生存バイアス_001
生存バイアスとは、生き残っているデータのみを抽出してしまう事によってバイアスがかかるという事を言います。

一般的に言って、一部の成功例の陰には多数の失敗があります。失敗しても、成功するまで続けることができればいつかは成功するという考え方もありますが、世の中には失敗したら、もう続けることができなくなるといったタイプの失敗もあります。

例えば、資産運用をする際を考えてみたいと思います。毎年500万円の収入を得ている人が、頑張って貯めた1000万円を運用し始めたとします。しかし、この人が行っている運用は、運用とは名ばかりの「全額失うか、2倍になるか」といったリスクの大きな手法だったとします。

このような場合、失敗したら基本的には市場で運用を続けることはできませんよね?(年収の2倍のお金を失ったら通常は市場から退場してしまいます。)これが、もう続けることができなくなるといったタイプの失敗の例です。

そして、このタイプの運用(どちらかというと運用というよりギャンブルですが)を行う人が多数いたとします。このような条件の元、一年後に、こういった運用手法についてアンケートをとってみたとします。

さて、この場合アンケートはどのような答えが返ってくるでしょうか?おそらく、儲かったという話が多数出てくると思います。

「なぜ?運用を続けられなくなった人もたくさんいるのでは?」と考えられる方は多いと思います。たぶん、その考えは正解で、多数の人が運用が続けられなくなって市場から退場しているはずです。

でも、もしそうだとしたら、このアンケートにはどのような人が答えるのでしょうか?言い換えると、市場から退場した人はこのアンケートに答えるでしょうか?
  • 死人に口なし
嫌な表現の見出しですが、このようなアンケートに答える人は、運用に成功して生き残った人の方が多そうですよね。という事は、成功事例がたくさん集まりそうですよね。

このように、結果として生き残った人に偏ってデータを集めてしまうような事を生存バイアスと言います。

このバイアスはいろいろなところでかかっていると思われます。例えば、大学受験や資格受験などのいわゆる受験業界を考えてみてください。

よくパンフレットなどには受講生の感想を集めたグラフなどが載っていたりしますよね?でも、アンケートに答えるような人は合格した人やそれに近い人ですよね。授業が肌に合わなくて途中で辞めた人の意見はおそらくあまり反映されていないと考えられます。
  • 実務で注意すべき点は
さて、このような生存バイアスですが、実務では生存バイアスの存在を知っていれば、意思決定の落とし穴から逃れることができます。

事業がうまく回り出すと、投資話などを訊く機会が増えると思いますがその際にも「こういった成功談を話すことができるのは、この人が生き残ったからだ」と思うだけでリスクを避けることができます。

特に、大きな金額を投資するような案件の場合は生存バイアスが強く働くので(失敗した人の声はあまり聞こえてきませんから)、定性的な上手くいったという成功談だけでなく、数字で立ち止まって考えることが必要です。

具体的には、投資額、期待利回り、成功確率、投資に失敗した場合の最大の損害額を必ず確認する必要があります。

これらの事を明確に説明できない投資案件は、投資案件の体をなしていませんのでおすすめはしません。

その上で、期待値を求めてご自身の本業と比較して検討すれば、そうそう変な判断はしないはずです。

おいしい話は、嘘でないとしても生存バイアスが効いていると、お守り代わりに覚えておいてくださいませ。

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