001軽減税率
消費税の軽減税率が少し前から議論されていました。「消費税の逆進性を緩和するために食料品等については、軽減税率を導入する」といった議論です。

この議論はかなり具体的なところまで進んでいたように記憶しております。食料品の具体的な品目を決め(アルコールを除くのか、生鮮食品だけになるのか、米類だけになるのか等)、軽減された後の税率は9%になるといった内容です。

このような消費税の軽減税率には二つの大きな論点がありました。それは、税率を軽減する分の財源をどうするのかといった論点と、事業者の負担をどのようにするのかといったモノです。

今回、報道では
 消費税率を10%に引き上げる際の負担軽減策の財務省案が4日、明らかになった。2017年4月に税率が10%に引き上げられるのにあたり、ほぼ全ての飲食料品を軽減対象とする。

 複数の税率を設けると事業者の経理処理が複雑になるため、いったん10%の税率を課した上で、払いすぎた税金分を後から支給する方式を導入する方向だ。2015年9月4日 読売新聞
とされており、事業者の負担については一定の解決策が提案された格好になります。
  • 単なる軽減税率は事業者の負担が大きすぎる
さて、単に軽減税率を導入すると、事業者の負担が大きくなりすぎると考えられます。というのは、消費税率10%の商品と9%の商品をしっかりと分けて管理しないといけなくなりますし、税務申告の際にも考慮することが増えてしまいます。

(簡易課税と言って、消費税を簡単に申告できる制度があるのですが、軽減税率を導入したらどう考えても現行の制度よりも難しくなりそうです。)
  • 税金の還付ではない
と、ここでのポイントは、税金の還付ではないと言っているところです。税金の還付といった考え方にすると、納め過ぎた税金を戻すといった発想になるので、いくら税金を納めたかについて考えていく必要が出てきてしまいます。

しかし、『納め過ぎた税金分を後から支給する』といった発想ならば、おおむね年収○○万円の人なら(これは所得税の申告時に既に分かっている情報です)、○万円を返しますといった形を取ればよいので便利です。

また、「自分は税金の申告なんかしていないよ…」と思われる方も、会社で働いていれば、会社が国に申告してくれています。このように既知の情報を活用して制度を運用するのですから、費用面でも優位性がありそうです。
  • 軽減税率の代案
他の報道では軽減税率ではない他の案であるといった表現がなされています。

生活必需品の消費税率を低く抑える「軽減税率」をめぐり、平成29年4月の消費税10%への増税時の導入を見送った上で、軽減税率に代わる低所得者対策として、給付金を支給する案を財務省が検討していることが4日分かった。給付金にすると、事業者の事務負担の増加が避けられ、支給対象に所得制限を設けることができる。

自民、公明両党が来週にも再開する軽減税率の制度設計を検討する協議会で提示するとみられる。だが、公明党は低所得者対策で軽減税率導入を強く訴えており、調整は難航しそうだ。2015年9月5日 産経ニュース
低所得者対策のために、食料品などの生活必需品に対して消費税率の軽減を求めていた公明党の意見が実質的に反映された内容となっているように考えられます。

また、単なる軽減税率だと、小規模事業者に多大な負担を強いる事となるので、同じ結果が得られる給付金方式にするといった事が言われているのですね。

軽減税率にすると実際の金額ベースで大きな恩恵を受けるのは、低所得者よりも、お金持ちになります。(100グラム200円のお肉を買う人と、100グラム1,000円のお肉を買う人だったら、1,000円のお肉を買う人の方が絶対額では軽減税率から多くの恩恵を受けますから。)

また、軽減税率の対象になるかどうかをめぐった政治的な綱引きも増えそうですので、変な制度だったら給付方式の方がよっぽどシンプルでよいと思います。
  • 給付金制度だとちょっと分かりにくいかもしれません
たしかに、低所得者対策として効果も大きいと考えられますし(少なくとも軽減税率と同等の効果はあるでしょう)、事業者の負担も少ない良い制度であると考えられます。

しかし、給付金制度の場合、ちょっとした懸念点があります。それは、制度が見えにくいといった感覚です。

というのは、軽減税率となれば、ある程度は将来にわたって安定的に実施されると考えられます。(食料品の消費税率を軽減税率で8%と定めた場合、それを10%にするのはやはり実質的な増税ですから、政治上の大問題として国民的議論が期待できます。)

また、日々の生活に直結する制度なので、とても実感として見えやすいモノとなります。

しかし、給付金制度の場合イマイチ見えにくいと考えられます。例えば、消費税率が8%に引き上げられた際に、『住民税が非課税の人』には特別給付金が支給されています。(住民税が非課税で、住民税が課税されている人に扶養されていない人は、一人6千円が支給されます。)

この制度ってご存知ですか?(知らなかった方で、住民税が非課税の方は1月1日現在で住民票がある市町村に問い合わせてみてくださいね。(平成27年9月5日現在の情報です))

このように知っていて、かつ、手続きををしないと受け取れないというのが給付金制度で生じる問題点です。

また、ここで言う住民税非課税世帯は思いのほか年収の低い層しか当てはまらないので、生活が苦しくても、毎月会社からお給料をもらっているような人は恩恵を受けられないかもしれません。

と、いずれにしても、低所得の方や事業者の方の負担が少なくなるようなシンプルでわかりやすい制度設計が求められますね。
事業を営むのに必要な情報
姉妹サイトとして開業や創業、事業経営に大切な情報をコンサル目線でまとめてみました。