ファブレス_001
ファブレス(fabless)とは自社の工場などの生産設備を持たない製造業者(メーカー)の事です。または、そういったビジネスモデルのことを指します。簡単に言ってしまうと自社でモノを作らないモノづくりの会社という事です。

ここで一つの疑問がわいてきます。工場などの生産設備を持たない製造業など可能なのでしょうか?

工場のない製造業なんてあり得ないと考えた方も多いと思いますが、現在ではそのような製造業も可能なのです。

調べて見ればすぐに出てくると思いますが、誰もが知っている有名な企業もこのファブレスといった経営形態を取っています。

なお、ファブレスといいつつも工場を持っている場合も存在します。定義上おかしいのですが、工場といっても量産を行うような工場ではなく、試作品対応や修理工場、特殊な小ロット対応のみであるため、量産対応は行っていません。
  • モノはどうするの?
このファブレス経営を行っている企業は、自社でモノを量産する生産設備を持っていないので、誰かに作ってもらわなければなりません。

実際の製造はやはりどこかでやらないといけない訳なので、その意味では製造活動は行っています。

しかし、その製造を行うのが自社ではなく、外部の企業に生産を委託するのです。
  • ファブレス企業は何をするの?
ではこのファブレスは何をするのでしょうか?製造業なのに生産をしないなら仕事はなさそうですよね?

でもそんなことはありません。このファブレス経営を行っていく企業は、生産以外の事をやっていきます。

具体的には製品のマーケティングや製品の企画、設計を行って行くのです。
  • ファブレス企業のメリットとは
さて、このように生産設備を持たないメリットは何かあるのでしょうか?

1.設備投資の回避
それは、生産設備を持たずに済むため、初期投資が抑えられる事がまず挙げられます。工場を所有しようと考えた場合には、工場の立地や機械装置の購入など莫大な投資が必要となります。

この莫大な設備投資を回避することができるのが大きなメリットです。

製品ライフサイクルが早いと考えられる製品については、設備投資から始めたのでは製品自体の寿命がつきる前に投資の回収ができません。そのため、ファブレスの方が有利であると言われています。

2.固定費の変動費化
また、生産設備を持つことによって発生する固定費を変動費化できるといった点も見逃せないメリットになります。

固定費を変動費化できるという事をもう少しご説明すると、

①生産設備を持つと、生産設備を調達するために投入した資金が固定資産となります。

②固定資産は毎年減価償却という形で費用化します。

③この減価償却費は生産設備を用いて製造しようがしまいが発生するコストとなるため、固定費となります。

④ファブレスの場合、この固定費が発生せず、製造した分だけコストが発生するため変動費として処理することが可能となります。

このような事から、需要変動が激しい製品を取り扱っている企業にとっては、作らなければコストが発生しないため、リスクを小さくすることができるのです。

また、製品ライフサイクルが早いと考えられる製品については、設備投資から始めたのでは製品自体の寿命がつきる前に投資の回収ができません。そのため、ファブレスの方が有利であると言われています。

3.経営資源の集中
また、限られた経営資源を研究開発などだけに集中することが可能となります。工場の運営は極めて高度なノウハウが必要な領域となるため、工場を保有する事は相当量の経営資源の投入を要求されます。

このような事ではなく、自社が付加価値を生み出す点を企画・開発であると割り切り、底に経営資源を投入すると言った考え方を取ることができるのです。

4.立地戦略も選べる
物流を考慮した際に、需要地によっては最適な立地が変わってきます。工場を持たないことによって、最適な立地での製造が可能となり、総コストの圧縮を実現することが可能となります。
  • ファブレス経営のデメリットとは
ファブレス経営の良さそうな事をたくさん書きましたが、当然デメリットも存在してます。

1.品質・納期管理・コストの最適化が難しい
自社工場でないため、品質管理や納期管理は相手側に委ねることになります。当然、契約で縛るのですが、これらの3つの要素は両立しないため、最適化することが難しくなります。

また、通常は経験曲線効果と言って累積製造量が増加すれば総コストが圧縮されますが、この効果を享受するためには、工場を持っている相手に対して、製造コストの引き下げ分を還元してもらうような契約を結ぶ必要が出てきます。

2.製造によるフィードバックを得にくく、技術も蓄積できない
製造していく中で、製品の改善点等が見つかる事があります。しかし、外部企業に委託しているため、そのようなフィードバックをどこまで受けられるかは契約次第になります。
また、製造に伴う技術も自社には蓄積されません。

3.情報漏洩リスク
これも契約次第ですが、情報漏洩リスクは常につきまといます。

4.いざというときに製造依頼を受けてくれないリスク
自社ではないため、いざというときに製造依頼を受けてくれないリスクが存在します。

急に受注が伸びた際に、増産依頼を行っても工場のキャパシティの関係で受けられませんと断られるリスクがあります。

5.一般に製造原価が割高になる
製造を委託するため自社工場を持つこと変動費となるため、リスクは小さくできますがその分製造原価は割高になります。

このまんがでは先生が1コマ目でPC販売をしたいと言っています。PCの生産設備などは、このクラブは持っていないのでどうするのかを心配しています。

3コマ目ではPCは知り合いの工場で組み立ててもらうと言っています。4コマ目で生徒さんが驚いているようにファブレスならば生産設備を持たなくても製造業に参入することは可能になります。 


解説で出てきた用語・関連用語
変動費型事業
ファブレス後日談_001
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