移動障壁
移動障壁とは、ある特定の戦略を採っている企業が、別の戦略を採る事へ対する難易度を示す言葉です。

同一業界内で別の戦略グループに対しての移動の難易度を移動障壁といいます。文字通り、別の戦略に移動する時の壁といったイメージです。

一般的に企業は、現在の戦略において最適化されています。そしてこの最適化の度合いが高くなればなるほど、移動障壁は高くなります。 

簡単に言えば、高級店は高級店を営むための仕組みを整えているのです。それなので、単価の低いものを大量に売りさばくような商売に適合するような経営資源を持ち合わせていません。そのためそこには移動障壁があるのです。

■移動障壁を小売業の例から考えます

例えば、小売業という事業を考えてみたいと思います。

■1.戦略の変更には移動障壁がつきものです

一口に小売業と言っても、高級品を扱うお店、低価格品を扱うお店。若い人向けのお店、シニア向けのお店など、様々な切り口が考えられますよね。

そして切り口が違えば、当然売り方や仕入れ方その他の戦略的なものは変わってきます。その結果、同じ小売業という大きなくくりであっても業態が異なれば移動障壁があるのです。

それでは、ある特定の領域で成功した企業が別の領域で事業をしようとしたらどうでしょうか?

具体的には、シニア向けの低価格品を扱うお店が若い人向けの高級品を扱いたいと考えたとします。どうでしょうか?

■2.ビジネスの進め方が違うことが移動障壁となります

この場合、接客方法は従来のシニア向けで大丈夫でしょうか?低価格品を売るような陳列方法で大丈夫でしょうか?若い人が好む商品を仕入れる事は従来の仕入れルートで可能でしょうか?
 
ちょっと考えるだけでも色々問題がありそうですよね?

そして、このように、従来の戦略的なポジションから別の戦略的なポジションに移ろうとする際に生じる問題、障壁を移動障壁というのです。

この時期は、どのようなビジネスを行うかといった、商売の根幹によって違いが出ています。

■移動障壁にもいろいろあります

このように異なる戦略グループに移動しようと思うと移動障壁があることはわかりました。 そしてこの移動障壁には色々なことが考えられます。

■1.流通経路など商売の構造に由来する移動障壁

例えば小売業だけやっているような商売が、垂直統合を狙っていき、製造まで行うことを考えたとします。

やり方としては非常にシナジーがあるのですが、言葉で言うのは簡単ですが製造業と小売業は商売の構造が違うのでなかなか簡単にはいきません。

また、例えば工場が高級品を作っているのであれば、高級品にふさわしい流通経路を持っているはずです。この流通経路を変えて、ディスカウントストアで売ると言ったことはなかなか難しいでしょう。

逆に、単価の低い商品を作っている工場が、百貨店で販売するというのもなかなか難しいのです。

このように流通経路などの構造を変えることには移動障壁があるのです。

■2.企業内部の組織に由来する移動障壁

また、同じ小売業という中でも品揃えの面で浅く広く品揃えするような商売と、狭く深く品揃えするような商売では全く違った状態となります。

どちらが良いということではなく、商売のやり方が違うのでなかなか別のやり方を行うことは難しいのです。

■3.企業の持つイメージに由来する移動障壁

企業にはそれぞれ固有のイメージがあります。例えばシニア向けに上質な商品を販売しているお店、若者向けに比較的低価格の商品を販売しているお店などです。

こういったお店が、自社の持つイメージと異なる商売をやる場合に、お客様がイメージの違いに戸惑ってしまうなどの移動障壁があるのです。

■共通で使える資源もあります

但し、上の例でも、資金という経営資源には色がついていないので活用することが可能です。また、経理や総務といった間接部門のリソースもそのまま利用することができると考えられます。

さらに、既に持っている配送網や販売管理等のシステムも活用できると考えられます。(こういった考え方を範囲の経済と言います)

このように、別の戦略を採ろうとした際には、確かに移動障壁といった壁はありますが、逆に一から始めるよりも有利に働くような要素もたくさんあるのです。

また、低価格路線から高価格路線に舵を切る行為はアップスケール化という言葉があるように、移動障壁があると言っても割と一般的な戦略となっています。

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