サービス残業とは、本来なら支払うべき賃金を支払わずに労働を行わせるという行為のことを言います。サービス(なんのサービスなんでしょうね?)と言いつつも、立派な法律違反です。(サービスと言っていますが実態は、不払い残業とか無賃労働といった意味合いになります。)
法律では1日8時間を超えて、もしくは週に40時間を超えて働いた場合、通常の賃金に加えて割増賃金が支払われることになっています。
しかし、残念ながらこのような法律上の義務があるにもかかわらず、会社側が労働の対価を支払わないといった事が行われています。
さて、正当に支払われるべき労働の対価が支払われないことが蔓延するとどのような事が問題となるのでしょうか?
- 市場環境に与える影響
「サービス残業をしている人はお気の毒だけど、自分はサービス残業をやっていないし、関係ないよね…」なんて考えている人はいませんか?
しかし、ルール違反が放置されると社会にとって大きな悪影響を与えます。
例えばあなたがお店を営んでたとします。
その時、あなたのお店の隣に、盗んできた食材を使ってあなたのお店より、非常に安い価格で料理を出すお店が出店してきたらどうでしょう?
正直に営業しているあなたのお店の営業が脅かされますよね?
では、盗んだ労働力(サービス残業を行わせて、盗んだ人件費)で、あなたのお店よりも安い価格で料理を出すお店が出店してきたらどうでしょう?
市場で真っ当に経営している事業が、正当な利潤を確保できなくなるといった点で、上の例となにか異なる点があるでしょうか?本質的に同じことですよね?
また、従業員から労働力を盗まないと事業が成り立たないような企業は、本来ならば市場から退場してしかるべきです。
(「野菜とか肉を盗まないと、つぶれちゃいます。つぶれたら従業員が路頭に迷うんです。だから盗みを行った当社を許してください」みたいな言い訳は通用するかどうかは、考えるまでもないですよね?)
- 労働者に与える影響
サービス残業を行っている労働者側にとっても、自分の財布に手を突っ込まれてお金を抜かれているようなものです。
また、自分がサービス残業をしていないとしても、労働力のダンピングが行われているわけですから正当な対価が支払われる余地は少なくなります。
更に、本来なら人を雇って労働をさせるべきところを、無賃で働かせているわけですから、雇用の数も減ってしまいます。
このようにサービス残業は、どう考えても誰も得をしない悪しき習慣だと思います。
(もちろん、「たとえ無賃であったとしても仕事を完璧に遂行する」という心がけは素晴らしいと思います。しかし、それと社会としてサービス残業を許容するかどうかは別の話だと思います。
どうしても、仕事単位で成果物に対してのみお金のやり取りが発生するといった働き方をしたい/させたい、ならば仕事単位で請負契約を結べばいいわけですし、そもそもサービス残業をさせるくらいなら、残業代を見込んだ低い基本給を設定して募集をかければいいわけです。
労働市場なので市場自体はなくなりませんが、表面上同じでも入社するまで、実際に残業代が払われるかどうかわからないといった状態では、アカロフのレモン市場になってしまいますよね。)
また、サービス残業を放置している企業側にとっては、「サービス残業の不払い賃金を払え」と従業員側に訴えられたらほぼ負ける(しかも、遅延損害金のおまけつきで払う)という、爆弾を抱えて経営しているようなものですので、気を付けていく必要があります。