SWOT分析については、様々な実務に携わると色んな場面で使い方についてレクチャーを受ける機会があります。「経営戦略を立てるために…」といったテーマの研修ではほとんどこの方法が言われると思います。

しかし、実際に有効な企業戦略策定支援につながっているかについては少し疑問が残ります。厳しい言い方をすると、単なる分析の切り口の一つでしかないSWOT分析は決して万能ツールではありませんし、それだけ考えておけば良いという事はあり得ません。

今回は、金融機関や中小企業支援の現場に立つ人、自社の戦略について考えてみたい人、これから事業を起こしたいと考えているビジネスパーソンに向けて、本当に現場で使える戦略策定の流れについて書いてみたいと思います。

もちろん、方法論やスタイルは色々あると思います。しかし、一つの経営戦略策定の方法として読んでいただければと思います。

実際に現場で用いている方法ですので、本稿のやり方を用いれば、全くの的外れとなる事はないハズです。
  • まずは経営者の思いを聴け
さて、よくやりがちな間違いは、「○○だから△△とすべきだ!」と『僕の考えた経営戦略』を押し付けるような方法です。

いきなり分析から入るとそのような事をしてしまいがちですが、先ずは『経営者の思い』を時間をかけて丁寧に聴きましょう。

というのは、その事業を実際に身銭を切って行っているのは経営者自身だからです。何の責任もないあなたが、社長の思いを無視して「○○しないと成功しないよ!」などと言っても、真摯に実行してもらえる可能性はかなり低いですし、どんなに素晴らしい戦略であっても、実際に実施しなければそれこそ机上の空論でしかないのです。

例えば、社長が「自分としては庶民的なお蕎麦屋さんを経営したいんですよ。それは…」と幼少期の経験を交えてお話をしてくれたのにもかかわらず、その辺の話を無視して「この辺は富裕層が多いので高級蕎麦店を…」などと提案すべきではないのです。

もちろん、社長の思いを汲み取った上での『高級蕎麦店』の提案なら良いのですが、社長の思いを無視した『高級蕎麦店』の提案はダメなのです。

もし既に経営理念が定着している企業であればそれを決めた経緯を、これから起業する人であれば、どうして起業という決断に至ったのかについて丁寧に話を聴くのです。(ご自身が起業したい場合は、自分自身に尋ねて、言葉にして紙に書いてみてくださいね。)

時間のかかるプロセスですが、この経営者思いを聴くというプロセスは必須です。そうしないと、せっかく作り上げた経営戦略が絵に描いた餅になってしまう可能性があるのです。
  • SWOT分析で、現状を整理します
さて、経営者の思いを聴いたのちに、企業の内部環境や外部環境の分析に移ります。

企業内部の強み(S:strong)、弱み(W:weaknesses)、企業外部の機会(O:opportunities)、脅威(T:threats)にわけて、企業の情報を整理していきます。

弱みについてはどんどん挙げることができるけれども、強みについては中々上げることが難しい経営者も多いのですが、次のような考え方でどんどん挙げてもらえればと思います。

すなわち、現在売り上げを挙げられているのならば、「顧客がどうして自社を選んでくれているのか?」を考えてもらえればそれが自社の強みなので、ブレインストーミング的にどんどん出してみる事。これから起業する人であっても、「顧客がどうして新しい事業の顧客になってくれるのか」を考え、どんどんブレスト的にアイディア出し、していくことです。

この段階ではとにかく沢山の強みを挙げていくと良いと思われます。その方が経営者の方にとっても気分が良いですし、やる気が出てきますからね。

また、企業外部の環境分析には、PEST分析と言って、企業外部の環境をPolitics(政治)、Economics(経済)、Society(社会)、Technology(技術)に分けて分析してみる。

ファイブフォース分析として、「業者間の競争」「新規参入」「供給者」「需要者」「代替品」という競争環境について考えるといった切り口があります。

もちろんこれ以外に色々な切り口は考えられますが、このように昔から使われている切り口を活用するのは非常に効果的です。というのは、斬新な切り口で情報を整理することが目的なのではなく、企業を取り巻く環境について分析するのが目的ですからね。
  • 強みを絞り込むVRIO分析で、自社の競争優位の源泉を探る!
さて、上ではブレスト的に強みはたくさん出すと書いてみました。ただ、あまり多すぎると分析になっていないといった問題点も出てきます。100個も強みを挙げたとして、それを元にどの方向に進むのかを考えるのは容易な作業ではありませんからね。

そこで、強みを沢山挙げたうえで、フィルタリングをしていきます。この作業の後に残った強みは、厳選された強み。すなわちその企業の競争優位の源泉となっている可能性が高いのです。

さて、具体的にVRIO分析について見ていきます。VRIO分析とは、Value(経済的価値があるか)、Rarity(希少な資源であるか)、Imitability(簡単に模倣できるか)、Organization(組織として有効に活用できるか)といった切り口で挙げられた強みについて分類していくのです。

そして、この方法で強みを絞り込んで競争優位の源泉(コアコンピタンス)を導き出すのです。
ここまでで、厳選した強みと弱み、企業を取り巻く環境の機会と脅威についての情報を集めました。

そのうえで、クロスSWOT分析を実施し、今後の方向性を探っていくのです。

色々な方向性が考えられるのですが、セオリーとしては、強みと機会を結び付けて、市場にある機会をここまでで考えた厳選された自社の強みで捉えていくといった方向性です。
 
但し、この作業はやはり社長の思いに沿った方向性を模索していくという事を考えなければなりません。社長の納得感のない方向性を示しても、実施されなければ何の意味もないわけですからね。

逆に言うと、ここまでの作業を一緒にやることによって、当初聴いていた社長の思いと異なる方向を社長は無意識に目指していたという事がわかるかもしれません。そして、その事を納得感を持って共有できれば新たな方向性を示せる場合もあるのです。

さて、クロスSWOTを行う際に次のような切り口も念頭に置くとよいと思われます。それは、『誰に何をどのよう』にといった事業ドメインといった考え方です。
  • 戦略を落とし込む
さて、ここまでで事業の大きな方向性が見えてきますので後は、その方向性を「財務戦略」「人事戦略」「生産戦略」等に分けて落とし込んでいきます。

とはいえ、ここから先は各論になってくるので、本当に使える経営戦略の立て方という本稿ではここまでとします。
  • 一連の流れとしていろいろなツールを使うと良いと思います
さて、今回ご紹介した一連の流れに沿って自社の経営戦略や支援先の経営戦略について考えてみていただければ幸いです。

もちろん、上で挙げたようにいろいろな方法論があり、これが正解であるというつもりはありませんが、何の手がかりもなく考えるのに比べて精度の高い経営戦略を素早く苦労なく構築することが可能となると思います。

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参考用語
アンゾフの成長ベクトル
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