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割とビックリなニュースがありました。それはクレジットカード会社大手のJCB取締役とJCB会社自体が違法な時間外労働をさせたとして書類送検されたという事です。

報道では

 クレジットカード大手「ジェーシービー」(東京都港区)が昨年、本社勤務の社員7人に違法な時間外労働をさせたとして、東京労働局三田労働基準監督署は19日、労働基準法違反の疑いで、同社と取締役ら4人を東京地検に書類送検した。2015年11月19日産経新聞

とされており、労働基準法違反での書類送検であったという事です。あまり、労働基準法の違反で書類送検などといった事は聞いたことが無いので、事実であればかなり踏み込んだ対応であったと思われます。

残業をさせる場合、労使協定で残業を認める協定を結ぶ必要があり、とする場合45時間までが適法で運用できる範囲となります。但し、年6回まで(6か月まで)は特別条項としてその45時間を超えて残業することも認めるといった協定を結ぶことができます。

つまり、法に則って実施される残業時間は、年のうち6か月は45時間を上限としないといけないのです。

そのため、毎月毎月45時間を超える残業時間となっている場合、違法なのですね。(もちろんサービス残業が違法なのは言うまでもありませんが。)

■別の人を雇った方が安いラインは?

さて、法律論で違法云々についてはおいて、今回は単純に残業時間が何時間以上になると別の人を雇った方が安くなるのかについて考えてみます。

こういった長時間労働のお話が出ると、直感的に「もう一人雇った方が安いのでは?」と感じられるためです。

なお、議論を単純にするため、月160時間の所定労働時間で20万円のお給料の人(手当等は存在しない)が残業をする場合の、『もう一人雇った方が安いライン』を求めていきます。

■まず労基法のルールをおさらいします。

まずはルールのおさらいです。

ルール1:労基法上は残業が発生したら25%の割増賃金を支払う必要があります。

ルール2:1カ月の残業時間が60時間を超えた場合割増率は50%となる。

議論の単純化のため、休日出勤、深夜残業については考えないこととします。(残業時間が100時間を超えてくるとこれらの休日出勤や深夜残業にどうしてもなってくるのですが今回は無視します。)

■では60時間の残業を考えます。

さて、この人が60時間の残業をした場合はどうなるでしょうか?

先ほどの人を前提とするので時間給は20万円÷160時間で1,250円となります。

で60時間の残業をするわけですから

1,250×60×1.25=93,750円

となります。

■60時間超の場合

さて、60時間超の残業をした場合ですが

93,750円+(60時間超分の残業代)=総残業代

で計算ができます。

そのため、例えば100時間の残業をした場合(過労死ラインを超えていますね…)

93,750円+(1,250×40×1.5)=168,750

となります。

では120時間の残業ではどうでしょうか?

93,750円+(1,250×60×1.5)=206,250

で基本給を超えてくるのでここまで働かせるのならばもう一人雇った方が安いといった形になります。

なお、おおむね200,000円となるラインは117時間です。

但し、深夜残業や休日出勤などが絡めば割増率が上がるため、このラインはもっと前に来ますし、ボーナスや各種手当も考えればこのラインはもっと後ろに来ます。そのため、一概には言えませんが、単純化した事例では117時間程度となっています。

■117時間までなら残業で対応した方が安い?

と、このような議論には生産性の視点やコンプライアンスの視点が全く欠けています。117時間までなら残業で対応した方が安く上がるなどと言うような企業で働きたいと感じる人は少ないでしょう。

また、このような長時間労働を認めるような企業風土があると、今回の事例のように会社が書類送検されたり、ブラック企業の評判を立てられるといったレピュテーションリスクが存在します。

さらに、従業員さん自身の健康面も心配になりますし、なにより恒常的な長時間労働が前提となっている人たちの生産性も低下すると考えられます。(疲れて働くよりリフレッシュして働いた方が生産的ですよね)

目先のコスト面だけを見るとこのような従業員に残業してもらった方が安いといった議論になってしまいますが、全体的に見て何が最適なのかを考えていく必要がありますね。

 
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