賃金の下方硬直性
賃金の下方硬直性とは、景気の悪化などで労働力に対する需要が下がった際に、需要と供給の考え方からすると下がってしかるべき労働者の賃金が、なかなか下がらない状態の事を言います。

例えば、景気が悪くなってきて、企業の利潤が現在の人件費水準では確保しにくくなってきたらどうなるでしょうか?

このような状態の時に、労働市場について考えてみます。
  • 失業という問題は『神の見えざる手』が解消してくれるか
『神の見えざる手』という言葉に代表されるような古典的な捉え方で、労働市場で考える場合、次のような流れで失業が解消されると考えられます。

1.景気悪化に伴って企業側の【労働力】に対する需要が抑えられます。

2.すると、労働者が自分の【労働力】を販売しようと競争し、【労働力】の価格が低下します。

3.その結果、【労働力】の価格は適正になり、適正価格で働きたいと考えている人は全員雇用されます。

4.ゆえに時間がたてば失業の問題は解消される。(短期的には求人の情報などが行き渡らない場合があるので摩擦的失業が発生する余地はあります。)

※この場合、適正価格以上でないと働きたくない人は、『自発的』に失業している(自発的失業と言います)状態です。

といった感じです。

どうでしょう、この説明で、「なるほどね。失業なんか気にしなくてもそのうち解消するんだ…」という風に考えられるでしょうか?言い換えれば、本当に適正価格で働きたいと考えれば、長い目で見た場合、失業しなくて済むのでしょうか?
  • 賃金は下がらない
さて、昔の偉い先生方は上のように考えたのですが、現実には失業は発生し続けています。変ですよね?適正な賃金水準で働こうと思っているのに働けないなんて。(こういう状態を、上の自発的失業に対して非自発的失業と言います。)

この理由として「イヤイヤ、賃金は簡単には下がらないでしょう。また、景気が悪くなりました、ハイ賃金を下げましょうなんてわけにはいきませんよね?」という現実があるのです。

まず、労働者という労働力の供給側は生活を守るために団結することができます。そして、その団結の結果、最低賃金という法的な賃金の最低ラインを定めていますし、労働組合を通じて雇用や賃金水準を守らせることができます。

また、たとえ企業側が賃金水準の引き下げに成功しても、その結果、労働者の購買力が低下し、物価水準も低下すれば(デフレという現象ですね)実質的な賃金水準は引き下がりません。

このように、賃金はなかなか下がらないという現象が現実の世界にはあり、そのような事を賃金の下方硬直性と呼ぶのです。

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