まんがで気軽に経済用語

「知らないから動けない」をなくしたい。 中小企業診断士が、現場視点で経営用語をまんがでわかりやすく解説しています。 読むことで、生産性が上がり、心に余裕が生まれ、社会全体がちょっと良くなる。そんな循環を目指しています。

中小企業診断士が実務で培った経験を基に用語集を作っています。

経営用語を解説することを通じて、社会の生産性向上に貢献したいと考えています。そして、社会の生産性向上を通じて、

生産性の向上で時間的・経済的に余裕ができる→地球環境への関心UP→省エネ性能の優れている製品への買い替えを促す→経済的成長と次世代に良い環境を残す

といった風にまんがで気軽に経営用語は貢献したいと考えています。

ご意見を頂戴できれば幸いです。
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生産管理
2025年6月16日

個別生産 | なぜ個別生産はコスト高になりやすいのか?

個別生産_001
個別生産とは、注文に応じてその都度生産を行う形式です。ロット生産連続生産と比較して注文一件当たりの金額が比較的大きくなりますが、生産量は少量になります。また、製品の仕様や納期も注文の都度異なってきます。

この個別生産形式を採る場合、注文の形式は主に受注生産となります。顧客の注文を受けた際に、毎回設計を行い材料を手配し、製造を個別に行います。

また、製造品種は多品種となり、数量は少量となるため、多品種少量生産という事ができます。

加工の流れから見てみると、この個別生産形式では、主に機能別レイアウト(ジョブショップ)型のレイアウトがとられると言われています。また、段取りの頻度が比較的多くなると言われています。

このまんがでは特別な注文が入ったため、いつもと違う料理を作っています。そのため最終的にはレシピを間違ってしまったようです。

今回の料理人さんは包丁を振り回して危ない感じですね。事故が起こる原因になりますので刃物は振り回しちゃだめですね。 

■個別生産は高コストになりがち

個別生産方式で製品を作る場合、多品種少量生産となるためスケールメリットが働きにくいです。その上、段取り替えがその都度発生したり、設計業務が発生したりと間接コストも多くかかりがちです。

また、作業も平準化できないため、稼働率が低下し作業者の手待ち時間が発生します。(何もしなくても人件費や設備のアイドルコストはかかりますので間接コストの発生要因です)

また、材料や部材なども都度発注(小口発注で高単価、最悪は余剰在庫になる)することになりますし、保管しておく場所も大きなスペースが必要となり、管理の手間も非常にかかります。

■個別生産は既製品家具に対する注文家具のイメージです

既製品の家具ならばある程度部品も共通でき、工程も共通化できるため大量二生産することができます。その結果、良いものを低コストで顧客に提供することが可能です。

しかし、注文家具の場合は注文者の要望を細かく聞いて、個別に材料を仕入れたりと非常に手間がかかります。そのため、既製品家具と注文家具を比べると一般的には注文家具のほうが高くなるのが普通です。

なぜならば、一つ一つの家具に対して、設計・税料選定・加工が発生し、そのすべてが少量対応となるためです。言い換えれば、世界に一つという価値を既製品よりも高いお金を出して買っているのです。

■原価は個別原価計算で集約します

このような個別生産方式となる注文家具の場合、注文ごとに原価(直接材料費・直接労務費・製造間接費)を集約するので、個別原価計算で製造原価を計算することとなります。

とくにオーダーメイドのビジネスモデルでは、この計算方法で計算された製造原価が経営判断の鍵となります。

初出:2012/02/03
更新:2025/06/16


店舗管理
2025年6月15日

在庫金利 | 金利を考えないと誤った意思決定をしてしまう可能性があります

在庫金利
在庫金利とは、在庫を持つことによって発生する(と見なされる)金利の負担のことを言います。実際に金利が発生していなくとも、発生しているとみなすという考え方です。そして、実際に発生していないので管理会計上で用いられる考え方になります。

この在庫金利には機会費用的な考え方として、在庫に投入している資金を銀行に預金していたら得られていたであろう利息収入を在庫金利と考える方法や、実際に負債として調達していると考えて、その調達金利を在庫金利として考えるような方法があります。

「仕入値が今は安いから、たくさん仕入れておこう」といった意思決定がなされてしまう可能性がありますが、在庫を持っていると見える費用としては倉庫代などの在庫費用が発生します。また、なかなか目立たない費用としてこの在庫金利もあるのです。

いずれにしても、在庫は持っている事自体でコストが発生するのでそれを意識づける事を目的とした考え方です。

このまんがのように、いくら安かったからと言っても仕入れ過ぎてしまうと、在庫金利等の在庫費用が沢山発生してしまい、売上原価は安くなったとしても全体的に見てみると経常利益を圧迫するような結果になってしまいます。


実務面からの加筆:
在庫ということは、現金が形を変えて企業の内部に滞留しているということを意味します。

ということは、その「現金を調達するための費用」がかかるということです。

例えば、100万円を年2%で借りてきてチョコレートを仕入れてきたとします。そのチョコレートが首尾よく売れればいいですが、1年間ずーっと売れなければ100万円が形を変えたチョコレートは在庫金利として毎年2万円のコストを発生させているのです。(100万円✕2%=2万円)

現金が動いたときにコストが発生していると感じがちですが、在庫があるだけでもコストが発生しているという意識が重要です。

このような考え方もあり、「在庫は少なく」と言われたりするのです。

実際にはこの他に、売れなければ陳腐化するリスクもありますし(この例の1年売れないチョコレートは陳腐化している可能性がありますよね)、在庫自体を管理するコストや、売り場を塞いでいる事によって発生する機会ロス(他の商品を並べていたら売れたかもしれない)などが発生するのです。

だから、時には赤字になっても大幅に割引販売して処分してしまうといったことが行われるのですね。

※なお在庫金利という言葉は厳密には金利だけを示しますが、実務的には上で上げたような様々なコストも含めて使うこともあります。また、在庫金利は経理上、在庫があることで仕訳を実施するようなものではありません。その意味で見えないコストですが、経営判断としては意識する必要があるのです。


初出:2015/01/07
更新:2025/06/15


財務・会計
2025年6月14日

自己資本

自己資本_001
自己資本とは株主に帰属する純資産のことを言います。資本金や、各種法定準備金、剰余金がこれにあたります。なんだか難しそうな説明ですが、簡単に言うと、自分のお金、つまり誰かに返さなくていいお金の事です。

株式会社では、主に株主から払い込まれた資金と、事業活動によって獲得した利益の内部留保分からなります。
BS

上記に示した、貸借対照表の純資産の部が自己資本にあたります。そして、この自己資本は負債のように返済することは不要です。そのため、長期安定的な資金源となるという事ができます。

このまんがでは、吹奏楽部の先生が販売クラブに出資しています。そして、この出資されたお金は自己資本にあたります。 

■お金の出どころで捉える

上の図の自己資本と負債の違いは何でしょうか?これは、お金の出どころを表しています。

負債は、「誰かから借りてきた」→つまり返済する義務がある

自己資本(純資産)は自前のお金→つまり返済する『義務がない』という切り口です。

■自前のお金の種類

この自前のお金ですが、事業を営んでいくと少しずつ増えていきます。(それが目的で事業をしていますからね)

そして、増えた時に最初に投資してもらったお金と増えた分を分けて考えていきます。

厳密にはもっと細かい分類もありますが、自己資本は

・資本金(自分たちが会社に払ったお金)
・利益剰余金(儲かったお金)

と分けていくことができます。

このマンガでは、先生が出してくれたお金は、返す必要がないお金です。なので、資本金としてこの貸借対照表に記載されてきます。

■実務面からの加筆:

この自己資本は「返さなくて良いお金」といったことを捉えて、商売を始める際に出資(自己資本)で資金調達したがる人がたくさんいます。

しかし、実務的には「返さなくて良いお金」ではなく、『「返せない」≒「関係性を清算できない」お金』だという着眼点が必要です。

最終的には社長さん個人の価値観になりますが、私は創業の際に他人から出資を受けないほうが良いとアドバイスすることが多いです。

また、仮に出資を受けるとしたら、33%よりも低い比率、最悪でも49%までにしたほうが良いですとアドバイスします。

なぜならば、33%以上の株式を他人に握られると、株主は特別決議を阻止することができるため、その種の意思決定が自由にできなくなります。そこまでいかなくても、少しでも株式を持っている株主からは、適切でない意思決定の経営責任を追求されますし良いことはあまりないです。

そして、過半数を握られると、株主はいつでも社長の交代や取締役の解任が可能となり、経営権を獲得することができるようになるためです。(つまり社長を首にできる権利を与えることになります。)

たいてい、そこそこ上手く経営ができている間は、株主は何も言ってきません(言ってきても「配当してください」ぐらいです)が、会社が軌道に乗って大儲けの目が出てくるとあなたを首にして別の人間を社長にしようとか、良くてもお目付け役のNo2を送り込んできたりします。


出資を受けられるような事業計画ならば、たいていの場合は融資を受けられますので、融資で(負債で)資金調達をすることをオススメしています。

融資ならば返済は大変ですが、会社のコントロール権は社長が確保できますので。

初出:2012/04/16
更新:2025/06/14
財務・会計
2025年6月14日

変動費型ビジネス | 売上の減少が大きな損失につながりにくいビジネスです

変動費型ビジネス_001
変動費型ビジネスとは、比較的大きな変動費が発生しますが、固定費は小さいビジネスのことを言います。

工場を持たずに製造業を行うファブレスといった形態のビジネスがこの変動費型ビジネスの代表例となります。(工場を持たないので、発生する費用のほとんどが変動費になります。)

このような変動費型ビジネスは変動費が大きいため粗利率は低くなります。つまり、売り上げが沢山上がっても儲かりにくいビジネスという事ができるのですね。

と、こんな風に説明すると「売り上げが上がっても、儲かりにくいなんて意味ないじゃん。変動費型ビジネス=儲からないビジネスなのかな?」と考える人もいるかもしれません。

しかし。この変動費型ビジネスには、儲かりにくいという弱点を補う大きな利点があるのです。
  • 損をしにくい
この変動費型ビジネスは固定費型ビジネスと比較して、損をしにくいという特性があります。

一般的に言って、変動費型ビジネスは固定費をそれほどかけていないビジネスとなります。という事は、損益分岐点の売上高は低めになります。(つまり売り上げが下がっても赤字になりにくいという事です。)
変動費型
また、売上が減少してもそれほど急激に損失は拡大しません。(固定費型ビジネスに示した図表と比べてみてください。)

■変動費型ビジネスの例を幾つか

この他にも、外注費を中心に使うビジネスがあります。例えば、クラウドソーシングを使ったWeb制作業が考えられます。

この場合は受注してから外注を行うので固定費はかなり押さえられます。

また、ECサイトの中でもドロップシッピング型(在庫を持たないで注文だけ取って直送してもらう)ならばこの変動費型のビジネスモデルであると言えます。

■利幅が薄い以外の弱点

一見すると手堅いビジネスであるように見えますが、変動費型のビジネスモデルには弱点があります。

一つは、利幅が薄いというよく言われる弱点ですが、実務的にはもっと大きな弱点が存在します。

それは、漫然と行うと参入障壁を築くことがとても難しいため、売上基盤が脆弱になりがちであるということです。

極端な話をすれば、外注先があなたの会社と付き合うメリットを感じなければ、競合とパートナーシップを構築する可能性もありますし、外注先が直接受注することすらありえます。

そのため、外注先と長期的な信頼関係を築くような取り組みをする必要があるといった点も注意が必要です。

また、注文だけ取って実際の製造やサービスは外注するため、製造やサービスや商品の品質など一般的に差別化しやすい部分で自社のノウハウを蓄積できる余地が少ないです。

そのため、受注した内容をそのまま外注するのではなく、

引合→商談→提案→受注

といったふうに自社独自の提案を行えるようにノウハウを蓄積していき、自社独自の価値を乗せていく工夫ががとても重要となってきます。

また、外注先とビジネスパートナーとなるような関係性を深めることによってネットワーク資産を構築することも重要です。

いずれにしても、「自社だから提供できる価値」というビジネスの本質を作りにくいため、その点wくぉ意識することが重要となっているのです。

初出:2013/07/03
更新:2025/06/14


店舗管理
2025年6月13日

商圏

商圏_001
商圏とはお店に来てくれる人が住んでいる範囲の事を言います。小売業側から見ると「お客様を集められる範囲」、消費者側から見ると「行く可能性があるお店の範囲」ということができます。

一口に商圏と言っても取り扱う商品によってその範囲は異なってきます。例えば一般的に最寄品を取り扱うようなスーパーやコンビニの商圏は小さく、買回品専門品を取り扱う百貨店や専門店の商圏は大きくなります。

食料品を買うためにわざわざ隣町まで出かけることは稀だと考えられますし、楽器などの専門品は大きな町に出て買い物に行く事もあると考えられます。

また、同じ最寄品であるコメとか水といった商品でもちょっとした買い物なら近くのコンビニでもいいですが、利用目的が大量買いだった場合は、郊外の大型店まで足を伸ばすことになります。


このまんがでは学食と売店の選択肢があったようですが、男の子は近くにある学食に行ってジュースを買ってきたようです。

今回のジュースのような最寄品は商圏が小さいため、基本的には近いお店に行くことになります。

■商圏って距離の概念なの?

距離と移動時間は非常に近いのですが、実際の消費者は直線距離よりも時間で考えることが多いです。

例えば、800メートル離れているお店とは考えずに、10分ぐらいかかるお店といった感覚です。

そのため、消費者が自転車に乗って入れば徒歩よりも同じ10分でも商圏の範囲は大きくなりますし(お店は駐輪場を用意するという配慮が必要です)、車で来店するなら10分でもそれなりの距離が商圏となります。(同様に駐車場の確保が必要です)

ここから、駐車場のない商店がなぜ不利になるのかということが見えてきます。昔ながらの商店で駐車場がないと、車での来店が見込みにくいため、商圏が狭くなるのです。

■だったら移動時間が短ければいいの?

プラスで、気持ちの問題もあります。例えば、ものすごい勢いで吠える怖い犬がいる道は子供の頃通るのが嫌じゃなかったですか?

とすると、その道は心理的に通りにくいため、移動時間以上に商圏の範囲は狭くなりがちです。

また、駐車場があっても停めにくい駐車場の場合、運転があまり得意でない人からするとやはり遠いお店≒行きにくいお店になりがちです。


実務面からの加筆:
商圏分析なんて大変だーって声が聞こえてきますが、今はとても便利な道具を国が用意してくれています。最初に本記事を書いた2011年から2025年になって世の中は本当に便利になっています。

jSTAT MAPというとても便利なサービスが無料で使えますので、ぜひ使ってみてください。これはスグレモノで、

・車で○分圏内に住んでいる人口や世帯数
・年齢層や世帯構成の分布
・自店舗からの同心円/等時間圏マップの作成

などがすぐに分かります。

↓リンクはこちらです
https://www.e-stat.go.jp/gis/gislp/

とても示唆に富んだ良いレポートを出すことができますので、ぜひ本記事をご覧になられてご商売をされている方は、自分のお店を分析してみてくださいませ。

レポートを眺めていると、誰に向けたご商売をするとよいかが見えてくるかもしれませんよ。

初出:2011/11/19
更新:2025/06/13

財務・会計
2025年6月12日

経営分析(財務分析)

経営分析_001
経営分析とは、主に企業の財務情報を用いて企業の現在の状態を分析・把握し、将来の予測に役立つ情報を作り出す技法の事を言います。一般に経営分析は財務分析と同義語で使われる事が多いと言われています。

経営分析は、ただ数字を読むだけではありません。立場によって同じ数字の意味はまったく異なり、それが現場の判断を大きく左右します。

この財務情報を加工して作り出した様々な指標を業界平均や競合他社と比較することで、自社の特徴や改善すべき点が見えてきます。

また、取引先の与信管理に役立てて貸し倒れによる損失を防いだり、投資家として投資すべき企業を選別する際に用いたりすることができます。

この経営分析は大きく分けて次のように分けられます。

1.収益性の分析
企業がどの程度の利益を上げているかを分析する手法です。ROI等が指標として用いられます。

2.安全性の分析
企業の財務内容は健全であるかを分析する手法です。自己資本比率等が指標として用いられます。

3.生産性の分析
経営資源のインプットと付加価値として得られるアウトプットの関係を分析する手法です。労働生産性等が指標として用いられます。

このまんがでは経営分析の説明を聞いた男子生徒は逃げ出してしまいましたが、計算自体はほぼ、四則演算のみで行うことができますので、アレルギーを起こさずに取り組んでみるとよいと思います。

関連用語
自己資本
他人資本

実務面からの加筆:
経営分析、財務分析をどのように扱うかは悩ましいテーマです。

極論を申し上げると中小企業の財務で全く問題がないというのは稀です。そのため、財務分析をすると結構辛い数字が出てきたりします。

その時、自分のスタンスによって取りうる方策は変わってきます。

■与信管理のスタンス

主に与信審査担当、取引先を審査する方のアプローチを見ていきます。

この場合は、貸倒を避けることが任務になりますから、かなり厳格に数字を見ていく必要があります。

会計の格言で「費用は大きく、収益は保守的に見積もる」といった物があり、会計は用心深く行うといったアプローチがあります。(保守主義の原則といいます)

この観点から、財務諸表については安全性や流動性の指標を見るだけでなく、場合によっては「粉飾があるかもしれない」といった観点で数期分の数字の推移や同業他社との比較も行っていきます。

特に、利益が出ているけど、在庫や売掛金が著しく増えているなど不自然な動きをしていたら要注意です。

このように、どちらかというと性悪説的に、最悪の場合に備えて厳しく見ていくことが求められます。

■営業担当者のスタンス

取引先と取引をしたいわけですから、なるべく前向きに見ていくことが求められます。

とはいえ、貸倒になったらせっかく頑張って販売してもマイナスにしかなりませんので、細かく見るところは見ていく必要があります。

どちらかというと成長の余地や前向きな点を探し、社内稟議に備えていく必要があります。

■支援者(コンサルタント)など私達と同業者

現状をまずはありのままに把握します。意見は事実をもとに構築すればいいので、まずは現状がどうであるかを見ていくことが重要です。

その結果、あまり良くない数字だったとしても、どのような動きをすれば改善できるかという可能性も追求していく必要があります。

その意味で、与信管理者の厳しいスタンスで現状をみつめ営業担当者の未来を一緒に作っていくスタンスで希望を見ていくことが重要です。


なお、支援者が厳しく査定し会社のだめな部分だけを指摘するような態度はあまり望ましくないと考えます。会社の状況が良くないのは会社の人が一番ご存知ですので、そこを強調しても仕方ないのです。

支援者にとっての経営分析は企業を裁くための道具ではなく、企業と一緒に可能性を見出す対話の第一歩といったスタンスが求められるのです。

初出:2011/10/31
更新:2025/06/12

経営
2025年6月11日

持続的イノベーション

持続的イノベーション_001
持続的イノベーション(sustaining innovation)とは自社を支える主な顧客の持つニーズを満たすために、自社の製品やサービス、またそれらを生み出す業務プロセスについてより良いものを生み出すために行うイノベーションのことを言います。

持続的イノベーションの「持続的」という言葉から単なる改善を繰り返すだけのイメージを持たれる方がいるかもしれません。確かに、改善を繰り返すということも非常に重視されています。

しかし、イノベーションという言葉も使用されており、この持続的イノベーションは単なる改善の域にとどまらず自社を支える顧客のニーズに基づいた抜本的な技術革新をも含む事があります。

ただし、この持続的イノベーションはあくまで自社を支える顧客のニーズに基づいた改善や技術革新です。そのため、既存の技術ではなく全く新しい価値を生み出すような「破壊的イノベーション(Disruptive Innovation)」が生じた場合、新興企業に取って代わられてしまうといった現象が生じることがあります。このような現象をイノベーションのジレンマと呼んでいます。

このまんがでは製品を日々改良し、お客様の声に耳を傾け続け何度も抜本的な技術革新にも取り組んだと言っています。このような既存の顧客のニーズに基づいて行うようなイノベーションを持続的イノベーションといいます。

■持続的イノベーションの具体的なイメージ:日本車の改良とハイブリッド技術

例えば、改善活動を繰り返して現在の顧客ニーズを満たしていくイメージです。エンジンを使った車を究極に突き詰めていく日本の自動車などが挙げられます。

より良い燃費で、より良い乗り心地、より安全な車といった顧客の要望する大切なことをカイゼンで突き詰めていく日本の車作りがこのイメージに該当してきます。

また、この持続的イノベーションの文脈で、ハイブリット車という顧客の期待を遥かに超えてくる素晴らしい乗り物を作っていきました。ハイブリット車も既存の製品群の延長線上にあるイメージで、高度な技術の蓄積がそれを可能としています。

このような取り組みを通じて市場シェアを維持し、ブランドイメージの構築や規模の経済経験曲線効果での低コスト(販売価格が安いとは限りませんが)を享受することで競合が参入しにくくなる参入障壁を築くことができます。

■持続的イノベーションの対比として:EVが切り開く可能性

他方で、顧客が予期しないニーズがあるかもしれません。本当に顧客はエンジンで動く乗り物に乗りたいのでしょうか?

例えば、顧客は単に自動車という利便性がほしいだけだと考えれば、エンジンを使う乗り物といった切り口ではなく、モーターで動くEV車という切り口も考えられます。

この切り口は、既存のエンジンで動く車が蓄積してきた価値観や市場構造を根本的に変える可能性があります。精巧なエンジンを作る技術やエンジンから動力を得る前提で作られた車体設計などの先行者の蓄積に基づく参入障壁などをスキップできるかもしれないからです。

この切り口が真のイノベーションであれば、顧客の価値観や市場構造を根本的に引っくり返すことができるかもしれません。(2025年現在ではEV車の失速が目立ちますが。)

■相対的に変化するイノベーションの評価:2030年からの視点で振り返る

ひょっとしたら2030年には、移動手段の概念が根本的に変わっており、EV車自体も「あれは自動車という概念から生まれた持続的イノベーションだった」と振り返られるかもしれません。あくまで印象論ですが、EV車は自動車という体験の延長でしかないように思われます。

このように、持続的イノベーションと破壊的イノベーションは絶対的な分類ではなく、相対的な考えであるという点にも注意が必要です。

最初にこの記事を書いたときは2011年だったのですが、2025年現在、当時すごい革新的だった製品の幾つかはすでに旧製品の徒花的なものだったと理解できていますので。


みなさんは、今「破壊的イノベーション」だと思われている製品のうち、10年後に「持続的イノベーションだった」と評価されるものには何があると感じますか?

関連用語
インクリメンタルイノベーション 


初出:2011/11/04
更新:2025/06/11

経営
2025年6月9日

Off-JT(OFF the Job Training)

Off-JT_001

Off-JT(OFF the Job Training)とは職場外で専門の指導者によって行われる教育訓練の事です。いわゆる社外での研修会のイメージとなっています。この訓練は一般化された知識や技能を学ぶことを主眼としています。

Off-JTの長所と短所は次の通りです。
長所
・特定の分野について体系的に指導することが容易です。

・受講生がある程度の効果を実感しやすい。

短所
・研修の結果を日常の業務に生かすかどうかは参加者各自に委ねられてしまいます。

・対象者を適切に絞らないと研修の内容が抽象的になり、実践しにくくなる場合があります。

このまんがでは、1コマ目でみんなを集めて研修を行うと宣言しています。

それを受けて、2コマ目で研修対象者を募集し、3コマ目で研修を実施しています。どうやらいつもの学校ではなく外部の会場で実施しているようです。普段の練習では身に付きにくい内容を体系的に指導するといっています。

ただし4コマ目で、学んだことの使い方が分かりにくいと嘆いています。これは日常にどのように生かすかが参加者各自に委ねられているためであると考えられます。

関連用語
OJT
自己啓発

■OFFJTは抽象的

どうしても、机上で学ぶといった観点からOff-JTは抽象的になりがちです。

というのは、様々なケースに対応できるようなトレーニングといった設計をする以上、ある程度抽象度を上げる必要があるからです。

この短所を補うため、OffJTで学んだことを実際に使うようにOJTを設計すると定着率が上がります。

学んだら学びっぱなしでは良くなく、上司や先輩からのフォローアップを行うことでこのOffJTの効果が高まるのです。

そのため、多くの組織では、研修後にレポートを書かせたり学んだことの報告会などをさせます。

研修を受けた人からするとめんどくさい限りですが、せっかく学んだことを「使ってみる」ようにするための設計になっております。

■対象者の業務水準から設計することも重要

せっかくの研修を効果的に行うためには、対象者の業務水準にあった形で設計する必要もあります。

ベテランさんに新人向けの基礎を改めて復習してもらうことに意義がないとは言いませんが、ベテランさんにはベテラン向けの高度な内容を提供するようにした方がより効果が上がってきます。

何を学ぶかを誰に学んでもらい、どのように使ってもらうかまでしっかりと設計することが重要です。

■Off-JTは効率的だけど、設計が重要

教える側にとってはOff-JTはとても効率的です。しかし、しっかりと活用イメージから設計しなければ、形骸化してしまいます。

業務でどのように活かすかまで設計することが、Off-JTを効果的にするポイントです。

初出:2011/10/02
更新:2025/06/09

店舗管理
2025年6月9日

客単価

客単価_001
客単価とは、お店に来たお客様が使った一人あたりの金額の事を言います。文字通りお客様一人あたりの単価という事ができます。

これは売上高を客数で割れば求めることができます。言い換えると、お客様一人あたりの平均売上高の事ですね。

ところで、売り上げを上げる方法ってどんな方法があると思いますか?こんなことを漠然と質問すると、「それがわかれば苦労しないよ」といった声が聞こえてきそうですね。

それでは、このような漠然とした聞き方ではなく、売り上げをもう少し分解して考えてみたいと思います。

売上は、【お店に来るお客様の数】×【一人一人の使うお金】であるとしてみたらどうでしょうか?計算式に直すと下の通りになると思います。

売上=客数×客単価

このように少し分解してみれば、売上を増やす為のアプローチの方法として、お客さまの数を増やすか、客単価を上げるかといった風に考えることができると思います。

ここで、客単価はさらに【お買い上げ点数】×【商品の単価】と分解することもできます。こちらも式に直すと下の通りとなります。

客単価=販売点数×商品単価

客単価を向上させると決めたら今度は、もう一品余計に買ってもらうのか、商品の単価を上げるのかといった風に考えていくことができます。

良く行われている方法が、もう一品余計に買ってもらうという方法です。これはレジの横に、ガムやあめ、電池等をおいてついで買いを誘発したり、ネットショップなどでは、○○円以上で送料無料と謳ったり、レコメンドエンジンといって、これを買った人は一緒に○○を買っていますという風に自動的に勧めたりしています。

このまんがでは、客単価の高い人が来店した際に、更にいろいろ買ってもらうために商品を勧めています。このまんがではさらにもう一品買ってもらえるようにお勧めの商品について情報を提供しているようですね。


実務面からの加筆:
平均値を過信すると危険ということは覚えておくとよいです。9名のお客様が100円しか買っていなくても、一人が1,000円買ったとすれば、平均値は190円となり、判断を誤る危険があります。

もちろんここまで極端なことはあまり発生しませんが、基本的には客単価✕客数で戦略を考えていくため、「その客単価は本当に実態を示しているか?」とちょっと立ち止まって考えるとよいでしょう。

■高くすると回転率は・・・

さて、この他の考える指針としては、客単価と回転率は多くの場合トレードオフ(両立しにくい)です。

みなさんがお店に行くとして、安いお店なら食べ終わったらすぐに席を立つ(≒回転が早い)と思います。

しかし、高めのお店ならゆっくりしたいと考えるお客さんが多くなり、回転率は下がりがちになります。その結果客数はやすいお店ほどには獲得することが難しくなります。(客席が埋まっていたら新しいお客様は入ってこれませんから。)

これは良し悪しではなく、構造の問題となりますので、どのような価格帯を狙って、どれくらいのお客様をお迎えするかといった戦略が重要となるのです。

例えば、高級なお寿司屋さんと牛丼チェーンでは、客単価という指標を見るとお寿司屋さんのほうが高くなりますが、牛丼チェーンは回転率という武器があります。

そして

売上=客単価✕客数

となりますので、それぞれの戦略が全く異なるということができます。

■分けて考えることに意味がある

と、戦略ごとに全く異なるなら考える意味がないと思われるかもしれませんが、このように分解して考えることに意味があります。

売上を上げると漠然と考えると難しいですが、この記事のように分解して考えていくと色々と指針が得られるのです。

初出:2012/08/06
更新:2025/06/09

組織論
2025年6月8日

フォーマル組織 | このような言葉はほとんど使いませんが、インフォーマル組織を説明するときには使います

フォーマル組織
フォーマル組織とは、インフォーマル組織の反義語で、公式に定められた組織のことを指す言葉です。公式に定められている組織ですから、組織の目的を達成するために意図的に構築された組織であるという事ができます。

指揮命令系統が明確となるよう、組織内での職位によって上下関係を明確化し、誰がどのような権限を持っているかを公式に定めるような組織形態となっています。

と難しそうに言っていますが、通常の組織図で定めれらるような組織が該当します。例えば、社長の下に各部署を統括する部長が存在し、その下に課長、係長がいるようなイメージです。 

とはいえ、このような言葉は普段は用いません。というのは、組織を運営していく中である意味当たりまえの事であるからです。

そのため、この言葉は組織内に自然発生的に生じたインフォーマル組織を説明する際に、対比を強調するために使われたりします。

ちなみに、インフォーマル組織のインとは否定を表す言葉になります。そのため、フォーマル組織を公式な組織とするのならば、インフォーマル組織が非公式な組織となるのです。

(インは日本語の『非』とか『不』に該当する言葉でポッシブルが可能と訳されるのに対し、インポッシブルが不可能とされます。)

なお、マンガに出てきた直接部門とは直接的に売り上げを上げるような営業部や販売部といった部署、間接部門とは直接的には売上を上げない総務部や経理部といった部署のことを指す言葉です。

実務面からの加筆:
正式な組織、公式に設定された組織という意味の言葉です。

「何を当たり前のことを」とお考えになるかもしれません。

しかし、お勤めの方はあまり想像がつかないかもしれませんが、組織が体系的に整備されていない企業はとても多いのです。

組織が体系的に整備されるタイミングはどこでしょうか?

人がいればすぐに正式な組織ができるわけではありません。社長が起業し、人を雇い始め、従業員が増え始め、なんとなく役割分担を行い無理やり会社を回していく。

そして、それでは回らなくなって初めて組織づくりに着手するといったイメージです。

■組織を作るときが危険

上記のような社長が起業したときの仲間といい感じでやっていた会社が、組織の整備を図るとき、意に沿わない処遇を受ける人が生まれてきます。

ただ、古参や功労者だからといって特別扱いすると、今度は新しく入った人から不満が出ます。

このような難しい舵取りに、企業を大きくしようとするとどこかで直面することとなります。

■企業は大きくならないといけないのか?

と、ここで究極の疑問、「企業は大きくならないといけないのか?」といったものが生じます。

個人的には、すべての企業が従業員数の拡大とそれに伴う組織拡大を志向する必要はないと考えます。

人材を親族や知り合いだけに限定し、家業として長く続けている立派な企業も存在するのですから。


初出:2015/10/15
更新:2025/06/08

マーケティング
2025年6月7日

生産志向

生産志向_001
生産志向とは
生産志向製品志向販売指向マーケティング志向社会志向といったマーケティング・コンセプトの一つで、「作れば売れる!」という考え方です。このコンセプトでは、生産力こそが価値の源泉となっています。

この生産志向という考え方は需要が供給を上回っている場合に有効です。例えば、食糧が欠乏しているような場合の食糧や、日本の高度成長時代のような場合には有効な考え方でした。

現代でも、生産コストが高いが市場拡大中の製品には当てはまるケースがあります。たとえば、太陽光発電パネルなどは当てはまるかもしれません。生産力を拡大し、安価に製品を提供できればそれは一つの価値となります。

このまんがでは、2コマ目でおなかのすいた学生さんたちが詰めかけています。それを受けて3コマ目で作れば作るほど売れると言っています。

しかし、このような考え方はひとたび需要が満たされれば
1コマ目、4コマ目のようにいきづまってしまいます。  

この生産志向の発想としてはコストリーダーシップを取りに行くといった感覚になりますので、経営資源がとても多い、いわゆる大企業なら勝ち目がある路線だとも言えます。

もちろん、この考え方が悪いわけではないのですが、漫然と対応すると激しい競争に巻き込まれがちという面に注意が必要です。

簡単に整理すると、いわゆるマーケティング志向と対極にある考え方で、我が国における大きな流れは以下のように推移してきたということを覚えておくとよいですね。

生産志向

販売志向

マーケティング志向


実務面からの加筆:
生産志向が一概にだめとは言えない点に注意が必要です。極めて強力な個性を持つ製品やサービスはマーケティング志向からは生まれにくいという現実にも目を向けると良いでしょう。

そのため、革新的な製品やサービスは顕在化したニーズに基づかずに開発されることもあるという点は押さえておく必要があります。

しかし、それを言い訳にして「うちの製品は世界水準だから売れるはず」といった思い込みで窮境に陥る事業も後を絶たないのが現実です。

「製品の品質がいい」と「売れる」は相関関係はあるかもしれませんが、因果関係はありませんので、良いものを作れ売れるといった思い込みは危険ですね。

■生産志向がハマっているケース

伝統工芸品など技術面の障壁が極めて高く需要は大いにあるけれども供給が追いついていないような市場についてはこの生産志向がハマってきます。

例えば、極めて趣味性の高い商品を取り扱ったりすると、このような生産志向の考えが行きてくるような市場に当たるケースもあります。

あなたや知り合いの趣味で、ニッチな良いものを提供している企業を思い浮かべてください。その人達はこの生産志向がハマる世界に生きているのかもしれませんよ。


初出:2011/09/14
更新:2025/06/07

生産管理
2025年6月7日

QCD(品質・コスト・納期) | 現状のまま全てを両立させよという命令は単なる精神論です

QCD_001
QCDとはQuality(品質)Cost(コスト) Delovery(納期)の頭文字をとったもので、生産の3条件とも言われます。つまりモノづくりには、もっと言うと仕事には、品質・コスト・納期が大切ですよという当たり前のことを言っている用語です。

これらのQCD3つとも大切ですが、これらすべてを同時に追求することは難しいことが現実です。たとえば、

1.品質を高めようとした場合
より精度の高い部品を用いることによって余分なコストがかかったり、慎重な作業を行うために完成まで時間がかかり納期長くなったりします。

2.コストを下げようとした場合
精度が若干劣るが許容範囲内の部品を用い、品質を許容範囲内で落とす。もしくは、工場の操業に余裕があるときに製造し納期は長くなります。

3.納期を早めようとした場合
こちらも許容範囲内で精度の低い機械を用いる、もしくは、コストをかけ時間外労働を行ってもらえば納期を早めることは可能です。

ただし、現実的には品質を下げるということは行われません。これは、QCDがこの順序で記述されることにも関係しています。ではなぜアルファベット順でCDQではいけないのでしょうか?

これはQすなわち品質が一番重要であるからです。これは、品質が低いものをいくら低コスト・短納期で作ったとしても、そのようなものは市場には受け入れられないからです。

また、仮に受け入れられる範囲の低品質のものを製造したとしても、

1.低品質であるが故のコストがかかる
歩留りが悪いため作り直しのコストがかかる、不良品に備え在庫を余分に抱えておく必要がある、検査工程に余分な資源を割く必要がある。

2.低品質であるが故の納期へ余裕を持つ必要がある
各工程の品質が不安定であると、必要数量を確実にそろえるために余裕を持った納期の設定が必要となる。

といったことが考えられます。

キャプチャ
  •  工夫の余地はあります
ただしこのトレードオフは『既存の経営資源・ノウハウ』で到達可能な範囲で生じています。経済学でいうところのフロンティアに近いような考え方です。

現在のまま品質やコスト納期などの要素のどれかを向上させようと思うと、トレードオフが発生します。

しかし新たな経営資源を導入し他場合(例えば非常に生産性の良い機械を導入するような場合)このQCD全てが改善するということもあり得ます


また経営支援を導入するのではなく、新たなノウハウに基づいて工程を簡略化するといったことが行われれば、コストや納期面で有利になります。

そしてコストや納期面で有利になった為生じた余剰経営資源を品質にふり向ければ、やはりQCD全てが改善するということもあり得ます。


実務面からの加筆:
QCDは原則論ですが、事業計画を作成する際には意識する必要があります。

特に製造業の方をご支援する際にはこのようなことをわざわざ言うことはないのですが、サービス業の方やその他の業種をご支援する際には一度目線合わせをしておくとよいです。

例えば、「良いものを早く安く提供したい」と考える社長は多いものですが、それらは一般的には両立せず、なにか新しい設備投資を行わないとできないといったことだけでも柔らかく伝え、理解してもらえれば、支援した甲斐があるというものです。

「すべてを両立できない中で、どのようなバランスで商品やサービスを設計するかが大事ですので、お客さんの声を聞いてみましょう」などとつなげていくと、良い支援につながっていくと思います。

社長は「うちは納期が早いことが魅力だと思うし、そうなるように心がけています」などとおっしゃっていても、実際にお客さんの声を聞いてみると、実は納期はそんなに重視していなく、品質の高さを魅力に感じていたといったことも起こるわけですから。(この場合、SWOT分析で自社の強みにあげるのは納期が早いではなく、品質が良いになります)

また、弱みを強みにしていくような商売もありえます。例えば、「職人の手仕事なので納期は遅くなります」というのは一般には弱みですが、それを訴求ポイントとしてより品質が良いものだと考えてもらうような売り方も存在します。

商売は自由なんですね。

・最後に
もちろん支援者側としては自分たちの身を守るためにも念頭に置いておく必要があります。特急対応を依頼された場合、コスト面か品質面が犠牲になるといったことを考えて断るか受けるかの選択をすることが重要です。

初出:2011/07/20
更新:2025/06/07


経営
2025年6月5日

アンゾフの成長ベクトル

アンゾフ成長ベクトル_001
アンゾフの成長ベクトルとはロシア生まれの経営学者、アンゾフ(Ansoff)が提唱した経営戦略上の意思決定の実用的枠組みです。今後の成長の方向性を分析・評価するために用います。

この成長ベクトルとは、製品と市場の二軸を取った表を作成し、成長戦略をそれぞれ①「市場浸透」②「市場開拓」③「製品開発」④「多角化」と分類して考えます。以下その4つの類型について簡単に説明していきます。

アンゾフ成長ベクトル

1.市場浸透戦略
現在の製品、現在の市場に対して他社との競争に勝利し売上増大や市場シェアの向上を目指す戦略です。一般顧客をロイヤルカスタマー化する事を目指す場合もあります。
用いる手段としては
 ・広告宣伝の強化
 ・価格の改定
 ・カスタマーリレーションシップ・マネジメント(CRM)の導入
等があります。

2.市場開拓戦略
現在の製品で新市場を開拓していく戦略です。新市場への投入の場合、しばしば新ブランドを立ち上げます。用いる手段としては
 ・国内市場から海外進出
 ・業務用から一般用への進出
等があります。
このまんがの例では、今まで販売していなかった付属中の職員へ同じ製品を売るということを言っています。

3.製品開発戦略
現在の市場に対して新製品を開発・販売する戦略です。用いる手段としては
 ・短いサイクルで新製品の投入
 ・製品のバージョンアップ
等があります。
このまんがの例では、同じターゲットに向けて海鮮サンドという新製品を開発すると言っています。

4.多角化戦略
新しい市場に新しい製品を提供していくという戦略です。例えば、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースです。用いる手段は様々なものが考えられます。

多角化戦略について詳しくは後日ご説明しますが、アンゾフは、多角化戦略の類型として以下のようなものがあると指摘しています。

すなわち、横に事業を広げるイメージの「水平型多角化戦略」、流通経路の川上や川下へ事業を広げる「垂直型多角化戦略」、技術、マーケティング分野について少なくとも既存の事業と片方が関係する方向へ進む、「集中型多角化戦略」、全く関係ない分野へ進む「集成型多角化戦略」です。

漠然と、成長を目指すと考えるよりも、このアンゾフの成長ベクトルといった考え方を用いると、考えが整理されますよね。

こちらもご参考に
経営戦略の実務的な構築方法

■実務面からの加筆:


中小企業の支援を行う際、この成長ベクトルはもちろん念頭に置きますが、実際に事業計画で効果的だと認められる(≒融資や補助金獲得に結びつく)ものは、

①の市場浸透戦略(現製品✕現市場)
②の市場開拓戦略(現製品✕新市場)
③の製品開発戦略(新製品✕現市場)

となります。いずれも既存の経営資源を土台としており、実現可能性が高いと判断しやすいものです。

■④の多角化について

一方④の多角化(新製品✕新市場)は原則おすすめしません。唐突な印象を与える事業計画は実現性や成功可能性が低いと判断されがちですし、実際に補助金等の採択は難しくなります。

仮に多角化を志向する場合は、その企業なりの必然性が必要です。

例えば、上の例から持ってくると、IT企業がスポーツクラブを運営するようなケースを上げていますが、

実は社長が大学の体育会の出身でコーチなどとのツテがある、トレーニング理論に精通しているとか、トレーニング支援アプリを開発している等

といった経営資源を活用できることが重要です。

■事業再構築補助金という補助金

少し前に事業再構築補助金といった補助金がありましたが、あの補助金は新規事業進出という多角化を求めて作られている補助金でした。

建設業がカフェをやりたいなど、唐突な印象を受ける事業で「補助金が取れないか?」といった相談を受けたものでしたが、その企業なりの必然性があるかどうかがとても重要でした。

必然性があれば、事業計画の作成支援はとてもスムーズに行きましたし、逆に必然性がない場合は相談の段階で「この計画で事業を行うことはオススメしません」とはっきりとお伝えしていました。


初出:2011/07/27
更新:2025/06/05

経営
2025年6月5日

シナジー

シナジー_001
シナジーとは異なる経営資源を組み合わせることによって1+1が2以上になる効果の事を言います。

このような効果は経営資源間の相乗効果によりもたらされます。このシナジーの源泉には販売チャネルや生産設備の転用、技術や人材など組織に蓄積された知識・知恵の活用などが考えられます。

例えば、新製品を発売する場合を考えてみます。一から販売チャネルを構築する、生産設備を用意する場合には相当の投資を行う必要があります。

しかし、この時に既存事業の販売チャネルや生産設備を用いることができれば、費用を低減することができます。

そして、このことにより一から事業を立ち上げる場合に比べてより大きな利益を得ることができます。

具体的には、店舗網をすでに持っている薬局が関連事業として介護用品を取り扱うようなケースが考えられます。

この場合、店舗網をそのまま利用できること、既存事業の顧客が介護用品事業の顧客になってくれる可能性があること、薬局事業で培った信頼性などのブランドを活用できることなど有利な材料がたくさん出てきます。

このシナジー効果は上記のとおり範囲の経済に非常に近い考え方であるという事ができると思います。

このまんがでは一つのパートで練習するよりも複数のパートで一緒に練習する方が効果が上がると言っています。


実務面からの加筆:
シナジー、相乗効果とも言いますが、限られた経営資源を最大限に活かすためのキーワードであり、事業計画を考える際には重要視して書いていくことが大切です。

特に補助金獲得を目的とする場合、「補助金で導入する新たな設備が既存のシナジーを生む」(相乗効果の強調)が鉄板のストーリーとなります。

■シナジーが生まれるとは限らない

とはいえ、シナジーは生まれるとは限らないという身も蓋もない現実も覚えておいてほしいです。

例えば、組織が連携するときはシナジーが発生するとほとんどのケースで言いますが、組織文化が違うとシナジーは生まれず、単に経営資源が重複して非効率を生むだけだったりします。(アナジーとか負のシナジーといった言葉も作られているぐらい、ありふれた事象です)

単なる寄せ集めからはシナジーは発生しにくいといったことは、なんとなく感じると思います。

■シナジーが生まれるような設計が重要

経営資源に余裕がない中小企業などでは、シナジーが発生するように設計することがとても重要です。そのためには、

・コストが発生する経営資源の共有(設備や人など)をうまく共有する
・売上拡大へ顧客基盤や商品への信頼感をうまく共有する
・組織全体をうまく統合する(特にインセンティブの設計をうまく行う)

など、多岐にわたって意識的に設計することが重要です。

もちろん、具体的な状況が異なる中で万能な正解はありません。そのため、このような「うまくやる」としか一般論ではかけないです。

しかし、、「どの経営資源を、どう組み合わせればシナジーが出るか?」という視点を持つことがとても重要なのです。

初出:2011/12/28
更新:2025/06/05

経営
2025年6月4日

短期経営計画

短期経営計画_001
短期経営計画とは、半年や一年くらいの比較的短期間を対象とした経営計画のことを言います。

比較的短期の計画ですので、長期経営計画中期経営計画の中身を具体的な数値に落とし込んだような計画となります。

例えば、中期経営計画でA地区の市場シェア一位を目指すという計画があったとします。

「目指せA地区市場シェア一位」と言われただけでは今年や今月、何をすればいいのかわかりませんよね?

でも、中期経営計画を一年単位の短期経営計画で「今年はA地区に一店舗出店し、さらに集中出店(ドミナント戦略)を行うために調査を行う」とされれば、具体的に何をすればいいかが分かりますよね?

このように、中・長期の経営計画で目指すべき姿を、短期経営計画で具体的な行動計画を決めていくような計画です。

そして、しばしば短期経営計画は予算計画といった形で決められます。

■短期経営計画を作ってみよう(事例:飲食業A社の場合)

ここまで短期経営計画の考え方を見てきましたが、実際にどのように作成するのか、具体例で見てみましょう。

■短期経営計画の位置づけ

まず位置づけを明確にします。例えば、

目的:中期経営計画に基づいて、今期の顧客基盤を強化する
期間:2025年4月から2026年3月
方針:「リピート率増大」による顧客数増大

といった感じで、なんの目標であるかを明確にします

■数値目標

売上高:1440万円(前年比10%増)
客単価:3000円(現状維持)
月間客数:400名
リピート率:60%(+5ポイント)

■行動施策

・販促
再来店を促すクーポン配布
地域イベントと連携し、周知を図る
・メニュー改善
旬のものを取り扱い、季節感を提供する
・運営
スタッフ研修による接遇力向上、接客品質の統一

このように、短期経営計画では「中長期の目標」を1年単位の行動と数値目標にブレイクダウンしていくことが重要です。



実務面からの加筆:
計画って社長の頭の中には存在していたりします。なので、コンサルを名乗る部外者が理想論を掲げた変な計画を持ち込むよりも、社長の思いをそのまま実行したほうがうまく行ったりすることも多くあります。

ただ、だからといって計画を見えるように書き出すことは無駄だと考えるのは早計です。

短期経営計画を見えるように書き出しておくことはとても有効なことなのです。


まず、手を動かして書き出すことで計画の中身がより深まります。

また、その日の気分に左右されてしまい、方針が徹底されないといったことも防ぐことができます。(どんな社長でも人間ですから)

そのため、仕事が忙しいとは思いますが、「経営計画なんて必要ない!」と思う社長さんこそ、ぜひ一度立ち止まってチラシの裏でもいいので書いてみてください。

きっと発見があって明日からの仕事に芯が通ることがわかると思います。


初出:2013/03/21
更新:2025/06/04

経営
2025年6月4日

中期経営計画

中期経営計画_001置換
中期経営計画とは3年から5年程度の中期計画であり、経営ビジョンを実現するための計画です。

この経営ビジョンとは企業があるべき姿を示しているので、現状とのギャップを中期経営計画を立てることによって認識することができるのです。

この中期経営計画は、一年単位の短期間では達成できないような目標を定めていきます。これは例えば、ROEや売上高などのように定量的な指標を設定する場合もありますし、定性的な事象について目標を立てることもあります。

一年では、出来ることは限られていますが3年から5年という期間ならばできることは増えていきます。例えば、工場や店舗で発生する減価償却費は一年では管理不能であるケースが多いですが、時間軸を変えて3年とか5年で考えると管理可能になる場合があります。(時間軸によって管理可能費と管理不能費は異なります。) 

このように、 少し長いスパンで企業のあるべき姿に近づいていくような計画を立てるのが中期経営計画です。これは、長期経営計画をもう少し短いスパンに書き直し、具体的で精度の高いものにしているという事ができます。(もっとも長期経営計画は作られないケースも多いのですが。)

このまんがでは、中期経営計画が先生から提示されたようでそれを元に、具体的な日々の計画に落とし込もうと言っています。

関連用語
短期経営計画

実務面からの加筆:
この中期経営計画は実際に立てる計画としては一番長い種類のものとなります。長期経営計画まで行くと、不確実性が高すぎて完全に絵に描いた餅になるケースが多いです。

それに対して中期経営計画であれば、なんとか見通しが立つ範囲で作ることとなりますので実際に作ることが多い計画だと言えます。

特に、補助金などで求められる3年から5年の計画は中期経営計画に位置づけられるような長さですので、売上や費用などを根拠を持って積み上げていくことができるのです。


初出:2012/07/11
更新:2025/06/04

経営
2025年6月3日

経営理念

経営理念_001
経営理念とは、企業という組織自体の存在する意義・目的を明文化したものです。簡単に言うと、「この会社は何のために存在するのか」を言葉にしたものです。

この企業理念は、企業の価値観を提供するもので非常に重要なものです。そして、意思決定を行う際に拠り所になる価値観であるということができます。

内部的には、経営理念が明確に示されていると目標が明確となりますし、働く人たちの目標も明確になって、共有されやすいといったメリットがあります。

例えば、「なんだかよく分からないけど、とにかく稼いで来る事が大切」な会社よりも、「お客様に価値を提供することが自社の目的である」と言われた方が、従業員がその経営理理念に共感する限り、従業員一人ひとりのモチベーションも高まるというものです。

また、外部的には、経営理念は株主や顧客等の様々なステークホルダーに対し自社の存在意義を伝えるといった大切な役割があります。

このような役割があるため、経営理念はその企業のアイデンティティであるという事ができると思います。

しかし、こういった大切な役割を持っているため、経営理念を定める場合ある程度普遍的で抽象的な表現を取らざる得なくなります。

そのため日常の業務を行うためには、この経営理念から導かれたビジョンや戦略・経営計画を用いる必要があります。

このまんがでは、学食で働いている男子生徒が何のために働いているかを見失ってしまったようです。先生に聞いたところ、経営理念を改めて教えてくれたようです。

この男子生徒は、学食の経営理念が心に響いたらしくやる気を取り戻しています。経営理念には、このような効果もあるんですね。

実務面からの加筆:
こんなふうにさらりと書いていますが、経営理念はめちゃくちゃ重要です。これは言い換えれば、組織はどうしたいの?どうなりたいの?という究極的な質問だからです。

また、「うちは経営理念なんか作っていないよ、小さな会社だからね」っておっしゃる社長さんに対しては、「社長はどうなりたいんですか?」ということを問うと、結構色々話してくれたりします。

実は言葉に落とし込んでいないだけで、どのような企業にも思いはこもっているのだと感じることが多くあります。

■どうして経営理念が大事なの?

すごく抽象的で漠然とした話になってしまいますが、社長や企業の価値観に合わない事業って勢いというか推進力がが出ないのです。

補助金を獲得できるからと言って始めたあの事業。どうしてうまく行っていないかというと、心にそれをやりたいと思う熱いものがないから。

そして、経営理念に沿った事業って、この熱い思いが生まれてくるから、困難にぶつかってもそれを乗り越える力が湧いてくるのです。

経営理念は、企業の羅針盤であり、芯です。迷ったとき、ぶれそうなとき、そこに立ち返れるような言葉になっているかどうかが大切です。

初出:2012/07/02
更新:2025/06/03


経営
2025年6月3日

意思決定の階層構造 | 日々行う意思決定ですが組織内の役割の違いで実施する意思決定にも違いが出ます

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組織での意思決定は、その組織に所属している人は皆行っています。といっても誰でも同じレベルの意思決定ができるわけではありません。

その意思決定を次の3つに分類したのがアンゾフです。

1.業務的意思決定
日常業務の効率的遂行を果たすために行う意思決定です。主にロワーマネジメントが行う意思決定です。

2.管理的意思決定
 仕事の流れや、組織形態等組織の構造に関する意思決定です。主にミドルマネジメントが行う意思決定です。

3.戦略的意思決定
 企業目標の決定やどんな事業に進出するかなどに関する意思決定です、主にトップマネジメントが行う意思決定です。

このマンガでは、
1.パートリーダーはロワーマネジメントとして、日々のパート練習の計画を立てる事でパートの技術の底上げを図るための意思決定をします。

2.吹奏楽部部長はミドルマネジメントとして組織を編成し目標を与えて実行するための意思決定をします。

3.顧問はトップマネジメントとしてどのような演奏会を開くかなどの意思決定をします。

曲目や演奏会の会場などがいまいちであった場合、どれだけ効率的に練習を行っても演奏会を成功させる事は難しくなってしまいます。その意味で戦略的意思決定が非常に重要となってきます。

キャプチャ


  • その意思決定は定型的か非定型か



意思決定について階層構造があることを見てきました。

さらに推し進めてその意思決定がどのような性格を持つのかについても触れていきたいと思います。

まず業務的意思決定はどちらかと言うと定型的な意思決定になります。

日々の業務で困ったことがあった時にどのように解決するかそういったことを考えていくような意思決定です。

これに対して戦略的意思決定は非定型的な意思決定となります。

企業を取り巻く環境が変化したり、企業内部の経営資源が変化したりすることがあります。

このような場合意思決定の前提条件が変わってしまうため、通常の意思決定プロセスではなく様々な経営資源を投入できる階層の人間が意思決定する必要があります。

つまり経営のトップ層がこの種の意思決定をする必要があるということです。

なお、管理的意思決定はこの2つの意思決定のあいだの性格を併せ持ちます。


実務面からの加筆:
何かを提案するときは、誰と話しているの?と問うことが大切です。ここで見た通り意思決定には階層構造があるので、いわゆる「決裁権」(決める権利)のある人に話さないと大抵のことは徒労に終わります。

逆に、決められるけど現場レベルのことを長々と管理者に話すのも相手の時間を奪いますので、その人が持つ権限に過不足のない提案が重要となります。

なお、実際の職位と組織内での権勢は別の概念になりますので、権限だけ見てキーパーソンを外して提案すると「私は聞いていない」という日本組織的な面倒が発生するので注意が必要ですよ。


初出:不明(初期に作った記事なので結構古いはず)
更新:2019/11/10
更新:2025/06/03

財務・会計
2025年6月3日

変動費

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変動費とは操業度の変化に伴って比例的に変化する費用の事を言います。

例えば、たこ焼きを作っているお店があるとします。このお店では、タコや小麦粉などの材料費は売上の増減に伴って変化しますよね?(たくさん売れれば、たくさん材料が必要になって材料費も増えるという関係です。)

また、売り上げが増えれば電気代やガス代、水道代といった水道光熱費も増加します。

このように売上高の変化に伴って比例的に変化する費用を変動費と言います。

この反対に操業度が変化しても変わらない費用というものもあります。例えば、お店を借りていれば家賃が発生しますし、お金を借りていれば支払利息が発生します。これらの費用はたとえ売り上げがゼロでも変わらず発生しますよね?こちらは固定費と言います。

このように、発生する費用は大きく分けると変動費と固定費に分けることができます。そして、このように分けておくと管理会計目的で会計データを用いる際に役に立つのです。(貢献利益率を使って損益分岐点を求めること等ができるようになります。)

このまんがでは、1コマ目の女の子が女子力アップの費用は操業度の増減によって増えないから固定費だと言っています。変動費は、操業度の増減によって増減する費用、固定費は増減しない費用なので、この理解で間違ってないと思うのですが、なんとなく釈然としませんよね。

この、女子力アップ費用は自らの意思で増減させることができる管理可能費であるので、固定費という事に違和感があるかもしれません。しかし、操業度の増減によって増減しないので固定費という事ができるのです。

逆に、デートの回数によって増減するデート代は操業度の増減によって増減する費用なので変動費です。もっとも、この女の子の場合、デート代は男子持ちみたいなので、変動費は限りなく低いようです。 

実務面からの加筆:
変動費とはざっくり言えば売上が上がると増える費用です。これが事業計画に盛り込めると一気に真実味が出てきます。

例えば、以下の事業計画だったらどっちのほうが真実味があるでしょうか?

A 売上が100万円増えます

B 売上が100万円増えますが、変動費が30万円かかるので70万円利益が増えます。

これはもちろんBですよね。

この変動費の考え方は難しそうなことを言うコンサルタントが使う『管理会計』の基礎概念になりますので、「100円の売上を増やすためにどのくらい費用が増える?」といったといを持つと良いですよ。


初出:2025/06/03
更新:2012/05/30


財務・会計
2025年6月2日

減価償却

減価償却_001
減価償却とは取得した固定資産を毎期一定の費用を計上して各期に配分する事を言います。

建物や車などは永遠に使えるわけではなく、使い続けるうちに少しずつ劣化していきます。築30年の建物、10年乗っている車などは新築の建物や新車に比べてだいぶガタがきているイメージになると思います。

このことは使い続けると少しずつすり減っていくと言い換えてもいいと思います。そして、この少しずつすり減るイメージを帳簿の価格にも反映させましょうというのが減価償却の考え方となっています。たとえば100万円で買った新車が10年後いくらくらいになっているでしょうか?100万円のままとは直感的に言いにくいですよね。

それでは、帳簿価格を何年もかけて減らしていくという事はどのようなことになるかを考えてみたいと思います。

1.費用配分
会計の目的の一つとしてその期間の経営成績を算出する事があります。これは損益計算書(P/L)で表現されます。

それでは先ほど出てきた10年使える車にかかった費用はいつの期間の費用にした方がいいでしょうか?買った時に一気に計上する方がよいでしょうか?

10年間使えるという事は10年間の収益獲得に貢献するという事です。それならば、車の購入費用はある期の費用ではなく10年間に配分して費用化することが合理的ですよね。このように 収益に貢献している期間に費用を配分するという機能が減価償却にはあります。

2.資産評価
ある時点での企業の財政状況を表示する事も会計の目的です。これは貸借対照表(B/S)で表現されます。

先ほどの10年間使える車であっても、ある程度使った車を新車と同じ額では表現できないですよね。減価償却を毎期行うことによって毎期少しずつ固定資産の価値がすり減っていくことを表現することが可能となります。減価償却を行うことで例えば、5年後にはすり減った部分を控除した残りの部分が貸借対照表に記載される事となります。

3.資金回収
減価償却費という費用は現金が出ていく費用ではありません。(現金は車を買った時に出て行っています。)

でも、費用としては計上されています。すると、減価償却費の分は現金として回収されていることになります。減価償却にはこのような側面もあります。

このまんがでは学食の先生が設備投資するかどうかをずっと考えています。最終的には設備投資をすることを決めたようですが、今後は減価償却費がかかるからもっと稼がなきゃならないと言っています。

それに対して生徒さんはなぜ費用が増えるのかいまいち腑に落ちていないようです。

答えは、今回のテーマである減価償却費が毎期かかるからという事ですよね。


実務面からの加筆:
減価償却って、ルールで決まっているっぽいんですが、『あえて』損金になるよりもたくさん計上するケースや、全く計上しないで利益を増やすようなケースもあります。

なので、減価償却を止めてしまって表面上利益が出ているかのように見せている財務諸表もあるので注意が必要です。

(1期分の財務諸表だけ渡されてもわかりにくいですし、ずーとそのような処理をしている場合は、数期分渡されても読み取れないケースもあります。総勘定元帳でも入手できれば一目瞭然ですが、支援者側でも入手しにくいのに、与信判断などで入手することはほぼ不可能です。)

ただ、場数を踏むと、固定資産の額などで不自然さを感じるようになったりします。

・そんな財務諸表に出会ったらどうするの?

その場合は減価償却をルールに則って実施していた場合と仮定し、計算し直して現在の財務諸表を見ることも求められたりします。

財務情報は一見すると絶対の真実のように思われがちですが、あくまで相対的な真実でしかないというところに目を向けると、より深く事業を理解することができますよ。


初出:2011/12/25
更新:2025/06/02

店舗管理
2025年6月2日

ABC分析

ABC分析_001
ABC分析とは在庫管理や販売管理などで大量の管理対象の物品を管理するにあたり、何らかの観点でグループ化してそのグループ単位の中で重要なものを重点的に管理する手法です。

例えば、在庫品を売上高順に並べて累積売上高が80%くらいまでのものをAグループ、90%くらいまでのものをBグループ、これらのグループに入らないものをCグループとして管理する手法を変えることが考えられます。もっとも、このグループを何%でわけるかは扱う物品によって変えてよいと言われています。

このように分類してみると全体の80%程度の売り上げをしているAグループは品目的には少数でしかないことが多く、この少数の重要な品目を重点的に管理すると効率的であるとするパレートの法則に従った考え方です。

下の図のようにパレート図を作成してみると、わずかな品目で大きな割合の売上を上げているケースが多いということがわかります。(パレートの法則を応用しているんですね。)

パレート

このまんがでは、売れ行きの非常に良いおにぎりがAグループであると言えます。そして、このおにぎりを重点的に管理すると言っています。

関連用語
定量発注方式
定期発注方式
簡易発注方式
ダブルビン方式 
デシル分析

実務面からの加筆:
色んな本を読むとこのABC分析は重要視されているのですが、実際にはABC分析どころではなく、なんの記録も取っていない事業者の方も多くいらっしゃいます。

分析が難しければ、まずは記録を取るところから始めるとよいです。

記録を取らないと、本当は売れていなくても印象に残った商品を沢山売れていると誤認してしまうことがあります。

難しいことをしたくないなら、まずはコンビニでノートを買ってきて、今日売れた商品を正の字でいいので記録してみましょう。

その記録が儲かるあなたの商売への第一歩だとkeieimangaは考えます。

初出:2011/11/30
更新:2025/06/02

マーケティング
2025年6月2日

1次データ

1次データ_001
1次データとは、何らかの目的に沿って独自に調査したデータの事を言います。

例えば、○○町の商圏について調べたいと考えたとき、アンケート調査を実施するとか、交通量を直接調査するなど、「○○町の商圏について調べたい」という目的に沿って調べたデータのことを言うのです。

このような1次データは、自社が主体的に調査の方法や対象を選択できるので、目的に沿ったデータを入手することができるというのが強みです。

上の例では、直接○○町の商圏の調査をするために様々な調査をしますので、調査方法が目的に沿っていれば非常に有益な情報を入手できるのです。

しかし、既にある2次データを利用することに比べ、直接調査するがゆえに、費用や時間がかかるといった問題もあります。


実務面からの加筆:
中小企業の中でも小規模事業者に近い規模の企業は1次データの取得にあんまりこだわらなくても良いと考えます。

アンケート調査等は設計がとても難しく、一定程度の専門的な知見が必要です。

それよりも、記事でリンクを張っています2次データを集めて「にらめっこ」する方が現実的です。

例えば「Jstat map」などを使えば、お店の周囲にどの年齢層の人が何世帯ぐらい住んでいるのか、また、お店からの移動時間(直線距離じゃなくて時間です!)で何世帯住んでいるかがわかったりします。

keieimangaとしては、まずはこうした公的機関が作った二次データを活用するところから始めることをおすすめします。

初出:2013/03/27
更新:2025/06/02

経営
2025年6月2日

DPO(ディスカウントペイオフ) | 借りたお金を返さないのです。そう、DPOならね

ディスカウントペイオフ
DPO(ディスカウントペイオフ)とは金融機関等が持っている債権の取り立てが困難であるような場合に、金融機関が元金よりも低い金額で第三者に売却をし、その後、買い取ってもらった債務者が第三者からその債権を買い取るなどして、残りの債権をあきらめてもらうといったモノです。

なんだか、債務者(借りている人)だけが得をしてそうな一連の取引ですね。しかし、このような方法を採ることによってみんながそれぞれ少しずつ得るものがあったりします。

誰かが損をするだけなら、あまり継続的に行われたりしませんからね。
  • 債務者(借り手)のメリット
さて、債務者のメリットは非常に分かりやすいと思います。やってもらう事は実質的に借金の棒引きですからね。

つまり借りていたお金を返さなくても良くなるわけですから、仮に本業が十分な利益を上げていれば、一気に事業の再建も見えてくるというわけです。

もっとも、棒引きされた分の債務はそのまま利益となってしまうので、十分な現金を持っていたり、累積赤字を抱えていたりしないと、今度は税金の支払いで大変な事になってしまいます。利益と現金の出入りは違いますからこういった点には注意が必要です。(参考:黒字倒産) 
それでは、これらの第三者はどうでしょうか?こういった第三者は金融機関から債権を安い金額で譲渡してもらい、それを少しでも上回る金額が回収できれば利益になります。

例えば、金融機関から1億円の債権を1,000万円で買い取って、債権者から1,200万円回収できればそれだけで利益を得ています。

この例だと200万円分の利益を得ていますね。そして、この場合、1億円の債権の残りの部分にこだわらなくても十分な利益を得ていると判断できれば、残りの部分については放棄してしまっても良くなります。

というか、もともとの債権全額を回収しようとすると、非常な困難が予想されるので(問題なく回収できるなら、金融機関も1億円の債権を1,000万円で売ったりしませんからね)むしろ全額を回収することを考えない方が合理的なのかもしれません。
  • 債権者(貸し手)のメリット
さて、このような制度の説明をしていて、一番わかりにくいのは貸し手側のメリットです。「結局、貸していたお金の回収を放棄するんだよね?だったら損なのでは?」と思われる方も多いと思います。

しかし、しっかりと債権者側にもメリットがあるのです。分かりにくいですが、債権を放棄できるという事自体がメリットになってきます。

これは、金融機関はそう簡単には債権放棄をするわけにはいかないという点を考えていただくことから始まります。

というのは、隣のお店からは全額回収したにもかかわらず、あなたのお店の債権だけ放棄するというわけには基本的にはいかないですよね?さらに、金融機関にも株主がいますので、株主の利益に反するような行為を勝手に行ったとなると、経営陣に説明責任が出てきてしまいます。

このように、金融機関が債権を放棄しようとすると色々と大変なのです。

しかし、金融機関が債権を放棄したいと考えるような状況というのもあるのです。例えば、無理に回収した場合、お金を貸している企業が倒産してしまうとしたらどうでしょうか?この企業は本業でしっかりと利益を上げているので、債権のうちの一部を放棄できれば立ち直ることが見込めるといった条件も付けてみます。

このような場合では、例えば債権のうち一部を放棄して企業を再生した上で残金を取り立てる方が合理的ですよね。

また、どうしても取れないような債権をいつまでも持っておくのではなく、損金扱いにして税金を減らしたいと考えるような場合もあります。

債権の放棄は必ずしも金融機関にとって不利であるとは言えないのです。その為、ディスカウントペイオフのような事を行うような場合、当事者にはそれなりの思惑があり、それなりの利益を引き出すことになるのです。


実務面からの加筆:
これは何を意味するかというと、企業が窮境に陥っても諦めるだけが選択肢ではないということです。
社長が諦めなければ道が拓ける可能性はゼロではないので、まずは一人で悩まずに地域の経営支援機関(商工会や商工会議所)や中小企業診断士、、中小企業活性化協議会などに相談してみてください。


初出:2015/02/06
更新:2025/06/02
経済学
2025年6月2日

Jカーブ効果

Jカーブ効果_001
2025年現在、円安や為替変動が中小企業経営に大きな影響を与えています。特に、原材料費の上昇や輸出入のバランス変化に対し、対応を迫られる場面も多くなっています。

こうした為替の動きが、なぜ貿易収支に直ちに影響しないのか。それを理解するうえで「Jカーブ効果」という概念がヒントになります。


Jカーブ効果とは、自国通貨の上昇や下落局面において、貿易収支が最終的に想定される方向と、短期的に逆に動くことを言います。
  • 長期的には
例えば、自国通貨が下落する局面では、国際的な競争力が向上します。(円安になると、今まで1ドルで販売していたものが1ドル以下で販売できるイメージです。つまり安く販売できるようになるという事ですね。)

また、自国通貨が安くなるわけですから、外国から購入するモノは高くなります。

安くなれば需要が喚起され、高くなれば需要が抑制されるという極めて自然な流れから、自国通貨の下落は輸出の増加と輸入の減少を招くと考えられます。

このように、輸出が増えて輸入が減るわけですから、長期的にみると貿易収支は改善します。
  • 短期的には
しかし、短期的には逆に貿易収支が悪化するというのがこのJカーブ効果です。

さて、なぜ短期的に逆の動きをするのでしょうか?

まず、為替相場下落しても短期的には輸入の需要は変わりません。例えば、石油の値段が上がったからと言っても、スグに石油を使わないというわけにはいきませんよね?(長期的には需要は抑制されます。)

この場合、為替相場は下落しているので、輸入に必要なお金は多くなります。(数量が減らずに単価が上がるわけですから、輸入金額が増加するのです。)

逆に、輸出する数量も短期的にはあまり変わりません。

この場合も、為替相場は下落しているので、輸出によって受け取るお金は少なくなります。(数量が変わらず、単価が下がるわけですから、輸出金額は減少します)

この結果、短期的には自国通貨の下落から想定される貿易収支の改善とは逆に動くのです。

Jカーブ

この図のように、自国通貨の下落が短期的に貿易収支を悪化させ、長期的には通常考えられる通りに貿易収支を改善させるのがJカーブ効果のイメージです。

グラフを描くと、ちょうどアルファベットの『J』の字に似ていることから Jカーブ効果と呼ばれるのです。

初出:2013/02/21  
更新:2025/06/02

キャンペーン
2025年6月1日

「まんがで気軽に経営用語」再始動します。― 現場の視点で、経営の言葉をもう一度見つめ直す ―

辞典を書いた中の人が、noteではじめる“経営の実感”。
こんにちは。
「まんがで気軽に経営用語」の中の人のkeieimangaです。

このサイトを立ち上げたのは、2011年のことでした。
「難しい経営の言葉を、まんがで・気軽に・わかりやすく」。
そんな思いで、日々記事を書き続け、気づけば1,200記事を超える用語集となりました。

ありがたいことに、多くの方にアクセスしていただき、最盛期には月10万PVというちょっとびっくりするぐらいのアクセス数も経験しました。


◆ それでも、手を止めていた理由
更新が止まっていたここ数年、世の中では大きな変化が起こりました。
新型コロナウイルスの流行、AIの進化、検索エンジンの変化、そして、あらゆるコンテンツの過飽和。
特にAIの進化はとてつもない衝撃で、「もはや以前の経営環境ではない」と衝撃を強く受けたことを思い出します。

また、
「今さら辞典なんて読まれるのか?」
「もう意味は検索すればすぐにわかるのでは?」
「というか、AIに教えてもらえばいいよね?」

といった思いもあり、筆を置いていた時期がありました。

◆ それでも戻ってきた理由
私は今も中小企業支援の現場に立ち続けています。

日々、経営者と対話し、補助金や事業計画、制度設計の支援を行う中で「経営の言葉は、生きている」という実感を、何度も味わってきました。

たとえば「KPI」や「SWOT分析」といった言葉が、現場では時に役立ち、時に足かせになる瞬間も見てきました。

「その言葉は、『誰の言葉か』で効力が変わってしまう」

という現象もたびたび目にしました。私達支援者の口から出た『KPI』と会社の役職者の口から出たそれ、経営者から出たそれ。

言葉自体は同じですが、その場の力学に強く影響されているのです。

だからこそ、あらためてこのサイトをリブートし、言葉の“定義”だけでなく、“現場でのリアルな意味合い”まで掘り下げていきたいと思います。

また、補助金バブルと揶揄されたぐらい、中小企業向けに非常に多くの補助制度が創設され、私も人並みにその支援にあたってきましたが、改めて経営の言葉に向き合うことが重要なんだなと感じることも多くありました。

例えば、数千万円に及ぶ規模の補助金などでも、私達のような支援者と二人三脚で取り組めば獲得することは容易かもしれません。また、補助金を獲得することができるから実施するといったスタンスの事業計画もたくさん複数見て来ました。

しかし、なぜそれをやるかといった経営のコアとなる価値観等を明確にしておかないと会社自体が変な方向に行く危険もあるのです。

そのような危険かもしれない事業計画を作成する部品が経営用語です。この言葉を丁寧に扱い、直接関与できないたくさんの中小企業の元気につながればと考えています。

◆ これからの方針
今後は、

・過去の記事を「今」の視点でリライト

・現場の支援者としての“実感”を補足

・noteとの連携で、用語の裏側にあるストーリーを展開

といった形で、サイトを再始動していきます。

当時の記事を読んでくださった皆さんも、今回初めて訪れてくださった方も、どうか気軽に読んでいただければ幸いです。

◆ 最後に
言葉は、時代とともに形を変え、意味も変化していきます。明確に定義づけられてきているはずの経営用語ですら、環境が変わればその意味するところは徐々に変改していきます。

けれど、「伝えること」「考えること」の価値は変わりません。

これからも、地に足のついた視点で、経営の言葉と向き合っていきます。

どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
マーケティング
2019年11月12日

USP | 単なるセールスポイントや差別化でなく、独自性が重要です

USP_001
USP(Unique Selling Proposition)とは、独自の売りもの、競合と比較して自社の独自の売りものであり、自社サービスを顧客が選ぶための回答といった考え方です。

ユニークすなわち独自のものとまで言っているので非常に強いコンセプトです。
  • キャッチコピーや単なる差別化要因とは違います

さて似たような考え方で差別化要因というものが挙げられます。

自社の商品を競合他社と比較しながらわざわざ選ぶということです。そのため、差別化要因という似たような考え方であると思うかも知れません。

また広告上の売り文句であると考え、キャッチフレーズと混同する可能性もあります。

しかし USP はこの差別化要因やキャッチフレーズよりももっと強い考え方です。

そもそもユニークという言葉には唯一のという意味がありますので、非常にとんがった考え方となります。

  • USPの3つの要素
この考え方を端的に示す3つの要素があります。

・顧客への提案である事
・独自の提案である事
・強力な提案である事

この家の独自の提案であるということが重要です。

この独自のというのは競合他社が同様の提案をすることができないといった意味を持っています。このように非常に強い考え方なのです。

  • 独自の提案とは何か

さてこの独自の提案とはお客様があなたから購入する理由となります。

これは単に高くても買いたいと思わせるレベルでは足りず、この商品だからこのサービスだから買いたいと考えさせる水準まで高める必要があります。

例えば発売当初の iPhone などはそういったものを備えていたのかもしれません。

  • USPは見いだせるのか?
さて中小企業の経営実務において USPを維持することは可能でしょうか。

答えはもちろん可能です。

この USPは企業の活動において全ての段階で見出すことが可能です。

原料の調達から加工、マーケティング営業販売といった一連の行動において競合他社が真似をできない価値を提供できれば USPとなりえます。

例えば、○○市で採れた完全無農薬で育てた野菜だけを使い、アレルギーを持った人でも美味しく食べられる料理を提供するお店などは非常にユニークな存在です。

この場合原材料の調達と野菜だけで美味しいものを作るという加工のノウハウに独自性があります。

  • 実務的にはどうか

ただし、実務的には無理にこの USB を追求することはないと考えます。

なぜならば、模倣が困難であるというユニークさと、市場を無視した自己満足の開発は紙一重だからです。

例えば革新的なサービス業を何かやろうと考えた時に、色々なアイディアは出てくると思います。

しかしそのアイデアが現在競合他社がどこもやっていないということは、アイデアはユニークだからではなく誰もやらないキワモノサービスであるからかもしれません。

もちろん事業を作っていく中でユニークさを見出せるならばそれに越したことありませんか、ユニークさがないからといって優れた事業ではないということではありません。

マーケティング
2019年11月5日

ライフタイムバリュー(lifetime value:LTV) | 顧客生涯価値を高めることが商売のコツです

ライフタイムバリュー_001
ライフタイムバリュー(lifetime value:LTV)とは顧客生涯価値と訳され、顧客がその取引を始めてから終わるまでの期間を通じてもたらす利益の事です。

自社の製品やサービスに対し、顧客が高いロイヤルティを感じれば、長期にわたって(時には文字通り生涯にわたって)リピート購入が期待できます。
 
何度もリピート購入して頂ければ、企業にとって非常に多額の収益をもたらすことにつながります。
 
  • 長く顧客であり続けてもらうと利益が向上します
 
さてどうしてこのLTVが大切なのでしょうか。単にリピート購入を目的としている方でしょうか。
 
それは新規顧客の獲得が難しいからです。 難しいだけではなく多額の費用がかかってしまいます。
 
例えば、新規の顧客と取引を開始するためには、広告宣伝に費用をかけたりといろいろな費用が発生しますよね。
 
しかし、既存のお客さんならばそういった費用は最小限に抑えることが可能となります。
 
そのことから新規顧客を獲得するよりも、既存顧客に反復して購入してもらう方が利益につながりやすいという考え方があります。

読者の皆さんも、好きなお店に通ったり、好きなブランドの商品をいつも買っていたりしませんか?
 
このように、一旦ファンになってくれたお客様は何度も何度も反復して購入してくれるという考え方がライフタイムバリュー(lifetime value:LTV)の考え方です。
 
一説によると1:5の法則と呼ばれるものがあり、新しいお客様を獲得するコストはお客様をつなぎとめておくコストの5倍かかるという法則があります。
 
このような法則を鑑みると、やみくもに新規顧客を追いかけるという方法は経済的にあまり合理的な行動ではありません。
 
そして、この考え方に沿うならば、個々の取引での収益を最大化するのではなく、顧客と長期的にみて良い関係を築くことが重視されます。まじめにコツコツと顧客との関係を築くというイメージですね。
 
このまんがではメガネ君が雨の日も風の日も、日差しの強い日も学食に通っています。このように、常連さんをしっかりと作っていくことが大切なのです。

  • 具体的にライフタイムバリューをどのように活用するか
さてこのLTVという考え方を具体的にどのように活用するのが良いのでしょうか?

まず考えられるのは、顧客獲得にかける費用の目安を得るために活用することです。

例えば、LTVが5000円と見込まれるのであれば、顧客獲得にかける費用は5000円以下でないと最終的には赤字になってしまいます。

一人の顧客からもたらされる利益が、5000円であると見込まれるならば、その顧客を獲得するための費用は5000円以下でなければならないという考え方です。

と、このように考えればそんなに特殊な考え方ではないと理解していただけると思います。

  • ライフタイムバリュー(LTV)はどうやって計算するの?

このライフタイムバリューは顧客が取引を始めてから終わるまでの期間を通じてもたらす利益という定義です。

そこで、次のような計算式を考えることができます。

LTV=顧客からもたらされる収益×購買頻度(年何回買ってくれるか)×顧客の継続年数

ここで、顧客からもたらされる収益とはいろんな考え方がありますか、 単純に粗利益で考えていきます。

すると

LTV=(購入単価×粗利益)×購買頻度×顧客の継続年数

となります。

  • 具体例
では具体的に LTVを計算してみたいと思います。

粗利益率30%で平均購入単価が1000円の釣具屋さんのネットショップを考えて見ます。

このお店では、一度顧客になるとおおむね年4回リピート購入をしてくれる傾向があります。

また一人のお客様は、大体5年間お客様で続けてくれます。

このことからライフタイムバリューを計算すると

LTV=(1,000×30%)×4回×5年=6,000円

となります。

このようなケースで、一人の顧客獲得のために6000円以上の広報費をかけてしまえば赤字になるということが明確になります。

最も、このライフタイムバリューという考え方は長期にわたっての考え方になります。 そのためLTVがプラスだからといって短期的な費用をかけすぎてしまうと、資金繰りの面で問題が発生してしまいます。


onnanoko_bustup
ライフタイムバリューと広報費を比較してプラスになるなら強気でどんどん広報費を掛けられるね。

onnanoko_bustup
って、同業の人がマーケティングの本を読んで学んだらしいのよ。

neko_akire
たしかに、そんな風に思えますけど、本当ですか?

onnanoko_bustup
で、そのお店のお客様はLTVが5万円なので広報費に3万円掛けて頑張ってお客様を確保したのよね。

neko
だったら、たくさん儲かったんですか?あ、でも将来の100円と今日の100円は価値が違うって考え方もあるし…

onnanoko_bustup_2
ううん、そんな複雑なことを考えなくても結果良くなかったの。短期的に広報費を掛けすぎて資金ショートをしてしまったのよね。

マーケティング
2019年11月4日

プライスポイント | 売れ筋の価格ラインをプライスポイントと言うのです

プライスポイント
プライスポイントとは最も売れているプライスラインの事を言います。英語ではprice pointと表記されます。

さて、価格帯の幅はプライスゾーンといい、その中で一定の価格をプライスラインと言います。

これらの関係を図で示すと
プライス説明

といった感じです。

さて、この4本のプライスラインの中で、下から二番目の価格帯が一番売れるとすると、その価格帯をプライスポイントというのです。

簡単に言うと、売れ筋の価格帯といったイメージの言葉ですね。

  • プライスポイントを明確にコントロールする事が大切です

この説明からはプライスポイントが事後的に決まるような印象を受けると思います 。


プライスラインの中で一番の売れ筋がプライスポイントということですから、結果として一番売れたプライスラインがプライスポイントとなるといった印象を受けます。


プライスポイントは自動的に決めるものではなく、 戦略的に決めていく必要があります。


もっと言えば、 売れ筋としたいプライスラインに対して集中的に品揃えをする事で、意図的にプライスポイントを決めていくことができるのです。


 そしてプライスポイントを決めた後に、その上下のプライスラインに商品を配置していくのです。


  • なぜプライスポイントを明確にする必要があるか


お店に買い物に行く時には、大抵の場合予算が決まっていると考えられます。


そしてその予算に基づいて、どこのお店に買いに行くかを決めるというのが消費者の考え方となります。


このような消費者の考え方があるので、プライスポイントを明確にしておいてうちのお店はだいたいこれぐらいの商品を取り扱っていますよというメッセージを発信する必要があるのです。


大体いくらぐらいかかるのかわからないようなお店には、怖くてなかなか行けないと思います。


このようなことを避けるためにプライスポイントを明確にしておく必要があるのです。


そしてこのプライスポイントを明確にすることを徹底しているような業態も存在します。例えば1プライスで品揃えをしているお店や、2 PRICEで品揃えをしているお店などは、 皆さんも思い浮かべることができるのではないでしょうか。


こいたお店には、いくらの予算で買い物をすればいいのかが明確になりますので目的があれば行きやすいと思います。




neko
ウチの売れ筋価格っていくらなんだっけ?

onnanoko_bustup
ウチは980円よ。980円で買い物できるような商品を意図的にたくさん品揃えしているわ。

neko_akire
でも1,480円の商品もあったような?

onnanoko_bustup
そうよ、一番売りたい額の、プライスポイントは980円。後は、1,480円と580円のプライスラインを基本にしているわ。

neko
これならお客様がいくら持ってウチに来ればいいかが明確だからいいですね♪

onnanoko_bustup
お客様がお買い物しやすいお店を作るのには、価格戦略も重要なのよ。


関連用語
アイテム
SKU
プライスレンジ
マーケティング
2019年3月11日

ワンストップサービス | 一カ所で必要な物が揃うのです

ワンストップサービス_001
ワンストップサービスとは、いくつかの分野のサービスを一回で済ますことができる状態を言います。文字通り、ワンストップ(一回止まるだけ)で全部完了するイメージです。

一つの事業者が一カ所で様々なサービスを提供するといったイメージですね。
 

■ワンストップサービスでお客様を囲い込むというメリット

このような、利便性を強調することによってお客様を囲い込むような効果が期待できます。これは、顧客側にとっては便利になるというメリットがあります。

そして、顧客側が便利になるということは、企業側にとっては顧客の囲い込みができるといった事がいえます。

例えば、コンビニに行って、お金を銀行からおろし、住民票を取って、夕飯の買い物もすると言うように、コンビニという場所に行くだけで必要なものやサービス、手続きを全て行えるような事をワンストップサービスと言います。

このような場合、消費者にとってはコンビニに行くだけで必要な事がほとんど揃うので、コンビニにいく動機が生まれるのです。

また、一つの金融機関で、保険も、預金も、投資信託もすべて販売しているような場合もワンストップサービスという事ができますね。

この場合も、顧客にとっては金融機関に行くだけで金融関係の必要が一度ですむので便利なのです。そして便利なので、その金融機関は他の金融機関よりも顧客を引きつけることができる要因となるのです。

neko
ウチのお店に来るお客さんって、この後あちこちに出かけているみたいなんですよ。どうにかもっと便利にできないのですかね。

onnanoko_bustup
そうねぇ。役場にお願いして住民票でも発行できるようにしようかしら。後は、生鮮三品を取り扱って晩ご飯のおかずも用意できるようにしようかしら?

hiyoko
ワンストップサービスってわけですわね。でも、生鮮三品なんかおいたらコンセプトがぶれるから危ないと思うわよ。

客数と客単価を掛け合わせて計算することができます。

そして、このワンストップサービスは、一人のお客様へ多数のサービスを提供する事で客単価を上げる事ができるのです。

上の例で出てきた金融機関が保険や預金、投資信託を販売する場合、それぞれのサービスで収益を得る機会が生まれます。

その結果、客数は一定であっても客単価を高める事が可能です。そして、客単価を高める事で、結果として売上を増やすことが可能なのです。

このまんがでは学食に行けば全てが揃うようにサービスを設計しています。このようなサービスをワンストップサービスと言います。

解説で出てきた用語・関連用語
マーケティング
2019年3月10日

屋外広告 | 屋外に看板を出すので継続的に効果を発揮してくれます

屋外広告_001
野外広告とは、屋外に掲示する広告のことを言います。不特定多数のいわゆる通行人を対象とする広告です。

街を歩いている時によく目にする、看板や広告塔、アドバルーンなどといったモノがこの屋外広告と呼ばれるものです。また、郊外を電車などで走っている時に田畑に立っている大きな広告もこの屋外広告です。

このように、文字通り屋外にある広告を屋外広告と呼びます。

■屋外広告の特徴


屋外広告は、繰り返し目にするので印象に残りやすいですし、広告がターゲットとする対象に合わせてピンポイントで広告を出すことができるのでうまく使えば非常に効果的です。(例えば、地理的に近くにあるお店の広告を出すことになるので無駄が少ないです)

また、比較的広告のコストも安くすることができるのも大きなメリットですね。 

ただ、屋外に広告を出すため、街の美観や安全面などにも影響するのでしっかりと法律で規制されている分野です。

そして法律のみならず、待ってによっては例えば京都のように自治体の条例によって法律以上に強い規制がかけられてる場合もあります。 

このような、ルールを熟知した上でしっかりと良い広告を打っていくことは屋外広告には求められるのです。 

onnanoko_bustup
うちの店もぜひ広告を打とうと思うんだけど何かいい方法ないかな。

neko
新聞広告がいいかも。地域の人に広く知ってもらえるし。後は折込チラシかな。こっちのだともっと細かく地域を狙って宣伝できるから。

onnanoko_bustup
でもチラシ系だと一回しか宣伝できないから、大きな看板を駅前に立てるとかはどうかな。


■主な屋外広告

屋外広告と言うと主に大きな看板などをイメージする方が多いと思います。しかしこの屋外広告とは、屋外に掲示する広告であるため特に看板に限ったものではありません。

例えば大きなディスプレイをピルなどに設置し、通行人に映像として見てると言ったことも行われています。

関東圏の方にとっては、渋谷のスクランブル交差点の大型ディスプレイなどがお馴染みかもしれません。

また繁華街などでは、大型トラックの荷台に企業広告が書いてあって、繁華街を走り回るなどといったことも行われています。

電信柱に掲示されている広告などもこの屋外広告の一種です。またイメージは着きにくいかもしれませんが、飲食店などの暖簾もこの屋外広告であるとされています。

関連法令
野外広告物法

関連用語
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