スイッチングコスト_001
スイッチングコストとは、現在利用している製品やサービスからの乗り換えの際に発生するコストの事を言います。切り替え費用ともいい、特定の製品・サービスから別のモノに切り替える際に発生するコストです。

このスイッチングコストが高ければ顧客が流出することを防ぎ囲い込みを行う事ができます。逆に、顧客を確保するためには他社のスイッチングコストを下げるための方策をとると効果的です。
  • どのようなコストがかかるのか
このスイッチングコストには単に金銭面だけのコストだけではなく、手間がかかる・新しいことを覚えるのが面倒だという心理的なコストも含まれます。

このようなコストがあるため、消費者は現状の製品やサービスより新製品、新サービスが明らかに優れているように見えたとしても、簡単には乗り換えたりしないのです。

以下、代表的なスイッチングコストを見ていきます。

1.金銭的コスト
スイッチングコストと言われて、多くの人がはじめに思い浮かべるコストがこれです。

文字通り、買い換えにともなって発生するコストとなります。そのまま現状のモノを使い続ければ発生しないコストであるため、一番目に見えやすいコストであるといえます。

2.心理的コスト
新しいモノを利用する際には、操作方法を一から覚える必要が出てきたりします。これが、実は大きなコストとなっています。

例えば、ずっと昔からある携帯電話(いわゆるガラケーというやつですね)を使っている人がいるとします。

あなたは携帯電話屋さんで働いており、その人に新しくスマートフォンを勧めているとします。

あなたは、昔からの携帯電話に比べ、新しいスマートフォンは非常に優れていると力説しますが「ワザワザ覚えるのが面倒」といった理由で断られてしまいました。

この場合、昔からある携帯電話を使っている人は心理的なコストが大きいため、スマートフォンに乗り換えることを拒否したと考えられます。

仮に金銭的コストが低くても(スマホをただ同然で提供すると言っても)この心理的コストが乗り越えられなければその人はいつまでも古い機械を使い続けるでしょう。

3.機会コスト
手間がかかるというのは、多くの人は意識しませんが大きなコスト要因です。

通常、新しいモノを導入しようとした際には、比較検討をします。その場合、比較検討に要した時間がそのままコストとなります。また、2.の心理的コストも新しいことを覚え直さなければならない(つまり覚える時間がかかる)といった意味で機会コストを嫌っていると言い換えることも可能です。

また、企業などの組織で別のシステムを導入するとなると、大きな機会コストが発生します。仮に現在使用しているシステムの競合他社が1割安く提案してきたとしても、新しいシステムになれるまでのコスト、教育訓練のコストなどの機会コストがかかります。

時給1000円で雇用しているとすれば、システムに不慣れなために年120時間、システム研修のために10時間費やした場合、一人あたり130,000円ものコストが余計にかかります。
さらに、超過勤務等で対応したとすると、最悪の場合従業員の離職率の上昇といった問題まで発生します。

このような機会コストは大きなスイッチングコストとなるのです。
  • 顧客を囲い込むためにスイッチングコストを高める例
よくあるポイントプログラムはスイッチングコストを高めるための方法として使われています。

家電屋さんなどで莫大なポイントがたまっているとすると、なかなかほかの会社のお店に乗り換えにくいですよね?

また、極めて強力なアフターサービスを行って行くと言ったことも考えられます。

これらの正攻法だけでなく、顧客に負担を強いるといった方法でもスイッチングコストを高めることが可能です。

この例として、携帯電話を途中で解約すると違約金を取られるといった事もこのスイッチングコストを高める方法の一つです。

また、サービスの解約の方法をわかりにくくすることで解約を諦めさせるといった事も行われています。(実例は挙げませんが、解約しにくいサービスといえばいくつか心当たりがあるはずです。)

もっとも、こういった顧客に負担を強いる方法は長期的に見ると信用を食い潰すことになるのでおすすめしません。
  • 競合他社のスイッチングコストを引き下げる方策
逆に言うと乗り換えてもらうためには、このスイッチングコストを低くすればよいのです。

例えば、携帯電話の途中解約の違約金を負担してあげるといった事が考えられます。

また、操作しやすい製品を作り、新たに覚えなければといった心理的なコスト・機会コストを引き下げるといった方法が考えられます。

操作のしやすさは品質ですので、その意味で品質の高い製品サービスを構築すれば報われるのです。

また、比較検討をサポートするような十分な情報開示を行う事も考えられます。

スイッチングコストが発生する要因を考え、それを打ち消すような方策を考えることで顧客に対して購入を促す事ができるのです。

このまんがでは、レジの機種を変えた事が原因で、夜遅くまで操作を覚えるためにかかってしまったようです。この新しい機械の操作を覚えるといった事もスイッチングコストの例です。


解説で出てきた用語・関連用語
機会コスト
ベンダロックイン


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