の売上は新機種に相当部分取られますし、新機種の側も旧機種でいいと考える顧客を取り逃がします。

しかし、会社全体では市場シェアを維持することができたりするのです。

また、製品ライフサイクルで考えれば成熟期に入った後には、衰退が待っていると予測されますので、新たな製品をカニバリゼーションを恐れずに投入していくことが行われます。

そして、新旧製品を合わせて市場を確保していく事が行われます。

また、カニバリゼーションを恐れない作戦の一つの極端な例としてはコンビニエンスストアなどがやるドミナント戦略もあげられます。これは、既存店と新店舗が競合しても面的に商圏をおさえられればいいという割り切った考え方となっています。

初出:2011/09/28
更新:2025/09/30
経済学
2025年9月28日

有形財

有形財_001
有形財とは形のある財(何らかの価値のあるもの)の事を言います。

例えば、食料品やテレビや洋服、パソコン、書籍といった形のある価値のあるモノの事を言うのです。

これは、サービスなど形が無いけれども有益なモノに対応する言葉ですね。これに対して形のない財を無形財といいます。こちらは形はないけど価値があるものでサービスなどが代表例になります。
  • 有形財の特徴とは? 
さて、この有形財。いちいち意識はしないと思いますが、無形財と比較して次のような特徴があります。

・実物を目で見たり、試すことができる。
形があるわけですから、実物を見たり触ったりすることができます。
 
・貯蔵することができる。
生ものとかでは日持ちはしませんが、貯蔵することが可能です。これに対して、無形財は貯蔵することが基本的にまったく不可能です。

言ってみれば当たり前の特性ですが、この当たり前の特性を備えていない無形財を考える時、この有形財の特徴を押さえておくとわかりやすいのですね。

■有形財の分類と活用方法

有形財は更に「消費財」と「生産財」に分類されます。消費財は生活の中で消費される財になり、食料品とか文房具、お菓子、洋服などになります。

これに対して生産財は、工場や会社で他のものを生産するために使われるもので機械や工具、材料などが該当します。

どちらも形があるという意味では有形財ですが、使い方で分類することができるのですね。

さて、このような分類はいわゆるBtoCBtoBの分類に該当してきます。物自体は一緒かもしれませんが、使われ方や使う人が異なるため、マーケティング戦略や流通をどうするかなど様々な面が異なってきます。

自社の商品は有形財を作っているということから一歩すすめて、それが消費財に当たるのか、生産財に当たるのかを考えてみると事業のヒントが得られるかも知れませんね。

■耐久性での分類

さらに有形財を異なる切り口で分類するならば、耐久財非耐久財といった分類もあります。

耐久財は使ってもすぐに無くならないモノをいいます。例えば、冷蔵庫や自動車、自転車などある程度長く使える財のことをいいます。

他方で非耐久財は消費したらそのときになくなってしまうような財で、食品(食べたらなくなりますからね)、衣料品、日用品などが該当します。

この分類も、売り方の違いに関連してきます。耐久財と非耐久財では売り方を買えないとうまくいきませんので自社の取り扱い商品について整理して考える必要があります。

■まとめー有形財の分類ー

上記のように、有形財は「消費財/生産財」と「耐久財/非耐久財」という2つの軸で整理することができます。

用途と使用期間の両方で分類することで、マーケティングや統計分析に役立ちますよ。

分類 耐久財(長く使える) 非耐久財(すぐなくなる)
消費財
(家庭や個人が使うもの)
テレビ・冷蔵庫・家具・自動車
⇒ 長期的に生活で使用する
食料品・飲料・日用品・衣料品
⇒ 消費や使用と同時になくなる
生産財
(企業や工場が使うもの)
工場機械・工作機械・建設設備
⇒ 生産活動で繰り返し利用される
原材料・燃料・部品
⇒ 生産過程で消費される

初出:2013/05/05
更新:2025/09/28
経営
2025年9月24日

業務的意思決定

業務的意思決定_001
業務的意思決定とは、与えられた資源を用いて短期間で最大限の効率化を図るための意思決定の事です。この業務的意思決定を行うのは主にロワーマネジメント層です。

イメージとしては主任さんや係長さんが日々の業務を最大限効率化できるようにする意思決定のイメージとなります。

例えば穴を掘るという業務があったとします。使える道具はスコップで、いる人員は5人とします。この条件のもと、最も効率の良い穴の掘り方を決定するようなことが業務的意思決定にあたります。

ここで、スコップではなく、ショベルカーを持ってくるといった決定であったり、5人ではなく10人の人員を使うであったりするような、決定は一般的にはロワーマネジメントが行う業務的意思決定の範囲外となります。

このまんがでは効率の良い生産方法を決定していますが、人員の増強については権限がないとのことで、上長に増員要請を行っています。

業務的意思決定とはこのように与えられた資源を活用する意思決定の事を言います。

■業務的意思決定と他の意思決定の違い

業務的意思決定と他の意思決定(管理的意思決定戦略的意意思決定)には階層構造(意思決定の階層構造)があり、誰が意思決定するか、どの範囲で意思決定するかが決まっています。

これは無駄にヒエラルキーを作って喜んでいるというよりも、意思決定に階層構造をもたせたほうが効果的に管理できるためです。

■業務的意思決定の例

仕事で穴を掘るとき、スコップしか現場にないならば、そのスコップをどう使って効率的に仕事をするのかを決めるのが業務的意思決定です。

現場の経営資源をどう使い、同効果を上げるか。日常の業務をより良く執行するための意思決定ですね。

■上の階層で考えること

これに対して、「スコップじゃなくてショベルカーを投入すべきだ。購入することにしよう。」とか「現場の人員を増員させ、そのための管理者も然るべき訓練をされた人間にしよう」と言ったふうに考えるのが管理的意思決定のイメージです。

更に、「弊社は、土木関係の仕事をやるのはやめ、これからは内装工事に集中しよう」と会社の進むべき方向、あり方を決めるのが戦略的意思決定となります。こういったのがトップマネジメントの仕事なのですね。

■業務的意思決定をより良くするための権限

上記のように、業務的意思決定は与えられた経営資源で工夫する事です。そのため逆に言えば与えられた経営資源を活用するための権限を移譲しておくことが重要です。

例えば、スコップで現場対応する際に、道具が人数と比較して足りないということが発生するかもしれません。その場合「少額でも現場判断で経費を使える権限」を付与しておけば、足りない道具を買い足すことができます。

また、「臨時にシフトを追加する権限」なども与えておけば、多少の業務遅れを上位層の判断を仰がずにリカバリーできるかも知れません。(報告はする必要がありますが)。

これら、必要な権限を移譲しておくことで、仕事を止めないで効率的な運営ができたりするのです。

初出:2012/03/09
更新:2025/09/24
生産管理
2025年9月21日

5S | 5Sとは地道で誰でもできる改善ですが徹底するとすごい効果が生まれます

Comic_5s_001
5Sとは職場で徹底されるべき状態を示した言葉です。「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の5つの要素は全て頭文字がSとなるため、5つのSから5Sとなります。

■5つのSとはなにか

この5Sは以下の5つですが、それぞれに達成すべき状態が決まっています。以下、ざっくりと説明します。 「整理」とは、いるものといらないものとを分け、いらないものを捨てる事です。 「整頓」とは、いるものをいつでも使えるように明示しておく事です。 「清掃」とは、掃除をして綺麗にしておく事です。 「清潔」とは、上の三つを徹底して維持する事です。 「しつけ」とは、決められた事を守るように習慣づけする事です。 このまんがの例ように整理整頓がされていないと、必要な時に必要な物が見つからないため無駄が生じますし、最悪の場合事故につながる危険性もあります。 5Sは当たり前の事といえば当たり前の事ですが、その当たり前の事を徹底する事によって、安全の確保や無駄の削減、従業員の士気の向上等の効果を得る事ができます。

■5Sの各要素について

ここから5Sの各要素について細かく見ていきます。なお、5Sとはこの順番に進めていくと言った一つの行動指針でもあります。 また、それぞれの要素を『徹底する』といったニュアンスがあります。この徹底という言葉が重要で、気まぐれに整理整頓するといった活動ではなく、徹底した改善活動なのです。 もちろん一つ一つの要素は心がけるだけで誰でもできます。しかし、物事を徹底するのは非常に難しいことなので、5Sを徹底する指導を行うだけで非常に高い業績を上げているコンサルタントの先生もいますし、奥深い分野なのです。

■1.整理とは何か

5Sの最初の一つは整理です。整理とはいるモノといらないモノを区別して、いらないモノを捨てることです。 この順番にも意味があって、『整理』つまりいらないモノを捨てる事が最初に来ている事に注意してください。最初に捨てるというのはECRSという考え方に通じますね。 まずは、いらないモノを捨てる。いらないモノがある段階で、その後の整頓しても清掃しても上手くいかないと言ったことを示唆しています。 例えば、いらない箱が床に置いてある向上を考えてみます。いつか使うだろうと思って、倉庫の入り口付近においてある事を想定します。 この倉庫は毎日、材料の入庫と出庫が行われるため、入り口にある箱は微妙に邪魔です。実はその箱をよけるために1回あたり10秒の時間がかかっているとします。 入庫と出庫は一日120回行われており、工場は年間240日稼働だとします。また工場で働く人の平均賃金は1時間あたり2,000円だとします。 この箱はどれだけの余計なコストを発生させているかわかりますか? 答えは 10秒×120回×240日÷60秒÷60分=80時間 80時間×2,000円=160,000円 となります。 邪魔な箱が一つ置いてあるだけですが、これだけの余計なコストが生じているのです。また、箱に入っているモノの在庫コストなどを無視しているので、これよりももっと無駄が生じているかも知れません。 ここまで極端じゃないにしても、モノがある事によって探す手間がわずかですが増えますし、整頓や清掃の手間も増えます。このわずかなモノが積み重なると大きなコストとなります。
onnanoko_bustup
あーもーぜんぜん片つかないわ!一生懸命しまってもすぐに散らかっちゃうし!

neko
オーナーさん、最初にいらないモノを捨てるといいってききましたよ。色々しまっていますけど、本当に使うかどうかで分けた方がいいと思います。

onnanoko_bustup
わかってはいるのよね。開店当初のPOPとか絶対使わないけどつい取っておいちゃうのよね。でも、確かにこのPOPを捨てれば仕事が楽になる気がするわ。

■2.整頓とは何か

次にモノを使えるように並べておくことをします。整理を最初にしてモノを減らしてから整頓するわけですから合理的ですよね。 仕事や学校で、何かを探し回る手間って感じたことがありませんか?すごく忙しい感じはしますが、残念ながら何かを探している時間は何の付加価値も生んでいない時間です。 そのような時間の発生を防ぐために整頓を徹底するのです。 飲食店で考えるならば、包丁は包丁がしまってあるところへ、ザルはザルがしまってあるところへ、フォークはフォークがしまってあるところへと誰が見てもわかるように必ずそこにしまっておくことです。 また、しまい込んではだめで、必要な時にすぐ取り出せるようにする必要もあります。このようなしまい方をしっかりと工夫することが整頓なのです。
onnanoko_bustup
ふー片ついたわ。やっぱりモノがなくなると仕事がしやすいわね。

hiyoko
次は、決められたところにモノをしまうことよ。POPを作るために、いつも色紙とかマジックを探し回っているからそうならないようにするといいと思うわ。

onnanoko_bustup
そうね、いつも思っていたけど、探し回る時間がなくなればもっと早くうちに帰って次の企画が立てられるのよね。

■3.清掃とは何か

清掃とは5Sの3番目にきていますが、掃除をしっかりとしてきれいな状態に保つことを言います。 汚いのときれいなのであれば綺麗な状態がいいぐらいの意味に取る人もいるかも知れませんが、清掃で言うところの綺麗な状態は、清掃を行いながら細部を確認するといった意味を持ちます。 機械や道具に違和感があれば、壊れる前に保全活動を行えますよね?壊れてから直すのではコストがかかりますので、壊れる前に異常を感知するといった意識を持つことが大切です。 また、清掃を常に行っていれば、職場に余計なモノがないはずです。そのような状況で余計なモノがあれば「あれ、なんか変だぞ」といった違和感につながります。 そのような違和感は改善の大きなヒントになりますし、事故を未然に防ぐといった意味でも重要なのです。
neko_akire
5S頑張るって宣言したのはいいんですけど、清潔って何かちがくないですか?

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そうよね、ニュアンス違うわよね。でも状態を維持するって事は重要なのよ。

■4.清潔とは

5Sの4番目である清潔は今までの言葉とはニュアンスが異なってきます。『整理』『整頓』『清掃』は行動です。しかし『清潔』は状態を示す言葉です。 そのため、清潔は整理整頓清掃が行き届いた状態を維持するといった意味になります。 では、なぜ清潔にしておく必要があるのでしょうか?それは、異常を浮かび上がらせるためです。 例えば、汚い工場では機械が油漏れを起こしていても誰も気がつきません。しかし、綺麗で清潔な工場であれば、油漏れを起こした機械はすぐにわかります。 このことは事故を防ぐ意味でも重要です。 そして、清潔を徹底するためにあえて汚れが目立つ色に床を塗る事までします。清潔という状態まで徹底で来てれば、逆に汚れが目立つ方が異常がわかりやすくて良いと言った境地になるのです。

■5.しつけとは

そして5Sの最後は躾です。この躾とは、従業員の教育訓練を表しています。言われなくても、5Sの整理、整頓、清掃、清潔を守るようにする事です。 また、それらが実現しやすくなる環境や仕組みを整えることも示しています。さらに、教育訓練だから従業員にやらせるだけで良いと考えるのは大きな間違いです。 社長が、工場長が、部門長が、料理長が率先して5Sを実行するのが一番の躾となります。 要するに、職場ぐるみで5Sを行う状態にするといった事が躾なのです。
onnanoko_bustup
さー5Sよ!ちゃんとやってよね!

hiyoko_2
ぴーーーーオーナーさん。それはだめよ。

onnanoko_bustup
あらどうして?ちゃんと5Sを徹底するのが躾じゃないの?

hiyoko
躾って、状態を習慣化することだから、偉い人が率先しないとだめなのですわ。

onnanoko_bustup
そっか、5Sで職場がとても改善したからついつい、調子に乗ってしまったわ。自分でちゃんとやっていかないとね。

■5Sで何が変わるのか

このようにしっかりと順番をおって5Sに取り組めば、職場が変わるイメージがつかめたと思います。 なお、5つの要素を簡単にまとめましたので参考にしていただけばと存じます 5Sまとめ
解説で出てきた用語・関連用語
ロワーマネジメント
ECRS
在庫費用
予防保全

初出:多分2011年
更新:2019/02/04
更新2:2025/09/21

マーケティング
2025年9月18日

ペイドパブリシティ

ペイドパブリシティ_001
ペイドパブリシティとは、マス媒体にお金を支払ってパブリシティを行ってもらう事を言います。一般的には記事広告と呼ばれる形態です。

通常、パブリシティでは企業側はお金を払わずに記事にしてもらいます。

しかし、ペイドパブリシティではお金を支払うので、情報のコントロールが可能です。その意味では、パブリシティというよりも通常の広告の一種であるという事ができると思います。

また、記事風の広告なので通常の広告よりも信頼感が高まると言われています。

例えば、雑誌などで特定の企業を猛烈にプッシュしている記事を見たことはないでしょうか?業界全体の特集を組んでいる雑誌記事のなかに、特定の企業の情報が沢山盛り込まれているページがあるような場合です。

そのような記事は、記事広告である場合があります。

そして、記事広告であるならば、その記事のどこかに「広告」である旨を表示する文字が入っているはずです。

もっとも、広告である旨を明示しないで水面下でお金が動いていたりすると「ステルスマーケティング」(いわゆるステマですね)の一種になってしまいます。

お金を払って広告を出したにもかかわらずステルスマーケティングを行ったなどと非難を浴びてしまっては意味がないばかりか、企業の評判に害を与えますので注意が必要です。

■ペイドパブリシティの注意点

ペイドパブリシティはこのように実態は広告ですが、記事風になっているという体裁を取ります。BtoCで雑誌やWeb記事に記事的に露出を図ることで、記事を掲載した媒体や記事を書いた人のお墨付きを得たかのようにメッセージを伝えることができます。

また、記事風の広告ですから、ニュースっぽい雰囲気を出せますので権威性をもたせることも可能です。

よく取材してくれて、まとめてもらえればプロが書いた記事ですからとても良いものができあがります。ひょっとしたら会社自身も気がついていなかったような商品や会社の魅力を言語化してくれるかも知れません。

そのため、季節限定の新商品を発表したときとか、新しくオープンしたお店を知ってほしい場合、場合によっては新業態を開発してこれから〇〇というお店を展開するよといったときにペイドパブリシティが活用されます。

ただ、やはりどこまで言っても広告ですから本来のパブリシティが持つ信頼性には一歩劣ります。その上、広告の中でも結構お高めの値段つけになりがちです(記者が取材して記事にまとめてくれるわけですからね)

また、営業が来た場合は媒体の性格を確認することも重要です。一般向けの商品を扱っているなら一般の人が読む媒体が望ましいですし、業界向けの商材なら当該業界の業界人が読む媒体が望ましいです。

このように広報戦略の一つとして各種広告やオウンドメディア、純広告などと組み合わせて活用すると良いでしょう。

■各種広報手法の整理

広報手法には様々なものがあります。簡単に整理してみますね。

手法 費用感 内容コントロール 露出速度 主な目的 代表媒体/例
ペイドパブリシティ(記事広告) 中〜高 高い 出稿時期を選べる 短期認知・比較検討 ニュースサイト、雑誌のタイアップ
パブリシティ 基本不可不確実 社会的信頼の獲得 TV/新聞/専門誌
プレスリリース配信 低〜中 情報告知・取材呼び込み 配信サービス、記者クラブ
純広告(ディスプレイ/検索/紙) 入札/枠次第 非常に高い 非常に速い 到達/トラフィック獲得 Google広告、交通広告
オウンドメディア/ブログ 低〜中 非常に高い 遅い 検索流入・教育 自社サイト、ナレッジ記事
SNS運用/インフルエンサー 低〜中〜高 中(投稿は制御可/反応は不可) 速い 話題化・共感形成・UGC創出 X/Instagram/YouTube 等
イベント/記者発表会 中〜高 高い(体験設計可) 体験提供・一次情報発信 発表会、試食、展示会

※信頼度はコンテンツ品質と媒体選定で上下します。


いろいろな手法がある中で、ペイドパブリシティを選択するのであれば、その選択の根拠と狙いを明らかにしておくことが重要だったりします。

初出:2012/10/13
更新:2025/09/18

経営
2025年9月17日

水平的競争

水平的競争_001
水平的競争とは、流通の段階の同じ事業者間で生じる競争を言います。(流通は川に例えられることが多く、消費者に近い方を川下、商品を製造している側を川上と表現することがあります。これから、川上どうしが直接競争する、川下どうしが直接競争する→同じ段階での競争のイメージ→水平的競争という風にイメージしていただければと思います。)

この水平的競争とは垂直的競争に対する言葉で、いわゆる通常の競争のイメージになります。

例えば、製造業者同士が製品のシェア争いをする競争や小売業者同士が同じ商圏内で競争するといったイメージですね。

■水平的競争がもたらす影響

同じ立地や立場のお店や会社が競争することは消費者にとっては良いことです。なぜならば、競争があるところでは、価格の低下や品質改善、サービスの向上などあの手この手で顧客を獲得しようと利潤を削ってまで頑張るからです。

その意味で、便利で良い商品を適正価格で手に入れることができます。

他方で、企業の側から言えば、水平的競争はあまり望ましくないです。真っ向から勝負するなれば価格競争やサービス競争など利潤を削った消耗戦に陥ります。

特に取り扱う商品に差がないような業態で、参入障壁が低いような業態の場合は最終的には値引き合戦になってしまいます。その結果、この競争が亢進すれば最終的には敗者が生まれ、事業継続が難しくなる事業者が出てきてしまいます。

そのため、私達がアドバイスする場合は、競争にならないように、なにか軸をずらして直接競争に陥らないような方策を考えていきます。

■消費者行動の変化

近年では、スマホでお店の値段や評判などを口コミで比較することが従来よりも更に容易になってきています。

また、少し遠方のお店も口コミを見ることができ、推薦される(レコメンドエンジンという仕組みがあります)という仕組みもあることから、かなり広域でライバル店になってしまいます。その上、ネット上の通販サイトからも同じ商品を購入できるといったことすら発生しています。

そのため、従来のローカルな商圏内での競争を超えた、水平的競争が発生してしまっているのです。

■水平的競争を避けるために

同じお店同士ですから価格競争に陥ってしまうと上で指摘した通り、消耗戦になります。お客さんにとってはどっちのお店で買っても同じとなってしまえば、安い方で購入することが合理的ですからね。

そのため、この競争を避けるために以下のような方策を考えます。
などなど、いろいろな方法が考えられます。これらは考えることがたくさんありますが、一般的なアドバイスを書くとするならば、「あなたの会社がもつ経営資源を活かして、競合のお店と違うことをやってください」ということにつきます。

そして、その違うことは競合が真似しにくい事のほうが望ましいです。こういったことを丁寧に積み上げることで、どこにもないユニークなお店が出来上がっていくのですから。

■水平的競争と水平統合の関係

この水平的競争が激化していくと、企業はいっそのこと競合と統合してしまおうと検討することがあります。これを「水平統合」といい、力を合わせて経営に取り組むことでバイイングパワーも強くなりますし、規模の経済を達成することも可能です。

ただし、あまりに寡占が進むような統合案の場合は、独占禁止法の観点から規制が入り可能性もあります。

関連用語

初出:2013/01/08
更新:2025/09/17
マーケティング
2025年9月7日

アフターマーケット

アフターマーケット_001
アフターマーケットとは、ある商品が販売された後に生じる二次的な市場のことを言います。

そして、二次的な市場ですので、様々な業者が参入してきます。

例えば、クルマが販売されたことによって、車のパーツや消耗品、整備サービスが行われる市場が生まれたといったイメージです。これらの市場は、そもそものクルマが販売されていなければ生じる余地はないわけです。

(クルマのない時代に、車の整備屋さんとか、車のワイパーを販売する業者が存在するわけがないですよね?こういった市場は明らかにクルマが販売されたことによって生じたアフターマーケットなのです。)

■アフターマーケットの経済的意義

アフターマーケットは買ったあとにもお金の流れが続いていきます。車屋さんの例がわかりやすいので引き続き車屋さんの話を元に説明していきます。

例えば、純正パーツを販売して利益を稼いだり、定期点検を(しばしば無料で)実施してお客様とのつながりを維持し、定期的な車検やアフターサービスからも大きな利益を得ることができたりします。

そして、いよいよ乗り換えになった際には、車の下取りをして新車を販売します。

下取りした車はどこに行くかというと、中古車として売却されます。

このように、車は売ったら終わりではなく、二重三重に収益を得ることができるのです。また状況によっては車を作って売るという一次市場よりも利益率が大きなケースもあるのです。

車屋さんの他には、ソフトウェア業界やスマホ業界なども考えられます。これらも本体やソフトウェアを販売してからがある意味本番で、導入後のサポート・保守契約、機能追加、法令の変更やOSなどの仕様変更に伴うやむを得ない対応費用などが安定収益を支えるのです。

うまく囲い込むような設計ができれば(ベンダロックイン)販売したあとに、顧客のライフサイクル全体で安定収益を確保し、収益の最大化を狙っていくことも可能なのです。(ライフタイムバリュー(lifetime value:LTV)といいます。)

■消費者にとってのアフターマーケット

アフターマーケットは企業にとってとても重要であることがわかりました。では消費者にとってはどうでしょうか?

消費者にとっては、購入した商品の価値を拡張したり、維持したりするための重要な機会になります。例えば、後付可能な純正パーツなんてワクワクしますよね。また、サードパーティがいろいろなパーツを作ってくれるのも素敵なことです。

これは、欲しい機能をあとづけて選択して購入することができる利便性にもつながってきます。

何より、みんながいろいろなパーツなどを考えて作っていけば、それ自体が一つの文化圏になり、趣味として楽しむと言った別の価値も生まれてきます。

また、アフターサービスやメンテナンスを定期的に受けられるのは大きな安心に繋がりますし、何よりも故障に伴う事故などを避けることができるというのも利点です。

最後には、下取りや中古販売で投入した費用を回収できるマーケットがあるというのも消費者にとっては利点となりえます。このようにアフターマーケットが充実している市場は、商品そのものの魅力だけでなく、それを取り巻く環境全体の魅力も高まってくるのです。

初出:2013/05/19
更新:2025/09/07


生産管理
2025年8月26日

BTO

BTO_001
BTOとは、注文を受けた後に製品の製造を行うといった生産方式を言います。いわゆる受注生産方式ですね。英語ではBuild To Orderと表記されます。

■BTOの生産側のメリット

BTOは受注生産のイメージとなるので製品在庫を減らすことができるというのが非常に大きなメリットとなります。

しかし、全体の在庫を削減できるかどうか(部品の在庫を削減できるかどうか)は、どの程度の納期で発注者に納品するかによります。

例えば、注文を受けたらすぐ製品の製造を行うようなBTOでも、ラーメン屋さんみたいな仕事ならばスープや麺などすべての材料を持っていないとならないので在庫削減は図れません。

しかし、PCの受注生産などで顧客がある程度待てるのであれば、部品在庫も合わせて削減することが可能となるかもしれません。(この場合、部品を仕入れすぎても部品だけで転売することもできますので、上記のラーメン屋さんと比べれば在庫のリスクは小さくなります。)

■BTOの顧客側のメリット

顧客側にとっては、ある程度は自分の望む仕様で製造を行ってもらえるというのが大きなメリットとなります。

また、製品に対して、ある程度の知識があればメーカがつけている不要なオプションを削除するといった事も可能となります。

(国内メーカのPCを買うと、PCメーカが開発したソフトウエアが山のようにインストールされていますよね?このようなソフトについては、使いそうなものだけインストールして、使わない分については値引きしてもらった方がうれしいと感じる人もいるはずです。)

また、製造側が在庫リスクを削減している分、割安な価格で調達できるといった点もメリットとなります。

■BTOと見込み生産の違い

BTOはいわゆる受注生産方式となりますので、在庫を少なくすることが可能です。とはいえ、部品などの材料をある程度持っておいたり、すぐに納品してくれる取引先があったりしないと短納期対応が難しいため、部品在庫まで含めると在庫が必ずしも少なくなるとは言えないのが難しいところです。

今回のまんがの例でも、注文を受けてから作ると言っていますが、注文を受けた段階で材料の発注から始めたとするとそれなりに納品までに時間がかかってしまいますよね。そのためある程度の材料については在庫として持っておく感じになります。

他方で、見込み生産方式の場合は製品として在庫をある程度持っていますので、基本的には即納することが可能です。また、ドンドン自社の都合でコストが最小になる生産計画を組んで製造することができますので、コストは安くすることにつながります。

ただし、受注予測に誤りがあったりするとせっかく製造した製品がそのまま不良在庫になってしまうと言ったリスクがあります。

簡単にまとめるといかのような違いがありますので、上手くBTOと見込み生産を組み合わせて対応することが重要です。

項目 BTO(受注生産) 見込み生産
生産タイミング 注文を受けて製造 事前の需要予測に基づいて生産
在庫リスク 完成品在庫は少ないが、部品在庫は必要 完成品在庫で持つため、売れ残りや過剰在庫のリスク大
納期 やや長め 短納期
コスト構造 在庫削減で効率的だが、小ロット対応で単価が高くなる場合も 大量生産で単価は安くなるが、在庫コストがかかる
顧客メリット 仕様をカスタマイズ可能 入手が早い。価格も低価格になる傾向あり
適用例 パソコン、オーダーメイド家具 飲料、食品、日用品など需要が安定している商品(需要予測がしやすい)

■まとめ

BTO(受注生産)は在庫リスクを抑えることが可能で、また、顧客の要望に沿った製品を柔軟に提供できる方法です。

他方で、見込み生産は、短納期対応や同一仕様で大量に作れることからコスト削減に有利ですが、需要予測の精度が甘いと過剰な在庫を抱えるリスクがあります。

実際にはどちらが優れているというものではなく、商品や顧客の特性を見つつ組み合わせることが望ましいでしょう。

初出:2013/06/09
更新:2025/08/26
店舗管理
2025年8月24日

欠品

欠品_001
欠品とは、顧客が欲しがっている商品が在庫として存在しておらず、顧客の要望に応じることができない状態を言います。(お店によっては品切れという言葉を使う事もあります。)

あなたがお店に買い物に行った際、「あの商品は、売り切れちゃったよ。ごめんね。」みたいに言われるイメージです。

■欠品の問題点ってなに?

さて、この欠品の何が問題なのでしょうか?「売り切れは残念だけど、仕入れすぎて廃棄ロスを出すよりもましでは?」といった意見もあると思います。

また、過剰在庫とか滞留在庫といった風に、在庫を沢山持つとあまりよくないといった趣旨の経営用語もたくさんあります。

それでも欠品が良くない理由は、一言で言うと売り逃しが発生するからです。

顧客は欠品している商品が欲しくて、あなたのお店に来店しているわけです。しかし欠品している。すると、商品は売れません。(逆に言うと、その商品は存在してさえすれば高い確度で売れたはずのものです。)これは、別にお金が出ていくわけではありませんが損失ですよね?(機会原価という考え方ですね。)

こういった種類の損失を特に、機会ロスと呼ぶのです。

■お店の信用にも欠品は悪影響を与えます

また、買いたいものが売っていなかったという事から、お店の信用といった大切な財産を傷つける可能性もあります。そのため、欠品は極力避けたいと考えられるのです。

いつ行っても欲しい商品が売っていないお店だったら、そのうちお店に行きたくなくなりますよね?そのようなことが積み重なっていくと、大切なお客様が減ってしまうのです。

このように欠品すると機会ロスが発生しますし、仕入れすぎれば今度は過剰在庫になる。なかなか適正な在庫数量を管理するのは難しいために、様々な在庫管理の手法が生まれてきているのです。

■欠品が続くことの問題点

上で述べた通り、なによりも信用を失います。お客様が「欲しいものが売っていない」「当てにできないお店」と認識してしまうと、中長期的には別のお店にお客様を取られてしまいますし、あえて行くまでもないお店と認識されてしまいます。

そうすると、硬い言葉でいうと購買頻度が低下したり他店舗へのシフトが発生しまうのです。

このことを逆手に取って、シビアな商品管理を行っているコンビニエンスストアなどでも、お線香やろうそく、香典袋などあんまり売れない死に筋だとわかっていても、必ず売れるときは売れる。無いと困るようなものを取り扱っているのです。

このことで、欠品している他店舗のお客様を奪うことができる可能性があるからです。(逆に、香典袋が急に必要になった人が、あると思っていたお店で買えなかったときのがっかり具合も想像できると思います。)

■欠品しない信用

欠品率の高いお店は、お客様からの信用を失いがちです。イザという時に頼りにならないお店と、ちょっと割高だけど、必要な商品が必ず手に入るというお店では信用度が違いますよね。

このように、欠品させないというのはとても重要なことだったりするのです。


なお、最初から取り扱っていない場合も「買えない」という観点では同じかもしれませんが、お店の経営としては大違いになります。
  • 顧客の信頼・期待
最初から取り扱っていないお店なら、「このお店では売っていないんだな。」とお客様は考えますが、欠品状態では、「ココで帰るはずなのに売っていない。期待を裏切られた」という失望を感じます。
  • 機会ロス
最初から取り扱っていない店なら機会ロスはそもそも売っていないから考えなくてもいいですが、欠品状態では機会ロスです。(あれば売れたわけですから)

特に売り場をその商品のために占有しているので、欠品状態の場合は売り場自体が空白になっているのもマイナスです。
  • 信用のダメージ
最初から売っていないなら、「専門外の分野だから仕方ないよね。」ぐらいでお客様からの信頼は傷つきませんが、欠品状態の場合は「期待外れのお店」「管理が甘いお店」などのマイナス評価がつきます。これが積み重なると顧客離れに直結してしまいます。

■欠品率について

この欠品している比率を計数管理する指標として欠品率があります。

これは以下のような計算式で計算できます。
スクリーンショット 2025-08-24 123757
例えば、30日の間で5日間在庫が切れていた場合

欠品率=5÷30✕100=16.7%

となります。一般的な欠品率の目安などはあまりありませんが、業種・業態ごとに欠品率の許容されるレベルがありますので、どのレベルで管理していくかが重要になります。

【許容される欠品率のイメージ】
製造業・BtoB<コンビニ等<スーパーなど<季節商品・アパレル


なお、欠品率は「売上を失う確率」とも捉えられますので、売れ筋商品の欠品率1%は死に筋商品の欠品率10%よりもダメージが大きくなります。

初出:2013/05/29
更新:2025/08/24
店舗管理
2025年8月22日

LSP

LSP_001
LSPとは、効率的な経営を行う為に、人員計画や作業の標準化などを支援する、作業要員管理の事を言います。英語ではLabor Scheduling Programと表記されそれでLSPと略されます。

お店が売り上げを上げていくためには、しっかりと労働力を投入してサービスの水準の向上や在庫管理の強化を図っていく必要がありますよね。

ただ、発生する仕事の量に対して労働力を投入しすぎても上手くはいきません。

このように適正な人員配置を考えていくことが大切なのです。

■適正でない人員配置の問題点

少なすぎる人員で業務を行う問題点は、お客さんがたくさん来ているのに、動いているレジの台数が少なくてお客さんをすごく待たせているとか、商品の補充が間に合っていなくて、欠品が多発して機会ロスが発生している状態を考えてみればご理解いただけると思います。

人件費をケチって人を減らし、売り場が荒れ放題になったり、顧客サービスがないがしろにされたら本末転倒ですよね?

しかし、逆に人が多すぎる事も問題です。商品が適切に補充陳列されているにもかかわらず、追加で商品の補充人員を投入しても仕方ないですし、レジが4台で、お客様が並んでいない状態にもかかわらず、レジを追加で開けても意味はあまりないですよね?

というか、意味があまりないどころか、人が働くという事は人件費が発生するという事なので、あまり多すぎる人員が働いていては適正な利益を得ることができません。

■どうやって適正な人員配置を実現するか

このLSP考え方は、「必要な総工数を見積もり、それを満たす必要十分な人員を配置する」という発想がもととなっています。

例えば、時間帯ごとの売上水準や客数といった情報を予測してみれば、どの程度の仕事がいつ発生するか見積もることができます。

簡単な例では、夕方は顧客が多数来店するのでレジの台数を増やすといった意思決定が行えますよね?

このように、「いつどのような仕事が発生するか」という情報と、どの仕事にどれだけの作業量(工数)が発生するかが分かれば、いつ、だれが(どの職種の人が)、何人必要か?を見積もることができるのです。

■ LSPを導入するとどんな効果が?

LSP導入の効果は大きく分けて「コスト削減」と「サービス向上」の2つとなります。

コスト削減は具体的には「人件費の最適化」による売上高人件費比率の改善(数%削減)といった効果が狙えるものです。

人件費の最適化というと聞こえがいいですが、要するに必要十分な人員で運営しましょうといった形になります。お客様の来店数や忙しさを想定して人員を配置することが重要なのです。

また、サービス向上の効果は「待ち時間や欠品率の低下」が狙え、結果として顧客満足度向上(CS等といいますね)が挙げられます。

このLSPで「いつ・どれくらいお客さんが来るか」をあらかじめ想定した店の人の配置が実現できます。

これによって、混んでいる時間にレジで行列ができにくくなったり、品切れが少なくなったりします。この品切れは短期的には単純に売れたはずのものが売れない機会ロスになりますし、中長期的には欲しいものが売っていお店として顧客の足が遠のく原因となるので避ける必要があります。

逆に、お客さんが少ない時間、忙しくない時間は店員さんを減らすことでムダな人件費を減らすこともできます。つまり、LSPは「ちょうどよい人数でお店を回す工夫」ということができますよね。

狙い通り行けばLSP活用により人件費を数%削減するというコスト削減効果を上げつつ、サービスの充実によって顧客満足度スコアを改善すると行ったことも発生します。

また何より、適正配置による従業員の負担軽減効果も重要です。離職率低下も狙えますので、中長期的には組織運営全にも効いてきます。

初出:2013/05/18
更新:2025/08/22
経営
2025年8月18日

ベンチマーキング

ベンチマーキング_001
ベンチマーキングとは、他社の優れた事例を分析し業務や製品を改善する手法です。
この記事では、競合や異業種の成功事例を活かして自社の効率化や競争力向上を図る方法がわかります。

<簡単な説明>
ベンチマーキングとは、自社の製品・サービス、業務プロセスといった要素を測定し、自社の非効率な個所を、競合他社の優良な事例(ベストプラクティス)を分析して、取り入れ、改善するという手法です。

このベンチマーキングは業務プロセスなどを改善するためのアプローチなので、同業種の中から選んでしまいそうですが、そのような必要はなく、異業種をベンチマーキングしても良いとされています。

■建築業の例からみるベンチマーキング

例えば、建築業をやっている企業が、自社の工程管理の方法を改善したいと考えたとします。特に意識しなければ、おそらく「同業他社の優れたプロセスを参考にしよう」といった発想になると思いますが、あえて異業種の優れた工程管理のプロセスをベンチマークするという考え方です。

ここで、建築業の中でベストプラクティスを探すよりも、IT業界などの異業種まで視野を広げて、参考となるプロジェクト管理の手法を探すのです。

そして、その結果、業界内では全く新しく、非常に効率的な管理手法を確立することができるかもしれません。 また、何の目標もないときに比べ、迅速に競争優位を確立することができるかもしれません。

もっとも、このような手法は経営陣が強力に推進するという事が欠かせません。というのは、ベストプラクティスを達成することは困難な目標となる事が考えられるからです。

そして、この困難な目標を達成するためには既存のやり方を色々な面で変えていく必要がでてきますが、このような業務の見直しには、業務を変えたくないという抵抗がつきものです。

そのため、経営陣が「社内の抵抗を押し切ってでも推進する」といった強いリーダーシップを発揮する必要があるのです。

■ベンチマーキングの導入ステップ

ベンチマーキングはうまくいっている人のやり方を真似して、自分たちを良くする方法です。とはいえ、がむしゃらに進めようとしても何からやったらいいか全くわかりませんよね。

そのため、ベンチマーキングの導入には、いくつかのステップを踏んで実施していくことが大切です。以下そのステップ毎に注意するべき点などを考えていきます。
  • 自社の現状分析(まずは自分を知りましょう)
自社の業務プロセスや経営資源等を整理し、どこに課題があるのかを明確化します。ちょっと分けた言い方をするならば、まずは問題を特定し、どうなりたいかを分析し、そのなりたい姿になるために解決すべき課題を決めます。

言い換えるならば、今の状況はどうかなのかをはっきりさせることが大切です。たとえば、テスト勉強で自分がどの教科が得意で、どの教科が苦手かを整理するイメージです。
  • ベンチマーク対象の選定(誰を参考にするかを決める)
競合他社や異業種企業から参考にしたい「ベストプラクティス」(優れた事例)を見つけ出して抽出します。

これも簡単に言い換えるならお手本にする人を誰にするかを決めるというイメージです。例えば、同じ学校の先輩でもいいし、別の学校の優秀な生徒でもいいですね。
  • データ収集と比較分析
とはいえ、誰をお手本にするか決めても情報を集めないと始まりません。そのため、公開情報やインタビュー、事例紹介などを通じて定量・定性的な情報を収集します。そして、自社との差を洗い出すのです。
  • 改善策の設計と導入
自社との差がわかれば、その差・ギャップを埋めるための改善策を決めていく必要があります。そして、策定した改善策を自社プロセスに適合する形で導入していきます。

自社のプロセスに適合する形を言い換えれば、「自分のできるやり方で取り入れる」ことが大切です。ベンチマークといえども、全部コピーするのではなく、自分に合うやり方として組み合わせるのがコツです。
  • 効果測定と継続改善(やりっぱなしはダメ)
ここまでで導入した方法を元に、改善施策を設定・測定して定期的に見直しを行う事が重要です。

一番良くないのは改善をしようといろいろやるのはいいのですが、そのままやりっぱなしにしてしまうことなのです。そのため、よく言われるPDCAサイクルなどがとても重要なのですね。

これらの流れを踏むと、部活や勉強でも「ただ頑張る」より力がつきます。ベンチマーキングは勉強やスポーツなど日常生活にも応用できる考え方なのですね。

関連用語
経営計画

初出:2013/05/11
更新:2025/08/18


経営
2025年8月12日

SPA

SPA_001
SPA(製造小売)とは、製造から小売までを一貫して行う垂直統合型のビジネスモデルです。
本記事では、SPAの意味や仕組み、メリット・デメリットを分かりやすく解説します。

<簡単な説明>

SPAとは、製造から小売までを統合して一貫して行うという業態の事を言います。日本語では製造小売といった言葉があてられています。

さて、この言葉を最初に使ったのはGAPの会長です。自社を評してSpeciality store retailer of Private label Apparelと述べたことからSPAとされているのです。

■SPAの優位性とは

製造から販売までという事ですから、垂直統合の究極の形の一つであると考えられます。このような業態では、物流の各段階でのコストを削減することができるので非常に大きな利幅を確保することができます。

垂直統合の場合、製造、卸、小売がそれぞれ存続できるだけの適正な利潤があるわけですから、それらをすべて自社でやることで利潤を総取りできるという発想です。経営資源の重複を排除できる範囲の経済も効いてくるので強いのですね。

また、小売業を営んでいることで、顧客の情報を一番近くで入手することができ、顧客の欲しがるものを提供することが容易になります。

■他方で弱い面も

その一方、自ら企画・製造して販売まで行う為、売れなかったときの損失をそのまま負う事になります。それも、製造、卸、小売にかかるすべての損失を負うためリスクはとても大きくなります。

また、製造や企画、物流、販売、店舗管理といった通常はその一つ一つに対して非常に高い専門性を持たなければならないような領域に対して、全て自社でこなさなければならないといった問題もあります。

つまり、各分野の第一線にいる競争相手と真っ向勝負しないといけないのですね。例えば洋服屋さんがSPAを志向する場合、

  • 製造では一流の縫製メーカー等と競合し、
  • 卸や物流面では、一流の物流企業などと競合し、
  • 小売面では、一流の店舗オペレーションを誇る事業者と競合します。

また、自社内に製造機能や物流機能などを抱えることは固定費の増加を意味します。市場変化を読み誤ると、大量の在庫が発生したり製造ラインや物流施設の遊休化が発生しやすく、損益への影響は甚大です。

特に消費者の嗜好は多様化・細分化していますので、トレンド予測精度と在庫管理能力の優劣が競争優位に直結します。徹底してオペレーションを磨き上げる必要があるのですね。(そのため、工場を持たないで固定費を抑えるファブレスを組み込んだビジネスモデルを採用する大手企業もあります(ZARAが有名ですね))

このようにSPAは、なかなか舵取りが難しそうですよね?なので、割と多くの人が思いつくビジネスモデルですが、実際に取り組む人は少ないビジネスモデルだったりします。

■変化にすばやく対応できるというSPAの強みと弱み

競合面から考えてきましたが、今度は変化に素早く対応できる、顧客ニーズへの対応面から考えていきます。

SPAは、商品を作るところからお客さんに売るところまで全部自分でやります。このようにSPAは製造から販売まで垂直統合しているため、情報の伝達がとても速く行うことが可能です。

その結果、意思決定から商品化、商品化から店頭に並べるまでのリードタイムを短縮できます。

例えば服屋さんなら、流行している色や形をすぐに商品にしてお店に並べることが勝負の分かれ目になります。洋服もナマモノなのですね。そのため、店頭で掴んだトレンドなどを反映した商品開発が重要となります。

初出:2013/05/05
更新:2025/08/12

SPAの形態であればPOSデータや店舗スタッフからのフィードバックを即座に企画部門へ反映し、数週間単位で新商品を投入することすら可能だったりします。

店頭に並べるという意思決定から商品化、商品化から店頭まで並べることを外の会社にお願いするよりも早く動けるので、流行に乗りやすいという強みがあるのですね。

これにより短期的なトレンドや季節需要に的確に対応できます。

他方で、極めて短期的な流行(ファッドといいます)にのってしまうと大変です。意思決定がから店頭投入までが早いのはいいのですが、様子見といったフェーズが無いので、たくさん作った商品がそのまま不良在庫として残ってしまうことが発生しがちです。


関連用語
シナジー効果
経済学
2025年8月4日

インフレリスク

インフレリスク_001
インフレリスクとは、手持ちの金融資産の価値が、物価が上昇することによって下がってしまうリスクの事を言います。

例えば、あなたがタンス預金をしていたとします。それも一千万円くらいタンスにしまっておいたとします。

そして、今なら一千万円あれば家が建てられるとします。しかし、あなたは無駄遣いするのが嫌いな性分のためか、5年間その一千万円をタンスに入れたままでした。

そして、5年後に色々と考えることがあり、家を建てたいと考えるようになったとします。

しかし、5年間のうちに物価水準は上昇しており、家を建てるのには一千二百万円必要となっていました。

この時、あなたが持っている一千万円は実質的に価値が低下していますよね?こういったリスクをインフレリスクというのです。

インフレが金利上昇を招く

例えば、年5%インフレが進む国を考えてみたいと思います。その時にあなたは2%利息が付く国債を購入しますか?

実質的に毎年3%ずつ目減りする国債なんて購入しませんよね?この場合、2%の利息の国債は買い手がつかなくなってどんどん値下がりします。

そして、この国債は購入すれば5%以上の利回りが得られる価格水準まで低下していきます。(例えば、100円で償還してくれる国債を95円で買うといったイメージです。)

こういった流れによってインフレ率が5%となった場合、国債の利回りも5%以上が求められます。

そして、国債利回りが5%まで上昇した時に、金融機関は「あなたの事業」に5%以下の金利で融資してくれるでしょうか?

安全な(リスクフリーレート)が5%の時に、リスクのある「あなたの事業」に5%以下で融資するなんて考えられませんよね?(やってもいいですが、ステークホルダーに袋叩きにされそうです。)

このように原理的にはインフレ率が上がると金利も上がるのです。(短期的には市場の歪みでそうならないケースもありますが、長期では原理原則に順張りしたほうが望ましいでしょう)

■なぜ今、インフレリスクに注目すべきなのか?

2025年現在、物価上昇が目に見えて進んでいます。少し前までデフレ傾向が強かったのですが、世の中の環境は大きく変わってきています。

そして、インフレによって、個人の預金や企業の資金計画に大きな影響がで始めているのです。

「値上げが続くのだったら、現金の価値はドンドン目減りしてしまう」ことに気づきはじめた人も多いでしょう。

インフレリスクとは、こうした「お金の価値が目減りする」ことによって、将来的な購買力が減少するリスクのことを指します。(物価が上がるとも言えますが、本質的にはお金の価値の目減りです。)そして、このような考え方は企業の資金調達や借入金利にも深く関係しています。

本サイトをご覧になっている方は経済人を想定しています。そのため、物価が上昇傾向であるとぼやくのではなく、物価が上昇傾向になったという環境に適応し、適正な利潤を上げるように行動して生きたいものです。

■インフレリスクが影響する対象

さて、このインフレリスクですが、以下のような影響が想定されます。
  • 個人の預金:現金預金のもつ力(購買力)が下がる
  • 個人のローン:固定金利なら実質的に借金の目減り
  • 年金生活者や退職金保持者:インフレによってマネープランが崩れる可能性があります
  • 企業の資金調達:金利上昇により、借入負担増加
  • 投資家:名目利回りと実質利回りの差(インフレ率を差し引いた利回り)を意識する必要が出てきます
  • 不動産:債券の利回りが上がるならば、不動産価格は下落傾向になります
   債券利回りアップ→不動産利回り<債券利回り→不動産の処分圧(リスクの低い債券のほうが利回りがいいなら投資しないほうが合理的)→不動産価格下落

良い面も悪い面もありますが、いずれにしても事業環境の変化と捉えて適応していく必要があります。

■実質金利とは?

たとえば、名目金利が3%でインフレ率が5%だった場合、実質金利は-2%となります。このような状況では、たとえ3%の利息が付いていても、お金の価値がそれ以上に減っているため、実質的には損をしていることになります。

こういった考え方を実質金利といいます。借金が目減りするのはありがたいですが、資産が目減りするのは困りますよね。

■まとめ:インフレ時代に備えるべきこと

インフレリスクは、お金の保有方法・借入戦略・資産運用すべてに影響を与えます。まさに経済というゲームのルールがデフレ時代から転換したのです。

そのため、数十年続いたデフレ時代で適切とされた行動様式を転換して、インフレ時代に望ましいとされる行動を取っていきましょう。

一例として、現金は眠らせず適切に運用すること(持っていると目減りします)、金利の固定・変動の選択を慎重にすること、実質的な価値(購買力)で資産をとらえるといった感じです。

今後も物価上昇が続く中で、このインフレリスクへの理解と対策が、経済的な生存力に直結してくると言えるでしょう。

なお、人類の経済は基本的にはインフレ基調で推移してきましたので、デフレというイレギュラーな時代と異なり、先人たちが遺した知恵を大いに活用できる時代です。少なくてもあなたの競合は、先人の知恵を研究していることを想定し、考え方を切り替えていく必要があります。

関連用語
マネタイゼーション

初出:2013/03/01
更新:2025/08/04

法務・支援施策
2025年8月2日

育児休業

育児休業_001
育児休業(育休)とは、原則として1歳未満の子を育てる労働者が取得できる制度です。雇用保険に加入しているパート・契約社員・正社員などが対象で、男女問わず取得可能です。

原則として子が1歳になるまで取得できますが、保育園に入れない等の事情があれば1歳6か月、最長で2歳まで延長することもできます。

さらに、2022年10月の法改正により、「出生時育児休業(パパ育休)」が創設されました。これは、子の出生後8週間以内に最大4週間まで分割取得できる制度で、男性育休の取得促進が図られています。

この制度は男女問わず利用することができます。だから、父親が育児休業を取得するといった事ももちろん可能ですし、夫婦そろって育児休業といった事も可能です。
<2025年8月に記述修正 参考:厚生労働省育児休業制度特設サイト

■当時のお話

ここまでの説明で、「あれ?うちの子が小さいときは育児休業の制度自体はあったけど、自分は対象外で取得することができなかった…」と思われた方もいるかもしれません。

それは、以前は家族に子供を養育できる人がいたら育児休業を認めない旨の労使協定を結んで、育児休業の申請を拒むことができたためだと思われます。(経営側に有利な、素敵な労使協定ですね。素朴な疑問ですが、労働者側から進んでこのような労使協定を結ぶインセンティブって、何があるのでしょう?)

なお、現在ではそのような協定を結ぶことはできなくなっています。

そして、男性の育休取得もある意味当たり前になりつつあります。社会全体で子どもを育てる大勢に少しずつ変わってきていますよね。

■育児休業の現状

現在では、育児休業の取得率も徐々に上がってきています。本稿を最初に書いた2012年当時は育児休業にはちょっと特別感がありましたが、厚生労働省の「令和5年度雇用均等基本調査」によると、
  • 女性の育児休業取得率:84.1%
  • 男性の育児休業取得率:30.1%
という結果が出ています。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/71-r05.html)

この数字を見ると、女性の取得率は高い水準を維持していますが、男性の取得率は未だ3割程度です。ただし、「予定していたが取れなかった」などの回答も一定数あり、制度は整っていても実態は伴っていないという職場も少なくないことがうかがえます。

■育児休業と収入

もちろん、ただ休めますと言われても、収入の心配があればなかなか休めませんよね。そこで、育児休業基本給付金という制度を用意して、収入面の心配をなくするといった配慮もなされています。

この給付金は雇用保険から出る給付金になります。そのため、育児休業中は会社側にとっては賃金支払いの負担はありません。

■まんがと育児休業について

このまんがのように、育児休業を取る事によって、従業員の視野が広がるという面もありますので、無負担で従業員の教育訓練をしていると捉えることもできるかもしれません。(少し強引ですが。)

そして、そのように捉えるのであれば、従業員が積極的に育児休業を取得できるように支援する事は、福利厚生の一環ではなく、会社の競争力の源泉へ投資していると考えることが可能かもしれませんね。

とあえて男性育休の例で2012年当時は書いていました。その時点より前では「意識の高い企業」や「従業員思いの制度」として語られていた育児休業ですが、2025年現在では「制度として整っていて当然」な基本的条件(衛生要因)に変化しつつあります。取得できない職場は、選ばれない時代に入ったのです。(参考:動機付け要因・衛生要因

育児休業の申し出に対応できないような労務管理体制では、今後従業員の確保はおぼつかなくなると考えられます。

■男性の育児休業(パパ育休)の義務化と動き

一番上で記載しましたが、2022年4月には改正育児・介護休業法が施行され、「出生時育児休業(いわゆるパパ育休)」が新設されました。

この制度では、子どもの出生後8週間以内に最大4週間まで分割して取得できる制度です。

企業にも制度の周知・相談体制の整備が義務化され、今後ますます育児休業は「当然の権利」として社会に定着していくと考えられます。

■企業が対応すべき3つの視点

このように育児休業はあたりまえに活用されていく制度となりつつありますし、国はソレを目指しています。

そのような流れの中、育児休業を気持ちよく取れないというだけで従業員の定着が厳しくなると言ったことも実際に起こりつつあります。

そのような流れに対応するため、以下のような切り口で生産性を向上して育児休業を取る方が居る前提での強靭な組織構築を図っていくとよいでしょう。以下、3つの観点を挙げます。

■業務設計の見直しなど

ナレッジマネジメントなど企業内に蓄積られた知恵を暗黙知として属人化させずに企業全体の知恵に変えていく方向性があります。また、基本ですがECRSの原則に従って余計な業務の見直しを常に進めることも重要でしょう。

当然、業務マニュアルの整備なども合わせて進めていくとよいですね。

■DX化

これも文字にすると当たり前過ぎて陳腐ですが、上記業務設計の見直しにはDX化がとても有効です。

ただ、各自の思いつきでRPAなどを作らせると『野良システム(誰も管理していなく、担当者が異動するとブラックボックスになる)』が蔓延しますので、何らかのルール化(例えばRPAを使うなら〇〇というフォーマットに、目的と利用するデータ、集中力する結果、改訂履歴を明記する)をしておくことが大切です

■組織文化の醸成

そして何よりも組織文化として育児休業を取ることを尊重し、育樹休業する人が出ることを業務改善のチャンスだと捉えるような企業風土を育てていくことが大切だったりします。

関連用語
ハローワーク

初出:2012/11/11
更新:2025/08/02

経営
2025年8月1日

模倣戦略

模倣戦略_001
模倣戦略とは、他社が先行して販売している製品やサービスと同じようなモノを後発で販売していく戦略です。言いかえると、マネする戦略という事ができます。

■模倣と言っても完全模倣ではありません

もちろん、全く同じようなものを同じような価格で販売していたのでは、先行した企業に勝つことは難しくなります。

そのため、先行して販売されている製品やサービスを改良して販売する、先行して販売されている製品やサービスを単純化して価格を引き下げたものを販売するといった事を行います。

このような戦略は競争地位としてはフォロワー(参考:競争地位の4類型)に位置付けられるような企業が意図的に採る戦略です。

実際に売れている製品やサービスという事は、需要があるという事が実証されているため、開発リスクを負わずに販売していくことが可能となります。

■リーダーが行う模倣戦略は同質化戦略とも呼ばれる

また、このような模倣を競争地位がリーダーに位置付けられるような企業が行う場合、同質化戦略と言われます。(リーダーの戦略定石

この場合は、同じ土俵で戦えば規模の大きな企業の方が有利であるという非常に単純な理屈を利用した戦略です。

いずれにしても、他社を上手に真似するという戦略は有効なのですね。

■模倣戦略と後発優位の関係

模倣戦略はいわゆる単なる「パクリ」ではありません。先行企業が市場に出して成功した製品・サービスを分析することがまずは大切です。

その中で、「何が顧客に支持されているか」といった本質部分を把握したうえで、自社の強みに基づいた改善やコスト削減を行うのです。ポイントは自社の強みに基づいた改善です。

自社が「アンコが美味しい和菓子屋さん」だったら、美味しい餡にこだわった商品として改善をするのが大切です。

この改善により、開発コストや市場教育コスト(市場の人に新しい商品の内容を伝えるコスト)を大幅に削減でき、スピーディに顧客に届けられるという後発優位が発揮されます。

たとえば、先行商品が「高品質・高価格」であれば、後発企業は「標準品質・低価格」で勝負することも可能です。これは低価格戦略や単純化戦略と呼ばれる手法で、割と常套手段となっています。

特に2000年代の我が国家電メーカーはこの模倣戦略に随分苦しめられました。

本質的な機能以外での高品質・高価格化競争を行っていた我が国家電に対して、必要十分の性能を安く提供するといった海外家電が消費者の支持を受けていったのです。

■模倣戦略における後発優位の具体的メリット

  • 市場が育っているため、失敗のリスクが低い
  • 顧客ニーズを分析して、より適した形で提供可能
  • 宣伝・教育コストが削減できる
  • 価格・流通チャネルで差別化しやすい
例えば、2025年においては退職代行サービスは大手企業がありますが、先発起業は別の企業でした。

先発企業は市場があるかどうかわからない中で顧客を教育し、様々な論点をクリアーしていったのですが、後発企業はその部分に経営資源を投入する必要なく、本質的な価値に経営資源を集中することができたのです。

■模倣戦略と差別化戦略の違い

混同されがちですが、模倣戦略は丸パクリを目指すのではなく「他社の戦略を参考に、自社らしくアレンジし提供する」ことが重要です。

切り口の例として、成分を変えてコストダウン(例:具材のランクを下げて低価格に)したり、逆に高級路線・高付加価値路線で高価格帯を狙うといったことが考えられます。

また、限定パッケージやノベルティで差別化するのもよいですね。

■模倣戦略を成功させるためのポイント

模倣戦略を効果的するためには、ターゲットを絞り、誰にとって価値のある商品なのか明確にすることが重要です。また、いっけんすると同じように見えても、どこかが・何かが違うと思わせる仕掛けが重要になります。

そしてその違いを自社の経営資源のなかでいわゆる「強み」を使って実施することが重要なのです。

■模倣が上手く行きにくいケース

とはいえ、知的財産権(特許権や商標権)で守られている領域は模倣が困難だったりしますし、先行している事業が強いブランドを構築している場合は模倣が難しかったりします。

いずれにしても当社が気が付かない部分に本質的な価値があるケースもあるため、模倣戦略を採用する際は慎重な調査が必要です。

関連用語
リバースエンジニアリング

初出:2012/10/20
更新:2025/08/01

財務・会計
2025年7月30日

繰延資産 | 現金化できない資産ってなんですか?徹底解説します

繰延資産_001
繰延資産とは、既に支払ったけれども効果が将来にわたって現れるような費用を、経過的に資産として計上するものです。単に経過的に資産として計上されているだけですから、その繰延資産は基本的に換金することはできません。

繰延資産というのはこういったモノなのですが、それではどうしてこのような考え方をする必要があるのでしょうか?

■繰延資産はすでに払った費用です

でも、既に払った費用だったら、交通費とか、人件費のように支払った期の費用にして良いと思いませんか?また、お金に換えられないのに資産って変ですよね?

これを説明するためには、企業会計の目的にまでさかのぼる必要があります。

■繰延資産で遡る企業会計の目的

企業会計の目的の一つとして、期間の利益を正しく算定するという事があります。そして、この期間の利益を正しく算定するためには、費用と収益を対応させる事が必要であるとされています。

この考えから、売上という収益を上げたなら、その収益を上げるために使われた費用のみが対応する費用になるという、売上原価といった考え方が生まれています。(どれだけ仕入れても、売れた分しか企業会計上は費用にならないのです。)

この考え方からいくと、例えば企業を創業するために支払った費用はどうでしょうか?その費用は企業が続く限り効果が続きますよね?

そういった事から例えば企業を創業するために支払った「創立費」は繰延資産として計上することが認められています。

もっとも、この「創立費」は換金することができない資産なので、いつまでも資産にしておいては貸借対照表上、資産の額が過大になってしまいます。そのため、一定の期間で償却することが必要であるとされています。

このように企業会計のルールはいろいろなバランスを取って作られているんですね。

■繰延資産について詳しく見ていきます

繰延資産(その2)_001
上で繰延資産について述べましたが、改めて別の表現で表してみます。重複になるかもしれませんが、大事なところなのでぜひ押さえてください。

繰延資産とは、既に支払い義務が発生している支出する費用のうちで、その費用の効果が将来にわたって発生するため、一旦資産に計上しておき、将来にわたって費用化していくような資産の事を言います。英語で表記するとdeferred chargesとなります。

このような繰延資産の考え方は収益とそれを得るために使われた費用は同じ期間に計上するという考え方(費用収益対応の原則)から来ています。

そして、この繰延資産がいわゆる通常の資産(流動資産固定資産ですね)と大きく異なる点は現金化できない資産だという事です。

現金にならない資産?費用化するための資産?何のことかよく分からないですね。

■繰延資産は現金化できない資産

誰かに対する債権でもないし、形があるわけでもない。単に費用を将来に繰り延べるために存在する資産。なんというか、貸借対照表上、置き場所がないから便宜上、資産として計上しておくといったイメージです。

(この繰延資産は容認規定なので「計上しなければならない」のではなく、「計上できる」といった考え方になります。原則は一時費用化なのですね。)  

と、抽象的な話を続けても混乱するだけなので、具体的な例を示していきたいと思います。

■繰延資産の具体例

この繰延資産に該当する資産は、「創立費」、「開業費」、「開発費」、「株式交付費」、「社債発行費」、「新株予約権発行費」などです。

資産なのに「○○費」とついていることからも、通常の資産と毛色が異なることが見て取れると思います。

以下、「創立費」を例に考えてみたいと思います。「創立費」は上で挙げたように、

1.既に費用は支払済みです。
例えば、「創立費」は会社を作るときに払っているはずの費用ですよね。

2.誰かに対する債権でもないし、形もないので換金できません。
例えば、「創立費」を換金すると言っても、どうやって換金するかわかりませんよね?

3.これらの費用の効果は将来にわたって発生する費用です。
「創立費」の効果はその企業が存続していれば効果を発揮し続けると考えられます。

という特徴を持っています。

そして、「創立費」は名前の通り、とても費用的な感じが強いと思います。というか、どう考えても費用ですよね?

でも、単純に発生した期の費用にしてしまうと問題が生じます。それは3.の『将来にわたって効果が発生する』という要件が「費用収益対応の原則」に抵触するのです。

そのため、便宜的に繰延資産という箱を用意しておいて、そこから将来にわたって(創立費は5年で)費用化していくというイメージになるのです。

なんだか、減価償却に近い考え方ですよね。

■繰延資産の具体例と償却方法

上でふれたとおり繰延資産には、次のような種類があります。それぞれ、企業活動において将来にわたって効果があるとされ、会計上の資産として扱われます。ココでは簡単にまとめておきます。

繰延資産の種類と償却期間

繰延資産には、次のような種類があります。それぞれ、企業活動において将来にわたって効果があるとされ、会計上の資産として扱われます。

繰延資産の種類 内容 償却期間の目安
創立費 会社設立時の登記費用や定款認証費用など 原則5年以内に償却
開業費 開店・開業準備のための広告費や設備調整費 原則5年以内に償却
開発費 新技術・新商品の研究や試作費用など 原則5年以内に償却
株式交付費 株式発行のための手数料や印刷代など 原則3年以内に償却
社債発行費 社債発行の際の引受手数料など 原則3年以内に償却

■繰延資産はどう表示されるか?

この繰延資産は貸借対照表上は次のような位置に表示されます。(流動性配列法の場合)

おさらいになりますが、一言で資産と言いますが、次のように分けることができ、特徴がそれぞれあります。

  • 流動資産
具体的には現金や売掛金で換金性があります。また実態もあります。
  • 固定資産
固定資産は有形固定資産と無形固定資産に分けられます。有形固定資産はその名の通り形がある建物とか機械装置みたいな資産で、(換金することはあまりありませんが)換金性があり、実態もあります。

無形固定資産は特許権などのように換金性は原則的にはなく、実態も無いというのが特徴です。
  • 繰延資産
今回見てきた繰延資産で開業費などが該当します。換金性も実態もありません。

このように、一口で資産と言っても、流動資産、固定資産、繰延資産に分類されるのです。以下に貸借対照表の例を示しますのでどのように表示されるかのイメージを掴んでいただければと思います。
繰延資産
初出:2012/11/04
更新:2025/07/30


情報
2025年7月29日

ベンダロックイン | 事実上、特定の業者にしか頼めなくなります

ベンダロックイン_001
ベンダロックイン(vendor lock in)とは、ある特定のメーカや販売会社がユーザを囲い込むことを言います。ひとたびこのベンダロックインが起こると、ほかの同種の製品への乗り換えが困難になります。ベンダーロックインとも表記されるときがあります。

■顧客側と販売側の立場でベンダロックインの

ベンダロックインが発生すると、ユーザ側としては価格が多少高くても購入しなければならなくなってしまうといったデメリットが生じます。

ひとたびこのような状況になってしまうと、買い手側(顧客側)は不利な状況に陥ります。具体的には,多少高くとも現在の依頼している業者に依頼し続けなければならなくなります。

逆に、販売側からすると顧客の囲い込みをすることができるので非常に好都合な現象です。

そのため、ベンダロックインを巡るアドバイスとしては、利用者側に対しては「ベンダロックインが発生しないように気をつけて対応してください。」となります。

逆に、提供者側(販売側)の立場では「ベンダロックインになるように対応していきましょう」といった感じになります。

■ベンダロックインが発生すると

このベンダロックインは発生すれば、提供者側が経済学でいうところの独占企業に近い振る舞いができるようになります。

どうしてかというと、同等品が存在はしていますがスイッチングコスト等の問題で実質的に、その製品やサービスを使い続けなければならなくなります。

そのため、多少高くされたとしても、購入側が価格交渉力を持てなくなるのです。

■ベンダロックインがどうして発生するのか

では、このようなベンダロックインはどうして発生するのでしょうか。それは一言で言うと、代わりが効かなくなるからです。

例えば、あなたの会社が特定の企業の販売管理システムを導入したとします。その販売管理システムのデータベースソフトは少し特別なものであり、そのデータベースに適合するように、周辺機器も含め導入を行いました。

その後、販売管理システムが少し古くなり更新しようと考えたとします。

この時、販売管理システム内には非常に貴重なデータが多数存在していたとします。そのため、仮に他社の販売管理システムへ乗り換える場合は、非常に困難な移行作業を行う必要が生じてしまいます。

また、自社で働いている人たちも、現行のシステムを前提に業務を行っているので、新システムの使い勝手になれるまで非常な混乱が予想されます。

どうでしょうか?この状態で他社のシステムを導入することは非常に困難だと思えませんか?

非常にスイッチングコストが高そうですよね。こんな感じの事が発生する結果、ベンダロックインといった現象が生じるのです。

■その要求がベンダロックインを生みます

例えば、システムの開発を行う際に、自社の要求をたくさん飲んでもらえれば得をしたと考えると思います。

例えば、通常の開発費では1から5の機能しか提供されないところ、発注者といった交渉上の有利な地位を利用して5改や6や7までカスタマイズして提供してもらっているといったイメージです。

担当者ベースでは上手くやったと考えるかも知れませんが、開発側は次回の契約更新などの時に、当然そのお金の回収にかかります。

この例では、他社のシステム会社に相見積もりを取ろうとしても、カスタマイズした部分も開発してもらわなければなりませんので、他社の見積もりは当然高くなりがちです。

また、スイッチングコストも考えると、通常の意思決定レベルではシステム開発会社を乗り換えられない状況となってしまいます。

そのような状況となってしまうと、既存の業者が色々理由をつけて値上げ要求をしてきた場合飲まざるを得なくなります。

そのため、開発者側としては短期的には開発費で赤字となっても顧客の要求をのむ余地があるのです。

そのようにすれば、ある程度関係性が構築できたら競合他社の参入は難しくなるので、保守費用などの名目でお金の回収にかかることも可能です。

tanuki
お店の運営に使うシステムを一式変えませんかという営業が来ています

onnanoko_bustup
今更お店の仕組みは変えられないんです。私も高いとは思っているのですが、全てウチのお店用の仕様になっていまして。で、当時の担当の人がとってもいい人で、私の考えた仕組みを盛り込んでくださったんですよ。ほら、発注システムの画面、かわいいキャラクターが動いて、計算してくれるでしょ?

tanuki_2
このキャラクターの動きも必須だとすると…結構高くなっちゃいますよ?

onnanoko_bustup
営業に来てくれる人ってみんなそう言うのよね。でも、ここは譲れないわ。楽しくお仕事するってとっても大切だと思うのよ。

tanuki
結局、値段の折り合いが合わず、少し高いと思いながらも今までの仕組みを使っています。



■関係性を構築できるのは悪いことではない

このように、発注側にとっては良くないイメージあるベンダロックインですが、取引先と長期的な関係性を築くことができると言ったメリットもあります。

自社で人材を育成する余力がない場合は、多少高くとも、どこか一社にお願いし続けるという発想はアリなのです。

このまんがでは、製品の売り込みに来ています。機能強化が図られていることを理由に価格アップを迫っていますが、実質的に別の選択肢がないので、結局は買わざる得なくなりそうです。

ベンダロックインが生じるとこういった現象が起こる場合があります。

■ベンダロックインを回避するには(IT等の業者側は逆に考えてください)

このような、ベンダロックインを回避するためには、以下のような対策が有効となります。
  • 標準的な仕様や技術を利用する
特定ベンダーのみが扱う特殊仕様やプロトコルは避け、できるだけオープンスタンダードに基づいた製品や技術を採用することが大切です。

独自仕様を声高に主張する社内の偉い人がいたら「それは長期的にはとても高くつきますよ?」とやんわりと説得してみてください。
  •  ドキュメントや仕様書を整備しておく
システム導入時には、「どのようなカスタマイズを行ったか」「どんな設計思想か」を文書化しておくことで、他社ベンダーへの引継ぎが可能になります。

あたり前と捉えているかもしれませんが、システムベンダー側が作る仕様書だけでなく、自社が機能に込めた意図などをちゃんと残しておくのが大切なのです。

「(なんだかわからないけど、)現状の仕様通りで作り直してください」と、「(あれとこの機能は今の時代では使わないから)この仕様で作ってください」だったらどちらが安くなるか直感的に判断できると思います。
  • 初期契約で出口戦略を設ける
契約段階で「乗り換えが必要になった場合のデータ移行」や「カスタマイズ引継ぎ」の条件を明文化しておくと、将来的な移行がスムーズです。

特に、データは皆様が考えている以上にバラバラにされて保存されていますので(データベースの正規化)あらかじめ吐き出し要件を明確にしておくことが大切だったりします。
  • 社内に一定のITリテラシーを保持する
完全外注ではなく、最低限のIT人材を育成しておくことで、ベンダー任せになりすぎない体制を作ることができます。

システムベンダーに依頼したから、「情報システム担当の人は全員明日から営業に回ってください」なんてやったらダメですよ。


そして勘の良いベンダ側の皆様は、誠実に対応しつつ、上記のベンダロックインを回避する条件を上手く回避する提案をしていくのがポイントになります。「自社しか提供できない独自技術でお客様の問題を解決する」ってすごく良いですよね?

解説で出てきた用語・関連用語
アフターマーケット
アクティベーション
参入障壁
スイッチングコスト

初出:2012/06/29
更新:2025/07/29

生産管理
2025年7月29日

予防保全

予防保全_001
予防保全(Preventive Maintenance:PM)とは、故障や性能の低下発生前に対策を取って、故障や性能の低下が生じないようにすることを言います。文字通り、故障などの問題が発生しないように(予防)、メンテナンスしておく(保全)といったイメージです。

■予防保全と事後保全

この予防保全も事後保全と同じように、設備保全の方法として、古くからおこなわれた保全方法の一つだと言われています。簡単に言うと、壊れることを防ぐためにメンテナンスをするという事ですから当たり前と言えば当たり前ですよね。

そして、この予防保全は一定の周期でメンテナンスを計画する時間基準保全(TBM)と、状態を監視して問題が発生しそうならばメンテナンスを行う状態基準保全(CBM)に分けることができます。

■時間基準保全(TBM)と状態基準保全(CBM)の違い

時間基準保全は「稼働時間や使用回数」で判断して定期的にメンテナンスを行うといったイメージです。

例えば時間基準保全では、電球を使い始めてある程度の時間がたったら交換してしまいます。この他には、自動車のオイルなどは切れたりする前に半年や5000キロ走ったら交換するなどの一定の基準が定められています。

これは、予防保全の一種で、エンジンオイルで問題を起こしてエンジンが焼き付くようなことがないように時間基準保全の考え方を取っているのです。

これに対し、状態基準保全は「センサーや点検」により設備の劣化兆候を監視して、必要なときだけ対応します。

例えば、状態基準保全では、電球に切れる兆候が見えたら交換するといったイメージとなります。この他にオイルの例では、オイルの劣化状態をセンサーで監視し、劣化した時点で交換といったことも考えられます。

いずれにしても、故障や性能の低下が発生する前にメンテナンスを行うのがこの予防保全です。

■予防保全が有効な設備の例

予防保全は、止まると困る機械、そして、止めないために多少のコストをかけることが正当化されるような設備に有効です。

一例として、生産ラインの主要機械(突発停止が許されないもの)や、ビルの空調・電気設備、医療機器やインフラ設備(安全性が重要)等が挙げられます。

このような種類の設備はメンテナンスのために停止しているのを見聞きしたことがあると思います。その停止している時間はこわれてから直しているのではなく、殆どの場合は予防保全となっているはずです。

■予防保全は事後保全の上位互換か?

予防保全には次のようなメリットとデメリットがあります。そのため、メリットしか無いような夢の保全方法では無いのです。

予防保全のメリット 予防保全のデメリット
・故障を未然に防げるため安定稼働が実現できる ・定期メンテナンスのためコストが発生する
・突発停止や大規模故障を防止できる ・不必要な交換や作業が発生する可能性がある
・長期的な設備寿命の延長につながる ・作業計画・人員確保が必要

予防保全のポイントは多少のコストを掛けてでも壊れないようにしたほうが良いものに適するということです。

逆に言えば、壊れてから直すといった方法で問題が生じないなら事後保全のほうが総コストが安くなったりします。

電球の例が続いてしまっていますが、電球が切れても問題ない(設備も止まらないですし、安全上も特に問題なく、交換するコストも殆どかからない)ような設備は、切れたら交換するで十分に正当化されるのです。

このまんがでは、日ごろのメンテナンスが大切だと言っています。一言でいえば予防保全の大切さを訴えているのです。
改良保全

初出:2012/06/07
更新:2025/07/29

生産管理
2025年7月28日

予知保全

予知保全_001
予知保全(predictive maintenance)とは、設備の劣化状態や性能の状態を基準として保全の時期を決定する方法です。具体的には、定期的に稼働状況を診断して、故障やトラブルの徴候を察知した上で保全活動を行うというアプローチです。

この考え方は予防保全の考え方に近いと思われますが、診断を行ったうえで必要ならば保全を行うという事から、予防保全の中でも、状態基準保全(CBM)に該当します。

■予知保全と予防保全

予防保全のアプローチとして、一定の周期でメンテナンスを計画する時間基準保全(TBM)と呼ばれるものがありますが、これは保全の周期を客観的に定めることが難しい事や、壊れてもない機械を保全と称して壊してしまう(いぢりこわし)事があると指摘されています。

このような問題を克服するために、機会の稼働状況を診断して問題が発生しそうであったら保全活動を行うとするアプローチが予知保全なのです。

そして、この「診断」というキーワードが示すように、保全を行うための時期や方法を決定するための診断技術の確立がカギとなります。

■予知保全を掘り下げると

予知保全は、機器の劣化状態に基づいてメンテナンスを行う「状態基準保全(CBM: Condition Based Maintenance)」の一種です。

これは、定期的な点検によって機械の状態を把握し、『トラブルの兆候があるときだけ』保全を行うアプローチです。

例えば、振動センサや温度センサなどを活用して異常値を検出し、必要に応じてメンテナンスを計画します。これにより、不要な分解作業を避けることができ、コストや故障リスクの低減につながります。

といろいろ書いてみましたが、予知保全のイメージとしては、壊れそうな兆候が出た時に、壊れる前に直せばいいじゃんという発想がもととなっています。

ソレができたら苦労はしないのですが、現在ではセンサー技術が進歩しているので、診断を行って壊れる兆候を見つけることができるのです。

現在ではIOT技術も進歩していますので、スマート保全ともいわれ、センサーで監視し続けることも可能となっています。そのため、予知保全のアプローチは導入しやすくなっているのです。

■まんがと予知保全

このまんがでは、機械のメンテナンスを行うエンジニアの人が、機械の診断に来た場面を書いてみました。どうやら今までは壊れていなかったり、壊れる徴候がなくてもメンテナンスを行っていたらしく、メンテナンスを行った事で壊してしまうような事もあったみたいです。

それに対して、機械を診断したうえでメンテナンスを行う現在の方式では、納得感もあり優れた方法であると言っています。 

この、時期を決めて予防的に保全活動を行う予防保全ではなく、診断を行って壊れる兆候が現れた時に保全活動を行うのが予知保全なのです。

■予知保全の導入事例(簡易)

製造業ではモーターやコンプレッサーなどにセンサを設置し、異常音や振動、温度の変化から保全時期を判断するといった取り組みを行っています。

中小企業においても、IOTのパンフレットなどを見ると、そういったセンサーを機械に設置して予知保全を行っていますといった事例が載っていたりします。

特に上でもふれた通り2025年現在においてはIOTの技術は進歩しており、秋葉原で買ってきたようなセンサーを自分でDIY的に取り付けるといった事でも成果を上げています。

例えば、製造ラインの機器にセンサーを設置し、リアルタイムで事務所のPCで稼働状況を見られるようにしたり、何が故障の兆候化わからないので、機械の動き、音、振動、温度など考えられる故障の兆候が出たら異常値が出ると考えられるようなものを測定してデータを取っておくと言ったイメージです。

割と簡単なしくみかもしれませんが、人間でも体温やなんとなくの体調と言ったあやふやな幾つかの兆候で体調不良を測定するわけですから、測定し続けることに意味があったりします。

そして、このような保全活動を行うことで、突発的なダウンタイムを大幅に減少させることに成功しています。

このような事例は公的支援機関は大量に蓄積しており、パンフレットにしていたりもしますので

「IOT導入事例 産業振興」

等といった検索キーワードで検索して、参考にしてみると良いです。(特に埼玉県の産業振興センターなど製造業が多い地域の事例が参考になったりしますよ)

なお、公的支援機関は基本的に無料で支援もしてくれますので、気になったら、お近くの商工会・商工会議所、各都道府県の産業振興センター(県によって名前が違いますが同じような組織があります)やよろず支援拠点などに電話をしてみると良いでしょう。

技術の進歩で数年前はできなかった、ちょっとした工夫が安くできるようになっています。そして、そのちょっとした工夫で大きな成果を挙げられる分野ですのでぜひ取り組んでみてください。

なお、もし本記事がきっかけになにかそういった実装をされたようなケースがあれば、コメント欄等で教えていただけると嬉しいです。

関連用語
事後保全 
改良保全

初出:2012/08/13
更新:2025/07/28

マーケティング
2025年7月27日

価格閾値

価格閾値_001
価格閾値とはある財を購入する際に消費者が買ってみたいと思う最高価格と最低価格の事を言います。ここで閾値とは「いきち」(しきいち」でも可らしいです)と読み、境界となる値の事です。

高い方に閾値があるのはなんとなく理解できますが、低い方にも閾値があるのはちょっと意外ですよね?

■価格閾値の具体例

例えば、あなたが1万円くらいの腕時計をほしいと思ったとします。この時ほしいと思って調べた時計の価格が思っていた価格の20倍の20万円するとしたらどうしますか?ほしいと思わなくなりますよね。

逆に調べていた時計が100円だったら安っぽすぎていらないと感じると思います。もっと踏み込んで言ってしまえば、安すぎるため品質が信用できないですよね?

このように、消費者は価格帯の相場感をなんとなく持っており、欲しいと感じる価格帯には上限と下限があるのです。


スクリーンショット 2025-07-27 090439

■まんがの例と価格閾値

このまんがではメガネ君がPCをほしいと思っていたようで、店員さんに価格を確認しています。すると、最初はハイエンド機を提案されたらしく100万円もするPCだったようです。

これは彼の価格閾値の上限を超えていたようで、そんなに高いものはいらないと言いました。

その後、次は千円の処分品を提案されたようです。こちらは彼の価格閾値の下限を下回っていたため、メガネ君はどちらもいらないと感じたようです。このように、ある程度の範囲に入った価格でないと消費者は財を欲しいと思わなくなってしまいます。

価格にはシグナル効果(消費者が品質を厳密に判断できない場合は値段で判断する≒安すぎるのは怪しい)もあるので、妥当な判断だと思われます。(合わせて読みたい用語:価格のシグナル効果

■価格閾値が実務に活かされる場面

このような価格閾値は、企業が商品価格を設定するうえで重要なヒントとなります。

たとえば、おまんじゅう屋さんが新商品を発売する際、200円で売りたいと思っていたとしましょう。

しかし、消費者調査の結果「150円までは気軽に買えるが、それ以上だと迷う」という声が多ければ、その150円が価格閾値ということになります。

このような調査結果を踏まえ、実際には「148円」などの端数価格で販売されることもよくあります。これは、心理的に「ギリギリ安い」と感じてもらうためです。

また、価格閾値はブランド力や購買体験によっても変動します。高級ブランドであれば、むしろ「安すぎると不安」と感じられてしまうこともあり、最低価格の方が意識されるのです。

また、この例のように、ブランド品でなくとも、安すぎると不安となる心理は理解いただけると思います。

価格を考えるうえでは、単なるコストを積み上げ計算して算出するのも重要ですが、こうした心理的な価格帯の認識(閾値)を探ることが成功のカギとなります。

逆に言えば、上のおまんじゅうの例は、150円で売るために何をするかと考えていく必要があるのです。(ちょっと小さくしたり、包装を簡略化したり、場合によっては材料の質をちょっと落としたりと考えるのです。)

あわせて読みたい経営用語
値ごろ感
プライスレンジ
端数価格
心理的価格政策

初出:2012/05/12
更新:2025/07/27

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